JPH0636716A - X線イメージ管およびその製造方法 - Google Patents

X線イメージ管およびその製造方法

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JPH0636716A
JPH0636716A JP19117792A JP19117792A JPH0636716A JP H0636716 A JPH0636716 A JP H0636716A JP 19117792 A JP19117792 A JP 19117792A JP 19117792 A JP19117792 A JP 19117792A JP H0636716 A JPH0636716 A JP H0636716A
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JP
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light
fluorescent screen
ray image
input
discontinuous
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JP19117792A
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English (en)
Inventor
Akitoshi Fujita
晃年 藤田
Atsuya Yoshida
篤也 吉田
Shirofumi Yamagishi
城文 山岸
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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Publication date
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  • Formation Of Various Coating Films On Cathode Ray Tubes And Lamps (AREA)
  • Image-Pickup Tubes, Image-Amplification Tubes, And Storage Tubes (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 簡単な構成で、分解能を向上させることがで
きるX線イメージ管を提供する。 【構成】 アルミニウム基板11上に面方向に不連続なよ
う化セシウムの不連続蛍光体層12を形成し、不連続蛍光
体層12上によう化セシウムの連続蛍光体層13を積層さ
せ、入力蛍光スクリーン14を形成する。不連続蛍光体層
12には、アニールにより黒色膜16を形成する。入力蛍光
スクリーン14を構成する際には、容器中で光吸収物質の
銅を蒸着させ、同一の容器中に酸素を導入する。不連続
蛍光体層12内の銅を酸素に反応させ、不連続蛍光体層12
の周囲に黒色膜を形成する。 【効果】 1つの容器で、蒸着およびアニールを行なう
ので、入力蛍光スクリーン14にごみなどの付着が生ぜ
ず、分解能が向上する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、分解能を向上させたX
線イメージ管およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、X線イメージ管は、一般に医療用
のX線撮像装置や工業用の非破壊検査用のX線工業テレ
ビなどに広く応用されている。
【0003】また、従来のX線イメージ管は、X線が入
力される入力窓を有する真空外囲器を備えている。そし
て、この真空外囲器の内部には、入力窓に対向して彎曲
基板が配置され、彎曲基板の入力窓と反対面には、入力
蛍光スクリーンおよび光電面が順次積層されている。さ
らに、真空外囲器の出力側には、陽極および蛍光スクリ
ーンが配設され、真空外囲器の内部の側壁に沿って集束
電極が配設されている。
【0004】そして、X線管から放射されたX線は、被
写体を通り、入力窓と彎曲基板とを通過して入力蛍光ス
クリーンによって光に変換される。この光は、光電面に
よって電子に変換され、集束電極と陽極とによって構成
される電子レンズによって、加速、収束され、出力蛍光
スクリーンによって可視像に変換される。
【0005】そうして、この可視像は、テレビカメラ、
シネカメラまたはスポットカメラなどによって現像さ
れ、医療診断などが行なわれている。
【0006】次に、上記X線イメージ管に用いる入力蛍
