JP3261584B1 - 工作機械の主軸装置 - Google Patents

Abstract

【要約】 【課題】 霧状切削液通路ｅ１、ｅ２内での霧状切削液
の一時的な流動変動が生じたときや、霧状切削液通路ｅ
１内への霧状切削液の供給の停止や再開のときに於ける
刃具１３先端からの霧状切削液の噴出を安定的となす。 【解決手段】 主軸１からこれと同体状に装着された刃
具１３の先端に至る範囲の内部に単一状の通路断面を有
する霧状切削液通路ｅ１、ｅ２を形成し、主軸１側から
供給された霧状切削液がこの霧状切削液通路ｅ１、ｅ２
を経て刃具１３先端から噴出されるように作動する工作
機械の主軸装置に於いて、前記霧状切削液通路ｅ１又は
ｅ２の途中に、多数の空室１４２が多段状且つ連通状態
に積層され且つ霧状切削液がそれらの空室１４２群を経
て透過するものとした空室群透過層部１４を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、霧状切削液が刃具
先端から噴出するものとした工作機械の主軸装置に関す
る。

【０００２】

【従来の技術】工作機械による加工では被加工物や刃具
の冷却及び潤滑、又は切屑の除去などのため加工部に切
削液を多量に供給しているが、これによるときは切削液
による環境汚染や人体の健康への悪影響、切削液の廃油
処理に伴う大きなコスト、被加工物の過冷却による刃具
寿命の低下、又は切削液過多による刃具の微細切込み加
工時の滑り磨耗などの問題があるほか、加工時に多量の
切削液が切屑に付着するため、切屑の処理や再利用のさ
い、これに付着した切削油を分離することが必要とな
る。これらの問題を解決するため、近年では極微量の切
削液を霧状にして加工部へ供給しながら切削する、いわ
ゆるドライ切削を行うものとした工作機械が出現してい
る。

【０００３】本出願人は、既に、ドライ切削を行うため
の工作機械を実施しており、その主軸装置は、例えば図
１１に示すように、刃具１３の固定された工具ホルダ４
をそのテーパシャンク部５ｂを介して主軸１に固定させ
たものとなされている。この際、工具ホルダ４には単一
状通路断面を有するものとなされた直状のホルダ側霧状
切削液通路ｅ２が形成されており、この通路ｅ２はプル
スタッド６の中心孔ｄ、ホルダ内部連絡管８の内孔ｆ、
及び、刃具１３の肉厚部に形成された刃具内通路ｇ等か
らなっている。また主軸１にはこれの回転中心部に設け
られ単一状通路断面を有するものとなされた内管３の内
孔からなる主軸側霧状切削液通路ｅ１が形成されてい
る。

【０００４】そして刃具１３による加工中には、主軸１
近傍に形成された霧状切削液発生装置の発生した霧状切
削液が主軸側霧状切削液通路ｅ１の元側箇所に供給され
るのであって、この主軸側霧状切削液通路ｅ１を通過し
た後、ホルダ側霧状切削液通路ｅ２を経て刃具１３の先
端から噴出するものとなる。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】上記した在来の工作機
械に於いて、主軸１の回転速度はその作動状況に応じて
変化するものとなるが、それが大きくなったときは霧状
切削液通路ｅ１、ｅ２内を流れる霧状切削液に作用する
遠心力が増大するため、霧状切削液通路ｅ１、ｅ２の内
周面近傍での霧状切削液の圧力が上昇し、その液状化が
促進され、霧状切削液の安定的供給が損なわれるのであ
り、これに起因して刃具寿命が低下したり加工面の品質
が低下する等の種々の弊害が生じるようになる。

【０００６】また工作機械の作動中、霧状切削液の無駄
な供給を避けるため、頻繁にその供給の停止と開始が繰
り返されるが、その供給が停止されたとき、霧状切削液
通路ｅ１、ｅ２内の霧状切削液は瞬時に流出してしまう
ため、この後、その供給が開始されたとき、先ず霧状切
削液通路ｅ１、ｅ２内にそれが満たされなければ、その
安定的な供給状態は得られず、能率的な作業が阻害され
るのである。本発明は、斯かる問題点に対処し得るもの
とした工作機械の主軸装置を提供することを目的とす
る。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明では請求項１に記載したように、主軸からこ
れと同体状に装着された刃具の先端に至る範囲の内部に
単一状の通路断面を有する霧状切削液通路を形成し、主
軸側から供給された霧状切削液がこの霧状切削液通路を
経て刃具先端から噴出されるように作動する工作機械の
主軸装置に於いて、前記霧状切削液通路の途中に、多数
の空室が多段状且つ連通状態に積層され霧状切削液がそ
れらの空室群を経て透過するものとした空室群透過層部
を形成する。

【０００８】上記発明に於ける作用を説明すると、霧状
切削液通路を流れる霧状切削液は圧力流体であり、空室
群透過層部を通過した後、刃具先端から噴出する。この
場合、空室群透過層部の多数の空室は霧状切削液の通路
として機能するほか、霧状切削液を蓄積するための空間
としても機能する。即ち、霧状切削液が霧状切削液通路
内を円滑に流れるときは空室群透過層部内での霧状切削
液の圧力は霧状切削液が円滑に流れないときに比べて高
くなり、各空室内をその高い圧力の霧状切削液が通過す
るとき、この霧状切削液が各空室内に蓄積される。

【０００９】一方、主軸の回転速度が一時的に大きくな
る等して、霧状切削液が霧状切削液通路内で液状化して
円滑に流れないときは、空室群透過層部の上流側での圧
力が低くなるため、霧状切削液は空室群透過層部内に一
時的に流入し難くなくなるのであり、このとき、各空室
内に比較的高い圧力で蓄積されている霧状切削液が空室
の出口側から一時的に流出して下流側へ向けて流動し、
霧状切削液の不足分を補うように作用する。

【００１０】また主軸側から供給される霧状切削液が停
止されたとき、空室群透過層部の多数の空室には霧状切
削液通路内の圧力低下した霧状切削液や液状化切削液が
滞留するものとなる。この滞留した切削液は再び主軸側
から霧状切削液が供給される初期に於いて、上流側に供
給された霧状切削液の圧力波の伝搬で押し出され切削液
の不足を補うように作用する。

