JP3368847B2 - プレス成形性及び接着性に優れた亜鉛系メッキ鋼板 - Google Patents
プレス成形性及び接着性に優れた亜鉛系メッキ鋼板Info
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Description
び接着性に優れた亜鉛系メッキ鋼板に関するものであ
る。 【0002】 【従来の技術】亜鉛系メッキ鋼板は種々の優れた特徴を
有するために、各種の防錆鋼板として広く使用されてい
る。この亜鉛系メッキ鋼板を自動車用防錆鋼板として使
用するためには、耐食性、塗装適合性等のほかに、車体
製造工程において、プレス成形性及び接着性に優れてい
ることが要求される。 【0003】しかし、亜鉛系メッキ鋼板は、一般に冷延
鋼板に比べてプレス成形性が劣るという欠点を有する。
これは亜鉛系メッキ鋼板とプレス金型との摺動抵抗が、
冷延鋼板の場合に比較して大きいことが原因である。即
ち、この摺動抵抗が大きいので、ビードと亜鉛系メッキ
鋼板との摺動抵抗が著しく大きい部分で、亜鉛系メッキ
鋼板がプレス金型に流入しにくくなり、鋼板の破断が起
こりやすくなる。 【0004】亜鉛系メッキ鋼板のプレス成形性を向上さ
せる方法としては、一般に高粘度の潤滑油を塗布する方
法が広く用いられている。しかしこの方法では、潤滑油
の高粘性のために、塗装工程で脱脂不良による塗装欠陥
が発生したり、またプレス時の油切れにより、プレス性
能が不安定になる等の問題がある。従って、亜鉛系メッ
キ鋼板のプレス成形性が改善されることが強く要請され
ている。 【0005】更に、自動車車体の製造工程においては、
車体の防錆及び制振等の目的で各種の接着剤が使用され
るが、近年になって亜鉛系メッキ鋼板の接着性は、冷延
鋼板の接着性に比較して劣ることが明らかになってき
た。 【0006】上述した問題を解決する方法として、特開
昭53-60332号公報および特開平2-190483号公報は、亜鉛
系メッキ鋼板の表面に電解処理、浸漬処理、塗布酸化処
理、または加熱処理を施すことにより、ZnOを主体とす
る酸化膜を形成させて溶接性、または加工性を向上させ
る技術(以下、「先行技術1」という)を開示してい
る。 【0007】特開平4-88196号公報は、亜鉛系メッキ鋼
板の表面に、リン酸ナトリウム5〜60g/lを含みpH2〜6の
水溶液中にメッキ鋼板を浸漬するか、電解処理、また、
上記水溶液を散布することによりP酸化物を主体とした
酸化膜を形成して、プレス成形性及び化成処理性を向上
させる技術(以下、「先行技術2」という)を開示して
いる。 【0008】特開平3-191093号公報は、亜鉛系メッキ鋼
板の表面に電解処理、浸漬処理、塗布処理、塗布酸化処
理、または加熱処理により、Ni酸化物を生成させること
によりプレス成形性および化成処理性を向上させる技術
(以下、「先行技術3」という)を開示している。 【0009】特開昭58-67885号公報は、亜鉛系メッキ鋼
板の表面にNi及びFe等の金属を生成させることにより耐
食性を向上させる技術(以下、「先行技術4」という)
を開示している。 【0010】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た先行技術には下記の問題がある。 【0011】先行技術1は、上述した各種処理により、
メッキ鋼板の表面にZnOを主体とする酸化物を生成させ
る方法であるため、プレス金型とメッキ鋼板との摺動抵
抗の低減効果は少なく、プレス成形性の改善効果は少な