光スクリーンの一例を図10を参照して説明する。
【0007】この図10に示す入力蛍光スクリーンは、
アルミニウム基板1上によう化セシウム(CsI)の不
連続蛍光体層2を形成し、この不連続蛍光体層2上によ
う化セシウムの連続蛍光体層3を積層させ、光電面4を
連続して形成している。
【0008】そうして、上述の入力蛍光スクリーンは、
まず、ライトガイド効果を有している。すなわち、よう
化セシウムは、波長420nm付近の発光に対する屈折率
が1.84であり、理論上、結晶中で生じた発光は、図
11に示すように、臨界角33°以上の鈍角で結晶と真
空との界面に達すると、全反射して結晶の外に出られな
くなる。このため、発光の一部は光電面4に到達し、光
は強制的に結晶成長方向に伝送される。
【0009】また、結晶と真空の界面とでの光の減衰が
生ずる。したがって、臨界角33°以下の角度で結晶の
外に出た光は、再度隣接する別の不連続蛍光体層2に到
達する。このとき、ほとんどの光は、結晶内に取り込ま
れるが、一部は図11に示すようにフレネル反射により
元の結晶に戻される。なお、結晶から真空に出るときも
同様である。このようにして、横方向へ広がる光は次第
に減衰し、結晶成長方向から外れた光ほど界面を通る回
数が多くなり、減衰の度合いが大きくなる。そこで、発
光は結晶成長方向に近いほど少ない減衰量で光電面4に
到達する。
【0010】上述のように、不連続蛍光体層2で発光し
た光は、発光点からあまり離れていない光電面4上に到
達することになり、入力蛍光スクリーン単体としての分
解能が得られる。
【0011】そして、近年のX線イメージ管は、被写体
を透過したX線信号をできるだけ多く拾うことを目的と
して、入力蛍光スクリーンの厚さを400μm以上に設
定してX線吸収効率の向上を図っている。
【0012】また、上記作用のうち、ライトガイド効果
は、入力蛍光スクリーンの厚さに依存しないが、真空と
界面とでの光の減衰については、入力蛍光スクリーンの
厚さが厚くなると界面による減衰の効果が弱くなり、入
力蛍光スクリーンの分解能が低下する。
【0013】この分解能を補強するために、不連続蛍光
体層2の径を細くして面方向の光学的界面を密にするこ
とが考えられる。そして、このように光学的界面を密に
することにより、横方向へ広がる光は、単位光路長当た
り減衰される割合が増加すると考えられる。
【0014】また、不連続蛍光体層2の径は、スクリー
ン蒸着工程における基板温度に依存するので、蒸着時に
基板温度を150℃に維持したまま、4.5Paの圧力
下でよう化セシウム膜を形成させたところ、6μmの結
晶柱の不連続蛍光体層2が形成され、基板温度を180
℃に維持したところ、9μmの不連続蛍光体層2が形成
された。
【0015】これらの不連続蛍光体層2が形成された入
力蛍光スクリーンの解像度を測定したところ、20lp
/cmで、CTF(Contrast Transfer Function)値は
いずれも24%前後で略等しく、50lp/cmでも6
μmの入力蛍光スクリーンの方が1%上回ったにすぎな
かった。なお、この程度のCTFの差であると、入力蛍
光スクリーンをX線イメージ管内部に装着した場合、撮
像系を経てテレビ画面上に現れる差は小さい。
【0016】このような、柱状構造を持った入力蛍光ス
クリーンの分解能特性を向上させる別の手段として、柱
状構造によって形成される光学的な界面に光吸収材ある
いは光反射材の層を設けることが考えられる。
【0017】特に、真空と界面とでの光の減衰を向上さ
せるものとして、たとえば特開昭62−43046号公
報に記載されているように、不連続蛍光体層の結晶柱間
に光吸収層を介在させるもの、特開昭59−12173
3号公報に記載されているように、不連続蛍光体層の柱
状結晶間に光反射物質の粉末を充填するものが知られて
いる。
【0018】ところが、不連続蛍光体層の結晶柱間は1
μm程度であり、これら結晶柱間の間隙を加工すること
は非常に困難である。
【0019】このような構造を実現する最も簡単で、量
産性がある方法として特公昭54−40071号公報記
載の構成が知られている。この特公昭54−40071
号公報記載の構成は、光吸収材料を混入させ、酸化雰囲
気中でアニールすることにより、光学的界面に光吸収材
の酸化物を析出させるものである。
【0020】しかしながら、この特公昭54−4007
1号公報記載の構成では、結晶中に含まれる不純物が、
光学的界面に析出するためには、不純物が拡散移動する
ことができ、かつ、光学的界面で酸化が進行する結晶構
造とアニール条件とが整ってなければ、任意の柱状構造
の入力蛍光スクリーンに対して実現できるとは限らな
