JP3264384B2 - 重合体溶液のイオン交換精製装置及びその精製方法 - Google Patents

重合体溶液のイオン交換精製装置及びその精製方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アクリロニトリル系繊
維及び炭素繊維前駆体であるプレカーサーの原料となる
アクリロニトリル系重合体溶液の精製装置に関する。
【0002】
【従来の技術】アクリル繊維は、羊毛に似た優れた嵩高
性、風合、染色鮮明性等の性質を有し、広範囲の用途に
利用されている。これらの繊維を製造するには原料とな
るアクリロニトリル系重合体を有機溶媒又は無機溶媒に
溶解させた溶液を準備し、湿式方法、乾式方法又は乾湿
式方法などの紡糸方法で紡糸し、工業的に繊維を生産し
ている。
【0003】上記繊維を製造するため、目的とする重合
体を得るには原料となるアクリロニトリル単量体及びそ
れと共重合可能な単量体をラジカル重合反応させること
が一般的である。こうして得られた重合体は、同重合体
を溶媒に溶解させる溶解工程を経て、湿式紡糸法、乾式
紡糸法又は乾湿式紡糸法により紡糸し、ステープル又は
フィラメントとして製品化される。(「繊維ハンドブッ
ク」1991年度版繊維総合研究所発行 による。) また、上記方法により得られたアクリロニトリル系繊維
は、炭素繊維前駆体(プレカーサー)としても使用さ
れ、焼成工程を経て炭素化されて炭素繊維となる。かか
る炭素繊維は強度、弾性率、耐熱性等において高性能な
ものであり、航空機素材をはじめ種々の用途に利用され
ている。
【0004】水系での不均一系重合である懸濁重合方式
は、歴史も古く、且つ広く採用されているアクリロニト
リル系重合体の製造方式である。この製造方式は、前記
重合体の品質管理が容易なこと、未反応単量体の回収が
容易なこと及び工程全体の管理が容易なこと等の特徴が
挙げられる。(繊維便覧「原料編」繊維学会編集 丸善
(株)発行 による。) 上記のアクリロニトリル系重合体の製造方法としては、
水を反応媒体として連続懸濁重合方式で製造されるが、
このときの重合開始剤としては、一般的に無機系開始剤
(過硫酸アンモニウム等)が使用される。連続懸濁重合
で製造されたアクリロニトリル系重合体は濾別、乾燥を
経て、同重合体の溶媒に溶解した後、各種方法で紡糸さ
れる。
【0005】上記のように無機系開始剤(例えば、過硫
酸アンモニウム−亜硫酸水素ナトリウム−鉄の酸化還元
系の組み合わせ)によりアクリロニトリル単量体を主成
分とする単量体を、反応溶媒として硫酸酸性の水を使用
して重合反応させると、精製した同重合体の粒子が形成
され、水性分散液の状態でアクリロニトリル系重合体を
得ることができる。重合終了後、該重合体の水性分散液
を濾別、洗浄及び乾燥することによりアクリル繊維の原
料となるアクリロニトリル系重合体を得る。
【0006】連続水系懸濁重合によりアクリロニトリル
系重合体を得る場合の反応容器としては、アルミニウム
製反応容器を使用することが好ましい。アクリロニトリ
ル系重合体を水系連続懸濁重合反応で製造実施すると
き、ステンレス製の反応容器、或いはグラスライニング
製の反応容器を使用すると、アクリロニトリル系重合体
の付着によるスケールが生成されるため実質的には連続
使用が不可能となる。反応容器としてアルミニウム製反
応容器を使用した場合、反応系内は酸性水溶液となって
いるため、アルミニウム表面が腐食溶解することによっ
てスケールの生成を阻止しているといわれている。
【0007】重合反応を終了させるためには重合停止剤
を添加する。上記重合体を水系懸濁重合で製造する場合
の重合停止剤としては、反応系の酸性水溶液を中和する
機能を保持することが必要であり、シュウ酸ナトリウ
ム、エチレンジアミンテトラアセテートナトリウム塩、
重炭酸ナトリウムの電解質水溶液が挙げられる。
【0008】かくして、上述の製造方式によるとアクリ
ロニトリル系重合体は重合開始剤による電解質、重合反
応容器の腐食による電解質、重合停止剤による電解質等
の存在下で製造されていることになる。しかも、該アク
リロニトリル系重合体は重合反応の進行と共に、既述し
たごとく数十ミクロンの重合体粒子を形成して水系で分
散粒子となるが、この重合体の粒子中には前記各種の電