く、また、接着性の改善効果を持たない。 【0012】先行技術2は、亜鉛系メッキ鋼板の表面にP
酸化物を主体とした酸化膜を形成する方法であるため、
プレス成形性及び接着性が劣化するという問題を有す
る。 【0013】先行技術3は、亜鉛系メッキ鋼板の表面に
Ni酸化物単層の皮膜を形成させる方法であるため、プ
レス金型とメッキ鋼板との摺動抵抗の低減効果は少な
く、プレス成形性の改善効果は少なく、また接着性の改
善効果を持たない。 【0014】先行技術4は、亜鉛系メッキ鋼板の表面に
NiおよびFe等の金属皮膜を形成する方法であるため、ま
たプレス成形性の改善効果が十分でない。 【0015】従って、この発明の目的は、上述した問題
を解決して、プレス成形性および接着性に優れた亜鉛系
メッキ鋼板を提供することにある。 【0016】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、上述した
問題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、亜鉛系メッ
キを施した鋼板のメッキ層の表面に、適正なFe-Ni-Zn-O
系皮膜を形成することにより、プレス成形性及び接着性
を大幅に改善することができることを見出した。 【0017】亜鉛系メッキ鋼板のプレス成形性が冷延鋼
板に比較して劣るのは、高面圧下において融点の低い亜
鉛と金型が凝着現象を起こすために、摺動抵抗が増大す
るのが原因である。本発明者等は、亜鉛と金型との凝着
を防ぐためには、亜鉛系メッキ鋼板のメッキ層の表面
に、亜鉛または亜鉛合金メッキ層より硬質で、また高融
点の皮膜を形成することが有効と考察した。この考察に
基づき、検討を進めた結果、プレス成形性向上には、亜
鉛系メッキ層の表面に適正なFe-Ni-Zn-O系皮膜を形成さ
せることが有効であることを知見した。特に、このFe-N
i-Zn-O系皮膜内の表面の酸化物系層の厚さとZn含有量を
適性に制御することにより、プレス成型時におけるメッ
キ層表面とプレス金型との摺動抵抗を低下させ、プレス
成形性を飛躍的に改善できることを明らかにした。この
理由は、Fe-Ni-Zn-O系皮膜が硬質でかつ融点が高いため
に、プレス成型時に金型との凝着が起こりにくいためと
考えられる。 【0018】亜鉛系メッキ鋼板の接着性が、冷延鋼板の
それに比較して劣ることは知られていたが、この原因は
明らかになっていなかった。本研究者らは鋭意検討を進
めた結果、接着性向上には、亜鉛系メッキ層の表面に適
正なFe-Ni-Zn-O系皮膜を形成させることが有効であるこ
とを知見した。特に、このFe-Ni-Zn-O系皮膜の酸化物系
層の最表層部の組成が重要であり、この部分に適正量の
Feを存在させることにより、接着性を大幅に改善できる
ことを発見した。 【0019】この発明は以上の知見に基づきなされたも
のであって、その要旨は、少なくとも一方のメッキ層表
面に、Fe、Ni、Zn及びOを含有し、下記の(1)〜
(5)を満足するFe-Ni-Zn-O系皮膜を形成したことを特
徴とするプレス成形性及び接着性に優れた亜鉛系メッキ
鋼板である。 【0020】(1)Fe-Ni-Zn-O系皮膜のNi含有量が10〜
1500mg/m2の範囲内にあり、(2)Fe-Ni-Zn-O系皮膜内
の表面に厚さ4〜100nmのFe、Ni、Znの酸化物及び/又は
水酸化物を主体とした酸化物系層が形成され、(3)前
記酸化物系層のFe含有量(wt%)とNi含有量(wt%)とZn含有
量(wt%)の和に対するZn含有量(wt%)の比率が0.3以上で
あり、(4)前記酸化物系層の最表層部のFe含有量(wt
