JP3240979B2 - トルクコンバータのスリップ制御装置 - Google Patents

トルクコンバータのスリップ制御装置

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JP3240979B2
JP3240979B2 JP30183097A JP30183097A JP3240979B2 JP 3240979 B2 JP3240979 B2 JP 3240979B2 JP 30183097 A JP30183097 A JP 30183097A JP 30183097 A JP30183097 A JP 30183097A JP 3240979 B2 JP3240979 B2 JP 3240979B2
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    • F16H61/00Control functions within control units of change-speed- or reversing-gearings for conveying rotary motion ; Control of exclusively fluid gearing, friction gearing, gearings with endless flexible members or other particular types of gearing
    • F16H61/14Control of torque converter lock-up clutches
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    • F16H2061/145Control of torque converter lock-up clutches using electric control means for controlling slip, e.g. approaching target slip value

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  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • Control Of Fluid Gearings (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動変速機などに
用いられるトルクコンバータの入出力要素間における相
対回転、つまりスリップ回転を、走行状態に応じて定め
られた目標値へ速やかに収束させるためのスリップ制御
装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】トルクコンバータは、流体を介して入出
力要素間で動力伝達を行うため、トルク変動吸収機能
や、トルク増大機能を果たす反面、伝動効率が悪い。こ
れがため、これらトルク変動吸収機能や、トルク増大機
能が不要な走行条件のもとでは、トルクコンバータの入
出力要素間をロックアップクラッチにより直結するロッ
クアップ式のトルクコンバータが今日では多用されてい
る。しかして、かようにトルクコンバータを入出力要素
間を直結したロックアップ状態にするか、該ロックアッ
プクラッチを釈放したコンバータ状態にするだけの、オ
ン・オフ制御では、トルクコンバータのスリップ回転を
制限する領域が狭くて十分な伝動効率の向上を望み得な
い。
【0003】そこで、ロックアップクラッチを所謂半ク
ラッチ状態にして、要求される必要最小限のトルク変動
吸収機能や、トルク増大機能が確保されるような態様で
トルクコンバータのスリップ回転を制限するスリップ制
御領域を設定し、これによりスリップ回転の制限を一層
低車速まで行い得るようにしたトルクコンバータのスリ
ップ制御技術も多々提案されている。そしてトルクコン
バータのスリップ制御技術は一般的に、エンジンのスロ
ットル開度や、車速や、自動変速機の作動油温などの走
行条件に応じて目標スリップ回転を決定し、トルクコン
バータの実スリップ回転が目標スリップ回転になるよう
ロックアップクラッチの締結力を制御するのが普通であ
り、かかるスリップ制御によれば、こもり音や振動の問
題を生ずることなしにスリップ回転制限の低車速化を実
現して運転性の悪化を回避しつつ燃費の向上を図ること
ができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、かかる従来の
スリップ制御技術では、目標スリップ回転に対する実ス
リップ回転の追従性、つまり、スリップ制御の応答が、
スリップ回転フィードバック制御系の伝達特性により一
義的に決まってしまい、以下の問題を生ずることを確か
めた。つまり、実スリップ回転が目標スリップ回転に収
束した後の定常状態において図11に示すようにロック
アップクラッチのアプライ圧PA とレリーズ圧PR との
間の差圧で表されるロックアップクラッチ締結圧がほぼ
一定に保たれている間も、エンジン回転速度は気筒ごと
の燃焼の違いによるトルク変動などで低周波の変動を生
じている。これがため、スリップ回転フィードバック制
御系の伝達特性は、当該低周波のエンジン回転変動によ
る影響を受けないように設定する必要があり、スリップ
回転フィードバック制御系の伝達特性で決まるスリップ
制御の応答性が必然的に悪くて、燃費が悪化してしまう
運転状態が生ずるのを避けられなかった。
【0005】請求項1に記載の第1発明は、スリップ回
