JP3111921B2 - プレス成形性に優れた亜鉛系めっき鋼板 - Google Patents

プレス成形性に優れた亜鉛系めっき鋼板

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JP3111921B2 JP09066621A JP6662197A JP3111921B2 JP 3111921 B2 JP3111921 B2 JP 3111921B2 JP 09066621 A JP09066621 A JP 09066621A JP 6662197 A JP6662197 A JP 6662197A JP 3111921 B2 JP3111921 B2 JP 3111921B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、亜鉛系めっき鋼板
の改良に関し、特にプレス成形性に優れた亜鉛系めっき
鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】亜鉛系めっき鋼板は種々の優れた特徴を
有するために、各種の防錆鋼板として広く使用されてい
る。この亜鉛系めっき鋼板を自動車用防錆鋼板として使
用するためには、耐食性などの性能が要求されるだけで
なく、車体製造工程において、プレス成形性にも優れて
いることが要求される。
【0003】しかし、亜鉛系めっき鋼板は、一般に冷延
鋼板に比べてプレス成形性が劣るという欠点がある。こ
れは亜鉛系めっき鋼板とプレス金型との摺動抵抗が、冷
延鋼板の場合に比較して大きいことが原因である。すな
わち、この摺動抵抗が大きいと、ビードと鋼板との間で
激しく摺動する部分で、亜鉛系めっき鋼板が金型に流入
しにくくなり、鋼板の破断が起こりやすくなる。
【0004】亜鉛系めっき鋼板のプレス成形性を向上さ
せる方法としては、一般に、高粘度の潤滑油を塗布する
方法が広く用いられている。しかし、この方法では、潤
滑油の高粘性のために、脱脂不良による塗装欠陥が塗装
工程で発生したり、プレス時の油切れにより、プレス性
能が不安定になる等の問題がある。したがって、亜鉛系
めっき鋼板のプレス成形性の改善が強く要請されてい
る。
【0005】前記した問題を解決する方法として、特開
昭53-60332号公報および特開平2-190483号公報は、亜鉛
系めっき鋼板の表面に電解処理、浸漬処理、塗布酸化処
理、または加熱処理により、ZnO を主体とする酸化膜を
形成させる技術(以下、先行技術1 という。)を開示し
ている。
【0006】特開平3-191093号公報は、亜鉛系めっき鋼
板の表面に電解処理、浸漬処理、塗布処理、塗布酸化処
理または加熱処理によって、Ni酸化物皮膜を形成させる
ことにより、プレス成形性、化成処理性を向上させる技
術(以下、先行技術2 という。)を開示している。
【0007】特開昭58-67885号公報は、亜鉛系めっき鋼
板の表面に、その方法を特に限定するものではないが、
例えば、電気めっきまたは化学めっきにより、Niおよび
Feなどの金属皮膜を形成し、耐食性を向上させる技術
(以下、先行技術3 という。)を開示している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】前記した先行技術に
は、下記の問題がある。
【0009】先行技術1 は、めっき層表面にZnO を主体
とする酸化膜を形成させるため、通常の溶接性、加工性
は向上するが、プレス金型とめっき鋼板との摺動抵抗が
十分小さくならないため、プレス成形性の改善効果が少
ない。
【0010】先行技術2 は、形成されたNi酸化物皮膜が
