JP6402635B2 - シンチレータ、シンチレータパネルおよびシンチレータパネルの製造方法 - Google Patents
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Description
また、本発明のシンチレータパネルは、基板上にヨウ化セシウムを、タリウム源、ナトリウム源および特定のハロゲン元素(B)源と共に蒸着させて柱状結晶を形成し、
前記柱状結晶内における臭素の濃度が、0.01mol%〜90mol%の範囲内になるように析出させることにより製造することができる。
[シンチレータ]
本発明のシンチレータは、ヨウ化セシウム(CsI)を母材とし、セシウムよりも原子量の小さいアルカリ金属源(A)を含有する結晶体からなる。
本発明のシンチレータを形成する成分の母材はCsIである。CsIは、X線から可視光への変換率が比較的高く、また、蒸着によって容易にシンチレータを構成する複数の柱状結晶構造を容易に形成できるため、光ガイド効果により結晶内での発光の散乱が抑えられ、さらにシンチレータ(蛍光体)の厚さを厚くすることが可能である。
また本発明のシンチレータには、セシウムよりも原子量の小さいアルカリ金属源(A)が所定量含有されている。アルカリ金属源(A)は、具体的には、リチウム〔Li〕、ナトリウム〔Na〕、カリウム〔K〕およびルビジウム〔Rb〕から選ばれる少なくとも一種である。このうち、アルカリ金属源(A)は、その原子のヨウ化物自身がシンチレータになり得るナトリウム原子であることが特に好ましい。アルカリ金属源(A)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
本発明のシンチレータは、前記母材であるヨウ化セシウム(CsI)を構成するのヨウ素の一部が、ハロゲン元素(B)に置換されている。ここでハロゲン元素(B)は、臭素、塩素およびフッ素よりなる群から選ばれる少なくとも1種のハロゲン元素である。ハロゲン元素(B)は、1種単独でもよく、2種以上でも良い。これらのハロゲン元素(B)で母材を構成するヨウ素の一部を置換することにより、耐湿性に優れると共に良好な画質を形成することが可能なシンチレータを得ることができる。
なお、母材のヨウ化セシウムの一部をヨウ素から臭素に置き換えた場合、柱状結晶径が細くなる。柱状結晶径が細くなると、前述のように、画質および鮮鋭性は向上する。
結晶体は、発光効率をさらに向上させることを目的として賦活剤(C)を含有してもよい。賦活剤(C)としては、タリウム〔Tl〕、ユウロピウム〔Eu〕、インジウム〔In〕、リチウム〔Li〕、カリウム〔K〕、ルビジウム〔Rb〕、ナトリウム〔Na〕などを例示することができる。400〜750nmまでの広い発光波長を有する蛍光体が得られ、受光素子が蛍光体の発光を最も検出しやすいという観点から、母材がヨウ化セシウム〔CsI〕である場合、賦活剤(C)はタリウムであることが好ましい。
シンチレータ中の賦活剤(C)の濃度については、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectrometer:ICP−AES)にて測定することができる。この方法は金属元素等をプラズマ中で励起させたときに発生する光を分光し、各元素特有の波長から定性分析、発光強度から定量分析を行う手法であり、結晶中に含まれる微量無機元素の定量、及び定性ができる。例えば、蒸着によって得られたシンチレータについて柱状結晶の厚さ方向に対し、1層目と2層目との間で結晶を分割し、分割された各々について少なくとも賦活剤(C)の濃度を測定する。
本発明のシンチレータ、例えば公知の蒸着装置を用いて製造することができる。
図3に本発明で使用することが可能な公知の蒸着装置の例を示す。
本発明のシンチレータは、上記のような蒸着装置を用いて、例えばシャッターの開閉により蒸着源の蒸着量を本発明で規定するように調整して形成する。
本発明のシンチレータパネルは、放射線が照射されることにより発光する蛍光体層(シンチレータ)と、蛍光体層を保持する基板と、蛍光体層および基板を覆う保護フィルムとを備えている。蛍光体層に関しては、前述の通りである。