【００１１】この発明は次のように具体化することがで
きる。即ち、請求項２に記載したように、各空室が比較
的小さな出入口で相互に連通されている構成となす。こ
れによれば、空室群透過層部よりも下流側の霧状切削液
の圧力が低下したとき、空室内の霧状切削液が霧状切削
液出入口から比較的ゆっくりと流出するようになり、刃
具先端へ向かう霧状切削液の不足を補うように作用する
一回作用当たりの時間が長期化するものとなる。

【００１２】また請求項３に記載したように、空室群透
過層部が焼結金属で形成された構成となす。これによれ
ば、多数の空室が連通状態に積層されてなる空室群透過
層部が簡易に形成され、しかも丈夫なものとなる。

【００１３】さらに請求項４に記載したように、空室群
透過層部が刃具を主軸に固定させるための工具ホルダの
内部に設けてある構成となす。これによれば、主軸側の
内部の構造の複雑化が回避される。

【００１４】或いは請求項４に記載のものに代えて次の
ようになしてもよいのであって、即ち、請求項５に記載
したように、空室群透過層部が主軸の内部に設けてある
構成となす。これによれば、主軸に装着される種々の刃
具及びこれの関連部材は従来のままでよいものとなり、
空室群透過層部の製造コストは種々の刃具及びこれの関
連部材のそれぞれに空室群透過層部を設ける場合に比べ
安価となる。

【００１５】この際、請求項６に記載したように、主軸
の内部に霧状切削液を発生させるための霧状切削液生成
部を設け、この霧状切削液生成部と、刃具を主軸に固定
させるための工具ホルダとの間に空室群透過層部を設け
ることも差し支えない。これによれば、霧状切削液通路
の長さが短くなって霧状切削液の液状化の量が少なくな
り、空室群透過層部による霧状切削液の安定化が効果的
に行われるものとなる。

【００１６】

【発明の実施の形態】先ず、本願発明の第一実施例につ
いて説明する。図１は本実施例に係る工作機械の主軸装
置を示すもので、Ａは側面視断面図、Ｂは前記主軸装置
の主要部を示す拡大断面図である。これらの図に於い
て、１は丸棒状の主軸で、工作機械の主軸支持フレーム
２に図示しない軸受を介して主軸１中心回りへの回転自
在に支持されている。この主軸１には中心孔１ａが形成
してあり、この中心孔１ａの先部はテーパ孔ａとなされ
ている。そして、中心孔１ａ内の中心位置には内管３が
主軸１と同体状に固定されている。

【００１７】４は工具交換装置による脱着可能となされ
た工具ホルダであり、ホルダ本体部５は中央部を鍔部５
ａとなされ、この鍔部５ａよりも後側部分をテーパシャ
ンク部５ｂとなされ、先側部分を丸軸状の前側張出部５
ｃとなされている。ホルダ本体部５の中心箇所には内孔
ｂが形成してあり、この内孔ｂの後端部にプルスタッド
６が螺着され、内孔ｂの前寄り箇所の比較的長い範囲に
雌ネジｂ１が形成され、最前部はテーパ孔ｂ２となされ
ている。そして、雌ネジｂ１には外周面に雄ネジを形成
されたアジャストスクリュウ７が螺入されている。アジ
ャストスクリュウ７には中心孔ｃが形成されており、こ
の中心孔ｃの後部とプルスタッド６の中心孔ｄとはホル
ダ内部連絡管８で連通されている。

【００１８】前側張出部５ｃの先部にはコレット締結機
構９が形成してあり、この機構９はホルダ本体部５のテ
ーパ孔ｂ２に嵌入されたコレット１０、前側張出部５ｃ
の前端部に螺合された締結ナット体１１、及び、この締
結ナット体１１とコレット１０とをコレット１０の周方
向の相対変位可能に結合するためのリング状結合部材１
２ａ、１２ｂからなっている。そして、コレット１０の
中心孔には刃具１３が差し込まれており、この刃具１３
は後端部をアジャストスクリュウ７の内孔ｃの前部に差
し込まれて後方への移動を規制された状態に支持される
と共に、胴部をコレット締結機構９でホルダ本体部５の
中心位置に強固に固定されている。

【００１９】この工具ホルダ４は主軸１のテーパ孔ａに
テーパシャンク部５ｂを密状に嵌合されプルスタッド６
が主軸１の中心孔１ａ内に設けた図示しないクランプ機
構により後方へ引張されることにより主軸１に強固に装
着された状態となっている。この状態の下では、内管３
の先端がプルスタッド６の後端面に密状に接した状態と
なる。

【００２０】上記した構成に於いて、内管３の内孔が主
軸１側の霧状切削液通路ｅ１をなしており、またプルス
タッド６の中心孔ｄ、ホルダ内部連絡管８の内孔ｆ、ア
ジャストスクリュウ７の中心孔ｃ、及び、刃具１３の肉
厚部に形成された刃具内通路ｇが工具ホルダ４側の霧状
切削液通路ｅ２をなしている。

【００２１】上記した工具ホルダ１側の霧状切削液通路
ｅ２の途中であるアジャストスクリュウ７の中心孔ｂ内
で、ホルダ内部連絡管８の前端と刃具１３の後端との間
箇所には、本発明の特徴部分をなす空室群透過層部１４
が設けてある。この空室群透過層部１４はアジャストス
クリュウ７の中心孔ｃ内に密状に嵌挿される形状となさ
れた図１Ｂに示すような円柱部材１４ａであって、多数
の空室が多段状且つ連通状態に積層され霧状切削液がそ
れらの空室群を経て通過するものとなされている。

【００２２】この際、円柱部材１４ａは直径を凡そ２〜
１０ｍｍ程度となされており、また各空室は霧状切削液
通路ｅ２の断面寸法に比べて極小であると共に各空室の
大きさに対し比較的小さな霧状切削液出入口を有するも
のである。このような円柱形部材は例えば微少空洞の密
集した状態の焼結金属塊を切削する等して形成する。

