JPH0636715A - X線イメージ管 - Google Patents

X線イメージ管

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Publication number
JPH0636715A
JPH0636715A JP19117492A JP19117492A JPH0636715A JP H0636715 A JPH0636715 A JP H0636715A JP 19117492 A JP19117492 A JP 19117492A JP 19117492 A JP19117492 A JP 19117492A JP H0636715 A JPH0636715 A JP H0636715A
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JP
Japan
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fluorescent screen
light
input
input fluorescent
ray image
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Application number
JP19117492A
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English (en)
Inventor
Atsuya Yoshida
篤也 吉田
Satoru Sano
哲 佐野
Keiichi Saito
啓一 斉藤
Kiyomi Yamashita
紀代美 山下
Kazunobu Tsukada
和順 塚田
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Toshiba Corp
Toshiba Development and Engineering Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
Toshiba Electronic Engineering Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 簡単な構成で、出力輝度分布を一定にし、分
解能を向上させることができるX線イメージ管を提供す
る。 【構成】 アルミニウム基板11上に面方向に不連続なよ
う化セシウムの不連続蛍光体層12を形成し、不連続蛍光
体層12上によう化セシウムの連続蛍光体層13を積層さ
せ、入力蛍光スクリーン14を形成する。不連続蛍光体層
12は、光吸収物質となるよう化銅を混入し透明度を低く
し、よう化銅はアルミニウム基板11側で濃度が高く、連
続蛍光体層13側に向かうに従い、濃度が低くなってい
る。低エネルギーのX線が入射された場合、発光の大部
分はアルミニウム基板11付近の光吸収物質の濃度の高い
部分で起こり、解像を悪化させる横方向の散乱はほとん
ど吸収する。散乱による解像の悪化は厚さ方向のX線の
出力側の発光ほど少ないため、X線の出力側近くの光吸
収物質の濃度を低くして、輝度の低下を抑える。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、分解能を向上させたX
線イメージ管に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、X線イメージ管は、一般に医療用
のX線撮像装置や工業用の非破壊検査用のX線工業テレ
ビなどに広く応用されている。
【0003】また、従来のX線イメージ管は、X線が入
力される入力窓を有する真空外囲器を備えている。そし
て、この真空外囲器の内部には、入力窓に対向して彎曲
基板が配置され、彎曲基板の入力窓と反対面には、入力
蛍光スクリーンおよび光電面が順次積層されている。さ
らに、真空外囲器の出力側には、陽極および蛍光スクリ
ーンが配設され、真空外囲器の内部の側壁に沿って集束
電極が配設されている。
【0004】そして、X線管から放射されたX線は、被
写体を通り、入力窓と彎曲基板とを通過して入力蛍光ス
クリーンによって光に変換される。この光は、光電面に
よって電子に変換され、集束電極と陽極とによって構成
される電子レンズによって、加速、収束され、出力蛍光
スクリーンによって可視像に変換される。
【0005】そうして、この可視像は、テレビカメラ、
シネカメラまたはスポットカメラなどによって現像さ
れ、医療診断などが行なわれている。
【0006】次に、上記X線イメージ管に用いる入力蛍
光スクリーンの一例を図23を参照して説明する。
【0007】この図23に示す入力蛍光スクリーンは、
アルミニウム基板1上によう化セシウム(CsI)の不
連続蛍光体層2を形成し、この不連続蛍光体層2上によ
う化セシウムの連続蛍光体層3を積層させ、光電面4を
連続して形成している。
【0008】そうして、上述の入力蛍光スクリーンは、
まず、ライトガイド効果を有している。すなわち、よう
化セシウムは、波長420nm付近の発光に対する屈折率
が1.84であり、理論上、結晶中で生じた発光は、図
24に示すように、臨界角33°以上の鈍角で結晶と真
空との界面に達すると、全反射して結晶の外に出られな
くなる。このため、発光の一部は光電面4に到達し、光
は強制的に結晶成長方向に伝送される。
【0009】また、結晶と真空の界面とでの光の減衰が
生ずる。したがって、臨界角33°以下の角度で結晶の
外に出た光は、再度隣接する別の不連続蛍光体層2に到
達する。このとき、ほとんどの光は、結晶内に取り込ま
れるが、一部は図24に示すようにフレネル反射により
元の結晶に戻される。なお、結晶から真空に出るときも
同様である。このようにして、横方向へ広がる光は次第
に減衰し、結晶成長方向から外れた光ほど界面を通る回
数が多くなり、減衰の度合いが大きくなる。そこで、発
光は結晶成長方向に近いほど少ない減衰量で光電面4に
到達する。
【0010】上述のように、不連続蛍光体層2で発光し
た光は、発光点からあまり離れていない光電面4上に到
達することになり、入力蛍光スクリーン単体としての分
解能が得られる。
【0011】そして、近年のX線イメージ管は、被写体
を透過したX線信号をできるだけ多く拾うことを目的と
して、入力蛍光スクリーンの厚さを400μm以上に設
定してX線吸収効率の向上を図っている。