転フィードバック制御系の伝達特性を上述のように決定
する場合でもスリップ制御の応答性が悪くならないよ
う、車速および原動機負荷状態に応じ目標スリップ回転
を補正してスリップ回転制御に資するようにすることで
上記の問題を解消することを目的とする。
【0006】請求項2に記載の第2発明は、車速および
原動機負荷状態と変速状態とを用いて第1発明の作用効
果が達成されるようにすることを目的とする。
【0007】請求項3に記載の第3発明は、車速および
原動機負荷状態とトルクコンバータ出力回転速度とを用
いて第1発明の作用効果が達成されるようにすることを
目的とする。
【0008】請求項4に記載の第4発明は、第3発明の
スリップ制御装置を更に発展させることを目的とする。
【0009】請求項5に記載の第5発明は、車速と原動
機負荷状態とトルクコンバータ出力回転速度と変速状態
とを用いて第1発明の作用効果が達成されるようにする
ことを目的とする。
【0010】請求項6に記載の第6発明は、第1発明乃
至第5発明において用いる原動機負荷状態を容易に検出
可能な信号から求め得るようにすることを目的とする。
【0011】請求項7に記載の第7発明は、スリップ回
転フィードバック制御系の伝達特性を用いて第1発明の
作用効果が達成されるようにすることを目的とする。
【0012】請求項8に記載の第8発明は、第7発明の
スリップ制御装置を更に発展させることを目的とする。
【0013】請求項9に記載の第9発明は、トルクコン
バータの特性およびスリップ回転機構部の伝達特性を用
いて第1発明の作用効果が達成されるようにすることを
目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】これらの目的のため、先
ず第1発明によるトルクコンバータのスリップ制御装置
は、原動機からの回転を伝達するトルクコンバータに用
いられ、該トルクコンバータの入出力要素間における実
スリップ回転をロックアップクラッチの締結により制御
するための装置において、車両の運転状態からトルクコ
ンバータの目標スリップ回転を求める目標スリップ回転
算出部と、車速と前記原動機の負荷状態とに基づいて補
償用フィルタの定数を設定され、この補償用フィルタに
前記目標スリップ回転を通過させて目標スリップ回転補
正値を求める前置補償器と、該目標スリップ回転補正値
および前記実スリップ回転を入力されて、この実スリッ
プ回転を前記目標スリップ回転に一致させるためのスリ
ップ回転指令値を算出するスリップ回転指令値算出部
と、このスリップ回転指令値に対応したロックアップク
ラッチ締結圧指令値を算出するロックアップクラッチ締
結圧指令値算出部とを設け、前記ロックアップクラッチ
の締結圧を該指令値にするよう構成したことを特徴とす
るものである。
【0015】第2発明によるトルクコンバータのスリッ
プ制御装置は、第1発明における前置補償器を以下のご
ときものとする。即ちこの前置補償器は、前記車速およ
び原動機の負荷状態の他に前記トルクコンバータの後段
における変速機構の変速状態にも基づいて補償用フィル
タの定数を設定され、この補償用フィルタに前記目標ス
リップ回転を通過させて目標スリップ回転補正値を求め
るよう構成する。
【0016】第3発明によるトルクコンバータのスリッ
プ制御装置は、第1発明における前置補償器を以下のご
ときものとする。即ちこの前置補償器は、車速および前
記原動機の負荷状態の他に前記トルクコンバータの出力
回転速度にも基づいて補償用フィルタの定数を設定さ
れ、この補償用フィルタに前記目標スリップ回転を通過
させて目標スリップ回転補正値を求めるよう構成する。
【0017】第4発明によるトルクコンバータのスリッ
プ制御装置は、第3発明における前置補償器を以下のご
ときものとする。即ちこの前置補償器は、車速と前記原
動機の負荷状態とに基づいて補償用フィルタの分母の項
の定数を設定されると共に、前記トルクコンバータの出
力回転速度に基づいて補償用フィルタの分子の項の定数
を設定され、該補償用フィルタに前記目標スリップ回転
を通過させて目標スリップ回転補正値を求めるよう構成
する。
【0018】第5発明によるトルクコンバータのスリッ
プ制御装置は、第2発明における前置補償器を以下のご
ときものとする。即ちこの前置補償器は、車速と前記原
動機の負荷状態と前記トルクコンバータの後段における
変速機構の変速状態とに基づいて補償用フィルタの分母
の項の定数を設定されると共に、前記トルクコンバータ
の出力回転速度に基づいて補償用フィルタの分子の項の
定数を設定され、該補償用フィルタに前記目標スリップ
回転を通過させて目標スリップ回転補正値を求めるよう
構成する。
【0019】第6発明によるトルクコンバータのスリッ
プ制御装置は、第1発明乃至第5発明のいずれかにおい
て、前記原動機の負荷状態としてスロットル開度を用い
るよう構成したことを特徴とするものである。
【0020】第7発明によるトルクコンバータのスリッ
プ制御装置は、原動機からの回転を伝達するトルクコン
バータに用いられ、該トルクコンバータの入出力要素間
における実スリップ回転をロックアップクラッチの締結
により制御するための装置において、車両の運転状態か
らトルクコンバータの目標スリップ回転を求める目標ス
リップ回転算出部と、車両の運転状態に基づいて補償用
フィルタの定数を設定され、この補償用フィルタに前記
目標スリップ回転を通過させて目標スリップ回転補正値
を求める前置補償器と、該目標スリップ回転補正値およ
び前記実スリップ回転を入力されて、この実スリップ回