【００２３】上記主軸装置の使用に於いては、霧状切削
液の必要時にその供給開始指令が工作機械の制御部に付
与されるのであり、これに関連して、主軸装置の近傍に
設けた図示しない霧状切削油発生装置から、主軸１側の
霧状切削液通路ｅ１の後端部に圧力凡そ０．３ＭＰａ程
度の霧状切削液が供給される。この霧状切削液はやがて
工具ホルダ４側の霧状切削液通路ｅ２内に達し、ホルダ
内部連絡管８、空室群透過層部１４及び刃具内通路ｇを
経て刃具１３先端から噴出される。一方、霧状切削液が
不必要となったときはその供給停止指令が工作機械の制
御部に付与されるのであり、これに関連して霧状切削油
発生装置からの霧状切削液通路ｅ１への霧状切削液の供
給は停止される。

【００２４】以下に他の実施例を順に説明するが、各実
施例に関連した説明及び各図に於いて既述部位と実質的
同一部位には同一符号を使用するものとする。

【００２５】本願発明の第二実施例について説明する
と、図２は本実施例に係る工作機械の主軸装置を示す側
面視断面図である。この図に示すように、主軸１と主軸
支持フレーム２との間には主軸１を回転自在に支持する
ための軸受１５、１５を設けると共に主軸１、主軸支持
フレーム２及び軸受１５、１５の相対位置を規制するた
めのスペーサ１６ａ、１６ｂが設けてある。

【００２６】１７は主軸１の中心孔１ａの平行部内の前
部に挿入されたキャニスタで、周壁には半径方向の透孔
を適当数設け、各透孔内に球部材１８を周壁半径方向の
変位可能に案内している。このキャニスタ１７の周壁に
は主軸１の中心孔１ａに前後変位可能に案内される筒棒
状のクランプロッド１９が外挿され、このロッド１９が
主軸１に対し前方ｆ０へ変位することにより球部材１８
が主軸半径方向外側へ変位可能となり、逆にこのロッド
１９が主軸１に対し後方へ変位することにより球部材１
８がこのロッド１９の先部で押されて主軸半径方向内側
に強制変位させられるようになされている。

【００２７】内管３とクランプロッド１９との間でキャ
ニスタ１７の後端面箇所にはバネ受けリング部材２０が
嵌挿されており、このバネ受けリング部材２０はこれの
後方に装着された圧縮状態の皿バネ群２１によりキャニ
スタ１７の後端面に圧接されてその位置を保持されてい
る。

【００２８】またキャニスタ１７とクランプロッド１９
との間箇所の前部には球部材１８を斜面部で押圧し得る
ものとなされた押圧用リング部材２２をクランプロッド
１９に対し前後変位可能に嵌挿しており、このリング部
材２２とバネ受けリング部材２０との間に圧縮状態のス
プリング２３が装着してあり、このスプリング２３の弾
力により球部材１８が主軸半径方向内側へ付勢されるよ
うになされている。この付勢力はクランプロッド１９が
主軸１に対し前方ｆ０へ変位されたとき、工具ホルダ４
がその自重等により主軸１から抜け落ちないように工具
ホルダ４を適当力で支持するように作用するものであ
る。

【００２９】内管３の内孔内のやや奥部には霧状切削液
生成部２４が設けてあり、この霧状切削液生成部２４に
はこれの後方となる内管３の内孔を経て切削液と圧縮空
気とが独立して供給されるようになされており、霧状切
削液生成部２４はこのように供給された切削液と圧縮空
気を混合撹拌して霧状切削液となし、これを前端の開口
部２４ａから噴射するものとなされている。

【００３０】内管３の内孔内で霧状切削液生成部２４よ
り前側部分はやや大きな径となされており、この前側部
分の内方で霧状切削液生成部２４の前側近傍には円筒状
の圧縮空気供給弁２５が前後変位可能に内挿されてお
り、また内管３の前側部分の先端部の内方には延長連絡
管部材２６が抜止め筒部材２７を介して一定範囲内での
前後変位自在に装着されており、さらに延長連絡管部材
２６と圧縮空気供給弁２５との間に圧縮状態のスプリン
グ２８が配設されている。

【００３１】この際、スプリング２８は延長連絡管部材
２６を前方ｆ０へ押圧すると共に圧縮空気供給弁２５を
後方へ押圧するものである。そして圧縮空気供給弁２５
は内管３内の前側部分内の圧力が低下したとき前方変位
し、霧状切削液生成部２４側の圧縮空気が圧縮空気供給
弁２５の内孔内に吹き込まれる状態となるものとなす。
そして、工具ホルダ４は先の実施例のものから空室群透
過層部１４を取り除いた構造となされている。

【００３２】上記構成に於いて、主軸１から分離された
工具ホルダ４を主軸１に装着するときは、クランプロッ
ド１９を前方ｆ０へ変位させた状態の下で、工具ホルダ
４のテーパシャンク部５ｂを主軸１のテーパ孔ａ内に押
し入れるのであり、これによりプルスタッド６が球部材
１８を主軸半径方向外側へ押し変位させてキャニスタ１
７に対し図２に示す位置まで進入する。この進入の後、
クランプロッド１９を後方へ引き移動させるのであり、
これにより球部材１８は主軸半径方向内側へ押し込まれ
て、クランプロッド１９の引張力をプルスタッド６に伝
達するものとなり、工具ホルダ４は主軸１に強固に固定
された状態となる。

【００３３】一方、主軸１に固定された工具ホルダ４を
主軸１から分離させるときは、クランプロッド１９を前
方ｆ０へ変位させた状態の下で、工具ホルダ４を前方ｆ
０へ引き出すのであり、これによりプルスタッド６は球
部材１８をスプリング２３の弾力に抗して主軸半径方向
外側に押し移動させ前方ｆ０へ抜け出るものとなる。

【００３４】上記した構成に於いて、内管３の内孔で霧
状切削液生成部２４よりも前側部分が主軸１側の霧状切
削液通路ｅ１をなしており、またプルスタッド６の中心
孔ｄ、ホルダ内部連絡管８の内孔ｆ、アジャストスクリ
ュウ７の中心孔ｃ、及び、刃具１３の肉厚部に形成され
た刃具内通路ｇが工具ホルダ４側の霧状切削液通路ｅ２
をなしている。上記した技術は本出願人の先願（特願平
１１−１９６２３１号公報）に開示されたものと殆ど同
一である。

【００３５】本実施例では、さらに、主軸１内であって
霧状切削液生成部２４と工具ホルダ４との間に空室群透
過層部１４が設けられているのであり、この空室群透過
層部１４は、延長連絡管部材２６の内孔の前端部に先の
実施例のものと同様な円柱部材１４ａを内嵌し固定させ
たものとなしてある。

