JP3269874B2 - 異形断面複合繊維の製造方法および紡糸口金装置 - Google Patents

異形断面複合繊維の製造方法および紡糸口金装置

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JP3269874B2 JP05312693A JP5312693A JP3269874B2 JP 3269874 B2 JP3269874 B2 JP 3269874B2 JP 05312693 A JP05312693 A JP 05312693A JP 5312693 A JP5312693 A JP 5312693A JP 3269874 B2 JP3269874 B2 JP 3269874B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】 本発明は伸縮性複合繊維の製造
方法、およびそれに用いる紡糸口金装置に関する。詳細
には、本発明は、天然繊維、特にウールのもつ弾性的伸
縮性およびその回復性を有する複合繊維の製造方法、並
びにそのための口金装置に関する。
【0002】
【従来の技術】天然繊維よりなる布帛の有する優れた特
性、例えば張り、腰、ふくらみ、ぬめりのなさ、しなや
かさ、ソフトさなどの風合を合成繊維製の布帛に付与す
るために従来から各種の方法が提案されている。例え
ば、合成繊維に絹の風合を付与する方法としては、繊維
断面の異形化、異収縮繊維の混繊化、流体処理による繊
維の絡合、異繊度繊維の混合、繊維の極細化などが提案
されている。また、合成繊維にウールの風合を付与する
方法としては、繊維の仮撚加工、流体加工、ギヤ捲縮加
工などにより後加工して機械的捲縮を付与する方法;製
糸時に異方冷却や異方加熱を行う方法;熱的性質の異な
るポリマーをサイドバイサイド型または芯鞘型に複合し
てポリマーの熱的性質の差により捲縮させる方法;起毛
加工による方法などが提案されている。
【0003】上記した従来の方法による場合は天然繊維
に類似した特性を合成繊維にある程度付与できるもの
の、未だ充分満足のゆくものではなく、特に天然繊維に
おけるような布帛中での大きなウエーブ立ちを合成繊維
に付与することは極めて困難であるのが実情である。ウ
エーブ立ちの小さい合成繊維製の布帛はタテ・ヨコの伸
びが少なく、衣服として仕立てた時に仕立て映えがせ
ず、天然繊維製の布帛から仕立てた衣服におけるような
高級感が得られない。
【0004】また、合成繊維製の織物中に空隙を発生さ
せて織物に伸縮性を付与するために、繊維断面を図2の
(イ)または(ロ)に示すように、比較的高収縮性のポリマ
ーCと低収縮性ポリマーDとがサイドバイサイド型で結
合した二葉型複合繊維として糸にねじれを発生させるこ
とが提案されている[特開昭59−59920号公報−
図2の(イ)、特開平3−287810号公報−図2の
(ロ)]。しかし、図2の(イ)の繊維の場合は、ねじ
れが一方向のみに生ずるため、サテンのような糸があま
り強く拘束されない織物ではねじれの発現により織物中
に空隙が生じて織物にタテ・ヨコの伸縮性がある程度付
与されるものの、平織のように糸が強く拘束される織物
では糸がある程度自由に動き得る空隙が生じず、タテ・
ヨコの伸びやボリューム感を付与できない。また、図2
の(ロ)の繊維の場合は、高収縮性ポリマーCを中心に
間欠的に反転するねじれが発現するが、繊維断面が偏平
であるために、そのねじれだけでは織物中に十分な空隙
を保つことができず、織物の伸縮性やボリューム感が充
分ではない。
【0005】更に、伸縮性の合成繊維を得る方法とし
て、熱可塑性エラストマーから合成繊維を製造すること
が提案されている(特公平2−36683号公報等)。
しかしながら、熱可塑性エラストマーからなる合成繊維
は、その伸縮性が極端に高いことにより、例えばスポー
ツウエアのような極度に高い伸縮性が要求される特殊な
用途には適するものの、ウールなどの天然繊維の有する
自然な伸縮性に欠けていおり、通常の衣服には適してい
ない。また、熱可塑性エラストマーからなる繊維は熱収
縮応力が0.1〜0.2g/デニールと小さいため、布
帛にした場合に伸縮性はあるもののふくらみが発現しに
くく、風合の劣ったものになる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】 本発明の目的は、天
然のウールとほぼ同程度の自然で且つ良好な伸縮性およ
び弾性回復性を有し、仕立て映えのする布帛を製造する
ことのできる合成繊維の製造方法、およびそのための製
造装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成すべく
色々検討を重ねた結果、本発明者らは、熱収縮率の異な
る特定の複数の熱可塑性ポリマーから特定の複合形態お
よび断面構造を有する複合繊維を製造すると、上記の目
的を達成できることを見出して本発明を完成した。
【0008】 すなわち、本発明は、熱収縮応力が0.