い。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】上述の特開昭62−4
3046号公報または特開昭59−121733号公報
に記載のように、真空と界面とでの光の減衰を向上させ
るものとして、不連続蛍光体層の結晶柱間に光吸収層を
介在させたり、あるいは光反射物質の粉末を充填するこ
とは、不連続蛍光体層の結晶柱間が1μm程度であり、
これら結晶柱間の間隙を加工することは非常に困難であ
る問題を有している。
【0022】また、特開昭62−43046号公報記載
のように、不連続蛍光体層の結晶柱間に光吸収物質を介
在させ、不連続蛍光体層の結晶柱間で蛍光体からの光を
吸収するものの場合、分解能を十分に向上させることが
できない問題を有している。
【0023】さらに、特公昭54−40071号公報記
載の構成では、結晶中に含まれる不純物が、光学的界面
に析出するためには、不純物が拡散移動することがで
き、かつ、光学的界面で酸化が進行する結晶構造とアニ
ール条件とが整ってなければ、任意の柱状構造の入力蛍
光スクリーンに対して実現できるとは限らない問題を有
している。
【0024】またさらに、特公昭58−48988号公
報記載の方法により、入力蛍光スクリーンを形成する場
合、よう化銅をよう化銅蒸着層で蒸着した後、光電面蒸
着層内に酸素を導入し酸化膜を形成するので、大気中に
さらされ、ごみなどの付着が生じやすく、入力蛍光スク
リーンの管理が煩雑になる問題を有している。
【0025】本発明は、上記問題点に鑑みなされたもの
で、簡単な構成で、分解能を向上させることができるX
線イメージ管およびその製造方法を提供することを目的
とする。
【0026】
【課題を解決するための手段】請求項1記載のX線イメ
ージ管は、基体と、この基体の上に形成されX線の入射
により蛍光体が発する光を吸収する光吸収物質を含有し
た入力蛍光スクリーンを具備したX線イメージ管におい
て、前記光吸収物質は、蒸気圧の異なる2種以上の蒸着
時の化合物状態を含むものである。
【0027】請求項2記載のX線イメージ管の製造方法
は、基体と、この基体の上に形成されX線の入射により
蛍光体が発する光を吸収し、ある気体に対して蛍光母体
より活性でありこの蛍光母体内でイオンとして存在でき
る光吸収物質を含有した入力蛍光スクリーンを具備した
X線イメージ管の製造方法において、容器中で前記光吸
収物質を蒸着させて入力蛍光スクリーンを形成し、この
入力蛍光スクリーンの形成後、前記容器中に前記気体を
導入し、前記光吸収物質を前記気体に反応させるもので
ある。
【0028】
【作用】請求項1記載のX線イメージ管は、X線の入射
により蛍光体が発する光を吸収する光吸収物質を蒸気圧
の異なる2種以上の元素を含ませたため、光吸収物質を
入力蛍光スクリーンに蒸着させる際に、入力蛍光スクリ
ーン内に光吸収物質が偏って含有されることがなくなり
分散されるため、光吸収により分解能が向上する。
【0029】請求項2記載のX線イメージ管の製造方法
は、容器中で光吸収物質を蒸着させて入力蛍光スクリー
ンを形成し、この入力蛍光スクリーンの形成後、同一の
容器中に光吸収物質が蛍光母体より活性である気体を導
入し、光吸収物質を気体に反応させるため、入力スクリ
ーンにごみなどの付着が生ぜず、分解能が向上する。
【0030】
【実施例】以下、本発明のX線イメージ管の一実施例を
図面を参照して説明する。
【0031】図1に示すように、基体としてのアルミニ
ウム(Al)基板11上に面方向に、不連続なファイバ柱
状の多数の柱状結晶のファイバ体12a からなり蛍光母体
であるよう化セシウム(CsI)の不連続蛍光体層12を
形成し、この不連続蛍光体層12上によう化セシウムの連
続蛍光体層13を積層させて入力蛍光スクリーン14を形成
し、光電面15を連続して形成している。
【0032】そして、不連続蛍光体層12には、平均濃度
0.1wt%以下、より好ましくは0.01〜0.1w
t%のよう化銅(CuI)が混入され、透明度は低くな
っており、不連続蛍光体層12の結晶中の表面には、酸化
銅(CuO)の黒色膜16が形成されている。
【0033】また、不連続蛍光体層12および連続蛍光体
層13には、タリウムイオン(Tl+)、ナトリウムイオ
ン(Na+ )、カリウムイオン(K+ )が発光効率向上
のため、適当な濃度含有されている。
【0034】なお、隣接するファイバ体12a の間隔、す
なわち光学的界面の間隔は、0.1〜40μmが好まし
く、より好ましくは0.1〜3μmであり、0.1μm
に形成され、ファイバ体12a の径は40μm以下が好ま
しく、より好ましくは5〜15μmで、20μmに設定
されている。