%)とNi含有量(wt%)とZn含有量(wt%)の和に対するFe含有
量(wt%)の比率が0.04以上であり、(5)Fe-Ni-Zn-O系
皮膜の前記酸化物系層を除く下層部のO含有率が10wt%以
下であること。 【0021】 【発明の実施の形態】次に、この発明のFe-Ni-Zn-O系皮
膜の構造を、前記したように限定した理由を述べる。 【0022】図1に、本発明の亜鉛系メッキ鋼板の断面
を示す。21は鋼板、22は亜鉛系メッキ層、23はFe-Ni-Zn
-O系皮膜、24は酸化物系層である。 【0023】Ni含有量が10mg未満では、プレス成形性の
向上効果が不十分である。Ni含有量が1500mg/m2を超え
ると、プレス成形性の改善効果が飽和し、経済的に望ま
しくない。従って、Ni含有量は10〜1500mg/m2とする。 【0024】酸化物系層の厚さ及びZn含有率を適正に制
御することで、プレス成形性の改善効果が飛躍的に大き
くなる。 【0025】酸化物系層の厚さは、4nm以上でプレス成
形性の改善効果が大きくなる。100nmを超えると、リン
酸塩結晶の生成が抑制されて、化成処理性が劣化する。
従って、酸化物系層の厚さは、4〜100nmとする。 【0026】酸化物系層中に存在するZnは、プレス成形
性をさらに向上させる働きがある。酸化物系層のFe含有
量(wt%)とNi含有量(wt%)とZn含有量(wt%)の和に対するZ
n含有量(wt%)の比率(以下、Zn/(Fe+Ni+Zn)比率)を0.
3以上とすることでプレス成形性の改善効果が大きくな
る。従って、酸化物系層のZn/(Fe+Ni+Zn)比率≧0.3とす
る。 【0027】接着剤適合性は、酸化物系層の最表層部に
Feを適正量含有させることにより、飛躍的に向上する。
酸化物系層の最表層部のFe含有量(wt%)とNi含有量(wt%)
とZn含有量(wt%)の和に対するFe含有量(wt%)の比率(以
下、Fe/(Fe+Ni+Zn)比率)を0.04以上とすることで、接
着剤適合性を大幅に向上させることができる。従って、
酸化物系層の最表層部のFe/(Fe+Ni+Zn)比率≧0.04とす
る。 【0028】酸化物系層を除く下層部のO含有率が10%を
超えると、リン酸塩結晶の生成が抑制されて、化成処理
性が劣化する。従って、O含有率は10%以下とする必要が
ある。 【0029】なお、Fe-Ni-Zn-O系皮膜内の表面に形成さ
れた酸化物系層の厚さ及び深さ方向の組成分布を測定す
るための方法は特に限定されず、Arイオンスパッタリン
グと組み合わせたX線光電子分光法(XPS)により表面か
ら深さ方向分析を行う方法、角度分解XPSにより表面か
ら深さ方向分析を行う方法、オージェ電子分光法(AE
S)や二次イオン質量分析法(SIMS)などで表面から深
さ方向分析を行う方法などが上げられる。 【0030】例えばArイオンスパッタリングと組み合わ
せたAESで測定する場合、所定深さまでスパッタした
後、測定対象の各元素のスペクトル強度から相対感度因
子補正により、その深さでの組成を求めることができ
る。この分析を表面から繰り返すことにより、メッキ皮
膜の深さ方向の組成分布を測定することができる。 【0031】酸化物系層の最表層部のFe/(Fe+Ni+Zn)
比率は、Arイオンスパッタリングによってサンプル表層
部のコンタミレイヤーを除去した後、AESで測定した組
成から求めることができる。 【0032】この測定において、Fe-Ni-Zn-O系皮膜成分
であるNiの含有率は、ある深さで最大値をとった後減少
し、一定となる。Ni含有率が、最大値より深い位置で、