解質が混入していることになる。従って、水系連続懸濁
重合によりアクリロニトリル系重合体を製造するにあた
っては、生成した同重合体の粒子表面を洗浄することは
可能であっても、重合体内部に捕捉された電解質までを
水によって洗浄することは困難である。
【0009】従って、現在の水系懸濁重合によるアクリ
ロニトリル系重合体の製造においては、上述のごとく洗
浄が不十分な状態のまま乾燥工程に移行し、アクリロニ
トリル系重合体を溶媒に溶解してアクリロニトリル系重
合体ドープとし、湿式、半乾湿式又は乾式で紡糸した
後、アクリル繊維を得ている。このように電解質等の不
純物が混入したアクリロニトリル系重合体ドープ溶液
は、最近のように高品質なアクリル繊維を製造する際に
種々の問題をもたらしている。
【0010】例えば、アクリル繊維製造において使用す
るドープ溶液(アクリロニトリル系重合体を溶解する溶
媒に同重合体を溶解して得られる溶液)を長時間加熱
(約100℃)保持すると黄着色が顕著となり、ドープ
溶液自体がゲル化して溶液流動性の低下をもたらす。こ
の原因は、アクリロニトリル系重合体に含まれる上記不
純物(無機電解質)によるものと考えられる。また、同
不純物のために製品であるアクリル繊維自体の黄着色化
現象が生じ、高品質のアクリル繊維を製造しようとする
場合の品質に大きな影響を及ぼしていると考えられてい
る。同様に、ドープ溶液自体がゲル化して溶液流動性の
低下をもたらすと、安定した紡糸性が確保できず、その
結果、糸切れ現象が生じると考えられている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】水系懸濁重合方式で得
られたアクリロニトリル系重合体を原料として、アクリ
ル繊維又は同アクリル繊維を焼成して炭素繊維を製造す
るにあたっての問題点は、水系懸濁重合方式で該重合体
を製造する際に混入を免れない無機電解質のような不純
物が該重合体に残存することである。この不純物の混入
が、製品となるアクリル繊維又は同繊維を焼成してなる
炭素繊維を製造する際の問題点を誘発していることであ
る。
【0012】本発明の目的は、このような水系懸濁重合
方式が有する問題点を解決し、アクリル繊維又は同繊維
を焼成してなる炭素繊維の製造に適した工業的に有利な
アクリロニトリル系重合体ドープ溶液の精製装置及び同
精製方法を提供するにある。
【0013】
【課題を解決するための手段及び作用】本発明の要旨と
するところは、重合体溶液の精製路に直列に配された一
本以上の管部材を備え、同管部材の内部には軸線に平行
な一枚以上の多孔状イオン交換板材が装着されてなる重
合体溶液のイオン交換精製装置と、同イオン交換精製装
置に無機系レドックス開始剤を使用した水系懸濁重合で
得られるアクリロニトリル系重合体と該重合体の有機溶
剤とからなる溶液を通して、同アクリロニトリル系重合
体溶液から不純物としての無機電解質又はそのイオンを
除去精製することを特徴としている。
【0014】そして、前記多孔状イオン交換板材は内部
にイオン交換能を有する物質を充填した薄板状の多孔性
容器からなり、好適には前記管部材が2本以上で且つ多
孔状イオン交換板材が2枚以上配され、しかも各管部材
に装着された多孔状イオン交換板材が管部材ごとの軸線
回りに回転位相差をもたせて配設されなる。
【0015】前記無機系レドックス開始剤を使用した水
系懸濁重合で得られるアクリロニトリル系重合体と該重
合体の有機溶剤とからなる溶液(以下、単にドープ溶液
と呼ぶ場合がある。)は、紡糸するに適当な該アクリロ
ニトリル系重合体濃度とするために、その粘度は数百ポ
イズとなる。従って、このような高粘度溶液から、不純
物である無機電解質のような低分子化合物を除去するこ
とが、本発明の最大の目的となる。
【0016】以下、本発明を作用と共に詳細に説明す
る。本発明は、無機系レドックス開始剤を使用した水系
懸濁重合で得られるアクリロニトリル系重合体と該重合
体を溶解する有機溶剤とからなる溶液を少なくとも30
℃に加熱し、イオン交換能ある物質と接触させることに
より、同アクリロニトリル系重合体溶液から不純物とし
ての無機電解質又はそのイオンを精製除去するのに適し
た装置である。
【0017】無機系レドックス開始剤としては、過硫酸