脆く凝集破壊が起こりやすいため、プレス成形性のばら
つきが大きく、安定して優れたプレス成形性を得ること
ができず、またリン酸塩処理を施す場合に、リン酸塩を
生成させるZnが少ないため、化成処理性が不十分である
というも問題がある。
【0011】先行技術3 は、Niなどの金属のみの皮膜か
らなるため、耐食性は向上するが、金属皮膜とプレス金
型の金属接触により、金属皮膜が金型に凝着するため、
プレス成形性が劣るという問題がある。
【0012】したがって、本発明の目的は、前記した問
題を解決して、プレス金型との摺動抵抗を小さくするこ
とにより、プレス成形性に優れた亜鉛系めっき鋼板を提
供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
に、発明者らが鋭意検討を重ねた結果、めっき層表面
に、金属Ni並びにNiおよびZnの酸化物または酸化物と水
酸化物を含有してなる混合皮膜(以下「Ni-Zn-O 系皮
膜」と言う。)が形成されており、且つ、前記Ni-Zn-O
系皮膜の内の表層部は、NiおよびZnの酸化物または酸化
物と水酸化物(この明細書で「酸化物系層」と言う。)
で構成され、この酸化物系層の厚さが適正に制御された
亜鉛系めっき鋼板の中には、プレス成形性に優れたもの
が存在することを知見した。
【0014】前記したように、亜鉛系めっき鋼板は、冷
延鋼板に比べて、プレス金型との摺動抵抗が大きいた
め、亜鉛系めっき鋼板のプレス成形性は、冷延鋼板に比
較して劣っている。摺動抵抗が大きい理由は、亜鉛系め
っき鋼板は、高面圧下において融点の低い亜鉛が金型と
凝着現象を起こすためであり、凝集現象を防ぐために
は、亜鉛系めっき鋼板のめっき層表面に、亜鉛または亜
鉛合金めっき層より硬質且つ高融点の皮膜を形成するこ
とが有効であると考察した。
【0015】本発明者らは、前記した考察に基づき、さ
らに研究を進めた結果、適正なNi-Zn-O 系皮膜を亜鉛系
めっき鋼板の表面に形成させることにより、プレス成形
時におけるめっき層表面とプレス金型との摺動抵抗を低
下させることができ、したがって、亜鉛系めっき鋼板が
プレス金型へ滑り込みやすくなり、プレス成形性が向上
できることを見いだした。
【0016】本発明は、前記した知見に基づいてなされ
たものであって、本発明の亜鉛系めっき鋼板は、少なく
とも1方の面のめっき層表面に、金属Ni並びにNiおよび
Znの酸化物または酸化物と水酸化物を含有してなるNi-Z
n-O 系皮膜が形成された亜鉛系めっき鋼板であって、前
記Ni-Zn-O 系皮膜の内の表層部は、NiおよびZnの酸化物
または酸化物と水酸化物からなる酸化物系層で構成さ
れ、前記酸化物系層の厚さが0.5 〜50nmの範囲内にあ
り、且つ、前記Ni-Zn-O 系皮膜のNi含有量(wt%) とZn含
有量(wt%) との和に対するZn含有量(wt%) の比率が0.6
以下の範囲内に有ることに特徴を有するものである。
【0017】
【発明の実施の形態】次に、本発明の亜鉛系めっき鋼板
のめっき層表面に形成されたNi-Zn-O 系皮膜の組成、な
らびにNi-Zn-O 系皮膜の内の表層に形成された酸化物系
層の厚さを前記したように限定した理由を述べる。
【0018】図1に、本発明の亜鉛系めっき鋼板の断面
を示す。21は鋼板、22は亜鉛系めっき層、23は金
属Ni並びにNiおよびZnの酸化物または酸化物と水酸化物
を含有するNi-Zn-O 系皮膜、24はNiおよびZnの酸化物
または酸化物と水酸化物からなる酸化物系層である。
【0019】本発明においては、亜鉛系めっき層の表面
に、金属Ni並びにNiおよびZnの酸化物または酸化物と水