【0012】また、上記作用のうち、ライトガイド効果
は、入力蛍光スクリーンの厚さに依存しないが、真空と
界面とでの光の減衰については、入力蛍光スクリーンの
厚さが厚くなると界面による減衰の効果が弱くなり、入
力蛍光スクリーンの分解能が低下する。
【0013】この分解能を補強するために、不連続蛍光
体層2の径を細くして面方向の光学的界面を密にするこ
とが考えられる。そして、このように光学的界面を密に
することにより、横方向へ広がる光は、単位光路長当た
り減衰される割合が増加すると考えられる。
【0014】また、不連続蛍光体層2の径は、スクリー
ン蒸着工程における基板温度に依存するので、蒸着時に
基板温度を150℃に維持したまま、4.5×10-1
aの圧力下でよう化セシウム膜を形成させたところ、6
μmの結晶柱の不連続蛍光体層2が形成され、基板温度
を180℃に維持したところ、9μmの不連続蛍光体層
2が形成された。
【0015】これらの不連続蛍光体層2が形成された入
力蛍光スクリーンの解像度を測定したところ、20lp
/cmで、CTF(Contrast Transfer Function)値は
いずれも24%前後で略等しく、50lp/cmでも6
μmの入力蛍光スクリーンの方が1%上回ったにすぎな
かった。なお、この程度のCTFの差であると、入力蛍
光スクリーンをX線イメージ管内部に装着した場合、撮
像系を経てテレビ画面上に現れる差は小さい。
【0016】特に、真空と界面とでの光の減衰を向上さ
せるものとして、たとえば特開昭62−43046号公
報に記載されているように、不連続蛍光体層の結晶柱間
に光吸収層を介在させるもの、特開昭59−12173
3号公報に記載されているように、不連続蛍光体層の柱
状結晶間に光反射物質の粉末を充填するものが知られて
いる。
【0017】ところが、不連続蛍光体層の結晶柱間は1
μm程度であり、これら結晶柱間の間隙を加工すること
は非常に困難である。
【0018】さらに、銅を混入させた不連続蛍光体層を
酸化性雰囲気でアニールすることにより、不連続蛍光体
層の光学界面に酸化膜を形成する構成が特公昭54ー4
0071号公報に記載されている。
【0019】しかしながら、この特公昭54ー4007
1号公報記載の構成のものでは、不連続蛍光体層の光
は、入力蛍光面の酸化膜により反射されて蛍光体外に出
力されない旨記載されている。
【0020】またさらに、出力輝度分布を均一にするた
めに、不連続蛍光体層の柱状結晶の大きさを中心部から
周辺部に向けて大きくし、中心部から周辺部に向けて光
透過率を大きくした構成が特開平1−258345号公
報に記載されている。
【0021】ところが、この特開平1−258345号
公報に記載のように、不連続蛍光体層の柱状結晶の大き
さを中心部から周辺部に向けて大きくすることは非常に
難しい。
【0022】そしてまた、出力輝度分布を均一にするた
めに、不連続蛍光体層の膜厚を中心部から周辺部に向け
て大きくした構成が特開昭53−102663号公報に
記載されている。
【0023】ところが、この特開昭53−102663
号公報に記載のように、不連続蛍光体層の膜厚を中心部
から周辺部に向けて厚くすると周辺部で解像度が低下す
る。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】上述の特開昭62−4
3046号公報または特開昭59−121733号公報
に記載のように、真空と界面とでの光の減衰を向上させ
るものとして、不連続蛍光体層の結晶柱間に光吸収層を
介在させたり、あるいは、光反射物質の粉末を充填する
ことは、不連続蛍光体層の結晶柱間が1μm程度である
ため、これら結晶柱間の間隙を加工することは非常に困
難である問題を有している。
【0025】また、特開昭62−43046号公報記載
のように、不連続蛍光体層の結晶柱間に光吸収物質を介
在させ、不連続蛍光体層の結晶柱間で蛍光体からの光を
吸収するものの場合、分解能を十分に向上させることが
できない問題を有している。
【0026】さらに、特公昭54ー40071号公報記
載の構成では、柱状蛍光体内の光は、入力蛍光面の酸化
膜に反射されて出力できない問題を有している。
【0027】またさらに、特開平1−258345号公
報に記載のように、不連続蛍光体層の柱状結晶の大きさ
を中心部から周辺部に向けて大きくすることは非常に難
しい問題を有している。
【0028】そしてまた、特開昭53−102663号
公報に記載のように、不連続蛍光体層の膜厚を中心部か
ら周辺部に向けて厚くすると周辺部で解像度が低下する
問題を有している。
【0029】本発明は、上記問題点に鑑みなされたもの
で、簡単な構成で、出力輝度分布を一定にし、分解能を
向上させることができるX線イメージ管を提供すること
を目的とする。
【0030】
【課題を解決するための手段】請求項1記載のX線イメ
ージ管は、基体と、この基体の上に形成されX線の入射
により蛍光体が発する光を吸収する光吸収物質を含有し
た入力蛍光スクリーンを具備したX線イメージ管におい
て、前記入力蛍光スクリーンの光吸収物質の濃度は、X
線が入射される前記基板側から厚さ方向に対して低くな
っているものである。
【0031】請求項2記載のX線イメージ管は、基体
と、この基体の上に形成されX線の入射により蛍光体が
発する光を吸収する光吸収物質を含有した入力蛍光スク
リーンとを具備したX線イメージ管において、前記入力
蛍光スクリーンは、前記基板側に位置する下地層と、こ
の下地層の前記基板と反対面に位置する本層とからな
り、前記下地層の光吸収物質の濃度は、前記本層の光吸
収物質の濃度より低いものである。
【0032】請求項3記載のX線イメージ管は、基体
と、この基体の上に形成されX線の入射により蛍光体が
発する光を吸収する光吸収物質を含有した入力蛍光スク
リーンとを具備したX線イメージ管において、前記入力
蛍光スクリーンの光吸収物質の濃度は、前記入力蛍光ス
クリーンの中心部で前記入力蛍光スクリーンの周辺部よ
り高いものである。
【0033】請求項4記載のX線イメージ管は、基体
と、この基体の上に形成されX線の入射により蛍光体が
発する光を吸収する光吸収物質を含有した入力蛍光スク
リーンとを具備したX線イメージ管において、前記入力
蛍光スクリーンの光吸収物質の濃度は、前記入力蛍光ス
クリーンの周辺部より前記入力蛍光スクリーンの中心部
で高く、かつ、前記入力蛍光スクリーンの膜厚は、前記
入力蛍光スクリーンの周辺部より前記入力蛍光スクリー
