JP3279198B2 - プレス成形性および接着性に優れた亜鉛系メッキ鋼板 - Google Patents

プレス成形性および接着性に優れた亜鉛系メッキ鋼板

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、亜鉛系メッキ鋼
板の改良に関し、特にプレス成形性および接着性に優れ
た亜鉛系メッキ鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】亜鉛系メッキ鋼板は種々の優れた特徴を
有するために、各種の防錆鋼板として広く使用されてい
る。この亜鉛系メッキ鋼板を自動車用防錆鋼板として使
用するためには、耐食性などの性能が要求されるだけで
なく、車体製造工程において、プレス成形性および接着
性にも優れていることが要求される。
【0003】しかし、亜鉛系メッキ鋼板は、一般に、冷
延鋼板に比べてプレス成形性に劣るという欠点を有す
る。これは亜鉛系メッキ鋼板が、冷延鋼板に比較してプ
レス金型との間の摺動抵抗が大きいことが原因である。
即ち、この摺動抵抗が大きいと、ビードと亜鉛系メッキ
鋼板との間で激しく摺動する部分で亜鉛系メッキ鋼板が
プレス金型に流入しにくくなり、鋼板の破断が起こりや
すくなる。
【0004】亜鉛系メッキ鋼板のプレス成形性を向上さ
せる方法としては、一般に、高粘度の潤滑油を鋼板に塗
布する方法が広く行われている。しかしこの方法では、
潤滑油の高粘性のために、脱脂不良による塗装欠陥が塗
装工程で発生したり、また、プレス時の油切れにより、
プレス性能が不安定になる等の問題がある。従って、亜
鉛系メッキ鋼板のプレス成形性が改善されることが強く
要請されている。
【0005】また、自動車車体の製造工程においては、
車体の防錆、制振等の目的で各種の接着剤が使用される
が、近年になって亜鉛系メッキ鋼板の接着性は、冷延鋼
板の接着性に比較して劣ることが明らかになってきた。
【0006】上述した問題を解決する方法として、特開
昭53−60332号公報および特開平2−19048
3号公報は、亜鉛系メッキ鋼板の表面に電解処理、浸漬
処理、塗布酸化処理、または加熱処理を施すことによ
り、ZnOを主体とする酸化膜を生成させて溶接性、ま
たは加工性を向上させる技術(以下、「先行技術1」と
いう)を開示している。
【0007】特開平4−88196号公報は、亜鉛系メ
ッキ鋼板の表面に、リン酸ナトリウム5〜60g/lを
含むpH2〜6の水溶液中にメッキ鋼板を浸漬するか、
電解処理、または、上記水溶液を散布して、P酸化物を
主体とした酸化膜を形成することにより、プレス成形性
および化成処理性を向上させる技術(以下、「先行技術
2」という)を開示している。
【0008】特開平3−191093号公報は、亜鉛系
メッキ鋼板の表面に電解処理、浸漬処理、塗布処理、塗
布酸化処理または加熱処理により、Ni酸化物を生成さ
せることによりプレス成形性および化成処理性を向上さ
せる技術(以下、「先行技術3」という)を開示してい
る。
【0009】特開昭58−67885号公報は、亜鉛系
メッキ鋼板の表面に、その方法を限定するものではない
が、例えば、電気メッキまたは化学メッキにより、Ni
およびFe等の金属を生成させることにより耐食性を向
上させる技術(以下、先行技術4という)を開示してい
る。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た先行技術には、下記問題がある。先行技術1は、上述
した各種処理により、メッキ層表面にZnOを主体とす
る酸化物を生成させる方法であるため、通常の溶接性お
よび加工性は向上するが、プレス金型とメッキ鋼板との
摺動抵抗が十分小さくならないため、プレス成形性の改
善効果は小さい。更に、ZnO主体の酸化物が鋼板表面
に存在すると、接着性を更に劣化させることが明らかと