酸化物を含有するNi-Zn-O 系皮膜を形成する。ここで、
Ni-Zn-O 系皮膜について、Ni、Znの酸化物および金属Ni
のみならずNi、Znの水酸化物をも含むものとした理由
は、亜鉛めっき鋼板などの亜鉛系めっき鋼板表面に、N
i、Znの酸化物および金属Niを含む皮膜を形成させる場
合、その形成方法によっては、これらの水酸化物が前記
皮膜に随伴して不可避的に形成される場合があるからで
ある。
【0020】亜鉛系めっき層表面に形成した前記Ni-Zn-
O 系皮膜は亜鉛よりも高融点で硬質の皮膜なので、プレ
ス成形時の亜鉛の凝着現象を防いで摺動抵抗が小さくな
る。さらに、金属Niは、高面圧での摺動時に、表層酸化
物系層が脱落して新生面が露出した場合に潤滑油を吸着
しやすい性質があるので、潤滑油吸着膜によって、前記
の凝着現象を抑制する効果をさらに向上して摺動抵抗の
上昇を防ぐ。このような作用によりプレス成形性が向上
する。
【0021】また、前記Ni-Zn-O 系皮膜中のNiは溶接性
の向上に寄与する。Niの存在により溶接性が向上する理
由は、明らかではないが、非常に高融点のNi酸化物が、
亜鉛の銅電極への拡散を抑制し、銅電極の損耗を低減
し、あるいは、NiがZnと反応し、高融点のNi-Zn 合金を
形成し、亜鉛と銅電極の反応を抑制するためと推定され
る。
【0022】前記 Ni-Zn-O系皮膜には、酸化物や水酸化
物の形態で存在するZnに加えて、さらにZnが金属Znの形
態で含まれていてもよい。
【0023】また、Ni-Zn-O 系皮膜のNi含有量(wt%) と
Zn含有量(wt%) の和に対するZn含有量(wt%) の比率(以
下、「Zn/(Ni+Zn)」と言う。)が、0.6 を超えると、プ
レス成形性が劣化する。したがって、Ni-Zn-O 系皮膜の
Zn/(Ni+Zn)を0.6 以下の範囲にすべきである。
【0024】Ni-Zn-O 系皮膜が前記した皮膜であって
も、その表面に金属Niや金属Znなどの金属単体が部分的
に存在するようになると、プレス成形性の向上効果が低
減する。したがって、前記皮膜の表層は、Ni、Znの酸化
物または酸化物と水酸化物からなる酸化物系層に限定す
る。
【0025】Ni-Zn-O系皮膜の内の表層部の酸化物系層
の厚さが、0.5nm 未満では、前記酸化物系層の表面に部
分的に金属Niや金属Znなどの金属単体が存在するように
なり、プレス成形性の向上効果が低減する。一方、前記
酸化物系層の厚さが、50nmを超えると、酸化物系層の凝
集破壊が生じるため、逆にプレス成形性が低下する。
【0026】したがって、亜鉛系めっき鋼板のめっき層
表面に形成するNi-Zn-O 系皮膜の内の表層部の酸化物系
皮膜の厚さは、0.5 〜50nmの範囲に限定すべきである。
【0027】前記したように、Ni-Zn-O 系皮膜が形成さ
れ、この皮膜の内の表層部に厚さ0.5 〜50nmの範囲の酸
化物系層が形成されることにより、亜鉛系めっき鋼板の
プレス成形性が向上する。
【0028】さらに、Ni-Zn-O 系皮膜の付着量を、皮膜
中金属の合計換算量で10mg/m2 以上にすることにより、
プレス成形性が一層向上し、且つ、優れた化成処理性と
スポット溶接性が確保できる。しかし、前記付着量が20
00mg/m2 を超えると、プレス成形性の向上効果が飽和
し、且つ、リン酸塩結晶の生成が抑制されて、化成処理
性が劣化する。
【0029】したがって、優れたプレス成形性に加え
て、優れたスポット溶接性を確保するには、Ni-Zn-O 系
皮膜の付着量を10mg/m2 以上、また、優れた化成処理性