転を前記目標スリップ回転に一致させるためのスリップ
回転指令値を算出するスリップ回転指令値算出部と、こ
のスリップ回転指令値に対応したロックアップクラッチ
締結圧指令値を算出するロックアップクラッチ締結圧指
令値算出部とを設け、前記前置補償器の補償用フィルタ
を前記スリップ回転指令値算出部からなるフィードバッ
ク制御系の伝達特性の逆系で構成し、前記ロックアップ
クラッチの締結圧を前記指令値にするよう構成したこと
を特徴とするものである。
【0021】第8発明によるトルクコンバータのスリッ
プ制御装置は、第7発明における前置補償器を以下のご
ときものとする。即ちこの前置補償器は、前記スリップ
回転指令値算出部からなるフィードバック制御系の伝達
特性を表す特性多項式中の代表的に遅いモードの逆系に
より構成された補償用フィルタを有し、この補償用フィ
ルタに前記目標スリップ回転を通過させて目標スリップ
回転補正値を求めるよう構成する。
【0022】第9発明によるトルクコンバータのスリッ
プ制御装置は、原動機からの回転を伝達するトルクコン
バータに用いられ、該トルクコンバータの入出力要素間
における実スリップ回転をロックアップクラッチの締結
により制御するための装置において、車両の運転状態か
らトルクコンバータの目標スリップ回転を求める目標ス
リップ回転算出部と、トルクコンバータの特性および原
動機系のイナーシャによって定まるスリップ回転機構部
の伝達特性の逆系からなる補償用フィルタを有し、この
補償用フィルタに前記目標スリップ回転を通過させて目
標スリップ回転補正値を求める前置補償器と、該目標ス
リップ回転補正値および前記実スリップ回転を入力され
て、この実スリップ回転を前記目標スリップ回転に一致
させるためのスリップ回転指令値を算出するスリップ回
転指令値算出部と、このスリップ回転指令値に対応した
ロックアップクラッチ締結圧指令値を算出するロックア
ップクラッチ締結圧指令値算出部とを設け、前記ロック
アップクラッチの締結圧を該指令値にするよう構成した
ことを特徴とするものである。
【0023】
【発明の効果】第1発明においては、原動機からの回転
を伝達するトルクコンバータの入出力要素間における実
スリップ回転をロックアップクラッチの締結により以下
のごとくに制御する。先ず目標スリップ回転算出部は、
車両の運転状態からトルクコンバータの目標スリップ回
転を求め、前置補償器は、車速と原動機の負荷状態とに
基づいて定数を設定された補償用フィルタに上記目標ス
リップ回転を通過させて目標スリップ回転補正値を求
め、スリップ回転指令値算出部は、該目標スリップ回転
補正値および上記実スリップ回転をもとに、上記実スリ
ップ回転を前記目標スリップ回転に一致させるためのス
リップ回転指令値を算出し、ロックアップクラッチ締結
圧指令値算出部は、このスリップ回転指令値に対応した
ロックアップクラッチ締結圧指令値を算出し、ロックア
ップクラッチの締結圧を当該指令値にすることで、実ス
リップ回転を上記目標スリップ回転に一致させる。
【0024】ところで第1発明においては当該スリップ
回転制御に当たり、目標スリップ回転をそのまま当該制
御に用いず、これを上記前置補償器の車速および原動機
負荷状態に応じた補償用フィルタに通過させて得られる
目標スリップ回転補正値をスリップ回転制御に資するこ
とから、前記したようにエンジン回転変動の影響を受け
ないようフィードバック制御系の伝達特性を決定せざる
を得ないために大きくなるスリップ回転制御の応答遅れ
をなくすことができる。
【0025】上記前置補償器における補償用フィルタの
定数は、第2発明のように車速および原動機負荷状態だ
けでなく、トルクコンバータの後段における変速機構の
変速状態にも基づいて設定したり、第3発明のように、
車速および原動機負荷状態だけでなくトルクコンバータ
の出力回転速度にも基づいて設定することができ、いず
れの場合も、第1発明の上記作用効果を達成することが
できる。
【0026】なお、第3発明にように車速と原動機の負
荷状態とトルクコンバータの出力回転速度とに基づいて
補償用フィルタの定数を設定するに際しては特に、第4
発明のように、車速と前記原動機の負荷状態とに基づい
て補償用フィルタの分母の項の定数を設定し、トルクコ
ンバータの出力回転速度に基づいて補償用フィルタの分
子の項の定数を設定して、第1発明と同様の作用効果を
達成することができる。
【0027】第1発明における補償用フィルタの定数を
設定するに際しては、第5発明のように車速と原動機の
負荷状態とトルクコンバータの後段における変速機構の
変速状態とに基づいて補償用フィルタの分母の項の定数
を設定し、トルクコンバータの出力回転速度に基づいて
補償用フィルタの分子の項の定数を設定して、第1発明
と同様の作用効果を達成することができる。なお第1発
明乃至第5発明における原動機の負荷状態としては、第
6発明におけるようにスロットル開度を用いるのがよ
く、この場合原動機負荷状態の検出が容易である。
【0028】第7発明は前置補償器として、前記スリッ
プ回転指令値算出部からなるフィードバック制御系の伝
達特性の逆系で構成された補償用フィルタを有した前置
補償器を用いることで第1発明と同様の作用効果を達成
することができ、この場合の補償用フィルタは、第8発
明におけるように、当該伝達特性を表す特性多項式中の
代表的に遅いモードの逆系により構成するのが、所定の
作用効果を一層良好に達成する上で好ましい。
【0029】第9発明は前置補償器として、トルクコン
バータの特性および原動機系のイナーシャによって定ま
