JP3244350B2 - 高純度酢酸の製造方法 - Google Patents

高純度酢酸の製造方法

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JP3244350B2
JP3244350B2 JP16920493A JP16920493A JP3244350B2 JP 3244350 B2 JP3244350 B2 JP 3244350B2 JP 16920493 A JP16920493 A JP 16920493A JP 16920493 A JP16920493 A JP 16920493A JP 3244350 B2 JP3244350 B2 JP 3244350B2
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  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
  • Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は高純度な酢酸の工業的な
製造方法に関する。特に、還元性不純物含有量の少ない
酢酸の連続的な製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】酢酸は、石油化学工業、有機化学工業、
医薬農薬製造工業、高分子工業などにおいて多量に使用
される基礎化学品の一つである。
【0003】酢酸の工業的な製造方法は種々知られてい
るが、中でも、メタノールと一酸化炭素を連続的に反応
させて酢酸を製造する方法が工業的には最も優れた方法
である(特公昭47−3334号)。この方法は生産性が高い
ばかりでなく、不純物の副生量も少なく、他の方法に比
べて、純度の高い酢酸が製造できる。しかし、この方法
においても微少量の不純物が副生しており、長時間にわ
たる連続運転では、これら不純物が製品である酢酸に混
入し、製品の品質を悪化させる。そのため酢酸の精製に
多大な設備とエネルギーが使用されている。また、近
年、反応条件、触媒の改良方法が開示され、ヨウ化物塩
等の触媒安定化剤を添加し、従来の条件よりも低水分条
件下で反応させることにより酢酸製造触媒の生産性が高
い工業的な酢酸の製造方法が開示されている(特開昭60
−54334 号、特開昭60−239434号)。それによると、反
応液中の水分を低減することで、二酸化炭素やプロピオ
ン酸といった副生物は減少することが開示されている。
しかし、その他の微少な不純物の中には、酢酸の生産性
の増加と共に発生量が増加し、前記の触媒の改良や反応
条件の変更で生産性を上げようとした場合、酢酸の品質
が悪くなるということが起こる場合がある。特に、還元
性物質試験 (過マンガン酸タイム) と呼ばれる、酢酸中
の極く微少な還元性不純物の存在量を調べる品質試験に
おいては、今日の高度な機器分析をもってしても定量が
困難であるような微少な濃度の不純物の微少な増加が検
出でき、これらの不純物が品質の悪化につながる。当該
業界では、過マンガン酸タイムは標準的には 120分以
上、好ましくは 240分以上が良いとされている。このよ
うな不純物としては、アルデヒド類、特に不飽和アルデ
ヒドが考えられている。これらの化合物は多様であり、
一つ一つを粗酢酸から分離し除去することは現実的では
ない。特に、アセトアルデヒドの脱水縮合物であるクロ
トンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒドなどは
酢酸と沸点が近く、微少量のこれら不純物を蒸留で分離
することは困難である。
【0004】そのため、従来の技術では、これらの微少
な還元性不純物を含む粗酢酸をオゾン(特公昭61−2052
号)や酸化剤(特公昭56−10297 号) で処理するなどの
技術が開示されている。しかしながら、オゾンや酸化剤
での処理では、処理される不純物の濃度に限度がある。
例えば、オゾンで処理できる化合物は不飽和化合物のみ
であって、飽和のアルデヒド類は分解しないこと、更に
不飽和化合物が分解されて発生する化合物は飽和のアル
デヒドであり、アルデヒトそのものも還元性を有してお
