JP3260330B2 - 斜板式圧縮機のピストンとシューとの係合構造 - Google Patents

斜板式圧縮機のピストンとシューとの係合構造

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、斜板式圧縮機のピ
ストンとシューとの係合構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、斜板式圧縮機は、シリンダブロッ
クとフロントハウジングに支持された回転軸上の斜板と
前記シリンダブロック内に往復動可能に収容されたピス
トンとの間に球面シューを介在して構成されている。こ
の斜板式圧縮機では、回転軸の回転に伴って、斜板が回
転軸に沿う往復運動を含む回転運動を行うことによっ
て、ピストンの斜板通過溝に収容されたシューを介して
ピストンの往復運動に変換する構成である。
【0003】この斜板とピストンの斜板通過溝との結合
部としては、斜板に摺動する平坦面と、この平坦面とは
反対側の凸状曲面を有する略半球状のシューと、このシ
ューの凸状曲面を受け入れるように斜板通過溝に設けら
れた収容凹部とを含むものがある(例えば、特開昭61
−135990号公報、特開昭49−65509号公
報、及び特開昭56−138474号公報参照)。
【0004】これら従来の斜板式圧縮機の中で、両頭ピ
ストンを用いるものを両斜板式圧縮機とよび、一方の端
部にしか圧縮頭部を持たないピストンを用いるものを片
斜板式圧縮機とよぶ。
【0005】従来、片斜板圧縮機のピストンの頚部に形
成された斜板通過溝の両端面と、斜板の前後の両端面と
の間に介在される半球状のシューは、前記端面上に形成
された球面状の収容凹部内に嵌合保持されるように、な
っており、収容凹部の半径と、球面シューの球半径とが
同一に設定されていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来の斜板式圧縮機の
運転時には、シューは、斜板の回転運動によって、ピス
トンの斜板収容溝に形成された収容凹部の中での味噌擂
り運動を行う。従って、シューの凸状球面と収容凹部の
球面との間に良好な潤滑性を維持することが望まれる。
【0007】しかしながら、従来において、ピストン収
容凹部とシューとの半球面形状の一致により、両者の摺
動面間のクリアランスが殆どなく、そのために、圧縮機
内の冷媒ガス中のミスト状潤滑油が収容凹部と球面シュ
ーとの間に浸入し難いという欠点を有した。
【0008】したがって、ピストンの収容凹部に大きな
力が作用し、シューとの摺動により、摩耗が生じる。特
に、斜板式圧縮機運転の初期段階では、シューの半球面
と十分なじんでいないために、摩耗量が激しい。そのた
め、初期的に十分な潤滑が必要となる。そこで、両者間
に十分な潤滑性を得ることができず、初期的に両者の摺
動面の摩耗が促進される。また、時には、ピストン収容
凹部の異常摩耗を発生させる。
【0009】これを防止するために、例えば、米国特許
第4,734,041号明細書には、シューの凸状曲面
を収容凹部の球面より小さな曲率半径を持つ球面とする
とともに、その球状曲面の頂部を平坦部にすることが記
載されている。この米国特許に記載された圧縮機の場
合、シューの平坦部と収容凹部との間が油溜りとなるた
めに、潤滑性に有利である。
【0010】しかしながら、シューの平坦面の端部が収
容凹部の内面を擦ることによって、その分収容凹部の局
部的な摩耗を促進することになり、予め設けられたクリ
アランスとは異なる部分にクリアランスを生じたり、局
部的な力の負荷によって、部分的に変形したりして、圧
縮機の寿命を縮めるばかりか、シューの相対振動を増強
する結果、運転時の騒音の発生をも助長することにな
る。
【0011】そこで、本発明の技術的課題は、ピストン
の収容凹部において、初期段階で摺動面に潤滑油が存在
するため、かじり、むしれ等の無い摩耗が促進され、シ
ュー球面に適した形状が形成される斜板式圧縮機のピス
トンとシューとの係合構造を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、回転軸
を中心に回転するとともに、前記回転軸に略沿う方向に
往復運動を行う斜板と、前記斜板の通過溝を備え前記斜
板の運動をシューを介して往復運動に変換するピストン
