JP3256912B2 - 水溶性イリジウムめっき浴及びそのめっき方法 - Google Patents

水溶性イリジウムめっき浴及びそのめっき方法

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JP3256912B2 JP12467293A JP12467293A JP3256912B2 JP 3256912 B2 JP3256912 B2 JP 3256912B2 JP 12467293 A JP12467293 A JP 12467293A JP 12467293 A JP12467293 A JP 12467293A JP 3256912 B2 JP3256912 B2 JP 3256912B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は水溶性イリジウムめっ
き浴及びそのめっき方法に関する。
【0002】
【従来の技術】イリジウムは、高い硬度を有するととも
に、高濃度の酸や王水、もしくはハロゲン類に対しても
優れた耐腐食性を示す金属であるが、その希少性と加工
の困難性のため工業用としてあまり使われておらず、そ
の応用範囲は所定の金属の硬化剤や触媒等に限られてい
た。しかし、近年のめっき技術の発展に伴い、イリジウ
ムめっきを装飾品のみならず防腐食材及び電気接点等の
材料として工業的に広く利用する技術が開発されてきて
いる。
【0003】従来の水溶性イリジウムめっき浴の例とし
ては、イリジウム化合物としてヘキサクロロイリジウム
(III )酸塩、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸塩、塩
化イリジウム(III )酸塩、硫酸イリジウム(III )酸
塩、硫酸イリジウム(IV)酸塩、その他イリジウムの硝
酸塩や亜硝酸塩を用いたものが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな従来の水溶性イリジウムめっき浴にあっては、陽極
側で酸化物が発生したり、めっき液が不安定で分解した
りしやすいという問題があった。加えて、電流効率も最
大で65パーセント程度しかなく、更にまた非常に低い
電流密度でしか最大析出効率が得られないため、めっき
速度が非常に小さいという問題もあった。また、この従
来の水溶性イリジウムめっき浴は、めっき速度が一定で
ないという問題もあり、これは実用的な膜厚が安定して
得られないということにつながるものである。このよう
に、従来の水溶性イリジウムめっき浴はあまり実用的で
はなく、この点が、工業用としてイリジウムめっきがあ
まり広く利用されていない一因となっていた。
【0005】本発明は、このような従来の技術に着目し
てなされたものであり、安定で分解しにくく、高い電流
効率と速いめっき速度を有する実用的な水溶性イリジウ
ムめっき浴を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明に係る水溶性イ
リジウムめっき浴は、イリジウム化合物として、アニオ
ン成分がハロゲンであるイリジウム(III )錯塩に、飽
和モノカルボン酸、飽和モノカルボン酸塩、飽和ジカル
ボン酸、飽和ジカルボン酸塩、飽和ヒドロキシカルボン
酸、飽和ヒドロキシカルボン酸塩、第1アミド、尿素か
らなる群より選ばれた一種以上の化合物を加え攪拌した
ものを使用するものとしている。
【0007】そして、イリジウムは金属イリジウム濃度
で1〜200g/l含有するものとし、好ましくは10
〜20g/l存在させることができる。イリジウム濃度
が1g/lより少ないと電流密度の上限が小さくなって
実用に供することが難しくなり、200g/lより多い
と飽和してイリジウムが溶解できなくなるとともにコス
トが高価になり実用上不適となる。イリジウム(III )
錯塩としては、ヘキサクロロイリジウム(III )酸塩、
ヘキサブロモイリジウム(III )酸塩、ヘキサフルオロ
イリジウム(III )酸塩〔好ましくはヘキサブロモイリ
ジウム(III )酸ナトリウム、ヘキサクロロイリジウム
(III )酸ナトリウム〕等を採用できる。
【0008】更に、飽和モノカルボン酸、飽和モノカル
ボン酸塩、飽和ジカルボン酸、飽和ジカルボン酸塩、飽
和ヒドロキシカルボン酸、飽和ヒドロキシカルボン酸
塩、第1アミド、尿素からなる群より選ばれた一種以上
の化合物は、0.001〜1.0mol/l添加するも
のとし、好ましくは0.01〜0.2mol/l添加す
るようにしている。そして、この化合物としては例えば
マロン酸二ナトリウム、酢酸、シュウ酸等を採用でき
(好ましくはマロン酸二ナトリウム)、その添加量を
0.001〜1.0mol/lとしたのは、0.001
mol/lより少ないと添加による効果がほとんど現れ
ないためであり、1.0mol/lより多いと析出が妨
げられるためである。
【0009】更にまた、本発明に係る水溶性イリジウム