【００３６】工具ホルダ４が主軸１に固定された状態で
は、延長連絡管部材２６の前端面はプルスタッド６に押
されてスプリング２８の弾力に抗して少し後方へ変位し
た状態なり、スプリング２８の弾力でプルスタッド６の
後端面に密状に圧接する。この際、円柱部材１４ａの多
数の空室が主軸１側の霧状切削液通路ｅ１と工具ホルダ
４側の霧状切削液通路ｅ２とを連通させる。

【００３７】一方、工具ホルダ４を主軸１から抜き取っ
た状態では、円柱部材１４ａは延長連絡管部材２６と共
にスプリング２８の弾力で前方ｆ０へ押され、延長連絡
管部材２６の移動範囲の前側規制位置に対応した位置ま
で変位した状態となるようになされている。

【００３８】上記主軸装置の使用に於いては、霧状切削
液の必要時にその供給開始指令が工作機械の制御部に付
与されるのであり、これに関連して、主軸装置の外方か
ら圧縮空気と切削液が主軸１内の霧状切削液生成部２４
に供給される。これにより、霧状切削液生成部２４は主
軸１側の霧状切削液通路ｅ１内に圧力凡そ０．３ＭＰａ
程度の霧状切削液を供給する。この霧状切削液は空室群
透過層部１４を経てやがて工具ホルダ４側の霧状切削液
通路ｅ２内に達し、ホルダ内部連絡管８及び刃具内通路
ｇを経て刃具１３先端から噴出される。一方、霧状切削
液が不必要となったときはその供給停止指令が工作機械
の制御部に付与されるのであり、これに関連して霧状切
削液生成部２４への圧縮空気と切削液の供給は停止され
るのであり、これにより霧状切削液生成部２４は霧状切
削液を生成しなくなり、霧状切削液通路ｅ１への霧状切
削液の供給は停止される。

【００３９】次に本願発明の第三実施例について説明す
ると、図３は本実施例に係る工作機械の主軸装置を示す
側面視断面図である。この図に示すように、主軸１の中
心孔１ａの平行部の最前部にキャニスタ案内筒部材２９
を密状に内嵌し、この案内筒部材２９の内孔にクランプ
ロッド３０を前後移動可能に内挿している。このクラン
プロッド３０は中心孔３０ａを形成されていて、前部を
キャニスタ部３０ｂとなされている。キャニスタ部３０
ｂはその前端部の周壁部に主軸半径方向の透孔を適当数
形成されており、各透孔には球部材１８が主軸半径方向
への変位可能に挿入されている。

【００４０】主軸１の中心孔１ａ内でキャニスタ案内筒
部材２９の後側には圧縮状態の皿バネ群２１が内挿され
ており、この皿バネ群２１はキャニスタ案内筒部材２９
を前側へ押圧する一方で、クランプロッド３０を前後移
動範囲内の後側規制位置へ向け押圧するものとなされて
いる。これにより、キャニスタ案内筒部材２９は主軸１
内で図３Ａに示す位置に保持された状態となっている。

【００４１】クランプロッド３０のキャニスタ部３０ｂ
の後側の中心孔３０ａ箇所には延長連絡管部材３１が設
けてあり、この部材３１は中心孔３０ａ内に螺着された
抜止めリング部材３２を介して一定範囲内の前後移動可
能に案内されると共に、この部材３２の後側に装着した
圧縮状のスプリング３３で前方ｆ０へ押圧された状態と
なされている。工具ホルダ４はプルスタッド６の中心孔
ｄと刃具内通路ｇとをホルダ本体５の中心孔ｂで連通さ
せたものとなされている。

【００４２】上記構成に於いて、主軸１から分離された
工具ホルダ４を主軸１に装着するときは、クランプロッ
ド３０を前方ｆ０へ変位させた状態の下で、工具ホルダ
４のテーパシャンク部５ｂを主軸１のテーパ孔１ａ内に
押し入れるのであり、これによりプルスタッド６が球部
材１８を主軸半径方向外側へ押し変位させてキャニスタ
案内筒部材２９に対し図３Ａに示す位置まで進入する。
このとき、クランプロッド３０は球部材１８がキャニス
タ案内筒部材２９の内孔の前端の径大部２９ａ内に位置
するまで前方ｆ０へ移動されている。この後、クランプ
ロッド３０を後方へ引き移動させるのであり、これによ
り球部材１８は前記径大部２９ａの後側に連続した斜面
部２９ｂにより主軸半径方向内側へ押し込まれ、クラン
プロッド６のくびれ部に填まり込み、後方への引張力を
プルスタッド６に伝達するものとなり、工具ホルダ４は
主軸１に強固に固定された状態となる。

【００４３】一方、主軸１に固定された工具ホルダ４を
主軸１から分離させるときは、クランプロッド３０を前
方ｆ０へ変位させた状態の下で、工具ホルダ４を前方ｆ
０へ引き出すのであり、これによりプルスタッド６は球
部材１８を主軸半径方向外側に押し移動させて前方ｆ０
へ抜け出るものとなる。

【００４４】上記した構成に於いて、クランプロッド３
０の中心孔３０ａや、延長連絡管３１の内孔の一部が主
軸１側の霧状切削液通路ｅ１をなしており、またプルス
タッド６の中心孔ｄ、ホルダ本体５の中心孔ｂ、及び、
刃具１３の肉厚部に形成された刃具内通路ｇが工具ホル
ダ４側の霧状切削液通路ｅ２をなしている。

【００４５】さらに本実施例に於いても第二実施例の場
合と同様に、主軸１内に空室群透過層部１４が設けられ
ているのであり、この空室群透過層部１４は、延長連絡
管部材３１の内孔の前端部に第一実施例のものと同様な
円柱部材１４ａを固定状に内嵌したものとなしてある。

【００４６】工具ホルダ４が主軸１に固定された状態で
は、延長連絡管部材３１の前端面はプルスタッド６に押
されてスプリング３３の弾力に抗して少し後方へ変位し
た状態なって、スプリング３３の弾力でプルスタッド６
の後端面に密状に圧接する。この際、空室群透過層部１
４の多数の空室が主軸１側の霧状切削液通路ｅ１と工具
ホルダ４側の霧状切削液通路ｅ２とを連通させる。