ンの中心部で小さいものである。
【0034】
【作用】請求項1記載のX線イメージ管は、入力蛍光ス
クリーンの光吸収物質の濃度は、X線が入射される基板
側から厚さ方向に対して低くなっているため、低エネル
ギーのX線が入射された場合、発光の大部分は基板付近
の光吸収物質の濃度の高い部分で起こり、解像を悪化さ
せる横方向の散乱はほとんど吸収されるので、簡単な構
成で、分解能が向上し、散乱による解像の悪化は厚さ方
向のX線の出力側の発光ほど少ないため、X線の出力側
近くの光吸収物質の濃度を低くして、輝度の低下を抑
え、出力輝度分布が一定になる。
【0035】請求項2記載のX線イメージ管は、入力蛍
光スクリーンは、基板側に位置する下地層と、この下地
層の基板と反対面に位置する本層とからなり、下地層の
光吸収物質の濃度は、本層の光吸収物質の濃度より低い
ため、簡単な構成で、分解能が向上する。
【0036】請求項3記載のX線イメージ管は、入力蛍
光スクリーンの光吸収物質の濃度は、入力蛍光スクリー
ンの中心部で入力蛍光スクリーンの周辺部より高いた
め、X線の入力の少ない周辺部での光吸収が小さくなる
ので、簡単な構成で、出力輝度分布が一定になる。
【0037】請求項4記載のX線イメージ管は、入力蛍
光スクリーンの光吸収物質の濃度は、入力蛍光スクリー
ンの周辺部より入力蛍光スクリーンの中心部で高く、か
つ、入力蛍光スクリーンの膜厚は、入力蛍光スクリーン
の周辺部より入力蛍光スクリーンの中心部で小さいた
め、X線のエネルギーの違いによりそれぞれX線を吸収
し、簡単な構成で、出力輝度分布が一定になり、分解能
が向上する。
【0038】
【実施例】以下、本発明のX線イメージ管の一実施例を
図面を参照して説明する。
【0039】図1に示すように、基体としてのたとえば
アルミニウム(Al)基板11上に面方向にファイバ柱状
の多数の柱状結晶のファイバ体12a からなるよう化セシ
ウム(CsI)の不連続蛍光体層12を形成し、この不連
続蛍光体層12上によう化セシウムの連続蛍光体層13を積
層させ、これら不連続蛍光体層12および連続蛍光体層13
にて入力蛍光スクリーン14が形成され、この入力蛍光ス
クリーン14の表面に光電面15が連続して形成されてい
る。
【0040】なお、アルミニウム基板11としては柱状結
晶を支持するため、別に他の物質たとえばチタン(T
i)や、場合によってはベリリウム(Be)などのX線
透過率の小さいものでもよい。
【0041】そして、不連続蛍光体層12には、平均濃度
0.1wt%以下、より好ましくは0.01〜0.1w
t%の光吸収物質となるよう化銅(CuI)が混入さ
れ、透明度は低くなっており、また、このよう化銅はア
ルミニウム基板11側で濃度が高く、連続蛍光体層13側に
向かうに従い、濃度が低くなっている。さらに、不連続
蛍光体層12の結晶中の表面には、酸化銅(CuO)の黒
色膜16が形成されている。
【0042】また、不連続蛍光体層12および連続蛍光体
層13には、タリウムイオン(Tl+)、ナトリウムイオ
ン(Na+ )、カリウムイオン(K+ )が発光効率向上
のため、適当な濃度含有されている。
【0043】なお、隣接するファイバ体12a の間隔、す
なわち光学的界面の間隔は、0.1〜40μmが好まし
く、より好ましくは0.1〜3μmであり、ファイバ体
12aの径は40μm以下が好ましく、より好ましくは5
〜15μmである。なお、ファイバ体12a の間隔は、
0.1μmより狭くなると、数10オングストロームの
酸化膜でも形成が困難となる。
【0044】次に、上記X線イメージ管の製造装置を図
2を参照して説明する。
【0045】図2は、入力蛍光スクリーンの製造装置で
ある。21は真空槽で、この真空槽21の内部には、アルミ
ニウム基板11が載置されている。そして、このアルミニ
ウム基板11の上部には加熱ヒータ22、下部にはボート2
3,24がそれぞれ配設されている。また、一方のボート2
3には、0.1wt%のよう化銅(CuI)が混入され
たよう化セシウム(CsI)が、他方のボート24には、
よう化セシウム(CsI)が入れられている。
【0046】そして、まず、加熱ヒータ22でアルミニウ
ム基板11を180℃に加熱し、真空槽21内の圧力を4.
5×10-1Paに保った状態で、一方のボート23を加熱
し、アルミニウム基板11に膜圧が150〜450μmの
柱状の不連続蛍光体層12を形成する。この不連続蛍光体
層12は、よう化銅がアルミニウム基板11側で濃度が高
く、連続蛍光体層13側に向かうに従い濃度が低くなるよ
うに形成する。そして、この状態で、引き続き、アルミ
ニウム基板11を180℃に加熱し、真空槽21の圧力を1
-3Pa以下の状態にして、他方のボート24を加熱し、
不連続蛍光体層12上に約20μmの厚さの連続蛍光体層
13を形成する。そうして、これら不連続蛍光体層12およ
び連続蛍光体層13が形成されたアルミニウム基板11を、
空気中にさらし200℃で2時間ベーキングする。
【0047】さらに、作用について説明する。
【0048】X線イメージ管の入力蛍光スクリーンを構
成する物質であるよう化セシウム(CsI)は、イオン
結晶であるから、格子中のセシウムイオン(Cs+ )も
しくはよう素イオン(I- )は、容易に他の化学種イオ
ンと置き変わることができる。たとえば、入力蛍光スク
リーンにおいては、発光効率を上げるために、化学式1
に示すように、タリウムイオン(Tl+ )、ナトリウム
イオン(Na+ )を微量添加している。
【0049】
【化1】 この性質を利用すると、結晶格子を保ったまま、不連続
蛍光体層12に光吸収物質を混入することができる。これ
は、多価イオンでも可能であり、添加量が少ない場合は
不連続蛍光体層12の蛍光体本来の物性を損ねることは少
ない。また、たとえば2価の鉄イオン(Fe++)の場合
は、化学式2に示すようになる。
【0050】
【化2】 このようにして、ある種の化学種のイオンが混入した結
晶には、純よう化セシウム(CsI)もしくはナトリウ
ムイオン(Na+ )が加えられたよう化セシウム(Cs
I)にはなかった光吸収特性があり、もともとは、発光
に対してほぼ透明であった入力蛍光スクリーン14も光透
過率が小さくなる。
【0051】したがって、発光が不連続蛍光体層12の結
晶方向から外れた方向に向かう光ほど光電面15に到達す
る距離が長くなり、入力蛍光スクリーン14の透過率が小
さいほど、光電面15上で発光点から離れたところに到達
