JP3265193B2 - 2−アミノ−3−カルボキシ−1,4−ナフトキノンの製造法 - Google Patents

2−アミノ−3−カルボキシ−1,4−ナフトキノンの製造法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、極めて低濃度でビ
フィズス菌増殖促進活性を有する2−アミノ−3−カル
ボキシ−1,4−ナフトキノンの新規な製造法に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】近年の研究で、各種消化管疾病等や老化
に伴い、腸内のビフィズス菌(Bifidobacterium longu
mB. breveB. adolescentisB. bifidumB. infan
tisB.animalisB. pseudolongum等)が有意に低下す
ること、腸内ビフィズス菌の増殖を促進することが、発
癌抑制、腸内腐敗の抑制、感染症の防止等に有効である
ことが確認されてきている。従って、腸内のビフィズス
菌を選択的に増殖させることは、健康維持や各種成人病
等の予防・治療の観点から極めて重要である。
【0003】本発明者らは、このような観点から、ビフ
ィズス菌の増殖を選択的に促進する物質について研究し
た結果、ある種のナフトキノン誘導体が、ビフィズス菌
に対して、極めて低い濃度で強い増殖作用を有すること
を見出し、中でもPropionibacterium属菌が菌体内外に
産生する、下記式(I)
【0004】
【化1】
【0005】で示される、2−アミノ−3−カルボキシ
−1,4−ナフトキノンが特に優れたビフィズス菌増殖
促進活性を有することを見出し、特許出願した(特開平
8-98677)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、2−ア
ミノ−3−カルボキシ−1,4−ナフトキノンは、Prop
ionibacterium属菌の培養物1L当たり1mg以下しか得るこ
とができず、大量且つ安価に取得する方法の開発が必要
とされていた。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するため鋭意研究した結果、下記に示す工程
【0008】
【化2】
【0009】すなわち、 a)1,4−ジヒドロキシナフトエ酸を、ジアゾメタンの
存在下でメチルエステル化して1,4−ジヒドロキシナ
フトエ酸メチルエステルを生成し、 b)1,4−ジヒドロキシナフトエ酸メチルエステルを、
脱水剤及び酸化銀の存在下で酸化して2−カルボキシメ
チル−1,4−ナフトキノンを生成し、 c)2−カルボキシメチル−1,4−ナフトキノンを、ア
ジ化ナトリウムの存在下でアミノ化して2−アミノ−3
−カルボキシメチル−1,4−ナフトキノンを生成し、 d)2−アミノ−3−カルボキシメチル−1,4−ナフト
キノンを、三臭化ホウ素の存在下で脱エステル化する、
という4工程からなる化学合成で、2−アミノ−3−カ
ルボキシ−1,4−ナフトキノンを高い収率で得ること
ができることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
【発明の実施の形態】工程a)の出発物質である1,4−
ジヒドロキシナフトエ酸は、商業的に入手可能な物質で
ある。工程a)で1,4−ジヒドロキシナフトエ酸をジア
ゾメタンの存在下でメチルエステル化するに際しては、
室温下で、アセトンに溶解した1,4−ジヒドロキシナ
フトエ酸1モルに対して、1モルの比率でジアゾメタンの
エーテル溶液を添加することにより行う。
【0011】工程b)は、ジエチルエーテルに溶解した
1,4−ジヒドロキシナフトエ酸メチルエステル1モル
に対して、無水硫酸マグネシウム等の脱水剤の存在下、
酸化銀を2.4モルの比率で室温下で添加し、反応終了
後、減圧濃縮することにより行う。
【0012】工程c)においては、酢酸に溶解した2−カ
ルボキシメチル−1,4−ナフトキノン1モルに対し
て、1.6モルのアジ化ナトリウムの水溶液を室温下で添
加し、反応終了後、飽和NaHCO3水溶液等でpHを8〜9に調
整して、2−アミノ−3−カルボキシメチル−1,4−