り、過マンガン酸タイムを悪化させる化合物にほかなら
ないためである。そのため、オゾンで処理した後に、飽
和のアルデヒド類等を除去するために蒸留したり、活性
炭で処理するなどの精製が必要となる(特開平1−2115
48号)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明者等は、酢酸の
品質を悪化させる還元性不純物を詳細に同定し、それら
化合物の発生経路を詳細に検討した結果、反応中に発生
するアセトアルデヒドがこれら還元性微量不純物の根本
的な原因物質であることを見いだした。
【0006】従来の酢酸製造プロセスにおいては反応液
中に含まれる酢酸よりも沸点の低い成分、即ち、原料の
メタノールから発生する酢酸メチル、助触媒であるヨウ
化メチル、反応液中に存在する水などは反応粗液中から
酢酸を分離する過程で分離されるが、これらの化合物を
無駄に消費しないように分離されたほとんどすべてが反
応器に循環され、再使用される。即ち、反応器で微量に
副生するアセトアルデヒドはプロセスから除去されるこ
となく循環し、反応を続けるにつれて反応液中に蓄積す
る。蓄積したアセトアルデヒドは反応条件下で縮合し、
不飽和のアルデヒド類を生じる。アセトアルデヒドの縮
合により生成する高沸点の不飽和アルデヒド類は酢酸の
精製工程で分離されにくくなり酢酸に不純物として混入
し、酢酸の還元性物質試験において品質の悪化を引き起
こす。
【0007】そこで、反応系中で発生し、反応液中に蓄
積するアセトアルデヒドを循環している低沸点成分から
分離すれば、酢酸中に混入する還元性物質の量を減少で
きる。しかしながら、アセトアルデヒドの発生量は極め
て小さく、また、循環プロセス液中の濃度も低濃度であ
るアセトアルデヒドを蒸留分離するためには、過大な蒸
留設備とエネルギーを必要とする。また更に、困難なこ
ととして、酢酸の製造には必須の成分であるヨウ化メチ
ルとアセトアルデヒドは沸点が近くかつ低沸点であるこ
とである。一方、オゾン処理は、先に述べたように、粗
酢酸中の還元性不純物の量がある限度の濃度以上になっ
た場合、オゾン処理のみでは、還元性物質試験の純度が
上がらず、追加の蒸留や活性炭処理を必要とする。この
場合の蒸留は、大量の製品酢酸を蒸留する必要があるた
め、過大な設備とエネルギーを必要とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】以上のことから、アセト
アルデヒドの蒸留除去とオゾン処理を併用することで最
も経済的な高純度酢酸の製造が可能であること、すなわ
ちオゾン処理を施すのみで還元性物質の含有量の少ない
(過マンガン酸タイムの良い) 高純度酢酸が得られる程
度に、プロセス内循環液中のアセトアルデヒドの濃度を
低減させることが最も効果的で、且つ、効率的であると
の結論に至り、本発明を完成するに至った。
【0009】即ち本発明は、ロジウム錯体を触媒とし、
ヨウ化メチルを助触媒として用い、連続的にメタノール
及び/又は酢酸メチル水溶液と一酸化炭素を反応させて
酢酸を製造する方法において、得られる粗酢酸中の不飽
和化合物濃度が5ppm以下となるようになし、更に得られ
た粗酢酸をオゾン処理して、還元性物質の含有量の少な
い高品質の酢酸を製造することを特徴とする酢酸の製造
方法に関する。
【0010】特に本発明は、反応槽に循環されるプロセ
ス液から、酢酸品質に悪影響を及ぼす不純物の発生原因
であるアセトアルデヒドを除去して、得られる粗酢酸中
の不飽和化合物濃度が5ppm以下となるようにする上記の
酢酸の製造方法に関する。
【0011】メタノールと一酸化炭素を原料とし、連続
的に酢酸を製造する方法は、モンサント法と呼ばれ、モ
ンサント社によりプロセスが開示されている (米国特許
4,102,922 、Hydrocarbon Processing, November,1972
他)(図1) 。原料であるメタノールと一酸化炭素は反応
器(1) に連続的に仕込まれ、所定の温度、圧力下で連続
的に反応させられる。反応温度は通常 150〜250 ℃、反
応圧力は、15〜40atmの範囲内で行われる。反応液中に
は、触媒であるロジウム錯体が 200〜1000ppmの濃度で
存在し、助触媒であるヨウ化メチルが5〜20wt%、溶媒