3g/デニール以上および熱収縮率が15%以上である
中心部を形成する熱可塑性ポリマー(A)の中心部流れ
に対して、熱可塑性ポリマー(A)よりも熱収縮率の小
さい熱可塑性ポリマー(B)の3個以上の流れを、口金
板に設けた紡糸孔に至る手前で、該中心流れを取り囲ん
で互いに分離した位置から各々直角方向またはほぼ直角
の方向に導入して、熱可塑性ポリマー(A)と熱可塑性
ポリマー(B)からなる複合流れを形成させ、該複合流
れを口金板に設けた3個以上の突出部を有する多葉断面
形状の紡糸口より紡出させることにより、熱収縮応力が
0.3g/デニール以上および熱収縮率が15%以上で
ある熱可塑性ポリマー(A)からなる繊維軸方向に伸び
る中心部と、該中心部を取り囲んで中心部に連結して設
けた繊維軸方向に伸びる3個以上の突出部とからなる多
葉断面を有し、且つ各突出部の少なくとも一部は熱可塑
性ポリマー(A)よりも熱収縮率の小さい熱可塑性ポリ
マー(B)より構成されている異形断面複合繊維を製造
する方法である。
【0009】 更に、本発明は、上記の製造方法を行
うのに適した紡糸口金装置をも包含するものであり、こ
の紡糸口金装置は、中心導孔および3個以上の側導孔を
有する分配板であって且つ該3個以上の側導孔は中心導
孔を取り囲んで互いに分離して位置すると共に各々が中
心導孔に対して直角方向またはほぼ直角方向に連通して
いる分配板を、3個以上の突出部を有する多葉断面形状
の紡糸口を有する口金板の上流側に、該口金板に当接し
て設けた構造を有している。
【0010】 そして、上記本発明の製造方法および装
置によって、上記のように、熱可塑性ポリマー(A)か
らなる繊維軸方向に伸びる中心部と、該中心部を取り囲
んで中心部に連結して設けた繊維軸方向に伸びる3個以
上の突出部とからなる多葉断面を有し、該中心部は熱収
縮応力が0.3g/デニール以上および熱収縮率が15
%以上である熱可塑性ポリマー(A)より構成され、且
つ各突出部の少なくとも一部は熱可塑性ポリマー(A)
よりも熱収縮率の小さい熱可塑性ポリマー(B)より構
成されている異形断面複合繊維が形成される(以下、本
発明の方法および装置により得られる該異形断面複合繊
維を「本発明の異形断面複合繊維」ということがあ
る)。
【0011】限定されるものではないが、本発明の内容
の理解を容易にするために、本発明の異形断面複合繊維
の断面(本明細書では繊維の横断面を断面という)の例
を示す図1を参照して、本発明について説明する。本発
明の異形断面複合繊維は、例えば図1の(イ)〜(チ)
に見るように、繊維軸方向に伸びる熱可塑性ポリマー
(A)よりなる中心部1と、該中心部1を取り囲んで中
心部に連結して設けた繊維軸方向に伸びる3個以上の突
出部2とからなる多葉断面形状を有する複合繊維であ
る。
【0012】図1の(イ)〜(チ)では突出部2の数は
3〜5個となっているが、突出部の数は3個以上であれ
ばよく、図1のものに限定されない。複合繊維の製造の
しやすさ、複合繊維から得られる布帛の風合などの点か
ら突出部の数を3〜8個程度にするのが好ましい。ま
た、隣り合う突出部間の角度は等角度であっても異角度
であってもよく、更に突出部の長さは全て同じであって
も異なっていてもよく、特に限定されない。突出部の形
状は特に限定されず、例えば先端部が根元部よりも細く
なっていても、先端部が根元部よりも太くなっていて
も、先端が平坦であっても、先端が丸くなっていてもよ
い。更に、繊維断面の形状は幾何学的または力学的に対
称であっても非対称でもよい。
【0013】そして、本発明の異形断面複合繊維では、
その中心部が熱可塑性ポリマー(A)からなっており、
突出部の少なくとも一部が熱可塑性ポリマー(B)から
なっていることが必要である。この場合に「突出部の少
なくとも一部が熱可塑性ポリマー(B)からなってい
る」とは、図1の(ホ)〜(ト)に見るように突出部2
の全体が熱可塑性ポリマー(B)からなっている場合、
または図1の(イ)〜(ニ)に見るように突出部2の一部の
みが熱可塑性ポリマー(B)からなっている場合を包含
する。
【0014】突出部2の一部のみが熱可塑性ポリマー
(B)からなる場合は、突出部2のそれ以外の部分[例
えば図1の(イ)〜(ニ)のものでは中心部1と先端部
との連結部3]は、熱可塑性ポリマー(A)により中心
部1と一体に形成するのが好ましい。突出部2の中間部
分のみを熱可塑性ポリマー(B)から形成したり、突出
部2において熱可塑性ポリマー(A)と熱可塑性ポリマ
ー(B)とを入り組んだ(入り交じった)状態で複合さ
せることもできるが、突出部2の先端部分、先端部分と
根元部分との間の任意の位置または根元部分において熱
可塑性ポリマー(A)と熱可塑性ポリマー(B)との境
界が明確に形成されるようにして突出部2を熱可塑性ポ
リマー(B)から形成して複合化するのがよく、特に突
出部2の少なくとも先端部分が熱可塑性ポリマー(B)
から構成されているようにするのが、繊維におけるねじ
れ発生が良好になり好ましい。また、突出部2の断面積
の30%以上を熱可塑性ポリマー(B)から構成するの
が、やはりねじれ発生の容易さの点から好ましい。更
に、本発明の複合繊維では、熱可塑性ポリマー(B)の
熱収縮率が熱可塑性ポリマー(A)の熱収縮率よりも小
さい限りは、各々の突出部2に設ける熱可塑性ポリマー
(B)部分は、同じポリマーであってもまたは異なるポ
リマーであってもよい。
【0015】そして、本発明では上記した異形断面複合
繊維の中心部1が、熱収縮応力が0.3g/デニール以
上および熱収縮率が15%以上である熱可塑性ポリマー
(A)より構成され、且つ各突出部の少なくとも一部が
熱可塑性ポリマー(A)よりも熱収縮率の小さい熱可塑性
