JP3273642B2 - インクジェット用水性インク組成物 - Google Patents

インクジェット用水性インク組成物

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、インクジェット用水性
インク組成物に関する。さらに詳しくは、種々のインク
ジェット方式に好適に使用しうるインクジェット用水性
インク組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、その静粛性、低ランニングコスト
などの点から、記録方式としてインクジェット方式が注
目され、種々の組成のインクジェット用インクが提案さ
れている。
【0003】インクジェット用インクに要求される性能
としては、印字物が滲まないこと、ノズルで目詰まりを
おこさないこと、安定して歪みがない印字を続けること
ができること、発色性が高いこと、印字物の耐水性がよ
いこと、保存安定性がよいこと、安全性が高いことなど
があげられるが、これらのなかでも、とくに印字物が滲
まず、ノズルで目詰まりをおこさないインクジェット用
インクの開発が強く望まれている。
【0004】そこで、印字物の滲みを防止するために樹
脂などを配合したインクジェット用インクが提案されて
いるが、かかるインクはノズルで目詰まりをおこしやす
いので、さらに遅乾性物質などを多量に配合してインク
の乾燥をおさえ、ノズルでの目詰まりを防止することが
検討されている。
【0005】しかしながら、前記遅乾性物質の配合量を
増加させたばあいには、インクの粘度が高くなりすぎた
り、液滴の飛翔コースが歪み、印字物に歪みを生じやす
くなるなどの問題がある。
【0006】また、近年、染料タイプの水性インクを搭
載したインクジェットプリンターが使用されつつある
が、かかる染料タイプの水性インクを用いて形成された
印字物は、滲みやすく、耐水性にすぐれないという問題
がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明者ら
は、前記従来技術に鑑みてノズルで目詰まりをおこすこ
とがなく、滲みがなく、安定した状態で歪みがない印字
物を連続して形成することができ、発色性、耐水性にす
ぐれたインク組成物をうるべく鋭意研究を重ねた結果、
モノまたはセスキテルペン系化合物を配合することによ
ってこれらの物性を同時に有するインクジェット用水性
インク組成物がえられることをようやく見出し、本発明
を完成するにいたった。
【0008】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は顔
料、水性媒体およびモノまたはセスキテルペン系化合物
を含有してなるインクジェット用水性インク組成物に関
する。
【0009】
【作用および実施例】本発明のインクジェット用水性イ
ンク組成物は、前記したように、顔料、水性媒体および
モノまたはセスキテルペン系化合物を含有するものであ
る。
【0010】本発明に用いられる顔料には、とくに限定
がなく、各種有機顔料、無機顔料などを用いることがで
きる。
【0011】前記有機顔料としては、たとえばアゾ系顔
料、ナフトール系顔料、イソインドリノン系顔料、アン
トラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ジオキサジン
系顔料、キナクリドン系顔料、フタロシアニン系顔料、
ジケトピロロピロール、スチレン系顔料、ペリレン系顔
料、各種レーキ顔料などがあげられる。
【0012】前記無機顔料としては、たとえばカーボン
ブラック、二酸化チタン、酸化鉄、群青、金属粉末など
があげられる。
【0013】前記顔料の平均粒子径は、用いるプリンタ
ーのノズルの孔径にもよるが、小さいほうが好ましく、
通常0.01〜数10μm、好ましくは0.05〜1μm、さらに
好ましくは0.05〜0.3 μmであることが望ましい。かか
る顔料の平均粒子径が前記範囲内にあるばあいには、凝
集をおこすことがなく、均一にインク組成物中に分散さ
れやすくなるという利点がある。
【0014】なお、本発明においては、顔料の平均粒子
径が所望の範囲内にあるようにするために、インク組成
物を調製する前に、あらかじめ顔料をたとえばビーズミ
ル、ロールミル、ジェットミル、超音波分散機などの混
合磨砕機を用いて微細化しておいてもよく、後述するよ
うにインク組成物を調製したのちにこれらの混合磨砕機
を用いて微細化してもよい。また、本発明においては、
その平均粒子径が所望の範囲内にあるような顔料をあら
かじめ水などに分散させた分散液を用いてインク組成物
を調製することができる。
【0015】前記顔料の配合量は、インク組成物100 部
(重量部、以下同様)に対して1〜15部、なかんづく3