本発明のシンチレータパネルの作製に際しては、種々多様な基板を使用することができる。即ち、X線等の放射線を透過させることが可能な各種のガラス、高分子材料、金属等を用いることができるが、例えば、石英、ホウ珪酸ガラス、化学的強化ガラスなどの板ガラス、サファイア、チッ化珪素、炭化珪素などのセラミック基板、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム燐、ガリウム窒素など半導体基板、またセルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム、炭素繊維強化樹脂シート等の高分子フィルム(プラスチックフィルム)、アルミニウムシート、鉄シート、銅シート等の金属シート、あるいは該金属酸化物の被覆層を有する金属シートなどを用いることができる。基板の厚みは50μm〜1mmであることが好ましく、50〜500μmであることがより好ましい。
保護フィルムは蛍光体層を防湿し、蛍光体層の劣化を抑制するためのもので、透湿度の低いフィルムから構成される。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)を用いることができる。PETの他には、ポリエステルフィルム、ポリメタクリレートフィルム、ニトロセルロースフィルム、セルロースアセテートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等を用いることができる。また、必要とされる防湿性にあわせて、これらフィルムに金属酸化物などを蒸着した蒸着フィルムを複数枚積層した構成とすることもできる。
本発明において、保護フィルムの厚さは10〜100μmであることが好ましい。
本発明のシンチレータパネルは、上記構成に加えて、基板と蛍光体層の間に反射層、保護層を設けてもよい。
反射層は、蛍光体で変換された光を外部へ出射するため反射層として機能させることが可能であり、発光の利用効率の面で反射層は反射率の高い金属で形成することが好ましい。反射率の高い金属膜層としては、Al、Ag、Cr、Cu、Ni、Mg、Pt、Auからなる群の中の物質を含む材料が挙げられる。本発明に係る反射層の形成方法は既知のいかなる方法でも構わないが、例えば、上記原材料を使用したスパッタ処理が挙げられる。反射層の厚さは0.01〜0.3μmであることが、発光光取り出し効率の観点から好ましい。
保護層は溶剤に溶解した樹脂を塗布、乾燥して形成することが好ましい。ガラス転位点が30〜100℃のポリマーであることが蒸着結晶と基板との膜付の点で好ましく、具体的には、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル樹脂、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)、スチレン−ブタジエン共重合体、各種の合成ゴム系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、アクリル系樹脂、尿素ホルムアミド樹脂等が挙げられるが、特にポリエステル樹脂であることが好ましい。
基板上に蛍光体層を設け、その上下を保護フィルムで挟み、減圧雰囲気中で上下の保護フィルムが接触する端部を融着することにより封止し、シンチレータパネルの形成することができる。
〔実施例1〜16および比較例1〜3〕
図3の蒸着装置を参照して説明する。ヨウ化セシウム〔CsI〕、臭化セシウム〔CsBr〕、ヨウ化タリウム〔TlI〕およびヨウ化ナトリウム〔NaI〕を4つの抵抗加熱るつぼ22a〜22dにそれぞれ充填し、これを蒸発源とし、支持体ホルダーの金属製の枠(図示せず)に下引層17を有する支持体を設置し、下引層17と上記蒸発源22a〜22dとの間隔を400mmとなるよう調整した。なお、22dは図示されていないが、22aと同じ形状のるつぼが存在している。
得られたシンチレータを、CMOSフラットパネル(ラドアイコン社製X線CMOSカメラシステムShad−o−Box4KEV)にセットし、12bitの出力データより輝度及び鮮鋭性等を、以下に示す方法で測定した。