るスリップ回転機構部の伝達特性の逆系からなる補償用
フィルタを有した前置補償器を用いることで第1発明と
同様の作用効果を達成することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づき詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形
態になるスリップ制御装置を具えたトルクコンバータを
含む車両の駆動系を示し、1は原動機としてのエンジ
ン、2はトルクコンバータ、3は自動変速機の歯車変速
機構、4はディファレンシャルギヤ装置、5は車輪で、
これらを順次図示のように結合して車両の駆動系を構成
する。
【0031】トルクコンバータ2は、エンジン1で駆動
される入力要素としてのポンプインペラ2aと、歯車変
速機構3の入力軸に結合された出力要素としてのタービ
ンランナ2bと、これらポンプインペラ2aおよびター
ビンランナ2b間を直結するロックアップクラッチ2c
とを具えた、所謂ロックアップ式トルクコンバータとす
る。
【0032】ロックアップクラッチ2cの締結力は、そ
の前後におけるアプライ圧PA とレリーズ圧PR の差圧
(ロックアップクラッチ締結圧)により決まり、アプラ
イ圧PA がレリーズ圧PR よりも低ければ、ロックアッ
プクラッチ2cは釈放されてポンプインペラ2aおよび
タービンランナ2b間を直結せず、トルクコンバータ2
をスリップ制限しないコンバータ状態で機能させる。
【0033】アプライ圧PA がレリーズ圧PR よりも高
い場合、その差圧に応じた力でロックアップクラッチ2
cを締結させ、トルクコンバータ2をロックアップクラ
ッチ2cの締結力に応じてスリップ制限するスリップ制
御状態で機能させる。そして当該差圧が設定値よりも大
きくなると、ポンプインペラ2aおよびタービンランナ
2b間の相対回転がなくなり、トルクコンバータ2をロ
ックアップ状態で機能させる。
【0034】これがため、トルクコンバータ2はスリッ
プ制御状態で、ポンプインペラ2aおよびタービンラン
ナ2b間の相対回転(スリップ回転)に起因した流体伝
動によるコンバータトルクと、ロックアップクラッチ2
cによる機械的伝動に起因したトルク(ロックアップク
ラッチ締結容量)との和値に相当するトルクを伝達する
こととなり、この和値に相当するトルクがエンジン出力
トルクに等しい。
【0035】本願発明者等は、上記のコンバータトルク
と、ロックアップクラッチ締結容量と、エンジン出力ト
ルクとの関係から、エンジン出力トルクからコンバータ
トルクを減算すれば、ロックアップクラッチ締結容量を
求め得るとの事実認識に基づき、そして、コンバータト
ルクはトルクコンバータの伝動性能からスリップ回転
と、タービン回転速度との関係として予めトルクコンバ
ータごとに求めておくことができるとの研究成果に基づ
き、従来とは異なる方式により、狙いとするスリップ回
転を実現可能なロックアップクラッチ締結容量を算出し
得るようにしたトルクコンバータのスリップ制御装置を
もここに提案するものである。
【0036】ここで、トルクコンバータの伝動性能から
予め求め得る、コンバータトルクと、スリップ回転と、
タービン回転速度との関係を説明するに、図7に例示す
るごとくコンバータトルクtCNV に対するスリップ回転
ωSLP の比をスリップ回転ゲインgSLP と定義すると、
当該スリップ回転ゲインgSLP は次式で表される。 gSLP =ωSLP /tCNV … (1) そして、かようにスリップ回転ゲインgSLP を定義する
と、このスリップ回転ゲインgSLP は同図に実線で例示
するようにタービン回転速度ωT に応じて変化すること
を確かめた。
【0037】なおトルクコンバータ次第で、スリップ回
転ゲインgSLP は図7に示すようにタービン回転速度ω
T に応じて変化せず、定常的なスリップ回転ゲインであ
っても良い。
【0038】本実施の形態においては、上記の原理に基
づき本発明が狙いとする所定のトルクコンバータのスリ
ップ制御を行うべくアプライ圧PA およびレリーズ圧P
R を決定するスリップ制御系を以下の構成とする。図1
および図2におけるスリップ制御弁11は、コントロー
ラ12によりデューティ制御されるロックアップソレノ
イド13からの信号圧PS に応じてアプライ圧PA およ
びレリーズ圧PR を決定するもので、これらスリップ制
御弁11およびロックアップソレノイド13を図2に明
示する周知のものとする。即ち、ロックアップソレノイ
ド13はパイロット圧Pp を元圧として、コントローラ
12からのソレノイド駆動デューティDの増大につれ信
号圧PS を高くするものとする。
【0039】一方でスリップ制御弁11は、上記の信号
圧PS およびフィードバックされたレリーズ圧PR を一
方向に受けると共に、他方向にバネ11aのバネ力およ
びフィードバックされたアプライ圧PA を受け、信号圧
S の上昇につれて、アプライ圧PA とレリーズ圧PR
との間の差圧(PA −PR )で表されるロックアップク
ラッチ2cの締結圧を図3に示すように変化させるもの
とする。
【0040】ここでロックアップクラッチ締結圧(PA
−PR )の負値はPR >PA によりトルクコンバータ2
をコンバータ状態にすることを意味し、逆にロックアッ
プクラッチ締結圧(PA −PR )が正である時は、その
値が大きくなるにつれてロックアップクラッチ2cの締
結容量が増大され、トルクコンバータ2のスリップ回転
を大きく制限し、遂にはトルクコンバータ2をロックア
ップ状態にすることを意味する。
【0041】コントローラ12には、図1および図2に