【0035】なお、アルミニウム基板11としては柱状結
晶を支持するため、別に他の物質たとえばチタン(T
i)や、場合によってはベリリウム(Be)などのX線
透過率の小さいものでもよい。
【0036】次に、上記X線イメージ管の製造装置を図
2を参照して説明する。
【0037】図2は、入力蛍光スクリーンの製造装置で
ある。21は真空槽の容器であるベルジャーで、このベル
ジャー21の内部には、アルミニウム基板11が載置されて
いる。また、このベルジャー21には、気体導入用の導入
孔25が形成されている。そして、アルミニウム基板11の
上部には加熱ヒータ22、下部にはボート23,24がそれぞ
れ配設されている。また、一方のボート23には、0.1
wt%のよう化銅(CuI)が混入されたよう化セシウ
ム(CsI)が、他方のボート24には、よう化セシウム
(CsI)が入れられている。
【0038】そして、まず、加熱ヒータ22でアルミニウ
ム基板11を180℃に加熱し、ベルジャー21内の圧力を
4.5×10-1Paに保った状態で、一方のボート23を
加熱し、アルミニウム基板11に膜圧が380μmの柱状
の不連続蛍光体層12を形成する。そして、ベルジャー21
内に気体導入孔25から酸素を導入し、内部気圧を10-3
Paにし、アルミニウム基板11を280℃に保ち、8時
間アニールし、酸化膜である黒色膜16を形成する。な
お、アルミニウム基板11の基板温度を一定にし、気体導
入孔25から導入される酸素の量を一定にすることによ
り、定量的に酸素との反応を行なうことができる。さら
に、引き続き、アルミニウム基板11を180℃に加熱
し、ベルジャー21の圧力を10-3Pa以下の状態にし
て、他方のボート24を加熱し、不連続蛍光体層12上に約
20μmの厚さの連続蛍光体層13を形成する。そうし
て、これら不連続蛍光体層12および連続蛍光体層13が形
成されたアルミニウム基板11を、空気中にさらし280
℃で5時間ベーキングする。
【0039】さらに、これら不連続蛍光体層12および連
続蛍光体層13が形成される作用について説明する。
【0040】まず、X線イメージ管の入力蛍光スクリー
ン14を構成する物質であるよう化セシウム(CsI)
は、イオン結晶であるから、格子中のセシウムイオン
(Cs+)もしくはよう素イオン(I- )は、容易に他
の化学種イオンと置き変わることができる。たとえば、
入力蛍光スクリーン14においては、発光効率を上げるた
めに、化学式1に示すように、タリウムイオン(T
+ )、ナトリウムイオン(Na+ )を微量添加してい
る。
【0041】
【化1】 この性質を利用すると、結晶格子を保ったまま、不連続
蛍光体層12に光吸収物質を混入することができる。これ
は、多価イオンでも可能であり、添加量が少ない場合は
不連続蛍光体層12の蛍光体本来の物性を損ねることは少
ない。また、たとえば1価の銅イオン(Cu+ )の場合
は、化学式2に示すようになる。
【0042】
【化2】 このようにして、ある種の化学種のイオンが混入した結
晶には、純よう化セシウム(CsI)もしくはナトリウ
ムイオン(Na+ )が加えられたよう化セシウム(Cs
I)にはなかった光吸収特性があり、もともとは、発光
に対してほぼ透明であった入力蛍光スクリーンも光透過
率が小さくなる。
【0043】したがって、発光が不連続蛍光体層12の結
晶方向から外れた方向に向かう光ほど光電面15に到達す
る距離が長くなり、入力蛍光スクリーン14の透過率が小
さいほど、光電面15上で発光点から離れたところに到達
する減衰は大きくなり、入力蛍光スクリーン14の分解能
は向上する。
【0044】また、結晶中に注入する物質を選択するこ
とにより、混入物質の分布を変化させることができる。
たとえば均一に銅イオン(Cu+ )が混入されたよう化
銅(CuI)の結晶を酸素雰囲気中で加熱すると、化学
式3および化学式4のように不連続蛍光体層12の結晶の
表面付近、すなわち光学的界面には、銅(Cu)の酸化
物が析出する。
【0045】
【化3】
【化4】 なお、このときセシウムイオン(Cs+ )は、銅イオン
(Cu+ )よりも酸素(O2 )に対して不活性なのでセ
シウム(Cs)の酸化物はできにくく、不連続蛍光体層
12の蛍光膜の劣化は少ない。
【0046】さらに、不連続蛍光体層12の表面付近の酸
化反応が進むにつれて銅イオン(Cu+ )が欠乏するも
のの、加熱によりバルク中の銅イオン(Cu+ )が拡散
して補充されるから、反応はさらに進み、不連続蛍光体
層12の結晶表面、すなわち光学的界面に近いほど高濃度
の酸化銅(CuO)の層が形成される。
【0047】このような反応により精製された入力蛍光
スクリーン14は、結晶バルク中の光吸収物質である光吸