最大値と一定値との和の1/2となる深さを求め、酸化物
系層の最表層部からこの深さまでを、Fe-Ni-Zn-O系皮膜
とする。 【0033】更に、酸化物または水酸化物に起因するO
の含有率は、ある深さで最大値となった後、減少し一定
となる。Oの含有率が、最大値より深い位置で、最大値
と一定値との和の1/2となる深さを、Fe-Ni-Zn-O系皮膜
の酸化物系層の厚さとする。酸化物系層の最表層部から
この深さまでの範囲を酸化物系層とし、この範囲での組
成から、酸化物系層のZn/(Fe+Ni+Zn)比率を求めること
ができる。 【0034】また、Fe-Ni-Zn-O系皮膜のうち酸化物系層
を除く下層部の組成から、O含有率を算定する。 【0035】この発明において、表面にFe-Ni-Zn系皮膜
を形成させるのに使用する亜鉛系メッキを施した鋼板と
しては、鋼板の表面に、溶融メッキ法、電気メッキ法又
は気相メッキ法等により亜鉛系メッキ層を形成させた鋼
板であれば良い。この亜鉛系メッキ層の成分は、純Znの
他、Fe、Ni、Co、Mn、Cr、Al、Mo、Ti、Si、W、Sn、P
b、Nb及びTa等の金属(但し、Siも金属として扱う)も
しくは酸化物、又は、有機物の1種又は2種以上を含有す
る単層又は複層のメッキ層からなる。また、上記メッキ
層にSiO2及びAl2O3等の微粒子を含んでいても良い。ま
た、亜鉛系メッキ鋼板として、メッキ層の組成を変化さ
せた複層メッキ鋼板及び機能傾斜メッキ鋼板を使用する
こともできる。 【0036】この発明におけるFe-Ni-Zn-O系皮膜に含有
されるFe、Ni及びZnは、金属、酸化物あるいは水酸化物
のいずれであってもよい。また、下層の亜鉛系メッキ層
の成分元素や不可避的に含有される成分元素、例えば、
Cr、Co、Mn、Mo、Al、Ti、Si、W、Sn、Pb、NbあるいはT
aなどの元素が、酸化物や水酸化物および/または金属
単体の形態で取り込まれていてもよい。このような場合
でも、前記したFe-Ni-Zn-O系皮膜の効果が奏されるから
である。 【0037】本発明のFe-Ni-Zn-O系皮膜の形成方法は、
特に限定されるものではなく、置換メッキ、酸化剤含有
の水溶液への浸漬による方法、酸化剤含有の水溶液中で
の陰極電解処理及び陽極電解処理、所定の水溶液の吹き
付け、ロール塗布等、レーザーCVD、光CVD、真空蒸着、
並びにスパッタ蒸着法などの気相メッキ法を採用するこ
とができる。また、これらの処理を2つ以上組み合わせ
ることもできる。 【0038】 【実施例】次に、本発明を実施例により更に詳細に説明
する。 【0039】まず、Fe-Ni-Zn-O系皮膜を形成する前の亜
鉛系メッキ鋼板(以下、原板という)を調整した。調整
された原板は、厚さ0.8mmの3種類のメッキ種からなり、
メッキの方法、メッキ組成、メッキの付着量に応じて下
記の記号で示した。 【0040】GA:合金化溶融亜鉛メッキ鋼板(10wt%F
e、残部Zn)であり、付着量は両面共に60g/m2である。 GI:溶融亜鉛メッキ鋼板であり、付着量は両面共に90g/
m2である。 EG:電気亜鉛メッキ鋼板であり付着量は両面共に40g/m2
である。 【0041】このように調整された亜鉛系メッキ鋼板の
メッキ層表面に、Fe-Ni-Zn-O系皮膜を次の2種類の形成
方法のいずれかにより形成した。 【0042】[形成方法A] Fe2+、Ni2+、Zn2+及び酸
化剤を含有するpH2.0の硫酸酸性の水溶液中で、原板を
陰極電解処理することにより、原板の表面に所定のFe-N
i-Zn-O系皮膜を形成させた。温度は50℃とした。ここ