示すように、エンジン1のスロットル開度TVOを検出
するスロットル開度センサ21からの信号と、ポンプイ
ンペラ2aの回転速度ωI を検出する(検出値をωIR
する)インペラ回転センサ22からの信号と、タービン
ランナ2bの回転速度ωT を検出する(検出値をωTR
する)タービン回転センサ23からの信号と、自動変速
機の作動油温TATF を検出する油温センサ24からの信
号と、車速VSPを検出する車速センサ25からの信号
と、変速比iP を算出する変速比計算部26から計算結
果と、エンジン回転数Ne を検出するエンジン回転セン
サ27からの信号をそれぞれ入力することとする。
【0042】コントローラ12はこれら入力情報をもと
に、図4に示す機能別ブロック線図に沿った演算によ
り、ロックアップソレノイド13の駆動デューティDを
決定して以下に詳述する所定のスリップ制御を行う。図
4における目標スリップ回転算出部31は、車速VSP
と、スロットル開度TVOと、変速比iP と、作動油温
ATF に基づき周知のごとく、トルク変動やこもり音が
発生しない範囲内で最も少ないところに実験などで求め
ておいた目標スリップ回転ωSLPTを定めて決定する。実
スリップ回転算出部32は、ポンプインペラ2aの回転
速度検出値をωIRからタービンランナ2bの回転速度検
出値をωTRを減算してトルクコンバータ2の実スリップ
回転ωSLPRを算出する。
【0043】トルクコンバータのスリップ回転制御は、
基本的には実スリップ回転ωSLPRを目標スリップ回転ω
SLPTに一致させることであるが、本実施の形態において
は特に、目標スリップ回転ωSLPTをそのままスリップ回
転制御に用いず、目標スリップ回転ωSLPTを以下のよう
に前置補償して求めた目標スリップ回転補正値ωSLPT c
をスリップ回転制御に資することとし、これがため前置
補償器フィルタ定数検定部41および前置補償器42を
設ける。これらにより目標スリップ回転ωSLPTを前置補
償して目標スリップ回転補正値ωSLPTc を求める方法を
以下に説明する。
【0044】ここで、目標スリップ回転補正値ωSLPTc
を制御目標値とし、実スリップ回転ωSLPRを制御出力と
するスリップ回転フィードバック制御系は、本願出願人
が先に特願平9−240882号により先に提案したよ
うに構成するものとする。この場合のスリップ回転フィ
ードバック制御系は、図5に示すようにスリップ回転偏
差算出部33と、フィードバック補償器34と、線形化
補償器43(図1のスリップ回転ゲイン算出部35、目
標コンバータトルク算出部36、目標ロックアップクラ
ッチ締結容量算出部38、ロックアップクラッチ締結圧
指令値算出部39、およびソレノイド駆動信号算出部4
0よりなる)と、ロックアップ機構部44と、スリップ
回転機構部45とで構成される。
【0045】そして、かかるスリップ回転フィードバッ
ク制御系の伝達関数GFB(s)は次式により表される。
【数1】 ただし、 GCNT (s) :フィードバック補償器34の伝達特性 GLU(s) :ロックアップ機構部44の伝達特性 GSLP (s) :スリップ回転機構部45の伝達特性 nx (ωTR):フィードバック制御系伝達関数の分子項
の係数であり、タービン回転速度ωTRの関数 dx (ωTR):フィードバック制御系伝達関数の分母項
の係数であり、タービン回転速度ωTRの関数
【数2】
【0046】ここで、{s+dx (ωTR)}のうち、そ
の値が最も小さい項{s+dLOW TR)}が制御系伝
達関数の分母項の一番遅いモードであり、前置補償器4
2がない場合目標スリップ回転ωSLPTに対する実スリッ
プ回転ωSLPRの追従性に支配的である。そこで、前置補
償器42により極零相殺を行ない、目標スリップ回転ω
SLPTへの実スリップ回転ωSLPRの追従性に対し、一番遅
いモードの影響が見かけ上生じないようにすればよい。
【0047】ただし、フィードバック補償器34の値が
固定ゲインの場合、タービン回転速度ωTRによりフィー
ドバック制御系の伝達特性は変化するので、前置補償器
42はタービン回転速度ωTRに応じてゲインスケジュー
リングする必要がある。
【0048】また、車速VSPやスロットル開度TVO
等の車両運転状態より、目標スリップ回転ωSLPTに対す
る実スリップ回転ωSLPRの追従性の要求(要求伝達特性
R)は決定される。そこで、前置補償器42の出力で
ある瞬時(t)ごとの目標スリップ回転補正値ωSLPTC
としては、
【数3】 ただし、Gc (s) :前置補償器42の伝達特性で、プロ
パーな系である。
【数4】 R (s) =γ1 /(s+γ1 ):要求伝達特性 が考えられる。
【0049】しかし、この場合コントローラ12の演算
負荷が大きくなることが予想される。そこで、この問題
解決のため代表的な遅いモードだけを補償する方法が考
えられ、例えば前述した一番遅いモードのみを補償する
方法が挙げられる。この場合、目標スリップ回転補正値
ωSLPTC は次式で表される。
【数5】 ただし、 gc ′(ωTR)=(γ1 )/〔dLOW (ωTR)〕
【0050】図4および図5のスリップ回転偏差算出部
33は瞬時(t)ごとに、上記のごとく目標スリップ回
転ωSLPTを前置補償して求めた目標スリップ回転補正値
ωSL PTc と、図4に示す前記した実スリップ回転算出部
32からの実スリップ回転ω SLPRとの間のスリップ回転
偏差ωSLPER を、 ωSLPER (t)=ωSLPTc (t)−ωSLPR(t) …(5) により算出する。