収イオンの濃度が低くなり、不連続蛍光体層12の蛍光体
の発光効率の低下を最小限に抑えることができ、さら
に、光吸収物質である鉄のような酸化物を選択すると、
光減衰性の機能も同等に保つことができる。
【0048】また、上述の条件では、柱状結晶の径は平
均12μm、光学的界面の幅は0.3〜1μmであっ
た。
【0049】この黒色膜16が形成される反応が行なわれ
る場合の、十分な反応速度を得るための温度は、よう化
銅が酸化され酸化銅が形成される際のよう素ガス
(I2 )の量をモニターすることにより求めることがで
きる。
【0050】すなわち、図3に示すように、横軸に時
間、縦軸によう素ガスの発生総量を採り、測定値をプロ
ットしていくと、温度を280℃にまで上昇させたとき
に、急激によう素ガスの量が多くなるので、280℃の
温度が化学式3、化学式4の反応を起こすのに十分な温
度といえる。
【0051】そして、上述のような結晶中の不純物を酸
素中で加熱することにより析出させることについては、
Journal of Crystal Growth 7 (1970)の259頁〜26
0頁の「GROWTH OF Mn2 3 THIN FILMS BY IMPURITY
DIFFUSION FROM VOLUME TOSURFACE IN IMPURE NaCl CR
YSTALS 」などに記載されている。
【0052】したがって、上記実施例では、よう化セシ
ウム(CsI)粉末によう化銅粉末を混合したものを真
空蒸着してファイバ体12a からなる不連続蛍光体層12を
形成し、次に、よう化セシウム(CsI)粉末を蒸着し
て連続蛍光体層13を形成し、その後、空気中で280℃
で5時間加熱することにより、ファイバ体12a の光学的
界面に高濃度の酸化銅(CuO)の黒色膜16を容易に形
成することが可能である。この場合、連続蛍光体層13と
接するファイバ体12a の表面は空気と接していないの
で、高濃度の酸化銅(CuO)の黒色膜16は形成されて
いない。
【0053】一方、加熱条件及び結晶の寸法と、結晶表
面への不純物の析出状態との関係は、Revista Mexican
de Fisica 30 (4) (1984) 685頁〜692頁に記載さ
れている。この記載によると、加熱時間をt、結晶寸法
をlとすると、t/l2 が析出の進行状況を示すパラメ
ーターとなっている。言い換えると、結晶寸法をn倍に
すると、結晶表面に不純物が析出するに必要な加熱時間
はn2 にしなければならないことを示しており、結晶の
中の不純物が表面に到達する距離が長くなることが原因
である。
【0054】このようなことから、不連続蛍光体層12を
構成するファイバ体12a の径が大きい場合には、極端に
長い加熱時間が必要である。加熱時間が長くなると、量
産性に劣るだけでなく、熱により結晶がくずれた構造と
なる。実際に様々な径のファイバ体12a を製作したとこ
ろ、ファイバ体12a の径が50μmを越えると、24時
間の加熱でCuOの黒色膜16の量は極端に少なくなるこ
とが判明した。
【0055】また、ファイバ体12a の光学的界面は、ア
ニール工程において、酸素供給源となっている。したが
って、ファイバ体12a の間隔が狭いと、アニール工程の
途中で酸素が不足して反応速度が遅くなる。実験による
と、0.1μmより小さくなると、数10オングストロ
ーム程度の酸化膜でも形成が難しくなる。
【0056】以上を考慮すると、空気中での加熱温度は
60〜350℃が好ましく、より好ましくは260〜3
00℃であり、加熱時間は24時間以下が好ましく、よ
り好ましくは3〜5時間である。
【0057】また、隣接するファイバ体12a の光学的界
面間の間隔は、加熱工程において酸素供給源となってい
る。したがって、この間隔が狭すぎると、加熱の途中で
酸素量が不足し、反応速度で遅くなる。実際に作成した
膜では、幅はすべて0.3μm以上であり、問題はなか
ったが、0.1μmより狭くなると、数10オングスト
ロームの酸化膜でも形成が困難となる。
【0058】次に、12μmの柱状結晶のファイバ体12
a の効果について、次に示す3種類の実施例を用いた場
合について説明する。
【0059】サンプルA:従来の入力蛍光スクリーンを
260℃で真空加温したもの サンプルB:0.02wt%のよう化銅を混入した入力
蛍光スクリーン14を、アニール工程を省略し、260℃
で真空加熱したもの サンプルC:0.02wt%のよう化銅を混入した入力
蛍光スクリーンを実施例に示す方法で作成し、さらに、
260℃で真空加温したもの なお、サンプルA,B,Cの260℃での真空加温は、
蛍光体の活性のための工程である。