とを備えた斜板式圧縮機の前記ピストンと前記シューと
の係合構造において、前記斜板通過溝の両端面に前記シ
ューの球面部を保持するための円体面形状の凹部を設
け、前記凹部の底部に凸部を設けたことを特徴とする斜
板式圧縮機のピストンとシューとの係合構造が得られ
る。
【0013】ここで、本発明において、前記凸部は、底
部から高さ1〜20μm程度が好ましい。
【0014】また、本発明によれば、前記斜板式圧縮機
のピストンとシューとの係合構造において、前記凸部
は、少なくとも2個の互いに中心位置の異なる球面を重
ね合わせることによって、その境界部に形成される部分
であることを特徴とする斜板式圧縮機のピストンとシュ
ーとの係合構造が得られる。
【0015】さらに、本発明によれば、前記いずれかの
斜板式圧縮機のピストンとシューとの係合構造を備えて
いることを特徴とする斜板式圧縮機が得られる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て、図面を参照しながら説明する。
【0017】図1は本発明の実施の形態による斜板式圧
縮機の断面図である。
【0018】図1に示すように、斜板式圧縮機10は、
片斜板式圧縮機とも呼ばれ、一端から他端に向かって貫
通した孔部からなる複数のシリンダボア16が一円周上
の等角位置に形成され、また、一端側に開口を持つハウ
ジングと一体に形成されたシリンダブロック11と、こ
の開口を覆うように設けられたフロントハウジング12
と、シリンダブロック11の他端に弁板装置23を介し
て塞ぐようにシリンダヘッド15が設けられており、全
体の外郭部が形成されている。
【0019】弁板装置23とシリンダヘッド15の壁部
とによって、吐出室25と吸入室24とが区画形成され
ている。
【0020】シリンダブロック11と、フロントハウジ
ング12とによって、内部にクランク室13が規定され
ている。フロントハウジング12の突出部から、このク
ランク室13を貫通して、シリンダブロック11に至る
ように、回転軸13が設けられ、フロントハウジング1
2と、シリンダブロック11に夫々軸受け12a、16
aを介して回転可能に支持されている。なお、符号26
は、外部から遮断するシール部材である。また、符号2
2は、クランク室13内の圧力を調整するための圧力制
御装置で、これによって、クランク室13内の圧力を調
整し、斜板17の傾角を調整することによって、この斜
板式圧縮機の圧縮容量が調整されている。
【0021】また、クランク室13内の回転軸14の周
囲には、球状の支持部材27を介して斜板17が設けら
れ、これに隣接して、ロータ18が回転軸14に固定さ
れて設けられている。ロータ18の一端は、軸受け12
bを介してフロントハウジング12の内壁に支持されて
いる。
【0022】また、斜板17と、ロータ18の他端との
間には、連結部19が設けられている。この連結部19
によって、ロータ18が回転すると、斜板17も軸回り
に回転するとともに、斜板17の周辺部が回転軸14上
の中心部を中心にして、略回転軸14に沿った円弧状に
運動を行う。
【0023】シリンダブロック11の各シリンダボア1
6内には、それぞれピストン20が往復摺動可能に嵌入
されている。ピストン20の頚部に斜板通過用の溝21
が形成されており、斜板通過溝21の両端面には、シュ
ー受け座である収容凹部1が対向形成されている。各収
容凹部1と斜板17の前後、両面の間には、半球状のシ
ュー2が介在されており、シュー2の球面部2aが各収
容凹部1に嵌入されている(詳しくは、後に述べる図2
参照)。
【0024】斜板17の回転に伴い、ピストン20がシ
ュー2を介して前後へ交互に押圧され、シリンダボア1
6内を往復摺動する。このピストン20の往復運動によ
って、吸入室24から、図示しない吸入弁シリンダボア
内とピストン20の頭部との間に吸入された流体は、ピ
ストン20の図1では、右方への移動によって、吐出弁
を介して吐出室25に吐出される。
【0025】図2は図1の斜板式圧縮機のピストンとシ
ューとの係合構造を主に示す図である。図2に示すよう
に、ピストン20の頚部の斜板通過溝21内に、斜板1
7の周縁部が収容されている。斜板通過溝21には、両
側壁に対向するように、収容凹部1が設けられ、斜板1
7周辺部の両面との間に半球形状のシュー2が、球面を