【0051】スリップ回転指令値算出部に相当する図4
および図5のフィードバック補償器34は、その前記し
た伝達関数GCNT (s)を基に、スリップ回転偏差ω
SLPERをなくして実スリップ回転ωSLPRを目標スリップ
回転ωSLPTに一致させるためのスリップ回転指令値ω
SLPCを以下により算出する。 ωSLPC(t)=GCNT (s)・ωSLPER (t) …(6)
【0052】図4においてスリップ回転ゲイン算出部3
5は、図7に対応したマップを基にタービン回転速度検
出値ωTRからスリップ回転ゲインgSLPCを検索により求
める。この際、好ましくはスリップ回転ゲインgSLPC
高い頻度や急激な変化を抑制するために、これを、一時
遅れ時定数がTSLP のローパスフィルターに通し、当該
フィルター処理した後の値gSLPF(t) gSLPF(t)=〔1/(TSLP ・S+1)〕gSLPC(t) …(7) を用いるのが、スリップ回転ゲインの急激な変化や、高
頻度の変化によるスリップ制御への悪影響をなくして制
御を安定に行わせる意味において良い。
【0053】次に目標コンバータトルク算出部36で
は、前記(1)式におけるgSLP にg SLPFを当てはめ、
ωSLP に上記フィードバック補償器34からのスリップ
回転指令値ωSLPCを当てはめることにより、タービン回
転速度ωTRのもとでスリップ回転指令値ωSLPCを達成す
るための目標とすべきコンバータトルクtCNVCを tCNVC(t)=ωSLPC(t)/gSLPF …(8) により算出する。
【0054】そしてエンジン出力トルク推定部37で
は、先ず図8に例示したエンジン全性能線図を用いてエ
ンジン回転数Ne およびスロットル開度TVOから、エ
ンジン出力トルクの定常値tESを検索し、次いでこれ
を、時定数TEDがエンジンの動的な遅れに対応した値の
フィルターに通してフィルター処理し、当該フィルター
処理後の一層実際値に近い次式で表されるエンジン出力
トルクtEHEH(t)=〔1/(TED・S+1)〕tES(t) …(9) を推定して求める。
【0055】さらに目標ロックアップクラッチ締結容量
算出部38では、エンジン出力トルクtEHから目標コン
バータトルクtCNVCを減算して目標ロックアップクラッ
チ締結容量tLUC を求める。 tLUC (t)=tEH(t)−tCNVC(t) …(10)
【0056】図4において次のロックアップクラッチ締
結圧指令値算出部39では、上記の目標ロックアップク
ラッチ締結容量tLUC を達成するためのロックアップク
ラッチ締結圧指令値PLUC を、図9に対応するマップか
ら検索する。ここで図9は、トルクコンバータごとにロ
ックアップクラッチの締結圧PLUと、ロックアップクラ
ッチ締結容量tLUとの関係を予め実験により求めてお
き、目標ロックアップクラッチ締結容量tLUC に対応す
るロックアップクラッチ締結圧指令値PLUC を検索する
ことにより目的を達することができる。
【0057】次のソレノイド駆動信号算出部40では、
実際のロックアップクラッチ締結圧をロックアップクラ
ッチ締結圧指令値PLUC にするためのロックアップソレ
ノイド駆動デューティDを決定し、これを図1および図
2のロックアップソレノイド13に出力して、狙い通り
に実スリップ回転ωSLPRを目標スリップ回転ωSLPTに一
致させるトルクコンバータのスリップ制御が可能であ
る。
【0058】以上のロックアップソレノイド13のデュ
ーティ制御によれば先ず、スリップ回転ゲイン算出部3
5につき前述したごとく、予め実験などにより図7に例
示するごとく、コンバータトルクtCNV に対するスリッ
プ回転ωSLP の比であるスリップ回転ゲインgSLP を、
トルクコンバータの出力回転速度ωT ごとに求めてお
き、トルクコンバータの出力回転速度ωTRからスリップ
回転ゲインgSLPCを検索し、フィードバック補償器34
で求めたスリップ回転指令値ωSLPCを算出部36でスリ
ップ回転ゲインgSLPCにより除算することにより、スリ
ップ回転指令値ωSL PCを実現するための目標コンバータ
トルクtCNVCを算出し、エンジン出力トルクtEHから目
標コンバータトルクtCNVCを差し引いて目標ロックアッ
プクラッチ締結容量tLUC を算出し、ロックアップクラ
ッチ締結容量がこの目標値tLUC になるようロックアッ
プクラッチを締結力制御することから、トルクコンバー
タのスリップ回転を上記の指令値ωSLPCに一致させるス
リップ制御が線形化補償されることとなって、ロックア
ップクラッチ締結圧指令値PLU C の低下が遅れ気味にな
ることがなく、従って実ロックアップクラッチ締結圧が
何時までも高いままにされてしまうような問題を回避す
ることができる。
【0059】これにより、実スリップ回転ωSLPRが目標
スリップ回転ωSLPTに対し極端に小さくなって、ロック
アップクラッチがほとんど締結状態になるといった弊害
を回避することができ、これがため、トルクコンバータ
のスリップ回転が一時的に不足してショックやこもり音
が発生する問題を解消することができる。
【0060】更に本実施の形態になるスリップ制御によ
れば、上記のスリップ回転制御に当たり、目標スリップ
回転ωSLPTをそのまま当該制御に用いず、これを前置補
償器42における車両運転状態に応じた補償用フィルタ
に通過させて得られる目標スリップ回転補正値ωSLPTc
をスリップ回転制御に資することから、従来技術の説明
に関して前記したようにエンジン回転変動の影響を受け
ないようフィードバック制御系の伝達特性を決定した場