である水が 0.1〜15wt%含まれ、生成物であり、かつ溶
媒である酢酸が残りの主成分を成す。また、連続反応で
あるので原料が酢酸と反応して生成する酢酸メチルが
0.1〜30wt%の範囲で存在する。また、現実的に行われ
る長時間の連続製造の結果、反応液中には、蓄積した微
量不純物、即ち、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒ
ド、2−エチルクロトンアルデヒドなどの不飽和アルデ
ヒド類、さらには反応器中に存在する水素により水素化
を受けた生成物である飽和のアルデヒド類、飽和の脂肪
族カルボン酸類、例えばプロピオン酸、それらのメチル
エステルなどが存在する。近年開示された生産性の高い
条件では(特開昭60−54334 号、特開昭60−239434
号)、反応液中の水分濃度を低減し、副反応生成物発生
量を減少させることができる。この条件下では、触媒の
安定性が悪くなるのでロジウム触媒の安定化剤として、
ヨウ素イオンを 0.1〜20wt%添加する。ヨウ素イオンを
導入する場合は、カウンター陽イオンとして、アルカリ
金属、4級アンモニウムイオン、4級ホスホニウムイオ
ンを有する、反応液に溶解しうるヨウ化物塩が添加され
る。この生産性の高い条件下では、ヨウ素イオンのカウ
ンター陽イオンとして塩基性のカチオンが多量に反応液
に存在し、そのため、アセトアルデヒドの縮合が促進さ
れ、還元性物質の発生量が増加すると考えられる。
【0012】本発明においては、反応条件として、水分
が5〜10wt%の時は、触媒安定化成分として、ヨウ素イ
オンを1〜10wt%含む反応液組成で、また、水分が5wt
%以下の時は、触媒安定化成分として、ヨウ素イオンを
1〜20wt%含む反応液組成で反応を行うことが好まし
い。ヨウ素イオンのカウンター陽イオンとしてはアルカ
リ金属イオンが好ましく、その中でもリチウムイオンが
特に好ましい。
【0013】以下に図1を用いてプロセスを例示しなが
ら説明する。反応液は反応器(1) から連続的に抜き出さ
れ、反応圧力よりも低圧に管理された蒸発槽(2) に導入
され、フラッシュ蒸発される。蒸発槽で蒸発した成分は
蒸留塔(3) に導入され蒸留される。この蒸留塔では低沸
点成分が主に分離される。蒸留塔塔頂の留出液は分液槽
(4) に導入され、二相に分離する。上層は酢酸と水を含
む水相からなり、下層は酢酸と水を含むヨウ化メチル相
である。これら二相にはアセトアルデヒトが濃縮され
る。特に上層にはアセトアルデヒドが濃縮される。これ
ら二相は反応器に戻される。蒸留塔(3) の高沸成分も反
応器に戻される。製品となる酢酸を含む蒸留塔(3) のサ
イドカット液は次の蒸留塔(5) に導入される。蒸留塔
(5) では、脱水された粗酢酸が塔底から抜き取られ、次
の蒸留塔(6)で蒸留される。蒸留塔(5) の塔頂液中にも
アセトアルデヒドが含まれるが、この液も反応器に戻さ
れる。蒸留塔(6) では、高沸点生成物であるプロピオン
酸と微少量の高沸不純物が抜き取られ、塔頂から低沸点
不純物が抜き取られる。製品の酢酸は蒸留塔(6) のサイ
ドカットで得られる。場合により、蒸留塔(6) は、脱高
沸塔と脱低沸塔に分けて、酢酸を精製することもでき
る。
【0014】一方、反応器のオフガス、及び各蒸留塔か
ら出るオフガス中にはアセトアルデヒドが含有される
が、ヨウ化メチルなどのオフガス中の有機成分とともに
吸収系(7) で回収され、反応器に戻される。
【0015】このようなプロセスからアセトアルデヒド
を分離する方法としては、アセトアルデヒドを含むプロ
セス液から蒸留分離、抽出、または抽出と蒸留の組み合
わせ、抽出蒸留等によってアセトアルデヒドのみを分離
することが好ましい。特に、アセトアルデヒドの蒸留分
離が有効に行なえるプロセス液としては、分液槽(4)の
上層及び下層、蒸留塔(5) の塔頂液、吸収系でオフガス
中の有機物を吸収した液がアセトアルデヒドの濃度が高
く好ましいが、この中でも分液槽(4) の上層及び下層が
更に好ましい。これらのアセトアルデヒドを含むプロセ
ス液中にはヨウ化メチルが存在している。ヨウ化メチル
とアセトアルデヒドは沸点が近く、これらを分離するこ
とが最も困難であるが、ヨウ化メチルはヨウ素を含む化