する減衰は大きくなり、入力蛍光スクリーン14の分解能
は向上する。
【0052】また、結晶中に注入する物質を選択するこ
とにより、混入物質の分布を変化させることができる。
たとえば均一に銅イオン(Cu+ )が混入されたよう化
銅(CuI)の結晶を酸素雰囲気中で加熱すると、化学
式3および化学式4のように不連続蛍光体層12の結晶の
表面付近、すなわち光学的界面には、銅(Cu)の酸化
物が析出する。
【0053】
【化3】
【化4】 なお、このときセシウムイオン(Cs+ )は、銅イオン
(Cu+ )よりも酸素(O2 )に対して不活性なのでセ
シウム(Cs)の酸化物はできにくく、不連続蛍光体層
12の蛍光膜の劣化は少ない。
【0054】さらに、不連続蛍光体層12の表面付近の酸
化反応が進むにつれて銅イオン(Cu+ )が欠乏するも
のの、加熱によりバルク中の銅イオン(Cu+ )が拡散
して補充されるから、反応はさらに進み、不連続蛍光体
層12の結晶表面、すなわち光学的界面に近いほど高濃度
の酸化銅(CuO)の層が形成される。
【0055】このような反応により精製された入力蛍光
スクリーン14は、結晶バルク中の光吸収物質である光吸
収イオンの濃度が低くなり、不連続蛍光体層12の蛍光体
の発光効率の低下を最小限に抑えることができ、さら
に、光吸収物質である銅のような酸化物を選択すると、
光減衰性の機能も同等に保つことができる。
【0056】また、不連続蛍光体層12の光吸収物質の濃
度は、X線が入射されるアルミニウム基板11側から連続
蛍光体層13に向かうに従って低くなっているため、低エ
ネルギーのX線が入射された場合、発光の大部分はアル
ミニウム基板11付近の光吸収物質の濃度の高い部分で起
こり、解像を悪化させる横方向の散乱はほとんど吸収さ
れるので、分解能が向上する。さらに、散乱による解像
の悪化は光電面15側の発光ほど少ないため、X線の出力
側である光電面15側近くの光吸収物質の濃度を低くし
て、輝度の低下を抑え、出力輝度分布が一定になる。
【0057】また、黒色膜16が形成される反応が行なわ
れる場合の、十分な反応速度を得るための温度は、よう
化銅が酸化され酸化銅が形成される際のよう素ガス(I
2 )の量をモニターすることにより求めることができ
る。
【0058】すなわち、図4に示すように、横軸に時
間、縦軸によう素ガスの発生総量を採り、測定値をプロ
ットしていくと、温度を280℃にまで上昇させたとき
に、急激によう素ガスの量が多くなるので、280℃の
温度が化学式3、化学式4の反応を起こすのに十分な温
度といえる。
【0059】そして、上述のような結晶中の不純物を酸
素中で加熱することにより析出させることについては、
Journal of Crystal Growth 7 (1970)の259頁〜26
0頁の「GROWTH OF Mn2 3 THIN FILMS BY IMPURITY
DIFFUSION FROM VOLUME TOSURFACE IN IMPURE NaCl CR
YSTALS 」などに記載されている。
【0060】したがって、上記実施例では、よう化セシ
ウム(CsI)粉末によう化銅粉末を混合したものを真
空蒸着してファイバ体12a からなる不連続蛍光体層12を
形成し、次に、よう化セシウム(CsI)粉末を蒸着し
て連続蛍光体層13を形成し、その後、空気中で280℃
で5時間加熱することにより、ファイバ体12a の光学的
界面に高濃度の酸化銅(CuO)の黒色膜16を容易に形
成することが可能である。この場合、連続蛍光体層13と
接するファイバ体12a の表面は空気と接していないの
で、高濃度の酸化銅(CuO)の黒色膜16は形成されて
いない。
【0061】一方、加熱条件および結晶の寸法と、結晶
表面への不純物の析出状態との関係は、Revista Mexica
n de Fisica 30 (4) (1984) 685頁〜692頁に記載
されている。この記載によると、加熱時間をt、結晶寸
法をlとすると、t/l2 が析出の進行状況を示すパラ
メーターとなっている。言い換えると、結晶寸法をn倍
にすると、結晶表面に不純物が析出するに必要な加熱時
間はn2 にしなければならないことを示しており、結晶
の中の不純物が表面に到達する距離が長くなることが原
因である。
【0062】このようなことから、不連続蛍光体層12を
構成するファイバ体12a の径が大きい場合には、極端に
長い加熱時間が必要である。加熱時間が長くなると、量
産性に劣るだけでなく、熱により結晶がくずれた構造と
なる。実際に様々な径のファイバ体12a を製作したとこ
ろ、ファイバ体12a の径が50μmを越えると、24時
間の加熱で酸化銅の黒色膜16の量は極端に少なくなるこ
とが判明した。
【0063】以上を考慮すると、空気中での加熱温度は
60〜350℃が好ましく、より好ましくは260〜3
00℃であり、加熱時間は24時間以下が好ましく、よ
り好ましくは3〜5時間である。
【0064】また、隣接するファイバ体12a の光学的界
面間の間隔は、加熱工程において酸素供給源となってい
る。したがって、この間隔が狭すぎると、加熱の途中で
酸素量が不足し、反応速度で遅くなる。実際に作成した
膜では、幅はすべて0.3μm以上であり、問題はなか
ったが、0.1μmより狭くなると、数10オングスト
ロームの酸化膜でも形成が困難となる。
【0065】次に、上記実施例の効果について、次に示
す3種類の実施例を用いた場合について説明する。
【0066】サンプルD:従来の入力蛍光スクリーンを
260℃で真空加温したもの サンプルE:0.02wt%のよう化銅を混入した入力
蛍光スクリーンを実施例に示す方法で作成したもの サンプルF:0.02wt%のよう化銅を混入した入力
蛍光スクリーンを実施例に示す方法で作成し、さらに、
260℃で真空加温したもの なお、サンプルDの260℃での真空加温は、蛍光体の
活性のための工程である。
【0067】また、サンプルEは空気中での加温の工程
を省略したもので、サンプルFは空気中で加温すること
により、酸化銅が形成され灰色に変色している。
【0068】そして、サンプルFは、図5に示すよう
に、CTF曲線はサンプルDに比べて大幅に向上してい
る。また、サンプルFは、外観が灰色であるにもかかわ
らず、発光量は図示しないがサンプルDの36%に達し
ている。この外観が灰色であるにもかかわらず発光量の
低下が少ないことについては、バルクの結晶中の銅イオ