ポリマー(B)より構成されていることが必要である。こ
こでいう「熱可塑性ポリマー(A)の熱収縮応力」と
は、熱可塑性ポリマー(A)を単独で用いて、本発明の
異形断面複合繊維を製造する場合と同じ装置を用いて同
じ条件下で同じ断面形状を有する異形断面繊維を製造
し、それによって得られた熱可塑性ポリマー(A)の異
形断面繊維の単繊度(デニール)当たりの熱収縮応力を
意味し、具体的には下記の実施例において記載した方法
により測定したときの値をいう。
【0016】また、本発明における「熱可塑性ポリマー
(A)または熱可塑性ポリマー(B)の熱収縮率」とは、熱
可塑性ポリマー(A)および熱可塑性ポリマー(B)の
一方のみを単独で用いて、本発明の異形断面複合繊維を
製造する場合と同じ装置を用いて同じ条件下で同じ断面
形状を有する異形断面繊維を製造し、それによって得ら
れた熱可塑性ポリマー(A)の異形断面繊維または熱可
塑性ポリマー(B)の異形断面繊維の熱収縮率を意味
し、具体的には下記の実施例において記載した方法によ
り測定したときの値をいう。
【0017】熱可塑性ポリマー(A)の熱収縮応力が
0.3g/デニール未満であると、得られる布帛のふく
らみが少なくなり、風合が低下する。また熱可塑性ポリ
マー(A)の熱収縮率が15%未満であると、得られる
布帛が硬くなり、着心地の良い衣服がえられない。熱可
塑性ポリマー(A)としては、熱収縮応力が0.4g/
デニール以上で、熱収縮率が20%以上のものを用いる
のが好ましい。熱可塑性ポリマー(A)の熱収縮応力お
よび熱収縮率の上限値は特に限定されないが、風合が硬
くなるのを防止する点から、熱収縮応力が0.7g/デ
ニール以下で、熱収縮率が50%以下であるのが好まし
い。
【0018】熱可塑性ポリマー(A)としては、熱収縮
応力が0.3g/デニール以上で熱収縮率が15%以上
である繊維形成性の熱可塑性ポリマーのいずれもが使用
でき、特に熱収縮応力が0.3g/デニール以上で熱収
縮率が15%以上のポリエステルが好ましい。そのよう
なポリエステルとしては、例えばテレフタル酸、イソフ
タル酸などの芳香族ジカルボン酸、アゼライン酸、セバ
シン酸などの脂肪族ジカルボン酸などから選択された一
種以上のジカルボン酸成分と、エチレングリコール、
1,4−ブタンジオールなどの脂肪族ジオール、ビスフ
ェノールAまたはビスフェノールSのエチレンオキサイ
ド付加ジオールなどの芳香族ジオール、シクロヘキサン
ジメタノールなどの脂環族ジオールなどのジオール成
分、必要に応じてp−ヒドロキシ安息香酸などのヒドロ
キシカルボン酸成分を用いて形成されたポリエステルを
挙げることができ、特に繰り返し単位の80モル%以上
がエチレンテレフタレートであるポリエステルを用いる
のが好ましい。同じポリエステルであっても、固有粘
度、共重合成分の種類や割合などを調節することによっ
て、その熱収縮応力や熱収縮率を増減させることができ
る。
【0019】また、熱可塑性ポリマー(B)としては、
熱収縮率が熱可塑性ポリマー(A)よりも小さい繊維形成
性の熱可塑性ポリマーであればいずれも使用でき、例え
ば熱可塑性ポリマー(A)よりも熱収縮率の小さい、ナ
イロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン1
1、ナイロン12、ナイロン13などのポリアミド;ポ
リエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレー
ト、ポリプロピレンテレフタレート、またはそれらの5
−ナトリウムスルホイソフタル酸を共重合させたものか
らなるポリエステルなどを挙げることができる。熱可塑
性ポリマー(B)は、熱可塑性ポリマー(A)よりも熱
収縮率が小さければ、その熱収縮応力は熱可塑性ポリマ
ー(A)と同じであっても、または熱可塑性ポリマー
(A)よりも大きくてもよい。そして、熱可塑性ポリマ
ー(A)と熱可塑性ポリマー(B)とは、同種のポリマ
ーであっても、異種のポリマーであってもよい。
【0020】熱可塑性ポリマー(A)および熱可塑性ポ
リマー(B)は、紡糸、延伸、後加工、製布工程などの
工程時に、両成分が剥離せず複合形態を維持し得るよう
に、相溶性、貼り合せ接合性などの特性が良好なものを
選択して組み合わせることが必要である。特に、得られ
る複合繊維にウール様の適度な伸縮性および弾性回復性
を付与するためには、両成分の熱収縮率の差が5〜20
%の範囲にあるのが好ましく、10〜20%の範囲内で
あるのが特に好ましい。両ポリマーの熱収縮率の差が5
%未満の場合には、繊維におけるねじれの発現が小さく
なり、得られる布帛の伸縮性が不充分になり易い。一
方、両ポリマーの熱収縮率の差が20%を超えると、ね
じれは発現するものの複合繊維自体の熱収縮率も大きく
なって、布帛に加工する段階での加工収縮率が大きくな
り過ぎて、得られる布帛の風合が硬くなり易い。
【0021】また、本発明の異形断面複合繊維では、熱
可塑性ポリマー(A)と熱可塑性ポリマー(B)との複
合割合は、重量で20/80〜80/20、特に30/
70〜70/30であるのが、複合繊維にねじれを発現
させる上で好ましい。熱可塑性ポリマー(A)と熱可塑
性ポリマー(B)のいずれか一方が極端に少ない場合に
は、複合繊維のねじれが発現しにくくなる。
【0022】さらに、本発明の多葉断面複合繊維におけ
る中心部と突出部の太さは特に限定されないが、布帛に
した場合に柔軟で良好な感触の布帛を得ることができる
点で、中心部と突出部がほぼ同じ繊度を有するか、また
は中心部が突出部よりも大きな繊度を有するようにする
のが好ましく、特に中心部と突出部とをほぼ同じ繊度に