なってきた。
【0011】先行技術2は、P酸化物を主体とした酸化
膜を亜鉛系メッキ鋼板の表面に形成する方法であるた
め、プレス成形性および化成処理性の改善効果は大きい
が、接着性は劣化するという問題を有する。
【0012】接着性に注目して、接着性に優れた皮膜
を、メッキ皮膜の表面に形成させることが考えられる
が、先行技術3は、Ni酸化物単相の皮膜を形成する方
法であるため、プレス成形性の向上があるものの、接着
性が未だ十分でないという問題を有する。
【0013】先行技術4は、Ni等の金属のみを生成さ
せる方法であるため、耐食性は向上するが、皮膜の金属
的性質が強いため接着剤に対する濡れ性が低く、十分な
接着性を得ることができないという問題を有する。
【0014】従って、この発明の目的は、上述した問題
を解決して、プレス金型との摺動抵抗を小さくし、しか
も、各種の接着剤使用による剥離強度を大きくすること
により、プレス成形性および接着性に優れた亜鉛系メッ
キ鋼板を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上述した
問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、Ni水酸化
物、Ni酸化物および金属Niを含有してなる混合皮膜
(以下、「Ni−O系皮膜」という)が表面に形成され
ており、且つ、Ni−O系皮膜の内の表層部はNi酸化
物およびNi水酸化物からなる層(この明細書で「酸化
物系層」という)で構成され、この酸化物系層の厚さが
適正な厚さに制御された亜鉛系メッキ鋼板は、優れたプ
レス成形性および接着性を示すことを知見した。
【0016】即ち、従来の亜鉛系メッキ鋼板は、プレス
成形性において、冷延鋼板に比較して劣っている。即
ち、亜鉛系メッキ鋼板は、冷延鋼板よりも、プレス金型
との摺動抵抗が大きい。その理由は、亜鉛系メッキ鋼板
は高面圧下において、低融点の亜鉛が金型と凝着現象を
起こすためである。これを防ぐためには、亜鉛系メッキ
鋼板のメッキ層の表面に、亜鉛または亜鉛合金メッキ層
より硬質且つ高融点の皮膜を形成することが有効である
と考察した。本発明者等は、上述した考察に基づき、更
に研究を進めた結果、適正なNi−O系皮膜を亜鉛系メ
ッキ鋼板のメッキ層の表面に形成させることにより、プ
レス成形時におけるメッキ層表面とプレス金型との摺動
抵抗を低下させることができ、従って、亜鉛系メッキ鋼
板がプレス金型へ滑り込み易くなり、プレス成形性が向
上することを見出した。
【0017】また、従来の亜鉛系メッキ鋼板の接着性
は、冷延鋼板に比較して劣っていることは知られていた
が、その原因は明らかになっていなかった。そこで、本
発明者らは、その理由解明の研究を進めた結果、鋼板表
面の酸化皮膜の組成によって接着性が支配されているこ
とが明らかになった。すなわち、冷延鋼板の場合には、
鋼板表面の酸化皮膜はFe酸化物が主体であるのに対
し、亜鉛系メッキ鋼板の場合には、Zn酸化物が主体で
ある。一方、Zn酸化物はFe酸化物に比べて接着性に
劣ることが明らかとなった。また、亜鉛系メッキ鋼板で
は、表面の酸化皮膜の組成により接着性が異なり、酸化
皮膜中にZn酸化物が多いほど接着性に劣ることが明ら
かとなった。更に、亜鉛系メッキ鋼板の表面にNi−O
系皮膜を形成し、しかも、その皮膜の表面に金属Niが
露出していない場合に接着性が一層向上することが明ら
かとなった。
【0018】この発明は、上述した知見に基づいてなさ
れたものであって、この発明の亜鉛系メッキ鋼板は、少
なくとも1方の面のメッキ層表面に、Ni酸化物、Ni
水酸化物および金属Niを含有してなるNi−O系皮膜
が形成された亜鉛系メッキ鋼板であって、上記Ni−O
系皮膜の内の表層部はNi酸化物およびNi水酸化物か
らなる酸化物系層で構成され、上記酸化物系層の厚さ