ンが含まれず、図6に示すように、透明であることに起
因していると考えられる。
【0069】逆に、サンプルEは、CTF曲線はサンプ
ルDに比べて差異がない。しかも、サンプルEは、透明
にもかかわらず、バルクの結晶中に銅イオンが多く含ま
れているため、蛍光体CsI/Na+ の発光を妨げ、発
光量は図示しないがサンプルDの29%にまで低下し
た。
【0070】上述のように製造された入力蛍光スクリー
ンを入力視野6インチ、出力径直径15mmのX線イメ
ージ管に装着したら、図7に示すようにCTF曲線が向
上する効果が得られた。このとき、スクリーン単体の実
験のときと同様に、サンプルFはサンプルDに比べ、輝
度((cd/m2 )/mRisec )の低下が認められる
が、輝度の低下を防止するためには、光吸収材の濃度を
低下させるか、光吸収材を含む部分を入力蛍光スクリー
ンの厚さ方向の一部に限定すればよく、X線イメージ管
の各用途に必要な輝度に応じて濃度、構造を検討すれば
よい。
【0071】なお、上記実施例のように、0.02wt
%のよう化銅の混入では、十分な透明度が得られてお
り、光電面15からはなれた部分の発光にも寄与してお
り、X線イメージ管の重要な性能ファクターであり、入
射X線信号をできるだけ多く有効な信号として取り出す
能力の劣化は少ない。
【0072】上述のように、一旦、結晶中に光吸収材の
元となるイオンを混入させ、後の酸化処理により光吸収
材の元になるものを結晶界面に析出させる一連の工程
は、高分解性能が要求されるX線イメージ管のファイバ
構造を持った入力蛍光スクリーン14の形成工程に組み合
わせることにより、絶大な効果を発揮し、なおかつ、非
常に簡単な所望の構造が得られるので、工業的生産手段
としても有用である。
【0073】また、他の実施例として、酸化銅に代えて
酸化鉄を用いた構成について説明する。
【0074】そして、図1に示す実施例の不連続蛍光体
層12に、鉄に代えて平均濃度0.1wt%以下、より好
ましくは0.01〜0.1wt%のよう化鉄(Fe
2 )を混入し、不連続蛍光体層12の各ファイバ体12a
の結晶中の表面に、鉄の酸化物である酸化鉄(Fe2
3 )からなる黒色膜16を被覆したものである。
【0075】なお、鉄という元素は、蛍光体を主として
構成するたとえばナトリウム付活よう化セシウム(Cs
I:Na)などの元素イオンよりも、酸素に対して活性
であるとともに、連続蛍光体層13の結晶中で金属イオン
として存在する場合よりも、結晶外で酸化物として存在
する場合の方が、効果的に蛍光体の発光を吸収するもの
である。
【0076】なお、同様に、隣接するファイバ体12a の
間隔、すなわち光学的界面の間隔は、0.1〜40μm
が好ましく、より好ましくは0.1〜3μmであり、フ
ァイバ体12a の径は40μm以下が好ましく、より好ま
しくは5〜15μmである。
【0077】このように、鉄を用いる場合にも図2に示
す入力蛍光スクリーンの製造装置を使用する。
【0078】このように鉄を用いる場合、一方のボート
23には、たとえば0.02wt%のよう化鉄(Fe
2 )が混入されたよう化セシウム(CsI)および微
量のよう化ナトリウム(NaI)が、他方のボート24に
は、よう化セシウム(CsI)および微量のよう化ナト
リウム(NaI)が入れられている。そして、よう化銅
を含んだ不連続蛍光体層12および連続蛍光体層13と同様
の動作を行ない、不連続蛍光体層12は、よう化鉄がアル
ミニウム基板11側で濃度が高く、連続蛍光体層13側に向
かうに従い濃度が低くなるように形成する。最後に、ア
ルミニウム基板11を空気中にさらし280℃で5時間ベ
ーキングして形成する。
【0079】上述のように製造されたアルミニウム基板
11に形成された入力蛍光スクリーン14を入力視野9イン
チ、出力径直径25mmのX線イメージ管に装着した
ら、図3に示す効果が得られた。すなわち、上記入力蛍
光スクリーンを用いたX線イメージ管の視野サイズ9イ
ンチのときのCTF値Aは、従来のX線イメージ管の視
野サイズを4.5インチに拡大したCTF値Bとほぼ同
様であり、従来のX線イメージ管の視野サイズを同じ9
インチにしたときのCTF値Cに比べて、大きく向上し
た。
【0080】さらに、上記入力蛍光スクリーン14の構造
が得られる理由について説明する。
【0081】X線イメージ管の入力蛍光スクリーン14を
構成する物質であるよう化セシウム(CsI)は、イオ
ン結晶であるから、格子中のセシウムイオン(Cs+
もしくはよう素イオン(I- )は、容易に他の化学種イ
オンと置き変わることができる。たとえば、入力蛍光ス
クリーン14においては、発光効率を上げるために、化学
式5に示すように、タリウムイオン(Tl+ )、ナトリ
ウムイオン(Na+ )を微量添加している。
【0082】
【化5】 この性質を利用すると、結晶格子を保ったまま、不連続
蛍光体層12に光吸収物質を混入することができる。これ
は、多価イオンでも可能であり、添加量が少ない場合は
不連続蛍光体層12の蛍光体本来の物性を損ねることは少
ない。また、たとえば2価の鉄イオン(Fe++)の場合
は、化学式6に示すようになる。
【0083】
【化6】 なお、このような構造の結晶は、よう化セシウムによう
化鉄の粉末同士を混ぜ合わせたものを真空蒸着すること
により得られる。
【0084】また、鉄イオン(Fe++)は、蛍光体を構
成するセシウムイオン(Cs+ )およびよう素イオン
(I- )に比べて酸素(O2 )に対して活性であるか
ら、空気中にさらすことにより酸化させることができ
る。
【0085】このとき
【化7】 の反応式となる。そして、酸素は、不連続蛍光体層12の
内部より、光学的界面に多く供給されるため、光学的界
面を中心に反応が生ずる。
【0086】さらに、不連続蛍光体層12の表面付近の酸
化反応が進むにつれて鉄イオン(Fe++)が欠乏するも
のの、加熱によりバルク中の鉄イオン(Fe++)が拡散
して補充されるから、反応はさらに進み、不連続蛍光体
層12の結晶表面、すなわち光学的界面に近いほど高濃度
の酸化鉄(Fe2 3 )の黒色膜16が形成される。
【0087】また、よう化セシウム(CsI)に含有す
る光吸収物質としては、鉄イオン(Fe++)または銅イ
オン(Cu+ )以外の物質として、クロム(Cr)、マ
グネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、水銀