管電圧80kVpのX線を試料の裏面(蛍光体層が形成されていない面)から照射し、画像データをシンチレータを配置したCMOSフラットパネルで検出し、画像の平均シグナル値を発光輝度とした。測定結果を下記表1に示す。ただし、表1中、輝度を示す値は、比較例1の輝度を1.00としたときの相対値である。
鉛製のMTFチャートを通して管電圧80kVpのX線を各試料の裏面(蛍光体層が形成されていない面)から照射し、画像データをシンチレータを配置したCMOSフラットパネルで検出しハードディスクに記録した。その後、ハードディスク上の記録をコンピュータで分析して当該ハードディスクに記録されたX線像の変調伝達関数MTF(空間周波数1サイクル/mmにおけるMTF値)を鮮鋭性の指標とした。測定結果を下記表1に示す。ただし、表1中、MTFを示す値は、実施例9のMTFを1.00としたときの相対値である。
実施例1〜16および比較例1、2で得られたシンチレータを温度40℃湿度90%環境下で6日間暴露した後に、前記と同様にしてMTFを得た。暴露前のMTFに対する暴露後のMTFの比率を表1に示す。
感度上昇率は、シンチレータに管電圧80kVpのX線を30R照射した際のパネル感度(輝度)の変化率である。X線照射前から変化しない場合は0%とした。ブライトバーンがあれば感度上昇率は高くなり、感度上昇率が0%であることはブライトバーンが消去されたことを意味する。測定結果を下記表1に示す。ただし、表1中、感度上昇率を示す値は、比較例1の感度上昇率を1.00とした相対値である。
実施例で製造したシンチレータプレートによれば、ヨウ化セシウムを母材とし、ブライトバーン等を抑制するためにセシウムよりも原子量の小さいアルカリ金属源(A)を含有する結晶体であるシンチレータにおいて、上記母材を形成するヨウ化セシウム中のヨウ素の一部が、臭素、塩素およびフッ素よりなる群から選ばれる少なくとも1種のハロゲン元素(B)に置換されていることにより、ハロゲン元素(B)を含まないシンチレータ(比較例1)よりも耐湿性を向上させることができた(実施例5〜7および9〜11)。
16 支持体(基材)
17 下引層
18 反射層
21 真空容器
22a,22b,22c 蒸着源
25 蒸着装置
26 支持体ホルダー
27 支持体回転機構
28 支持体回転軸
29 真空ポンプ
30a,30b,30c シャッター
Claims (8)
- ヨウ化セシウムを母材とする柱状結晶体であり、前記結晶体はセシウムよりも原子量の小さいアルカリ金属源として、ナトリウム(A)を含有すると共に、
前記母材を形成するヨウ化セシウム中のヨウ素の一部が、臭素、塩素およびフッ素よりなる群から選ばれる少なくとも1種のハロゲン元素(B)で置換されてなることを特徴とするシンチレータ。 - 前記母材であるヨウ化セシウム中に、賦活剤(C)を含有させることを特徴とする請求項1に記載のシンチレータ。
- 前記ヨウ化セシウムを形成するヨウ素の内、0.01mol%〜90mol%のヨウ素が、前記ハロゲン元素(B)に置換されていることを特徴とする請求項1に記載のシンチレータ。
- 前記ハロゲン元素(B)が、臭素であることを特徴とする請求項1または請求項3に記載のシンチレータ。
- 前記賦活剤(C)が、タリウムであることを特徴とする請求項2に記載のシンチレータ。
- 柱状結晶の平均柱径は、2.0〜20μmの範囲内にあることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のシンチレータ。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のシンチレータを含むことを特徴とするシンチレータパネル。
- 基板上にヨウ化セシウムを、臭素源、塩素源およびフッ素源よりなる群から選ばれる少なくとも1種のハロゲン元素(B)源と、タリウム源と、ナトリウム源と共に蒸着させて柱状結晶を形成し、
前記柱状結晶内におけるハロゲン元素(B)の濃度が、0.01mol%〜90mol%の範囲内の濃度になるように析出させることを特徴とするシンチレータパネルの製造方法。
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