合でも、スリップ回転制御の応答遅れが大きくなること
がなく、エンジン回転変動の影響を受けないようにする
要求と、スリップ回転制御の応答性に関する要求との、
相反する要求を共に満足させることができる。
【0061】なお前置補償器42における補償用フィル
タの定数は、前置補償器フィルタ定数決定部41により
例えば以下に説明するように決定することで、当該作用
効果を実現することができる。第1に前置補償器フィル
タ定数決定部41は、車速VSPおよび原動機(エンジ
ン)の負荷状態を表すスロットル開度TVOに基づいて
前置補償器42における補償用フィルタの定数を決定す
ることで上記の作用効果を達成することができる。
【0062】第2に前置補償器フィルタ定数決定部41
は、車速VSPと、原動機(エンジン)の負荷状態を表
すスロットル開度TVOと、歯車変速機構3の変速状態
(変速比iP )とに基づいて前置補償器42における補
償用フィルタの定数を決定することで上記の作用効果を
達成することができる。第3に前置補償器フィルタ定数
決定部41は、車速VSPと、スロットル開度TVO
と、トルクコンバータの出力回転速度ωT とに基づいて
前置補償器42における補償用フィルタの定数を決定す
ることで上記の作用効果を達成することができる。
【0063】なお、かように車速VSPと、スロットル
開度TVOと、トルクコンバータの出力回転速度ωT
に基づいて補償用フィルタの定数を設定するに際しては
特に、前2者の車速VSPと、スロットル開度TVOと
に基づいて補償用フィルタの分母の項の定数を決定し、
後者のトルクコンバータ出力回転速度ωT に基づいて補
償用フィルタの分子の項の定数を決定することで、上記
の作用効果を一層確実に達成することができる。
【0064】さらに前置補償器フィルタ定数決定部41
は、車速VSPと、エンジンスロットル開度TVOと、
歯車変速機構3の変速比iP とに基づいて前置補償器4
2における補償用フィルタの分母の項の定数を決定し、
トルクコンバータ出力回転速度ωT に基づいて補償用フ
ィルタの分子の項の定数を決定することで上記の作用効
果を達成することができる。
【0065】また前置補償器フィルタ定数決定部41
は、前置補償器42における補償用フィルタがスリップ
回転指令値算出部としてのフィードバック補償器34か
らなるフィードバック制御系の伝達特性の逆系で構成さ
れるようフィルタ定数を決定することで、上記の作用効
果を一層確実に達成することができる。この場合の補償
用フィルタは、当該伝達特性を表す特性多項式中の代表
的に遅いモードの逆系により構成するのが、所定の作用
効果を一層良好に達成する上で好ましい。
【0066】さらに前置補償器フィルタ定数決定部41
は、前置補償器42における補償用フィルタが、スリッ
プ回転指令値算出部としてのフィードバック補償器34
からなるフィードバック制御系の伝達特性を表す特性多
項式を分子とするフィルタとなるようフィルタ定数を決
定することで、上記の作用効果を一層確実に達成するこ
とができる。この場合の補償用フィルタは、当該特性多
項式中の代表的に遅いモードを分子とする補償用フィル
タとするのが、所定の作用効果を一層良好に達成する上
で好ましい。
【0067】また前置補償器フィルタ定数決定部41
は、前置補償器42における補償用フィルタが、トルク
コンバータの特性およびエンジン系のイナーシャによっ
て定まるスリップ回転機構部34(図5参照)の伝達特
性GSLP (s)の逆系で構成されたフィルタとなるよう
フィルタ定数を決定することで、上記の作用効果を一層
確実に達成することができる。
【0068】以上説明した何れの実施の形態になるスリ
ップ制御によっても、スリップ回転フィードバック制御
系の伝達特性の逆系や、代表的に遅いモードの逆系や、
スリップ制御対象の伝達特性の逆系や、車両運転状態に
応じて要求される伝達特性で前置補償器42の補償用フ
ィルタを構成し、このフィルタに目標スリップ回転ω
SLPTを通過させて得られる目標スリップ回転補正値ω
SLPTc をスリップ回転制御に資することから、目標スリ
ップ回転ωSLPTをそのままスリップ回転制御に資する従
来装置に較べて、図10に示すシミュレーション結果の
ようにスリップ制御の応答性を改善することができる。
【0069】この図10は、車速VSPを30km/hに、
また、スロットル開度TVOを1/8の10度に保った
走行中に、目標スリップ回転ωSLPTが図示のように変化
した場合のシミュレーション結果を示すもので、従来装
置では、図11につき前述したエンジン回転の低周波変
動によるスリップ回転への影響を排除するようスリップ
回転フィードバック制御系の伝達特性を定めなければな
らないことに起因して、図10に実線で示す目標スリッ
プ回転ω SLPR、ロックアップクラッチ締結圧指令値P
LUC 、およびロックアップクラッチ実締結圧の時系列変
化から明らかなように、スリップ回転制御の応答性が悪
くなる傾向にあったが、本発明のスリップ回転制御によ
れば、同図に破線で示す目標スリップ回転ωSL PR、ロッ
クアップクラッチ締結圧指令値PLUC 、およびロックア
ップクラッチ実締結圧の時系列変化から明らかなよう
に、スリップ回転フィードバック制御系の伝達特性を一
切操作することなしに、スリップ回転制御の応答性を改
善することができる。
【0070】なお、前置補償器42は図4に示すものに
代えて、図6に示すように構成しても前記したと同様な
作用効果を達成することができる。即ち、前置補償器4
2は先ず前記(4)式に対応する次式から目標スリップ