めっき方法は、操作条件をpH1〜8、温度50〜98
℃、電流密度0.01〜3.0A/dm2 とし、好まし
くはPH4〜5、温度80〜90℃、電流密度0.1〜
0.2A/dm2 の操作条件で用いる。PH1〜8とし
たのは、PHが1より小さいと電流密度の上限が小さく
なって実用的でなくなるためであり、PHが8より大き
いと水酸化物を生成し沈殿が生ずるからである。そして
温度が50℃より低いと極端に析出が起こりにくくな
り、温度が98℃より高いと水の蒸発が激しくなり実用
上好ましくなくなる。そしてまた、電流密度が0・01
A/dm2 より低い場合は析出速度が極端に小さくな
り、3・0A/dm2 より高い電流密度の場合は水素の
発生が起こり、析出物が析出しなくなる。
【0010】
【実施例】次に実施例によってこの発明を更に詳細に説
明する。実施例1 ヘキサブロモイリジウム(III )酸ナトリウム(メタル濃度で)10g/l ホウ酸 40g/l マロン酸二ナトリウム 0.02mol/l pH 5.0 温度 85℃ 電流密度 0.15A/dm2 本実施例では、イリジウム化合物として、上記ヘキサブ
ロモイリジウム(III)酸ナトリウムに、「ジカルボン
酸塩」としてのマロン酸二ナトリウムを加え、ホットバ
スで85℃に保ちながらマグネチックスターラで1時間
攪拌したものを用いた。そして、予め真鍮片に金ストラ
イクめっきを施し、更にその上に1μmの金めっきを施
した試験片に、上記の条件でめっきを行なったところ、
膜厚が8μmの光沢ある析出物が得られた。そしてこの
析出物は硬度、密着性、耐熱性、ボンディング性等にお
いて実用上十分な特性を備えていることが確認できた。
また、電流効率は100%であり、めっき速度は1.5
μm/hであった。
【0011】なお、上記と同様の組成及び条件におい
て、マロン酸二ナトリウムを以下の化合物に代えてそれ
ぞれめっきを行なったところ、次のような結果が得られ
た。即ち「モノカルボン酸」としての酢酸0.2mol
/lを用いた場合は電流効率81%、膜厚1.9 μ
m、めっき速度1.2μm/hとなり、「ジカルボン
酸」としてのシュウ酸0.02mol/lを用いた場合
は電流効率93%、膜厚2.6μm、めっき速度1.4
μm/hとなった。そしてまた「ヒドロキシカルボン
酸」としての酒石酸0.2mol/lを用いた場合は電
流効率74%、膜厚1.1μm、めっき速度1.1μm
/hとなり、「ヒドロキシカルボン酸塩」としてのクエ
ン酸二ナトリウム0.2mol/lを用いた場合は電流
効率87%、膜厚2.8μm、めっき速度1.3μm/
hとなった。外観等の他の特性に関してはそれぞれ上記
マロン酸ニナトリウムを用いた場合と同様の効果が得ら
れた。
【0012】実施例2 ヘキサクロロイリジウム(III )酸ナトリウム(メタル濃度で)10g/l ホウ酸 40g/l マロン酸二ナトリウム 0.02mol/l pH 5 温度 85℃ 電流密度 0.15A/dm2 本実施例では、イリジウム化合物として、上記ヘキサク
ロロイリジウム(III)酸ナトリウムに、マロン酸二ナ
トリウムを加え、ホットバスで85℃に保ちながらマグ
ネチックスターラで30分攪拌したものを用いた。そし
て、予め真鍮片に金ストライクめっきを施し、更にその
上に1μmの金めっきを施した試験片に、上記の条件で
めっきを行なったところ、膜厚が3μmの光沢ある析出
物が得られた。そしてこの析出物は硬度、密着性、耐熱
性、ボンディング性等において実用上十分な特性を備え
ていることが確認できた。また、電流効率は98%であ
り、めっき速度は1.5μm/hであった。
【0013】なお、上記と同様の組成及び条件におい
て、マロン酸二ナトリウムに代えて「モノカルボン酸
塩」としてのプロピオン酸ナトリウム0.2mol/l
を用いたところ、電流効率60%、膜厚0.1μm、め
っき速度0.9μm/hとなり、外観等の他の特性に関
しては上記マロン酸ニナトリウムを用いた場合と同様の
効果が得られた。
【0014】実施例3 ヘキサブロモイリジウム(III )酸ナトリウム(メタル濃度で)10g/l ホウ酸 40g/l マロン酸二ナトリウム 0.02mol/l pH 5 温度 85℃ 電流密度 0.5A/dm2 本実施例では、イリジウム化合物として、上記ヘキサブ
ロモイリジウム(III)酸ナトリウムに、マロン酸二ナ
トリウムを加え、ホットバスで85℃に保ちながらマグ
ネチックスターラで1時間攪拌したものを用いた。そし
て、予め真鍮片に金ストライクめっきを施し、更にその
上に1μmの金めっきを施した試験片に、上記の条件で
めっきを行なったところ、膜厚が5μmの光沢ある析出
物が得られた。そしてこの析出物は硬度、密着性、耐熱
性、ボンディング性等において実用上十分な特性を備え
ていることが確認できた。また、電流効率は90%であ
り、めっき速度は5μm/hであった。