で、Fe2+、Ni2+及びZn2+の濃度の合計を1mol/lとし、混
合比を変化させることで皮膜全体及び酸化物系層の組成
を制御した。また、酸化剤には硝酸ナトリウムを用い、
濃度を種々の所定値に変化させて酸化物系層の厚さ及び
下層部のO含有率を調整した。さらに、電解時間の調節
により、皮膜中のNi含有量を制御した。 【0043】[形成方法B] Fe2+、Ni2+、Zn2+及び酸
化剤を含有するpH3.0の塩酸酸性の水溶液を原板に噴霧
することにより、原板の表面にFe-Ni-Zn-O系皮膜を形成
させた。温度は60℃とした。ここで、Fe2+、Ni2+及びZn
2+の濃度の合計を0.6mol/lとし、混合比を変化させるこ
とで皮膜全体及び酸化物系層の組成を制御した。また、
酸化剤として過酸化水素を用い、濃度を種々の所定値に
変化させて酸化物系層の厚さ及び下層部のO含有率を調
整した。さらに、噴霧時間の調節により、皮膜中のNi含
有量を制御した。 【0044】上記方法により表面にFe-Ni-Zn-O系皮膜を
形成させたそれぞれの亜鉛系メッキ鋼板から供試体を採
取した。なお、表面にFe-Ni-Zn-O系皮膜を形成させなか
ったものからも供試体を採取した。次いで、採取された
供試体について、Fe-Ni-Zn-O系皮膜についての分析試
験、並びに、亜鉛系メッキ鋼板のプレス成形性、化成処
理性及び接着性の特性評価試験を行なった。分析試験方
法及び特性評価試験方法は次の通りである。 【0045】(1)分析試験 「皮膜中のNi含有量(mg/m2)」Fe-Ni-Zn-O系皮膜と下
層のメッキ層を希塩酸により溶解剥離し、ICPによりNi
の定量分析を行ない、この結果から皮膜中のNi含有量を
算定した。 【0046】「酸化物系層の厚さ(nm)、酸化物系層の
Zn/(Fe+Ni+Zn)比率(wt%/wt%)、酸化物系層の最表層
部のFe/(Fe+Ni+Zn)比率(wt%/wt%)、酸化物系層を除
く下層部のO含有率(wt%)」まず、30secのArイオンス
パッタリングを行って供試体表面のコンタミネーション
レイヤーを除去した。次に、AESでFe-Ni-Zn-O系皮膜中
の各元素の含有率(wt%)を測定し、Fe/(Fe+Ni+Zn)比
率を計算した。この結果を酸化物系層の最表層部のFe/
(Fe+Ni+Zn)比率とした。 【0047】引き続き、所定の深さまでArイオンスパッ
タした後、AESによりFe-Ni-Zn-O系皮膜中の各元素の測
定を行ない、これを繰り返すことにより、Fe-Ni-Zn-O系
皮膜の深さ方向の各元素の組成分布を測定した。 【0048】この測定において、Fe-Ni-Zn-O系皮膜成分
であるNiの含有率は、ある深さで最大値をとった後減少
し、一定となる。Ni含有率が、最大値より深い位置で、
最大値と一定値との和の1/2となる深さを求め、酸化物
系層の最表層部からこの深さまでを、Fe-Ni-Zn-O系皮膜
とした。 【0049】更に、酸化物または水酸化物に起因するO
の含有率は、ある深さで最大値となった後、減少し一定
となる。Oの含有率が、最大値より深い位置で、最大値
と一定値との和の1/2となる深さを、Fe-Ni-Zn-O系皮膜
の酸化物系層の厚さとした。酸化物系層の最表層部から
この深さまでの範囲を酸化物系層とし、この範囲での組
成から、酸化物系層のZn/(Fe+Ni+Zn)比率を求めた。 【0050】さらに、Fe-Ni-Zn-O系皮膜のうち酸化物系
層を除く下層部の組成から、O含有率を算定した。 【0051】なお、スパッタ速度の標準試料としてSiO2