ナフトキノンを沈殿物として得る。
【0013】工程d)は、塩化メチレンに溶解した2−ア
ミノ−3−カルボキシメチル−1,4−ナフトキノン1
モルに対して、0.8モルの三臭化ホウ素を0℃の環境下で
滴下し、反応終了後、飽和NaHCO3水溶液等で洗浄し、次
いで無水硫酸ナトリウム等で脱水し、更に減圧濃縮した
後、適当なカラムクロマトグラフィー、例えばシリカゲ
ルカラムにより2−アミノ−3−カルボキシ−1,4−
ナフトキノンを得る。
【0014】
【実施例】以下に本発明を実施例によって具体的に説明
するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0015】実施例 a)1,4−ジヒドロキシナフトエ酸メチルエステルの合
成 1,4−ジヒドロキシナフトエ酸4.08gを80mlのアセト
ンに溶解し、ジアゾメタンのエーテル溶液を加え、1,
4−ジヒドロキシナフトエ酸メチルエステルを4.36gを
得た(収率100%)。1,4−ジヒドロキシナフトエ酸メ
チルエステルの500MHzプロトン磁気共鳴スペクトル(溶
媒:CDCl3、内部標準物質:(CH3)4Si)は以下の通り。 δ:3.98ppm(3H, s, CH3)、4.82ppm(1H, s, OH)、7.11p
pm(1H, s, ArH)、7.57ppm(1H, t, J=8.2Hz, ArH)、7.65
ppm(1H, t, J=8.2Hz, ArH)、8.15ppm(1H, d, J=8.2Hz,
ArH)、8.41ppm(1H, d, J=8.2Hz, ArH);質量スペクトル
(EIMS、m/z)218(M+)
【0016】b)2−カルボキシメチル−1,4−ナフト
キノンの合成 1,4−ジヒドロキシナフトエ酸メチルエステル4.36g
をジメチルエーテル500mlに溶解し、無水硫酸マグネシ
ウム20g及び酸化銀11.09gを加えて10〜12℃で3時間攪拌
した。反応終了後、反応液を濾過した後、濾液を減圧濃
縮して2−カルボキシメチル−1,4−ナフトキノン4.
10gを得た(収率95%)。2−カルボキシメチル−1,4
−ナフトキノンの500MHzプロトン磁気共鳴スペクトル
(溶媒:CDCl3、内部標準物質:(CH3)4Si)は以下の通
り。 δ:3.96ppm(3H, s, CH3)、7.26ppm(1H, s, QuH)、7.78
ppm(1H, dt, J=1.6Hz,J=7.0Hz, ArH)、7.81ppm(1H, dt,
J=1.6Hz, J=7.0Hz, ArH)、8.09ppm(1H, dd,J=1.6Hz, J
=7.0Hz, ArH)、8.14ppm(1H, dd, J=1.6Hz, J=7.0Hz, Ar
H);質量スペクトル(EIMS、m/z)216(M+)
【0017】c)2−アミノ−3−カルボキシメチル−
1,4−ナフトキノンの合成 2−カルボキシメチル−1,4−ナフトキノン4.32gを3
2mlの酢酸に溶解し、これにアジ化ナトリウム2.16gを水
1.2mlに溶解した溶液を加えて、室温で3.5時間攪拌し
た。反応終了後、反応液に飽和のNaHCO3水溶液を加えて
pH8〜9に調整し、次いで反応液をNo. 2の濾紙で濾過し
た。沈殿物を水で洗浄した後、乾燥させて2−アミノ−
3−カルボキシメチル−1,4−ナフトキノン4.01gを
得た(収率88%)。2−アミノ−3−カルボキシメチル
−1,4−ナフトキノンの500MHzプロトン磁気共鳴スペ
クトル(溶媒:CDCl3、内部標準物質:(CH3)4Si)は以
下の通り。 δ:3.95ppm(3H, s, CH3)、7.66ppm(1H, t, J=7.5Hz, A
rH)、7.81ppm(1H, t,J=7.5Hz, ArH)、8.09ppm(1H, d, J
=7.5Hz, ArH)、8.23ppm(1H, d, J=7.5Hz, ArH);質量ス
ペクトル(EIMS、m/z)231(M+)
【0018】d)2−アミノ−3−カルボキシ−1,4−
ナフトキノンの合成 2−アミノ−3−カルボキシメチル−1,4−ナフトキ
ノン231mgを塩化メチレン20mlに溶解し、これを0℃に保
ったまま三臭化ホウ素72.9μlを滴下した後、10分間攪