【００４７】一方、工具ホルダ４を主軸１から抜き取っ
た状態では、円柱部材１４ａは延長連絡管部材３１と共
にスプリング３３の弾力で前方ｆ０へ押圧され、延長連
絡管部材３１の移動範囲の前側規制位置に対応した位置
まで変位した状態となるようになされている。上記主軸
装置の使用に於ける霧状切削液の供給等は第一実施例の
場合に準じて行われる。

【００４８】次に本願発明の第四実施例について説明す
ると、図４は本実施例に係る工作機械の主軸装置を示す
側面視断面図である。この図に示すように、主軸１の中
心孔１ａの前部は段付孔部となし、この段付孔部にリン
グ形支持部材３４を嵌挿してボルト固定している。この
リング形支持部材３４の内孔はテーパ孔ａとなされてい
る。主軸１の中心孔１ａ内の奥部には筒形案内部材３５
が固定状に嵌着してあり、この筒形案内部材３５の内孔
にドローバー３６が前後移動可能に内挿されている。

【００４９】ドローバー３６の先部には筒形クランプ部
材３７が螺着されており、このクランプ部材３７と筒形
案内部材３５との間となる中心孔１ａ内にはバネ受け部
材３８が内挿されると共に筒形押圧部材３９が前後変位
可能に内挿されており、また筒形押圧部材３９の外周面
と中心孔１ａの周壁との間にはコレット４０が装着され
ている。筒形押圧部材３９の内孔の後部はその前部に比
べて径大となされてあって、この後部の内方でバネ受け
部材３８の前側には圧縮状の皿バネ群２１が装着してあ
り、この皿バネ群２１はその弾力で筒形押圧部材３９を
前方ｆ０へ押圧するものとなしてある。そして筒形押圧
部材３９はその前端の斜面３９ａでコレット４０の後端
斜面４０ａを押圧するものとなされおり、この筒形押圧
部材３９の押圧力がコレット４０の前部を縮径させるよ
うになされている。この際、４１はクランプ部材３７の
中心孔に形成された雌ネジに螺合されたロックネジ部材
で、クランプ部材３７とドローバー３６とを固定状に締
結するものである。

【００５０】ドローバー３６には中心孔が形成してあ
り、この中心孔の奥部に霧状切削液生成部２４を固定状
に設けてあり、この生成部２４の前側の中心孔１ａ部分
は径大部となされ、ここに筒形の圧縮空気供給弁２５が
前後移動可能に装着されている。この圧縮空気供給弁２
５は外周を段付面となさており、その最前部の細径部２
５ａがロックネジ部材４１の中心孔内に前後変位可能に
挿通され、また中間部２５ｂと中心孔１ａ部分の周壁と
の間でロックネジ部材４１の後側に圧縮状態となされた
スプリング４２が圧縮空気供給弁２５を後方へ押圧する
ように装着されている。

【００５１】工具ホルダ４は二面拘束ＨＳＫ型であって
テーパ軸部４３と半径面４４とを有し、テーパ軸部４３
の内孔内の前端面箇所でホルダ本体５の中心孔ｂの後端
部に延長連絡通路部材４５を差し込み筒ネジ部材４６を
介してホルダ本体４に固定させたものとなしてある。

【００５２】上記構成に於いて、主軸１から分離された
工具ホルダ４を主軸１に装着するときは、ドローバー３
６及びクランプ部材３７を前方ｆ０へ変位させた状態の
下で、工具ホルダ４のテーパ軸部４３を主軸１側のテー
パ孔ａ内に押し入れて、図４Ａに示すように半径面部４
４をリング形支持部材３４の前端面に密接させる。この
とき圧縮空気供給弁２５の細径部２５ａの先端は工具ホ
ルダ４側の延長連絡管４５の後端の内孔内に円滑に入り
込むものとなる。

【００５３】この後、ドローバー３６を後方へ引き移動
させるのであり、これによりクランプ部材３７の先端膨
大部がコレット４０の前端部の内面を主軸半径方向外側
へ押し変位させ、この変位がコレット４０の先端部の外
面の斜面４０ｂをテーパ軸部４３の後端部の内面の斜面
に圧接させる。この圧接はテーパ軸部４３を後側へ引き
寄せる力を発生させ、テーパ軸部４３を主軸１側のテー
パ孔ａに圧接させると同時に半径面部４４をリング形支
持部材３４の前端面に圧接させるのであり、これにより
工具ホルダ４は主軸１に強固に固定された状態となる。

【００５４】一方、主軸１に固定された工具ホルダ４を
主軸１から分離させるときは、ドローバー３６及びクラ
ンプ部材３７を前方ｆ０へ変位させるのであり、これに
よりコレット４０はテーパ軸部４３の内面を拘束しなく
なる。この状態の下で、工具ホルダ４を前方ｆ０へ引き
出し、主軸１側から分離させる。

【００５５】上記した構成に於いて、圧縮空気供給弁２
５の中心孔が主軸１側の霧状切削液通路ｅ１をなしてお
り、また延長連絡管部材４５の内孔、ホルダ内部連絡管
８の内孔ｆ、アジャストスクリュウ７の中心孔ｃ、及
び、刃具１３の肉厚部に形成された刃具内通路ｇが工具
ホルダ４側の霧状切削液通路ｅ２をなしている。

【００５６】さらに本実施例では、工具ホルダ４の内部
に空室群透過層部１４が設けられているのであり、この
空室群透過層部１４は、アジャストスクリュウ７の中心
孔ｃでホルダ内部連絡管８と刃具１３との間箇所に第一
実施例のものと同様な円柱部材１４ａを内嵌し固定させ
たものとなしてある。上記主軸装置の使用に於ける霧状
切削液の供給等は上記第二実施例の場合に準じて行われ
る。

【００５７】図５は本実施例の変形例を示している。こ
の変形例では空室群透過層部１４を主軸１内であって霧
状切削液生成部２４と工具ホルダ４との間に設けるので
あり、具体的には圧縮空気供給弁２５の前部の細径部２
５ａの内孔内に第一実施例のものと同様な円柱部材１４
ａを内嵌し固定させたものとなしてある。一方、工具ホ
ルダ４の内部の空室群透過層部１４は取り除かれてい
る。