が、0.5〜5nmの範囲内にあることに特徴を有する
ものである。
【0019】
【発明の実施の形態】次に、この発明の亜鉛系メッキ鋼
板のメッキ層の表面に形成されがNi−O系皮膜の組
成、並びに、Ni−O系皮膜の内の表層部に形成された
Ni酸化物およびNi水酸化物からなる酸化物系層の厚
さを上述したように限定した理由を述べる。図1に、こ
の発明の亜鉛系メッキ鋼板の、表面に直角方向断面の構
造を示す。21は鋼板、22は亜鉛系メッキ層、23は
Ni−O系皮膜、そして24はNi酸化物およびNi水
酸化物からなる酸化物系層である。
【0020】前述したように、亜鉛系メッキ鋼板のメッ
キ層22の表面に、Ni酸化物、Ni水酸化物および金
属NiからなるNi−O系皮膜23が形成され、このN
i−O系皮膜23の内の表層部に適正な厚さのNi酸化
物およびNi水酸化物からなる酸化物系層24が存在す
ると、プレス成形性および接着性が向上する。ここで、
Ni−O系皮膜23とは、前述したように、Ni酸化物
および金属Niのみならず、Ni水酸化物をも含むべき
であるとした理由は、亜鉛系メッキ鋼板等の表面に、N
i酸化物および金属Niからなる皮膜を形成させる場合
には、その形成方法の如何を問わず、不可避的にNi水
酸化物が上記皮膜に随伴して形成されることにある。な
お、図1は、Ni−O系皮膜23が両表面に形成された
亜鉛系メッキ鋼板を示したが、その用途によっては片表
面だけにその皮膜が形成されたものでもよい。
【0021】この発明におけるNi−O系皮膜は、Ni
−O系皮膜下の亜鉛系メッキ皮膜内に、下層の亜鉛系メ
ッキ層に不可避的に含有される成分元素、即ち、Zn、
Co、Fe、Mn、Mo、Al、Ti、Si、W、S
n、Pb、NbおよびTa等の成分元素が、酸化物、水
酸化物および/または金属単体の形態で不可避的に取り
込まれていてもよい。このような場合でも、上述したN
i−O系皮膜の効果は奏されるからである。
【0022】しかしながら、Ni−O系皮膜の内の表層
部の酸化物系層の厚さが、0.5nm未満では、上記皮
膜の表面に部分的に金属Niが存在するようになり、接
着性向上の効果が認められない。一方、上記酸化物系層
の厚さが、5nmを超えて厚くなると、その酸化物系層
の凝集破壊が生じるため、プレス成形性の向上効果が得
られず、更に、リン酸塩結晶の生成が抑制されて、化成
処理性も劣化する。従って、亜鉛系メッキ鋼板のメッキ
層の表面に形成させるNi−O系皮膜の内の表層部の酸
化物系層の厚さを、0.5〜5nmの範囲内に限定すべ
きである。
【0023】上述したように、表面に、Ni−O系皮膜
が形成され、この皮膜の内の表層部に厚さ0.5〜5n
mの範囲内の酸化物系層が形成されることにより、亜鉛
系メッキ鋼板のプレス成形性および接着性が向上する
が、更に望ましくは、Ni−O系皮膜の付着量を、皮膜
中金属の合計量換算で10mg/m2 以上にすることに
より、プレス成形性および接着性が一層向上し、且つ、
スポット溶接性が確保される。一方、その付着量が、前
記合計量換算で1500mg/m2 超では、亜鉛系メッ
キ鋼板のプレス成形性および接着性が飽和し、且つ、化
成処理時にリン酸塩結晶の生成が抑制されて化成処理性
が劣るため、Ni−O系皮膜の付着量の、皮膜中金属の
合計量換算で1500mg/m2 以下にすることが望ま
しい。
【0024】この発明のNi−O系皮膜の形成方法は、
特に限定されるものではなく、所定の化学成分組成を有
する水溶液を用いる置換メッキ、酸化剤含有の水溶液へ
の浸漬による方法、酸化剤含有の水溶液中での陰極電解
処理および陽極電解処理、所定の水溶液の吹付け、ロー
ル塗布等、並びに、レーザーCVD、光CVD、真空蒸
着およびスパッタ蒸着法等の気相メッキ法を採用するこ
とができる。
【0025】本発明者らは、この発明のNi−O系皮膜