とスポット溶接性を得るには、Ni-Zn-O 系皮膜の付着量
を10〜2000mg/m2 の範囲にすることが望ましい。
【0030】なお、本発明のNi-Zn-O 系皮膜の皮膜厚、
組成およびNi-Zn-O 系皮膜の内の表層の酸化物系層の厚
さを測定するための方法として、Arイオンスパッタリン
グと組み合わせたオージェ電子分光法(AES )により表
面から深さ方向分析を行う方法があげられる。
【0031】すなわち、所定深さまでスパッタした後、
測定対象の各元素のスペクトル強度から相対感度因子補
正により、その深さでの各元素の組成を求めることがで
きる。この分析を表面から繰り返すことにより、めっき
皮膜の深さ方向における各元素の組成分布を測定するこ
とができる。この測定法において、酸化物または水酸化
物の量は、ある深さで最大になった後、減少して一定に
なる。酸化物または水酸化物に起因する酸素濃度が、最
大濃度より深い位置で、最大濃度と一定濃度との和の1/
2 となる深さを、Ni-Zn-O 系皮膜の内の表層の酸化物系
層の厚さとする。
【0032】本発明における亜鉛系めっき鋼板は、母材
である鋼板上に溶融めっき法、電気めっき法、気相めっ
き法等の方法で亜鉛系めっき層を形成させた鋼板であ
り、亜鉛系めっき層は、純亜鉛のほか、Cr、Co、Ni、F
e、Mn、Mo、Al、Ti、Si、W 、Sn、Pb、Nb、Taなどの金
属またはこれらの金属の酸化物あるいは、有機物などの
内の一種または二種以上を所定量含有する単層または複
層のめっき層であればよい。また、前記めっき層にSi
O2, Al2O3 等の微粒子を含有してもよい。その他、亜鉛
系めっき鋼板として、めっき層の成分元素は同じであっ
て組成の異なる複層の層からなる複層めっき鋼板や、め
っき層の構成元素は同じであって、めっき層の深さ方向
に組成を変化させた機能傾斜めっき鋼板を使用すること
も可能である。
【0033】本発明におけるNi-Zn-O 系皮膜には、金属
Ni、NiおよびZnの酸化物や水酸化物に加えて、さらに金
属単体の形態で存在するZnが含有されていてもよく、ま
た、下層の亜鉛系めっき層の成分元素や不可避的に含有
される成分元素、例えば、Cr、Fe、Co、Mn、Mo、Al、T
i、Si、W 、Sn、Pb、NbあるいはTaなどの元素が、酸化
物や水酸化物および/ または金属単体の形態で取り込ま
れていてもよい。このような場合でも、前記したNi-Zn-
O 系皮膜の効果が奏されるからである。
【0034】本発明における酸化物系層には、Ni-Zn-O
系皮膜内に不可避的に含まれる前記した成分元素の酸化
物や水酸化物を含有していてもよい。
【0035】前記したNi-Zn-O 系皮膜は、亜鉛系めっき
鋼板の少なくとも一方の面のめっき層表面に形成されて
いるので、車体製造工程のどのような工程において、ど
のような車体部分に使用される鋼板であるかに応じて、
その一方の面あるいは両面に形成させたものを適宜選択
することができる。
【0036】本発明のNi-Zn-O 系皮膜の形成方法は、特
に限定されるものではなく、所定の化学成分を有する水
溶液を用いる置換めっき、電気めっき、酸化剤含有の水
溶液への浸漬による方法、酸化剤含有の水溶液中での陰
極電解処理あるいは陽極電解処理、所定の化学成分を有
する水溶液の吹き付け、ロール塗布等、ならびにレーザ
ーCVD や光CVD 、真空蒸着法やスパッタ蒸着法などの気
相めっき法を採用することができる。
【0037】本発明のNi-Zn-O 系皮膜を、浸漬処理や陰
極電解処理により形成する場合、以下の方法によること
ができる。すなわち、Ni2+とZn2+の合計イオン濃度を0.