【0015】実施例4 ヘキサブロモイリジウム(III )酸ナトリウム(メタル濃度で)10g/l ホウ酸 40g/l マロンアミド 0.2mol/l pH 5 温度 85℃ 電流密度 0.15A/dm2 本実施例では、イリジウム化合物として、上記ヘキサブ
ロモイリジウム(III)酸ナトリウムに、マロンアミド
を加え、ホットバスで85℃に保ちながらマグネチック
スターラで1時間攪拌したものを用いた。そして、予め
真鍮片に金ストライクめっきを施し、更にその上に1μ
mの金めっきを施した試験片に、上記の条件でめっきを
行なったところ、膜厚が3μmの光沢ある析出物が得ら
れた。そしてこの析出物は硬度、密着性、耐熱性、ボン
ディング性等、実用上十分な特性を備えていることが確
認できた。また、電流効率は84%であり、めっき速度
は1.2μm/hであった。
【0016】なお、上記と同様の組成及び条件におい
て、マロンアミドに代えてプロピオンアミド0.2mo
l/lを用いてめっきを行なったところ、電流効率77
%、膜厚0.1μm、めっき速度1.2μm/hとな
り、同じくマロンアミドに代えて尿素0.2mol/l
を用いたところ、電流効率85%、膜厚2.8μm、め
っき速度1.3μm/hとなった。外観等の他の特性に
関しては上記マロンアミドを用いた場合と同様の効果が
得られた。
【0017】比較例 実施例1と同様の組成及び条件において、マロン酸二ナ
トリウムを下記化合物に代えてそれぞれめっきを行なっ
たところ、次のような結果が得られた。即ち不飽和カル
ボン酸としてアクリル酸0.2mol/lを用いた場合
は電流効率0%、同じくマレイン酸を用いた場合も電流
効率0%となった。更に、第2アミド(酸イミド)とし
てスクシンイミド0.2mol/lを用いた場合は電流
効率0%であった。更にまた、アミノ酸としてグリシン
0.2mol/lを用いた場合は電流効率59%、L−
アスパラギン酸0.2mol/lを用いた場合は電流効
率0%、L−アルギニン0.2mol/lを用いた場合
は電流効率0%であった。
【0018】
【発明の効果】以上説明したように、本発明にかかる水
溶性イリジウムめっき浴及びそのめっき方法は、飽和モ
ノカルボン酸、飽和モノカルボン酸塩、飽和ジカルボン
酸、飽和ジカルボン酸塩、飽和ヒドロキシカルボン酸、
飽和ヒドロキシカルボン酸塩、第1アミド、尿素からな
る群より選ばれた一種以上の化合物を加えて反応させた
イリジウム(III )錯塩を用いることによって、めっき
浴が分解しにくくなり、浴の安定性が増すという効果が
ある。そしてまた、本発明にかかるめっき浴及びそのめ
っき方法は、電流効率の減少の割合を非常に小さく抑え
ることができるため実用的なめっき速度が得られるとと
もに、最大100%の電流効率が得られるという効果が
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭48−65128(JP,A) 特開 昭48−40639(JP,A) 特開 平4−333587(JP,A) 特開 昭56−119791(JP,A) 特開 昭56−13493(JP,A) 特開 昭63−111194(JP,A) 特開 昭57−57882(JP,A) 特開 昭52−14537(JP,A) 特開 昭48−34735(JP,A) 特公 昭45−8768(JP,B1) 特公 昭43−5205(JP,B1) 「表面技術」、Vol.40、No.1 (1989)、第132−133頁 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C25D 3/50

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アニオン成分がハロゲンであるイリジウ
    ム(III )錯塩に、飽和モノカルボン酸、飽和モノカル
    ボン酸塩、飽和ジカルボン酸、飽和ジカルボン酸塩、飽
    和ヒドロキシカルボン酸、飽和ヒドロキシカルボン酸
    塩、第1アミド、尿素からなる群より選ばれた一種以上
    の化合物を加えて撹拌したものを、イリジウム化合物と
    して用いる水溶性イリジウムめっき浴。
  2. 【請求項2】 金属イリジウム濃度が1〜200g/l
    である、請求項1記載の水溶性イリジウムめっき浴。
  3. 【請求項3】 モノカルボン酸、モノカルボン酸塩、ジ
    カルボン酸、ジカルボン酸塩、ヒドロキシカルボン酸、
    ヒドロキシカルボン酸塩、第1アミド、尿素からなる群
    より選ばれた一種以上の化合物の濃度が0.001〜
    1.0mol/lである、請求項1又は2記載の水溶性
    イリジウムめっき浴。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載のめっき
    浴を使用し、pH1〜8、温度50〜98℃、電流密度
    0.01〜3.0A/dm2 の操作条件でめっきする水
    溶性イリジウムめっき方法。
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