を形成させるための置換メッキによる下記方法を完成さ
せた。即ち、Niイオンのイオン濃度が0.1mol/
l以上、温度が40〜70℃、pH2.0〜4.0の塩
酸性水溶液に、5〜50秒浸漬後、空気とオゾンとの混
合雰囲気中で酸化し、Ni−O系皮膜の厚さを調整する
という方法である。
【0026】なお、上述した各種方法により形成させた
Ni−O系皮膜の内の表層部の酸化物系層の厚さ、Ni
−O系皮膜の化学成分組成および電子状態を測定するた
めの方法は特に限定されず、例えば、下記方法が挙げら
れる。即ち、Arイオンスパッタリングと組み合わせた
X線光電子分光法(XPS)により、被検体の表面から
深さ方向分析を行なう方法、角度分解XPSにより被検
体の表面から深さ方向分析を行なう方法、シンクロトロ
ン放射光(SOR)により入射X線のエネルギーを変え
XPSを用いて被検体の表面から深さ方向分析を行なう
方法、オージェ電子分光法(AES)または2次イオン
質量分析法(SIMS)などで、被検体の表面から深さ
方向分析を行なう方法などが挙げられる。
【0027】例えば、Arイオンスパッタリングと組み
合わせたXPSで測定する場合、所定の深さまでスパッ
タした後、被測定各元素のスペクトル強度から相対感度
因子補正により、その深さでの組成を求めることができ
る。この分析を表面から繰り返すことによりメッキ皮膜
中の深さ方向に対する組成分布を測定することができ
る。この測定法において、水酸化物あるいは酸化物とし
てのNiは、ある深さで最大濃度となった後、減少し一
定になる。水酸化物あるいは酸化物としてのNiが、最
大濃度より深い位置で、最大濃度と一定濃度との和の1
/2となる深さをNi−O系皮膜の内の表層部の酸化物
系層の厚さとする。
【0028】本発明において用いられる亜鉛系メッキ鋼
板とは、母材である鋼板上に溶融メッキ法、電気メッキ
法、または気相メッキ法等の方法でメッキ層を形成させ
た鋼板であり、また、亜鉛系メッキ層の化学成分組成
は、純亜鉛のほか、Co、Ni、Fe、Mn、Mo、A
l、Ti、Si、W、Sn、Pb、NbおよびTa等の
金属もしくは酸化物、または、有機物等の内、一種また
は二種以上を所定量含有する単層または複層のメッキ層
からなるものであればよい。また、前記メッキ層にSi
2 、Al2 3 等の微粒子を含有してもよい。その
他、亜鉛系メッキ鋼板として、メッキ層の成分元素は同
じであって組成の異なる複数の層からなる複層メッキ鋼
板や、メッキ層の構成元素は同じであってメッキ層の厚
さ方向に組成を変化させた機能傾斜メッキ鋼板を使用す
ることも可能である。
【0029】上述したNi−O系皮膜は、亜鉛系メッキ
鋼板の少なくとも1方の面のメッキ層表面に形成されて
いるので、車体製造工程のどのような工程において、ど
のような車体部分に使用される鋼板であるかに応じて、
その皮膜を1方の面あるいは両面に形成されたものを適
宜選択することができる。
【0030】
【実施例】次に、本発明を実施例により更に詳細に説明
する。先ず、Ni−O系皮膜を形成処理する前の亜鉛系
メッキ鋼板(以下、原板という)を調製した。調製され
た原板は、下記7つのメッキ種を施されたものからな
り、メッキの方法、メッキ組成およびメッキ付着量に応
じて下記の記号を付した。
【0031】GA:合金化溶融亜鉛メッキ鋼板(10w
t.%Fe、残部Zn)であり、付着量は両面共に60
g/m2 である。 GI:溶融亜鉛メッキ鋼板であり、付着量は両面共に9
0g/m2 である。 EG:電気亜鉛メッキ鋼板であり付着量は両面共に40
g/m2 である。 Zn−Fe:電気Zn−Fe合金メッキ鋼板(15w
t.%Fe)であり、付着量は両面共に40g/m2
ある。 Zn−Ni:電気Zn−Ni合金メッキ鋼板(12w
t.%Ni)であり、付着量は両面共に30g/m2
ある。 Zn−Cr:電気Zn−Cr合金メッキ鋼板(4wt.