合物であって、廃棄することが困難であるため、分離、
回収して反応器に戻すことが必要である。アセトアルデ
ヒドの分離方法としては、アセトアルデヒドを含むプロ
セス液を一本の蒸留塔で分離蒸留することもできるが、
アセトアルデヒドとヨウ化メチルからなる沸点の低い成
分をまず蒸留で他の成分と分離した後、更にヨウ化メチ
ルとアセトアルデヒドを蒸留分離することが好ましい。
また、アセトアルデヒドが水と良く混じりヨウ化メチル
が水と混じりにくい性質を利用し、ヨウ化メチルとアセ
トアルデヒドの分離に水抽出を用い、その後蒸留しても
よい。プロセスから分離すべきアセトアルデヒドの量
は、アセトアルデヒドを分離しない場合に、連続操業し
た際に反応系中で発生し、製品の酢酸中に混入してくる
アセトアルデヒド誘導体、即ち、クロトンアルデヒド、
2−エチルクロトンアルデヒドなどの合計が5ppm以下に
なる量が好ましい。上記の不飽和化合物の含有量が5ppm
以下の場合には、オゾン処理により過マンガン酸タイム
が大幅に向上し、高純度の酢酸が得られるのに対して、
5ppm以上の不飽和化合物を含む酢酸の場合には、オゾン
処理後更に蒸留分離を行うなどのさらなる精製の必要が
ある。この場合、オゾン処理は、無駄な処理であるばか
りでなく、精製エネルギーの浪費となる。
【0016】このようにアセトアルデヒドをプロセスか
ら抜き取ることによって、製品酢酸中のアセトアルデヒ
ド由来の還元性微量不純物が減少するのみならず、モン
サント法酢酸の副生物であるプロピオン酸も減少させる
ことができ、粗酢酸の精製が容易になる利点が生じる。
【0017】以上のようにアセトアルデヒドを蒸留除去
した上で、さらに最終蒸留塔からのサイドカットで得ら
れる酢酸をオゾン処理することにより、還元性物質試験
での品質が良い酢酸を得ることができる。アセトアルデ
ヒドは連続的に発生してくるため、本発明の方法でプロ
セス系外に除去したとしても反応液中の濃度は、ゼロに
はならない。また、系外に抜き取られるアセトアルデヒ
ドが多くなればなるほど、反応液中の濃度、プロセス液
中の濃度が小さくなり、アセトアルデヒド除去の効率が
悪くなり、蒸留設備が過大になったり、蒸留分離のため
のエネルギー効率が悪くなる。
【0018】従って、製品酢酸のオゾン処理を併用する
ことにより、高効率なアセトアルデヒド除去が実現でき
る本発明の方法は有効な方法である。
【0019】オゾン処理は、爆発の危険を避けるために
40℃以下で行う。このこともまた、本発明の方法が効果
的であることの証拠となる。即ち、最終製品の酢酸以外
の粗酢酸またはプロセス液でオゾン処理を行うために
は、粗酢酸またはプロセス液を一旦冷却し、更に処理
後、蒸留するために加熱するなどの必要があり、熱的に
不利な操作になる。それに対し、オゾン処理したそのま
まを製品にできる本発明の方法は、そのような熱の無駄
がなく好ましい方法である。オゾンは、過剰の水分を含
まない、空気、酸素含有量の多い酸素富化空気、または
酸素を真空放電して発生させる。その濃度は0.1ppm以上
で用いられる。オゾンは酢酸中で速やかに分解するた
め、オゾン処理後、ある程度の時間放置すれば、製品中
の残存オゾンは分解する。従って、過剰量のオゾンを用
いてもなんら支障はないが、本質的に無駄であるので、
酢酸中に含まれる不飽和結合を含む不純物のモル濃度と
等モル量に対し1〜3倍の過剰量を使用すればよい。
【0020】
【実施例】以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明
するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるも
のではない。
【0021】実施例1 アセトアルデヒドの蒸留分離が可能であることを示す。
アセトアルデヒドを1wt%含有する分液槽上層液のモデ
ル液を調製し、内径40mm、30段のオールダショウ蒸留塔
で以下の条件で蒸留した。 仕込み液組成;ヨウ化メチル 7 wt% 酢酸 44 wt% 水 48 wt% アセトアルデヒド 1.0 wt% 蒸留条件;還流比 1.5 フィード量 100部 抜き取り量 塔頂から 8.5部、塔底から91.5部 フィード段上から17段目。