を用い、そのスパッタ速度は4.5nm/minであった。 【0052】(2)特性評価試験 「摩擦係数測定試験」プレス成形性を評価するために、
各供試体の摩擦係数を、下記装置により次の通り測定し
た。 【0053】図2は、摩擦係数測定装置を示す概略正面
図である。同図に示すように、供試体から採取した摩擦
係数測定用試料1が試料台2に固定され、試料台2は、
水平移動可能なスライドテーブル3の上面に固定されて
いる。スライドテーブル3の下面には、これに接したロ
ーラ4を有する上下動可能なスライドテーブル支持台5
が設けられ、これを押上げることにより、ビード6によ
る摩擦係数測定用試料1への押付荷重Nを測定するため
の第1ロードセル7が、スライドテーブル支持台5に取
付けられている。上記押付力を作用させた状態でスライ
ドテーブル3を水平方向へ移動させるための摺動抵抗力
Fを測定するための第2ロードセル8が、スライドテー
ブル3の一方の端部に取付けられている。なお、潤滑油
として、日本パーカライジング社製ノックスラスト55
0HNを試料1の表面に塗布して試験を行った。 【0054】供試体とビードとの間の摩擦係数μは、
式:μ=F/Nで算出した。但し、押付荷重N:400kg
f、試料の引き抜き速度(スライドテーブル3の水平移
動速度):100cm/minとした。 【0055】図3は、使用したビードの形状・寸法を示
す概略斜視図である。ビード6の下面が試料1の表面に
押しつけられた状態で摺動する。ビード6の形状は、幅
10mm、試料の摺動方向長さ69mm、摺動方向両端の下部は
曲率4.5mmRの曲面で構成され、試料が押付けられるビー
ド下面は幅10mm、摺動方向長さ60mmの平面を有する。 【0056】「接着性試験」各供試体から次の接着性試
験用試験体を調製した。図4は、その組み立て過程を説
明する概略斜視図である。同図に示すように、幅25mm、
長さ200mmの2枚の供試体10を、その間に0.15mmのスペ
ーサー11を介して、接着剤12の厚さが0.15mmとなる
ように重ね合わせて接着した試験体13を作成し、150
℃×10minの焼き付けを行う。このようにして調製され
た前記試験体を図5に示すようにT型に折り曲げ、引張
試験機を用いて200mm/minの速度で引張試験をし、試験
体が剥離したときの平均剥離強度(n=3回)を測定し
た。剥離強度は、剥離時の引張荷重曲線の荷重チャート
から、平均荷重を求め、単位:kgf/25mmで表した。図5
中、Pは引張荷重を示す。なお、接着剤は塩ビ系のヘミ
ング用アドヒシブを用いた。 【0057】「化成処理性試験」化成処理性を評価する
ために、次の試験を行った。各供試体を、自動車塗装下
地用の浸漬型リン酸亜鉛処理液(日本パーカライジング
社製PBL3080)で通常の条件で処理し、その表面にリン
酸亜鉛皮膜を形成させた。このようにして形成されたリ
ン酸亜鉛皮膜の結晶状態を走査型電子顕微鏡(SEM)に
より観察し、その結晶状態により3段階に区分した。評
価区分の符号とその内容は、次の通りである。 【0058】 ○:リン酸亜鉛皮膜の結晶が緻密で小さい。 ×:リン酸亜鉛皮膜の結晶が粗大である。 【0059】供試体の製造条件及び分析試験、特性評価
試験の結果を表1に記載する。 【0060】 【表1】 【0061】表1の試験結果から、下記事項が明らかで
ある。 (1)Fe-Ni-Zn-O系皮膜が形成されていないものはその
メッキ種が、GA、EG、GIのいずれであっても、プレス成
形性、接着性に劣る(比較例7、8、9)。 【0062】(2)Fe-Ni-Zn-O系皮膜のNi含有量が本発