%Cr)であり、付着量は両面共に20g/m2 であ
る。 Zn−Al:溶融Zn−Al合金メッキ鋼板(5wt.
%Al)であり、付着量は両面共に60g/m2 であ
る。
【0032】このように調製された亜鉛系メッキ鋼板の
メッキ表面に、Ni−O系皮膜を次の方法で形成させ
た。即ち、Niイオンのイオン濃度が0.1mol/l
以上、温度が40〜70℃、pH2.0〜4.0の塩酸
性水溶液中に、5〜50秒浸漬する。浸漬時間の調整に
より、Ni−O系皮膜の付着量を所定値に変化させた。
また、空気とオゾンとの混合雰囲気中で酸化し、Ni−
O系皮膜の内の表層部の酸化物系層の厚さを調整した。
【0033】このようにして得られた各亜鉛系メッキ鋼
板について、Ni−O系皮膜の内の表層部の酸化物系層
の厚さおよびその付着量を測定した。表1および表2
に、本発明の範囲内の亜鉛系メッキ鋼板(以下、「本発
明供試体」という)No.1〜46についての、また、表
3に、本発明の範囲外の亜鉛系メッキ鋼板(以下「比較
用供試体」という)No.1〜14についての、測定結果
を示す。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】なお、Ni−O系皮膜の内の表層部の酸化
物系層の厚さおよびその付着量は下記の方法で測定し
た。 〔Ni−O系皮膜の内の表層部の酸化物系層の厚さの測
定方法〕ArイオンスパッタリングとXPSとの組み合
わせにより測定した。供試体表面所定の深さまでArイ
オンスパッタした後、XPSによるNi−O系皮膜中各
元素の測定を表面から繰り返すことによって、Ni−O
系皮膜中の深さ方向に対する各元素の組成分布を測定し
た。特に、Niについては、Ni2p電子のXPSスペ
クトルの結合エネルギ−の違いから、Ni水酸化物を含
んだNi酸化物と、金属Niとの状態を区別し、深さ方
向に対するNiの組成分布を測定した。ここで、相対感
度因子補正によってNi酸化物の組成を求めた。但し、
Ni水酸化物を含んだNi酸化物と、金属Niとの相対
感度因子は同じであるとした。
【0038】この測定方法において、水酸化物または酸
化物としてのNiは、ある深さで最大濃度となった後、
減少し一定になる。水酸化物または酸化物としてのNi
が、最大濃度より深い位置で、最大濃度と一定濃度との
和の1/2となる深さをNi−O系皮膜の内の表層部の
酸化物系層の厚さとする。なお、スパッタ速度の標準試
料には、Ta2 5 を用いた。そのスパッタ速度は6n
m/minであった。
【0039】更に、最表層に存在する上記酸化物系層に
よる、当該酸化物系層よりも下層部分に存在する金属N
iから発生した光電子の吸収量の、入射X線のエネルギ
−に対する依存性から、上記酸化物系層の厚さの確認も
行なった。
【0040】上述した各供試体について、プレス成形性
および接着性、並びに、スポット溶接性および化成処理
性の評価試験を行ない、その試験結果を表1〜3に併記
した。
【0041】プレス成形性は、供試体とプレス機のビー
ドとの摩擦係数で、接着性は、剥離強度で評価した。な
お、スポット溶接性および化成処理性の評価も、それぞ
れ、連続打点数およびリン酸亜鉛皮膜結晶の形成状態で
評価した。各評価試験方法は下記の通りである。
【0042】〔摩擦係数測定試験〕プレス成形性を評価
するために、各供試体の摩擦係数を、下記装置により測
定した。図2は、摩擦係数測定装置を示す概略正面図で
ある。同図に示すように、供試体から採取した摩擦係数
測定用の試料1が試料台2に固定され、試料台2は、水
平移動可能なスライドテ−ブル3の上面に固定されてい
る。スライドテ−ブル3の下面には、これに接したロ−
ラ4を有する上下動可能なスライドテ−ブル支持台5が
設けられ、これを押上げることにより、ビ−ド6による
摩擦係数測定用の試料1への押付荷重Nを測定するため
の第1ロ−ドセル7が,スライドテ−ブル支持台5に取
付けられている。上記押付力を作用させた状態で、スラ
イドテ−ブル3の水平移動方向の一方の端部には、スラ
イドテ−ブル3を水平方向へ移動させるための摺動抵抗