【００５８】図６は本実施例の他の変形例を示してい
る。この変形例では霧状切削液生成部２４及びこれに圧
縮空気や切削液を供給するための供給路が取り除かれて
いる。そして、ドローバー３６の中心孔内に内管４７を
ドローバー３６と同体状に設けると共に、前記圧縮空気
供給弁２５の代わりにこれと同一形態の延長連絡管部材
２５１をドローバー３６の中心孔の前部の径大部内に前
後移動可能に内挿し、工具ホルダ４が主軸１に固定され
た状態では内管４７の先端面がスプリング４２の弾力に
より延長連絡管部材２５１の後端面に圧接された状態と
なって、内管４７の内孔と延長連絡管部材２５１の内孔
とが連通されるようになされている。この主軸装置の使
用に於ける霧状切削液の供給等は第一実施例の場合に準
じて行われる。

【００５９】次に本願発明の第五実施例について説明す
ると、図７は本実施例に係る工作機械の主軸装置を示す
側面視断面図である。この図に示すように、主軸１の中
心孔１ａの前部は径大部となしてあり、この径大部にリ
ング形支持部材３４を嵌挿してボルト固定している。こ
のリング形支持部材３４の後側には筒形のキャニスタ４
８がリング形支持部材３４と同心にボルト固定されてい
る。キャニスタ４８の内孔にはクランプ部材４９が前後
移動可能に内挿されており、このクランプ部材４９の周
面には球部材１８に関連した半球形凹み４９ａや斜面４
９ｂが形成されている。

【００６０】主軸１の中心孔１ａの奥部にはドローバー
３６が前後方向の移動可能に内挿されており、このドロ
ーバー３６はこれの先端に螺着された筒形結合部材５０
及びロックナット５１を介してクランプ部材４９の後端
部と嵌合状に結合されている。そして、主軸１の中心孔
１ａの周壁とドローバー３６との間にはドローバー３６
を後側へ押圧するため圧縮状態となされた皿バネ群２１
が装着されている。

【００６１】ドローバー３６の中心孔３６ａ内には霧状
切削液生成部２４が固定状に設けてあり、中心孔３６ａ
の前部は径大部となされてあって、この径大部に筒形の
圧縮空気供給弁２５が前後変位可能に内挿してある。圧
縮空気供給弁２５とクランプ部材４９の後端面との間の
中心孔３６ａ部分には圧縮状態となされたスプリング４
２が装着してあり、このスプリング４２の弾力で圧縮空
気供給弁２５が後方へ押圧されるようになされている。
そして、ドローバー３６の中心孔３６ａと圧縮空気供給
弁２５の内孔とは一線状に連通されている。

【００６２】二面拘束ＫＭ型となされた工具ホルダ４の
中心孔ｂの後部は径大部ｂ１となされており、この径大
部ｂ１の内方にホルダ内部連絡管８の後部と連通された
通路部材５２を挿入すると共にこの通路部材５２の細径
部に口金部材５３を前後移動可能に外挿させ、口金部材
５３と通路部材５２との間となる径大部ｂ１内に圧縮状
態となされたスプリング５４を装着し、このスプリング
５４の弾力が口金部材５３を後方へ押圧するようになす
ほか、口金部材５３が径大部ｂ１から抜け出るのを規制
するための係止リング部材５５を径大部ｂ１後端部に固
定している。

【００６３】上記構成に於いて、主軸１から分離された
工具ホルダ４を主軸１に装着するときは、ドローバー３
６及びクランプ部材４９を前方ｆ０へ変位させた状態の
下で、工具ホルダ４のテーパ軸部４３を主軸１側のテー
パ孔ａ内に押し入れて、図７Ａに示すように半径面部４
４をリング形支持部材３４の前端面に密接させる。この
とき球部材１８は主軸半径方向内側へ変位させられてク
ランプ部材４９の半球形凹み４９ａ内に入り込むように
変位して、工具ホルダ４のテーパ軸部４３が主軸１側の
テーパ孔ａ内に入り込むのを許容する。

【００６４】この後、ドローバー３６を後方へ引き移動
させるのであり、これによりクランプ部材４９の斜面４
９ｂが各球部材１８を主軸半径方向外側へ押し変位さ
せ、この変位により球部材１８がテーパ軸部４３の周壁
の係合孔４３ａの斜面に図７Ａに示すように圧接する。
この圧接はテーパ軸部４３を後側へ引き寄せる力を発生
させ、テーパ軸部４３を主軸１側のテーパ孔ａに圧接さ
せると同時に半径面部４４をリング形支持部材３４の前
端面に圧接させるのであり、これにより工具ホルダ４は
主軸１に強固に固定された状態となる。

【００６５】一方、主軸１に固定された工具ホルダ４を
主軸１から分離させるときは、ドローバー３６及びクラ
ンプ部材４９を前方ｆ０へ変位させるのであり、これに
より各球部材１８は主軸半径方向内側へ移動して半球形
凹み４９ａ内に入り込むものとなってテーパ軸部４３を
拘束しなくなる。この状態の下で、工具ホルダ４を前方
ｆ０へ引き出し、主軸１側から分離させる。

【００６６】上記した構成に於いて、圧縮空気供給弁２
５の内孔や、クランプロッド４９の中心孔が主軸１側の
霧状切削液通路ｅ１をなしており、また口金部材５３の
内孔、通路部材５２の内孔、ホルダ内部連絡管８の内孔
ｆ、アジャストスクリュウ７の中心孔ｃ、及び、刃具１
３の肉厚部に形成された刃具内通路ｇが工具ホルダ４側
の霧状切削液通路ｅ２をなしている。

【００６７】さらに本実施例では、工具ホルダ４の内部
に空室群透過層部１４が設けられているのであり、この
空室群透過層部１４は第四実施例の場合に準じたものと
なされる。そして上記主軸装置の使用に於ける霧状切削
液の供給等は上記第二実施例の場合に準じて行われる。

【００６８】図８は本実施例の変形例を示している。こ
の変形例では空室群透過層部１４を主軸１内であって霧
状切削液生成部２４と工具ホルダ４との間に設けるので
あり、具体的にはクランプ部材４９の中心孔の後端部内
に第一実施例のものと同様な円柱部材１４ａを内嵌し固
定させたものとなしてある。一方、工具ホルダ４の内部
の空室群透過層部１４は取り除かれている。