拌した。次いで室温にして18時間攪拌した。反応終了
後、飽和NaHCO3水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水
した。これを減圧濃縮した後、シリカゲルカラムにアプ
ライし、n-ヘキサン:酢酸エチル=7:3〜5:5で溶出し、
2−アミノ−3−カルボキシ−1,4−ナフトキノン15
2mgを得た(収率70%)。2−アミノ−3−カルボキシ−
1,4−ナフトキノンの500MHzプロトン磁気共鳴スペク
トル(溶媒:CDCl3、内部標準物質:(CH3)4Si)は以下
の通り。 δ:7.76ppm(1H, t, J=7.6Hz, ArH)、7.87ppm(1H, t, J
=7.6Hz, ArH)、8.17ppm(1H, d, J=7.6Hz, ArH), 8.28pp
m(1H, d, J=7.6Hz, ArH);質量スペクトル(EIMS、m/
z)217(M+)
【0019】実験例(本発明方法によって合成された2
−アミノ−3−カルボキシ−1,4−ナフトキノンのビ
フィズス菌増殖活性) 実施例に従って合成された2−アミノ−3−カルボキシ
−1,4−ナフトキノンを0.01〜1ng/mlとなるように、
表1に示す組成を有するTPYG培地(pH6.5)に添加し、
これに各種ビフィズス菌(Bifidobacterium longum ATC
C 15707、B. breve ATCC 15700、B. adolescentis ATCC
15703、B. bifidum ATCC 11146、B. infantis ATCC 15
697)をそれぞれ接種し、ガスパック法にて37℃で20時
間嫌気培養した後、それぞれの培養液のOD580を測定し
た。対照としては、2−アミノ−3−カルボキシ−1,
4−ナフトキノンを添加しないTPYG培地に、上記の各種
菌株を接種したものを用いた。
【0020】
【表1】
【0021】結果を表2に示す。
【0022】
【表2】
【0023】表2にあるように、本発明方法に従って製
造された2−アミノ−3−カルボキシ−1,4−ナフト
キノンは、0.01〜0.1ng/mlという極めて低い濃度で各種
のビフィズス菌に対して増殖促進作用を奏することが確
認された。
【0024】
【発明の効果】本発明により、極めて低濃度でビフィズ
ス菌増殖促進活性を有する2−アミノ−3−カルボキシ
−1,4−ナフトキノンを大量且つ安価に得ることが可
能となった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平8−98677(JP,A) 特開 平7−289273(JP,A) 特開 昭61−118329(JP,A) Tomas Torres et a l.,J.Heterocyclic Chem.,1985,22,p.697−699 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07C 229/50 C07C 227/06 C07C 227/18 C07C 51/09 CA(STN) REGISTRY(STN) CASREACT(STN)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 2−アミノ−3−カルボキシ−1,4−
    ナフトキノンの製造法において、 a)1,4−ジヒドロキシナフトエ酸を、ジアゾメタンの
    存在下でメチルエステル化して1,4−ジヒドロキシナ
    フトエ酸メチルエステルを生成し、 b)1,4−ジヒドロキシナフトエ酸メチルエステルを、
    脱水剤及び酸化銀の存在下で酸化して2−カルボキシメ
    チル−1,4−ナフトキノンを生成し、 c)2−カルボキシメチル−1,4−ナフトキノンを、ア
    ジ化ナトリウムの存在下でアミノ化して2−アミノ−3
    −カルボキシメチル−1,4−ナフトキノンを生成し、 d)2−アミノ−3−カルボキシメチル−1,4−ナフト
    キノンを、三臭化ホウ素の存在下で脱エステル化するこ
    とを特徴とする方法。
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