明範囲より低い場合、プレス成形性の改善効果が小さい
(比較例1)。 【0063】(3)Fe-Ni-Zn-O系皮膜の酸化物系層の厚
さが本発明範囲より薄い場合、プレス成形性の改善効果
が小さい(比較例2)。 【0064】(4)Fe-Ni-Zn-O系皮膜の酸化物系層の厚
さが本発明範囲より厚い場合、化成処理性が劣化してし
まう(比較例3)。 【0065】(5)Fe-Ni-Zn-O系皮膜の酸化物系層のZn
含有率が本発明範囲より低い場合、プレス成形性の改善
効果が小さい(比較例4)。 【0066】(6)Fe-Ni-Zn-O系皮膜の酸化物系層の最
表層部のFe含有率が本発明範囲より低い場合、接着性の
改善効果が現れない(比較例5)。 【0067】(7)Fe-Ni-Zn-O系皮膜の酸化物系層を除
く下層部のO含有率が本発明範囲より高い場合、化成処
理性が劣化してしまう(比較例6)。 【0068】(8)これに対して、本発明範囲内にある
発明例については、メッキ種がGA、GI、EGのいずれであ
っても、プレス成形性、接着性に優れており、化成処理
性も良好である。 【0069】 【発明の効果】本発明は、以上のように構成したので、
亜鉛系メッキ鋼板の表面に形成されたFe-Ni-Zn-O系皮膜
は、硬質でかつ高融点を有するために、プレス成形時に
おけるメッキ層表面とプレス金型との摺動抵抗を低下さ
せ、プレス成形性を向上させる。また、酸化物系層の最
表層部のFeの存在により、接着性を向上させる効果を持
つ。また、Fe-Ni-Zn-O系皮膜は高融点であるため、スポ
ット溶接性における連続打点性を向上させる効果を持
つ。このように、本発明によれば、プレス成形性、接着
性及びスポット溶接性に優れた亜鉛系メッキ鋼板を提供
することができ、工業上有用な効果がもたらされる。
ある。 【図4】接着性試験体の組立過程を説明する概略斜視図
である。 【図5】接着性試験における剥離強度測定時の引張り荷
重の負荷を説明する概略斜視図である。 【符号の説明】 1 摩擦係数測定用試料 2 試料台 3 スライドテーブル 4 ローラ 5 スライドテーブル支持台 6 ビード 7 第1ロードセル 8 第2ロードセル 9 レール 10 供試体 11 スペーサー 12 接着剤 13 接着試験用試験体 21 鋼板 22 亜鉛系メッキ層 23 Fe-Ni-Zn-O系皮膜 24 酸化物系層 N 押付荷重 F 摺動抵抗力 P 引張荷重
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 少なくとも一方のメッキ層表面に、Fe、
Ni、Zn及びOを含有し、下記の(1)〜(5)を満足す
るFe-Ni-Zn-O系皮膜を形成したことを特徴とするプレス
成形性及び接着性に優れた亜鉛系メッキ鋼板。 (1)Fe-Ni-Zn-O系皮膜のNi含有量が10〜1500mg/m2の
範囲内にあり、(2)Fe-Ni-Zn-O系皮膜内の表面に厚さ
4〜100nmのFe、Ni、Znの酸化物及び/又は水酸化物を主
体とした酸化物系層が形成され、(3)前記酸化物系層
のFe含有量(wt%)とNi含有量(wt%)とZn含有量(wt%)の和
に対するZn含有量(wt%)の比率が0.3以上であり、(4)
前記酸化物系層の最表層部のFe含有量(wt%)とNi含有量
(wt%)とZn含有量(wt%)の和に対するFe含有量(wt%)の比
率が0.04以上であり、(5)Fe-Ni-Zn-O系皮膜の前記酸
化物系層を除く下層部のO含有率が10wt%以下であるこ
と。
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