【0060】また、サンプルCは空気中で加温すること
により、酸化銅が形成され灰色に変色している。
【0061】そして、サンプルCは、図4に示すよう
に、CTF曲線はサンプルAに比べて大幅に向上してい
る。また、サンプルCは、外観が灰色であるにもかかわ
らず、発光量は図示しないがサンプルAの36%に達し
ている。この外観が灰色であるにもかかわらず発光量の
低下が少ないことについては、バルクの結晶中の銅イオ
ンが含まれず、図5に示すように、透明であることに起
因していると考えられる。
【0062】逆に、サンプルBは、CTF曲線はサンプ
ルAに比べて差異がない。しかも、サンプルBは、透明
にもかかわらず、バルクの結晶中に銅イオンが多く含ま
れているため、蛍光体CsI/Na+ の発光を妨げ、発
光量は図示しないがサンプルAの29%にまで低下し
た。
【0063】上述のように製造された入力蛍光スクリー
ンを入力視野9インチ、出力径直径25mmのX線イメ
ージ管に装着したら、図7に示すようにCTF曲線が向
上する効果が得られた。このとき、スクリーン単体の実
験のときと同様に、サンプルCはサンプルAに比べ、輝
度((cd/m2 )/mRisec )の低下が認められる
が、輝度の低下を防止するためには、光吸収材の濃度を
低下させるか、光吸収材を含む部分を入力蛍光スクリー
ンの厚さ方向の一部に限定すればよく、X線イメージ管
の各用途に必要な輝度に応じて濃度、構造を検討すれば
よい。
【0064】なお、上記実施例のように、0.02wt
%のよう化銅の混入では、十分な透明度が得られてお
り、光電面15からはなれた部分の発光にも寄与してお
り、X線イメージ管の重要な性能ファクターであり、入
射X線信号をできるだけ多く有効な信号として取り出す
能力の劣化は少ない。
【0065】上述のように、一旦、結晶中に光吸収材の
元となるイオンを混入させ、後の酸化処理により光吸収
材の元になるものを結晶界面に析出させる一連の工程
は、高分解性能が要求されるX線イメージ管のファイバ
構造を持った入力蛍光スクリーンの形成工程に組み合わ
せることにより、絶大な効果を発揮し、なおかつ、非常
に簡単な所望の構造が得られるので、工業的生産手段と
しても有用である。
【0066】また、他の実施例として、酸化銅に代えて
酸化鉄を用いた構成について説明する。
【0067】そして、図1に示す実施例の不連続蛍光体
層12に、銅に代えて平均濃度0.1wt%以下、より好
ましくは0.01〜0.1wt%の鉄(Fe)を混入
し、不連続蛍光体層12の各ファイバ体12a の結晶中の表
面に、酸化鉄(Fe2 3 )からなる黒色膜16を被覆し
たものである。
【0068】なお、鉄という元素は、蛍光体を主として
構成するたとえばナトリウム付活よう化セシウム(Cs
I:Na)などの元素イオンよりも、酸素に対して活性
であるとともに、連続蛍光体層13の結晶中で金属イオン
として存在する場合よりも、結晶外で酸化物として存在
する場合の方が、効果的に蛍光体の発光を吸収するもの
である。
【0069】なお、同様に、隣接するファイバ体12a の
間隔、すなわち光学的界面の間隔は、0.1〜40μm
が好ましく、より好ましくは0.1〜3μmであり、フ
ァイバ体12a の径は40μm以下が好ましく、より好ま
しくは5〜15μmである。
【0070】このように、鉄を用いる場合にも図2に示
す入力蛍光スクリーンの製造装置を使用する。
【0071】このように鉄を用いる場合、一方のボート
23には、0.02wt%のよう化鉄(FeI2 )が混入
されたよう化セシウム(CsI)および微量のよう化ナ
トリウム(NaI)が、他方のボート24には、よう化セ
シウム(CsI)および微量のよう化ナトリウム(Na
I)が入れられている。そして、よう化銅を含んだ不連
続蛍光体層12および連続蛍光体層13と同様の動作を行な
い、最後に、アルミニウム基板11を空気中にさらし28
0℃で5時間ベーキングして形成する。
【0072】さらに、上記入力蛍光スクリーンの構造が
得られる理由について説明する。
【0073】X線イメージ管の入力蛍光スクリーンを構
成する物質であるよう化セシウム(CsI)は、イオン
結晶であるから、格子中のセシウムイオン(Cs+ )も
しくはよう素イオン(I- )は、容易に他の化学種イオ
ンと置き変わることができる。たとえば、入力蛍光スク
リーンにおいては、発光効率を上げるために、化学式5
に示すように、タリウムイオン(Tl+ )、ナトリウム
イオン(Na+ )を微量添加している。
【0074】
【化5】 この性質を利用すると、結晶格子を保ったまま、不連続
蛍光体層12に光吸収物質を混入することができる。これ