するのがより好ましい。複合繊維自体としては、通常約
50デニール/36フィラメント〜150デニール/4
8フィラメント程度にするのが好ましい。
【0023】また、本発明の異形断面複合繊維は、必要
に応じて繊維に通常使用されている添加剤、例えば紫外
線吸収剤や酸化防止剤などの安定剤、蛍光増白剤、染顔
料、無機充填剤、難燃剤などを含有していてもよい。
【0024】本発明の異形断面複合繊維は、繊維製造工
程中の熱履歴または布帛加工中の熱処理により、ねじれ
が間歇的に反転しているねじれ構造を発現させることが
できる。縮み状態時には、本発明の異形断面複合繊維
は、熱収縮率の大きい熱可塑性ポリマー(A)を芯部と
して、熱収縮率の小さい熱可塑性ポリマー(B)が該芯
部の回りで間歇的に反転しながらねじれている構造とな
っている。ねじれが間歇的反転状態となるのは、繊維
(糸)がねじれ状態をとることによる回転歪みを吸収
し、糸全体としてのトルクを減じるために生ずる現象で
ある。その結果、本発明の繊維(糸)は、伸縮によって
も強いトルクを生じないという優れた特徴を有してい
る。
【0025】上記のようなねじれ構造を有する本発明の
異形断面複合繊維は、繊維(糸)全体として、後述する
測定法による伸縮率が10〜70%、特に25〜60%
の範囲となり、かかる範囲の伸縮率を有する繊維を用い
て布帛を製造すると、得られる布帛の伸縮率は5〜25
%程度となり、天然繊維、特にウールから得られる布帛
の伸縮率に極めて近似した値となる。
【0026】衣料を作製する場合、通常、服地の仕立て
映えは布帛のヨコ伸びが重要な因子になると考えられて
おり、ヨコ伸びの小さいを布帛を用いると仕立て映えが
しなくなる。本発明の異形断面複合繊維は、上記したよ
うにウールに類似した適度な伸縮性および弾性回復性を
有しているので、本発明の複合繊維から作製された布
帛、少なくとも本発明の複合繊維をヨコ糸として用いて
作製された織物は、適度な伸縮性(ヨコ伸び)を有し、仕
立て映えのよいものとなる。
【0027】本発明の異形断面複合繊維は、多葉断面を
有する紡糸口(紡出口)を有する紡糸口金装置を用い
て、熱可塑性ポリマー(A)と熱可塑性ポリマー(B)
を常法により溶融複合紡糸した後、好ましくは延伸、熱
処理することにより製造することができる。その場合
に、多葉横断面複合繊維の溶融複合紡糸に際して、特
に、中心部を形成する上記した熱収縮応力および熱収縮
率を有する熱可塑性ポリマー(A)の中心部流れに対し
て、熱可塑性ポリマー(A)よりも熱収縮率の小さい上
記した熱可塑性ポリマー(B)の3個以上の流れを、口
金板に設けた紡糸孔(カウンターボア)に至る手前で該
中心流れを取り囲んで互いに分離した位置から各々直角
方向またはほぼ直角方向に導入して、熱可塑性ポリマー
(A)と熱可塑性ポリマー(B)からなる複合流れを形
成させ、該複合流れを口金板に設けた3個以上の突出部
を有する多葉断面形状の紡糸口(吐出口)より紡出させ
る方法を採用すると、熱可塑性ポリマー(B)が計量性
良く供給されて、デニール斑がなく、異形断面繊維の突
出部の先端部分、先端部分と根元部分との間の所定位置
または根元部分において熱可塑性ポリマー(A)と熱可
塑性ポリマー(B)との境界が明確になった状態で両方
ポリマーが接合複合化され、しかも突出部の形状や寸法
の崩れなどが生じず、輪郭のくっきりした良好な多葉断
面を有する複合繊維を得ることができる。
【0028】そして、上記の方法は、図3に示したよう
な口金装置を使用すると極めて円滑に実施することがで
きる。図3は、口金装置の一部(口金板とその上に設け
る分配板)を示した図であり、(イ)はその縦断面図、
(ロ)〜(ニ)は図3の(イ)の切断線L−L部分にお
ける平面図である。
【0029】図3の口金装置においては、口金板4に3
個以上の突出部を有する多葉断面形状の紡糸口(吐出
口)5が形成されてあり、口金板4の上流側に、口金板
4に接して、分配板6を設けてある。分配板6は中心導
孔7および3個以上の側導孔8を有しており、該3個以
上の側導孔8は中心導孔7を取り囲んで互いに分離して
位置すると共に、各々が中心導孔7に対して直角方向ま
たはほぼ直角方向に連通している。分配板6の中心導孔
7から熱可塑性ポリマー(A)の流れを供給して中心部
流れを形成し、側導孔8から熱可塑性ポリマー(B)の
流れを供給し、熱可塑性ポリマー(A)の流れと熱可塑
性ポリマー(B)の流れとの合流位置で両方のポリマー
を複合させて複合ポリマー流れを形成させ、その複合ポ
リマー流れを口金板4の背面に設けたカウンターボア9
にそのまま供給して、中心部が熱可塑性ポリマー(A)
により構成され、多葉断面の突出部の少なくとも一部、
特に突出部の先端部を含む少なくとも一部が熱可塑性ポ
リマー(B)により構成されている多葉断面を有する複
合繊維を紡糸口5から紡出させる。
【0030】図3において、(ロ)は3個の突出部を有
する多葉断面複合繊維を形成させるための分配板を示す
図であり、(ハ)および(ニ)はそれぞれ4個および5
個の突出部を有する多葉断面複合繊維を形成するための
分配板を示す図である。そして、図3に示すような分配
板を備えた口金装置を用いた場合には、熱可塑性ポリマ
ー(B)の熱収縮率が中心導孔7に供給される熱可塑性
ポリマー(A)の熱収縮率よりも小さい限りは、該3個
以上の側導孔(8)には同じ熱可塑性ポリマー(B)の
流れを供給しても、または異なる種類の熱可塑性ポリマ
ー(B)の流れを供給してもよく、熱可塑性ポリマー
(A)と熱可塑性ポリマー(B)の選択、組み合わせに
よって極めて多様な複合繊維を得ることができる。ま
た、図3のような口金装置は、熱可塑性ポリマー(A)
と熱可塑性ポリマー(B)との粘度差が大きい場合に有