【００６９】図９は本実施例の他の変形例を示してい
る。この変形例では霧状切削液生成部２４及びこれに圧
縮空気や切削液を供給するための供給路が取り除かれて
いる。そして、ドローバー３６の中心孔内に内管４７を
ドローバー３６と同体状に設けると共に、前記圧縮空気
供給弁２５の代わりにこれと同一形態の連絡管部材２５
１をドローバー３６の中心孔の前部の径大部３６ａ内に
前後移動可能に内挿し、内管４７の先端面がスプリング
４２の弾力により連絡管部材２５の後端面に圧接された
状態となって、内管４７の内孔とクランプ部材４９の内
孔とが連通されるようになされている。この主軸装置の
使用に於ける霧状切削液の供給等は第一実施例の場合に
準じて行われる。

【００７０】次は上記した各実施例に於いて霧状切削が
空室群透過層部１４周辺を通過するときの流動状況につ
いて図１０をも参照して説明する。ここに、図１０は上
記各実施例の空室群透過層部１４での霧状切削液の流動
状況を示す断面視説明図である。

【００７１】主軸１の回転中にその霧状切削液通路ｅ１
内に適当圧（例えば凡そ０．３ＭＰａ程度）で供給され
た霧状切削液は霧状切削液通路ｅ１又はｅ２を経て空室
群透過層部１４に達するのであり、この霧状切削液は空
室群透過層部１４の切削液入口面１４１ａから空室群透
過層部１４内に進入する。この進入した霧状切削液は空
室１４２からその前側の空室１４２へと各空室１４２の
霧状切削液出入口１４３を経て順次にその下流側へ向け
て流動するのであり、この流動中に、各空室１４２には
霧状切削液の供給圧に関連した比較的高い圧力の霧状切
削液が充満し蓄積された状態となる。このような空室群
透過層部１４の内部での霧状切削液の流動が進行する
と、霧状切削液はやがて切削液出口面１４１ｂに達し、
さらに霧状切削液は霧状切削液通路ｅ１よりも下流側の
霧状切削液通路ｅ１又はｅ２を経て幾分圧力降下しつつ
刃具１３に達しその先端から噴出する。このような霧状
切削液の流動が継続することにより、刃具１３先端から
の霧状切削液の噴出は連続的に行われる。

【００７２】ところで、主軸１の回転速度は加工する刃
具径により、大小に変化するのが通常であり、大きく増
大することがある。このような場合、霧状切削液通路ｅ
１又はｅ２内を流動する霧状切削液は主軸１の回転速度
に対応した大きな遠心力を付与されるものとなり、これ
に関連して、霧状切削液通路ｅ１又はｅ２の周壁近傍で
霧状切削液の圧力が高くなってその液状化が促進され
る。

【００７３】この液状化の促進により霧状切削液通路内
の切削液ＳＬの量が増えると、霧状切削液通路ｅ１又は
ｅ２の有効通路断面が減少して霧状切削液の流動が制限
されるのであり、このようになると、霧状切削液は空室
群透過層部１４に達するまでにその圧力を大きく降下さ
れる。

【００７４】このように圧力降下した霧状切削液は空室
群透過層部１４の切削液入口１４１ａからの進入を抑制
されるものとなり、これに関連して空室群透過層部１４
の切削液出口側１４１ｂの霧状切削液通路ｅ１又はｅ２
内の圧力が降下する傾向となる。このような傾向が生じ
始めると、空室群透過層部１４内の各空室１４２に蓄積
されている比較的高い圧力の霧状切削液が直ちに膨張し
て各空室１４２の霧状切削液出入口１４３から流出する
ようになる。この際、霧状切削液出入口１４３がその対
応する空室１４１の大きさに比べて小さいため、その空
室１４２に蓄積されている霧状切削液は瞬時に最大限ま
で膨張して流出するのではなく、膨張を制限されつつ流
出するようになる。

【００７５】この結果、空室群透過層部１４の切削液出
口１４１ｂ側の霧状切削液通路ｅ１又はｅ２内には、空
室群透過層部１４に進入してくる霧状切削液が減少した
にも拘わらず、この進入してくる霧状切削液よりも多い
量の霧状切削液が流れ込み、ここでの圧力の降下を抑制
するように作用する。これにより、一時的な主軸１の回
転上昇による霧状切削液の液状化に起因した霧状切削液
の刃具１３先端からの噴出量の減少傾向は緩和されるの
である。この減少傾向の緩和は刃具寿命の長期化や加工
精度や品質の向上等を図る上で寄与するものとなる。

【００７６】一方、主軸１側の霧状切削液通路ｅ１内へ
の霧状切削液の供給圧力が一時的に高くなる等してその
供給量が増大化されることがあるが、このような場合は
空室群透過層部１４の空室１４２群内により多くの霧状
切削液が蓄積されるようになって、空室群透過層部１４
の切削液出口１４１ｂからのその流出量の増大化を一時
的に抑制するのであり、これにより霧状切削液の刃具１
３先端からの噴出量の一時的な増大傾向が緩和されるの
である。この増大傾向の緩和は霧状切削液を節約する上
で寄与するものとなる。

【００７７】上記から明らかなように、空室群透過層部
１４の空室１４２は霧状切削液通路ｅ１又はｅ２内での
液状化等に起因して空室群透過層部１４よりも下流側で
生じる一時的な流動変動を抑制するためのバッファとし
て機能するのであり、これにより刃具１３先端からの霧
状切削液の噴出が安定化されるのである。実際の加工に
於ける一時的な流動変動は２秒以下程度の短い期間に亘
って生じる主軸１の回転上昇により生じることが多いの
であり、空室群透過層部１４の空室１４２はこれに対し
て有効に作用するものとなる。

【００７８】また工作機械の使用中、ワークの非切削中
や主軸の回転を停止させるときは霧状切削液通路ｅ１へ
の霧状切削液の供給が停止されるが、この場合は霧状切
削液通路ｅ１内に残存した霧状切削液が、空室群透過層
部１４よりも下流側へ流出するのを空室群透過層部１４
のバッファとしての作用によって一時的に抑制される傾
向となると共に、霧状切削液通路ｅ１又はｅ２内の霧状
切削液が空室群内に蓄積されるほか、霧状切削液通路ｅ
１又はｅ２内で液状化した切削液ＳＬも空室１４２内に
進入して停留するものとなり、これにより霧状切削液や
液状化した切削液ＳＬは刃具１３先端から無抵抗のまま
無駄に流出する現象を阻止されるのである。