(Hg)のように鉄(Fe)に近い化学的性質を示し、
よう化セシウム(CsI)の結晶格子中に取り込まれる
光吸収物質なら、1個もしくは複数個の元素などを用い
ても同様の効果が得られる。なお、蒸着プロセスにおい
て、よう化セシウム(CsI)に近い蒸気圧で、同時に
蒸発するものである必要はある。
【0088】さらに、酸素(O2 )以外のたとえば窒素
ガス(N2 )、アンモニアガスなどの気体雰囲気中で着
色する物質でも有効である。なお、窒素を含む雰囲気中
で熱処理を行なう場合には、クロム、鉄などを使用可能
である。
【0089】またさらに、連続蛍光体層13は光電面15に
近いため、光電面15の変質を避けるため、鉄(Fe)の
ような光吸収物質を含まないものがよい場合もある。
【0090】以上説明したX線イメージ管は、X線管お
よび撮像装置と組み合わせて、X線撮影システムとして
使用することが可能で、たとえば図8は、透視系および
間接撮影系X線撮影システムの一例を示す図である。
【0091】図8に示すように、X線管31に対して、X
線イメージ管32を配置し、このX線イメージ管32のX線
グリッド33に対向して被写体34を配置する。一方、X線
イメージ管32の出力側には、ハーフミラー35を配置し、
このハーフミラー35によりテレビジョンレンズ36を介し
てテレビジョンカメラ37に送られテレビジョンモニタ38
に映像できるようにするとともに、シネカメラ39および
スポットカメラ40に映像されるようになっている。
【0092】また、X線イメージ管32は、図9に示すよ
うに、真空外囲器41の一面側に形成された入力窓42側の
内部側に、アルミニウム基板11に不連続蛍光体層12およ
び不連続蛍光体層13からなる入力蛍光スクリーン14が形
成されている。さらに、真空外囲器41の入力窓42と反対
側には、出力面43が形成され、この出力面43の内面側に
は陽極44が設けられている。そして、入力蛍光スクリー
ン14と陽極44間には、真空外囲器41の内面に沿って集束
電極45が複数形成されている。
【0093】そして、X線管31からX線が被写体34に照
射され、被写体34を透過してX線透視像が形成される。
このX線透視像は、X線グリッド33を通り、散乱X線が
除去されて、X線イメージ管32に入射する。また、X線
イメージ管32は、入力窓42からX線を入射し、入力蛍光
スクリーン14にて変換し、集束電極45にて集束し、陽極
44により出力面43に可視光像に変換して出力する。そし
て、透視系の場合にはテレビジョンレンズ36を透過して
テレビジョンカメラ37により撮像され、テレビジョンモ
ニタ38上にX線透視像が出力される。間接撮影系の場合
にはハーフミラー35により、光量の90%をシネカメラ
39に送り込み、残りの10%をテレビジョンカメラ37に
送ってテレビジョンモニタ38上にX線透視像が出力され
る。また、必要に応じて、ハーフミラー35が反転して9
0%の光がスポットカメラ40の側に送り込まれ、ロール
フィルムまたはカットフィルム上にX線透視像を印画す
る。
【0094】このように、上記実施例のX線イメージ管
によれば、高感度撮像素子を組み合わせることによりS
/N比は従来と同等で、かつ高分解性能を有することが
できる。
【0095】次に、他の実施例を図10を参照して説明
する。
【0096】この図10に示す実施例は、図1に示す実
施例において、不連続蛍光体層12をアルミニウム基板11
側に形成された膜厚約20μmの下地層51と、この下地
層51の上方に延長するようにほぼ同一径で形成された膜
厚約360μmの本層52とから構成され、この不連続蛍
光体層12の表面に、膜厚約20μmの連続蛍光体層13を
形成している。そして、下地層51の光吸収物質の濃度
を、本層52の光吸収物質の濃度より低くしている。
【0097】次に、上記X線イメージ管の製造装置を図
11を参照して説明する。
【0098】この図11に示す入力蛍光スクリーン14の
製造装置は、真空槽61の内部には、アルミニウム基板11
が載置されている。そして、このアルミニウム基板11の
上部には加熱ヒータ62、下部にはボート63,64,65がそ
れぞれ配設されている。また、たとえば一端のボート63
にはCsI/Na+ が、中央のボート64にはCsI/N
+ +0.05wt%CuIが、他端のボート65にはC
sI/Na+ が、約1:18:1で入れられている。
【0099】そして、真空槽61内の圧力を×10-3Pa
に保った状態で、加熱ヒータ62でアルミニウム基板11を
150℃に加熱し、外部から窒素ガスを導入し真空槽61
内の圧力を10-1Paに保つ。この状態で、一端のボー
ト63を加熱し、アルミニウム基板11に膜圧が約20μm
のCsI/Na+ の柱状の下地層51を形成する。次に、
中央のボート64を加熱し、下地層51上に、膜厚が約36
0μmのCsI/Na+ ・Cu+ の本層52を形成する。
そして、窒素ガスの導入を中止し、再び真空槽21の圧力
を10-3Pa以下の状態にして、他端のボート65を加熱
し、不連続蛍光体層12の本層52上に約20μmの厚さの
CsI/Na+ の連続蛍光体層13を形成する。また、こ
の真空に保った状態で、250℃に加温し、蛍光体結晶
の一部の銅イオンはCu+ を含まない下地層51に移動
し、蒸着直後の濃度の偏りが緩和される。そうして、こ
れら不連続蛍光体層12および連続蛍光体層13が形成され
たアルミニウム基板11を、空気中にさらし、280℃で
5時間アニールして、図10に示す下地層51および本層
52からなる不連続蛍光体層12を有する入力蛍光スクリー
ン14が形成される。
【0100】したがって、不純物の濃度は、本層52が最
も高く、続いて下地層51、そして、アルミニウム基板11
から最も遠い連続蛍光体層13では最も低くなっている。
【0101】また、上記図10に示す実施例の場合、従
来の混合蒸着法を用いた場合と異なり、CsIよりCu
Iの蒸気圧が高いことにより、CuIの方が早く蒸発
し、むらが生ずることを防ぐことができる。また、アル
ミニウム基板11に接する下地層51にCsIの不純物が存
在しないので、クラックや剥がれを生じにくい。
【0102】さらに、従来の不純物を添加しなかった場
合の入力面と同等の面品位が得られ、かつ、不純物の光
吸収性により、分解能特性が向上した。たとえば、本層
52にCuIを0.05%混入したとき、20lpにおけ
るMTFは従来の1.7倍、0.05%混入したときは
2.1倍それぞれ向上した。