【0022】蒸留塔の塔頂から留出した液には仕込まれ
たすべてのアセトアルデヒドとヨウ化メチルの大部分が
留出した。この液の組成は以下のようであった。 ヨウ化メチル 82.3 wt% 水 5.9 wt% アセトアルデヒド 11.8 wt% この留出液を、内径40mm、60段の蒸留塔で以下の条件で
蒸留したところ、塔頂からアセトアルデヒドが留出し、
ヨウ化メチルと分離した。
【0023】蒸留条件;フィード段上から57段目 還流比 150 フィード量 100部 抜き取り量 塔頂から11部、塔底から89部 塔頂液組成;アセトアルデヒド 99.99 wt% ヨウ化メチル 100ppm 以下。
【0024】実施例2 実施例1と同様にアセトアルデヒドを 0.4wt%含有する
分液槽下層液のモデル液を調製し、内径40mm、30段のオ
ールダショウ蒸留塔で以下の条件で蒸留した。 仕込み液組成;ヨウ化メチル 90.2 wt% 酢酸メチル 5.0 wt% 酢酸 3.5 wt% 水 0.9 wt% アセトアルデヒド 0.4 wt% 蒸留条件;還流比 3.0 フィード量 100部 抜き取り量 塔頂から94部、塔底から6部 フィード段上から17段目。
【0025】蒸留塔の塔頂から留出した液には仕込まれ
たすべてのアセトアルデヒドとヨウ化メチルの大部分が
留出した。この液の組成は以下のようであった。 ヨウ化メチル 93.3 wt% 酢酸メチル 5.3 wt% 水 0.96 wt% アセトアルデヒド 0.43 wt% この留出液を、内径40mm、60段の蒸留塔で以下の条件で
蒸留したところ、塔頂からアセトアルデヒドが留出し、
ヨウ化メチルと分離した。 蒸留条件;フィード段上から57段目 還流比 150 フィード量 100部 抜き取り量 塔頂から0.28部 (仕込んだアセトアルデヒドの70wt%に相当する。) 塔頂液組成;アセトアルデヒド 99.99 wt% ヨウ化メチル 100ppm 以下。
【0026】実施例3 オゾン処理の有効性を示す。クロトンアルデヒド、2−
エチルクロトンアルデヒドを2.8ppm不純物として含む、
過マンガン酸タイム 150分の製品酢酸に対し、20ppm の
オゾンを含有する空気で処理した。オゾン処理は、連続
的に行い、流量毎時 0.1リットル/hrの酢酸に対し、流
量毎時10リットル/hrの20ppm のオゾンを含有する空気
を、25℃で連続的に接触させた。処理後の酢酸の過マン
ガン酸タイムは 300分でありクロトンアルデヒド、2−
エチルクロトンアルデヒドはほとんど完全に分解され
た。
【0027】比較例1 オゾン処理だけでは、高品質の酢酸が得られない場合が
あることを示す。クロトンアルデヒド、2−エチルクロ
トンアルデヒドを8.2ppm不純物として含む、過マンガン
酸タイム30分の製品酢酸に対し、40ppm のオゾンを含有
する空気で処理した。オゾン処理は、連続的に行い、流
量毎時 0.1リットル/hrの酢酸に対し、流量毎時10リッ
トル/hrの40ppm のオゾンを含有する空気を、25℃で連
続的に接触させた。このオゾン量は不飽和化合物の完全
分解に必要な量よりも多い。処理後の酢酸の過マンガン
酸タイムは 100分であった。クロトンアルデヒド、2−
エチルクロトンアルデヒドは完全に分解されており検出
されなかったが、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド
が増加しており、これらの還元性化合物の発生が過マン
ガン酸タイムが良くならなかった原因である。
【0028】実施例4 過マンガン酸タイム 240分の高純度酢酸に、クロトンア
ルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒドをそれぞれ所
定量添加し、低品質酢酸のモデル液を作成し、その過マ
ンガン酸タイムを調べた。更に、それらモデル液を 10p
pmのオゾンを含む乾燥空気と接触させ (対酢酸50ppm に
相当) 、オゾン処理を行った。一日放置後、過マンガン
酸還元性物質試験を行ったところ表1に示すような結果
を得た。この結果から、5ppm以上の不飽和化合物を含む
酢酸はオゾン処理を行っても、完全には高純度な酢酸に
ならないことが示される。
【0029】
【表1】