【００７９】また霧状切削液の供給が停止されて空室群
透過層部１４に蓄積され停留した霧状切削液や液状化し
た切削液は、霧状切削液が霧状切削液通路ｅ１内への供
給を開始された直後で未だその供給された霧状切削液が
空室群透過層部１４に達する前に、その供給された霧状
切削液の圧力で、空室群透過層部１４内からこれの下流
側へ流出し霧状となって刃具１３先端から噴出されるも
のとなり、この噴出された霧状切削液は霧状切削液の供
給が開始された直後の刃具１３先端から噴出される霧状
切削液の切削液濃度の低下を補い、刃具１３先端からの
霧状切削液の噴出を安定的となす。

【００８０】

【発明の効果】以上の如く構成した本発明によれば、次
のような効果が得られる。即ち、請求項１の発明によれ
ば、主軸の回転速度の変化等により霧状切削液通路内の
霧状切削液の流量が一時的に変動しても、空室群透過層
部の空室群がこの変動を緩和するためのバッファとして
作用し、刃具先端から霧状切削液を安定的に噴出させる
ものとなり、これにより例えば刃具寿命の長期化、加工
の精度や品質の向上のほか切削液の節約等が図られるの
である。

【００８１】また工作機械の使用中、霧状切削液通路へ
の霧状切削液の供給は停止や再開を繰り返されるが、霧
状切削液の供給が停止されたときに空室群透過層部より
も上流側の霧状切削液や液状化した切削液が空室群透過
層部に蓄積されるため、それら霧状切削液等の無駄な流
出が効果的に阻止されるものとなり、また霧状切削液の
供給が再開された直後に刃具先端から噴出する霧状切削
液の切削液濃度の過度の低下が空室群透過層部内から流
出する霧状切削液や液状化した切削液により回避される
ため、刃具先端から噴出する霧状切削液の切削液濃度の
時間的変化が抑制されるものとなる。

【００８２】請求項２の発明によれば、霧状切削液の流
動の一回の一時的変動を緩和することのできる時間が長
期化するものとなる。請求項３の発明によれば、丈夫な
空室群透過層部を簡易に形成することが可能となる。

【００８３】請求項４の発明によれば、主軸側の内部構
造の複雑化を回避することができる。請求項５の発明に
よれば、主軸に装着される種々の刃具及びこれの関連部
材はこれに変更を加えないでもそれぞれの刃具について
空室群透過層部による効用を得ることができるのであ
り、この効用を得る上での総合的コストが種々の刃具及
びこれの関連部材のそれぞれに空室群透過層部を設ける
場合に比べて安価となる。

【００８４】請求項６の発明によれば、霧状切削液通路
の長さが短くなって霧状切削液の液状化の量が少なくな
り、刃具からの霧状切削液の噴出が効果的に安定化され
るものとなる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第一実施例に係る工作機械の主軸装置
を示すもので、Ａは側面視断面図、Ｂは前記主軸装置の
主要部を示す拡大断面図である。

【図２】本発明の第二実施例に係る工作機械の主軸装置
を示し、Ａは側面視断面図でＢは部分拡大図である。

【図３】本発明の第三実施例に係る工作機械の主軸装置
を示し、Ａは側面視断面図でＢは部分拡大図である。

【図４】本発明の第四実施例に係る工作機械の主軸装置
を示し、Ａは側面視断面図でＢは部分拡大図である。

【図５】上記第四実施例の変形例を示し、Ａは側面視断
面図でＢは部分拡大図である。

【図６】上記第四実施例の他の変形例を示し、Ａは側面
視断面図でＢは部分拡大図である。

【図７】本発明の第五実施例に係る工作機械の主軸装置
を示し、Ａは側面視断面図でＢは部分拡大図である。

【図８】上記第五実施例の変形例を示し、Ａは側面視断
面図でＢは部分拡大図である。

【図９】上記第五実施例の他の変形例を示し、Ａは側面
視断面図でＢは部分拡大図である。

【図１０】上記各実施例の空室群透過層部での霧状切削
液の流動状況を示す断面視説明図でる。

【図１１】従来例の主軸装置の側面視断面図である。

【符号の説明】

１ 主軸 ４ 工具ホルダ １３ 刃具 １４ 空室群透過層部 １４２ 空室 １４３ 霧状切削液出入口 ２４ 霧状切削液生成部 ｅ１ 主軸側の霧状切削液通路 ｅ２ 工具ホルダ側の霧状切削液通路

Claims (6)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 主軸からこれと同体状に装着された刃具
   の先端に至る範囲の内部に単一状の通路断面を有する霧
   状切削液通路を形成し、主軸側から供給された霧状切削
   液がこの霧状切削液通路を経て刃具先端から噴出される
   ように作動する工作機械の主軸装置に於いて、前記霧状
   切削液通路の途中に、多数の空室が多段状且つ連通状態
   に積層され霧状切削液がそれらの空室群を経て透過する
   ものとした空室群透過層部を形成したことを特徴とする
   工作機械の主軸装置。
2. 【請求項２】 各空室が比較的小さな出入口で相互に連
   通されていることを特徴とする請求項１記載の工作機械
   の主軸装置。
3. 【請求項３】 空室群透過層部が焼結金属で形成されて
   いることを特徴とする請求項１又は２記載の工作機械の
   主軸装置。
4. 【請求項４】 空室群透過層部が刃具を主軸に固定させ
   るための工具ホルダの内部に設けてあることを特徴とす
   る請求項１〜３の何れかに記載の工作機械の主軸装置。
5. 【請求項５】 空室群透過層部が主軸の内部に設けてあ
   ることを特徴とする請求項１〜３の何れかに記載の工作
   機械の主軸装置。
6. 【請求項６】 主軸の内部に霧状切削液を発生させるた
   めの霧状切削液生成部を設け、この霧状切削液生成部
   と、刃具を主軸に固定させるための工具ホルダとの間に
   空室群透過層部を設けたことを特徴とする請求項１〜３
   の何れかに記載の工作機械の主軸装置。