効であり、特に中心導孔7に供給される熱可塑性ポリマ
ー(A)の流れが高粘度であり、側導孔8に供給される
熱可塑性ポリマー(B)の流れが低粘度である場合によ
り効果が発揮されて、工程性よく所望の多葉断面を有す
る複合繊維を正確に製造することができる。
【0031】そして、図3のような口金装置において、
側導孔8は中心導孔7に対して必ずしも正確に直角(9
0°)になっていなくてもよい。更に、図3の口金装置
において、分配板6における側導孔8の位置および数
を、口金板4に設けた紡糸口5における突出部の位置お
よび数と一致させることによって、多葉断面複合繊維に
おいて、その突出部の少なくとも先端部分を含めた位置
に熱可塑性ポリマー(B)を一層きちんと正確に配置さ
せることができる。そして、本発明の紡糸口金装置は、
上記した構造からなる分配板および口金板を有している
限りはいずれでもよく、それ以外の部分の形状、構造、
サイズなどは特に限定されない。なお、かかる口金紡糸
装置は、本発明の多葉断面を有する複合繊維のみなら
ず、複雑な形状を有し且つ2成分以上のポリマーからな
る複合繊維の製造にも有用である。
【0032】上記した図3に示すような本発明の紡糸口
金装置に代えて、例えば図4に示すような従来の分配板
を備えた口金装置を使用した場合[図4の(イ)は口金
装置の縦断面図、(ロ)は図4の(イ)の切断線L−L
における平面図である]、すなわち分配板6の熱可塑性
ポリマー(A)の流れを供給する中心導孔7の周囲全体
に、熱可塑性ポリマー(B)の流れを環状状態で供給す
る環状供給路10を有する分配板6を備えた口金装置を
使用した場合には、得られる多葉断面複合繊維におい
て、(1)中心部にも熱可塑性ポリマー(B)が混入す
る、(2)突出部において熱可塑性ポリマー(A)と熱
可塑性ポリマー(B)とが入り交じって突出部における
熱可塑性ポリマー(A)と熱可塑性ポリマー(B)との
境界が不明瞭になる、(3)突出部における熱可塑性ポ
リマー(A)と熱可塑性ポリマー(B)の複合割合や複
合状態が不揃いになる、(4)突出部の輪郭が丸くなっ
てシャープさに欠けたりサイズが変動する、などの種々
のトラブルが発生し易くなり、その結果口金板の吐出面
におけるニーイングやポリマーの吐出斑、単糸切れなど
が発生して、紡糸時の工程性の不良、延伸時の毛羽の巻
き付き、延伸斑、張力異常、製品の収縮斑、染色斑、す
じ斑などを招き易い。特に、熱可塑性ポリマー(A)と
熱可塑性ポリマー(B)との粘度差が大きい場合には、
そのようなトラブルが一層生じ易い。
【0033】上記したように、本発明の異形断面複合繊
維は、溶融複合紡糸した後、好ましくは延伸(延伸・熱
固定)および熱処理を施して製造されるが、その場合
に、例えば1000〜4000m/分のような通常の紡
糸速度で紡糸し、冷却後、必要に応じて給油しながら巻
取った後、適正な温度で延伸、熱処理を行う方法を採用
しても、高速紡糸法を採用して紡糸と同時に延伸された
繊維を製造してそれに熱処理を施す方法を採用しても、
または紡糸した後そのまま直接延伸、熱処理を施す紡糸
直結延伸法を採用してもよい。いずれの場合も、熱可塑
性ポリマー(A)と熱可塑性ポリマー(B)との溶融粘
度の差が極端に大きいと、紡糸口金でニーイングが生じ
易くなり紡糸工程性が低下するが、上記の紡糸口金装置
を用いるとそのようなトラブルが生じず良好に紡糸でき
る。用途に応じて適当な粘度差を有する両方のポリマー
を選択することは言うまでもない。
【0034】また、複合繊維の延伸工程(延伸・熱固
定)において採用する延伸温度および熱固定温度は、複
合繊維およびそれから得られる布帛の収縮性、伸縮性、
ふくらみ、柔軟性などに直接影響を及ぼすことの多い因
子であるので、延伸処理を施すに際しては延伸温度およ
び熱固定温度について充分に注意を払うことが必要であ
る。特に、複合繊維を構成する熱可塑性ポリマー(A)
および熱可塑性ポリマー(B)のうち、ガラス転移点
(Tg)の高いポリマーのTg以上の温度で延伸を行う
のが、工程性や製品のふくらみ、仕立て映えの点から好
ましい。例えば熱可塑性ポリマー(A)および熱可塑性
ポリマー(B)が共にポリエステル系のポリマーである
場合は、延伸温度を75℃以上とし、熱固定温度を90
〜160℃とするのが好ましい。延伸温度が75℃より
も低いと毛羽の巻き付きや張力変動により延伸斑を生じ
て品質の低下を招き易くなる。また、熱固定温度が90
℃よりも低いと収縮率を大きく保つことができるものの
膠着気味の硬い風合となり、一方熱固定温度が160℃
よりも高いと複合繊維の収縮率が低くなり、ふくらみの
ない偏平な感じの低品質の布帛になり易い。さらに、延
伸時にかける張力は、複合繊維におけるねじれ構造の発
現性を良好にするために低い方が好ましい。
【0035】また、延伸(延伸・熱固定)後に行う熱処
理は、延伸処理と連続して行ってもまたは延伸工程とは
切り離して独立させた工程として行ってもよい。そし
て、熱処理は繊維または糸の状態で実施しても、布帛の
作製工程時、または布帛の作製後(例えば精錬処理工
程、プリセット工程、染色工程など)に実施してもよ
い。熱処理温度は、複合繊維の製造に用いる熱可塑性ポ
リマー(A)および熱可塑性ポリマー(B)の種類や結
晶化温度などに応じて適宜選択することができるが、例
えば熱可塑性ポリマー(A)および熱可塑性ポリマー
(B)が共にポリエステル系のポリマーである場合は、
90〜160℃の範囲の温度を採用するのが、得られる
製品の伸縮性、ふくらみ、柔軟性、仕立て映えなどの点
から好ましい。
【0036】 そして、上記のようにして得られた本発
明の異形断面複合繊維は、必要に応じて、単独でまたは