〜10部であることが好ましい。かかる顔料の配合量が1
部未満であるばあいには、着色性に劣るようになる傾向
があり、また15部をこえるばあいには、えられるインク
組成物の粘度が上昇し、安定性が低下する傾向がある。
【0016】本発明に用いられる水性媒体としては、水
をはじめ、たとえば分散剤、遅乾燥性付与剤などを水に
配合したものなどがあげられる。
【0017】前記水には、とくに限定がなく、たとえば
イオン交換水などを用いることができ、かかる水の配合
量は、前記顔料や後述する分散剤、遅乾燥性付与剤、モ
ノまたはセスキテルペン系化合物などの配合量が所望の
範囲内に含まれるように決定すればよい。
【0018】前記分散剤としては、たとえばスチレン−
(メタ)アクリル酸共重合体、アルキルスチレン−(メ
タ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル
酸−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、
(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸アルキルエス
テル共重合体などのアクリル系樹脂、およびこれらの塩
などのアルカリ中和型水溶性合成樹脂、ロジン、シェラ
ック、カゼインなどのアルカリ中和型水溶性天然樹脂な
どのアルカリ中和型水溶性樹脂などがあげられ、これら
は単独でまたは2種以上を混合して用いることができる
が、これらのなかでは、長期にわたる保存安定性の面か
ら、腐敗しにくいアルカリ中和型水溶性合成樹脂が好ま
しい。なお、アルカリ中和型水溶性樹脂とは、その構造
中にたとえばカルボン酸基などの酸基を有し、たとえば
アンモニア、アミンなどのアルカリでかかる酸基を中和
することによって水溶化するものをいい、該アルカリ中
和型水溶性樹脂は、バインダーとしても作用するもので
ある。
【0019】かかるアルカリ中和型水溶性樹脂の重量平
均分子量は、あまりにも大きいばあいには、えられるイ
ンク組成物の粘度が高くなりすぎて印字に適さなくなる
傾向があり、またあまりにも小さいばあいには、バイン
ダーとしての効果が低下するようになる傾向があるの
で、通常3000〜30000 、なかんづく5000〜15000 程度で
あることが好ましい。
【0020】前記アルカリ中和型水溶性樹脂は、顔料を
均一に分散させ、最終的には紙上に固着させる目的で用
いられるものであり、かかるアルカリ中和型水溶性樹脂
の配合量は、用いる顔料の種類およびその配合量によっ
て異なるので一概には決定することができないが、通常
インク組成物100 部に対して0.05部以上、好ましくは0.
1 部以上となるように調整することが望ましい。かかる
アルカリ中和型水溶性樹脂の配合量が0.05部未満である
ばあいには、顔料の分散性およびえられるインク組成物
の安定性が低下するようになる傾向がある。なお、かか
るアルカリ中和型水溶性樹脂の配合量があまりにも多い
ばあいには、えられるインク組成物の粘度がいちじるし
く上昇し、印字に適さなくなる傾向があるので、インク
組成物100 部に対して30部以下、好ましくは15部以下と
なるように調整することが望ましい。
【0021】前記アルカリ中和型水溶性樹脂は、あらか
じめ水に配合してから用いてもよく、前記顔料、水や後
述するモノまたはセスキテルペン系化合物を配合する際
に同時に配合してもよい。
【0022】なお、かかるアルカリ中和型水溶性樹脂を
水に配合する際には、たとえば中和剤、溶解助剤などを
用いることが好ましい。
【0023】前記中和剤としては、たとえばアミノメチ
ルプロパノール、モノエタノールアミン、ジエタノール
アミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミ
ン、モルホリン、アンモニア水などがあげられ、これら
は単独でまたは2種以上を混合して用いることができ
る。
【0024】前記溶解助剤としては、たとえばプロピレ
ングリコール、イソプロパノールなどがあげられ、これ
らは単独でまたは2種以上を混合して用いることができ
る。
【0025】また、本発明においては、前記アルカリ中
和型水溶性樹脂のほかにも、分散剤としてアニオン性界
面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性
剤、両性界面活性剤などの各種界面活性剤を、その配合
量を適宜調整して用いることができる。
【0026】前記遅乾燥性付与剤としては、たとえばマ
ルチトール、ソルビット、ショ糖、ラクトースなどの糖
類、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリ
コール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコー
ル、ジプロピレングリコール、チオジグリコールなどの
多価アルコール、モノエタノールアミン、ジエタノール
アミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノール
アミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノ
ールアミンなどのアミン類、ホルムアミド、アセトアミ
ドなどのアミド類、尿素、N−メチルピロリドン、シリ
コーン系界面活性剤などがあげられ、これらは単独でま
たは2種以上を混合して用いることができる。かかる遅
乾燥性付与剤の配合量は、インク組成物100 部に対して
3〜50部程度となるように調整することが好ましい。な
お、本発明においては、インク組成物の乾燥性を調整す
るために、たとえばメタノール、エタノール、プロパノ
ールなどの低級1価アルコールを用いることもできる。
【0027】なお、前記水性媒体には、必要に応じてた
とえばアミノメチルプロパノールなどのpH調整剤、ア
セチレングリコールなどの消泡剤、チアゾロン系化合物
などの防腐剤などの各種インク用添加剤を本発明の目的
を阻外しない範囲内で配合することができる。
【0028】本発明において、インクジェット用水性イ
ンク組成物にモノまたはセスキテルペン系化合物が配合
されていることが大きな特徴であり、かかるモノまたは
セスキテルペン系化合物が配合されていることによっ
て、えられるインク組成物を用いて形成された印字物の
発色性がいちじるしく向上し、同時に歪みがない安定し
た印字を行ない続けることができる。
【0029】前記モノまたはセスキテルペン系化合物と
しては、たとえばd−リモネン、l−リモネン、dl−
リモネン、テルピネオールなどのモノテルペン、セスキ
テルペンなどのテルペン、これらのテルペンを含有する
レモンオイル、オレンジオイルなどの天然抽出物などが
あげられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用
いることができるが、これらのなかでは、印字物の発色
性がより向上するという点からリモネンが好ましい。
【0030】前記モノまたはセスキテルペン系化合物の
配合量は、インク組成物100 部に対して0.05〜10部、好
ましくは0.05〜5部、さらに好ましくは0.1 〜1.5 部で
あることが望ましい。かかるモノまたはセスキテルペン
系化合物の配合量が0.05部未満であるばあいには、該モ
ノまたはセスキテルペン系化合物を配合したことによる
効果が充分に発現されなくなる傾向があり、また10部を
こえるばあいには、その効果がそれ以上発現されること
がなく、不経済となる傾向がある。
【0031】本発明のインクジェット用水性インク組成
物を調製する方法には、とくに限定がなく、たとえば前
記顔料、水性媒体およびモノまたはセスキテルペン系化
合物ならびに必要に応じてその他の添加剤などを含有し
た成分を、たとえばビーズミル、ロールミル、ジェット
ミル、超音波分散機などの混合磨砕機を用いて分散させ
たのち、ノズルなどで目詰まりをおこすことがないよう
に、たとえば遠心分離、フィルター濾過などを行なって
粗大粒子、凝集物などを除去する方法などを採用するこ
とができる。
【0032】かくしてえられる本発明のインクジェット
用水性インク組成物の20℃でのpHは、アルカリ中和型
水溶性樹脂を水中で溶解して用いるばあいを考慮する
と、好ましくは7以上、さらに好ましくは8〜10程度で
あることが望ましい。
【0033】本発明のインクジェット用水性インク組成
物には、モノまたはセスキテルペン系化合物が用いられ
ており、該インク組成物は、ノズルで目詰まりをおこす
ことがなく、滲みがなく、安定した歪みがない印字物を
連続して形成することができ、発色性、耐水性にすぐれ
たものである。
【0034】つぎに、本発明のインクジェット用水性イ
ンク組成物を実施例に基づいてさらに詳細に説明する
が、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではな
い。
【0035】実施例1〜8および比較例1〜3 各成分を表1および表2に示す配合割合でダイノミル
(シンマルエンタープライゼス社製)を用いて分散させ
たのち、遠心分離機で粗大粒子を除去し、さらに孔径が
1μmのメンブレンフィルターでろ過してインク組成物
をえた。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】なお、表1および表2中の各成分は以下の
とおりである。