【0030】実施例5 図1に示された方法に基づいて行った連続試験製造設備
での実施例を示す。原料であるメタノールと一酸化炭素
は反応器(1) に連続的に仕込み、温度187〜189 ℃、圧
力28kg/cm2 下で連続的に反応させる。反応液は反応器
から連続的に抜き出され、反応圧力よりも低圧の蒸発槽
(2) に導入され、フラッシュ蒸発される。蒸発槽で蒸発
した成分は蒸留塔(3) に導入され蒸留される。蒸留塔塔
頂の留出液は分液槽(4) に導入され、上層は酢酸を含む
水相からなり、下相は酢酸と水を含むヨウ化メチル相で
ある。これら二相にはアセトアルデヒドが濃縮される。
特に上層にはアセトアルデヒドが濃縮される。これら二
相は反応器に戻される。蒸留塔(3) の高沸成分も反応器
に戻される。製品となる酢酸を含む蒸留塔(3)のサイド
カット液は次の蒸留塔(5) に導入される。蒸留塔(5) で
脱水された粗酢酸が塔底から抜き取られ、次の蒸留塔
(6) で蒸留される。蒸留塔(5) の塔頂液中にもアセトア
ルデヒドが含まれるが、この液も反応器に戻される。蒸
留塔(6) では、高沸点生成物であるプロピオン酸と微少
量の高沸不純物が塔底から抜き取られ、低沸点不純物が
塔頂から抜き取られる。製品の酢酸は蒸留塔(6) のサイ
ドカットで得られる。一方、反応器のオフガス、及び各
蒸留塔から出るオフガス中にはアセトアルデヒドが含有
されるが、ヨウ化メチルなどのオフガス中の有機成分と
ともに吸収系(7) で回収され、反応器に戻される。この
プロセスで、アセトアルデヒド 0.5wt%を含む水、酢
酸、ヨウ化メチル、酢酸メチルからなる分液槽(4) の上
層液を毎時0.25リットル (上層液全体量の1/3)の量で抜
き取り、内径60mm、40段の蒸留塔で、 1.2kg/cm2Gの加
圧下、連続的に蒸留した。仕込み段は、上から20段目で
あった。塔頂液の還流比は3.0 であった。塔底からは毎
時0.24リットルで抜き取り反応器に戻した。主にヨウ化
メチルとアセトアルデヒドからなる塔頂液は塔頂から毎
時 0.015リットルで抜き取り、抜き取った液は、内径50
mm、60段の蒸留塔の57段目に仕込み、圧力 1.0kg/cm2G
の加圧下、還流比40で蒸留した。塔頂から毎時 0.8gの
アセトアルデヒドが分離した。塔底からは毎時 0.015リ
ットルの液を抜き取って、反応器に戻した。このプロセ
スで得られた酢酸、即ち、蒸留塔6のサイドカットで得
られた酢酸中の過マンガン酸タイムは 120分であった。
【0031】このプロセスで得られた酢酸、即ち、蒸留
塔(6) のサイドカットで得られた酢酸中にはクロトンア
ルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒドが4.3ppm含有
されていた。この酢酸をオゾン処理槽において処理し
た。即ち、流量毎時0.1kg/hrの酢酸に対し、20ppm のオ
ゾンを含む乾燥空気を25℃で、流量毎時10リットル/hr
吹き込んだ。得られた酢酸の過マンガン酸タイムは 300
分であり、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンア
ルデヒドは濃度0.1ppm以下に減少していた。
【0032】比較例2 実施例5と同様のプロセス、反応条件下で、アセトアル
デヒドの抜き取りを行わないで連続的に酢酸の試験製造
を行った。得られた酢酸の過マンガン酸タイムは60分で
あり、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデ
ヒドが7.5ppm含有されていた。この酢酸をオゾン処理槽
において処理した。即ち、流量毎時0.1kg/hrの酢酸に対
し、40ppm のオゾンを含む乾燥空気を25℃で、流量毎時
10リットル/hr吹き込んだ。得られた酢酸中のクロトン
アルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒドは濃度0.1p
pm以下に減少していたが、過マンガン酸タイムは 100分
であった。
【0033】比較例3 原料であるメタノールと一酸化炭素は反応器(1) に連続
的に仕込み、温度187℃、圧力28kg/cm2 、水素分圧 0.