【0103】次に、また他の実施例を図12を参照して
説明する。
【0104】この図12に示す実施例は、図1に示す実
施例において、不連続蛍光体層12の光吸収層となる黒色
膜16を、入力蛍光スクリーン14の中央部で増加させ、中
央部から周辺部に向かうに従って低下させ、X線が最も
多く入力される入力蛍光スクリーン14の中央部で最も光
を吸収し、X線があまり多く入力されない入力蛍光スク
リーン14の周辺部では光の吸収を抑え、入力蛍光スクリ
ーン14の全体での輝度分布を一定にする。
【0105】次に、上記図12に示すX線イメージ管の
製造装置に光吸収物質としてCuIを用いた場合を例と
して図13を参照して説明する。
【0106】この図13に示す入力蛍光スクリーン14の
製造装置は、真空槽71の内部に、アルミニウム基板11が
載置されている。そして、このアルミニウム基板11の上
部には加熱ヒータ72、下部にはボート73,74,75,76が
それぞれ配設されている。また、上部の両端に位置する
ボート73,74にはCsIが入れられており、これらボー
ト73,74の下方には、遮蔽板77,78が配設され、これら
遮蔽板77,78間には、開口部79が設けられている。ま
た、開口部79の下方に位置する中央のボート76には光吸
収物質となる0.02wt%のよう化銅が混入されたよ
うかセシウムが入れられている。さらに、ボート75は、
遮蔽板77の下部、および、開口部79間を移動するように
構成され、このボート75には、連続蛍光体層13を形成す
るよう化セシウムが入れられている。
【0107】そして、不連続蛍光体層12を形成する場合
には、遮蔽板77,78により、ボート76から蒸発されるよ
う化銅はほぼ入力蛍光スクリーン14の中心に集まり周辺
に向けて低くなるため、光吸収物質は入力蛍光スクリー
ン14の中央から周辺に向けて低くなる。
【0108】さらに、連続蛍光体層13を形成する場合に
は、ボート76を開口部79まで移動させ、約20μmの厚
さに形成し、膜厚が約400μmの入力蛍光スクリーン
14を形成する。
【0109】ここで、相対輝度と光吸収係数との関係
は、図14に示すような関係となり、光吸収係数が小さ
い場合には、相対輝度が上昇する。
【0110】そして、従来は、入力蛍光スクリーン14の
中心部と周辺部との光吸収係数が一定のため、図17に
示すように、入力蛍光スクリーン14の中心部で輝度が高
くなり、周辺部で輝度が低くなり、スクリーン全体とし
ては輝度が一定ではなかった。
【0111】しかしながら、図12に示す実施例では、
図15に示すように、入力蛍光スクリーン14の中心部
で、周辺部より光吸収係数を高くしたため、図16に示
すように、入力蛍光スクリーン14のスクリーン全体とし
ての輝度が一定になる。すなわち、入力蛍光スクリーン
14の不連続蛍光体層12の黒色膜16を周辺部から中央部に
向かうに従って増加させることにより、入力蛍光スクリ
ーン14の中心部では、不連続蛍光体層12の横方向への散
乱光を周辺部より中心部でより多く吸収させる。したが
って、入力蛍光スクリーン14全体での輝度が均一化する
とともに、周辺部の蛍光体成長核を変化させる必要がな
いため、解像度も向上する。
【0112】さらに、入力蛍光スクリーン14の膜厚を増
加させないため、式1に示すような膜厚の増加に対して
増加するX線吸収量の増加はないので、解像度の低下も
生じない。
【0113】
【式1】 なお、ΦはX線吸収量、φはX線吸収係数、Tは入力蛍
光スクリーンの膜厚である。
【0114】次に、さらに他の実施例を図18を参照し
て説明する。
【0115】この図18に示す実施例は、図1に示す実
施例において、着色層である不連続蛍光体層12の光吸収
層となる黒色膜16を入力蛍光スクリーン14の中心部で濃
くし、周辺部に向かうに従い薄くするとともに、X線が
実際に通る道程である入力蛍光スクリーン14の実効膜厚
を中央部から周辺部に向けて厚く形成したものである。
【0116】この図18に示すような構成にすれば、従
来は図22に示すように、たとえばX線管の配置される
位置Xと入力蛍光スクリーン14の位置Oとの距離を10
00mmとし、アルミニウム基板11の極率半径Rを17
0mmとし、アルミニウム基板11および入力蛍光スクリ
ーン14の膜厚をd0 とすると、X線管からみた入力蛍光
スクリーン14の膜厚は、中央部でd1 、周辺部でd2
なり、d2 はd1 の約1.07倍となり、中央部より周
辺部の実効膜厚が厚くなる。そして、この場合、X線の
発光効率は、図19に示すように、周辺部のほうが中心
部より、X線エネルギーが高い所でピークを持つ。した
がって、中心部と周辺部とではエネルギー特性の違いに
よる輝度の違いが生ずる。
【0117】ここで、X線吸収量は、式1に入射X線量
子数N0 およびX線のエネルギーhνを加えて考える
と、式2に示すようになる。
【0118】
【式2】 したがって、曲率半径が170mmの球面のアルミニウ
ム基板11では、長さL1 が29mmとなるので、X線管
からみた実効膜厚は、中心部の膜厚d1 は膜厚d0 と同
一の膜厚となり、周辺部の膜厚d2 は膜厚d0 の1.0
7倍となり、膜厚d0 を400μmの場合には、周辺部
の膜厚d2 は374μmであればよい。
【0119】そして、このように、実効膜厚を中心部と
周辺部とで異ならせることにより、X線イメージ管のエ
ネルギー特性を変化させることができる。
【0120】また、エネルギーの低いX線量子の場合に
は、図20に示すように、着色層である不連続蛍光体層
12で発光される割合が大きいので、光吸収物質の割合が
小さいと、さらに小さくなる。
【0121】一方、エネルギーの高いX線量子の場合に
は、図21に示すように、無着色層である連続蛍光体層
13で発光される割合が大きいので、光吸収物質の割合が
大きいと、さらに小さくなる。
【0122】したがって、入力蛍光スクリーン14の中心
部付近の着色度を大きく、周辺部の光吸収物質による着
色度を小さくすることにより、中心部では高エネルギー
による輝度が高く、周辺部では低いこととなり、エネル
ギー特性の差が生じ、実効膜厚を一定にすることによる
エネルギー特性の変化を打ち消す。
【0123】なお、いずれの実施例の場合にも、光吸収
物質としてよう化銅、その他前記に基づく任意の物質を
用いればよい。
【0124】
【発明の効果】請求項1記載のX線イメージ管によれ
ば、入力蛍光スクリーンの光吸収物質の濃度は、X線が