他の繊維と組み合わせて、流体などによる絡合処理;仮
撚加工、流体加工、ギヤ捲縮加工などによる捲縮処理;
タスラン(ヘバライン ファイバー テクノロジー In
c.の登録商標)加工などを更に施してもよい。本発明
の複合繊維は、単独でまたは他の合成繊維や天然繊維な
どと混紡、混繊して布帛にすることができ、特に織物で
は少なくともヨコ糸も本発明の複合繊維からなる糸を用
いると、伸縮性およびふくらみ感に富んだ、仕立て映え
のする良好な布帛を得ることができる。
【0037】以下に本発明を実施例などにより具体的に
説明するが、本発明はそれにより限定されない。なお、
以下の実施例等において、ポリマーの固有粘度[η]、
熱可塑性ポリマー(A)の熱収縮応力、熱可塑性ポリマ
ー(A)および熱可塑性ポリマー(B)の熱収縮率、紡
糸時の工程性、延伸時の工程性、得られる複合繊維の熱
収縮率、ねじれ数および断面形状、得られる布帛の伸縮
性および仕立て映えの測定または評価は次のようにして
行った。
【0038】ポリマーの固有粘度[η] フェノール/テトラクロロエタン(重量比1:1)の混
合溶媒中にポリマーを溶解して30℃で測定したときの
値である。
【0039】熱可塑性ポリマー(A)の熱収縮応力 熱可塑性ポリマー(A)を単独で用いて、各実施例また
は比較例における複合繊維の製造と同じ装置を用いて同
じ条件下で、同じ断面形状、寸法および太さを有する異
形断面繊維を紡糸・延伸し、得られた延伸糸を10cm
採取し、両端を結んでループ状にする。これをオートグ
ラフ(島津製作所製「AG−2000A型」)を用い
て、0.5g/デニールの荷重下に室温から1℃/分の
速度で昇温させながら乾熱処理して、その時の最大収縮
応力(g)を読み取り、糸の総繊度(総デニール数)で
除して、単繊度当たりの熱収縮応力(g/デニール)を
求める。
【0040】熱可塑性ポリマー(A)および熱可塑性ポリ
マー(B)の熱収縮率 熱可塑性ポリマー(A)または熱可塑性ポリマー(B)
を単独で用いて、各実施例または比較例における複合繊
維の製造と同じ装置を用いて同じ条件下で、同じ断面形
状、寸法および太さを有する異形断面繊維を紡糸・延伸
し、得られた延伸糸を50cm採取する。採取した延伸
糸の一端に100mg/デニールの荷重を負荷してその
時の延伸糸の長さ(L0)(cm)を測定する。次い
で、その延伸糸への負荷荷重を1mg/デニールに変え
て、これを沸騰水中に20分間浸漬した後、取出して風
乾させる。延伸糸への負荷荷重を100mg/デニール
に取り替えて、その時の延伸糸の長さ(L1)(cm)
を測定し、下記の数式1により熱収縮率(%)を求め
る。
【0041】
【数1】 熱収縮率(%)={(L0−L1)/L0}×100
【0042】紡糸時の工程性 下記の表1に示した4段階の評価基準により紡糸時の工
程性を評価する。
【0043】
【表1】 紡糸時の工程性 ◎:非常に良好 ○:良好、ニーイングが少し見られるが、断糸もなく紡糸できる △:やや不良、ニーイングが見られ、時々単糸切れが発生する ×:不良、ニーイングが大きく、単糸切れが多発する
【0044】延伸時の工程性 下記の表2に示した4段階の評価基準により延伸時の工
程性を評価する。
【0045】
【表2】 延伸時の工程性 ◎:非常に良好 ○:良好、毛羽巻付きが見られないが、◎に比べやや劣る △:やや不良、時々毛羽巻付きがあり、品質に斑が生ずる ×:不良、毛羽巻付き、断糸が多発する
【0046】複合繊維の熱収縮率 各実施例または比較例で得られた複合繊維の延伸糸を採
取する。この延伸糸を用いて、熱可塑性ポリマー(A)
または熱可塑性ポリマー(B)の熱収縮率を測定する場
合と同様にして、100mg/デニールの荷重を負荷し
た時の延伸糸の長さ(L0)(cm)、延伸糸への負荷荷重
を1mg/デニールに変えて、これを沸騰水中に20分
間浸漬した後、取出して風乾させ、次いで延伸糸への負
荷荷重を100mg/デニールに取り替えた時の延伸糸
の長さ(L1)(cm)を測定し、上記の数式1により熱収
縮率(%)を求める。
【0047】複合繊維のねじれ数 各実施例または比較例で得られた複合繊維の延伸糸の束
を綛状で沸騰水中に30分間浸漬して熱処理し、風乾
後、その単糸(単繊維)の捲縮状態がほぼそのまま保た
れるようにして長さ方向に1本ずつスライドグラスに貼
る付け、長さ1インチ間のねじれ数を肉眼で数える。そ
の際に、ねじれ数は、図5に示すように、繊維の長さ方
向に沿って、その左右への突出部が交錯している点を1
個として数える。
【0048】複合繊維の断面形状 下記の表3に示した4段階の評価基準により得られた複
合繊維の断面形状の良否を評価する。
【0049】
【表3】 複合繊維の断面形状 ◎:形が良く、複合状態および形状に斑がなく、非常に良好 ○:複合状態および形状にやや斑があるが、問題はなく良好 △:形状がやや悪く、ややバラツキを生じ、やや不良 ×:形状が悪く、複合状態およびデニール(繊度)に斑が大きく不良
【0050】布帛の伸縮性 20cm幅の布帛試料を用いて、風合測定機[カトーテ
ック(株)製「KESシステム」]を使用して引張り試
験を行い、500g/cmの力でヨコ方向に引っ張った
時の伸びをEmaxとしてその値を布帛の伸縮性(%)と
する。
【0051】布帛の仕立て映え 実施例または比較例で得られた各布帛を男性用スーツに
仕立て、その外観を下記の表4に示した4段階の評価基
準により官能評価する。
【0052】
【表4】 仕立て映えの評価基準 ◎:ソフトでふくらみがあり、且つ適度の張りおよび腰があり極めて良好 ○:ややソフトでふくらみがややあり、適度の張りおよび腰もややあり良好 △:ソフト感、ふくらみに欠け、やや硬くやや不良 ×:ソフト感、ふくらみがなく、粗硬で、不良