9kg/cm2下で連続的に反応させる。以下、比較例2と同
様のプロセスで試験製造プラントを用いて連続的に実験
を行った。ロジウム濃度は400ppmで反応を行い、このプ
ロセスで製造した酢酸中の不飽和化合物は以下の通りで
あった。 クロトンアルデヒド 1.7 ppm 2−エチルクロトンアルデヒド 3.4 ppm この酢酸の過マンガン酸タイムは50分であった。この酢
酸をオゾン処理槽において処理した。即ち、流量毎時0.
1kg/hrの酢酸に対し、20ppm のオゾンを含む乾燥空気を
25℃で、流量毎時10リットル/hr吹き込んだ。得られた
酢酸中のクロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアル
デヒドは濃度0.1ppm以下に減少していたが、過マンガン
酸タイムは 110分であった。
【0034】実施例6 比較例3と同じ試験製造設備を用い、水素分圧を 2.4kg
/cm2に変更した他は同様の実験条件で酢酸を製造した。
得られた酢酸中の不飽和化合物濃度は以下の通りであっ
た。 クロトンアルデヒド 0.8 ppm 2−エチルクロトンアルデヒド 1.8 ppm この酢酸の過マンガン酸タイムは 125分であった。この
酢酸をオゾン処理槽において処理した。即ち、流量毎時
0.1kg/hrの酢酸に対し、10ppm のオゾンを含む乾燥空気
を25℃で、流量毎時10リットル/hr吹き込んだ。得られ
た酢酸の過マンガン酸タイムは 230分であり、クロトン
アルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒドは濃度0.1p
pm以下に減少していた。
【図面の簡単な説明】
【図1】酢酸を連続製造するモンサント法のフロー図で
ある。
【符号の説明】
1 反応槽 2 蒸発槽 3 低沸蒸留塔 4 分液槽 5 蒸留塔 (脱水塔) 6 酢酸蒸留塔 7 吸収系
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平7−25814(JP,A) 特開 平6−25071(JP,A) 特開 平1−211548(JP,A) 特開 昭55−64545(JP,A) 特開 昭60−222439(JP,A) 特開 平4−295445(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07C 51/12 C07C 51/44 C07C 51/487 C07C 53/08 C07C 53/12

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ロジウム錯体を触媒とし、ヨウ化メチル
    を助触媒として用い、連続的にメタノール及び/又は酢
    酸メチル水溶液と一酸化炭素を反応させて酢酸を製造す
    る方法において、得られる粗酢酸中の不飽和化合物濃度
    が5ppm以下となるようになし、更に得られた粗酢酸をオ
    ゾン処理して、還元性物質の含有量の少ない高品質の酢
    酸を製造することを特徴とする酢酸の製造方法。
  2. 【請求項2】 反応槽に循環されるプロセス液から、酢
    酸品質に悪影響を及ぼす不純物の発生原因であるアセト
    アルデヒドを除去して、得られる粗酢酸中の不飽和化合
    物濃度が5ppm以下となるようにする請求項1記載の酢酸
    の製造方法。
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