1mol/l以上含有し、温度が40〜70℃、pHが2.0 〜4.0 の
塩酸性水溶液で、5 〜50秒間浸漬処理する、あるいは、
硫酸ニッケルおよび硫酸亜鉛を含有するめっき浴中で、
Ni2+とZn2+の合計イオン濃度:0.1 〜2.0mol/lで、pH:
1.0 〜3.0 の条件で、亜鉛系めっき鋼板を陰極にして電
解することにより、Ni-Zn-O 系皮膜を形成する。また、
Ni-Zn-O 系皮膜を形成した後、過酸化水素、過マンガン
酸カリウム、硝酸、亜硝酸などの酸化剤を添加した水溶
液中に浸漬し、Ni-Zn-O 系皮膜の内の表層部に本発明の
所定の酸化物系皮膜を形成する。
【0038】
【実施例】次に、本発明を実施例により説明する。 (1)サンプル作成 まず、Ni-Zn-O 系皮膜を形成する前の亜鉛系めっき鋼板
(以下、原板という。)を調整した。調整された原板
は、厚さ0.8mm の3 種類のめっき種からなり、めっきの
方法、めっき組成、めっき付着量に応じて下記の記号で
示した。 GA:合金化溶融亜鉛めっき鋼板(10%Fe 、残部Zn)で、
付着量は両面共に60g/m2である。 GI:溶融亜鉛めっき鋼板で、付着量は両面共に90g/m2
ある。 EG:電気亜鉛めっき鋼板で、付着量は両面共に40g/m2
ある。
【0039】このように調整された亜鉛系めっき鋼板の
めっき層表面に、塩酸性水溶液への浸漬処理、陰極電解
処理により、Ni-Zn-O 系皮膜を形成させた。
【0040】浸漬処理については、前記で調整した亜鉛
系めっき鋼板を、Ni2+とZn2+を含有し、その合計イオン
濃度: 0.5 〜2.0mol/l、pH:2.5、液温: 50〜60℃の塩酸
性溶液中に5 〜20秒浸漬してNi-Zn-O 系皮膜を形成し
た。Ni-Zn-O 系皮膜のNi、Znの組成は、水溶液中のN
i2+、Zn2+の各イオン濃度比を変えることにより変化さ
せ、付着量は、浸漬時間を変えることにより変化させ
た。
【0041】陰極電解処理については、硫酸ニッケルお
よび硫酸亜鉛を含有し、Ni2+とZn2+の合計イオン濃度:
0.1〜2.0mol/l、pH:1.0〜3.0 のめっき浴中で、亜鉛系
めっき鋼板を陰極にして、電流密度:1〜150mA/cm2 、液
温:30 〜70℃の条件で電解してNi-Zn-O 系皮膜を形成し
た。Ni-Zn-O 系皮膜のNi、Znの組成は、めっき浴中のNi
2+、Zn2+の各イオン濃度比とpHを変えることにより変化
させ、付着量は、電解時間を変えることにより変化させ
た。
【0042】さらに、前記のNi-Zn-O 系皮膜を形成した
亜鉛系めっき鋼板を、酸化剤として過酸化水素を添加し
た水溶液中に浸漬し、Ni-Zn-O 系皮膜の内の表層部に、
酸化物系層を形成した。酸化物系層の厚さは、浸漬時間
を変えることにより調整した。
【0043】前記で得た各亜鉛系めっき鋼板について、
Ni-Zn-O 系皮膜の内の表層の酸化物系層の厚さ、Ni-Zn-
O 系皮膜の組成、付着量を測定し、また、プレス成形
性、スポット溶接性および化成処理性の評価試験を行っ
た。
【0044】プレス成形性は供試体とプレス機のビード
との摩擦係数により、スポット溶接性はスポット溶接の
連続打点数により、化成処理性はリン酸亜鉛皮膜結晶の
形成状態により評価した。
【0045】また、比較のために、前記した皮膜を形成
しない鋼板についても、同様の評価試験を行った。
【0046】具体的な測定方法、評価試験方法につい
て、以下に説明する。また、得られた結果について、表
1に記載する。
【0047】
【表1】
【0048】表1 において、No.1〜21の供試体は、本発
明範囲内の亜鉛系めっき鋼板(以下、「本発明供試体」
という。)であり、No.22 〜30の供試体は、本発明範囲
外の亜鉛系めっき鋼板(以下、「比較用供試体」とい
う。)である。
【0049】(2)Ni-Zn-O 系皮膜の内の表層の酸化物
層の厚さ、Ni-Zn-O 系皮膜の組成、付着量の測定 亜鉛系めっき鋼板のNi-Zn-O 系皮膜の内の表層の酸化物
系層の厚さ、Ni-Zn-O系皮膜の組成、付着量は、ICP 法
とArイオンスパッタリングとAES との組み合わせによ
り、次のようにして測定した。
【0050】ICP 法では、上層のNi-Zn-O 系皮膜成分と