【0039】 カーボンブラック:ピグメント・ブラック7 ナフトールレッド:ピグメント・レッド17 ジスアゾイエロー:ピグメント・イエロー74 フタロシアニンブルー:ピグメント・ブルー15:3 ノニオン性界面活性剤:ポリオキシエチレンアルキルエ
ーテル(HLB17) アニオン性界面活性剤:ナフタレンスルホン酸塩 pH調整剤:アミノメチルプロパノール 消泡剤:アセチレングリコール 防腐剤:チアゾロン系化合物 また、表1および表2中のスチレン−アクリル酸共重合
体の重量平均分子量は10000 、ポリエチレングリコール
の重量平均分子量は400 である。
【0040】また、分散後の顔料の平均粒子径(コール
ターカウンター(N4型、日科機社製)にて測定)、え
られたインク組成物の20℃でのpH(pHメーター(P
HL−10型、電気化学計器(株)製)にて測定)およ
び25℃での粘度(E型粘度計((株)東京計器製)にて
測定)を表3に示す。
【0041】つぎに、えられたインク組成物の物性とし
て、滲みの発生、発色性、連続印字における吐出安定性
および耐水性を以下の方法にしたがって調べた。その結
果を表3に示す。
【0042】また比較例4として染料インク(直接染料
系)についても同様にして前記物性を調べた。その結果
を表3に示す。
【0043】(イ)滲みの発生 インク組成物をインクジェットプリンター(バブルジェ
ットプリンター、BJ−10V、キャノン(株)製)に
装填してPPC用紙に印字し、えられた印字物の描線の
滲みの有無を目視にて観察し、以下の評価基準に基づい
て評価した。
【0044】(評価基準) A:まったく滲みがない。 B:ほんのわずかに滲みがあるが、文字の判別が充分に
可能である。 C:やや滲みがあり、文字の判別がやや困難である。 D:滲みがひどく、文字の判別がかなり困難である。
【0045】(ロ)発色性 (イ)滲みの発生の試験と同様にしてえられた印字物の
OD値をマクベス濃度計(マクベス社製)を用いて測定
した。
【0046】(ハ)連続印字における吐出安定性 インク組成物を前記インクジェットプリンターに装填し
てPPC用紙300 枚に連続して印字し、300 枚目の印字
物の歪みの有無およびノズルでの目詰まりの有無をそれ
ぞれ目視にて観察し、あわせて以下の評価基準に基づい
て評価した。
【0047】(評価基準) A:印字物の歪みがなく、ノズルで目詰まりがおこらな
い。 B:ほんのわずかに印字物の歪みがあるが、ノズルで目
詰まりはおこらない。 C:印字物の歪みがあり、ノズルで目詰まりがおこる
が、ノズルをクリーニングすれば目詰まりは解消され
る。 D:印字物の歪みがひどく、ノズルをクリーニングして
も目詰まりが解消されない。
【0048】(ニ)耐水性 (イ)滲みの発生の試験と同様にしてえられた印字物を
室温で乾燥させたのち、スポイドでかかる印字物の上に
水を滴下してインク組成物の流れおよび印字物の滲みの
有無を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価
した。
【0049】(評価基準) A:まったく変化が認められない。 B:ややインク組成物の流れが認められ、わずかに滲み
がある。 C:インク組成物の流れが認められ、滲みがある。 D:インク組成物がかなり流れ、滲みがひどい。
【0050】
【表3】
【0051】表3に示された結果から、実施例1〜8で
えられた本発明のインク組成物は、印字物にほとんど滲
みがなく、OD値が高く発色性にすぐれ、連続して印字
したばあいであっても、ノズルで目詰まりをおこさず、
印字物に歪みがなく、耐水性にすぐれたものであること
がわかる。
【0052】
【発明の効果】本発明のインクジェット用水性インク組
成物は、ノズルで目詰まりをおこすことがなく、滲みが
なく、安定した歪みがない印字物を連続して形成するこ
とができ、発色性、耐水性にすぐれたものであるので、
種々のインクジェット方式に好適に使用しうるという効
果を奏する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−32925(JP,A) 特開 平4−239065(JP,A) 特開 平4−154875(JP,A) 特開 平2−302476(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C09D 11/00 - 13/00 CA(STN)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 顔料、水性媒体およびモノまたはセスキ
    テルペン系化合物を含有してなるインクジェット用水性
    インク組成物。
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