収容凹部に、また、平坦面を斜板17の周辺の夫々の面
に摺接するように、収容されている。この収容凹部1
は、中央部に凸部3を備えている。
【0026】図3は図1の斜板式圧縮機の図2に示すシ
ューの収容凹部の底に設けられた凸部3と、シュー2と
の係合状態の概略を示す断面図である。
【0027】図3に示すように、収容凹部1は、所定の
中心間の間隔を置いて描かれた半径R1の曲面と、半径
R2の曲面(R1=R2)からなり、両方の円の交点部
分の外側が、峰の部分の中央がくぼむような円弧状を描
く凸部3となっている。この凸部3は、高さD1が1〜
20μm程度である。
【0028】尚、図面において、収容凹部1の曲面R
1,R2は、シュー球面2aの半径R3よりも小さく形
成されている例を示している。
【0029】図2に戻って、高さD1(=1〜20μ
m)の凸部3が、受け座である収容凹部1に設けられて
いる。これによって、球面シュー2の球面部2aと、ピ
ストンのシュー受け座である収容凹部1との形状関係に
より、両者の間には、クリアランス4が生じ、冷媒ガス
が、このクリアランス4内に容易に浸入し、このガス中
のミスト状潤滑油が、受け座の収容凹部1の底部まで入
り込むので、初期段階で摺動面には、潤滑油が存在する
ため、かじり、むしれ等の無い摩耗となる。
【0030】このように、本発明の実施の形態におい
て、凸部3を設けることによって、シュー2と、シュー
受け座である収容凹部1のなじみ性に効果があり、シュ
ー受け座である収容凹部1は、シュー2に対して適切な
摩耗を行い、その結果、コンプレッサーの耐久性向上に
繋がる。
【0031】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
シュー球面が収容されるピストンの収容凹部の底部に、
凸部を設けることで、収容凹部は、初期段階で摺動面に
潤滑油が存在するため、かじり、むしれ等の無い摩耗が
促進され、シューの球面に適した形状が形成される斜板
式圧縮機のピストンとシューとの係合構造を提供するこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態による斜板式圧縮機の縦断
面図である。
【図2】図1の斜板式圧縮機のピストンとシューとの係
合構造を主に示す断面図で、ピストン、斜板、及びシュ
ーの組み立てを示している。
【図3】図1の斜板式圧縮機の図2に示すシューの収容
凹部の底に設けられた凸部3と、シュー2との係合状態
の概略を示す断面図である。
【符号の説明】
1 収容凹部 1a 収容凹部内面 2 シュー 2a 球面 3 凸部 10 斜板式圧縮機 11 シリンダブロック 12 フロントハウジング 12a,12b 軸受け 13 クランク室 14 回転軸 16 シリンダボア 17 斜板 18 ロータ 19 連結部 20 ピストン 21 通過溝 23 弁板装置 24 吸入室 25 吐出室

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 回転軸を中心に回転するとともに、前記
    回転軸に略沿う方向に往復運動を行う斜板と、前記斜板
    の通過溝を備え前記斜板の運動をシューを介して往復運
    動に変換するピストンとを備えた斜板式圧縮機の前記ピ
    ストンと前記シューとの係合構造において、前記斜板通
    過溝の両端面に前記シューの球面部を保持するための円
    体面形状の凹部を設け、前記凹部の底部に凸部を設けた
    ことを特徴とする斜板式圧縮機のピストンとシューとの
    係合構造。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の斜板式圧縮機のピストン
    とシューとの係合構造において、前記凸部は、少なくと
    も2個の互いに中心位置の異なる球面を重ね合わせるこ
    とによって、その境界部に形成される部分であることを
    特徴とする斜板式圧縮機のピストンとシューとの係合構
    造。
  3. 【請求項3】 請求項1または2記載の斜板式圧縮機の
    ピストンとシューとの係合構造を備えていることを特徴
    とする斜板式圧縮機。
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