下層のめっき層成分が同じものについては、両層の成分
元素を完全に分離することは困難である。したがって、
ICP法により、Ni-Zn-O 系皮膜の内、下層のめっき層中
に含まれていない元素であるNiについて定量分析して、
付着量を求めた。
【0051】さらに、供試体表面から所定の深さまで、
Arイオンスパッタした後、AES により皮膜中の各元素の
測定を繰り返して行って、Ni-Zn-O 系皮膜の深さ方向の
各元素の組成分布を測定した。この測定法において、酸
化物または水酸化物に起因する酸素の量は、ある深さで
最大濃度となった後、減少し一定になる。酸化物または
水酸化物に起因する酸素の濃度が、最大濃度より深い位
置で、最大濃度と一定濃度との和の1/2 となる深さを、
Ni-Zn-O 系皮膜の内の表層の酸化物系層の厚さとした。
なお、スパッタ速度の標準試料として、SiO2を用い、そ
のスパッタ速度は4.5nm/min であった。
【0052】(3)摩擦係数の測定 プレス成形性を評価するために、各供試体の摩擦係数を
下記の装置により測定した。
【0053】図2は、摩擦係数測定装置を示す正面図で
ある。図2に示すように、各共試体から採取した試料1
が、試料台2に固定され、試料台2は、水平稼動可能な
スライドテーブル3の上面に固定されている。スライド
テーブル3の下面には、これに接したローラ4を有する
上下方向に移動可能なスライドテーブル支持台5が設け
られ、これを押し上げることにより、ビード6による摩
擦係数測定用の試料1への押しつけ荷重N を測定するた
めの第一ロードセル7が、スライドテーブル支持台5に
取り付けられている。前記押しつけ荷重N を作用させた
状態で、スライドテーブル3を水平方向へ移動させた際
の摺動抵抗力F を測定するための第二ロードセル8が、
スライドテーブル3の水平方向の一方の端部に取り付け
られている。
【0054】なお、潤滑油として、日本パーカーライジ
ング社製ノックスラスト550HN を、試料1 の表面に塗布
して試験を行った。
【0055】供試体とビードとの摩擦係数μは式:μ=
F/N から算出した。但し、押しつけ荷重N:400kgf、引き
抜き速度(スライドテーブル3の移動速度):100cm/mi
n とした。
【0056】図3は、使用したビードの形状・寸法を示
す概略斜視図である。ビード6の下面が試料1の表面に
押しつけられた状態で摺動する。図3に示すように、ビ
ード6は、摺動方向長さが12mm、幅が10mmで、その下面
形状は、摺動方向の中央に長さ3mm の平面を有し、その
前後は4.5mmRの曲面で構成されている。
【0057】(4)連続打点性試験 スポット溶接性を評価するために、各供試体について、
連続溶接性試験を行った。
【0058】同じNo. の供試体を2枚重ね、その両側か
ら1対の電極チップではさみ、加圧通電して電流を集中
させた抵抗溶接(スポット溶接)を、下記溶接条件で連
続的に実施した。 電極チップ:先端径6mm のドーム型 加圧力:250kgf 溶接時間:12サイクル 溶接電流:11.0kA 溶接速度:1点/sec
【0059】連続打点性の評価としては、スポット溶接
時に、2 枚重ねた溶接母材(供試体)の接合部に生じた
溶融凝固した金属部(形状:碁石状、以下、ナゲットと
いう。)の径が、4t1/2 (t:1 枚の板厚)未満にな
るまでに連続打点溶接した打点数を用いた。なお前記打
点数をを電極寿命とし、電極寿命が5000点以上の場合は
◎、3000点以上の場合は○、1500点以上の場合は△、15
00点未満の場合は×とした。
【0060】(5)化成処理性 化成処理性を評価するために、以下の試験を行った。
【0061】各供試体を、自動車塗装下地用の浸漬型リ
ン酸亜鉛処理液(日本パーカーライジング社製PBL3080
)により通常の条件で処理し、その表面にリン酸亜鉛
皮膜を形成させた。このようにして形成されたリン酸亜
鉛皮膜を走査型電子顕微鏡(SEM )により観察した。そ
の結果、リン酸亜鉛皮膜が正常に形成されているものを
○、リン酸亜鉛皮膜が形成されていないかあるいは結晶
にスケが発生しているものを×とした。
【0062】表1 に示した結果から以下のことがわか
る。本発明範囲外にある比較用供試体については、下記