は、多価イオンでも可能であり、添加量が少ない場合は
不連続蛍光体層12の蛍光体本来の物性を損ねることは少
ない。また、たとえば2価の鉄イオン(Fe++)の場合
は、化学式6に示すようになる。
【0075】
【化6】 なお、このような構造の結晶は、よう化セシウムによう
化銅の粉末同士を混ぜ合わせたものを真空蒸着すること
により得られる。
【0076】また、鉄イオン(Fe++)は、蛍光体を構
成するセシウムイオン(Cs+ )およびよう素イオン
(I- )に比べて酸素(O2 )に対して活性であるか
ら、空気中にさらすことにより酸化させることができ
る。
【0077】このとき
【化7】 の反応式となる。そして、酸素は、不連続蛍光体層12の
内部より、光学的界面に多く供給されるため、光学的界
面を中心に反応が生ずる。
【0078】さらに、不連続蛍光体層12の表面付近の酸
化反応が進むにつれて鉄イオン(Fe++)が欠乏するも
のの、加熱によりバルク中の鉄イオン(Fe++)が拡散
して補充されるから、反応はさらに進み、不連続蛍光体
層12の結晶表面、すなわち光学的界面に近いほど高濃度
の酸化鉄(Fe2 3 )の黒色膜16が形成される。
【0079】また、よう化セシウム(CsI)に含有す
る光吸収物質としては、鉄イオン(Fe++)、銅イオン
(Cu+ )以外の物質として、クロム(Cr)、ストロ
ンチウム(Sr)、マグネシウム(Mg)、水銀(H
g)のように鉄(Fe)に近い化学的性質を示し、よう
化セシウム(CsI)の結晶格子中に取り込まれる光吸
収物質なら、1個もしくは複数個の元素などを用いても
同様の効果が得られる。なお、蒸着プロセスにおいて、
よう化セシウム(CsI)に近い蒸気圧で、同時に蒸発
するものである必要はある。
【0080】さらに、酸素(O2 )以外のたとえば窒素
ガス(N2 )、アンモニアガスなどの気体雰囲気中で着
色する物質でも有効である。なお、窒素を含む雰囲気中
で熱処理を行なう場合には、クロム、鉄などを使用可能
である。
【0081】またさらに、連続蛍光体層13は光電面15に
近いため、光電面15の変質を避けるため、鉄(Fe)の
ような光吸収物質を含まないものがよい場合もある。
【0082】以上説明したX線イメージ管は、X線管お
よび撮像装置と組み合わせて、X線撮影システムとして
使用することが可能で、たとえば図7は、透視系および
間接撮影系X線撮影システムの一例を示す図である。
【0083】図7に示すように、X線管31に対して、X
線イメージ管32を配置し、このX線イメージ管32のX線
グリッド33に対向して被写体34を配置する。一方、X線
イメージ管32の出力側には、ハーフミラー35を配置し、
このハーフミラー35によりテレビジョンレンズ36を介し
てテレビジョンカメラ37に送られテレビジョンモニタ38
に映像できるようにするとともに、シネカメラ39および
スポットカメラ40に映像されるようになっている。
【0084】また、X線イメージ管32は、図8に示すよ
うに、真空外囲器41の一面側に形成されたアルカリ−ア
ンチモンなどで形成される入力窓42側の内部側に、アル
ミニウム基板11に不連続蛍光体層12および連続蛍光体層
13からなる入力蛍光スクリーン14が形成されている。さ
らに、真空外囲器41の入力窓42と反対側には、出力面43
が形成され、この出力面43の内面側には陽極44が設けら
れている。そして、入力蛍光スクリーン14と陽極44間に
は、真空外囲器41の内面に沿って静電電子レンズ系を構
成する集束電極45が複数形成されている。
【0085】そして、X線管31からX線が被写体34に照
射され、被写体34を透過してX線透視像が形成される。
このX線透視像は、X線グリッド33を通り、散乱X線が
除去されて、X線イメージ管32に入射する。また、X線
イメージ管32は、入力窓42からX線を入射し、入力蛍光
スクリーン14にて変換し、集束電極45にて集束し、陽極
44により出力面43に可視光像に変換して出力する。そし
て、透視系の場合にはテレビジョンレンズ36を透過して
テレビジョンカメラ37により撮像され、テレビジョンモ
ニタ38上にX線透視像が出力される。間接撮影系の場合
にはハーフミラー35により、光量の90%をシネカメラ
39に送り込み、残りの10%をテレビジョンカメラ37に
送ってテレビジョンモニタ38上にX線透視像が出力され
る。また、必要に応じて、ハーフミラー35が反転して9
0%の光がスポットカメラ40の側に送り込まれ、ロール
フィルムまたはカットフィルム上にX線透視像を印画す
る。
【0086】このように、上記実施例のX線イメージ管
によれば、高感度撮像素子を組み合わせることによりS
/N比は従来と同等で、かつ高分解性能を有することが