力Fを測定するための第2ロ−ドセル8が、スライドテ
−ブル3の一方の端部に取付けられている。なお、潤滑
油として、日本パーカライジング社製ノックスラスト5
50HNを、試料1の表面に塗布して試験を行なった。
【0043】供試体とビ−ドとの間の摩擦係数μは、
式:μ=F/Nで算出した。但し、押付荷重N:400
kgf、試料の引き抜き速度(スライドテ−ブル3の水
平移動速度):100cm/minとした。
【0044】図3は、使用したビ−ドの形状・寸法を示
す概略斜視図である。ビ−ド6の下面が試料1の表面に
押しつけられた状態で摺動する。その下面形状は、幅1
0mm、摺動方向長さ3mmの平面を有し、その前後面
の幅10mmの各々の線に4.5mmRをもつ筒面の1
/4筒面が同図のように接している。
【0045】〔接着性試験〕各供試体から次の接着性試
験用試験体を調製した。図4は、その組み立て過程を説
明する概略斜視図である。同図に示すように、幅25m
m、長さ200mmの2枚の供試体10を、その間に直
径0.15mmのスペーサー11を介して、接着剤12
の厚さが0.15mmになるように重ね合わせて接着し
た試験体13を作成し、150°C×10minの焼き
付けを行なう。このようにして調製された前記試験体を
図5に示すようにT型に折り曲げ、引張試験機を用いて
200mm/minの速度で引張試験をし、試験体が剥
離した時の平均剥離強度(n=3回)を測定した。剥離
強度は、剥離時の引張荷重曲線の荷重チャ−トから、平
均荷重を求め、単位:kgf/25mmで表わした。図
5中、Pは引張荷重を示す。なお接着剤は塩ビ系のヘミ
ング用アドヒシブを用いた。剥離強度が12kgf/2
5mm以上のものが接着性が良好である。
【0046】〔連続打点性試験〕スポット溶接性を評価
するために、各供試体について連続打点性試験を行なっ
た。同じNO.の供試体を2枚重ね、それを両面から1対
の電極チップで挟み、加圧通電して電流を集中させた抵
抗溶接(スポット溶接)を、下記溶接条件で連続的に実
施した。 ・電極チップ:先端径6mmのド−ム型、 ・加圧力:250kgf ・溶接時間:12サイクル ・溶接電流:11.0KA ・溶接速度:1点/sec 連続打点性の評価としては、スポット溶接時に、2枚重
ねた溶接母材(供試体)の接合部に生じた溶融凝固した
金属部(形状:碁石状、以下、ナゲットという)の径
が、4×t1/2 (t:1枚の板厚)未満になるまでに連
続打点溶接した打点数を用いた。なお、上記打点数を電
極寿命とし、電極寿命が5000点以上の場合は◎、5
000未満3000点以上の場合は○、3000未満1
500点以上の場合は△、1500点未満の場合は×で
示した。
【0047】〔化成処理性〕化成処理性を評価するため
に、次の試験を行なった。各供試体を、自動車塗装下地
用の浸漬型リン酸亜鉛処理液(日本パ−カライジング社
製PBL3080)で通常の条件で処理し、その表面に
ンリン酸亜鉛皮膜を形成させた。このようにして形成さ
れたリン燐酸亜鉛皮膜の結晶状態を走査型電子顕微鏡
(SEM)により観察した。その結果、リン酸亜鉛皮膜
が正常に形成されているものを○、リン酸亜鉛皮膜が形
成されていないか、あるいは結晶にスケが発生している
ものを×で表わした。
【0048】表1〜3の試験結果から下記事項がわか
る。本発明の範囲外にある比較用供試体については、下
記の通りである。 Ni−O系皮膜が形成されていないものは、そのメ
ッキ種が、記号:GA、GI、EG、Zn−Fe、Zn
−Ni、Zn−CrおよびZn−Alのいずれの場合で
あっても、プレス成形性および接着性において劣る(比
較用供試体No.1〜7参照)。 Ni−O系皮膜の内の表層部の酸化物系層が形成さ
れていても、その厚さが本発明の範囲よりも薄い場合
は、やはりプレス成形性および接着性に劣る(比較用供
試体No.9および12参照)。 Ni−O系皮膜の内の表層部の酸化物系層の厚さが
本発明の範囲を超えて厚い場合は、プレス成形性の向上
効果が得られない(比較用供試体No.8、10、11、