アンモニウム、過硫酸カリウムなどの通常使用される無
機系過酸化物が挙げられる。重合助剤として使用する還
元剤として、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウム、
亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素アンモニウム、チオ
硫酸ナトリウム、同アンモニウム、亜ニチオン酸ナトリ
ウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルフォキシレー
ト、L−アスコルビン酸、デキストローズ等が代表的な
ものであり、硫酸第一鉄又は硫酸銅などの化合物も組み
合わせて使用できる。その中で、亜硫酸アンモニウム−
亜硫酸水素ナトリウム(アンモニウム)−硫酸第一鉄の
組み合わせが好ましい。
【0018】本発明に用いられるアクリロニトリル系重
合体は、アクリロニトリル単量体から得られるもの、又
は該単量体と共重合可能なモノオレフィン性単量体とか
ら得られるものである。ここでアクリロニトリル系重合
体は、少なくとも60重量%のアクリロニトリル単量体
から構成される必要がある。アクリロニトリル単量体の
含有量が60重量%未満であると、アクリロニトリル系
合成繊維が本来有する繊維機能を保有することができな
いためである。ここで共重合可能なモノオレフィン性単
量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタ
コン酸、アクリルアミド、酢酸ビニル、スチレン、塩化
ビニル、塩化ビニリデン、無水マレイン酸、N−置換マ
レインイミド、ブタジエン、イソプレン等を挙げること
ができる。
【0019】本発明に用いられる有機溶剤は、該アクリ
ロニトリル系重合体を溶解する溶媒であることが必要で
ある。その中でジメチルホルムアミド、ジメチルアセト
アミド、ジメチルスルフォキシドが好ましい。水系懸濁
重合で得られたアクリロニトリル系重合体5〜35重量
%、該アクリロニトリル系重合体を溶解し得る上記有機
溶媒95〜65重量%からなるドープ溶液とすることが
好ましい。アクリロニトリル系重合体5〜35重量%と
したのは、5重量%未満では、前記重合体の濃度が低過
ぎるために満足なアクリル繊維の紡糸性を確保できない
ためである。また、35重量%を超える場合は、該重合
体溶液の粘度が高くなりすぎ、同紡糸性を確保できない
ためである。
【0020】上記有機溶剤に溶解しないイオン交換能あ
る物質としては、架橋型イオン交換樹脂、架橋型イオン
交換繊維等が挙げられるが、その中で、ジビニルベンゼ
ン−スチレンからなる架橋型イオン交換樹脂が一般的で
あり好ましい。上記アクリロニトリル系重合体が有機溶
媒に溶解したドープ溶液の状態で、同重合体の不純物を
架橋型イオン交換樹脂により精製除去するためには、イ
オン交換樹脂が有機溶媒と親和性ある必要があり、また
上記有機溶媒に溶解しないためには架橋樹脂でなくては
ならない。
【0021】イオン交換能を有する官能基としてはスル
フォン酸基を挙げることができ、イオン交換能を有する
樹脂としてスルフォン酸基を保有する強陽イオン交換樹
脂が挙げられる。イオン交換により精製されるイオン種
が、陽イオン種、陰イオン種双方ある場合、スルフォン
酸基を保有する強陽イオン交換樹脂と第4級アミノ基を
保有する強陰イオン交換樹脂とからなるイオン交換樹脂
との双方を使用することができる。重金属を捕捉するに
は、イミノジ酢酸型、ポリアミン型からなるキレート樹
脂が挙げられる。更に、以上の他にもメタクリル酸、ア
クリル酸からなる弱陽イオン交換樹脂、及び第1、2、
3級アミン型からなる弱陰イオン交換樹脂等が挙げられ
る。また、前記弱陽イオン樹脂と弱陰イオン交換樹脂の
双方を同時に使用することもできる。
【0022】その中で、スルフォン酸基を保有する強陽
イオン交換樹脂、又はスルフォン酸基を保有する強陽イ
オン交換樹脂と第4級アミノ基を保有する強陰イオン交
換樹脂との双方使用のいずれかが特に好ましい。
【0023】本発明に用いられる前記イオン交換樹脂
は、アクリロニトリル系重合体溶液100重量%に対し
て、0.01〜100重量%を使用するのが好ましい。
0.01重量%未満の場合は、イオン交換能力の低下が