入射される基板側から厚さ方向に対して低くなっている
ため、低エネルギーのX線が入射された場合、発光の大
部分は基板付近の光吸収物質の濃度の高い部分で起こ
り、解像を悪化させる横方向の散乱はほとんど吸収され
るので、簡単な構成で、分解能が向上し、散乱による解
像の悪化は厚さ方向のX線の出力側の発光ほど少ないた
め、X線の出力側近くの光吸収物質の濃度を低くして、
輝度の低下を抑え、出力輝度分布を一定にできる。
【0125】請求項2記載のX線イメージ管によれば、
入力蛍光スクリーンは、基板側に位置する下地層と、こ
の下地層の基板と反対面に位置する本層とからなり、下
地層の光吸収物質の濃度は、本層の光吸収物質の濃度よ
り低いため、簡単な構成で、分解能を向上できる。
【0126】請求項3記載のX線イメージ管によれば、
入力蛍光スクリーンの光吸収物質の濃度は、入力蛍光ス
クリーンの中心部で入力蛍光スクリーンの周辺部より高
いため、X線の入力の少ない周辺部での光吸収が小さく
なるので、簡単な構成で、出力輝度分布を一定にでき
る。
【0127】請求項4記載のX線イメージ管によれば、
入力蛍光スクリーンの光吸収物質の濃度は、入力蛍光ス
クリーンの周辺部より入力蛍光スクリーンの中心部で高
く、かつ、入力蛍光スクリーンの膜厚は、入力蛍光スク
リーンの周辺部より入力蛍光スクリーンの中心部で小さ
いため、X線のエネルギーの違いを利用して、簡単な構
成で、出力輝度分布が一定になり、分解能を向上でき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のX線イメージ管の入力蛍光スクリーン
を示す断面図である。
【図2】同上X線イメージ管の入力蛍光スクリーンの製
造装置を示す説明図である。
【図3】本発明により製造された入力蛍光スクリーンを
組み込んだイメージ管のCTF値を示すグラフである。
【図4】同上入力面のアニール工程中のよう素ガス発生
総量の時間との関係を示すグラフである。
【図5】同上X線イメージ管の入力蛍光スクリーンと従
来例の入力蛍光スクリーン単体でのCTF値を示すグラ
フである。
【図6】同上入力面の分光透過光量を示すグラフであ
る。
【図7】本発明により製造された入力蛍光スクリーンを
組み込んだイメージ管のCTF値を示すグラフである。
【図8】同上X線イメージ管を用いたシステムを示す説
明図である。
【図9】同上X線イメージ管を示す説明図である。
【図10】同上X線イメージ管の他の実施例の入力蛍光
スクリーンを示す断面図である。
【図11】同上X線イメージ管の入力蛍光スクリーンの
製造装置を示す説明図である。
【図12】同上X線イメージ管のまた他の実施例の入力
蛍光スクリーンを示す断面図である。
【図13】同上X線イメージ管の入力蛍光スクリーンの
製造装置を示す説明図である。
【図14】同上相対輝度と光吸収係数との関係を示すグ
ラフである。
【図15】同上光吸収係数と入力蛍光スクリーンの位置
との関係を示すグラフである。
【図16】同上相対輝度と入力蛍光スクリーンの位置と
の関係を示すグラフである。
【図17】従来例の相対輝度と入力蛍光スクリーンの位
置との関係を示すグラフである。
【図18】本発明の他の実施例のX線イメージ管の他の
実施例の実効膜厚を示す説明図である。
【図19】同上中心部と周辺部とにおけるX線エネルギ
ーと輝度との関係を示すグラフである。
【図20】同上X線量子の低エネルギーの場合の発光状
態を示す説明図である。
【図21】同上X線量子の高エネルギーの場合の発光状
態を示す説明図である。
【図22】同上実効膜厚の関係を示す説明図である。
【図23】従来例のX線イメージ管を示す説明図であ
る。
【図24】入射角と反射との関係を示す説明図である。
【符号の説明】
11 基体としてのアルミニウム基板 14 入力蛍光スクリーン
フロントページの続き (72)発明者 斉藤 啓一 栃木県大田原市下石上1385番の1 株式会 社東芝那須電子管工場内 (72)発明者 山下 紀代美 栃木県大田原市下石上1385番の1 株式会 社東芝那須電子管工場内 (72)発明者 塚田 和順 神奈川県川崎市川崎区日進町7番地1 東 芝電子エンジニアリング株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基体と、この基体の上に形成されX線の
    入射により蛍光体が発する光を吸収する光吸収物質を含
    有した入力蛍光スクリーンを具備したX線イメージ管に
    おいて、 前記入力蛍光スクリーンの光吸収物質の濃度は、X線が
    入射される前記基板側から厚さ方向に対して低くなって
    いることを特徴としたX線イメージ管。
  2. 【請求項2】 基体と、この基体の上に形成されX線の
    入射により蛍光体が発する光を吸収する光吸収物質を含
    有した入力蛍光スクリーンとを具備したX線イメージ管
    において、 前記入力蛍光スクリーンは、前記基板側に位置する下地
    層と、この下地層の前記基板と反対面に位置する本層と
    からなり、 前記下地層の光吸収物質の濃度は、前記本層の光吸収物
    質の濃度より低いことを特徴としたX線イメージ管。
  3. 【請求項3】 基体と、この基体の上に形成されX線の
    入射により蛍光体が発する光を吸収する光吸収物質を含
    有した入力蛍光スクリーンとを具備したX線イメージ管
    において、 前記入力蛍光スクリーンの光吸収物質の濃度は、前記入
    力蛍光スクリーンの中心部で前記入力蛍光スクリーンの
    周辺部より高いことを特徴としたX線イメージ管。
  4. 【請求項4】 基体と、この基体の上に形成されX線の
    入射により蛍光体が発する光を吸収する光吸収物質を含
    有した入力蛍光スクリーンとを具備したX線イメージ管
    において、 前記入力蛍光スクリーンの光吸収物質の濃度は、前記入
    力蛍光スクリーンの周辺部より前記入力蛍光スクリーン
    の中心部で高く、かつ、前記入力蛍光スクリーンの膜厚
    は、前記入力蛍光スクリーンの周辺部より前記入力蛍光
    スクリーンの中心部で小さいことを特徴としたX線イメ
    ージ管。
JP19117492A 1992-07-17 1992-07-17 X線イメージ管 Pending JPH0636715A (ja)

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