の通りである。
【0063】Ni-Zn-O 系皮膜が形成されていないもの
は、そのめっき種が、記号:GA、EG、GIのいずれであっ
ても、プレス成形性に劣る(比較用供試体No.22 〜24参
照)。
【0064】Ni-Zn-O 系皮膜の内の表層部の酸化物系
層が形成されていても、その厚さが本発明範囲よりも薄
い場合は、プレス成形性に劣る(比較用供試体No.25 、
28参照)。
【0065】Ni-Zn-O 系皮膜の内の表層部の酸化物系
層が形成されていても、その厚さが本発明範囲よりも厚
い場合は、プレス成形性の向上効果が得られない(比較
用供試体No.27 、30参照)。
【0066】Ni-Zn-O 系皮膜の内の表層部の酸化物系
層の厚さが本発明範囲内にあるが、Zn/(Ni+Zn)が本発明
範囲より大きい場合は、プレス成形性に劣る(比較用供
試体No.26 、29参照)。
【0067】これに対して、本発明範囲内にある本発明
供試体については、めっき種が、記号:GA、EG、GIのい
ずれであっても、プレス成形性に優れている(本発明供
試体No.1〜21参照)。このうちNi-Zn-O 系皮膜の付着量
が10〜2000mg/m2 のものは、さらにスポット溶接性、化
成処理性にも優れ、また、Ni-Zn-O 系皮膜の付着量が15
00mg/m2 を超えるものは、化成処理性には劣るが、スポ
ット溶接性にも優れている。
【0068】
【発明の効果】本発明は以上のように構成したので、亜
鉛系めっき鋼板のプレス成形時におけるめっき層表面と
プレス金型との摺動抵抗が低下し、亜鉛系めっき鋼板が
プレス金型へ滑り込み易くなる。かくして、プレス成形
性に優れた亜鉛系めっき鋼板を提供することができる、
工業上有用な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の亜鉛系めっき鋼板の断面図。
【図2】摩擦係数測定装置を示す概略正面図。
【図3】図2の摩擦係数測定装置のビード形状・寸法を
示す概略斜視図。
【符号の説明】
1 試料 2 試料台 3 スライドテーブル 4 ローラ 5 スライドテーブル支持台 6 ビード 7 第一ロードセル 8 第二ロードセル 9 レール 21 鋼板 22 亜鉛系めっき層 23 Ni-Zn-O 系皮膜 24 酸化物系層 P 比張荷重 N 摺動抵抗力
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 浦川 隆之 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 稲垣 淳一 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 鷺山 勝 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 平10−259467(JP,A) 特開 平9−170087(JP,A) 特開 平10−317188(JP,A) 国際公開96/10103(WO,A1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 2/00 - 2/40 C23C 22/00 - 22/86 C23C 28/00 - 30/00 C25D 3/00 - 7/12

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも1方の面のめっき層表面に、
    金属Ni並びにNiおよびZnの酸化物または酸化物と水酸化
    物を含有してなるNi-Zn-O 系皮膜が形成された亜鉛系め
    っき鋼板であって、前記Ni-Zn-O 系皮膜の内の表層部
    は、NiおよびZnの酸化物または酸化物と水酸化物からな
    る酸化物系層で構成され、前記酸化物系層の厚さが0.5
    〜50nmの範囲内にあり、且つ、前記Ni-Zn-O 系皮膜のNi
    含有量(wt%) とZn含有量(wt%) との和に対するZn含有量
    (wt%) の比率が0.6 以下の範囲内に有ることを特徴とす
    るプレス成形性に優れた亜鉛系めっき鋼板。
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