著しく実用的でなくなる。100重量%を超える場合
は、経済的に不利なこと、並びにイオン交換樹脂の回収
に必要以上の手間を要することから実際的ではない。
【0024】上記アクリロニトリル系重合体溶液のイオ
ン交換樹脂による精製は、好ましくは30〜150℃の
温度範囲で実施される。30℃未満では、該アクリロニ
トリル系重合体溶液の粘度が上昇し、流動性に劣り、実
質的にイオン交換反応が進行しにくくなる。また、15
0℃を超える場合、使用するイオン交換樹脂自体の耐熱
安定性が不足し、長時間の使用が実際上不可能である。
【0025】そして、本発明のアクリロニトリル系重合
体溶液のイオン交換樹脂による精製は、金網のような多
孔性部材からなり、厚さwと長さLの比(w/L)が適
度に設定されてなる板状容器にイオン交換樹脂を充填し
た多孔状イオン交換板材の少なくとも一枚以上を軸線に
平行な状態で内挿した少なくとも1本以上の管部材の内
部を通過させ、上記アクリロニトリル系重合体溶液から
不純物としての無機電解質又はそのイオンを精製除去す
ることが肝要である。なお、板状容器の厚みwは50m
m以下程度であることが好ましい。
【0026】図1は、5枚の多孔状イオン交換板材を備
えた4本の管部材が直列に配設され、該4本の管部材に
順次ドープ溶液を通すようにしてなるドープ溶液精製装
置の一例を示している。図中の矢印はドープ溶液の流れ
方向を示している。ドープ溶液は各管部材に入ると、各
多孔状イオン交換板材の分配効果によりドープ流れが拡
散する方向に変化し、イオン交換能ある物質を充填した
多孔状イオン交換板材と接触し衝突を繰り返す。このよ
うな流動を繰り返し、ドープ溶液に存在する不純物であ
る無機電解質はイオン交換されて精製される。多孔状イ
オン交換板材の数は多いほど、効率良くイオン交換され
る。また、複数本の管部材を直列に配設すると共に、各
管部材を順次軸線回りに所定の角度回転させ、管部材ご
との多孔状イオン交換板材の位相を順次ずらすように
し、或いは多孔状イオン交換板材の間隔を狭くすると、
ドープ溶液の分配効果と流速が更に大となり、効率良く
イオン交換がなされる。しかし、多孔状イオン交換板材
の間隔を狭くして交換効率を向上させると、圧力損失が
大となり実質的には工業設備として適当なものでなくな
る。
【0027】本発明の方法により、無機系レドックス開
始剤を使用して得られた該アクリロニトリル重合体と溶
媒からなるドープ溶液をイオン交換精製した後、湿式、
半乾式又は乾式法により紡糸して製造されるアクリロニ
トリル系繊維には、不純物としての無機電解質である鉄
化合物又はそのイオンが0〜3ppm、好ましくは0〜
1ppm、アルミニウム化合物又はそのイオンが0〜1
0ppm、好ましくは0〜5ppmが混入している。
【0028】ここで、鉄化合物又はそのイオン、アルミ
ニウム化合物又はそのイオンの混入量を挙げたのは、本
発明に規定している水系懸濁重合で使用する重合開始所
剤として硫酸第一鉄を使用すること、また水系懸濁連続
重合反応で反応釜としてアルミニウム容器を使用し、且
つ反応系が酸性水溶液であるために該アルミニウム釜が
腐食溶解することにより、精製するアクリロニトリル系
重合体中には不純物として少なくとも上記金属又はそれ
らのイオンが存在するがためである。
【0029】
【実施例】以下、本発明を具体的に実施例によって説明
する。図1は本発明装置の概略構成を示し、図2は比較
例に用いるドープ溶液精製装置の概略構成を示してい
る。
【0030】まず、本発明装置を図1を参照しながら説
明する。図1の(a)は本発明のドープ溶液精製装置が
4本の管部材からなる場合の実施例を示す要部縦断面図
であり、図1の(b)は同精製装置の各管部材に対応す
る横断面図である。
【0031】図1において、符号1は内部にドープ溶液
を通すための管部材であり、本実施例においては同管部
材1を4本直列に水密に連結し、その前後にドープ溶液
導入管2及びドープ溶液導出管3が水密に連結されてい
る。前記管部材1は、その両端部にフランジ1aを有
し、同フランジ1a間の管部材周面には加熱流体を流通
させるためのジャケット1bが形成されている。そし
て、各管部材1の内部には本発明の特徴部分をなす多孔
状イオン交換板材4が少なくとも一本以上装着されてい