できる。
【0087】また、柱状結晶であるファイバ体12a に黒
色膜16を析出させているため、ファイバ体12a の一点で
発光した光が、ファイバ体12a 間を透過しないため、輝
度を下げることなく、コントラスト、解像度が向上す
る。
【0088】さらに、他の実施例を説明する。
【0089】上記実施例では、蛍光吸収物質として1種
類の物質のみを使用していたが、複数たとえば2種類の
物質を使用してもよい。
【0090】すなわち、1000Kにおけるよう化セシ
ウムの蒸気圧は0.57Torr、よう化銅の蒸気圧は
6.47Torr、よう化クロムの蒸気圧は0.178
Torrである。したがって、光吸収物質として銅のみ
ならずクロムを用いれば、初期に銅が多く蒸着され、後
期にクロムが蒸着されるので、図9に示すように、入力
蛍光スクリーン14の深さ方向の不純物の濃度は均一とな
り、分解能が向上する。
【0091】このように、蒸気圧の異なる光吸着物質を
2種類以上用いることにより、入力蛍光スクリーン14の
濃度むらが減少し、分解能が向上する。
【0092】なお、光吸収物質としては、上記の組み合
わせに限らず任意の組み合わせでよい。
【0093】また、入力蛍光スクリーンを構成する蛍光
体柱状結晶の相互に隣接する側面には、内部より光吸収
元素の濃度が高い、この元素の化合物を含む光吸収層が
形成されているため、横方向の光の拡散が抑制され、そ
れによって分解能の向上が可能である。また、ファイバ
体12a と連続蛍光体層13との界面には光吸収層が存在し
ないため、発光効率および輝度の低下が少ない。
【0094】
【発明の効果】請求項1記載のX線イメージ管によれ
ば、X線の入射により蛍光体が発する光を吸収する光吸
収物質を蒸気圧の異なる2種以上の元素を含ませたた
め、光吸収物質を入力蛍光スクリーンに蒸着させる際
に、入力蛍光スクリーン内に光吸収物質が偏って含有さ
れることがなくなるため、光吸収により分解能が向上す
ることができる。
【0095】請求項2記載のX線イメージ管の製造方法
によれば、容器中で光吸収物質を蒸着させて入力蛍光ス
クリーンを形成し、この入力蛍光スクリーンの形成後、
同一の容器中に光吸収物質が蛍光母体より活性である気
体を導入し、光吸収物質を気体に反応させるため、入力
蛍光スクリーンにごみなどの付着が生ぜず、分解能が向
上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のX線イメージ管の入力蛍光スクリーン
の一実施例を示す断面図である。
【図2】同上X線イメージ管の入力蛍光スクリーンの製
造装置を示す説明図である。
【図3】同上入力面のアニール工程中のよう素ガス発生
総量の時間との関係を示すグラフである。
【図4】同上X線イメージ管の入力蛍光スクリーンと従
来例の入力蛍光スクリーンとのCTF値を示すグラフで
ある。
【図5】同上入力面の分光透過光量を示すグラフであ
る。
【図6】同上X線イメージ管の入力蛍光スクリーンと従
来例の入力蛍光スクリーンとのCTF値を示すグラフで
ある。
【図7】同上X線イメージ管を用いたシステムを示す説
明図である。
【図8】同上X線イメージ管を示す説明図である。
【図9】同上他の実施例のX線イメージ間を示す説明図
である。
【図10】従来例のX線イメージ管の入力蛍光スクリー
ンを示す断面図である。
【図11】入射角と反射との関係を示す説明図である。
【符号の説明】
11 基体としてのアルミニウム基板 14 入力蛍光スクリーン

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基体と、この基体の上に形成されX線の
    入射により蛍光体が発する光を吸収する光吸収物質を含
    有した入力蛍光スクリーンを具備したX線イメージ管に
    おいて、 前記光吸収物質は、蒸気圧の異なる2種以上の蒸着時の
    化合物状態を含むことを特徴としたX線イメージ管。
  2. 【請求項2】 基体と、この基体の上に形成されX線の
    入射により蛍光体が発する光を吸収し、ある気体に対し
    て蛍光母体より活性でありこの蛍光母体内でイオンとし
    て存在できる光吸収物質を含有した入力蛍光スクリーン
    を具備したX線イメージ管の製造方法において、 容器中で前記光吸収物質を蒸着させて入力蛍光スクリー
    ンを形成し、 この入力蛍光スクリーンの形成後、前記容器中に前記気
    体を導入し、前記光吸収物質を前記気体に反応させるこ
    とを特徴としたX線イメージ管の製造方法。
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