【0053】《実施例 1》熱可塑性ポリマー(A)と
して[η]が1.1dl/gで、熱収縮応力が0.35
g/デニールおよび熱収縮率が20%のポリブチレンテ
レフタレートを用い、また熱可塑性ポリマー(B)とし
て[η]が0.68で、熱収縮率が7%のポリエチレン
テレフタレートを用いて、図3の(ロ)の分配板を有す
る口金装置を備えた紡糸装置に、熱可塑性ポリマー
(A):熱可塑性ポリマー(B)=1:1の重量割合で供給
して紡出し、1000m/分の引き取り速度で巻取っ
て、200デニール/36フィラメントの複合繊維(紡
糸原糸)を得た。上記で得た紡糸原糸を温度78℃の加
熱ローラー、温度120℃のプレートを用いて延伸(延
伸・熱固定)して、75デニール/36フィラメントの
延伸糸を製造した。この延伸糸をスピンドル仮撚加工機
を使用して、仮撚数3500回/m、仮撚加工温度20
0℃で撚をかけ、次いで2/2の綾織物を製織した。得
られた織物を糊抜き、精錬、乾燥した後、温度170℃
で乾熱処理してふくらみを出させ、プリセット後、20
重量%の減量処理、染色、仕上げセット工程を順次施し
た。この実施例1における紡糸時の工程性、延伸時の工
程性、得られた複合繊維の熱収縮率、ねじれ数および断
面形状、得られた布帛の伸縮性および仕立て映えを上記
した方法により測定または評価したところ、そのいずれ
もが下記の表5に示すように極めて良好であった。
【0054】《比較例 1》口金装置における分配板を
図4で示される構造のものに代えた以外は実施例1と同
様にして、複合繊維の製造、延伸、製織、後処理を行っ
た。その結果を表5に示す。
【0055】《実施例 2》熱可塑性ポリマー(A)と
して[η]が0.76で、熱収縮応力が0.35および
熱収縮率が18%のイソフタル酸を8モル%共重合した
ポリエチレンテレフタレートを使用した以外は実施例1
と同様にして複合繊維の製造、延伸、製織、後処理を行
った。その結果を表5に示す。
【0056】《比較例 2》口金装置における分配板を
図4で示される構造のものに代えた以外は実施例2と同
様にして、複合繊維の製造、延伸、製織、後処理を行っ
た。その結果を表5に示す。
【0057】《実施例 3》熱可塑性ポリマー(A)と
して[η]が0.70で、熱収縮応力が0.40および
熱収縮率が26%のビスフェノールSのエチレンオキサ
イド2モル付加ジオールを8モル%共重合したポリエチ
レンテレフタレートを使用した以外は実施例1と同様に
して複合繊維の製造、延伸、製織、後処理を行った。そ
の結果を表5に示す。
【0058】《比較例 3》口金装置における分配板を
図4で示される構造のものに代えた以外は実施例3と同
様にして、複合繊維の製造、延伸、製織、後処理を行っ
た。その結果を表5に示す。
【0059】《実施例 4》熱可塑性ポリマー(A)と
して[η]が0.82で、熱収縮応力が0.45および
熱収縮率が32%のイソフタル酸を12モル%共重合し
たポリエチレンテレフタレートを使用した以外は実施例
1と同様にして複合繊維の製造、延伸、製織、後処理を
行った。その結果を表5に示す。表5に示されているよ
うに、この実施例4の場合の熱可塑性ポリマー(A)の
熱収縮率がやや大きいために、紡糸時や延伸時の工程性
が実施例1に比べてやや低下し、複合繊維より得られた
布帛の伸縮性は実施例1に比べて多少大きかったが、得
られた布帛はウール調の服地として充分有効に使用し得
るものであった。
【0060】《比較例 4》口金装置における分配板を
図4で示される構造のものに代えた以外は実施例4と同
様にして、複合繊維の製造、延伸、製織、後処理を行っ
た。その結果を表5に示す。
【0061】《実施例 5》 (1) 熱可塑性ポリマー(A)として[η]が0.7
5で、熱収縮応力が0.41および熱収縮率が27%の
ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加ジオ
ールを2モル%とイソフタル酸を8モル%共重合したポ
リエチレンテレフタレートを使用し、口金装置における
分配板を図3の(ハ)で示される構造のものに代えた以
外は実施例1と同様にして、図1の(ヘ)の断面形状を
有する複合繊維を紡出し、3700m/分の引き取り速
度で巻取って、100デニール/12フィラメントの複
合繊維を得た。この複合繊維の熱収縮率は17%であっ
た。
【0062】(2) 一方、[η]が0.68で熱収縮
率が7%のポリエチレンテレフタレートを用いて290
0m/分の引き取り速度で紡糸して100デニール/3
6フィラメントの繊維を得た。 (3) 上記(1)で得た複合繊維と(2)で得たポリ
エステル繊維とを引き揃えながら延伸仮撚してタスラン
加工を施して150デニール/48フィラメントの糸を
得た。 (4) 上記(3)で得られた糸をタテ糸およびヨコ糸
として使用して平織物を作製し、実施例1と同様にして
後加工を施した。 (5) その結果は、下記の表5に示すように、紡糸時
の工程性、延伸時の工程性および仮撚加工性はいずれも
良好であり、最終製品である織物はふくらみを有し、ソ
フトで且つウール織物と同程度の良好な伸縮性を有して
いた。
【0063】《比較例 5》口金装置における分配板を
図4で示される構造のものに代えた以外は実施例5と同
様にして、複合繊維の製造、延伸、製織、後処理を行っ
た。その結果を表5に示す。
【0064】《比較例 6》熱可塑性ポリマー(A)と
して[η]が0.70で、熱収縮応力が0.20g/デ
ニールおよび熱収縮率が8%のポリエチレンテレフタレ
ートを使用した以外は実施例1と同様にして複合繊維の
製造、延伸、製織、後処理を行った。その結果を表5に