る。上記ジャケット1bには、管部材1の内部温度を3
0℃〜150℃に制御し得る温度の加熱流体が通され
る。
【0032】前記多孔状イオン交換板材4は、内部にイ
オン交換樹脂を充填した金網のごとき多孔性部材の袋容
器から構成される薄板状の部材であり、内部をドープ溶
液が流通可能とされている。図示実施例によれば、各管
部材1の内部にそれぞれ5枚の多孔状イオン交換板材4
が所定の間隔をおいて軸線に平行に装着される。図中、
5は同多孔状イオン交換板材4を案内固定するためのガ
イド部材である。
【0033】また、図示実施例において上述のごとく内
部に5枚の多孔状イオン交換板材4が装着された各管部
材1は、図1(b)に示すごとくそれぞれが軸線を中心
に所定の角度回転させ、内部の多孔状イオン交換板材4
が各管部材1に対して僅かづつ回転位相差をもつように
して連結されている。このように各管部材1間に回転位
相差をもたせるときは、既述したごとくドープ溶液の分
配効果が更に大となり、効率良くイオン交換がなされる
ようになる。
【0034】次に、上記装置を使用した本発明のドープ
液精製方法の実施例を、比較例と共に具体的に説明す
る。なお、以下の記載中、部及び%は重量部及び重量%
を示す。 (実施例1)容量80Lの攪拌付き重合反応釜(容器は
アルミニウム製、攪拌翼はアルミニウム被覆タービン
型)にイオン交換水(PH3に設定)を35L仕込み、
アクリロニトリル98.5部、メタクリル酸1.5部、
過硫酸アンモニウム1.5部、亜硫酸水素アンモニウム
4.5部、硫酸第一鉄(FeSO4 ・7H2 O)0.0
0005部、硫酸0.085部になるように、それぞれ
イオン交換水に溶解し連続的に供給を開始した。同時に
イオン交換水の全量が400部になるようにイオン交換
水を別途供給した。重合温度を60℃に保ち、十分な攪
拌を行い、平均滞在時間80分として連続的に原料を供
給し重合反応させた。反応器溢流口より連続的に重合体
水系分散液を取り出し、これにシュウ酸アンモニウム
0.5部、重炭酸アンモニウム1.5部を100部のイ
オン交換水に溶解した重合停止剤水溶液を0.2部の速
度で更に加え、さらにイオン交換水を加えた後回転式濾
過機で未反応単量体、余剰の重合助剤の残渣を洗浄除去
した。得られた湿潤重合体をスクリュー式押出機により
ペレット状に成形した後、通気乾燥機で乾燥し、表1に
示すアクリロニトリル系重合体を得た。
【0035】乾燥した上記アクリロニトリル系重合体2
2部をジメチルフォルムアミド78部に溶解して重合体
溶液(ドープ溶液)とした。図1に示したドープ溶液精
製装置に連続的に前記ドープ溶液を供給した。ここで、
ドープ溶液精製装置に使用したイオン交換樹脂はスルフ
ォン酸基を保有する強イオン交換樹脂(ダイヤイオンP
K228LH 三菱化成(株)製)である。ドープ溶液
精製装置内に設置するイオン交換樹脂が充填された多孔
状イオン交換板材は、長さL=150mm、厚さw=
7.5mm(w/L=0.05)であり、管部材の内部
にその5枚を等間隔に規則的に配置し、各管部材を4セ
ット直列配置し連結させてドープ溶液精製装置とした。
【0036】イオン交換樹脂が充填された多孔状イオン
交換板材の多孔性部材には、100メッシュステンレス
製金網が使用され、イオン交換樹脂が該多孔性部材外に
脱落しないような構成としている。多孔状イオン交換板
材をセットした管部材の連結は、連結角度を約20°づ
つ順次ずらした連結構造とした。なお、ここに充填する
イオン交換樹脂は、スルフォン酸型にした後、十分水洗
浄後乾燥して、ジメチルフォルムアミドで浸漬膨潤した
もので、5枚の多孔状イオン交換板材をセットした管部
材当たり50グラム充填した。ドープ液導入管及び導出
管、並びにドープ溶液精製装置の各ジャケット部には6
0℃の温水を流して内部を流れるドープ溶液を加熱し
た。ドープ溶液精製装置には、上記ドープ溶液を連続的
に分当たり250グラムの速度で供給した後、100ホ
ール、0.13mmφの口金を通して、55%のジメチ
ルフォルムアミド水溶液(30℃)に、乾湿式紡糸法
(液面空間距離5mm)で紡糸し、5倍延伸後、115
℃で熱セットを行い、1.5デニールの表1に示すアク
リル繊維を得た。本実施例によるイオン交換性は良好で
あり、ドープ中のアルミニウムイオン、鉄イオンを十分