13および14)。但し、接着性の向上は認められる
が、これは酸化物系層が厚いために亜鉛系メッキ層のZ
n酸化物の影響がマスキングされるためと思われる。
【0049】これに対して、本発明の範囲内にある本発
明供試体については、亜鉛系メッキ種が、記号:GA、
GI、EG、ZnFe、ZnNi、ZnCrまたはZn
Alのいずれであっても、プレス成形性および接着性化
おいて優れている(本発明供試体No.1〜46参照)。
この内、Ni−O系皮膜の付着量が金属の合計換算量で
10〜1500mg/m2 の範囲内のものは、スポット
溶接性および化成処理性についても優れている。なお、
Ni−O系皮膜の内の表層部の酸化物系層の厚さが本発
明の範囲の下限値の場合、皮膜の付着量が金属の合計量
換算で10mg/m2 未満のものは、スポット溶接性は
確保されないが、プレス成形性、接着性とともに化成処
理性も優れている(本発明供試体No.21参照)。ま
た、Ni−O系皮膜の内の表層部の酸化物系層の厚さが
本発明の範囲内であっても、皮膜の付着量が金属の合計
換算量で1500mg/m2 を超えるものは、化成処理
性においては劣るが、プレス成形性、接着性とともにス
ポット溶接性も優れている(本発明供試体No.22、4
1および44参照)。
【0050】
【発明の効果】本発明は、以上のように構成したので、
亜鉛系メッキ鋼板のメッキ層の表面に形成されたNi−
O系皮膜が、亜鉛または亜鉛合金メッキ層より硬質で、
且つ、高融点であるために、亜鉛系メッキ鋼板のプレス
成形時におけるメッキ層表面とプレス金型との摺動抵抗
が低下し、亜鉛系メッキ鋼板がプレス金型へ滑り込み易
くなる。更に、上記Ni−O系皮膜により、接着板の剥
離強度が向上する。かくして、プレス成形性および接着
性に優れた亜鉛系メッキ鋼板を提供することができる、
工業上有用な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の亜鉛系メッキ鋼板の、表面に直角方
向断面の構造を示す図である。
【図2】摩擦係数測定装置を示す概略正面図である。
【図3】図1中のビ−ドの形状・寸法を示す概略斜視図
である。
【図4】接着性試験用試験体の組み立て過程を説明する
概略斜視図である。
【図5】接着性試験における剥離強度測定時の引張荷重
の負荷を説明する概略斜視図である。
【符号の説明】
1 試料 2 試料台 3 スライドテ−ブル 4 ロ−ラ 5 スライドテ−ブル支持台 6 ビ−ド 7 第1ロ−ドセル 8 第2ロ−ドセル 9 レ−ル 10 供試体 11 スペ−サ− 12 接着剤 13 接着試験用試験体 21 鋼板 22 亜鉛系メッキ層 23 Ni−O系皮膜 24 酸化物系層 P 引張荷重 F 摺動抵抗力
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 稲垣 淳一 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 山下 正明 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 平8−296058(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 28/00 C23C 30/00 C25D 5/26 C23C 18/50

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも1方の面のメッキ層表面に、
    Ni酸化物、Ni水酸化物および金属Niを含有してな
    るNi−O系皮膜が形成された亜鉛系メッキ鋼板であっ
    て、前記Ni−O系皮膜の内の表層部はNi酸化物およ
    びNi水酸化物からなる酸化物系層で構成され、前記酸
    化物系層の厚さが、0.5〜5nmの範囲内にあること
    を特徴とするプレス成形性および接着性に優れた亜鉛系
    メッキ鋼板。
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