示す。
【0065】また、表5には参考のため、天然のウール
から得られた織物の伸縮性を表5に記載する。
【0066】
【表5】
【0067】上記表5の結果から、実施例1〜5では紡
糸時の工程性および延伸時の工程性が良好で、熱収縮率
およびねじれ数が大きく且つ断面形状の良好な複合繊維
が得られ、しかもその複合繊維から得られる布帛の伸縮
性がウールからなる布帛の伸縮性とほぼ同程度の良好な
値を有し、仕立て映えがすること、それに対して比較例
1〜6の場合は、紡糸時の工程性および延伸時の工程性
が悪く、しかも得られる複合繊維の断面形状が不良であ
り、仕立て映えのしない布帛になることがわかる。
【0068】《実施例 6》実施例2において、延伸時
の加熱ローラーの温度およびプレートの温度を下記の表
6に示した値に設定して、実施例2と同様にして、紡
糸、延伸、製織、後加工を行って、綾織物を作製したと
ころ、表6に示す結果を得た。
【0069】
【表6】
【0070】上記表6の結果から、延伸工程性、複合繊
維および布帛の特性を良好に保つには、複合繊維を延伸
・熱固定する際の延伸温度および熱固定温度をより適し
た範囲に設定するのが好ましいことがわかる。
【0071】
【発明の効果】 本発明の製造方法および紡糸口金装置
により、良好な伸縮性および弾性回復性を有する異形断
面複合繊維を製造することができる。該異形断面複合繊
維からは、天然繊維、特にウールからなる布帛とほぼ同
程度の、ふくらみ、張り、腰、反発性などの極めて良好
な特性を有する、高級感のある仕立て映えのする布帛を
得ることができる。
【0072】 すなわち、上記した優れた特性を有する
異形断面複合繊維は、中心導孔および3個以上の側導孔
を有する分配板であって且つ該3個以上の側導孔が中心
導孔を取り囲んで互いに分離して位置すると共に各々が
中心導孔に対して直角方向またはほぼ直角方向に連通し
ている分配板を備えた本発明の紡糸口金装置を用いて、
該中心導孔に熱収縮応力が0.3g/デニール以上およ
び熱収縮率が15%以上である熱可塑性ポリマー(A)
の流れを供給し、それと同時に側導孔に熱可塑性ポリマ
ー(A)よりも熱収縮率の小さい熱可塑性ポリマー
(B)の流れを供給することからなる本発明の製造方法
によって、極めて円滑に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の異形断面複合繊維の断面構造の例を示
す図であって、図1の(イ)〜(チ)はいずれもその一
態様である。
【図2】従来の二葉型複合繊維の断面構造を示す図であ
る。
【図3】本発明の紡糸口金装置の一例を示す図であり、
図3において(イ)はその縦断面図および(ロ)〜
(ニ)は図3の(イ)の切断線L−L部分における平面
図である。
【図4】従来の分配板を備えた紡糸口金装置の例を示す
図であり、図4において(イ)はその縦断面図および
(ロ)は図4の切断線L−L部分における平面図であ
る。
【図5】複合繊維のねじれ数の測定法を示す図である。
【符号の説明】
A 熱可塑性ポリマー(A) B 熱可塑性ポリマー(B) C 高収縮性ポリマー D 低収縮性ポリマー 1 中心部 2 突出部 3 連結部 4 口金板 5 紡糸口(吐出口) 6 分配板 7 中心導孔 8 側導孔 9 カウンターボア 10 環状供給路
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 徳永 勲 岡山県倉敷市酒津1621番地 株式会社ク ラレ内 (56)参考文献 特開 昭61−34220(JP,A) 特公 平2−36683(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D01F 8/00 - 8/18 D01D 5/253

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱収縮応力が0.3g/デニール以上お
    よび熱収縮率が15%以上である中心部を形成する熱可
    塑性ポリマー(A)の中心部流れに対して、熱可塑性ポ
    リマー(A)よりも熱収縮率の小さい熱可塑性ポリマー
    (B)の3個以上の流れを、口金板に設けた紡糸孔に至
    る手前で、該中心流れを取り囲んで互いに分離した位置
    から各々直角方向またはほぼ直角の方向に導入して、熱
    可塑性ポリマー(A)と熱可塑性ポリマー(B)からな
    る複合流れを形成させ、該複合流れを口金板に設けた3
    個以上の突出部を有する多葉断面形状の紡糸口より紡出
    させることにより、熱収縮応力が0.3g/デニール以
    上および熱収縮率が15%以上である熱可塑性ポリマー
    (A)からなる繊維軸方向に伸びる中心部と、該中心部
    を取り囲んで中心部に連結して設けた繊維軸方向に伸び
    る3個以上の突出部とからなる多葉断面を有し、且つ各
    突出部の少なくとも一部は熱可塑性ポリマー(A)より
    も熱収縮率の小さい熱可塑性ポリマー(B)より構成さ
    れている異形断面複合繊維を製造する方法。
  2. 【請求項2】 中心導孔および3個以上の側導孔を有す
    る分配板であって且つ該3個以上の側導孔は中心導孔を
    取り囲んで互いに分離して位置すると共に各々が中心導
    孔に対して直角方向またはほぼ直角方向に連通している
    分配板を、3個以上の突出部を有する多葉断面形状の紡
    糸口を有する口金板の上流側に、該口金板に当接して設
    けたことを特徴とする紡糸口金装置。
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