に除去できた。
【0037】(比較例1)実施例1と同様の方法でアク
リロニトリル系重合体を製造し、図2に示すドープ溶液
精製装置にドープ溶液を供給した後、実施例と同様の方
法で紡糸した。このドープ溶液精製装置は、図2に示す
ごとく本発明と同様の構造を有する単一の管部材1の内
部に、大量のイオン交換樹脂を充填した一個の多孔状イ
オン交換部材4′を配設してなり、本比較例では同ドー
プ溶液精製装置に上述のドープ溶液を通してイオン交換
精製した。このときのドープ溶液精製装置には強イオン
交換樹脂を使用しなかった。その結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
【発明の効果】以上の説明から明らかなごとく本発明に
よれば、簡単な構造のドープ溶液精製装置であるにも関
わらず、ドープ溶液の分配効果及びイオン交換性能が大
きく、同装置に無機系レドックス開始剤を使用した水系
懸濁重合で得られるアクリロニトリル系重合体と該重合
体の有機溶剤とからなるドープ溶液を通すだけで、前記
アクリロニトリル系重合体に混入する各種の電解質又は
そのイオンが効率的にイオン交換され、高品質の最終製
品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るアクリロニトリル系重合体溶液の
イオン交換精製装置の代表的な実施例を示す概略構成説
明図である。
【図2】比較例としてのアクリロニトリル系重合体溶液
のイオン交換精製装置の概略構成説明図である。
【符号の説明】
1 管部材 1a フランジ 1b ジャケット 2 ドープ溶液導入管 3 ドープ溶液導出管 4 多孔状イオン交換板材 4′ 多孔状イオン交換部材 5 ガイド部材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C08F 20/44 C08F 20/44 // D01F 6/18 D01F 6/18 Z 9/22 9/22 (72)発明者 池田 勝彦 広島県大竹市御幸町20番1号 三菱レイ ヨン株式会社大竹事業所内 (72)発明者 真鍋 由雄 広島県大竹市御幸町20番1号 三菱レイ ヨン株式会社大竹事業所内 (56)参考文献 特開 平5−39313(JP,A) 特開 平3−210304(JP,A) 特開 昭63−286405(JP,A) 特開 昭56−159317(JP,A) 特開 平5−237399(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08F 6/00 - 6/28

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重合体溶液の精製路に直列に配された一
    本以上の管部材を備え、同管部材の内部には軸線に平行
    な一枚以上のイオン交換板材が装着されてなる重合体溶
    液のイオン交換精製装置。
  2. 【請求項2】 前記イオン交換板材が、内部にイオン交
    換能を有する物質を充填した薄板状の多孔性容器からな
    る請求項1記載のイオン交換精製装置。
  3. 【請求項3】 前記管部材が2本以上であり、各管部材
    に装着された多孔状イオン交換板材が管部材ごとの軸線
    回りに回転位相差をもたせて配設されてなる請求項1記
    載のイオン交換精製装置。
  4. 【請求項4】 前記多孔状イオン交換板材が2枚以上で
    あり、所望の間隔をもって互いに平行に配設されてなる
    請求項3記載のイオン交換精製装置。
  5. 【請求項5】 無機系レドックス開始剤を使用した水系
    懸濁重合で得られるアクリロニトリル系重合体と該重合
    体を溶解する有機溶剤とからなる溶液を、請求項1記載
    のイオン交換精製装置に通して、同アクリロニトリル系
    重合体溶液から不純物としての無機電解質又はそのイオ
    ンを除去精製することを特徴とするアクリロニトリル系
    重合体溶液の精製方法。
  6. 【請求項6】 前記イオン交換精製装置の管部材内部温
    度が30〜150℃である請求項5記載の精製方法。
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