回転ωSLPTをもとに第1の目標スリップ回転補正値ω
SLPTC1を算出する。 ωSLPTC1(t)=GR (s)×ωSLPT(t) ={(γ1 )/(s+γ1 )}×ωSLPT(t) ・・・(11)
【0071】そして、この第1の目標スリップ回転補正
値ωSLPTC1と、実スリップ回転ωSL PRとの偏差ωSLPER
をスリップ回転偏差算出部33で求め、フィードバック
補償器34ではこの偏差から前記(6)式により第1ス
リップ回転指令値ωSLPC1 を算出する。よって、この指
令値ωSLPC1 は次式で表される。 ωSLPC1(t)=GCNT (s) ×{ωSLPTC1(t) −ωSLPR(t) } …(12)
【0072】前記補償器42は更に、前記(4)式に対
応した次式により第2の目標スリップ回転補正値ω
SLPTC2を算出する。 ωSLPTC2(t) =GM (s) ×ωSLPT(t) ={JE s+CSLP (ωTR) }{(γ1 )/(s+γ1 )} ×ωSLPT(t) …(13) 但し、 JE :エンジンのイナーシャ CSLP :トルクコンバータの粘性係数
【0073】そしてフィードバック補償器34は、上記
した第1のスリップ回転指令値ωSL PC1 と第2の目標ス
リップ回転補正値ωSLPTC2とを加算し、これらの和値を
スリップ回転指令値ωSLPCとして次式により求め、スリ
ップ回転制御に資する。 ωSLPC(t) =ωSLPC1(t)+ωSLPTC2(t) …(14)
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態になるスリップ制御装置
を具えた車両の駆動系およびその制御システムを示す概
略系統図である。
【図2】同実施の形態におけるトルクコンバータのスリ
ップ制御系を示すシステム図である。
【図3】ロックアップソレノイドからの信号圧と、ロッ
クアップクラッチ締結圧との関係を示す線図である。
【図4】同実施の形態においてコントローラが実行する
スリップ制御の機能別ブロック線図である。
【図5】同実施の形態におけるスリップ回転フィードバ
ック制御系のブロック線図である。
【図6】本発明の他の実施の形態になる前置補償器を具
えたスリップ回転フィードバック制御系のブロック線図
である。
【図7】トルクコンバータのタービン回転速度に対する
スリップ回転ゲインの関係を示す特性線図である。
【図8】エンジンのスロットル開度と、回転数と、出力
トルクとの関係を示す全性性能線図である。
【図9】ロックアップクラッチの締結圧と、締結容量と
の関係を例示する伝動特性図である。
【図10】図1〜図5に示す実施の形態におけるスリッ
プ回転制御動作を、従来装置による動作と比較して示す
タイムチャートである。
【図11】スリップ回転制御が完了した定常状態におい
てもエンジン回転が低周波変動する様子を示すタイムチ
ャートである。
【符号の説明】
1 エンジン(原動機) 2 トルクコンバータ 2a ポンプインペラ(入力要素) 2b タービンランナ(出力要素) 2c ロックアップクラッチ 3 歯車変速機構 4 ディファレンシャルギヤ装置 5 車輪 11 スリップ制御弁 12 コントローラ 13 ロックアップソレノイド 21 スロットル開度センサ 22 インペラ回転センサ 23 タービン回転センサ 24 油温センサ 25 車速センサ 26 変速比計算部 27 エンジン回転センサ 31 目標スリップ回転算出部 32 実スリップ回転算出部 33 スリップ回転偏差算出部 34 フィードバック補償器(スリップ回転指令値算出
部) 35 スリップ回転ゲイン算出部 36 目標コンバータトルク算出部 37 エンジン出力トルク推定部 38 目標ロックアップクラッチ締結容量算出部 39 ロックアップクラッチ締結圧指令値算出部 40 ソレノイド駆動信号算出部 41 前置補償器フィルタ定数決定部 42 前置補償器 43 線形化補償器 44 ロックアップ機構部 45 スリップ回転機構部

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 原動機からの回転を伝達するトルクコン
    バータに用いられ、該トルクコンバータの入出力要素間
    における実スリップ回転をロックアップクラッチの締結
    により制御するための装置において、 車両の運転状態からトルクコンバータの目標スリップ回
    転を求める目標スリップ回転算出部と、 車速と前記原動機の負荷状態とに基づいて補償用フィル
    タの定数を設定され、この補償用フィルタに前記目標ス
    リップ回転を通過させて目標スリップ回転補正値を求め
    る前置補償器と、 該目標スリップ回転補正値および前記実スリップ回転を
    入力されて、この実スリップ回転を前記目標スリップ回
    転に一致させるためのスリップ回転指令値を算出するス
    リップ回転指令値算出部と、 このスリップ回転指令値に対応したロックアップクラッ
    チ締結圧指令値を算出するロックアップクラッチ締結圧
    指令値算出部とを設け、 前記ロックアップクラッチの締結圧を該指令値にするよ
    う構成したことを特徴とするトルクコンバータのスリッ
    プ制御装置。
  2. 【請求項2】 請求項1において、前記前置補償器は前
    記車速および原動機の負荷状態の他に前記トルクコンバ
    ータの後段における変速機構の変速状態にも基づいて補
    償用フィルタの定数を設定され、 この補償用フィルタに前記目標スリップ回転を通過させ
    て目標スリップ回転補正値を求めるよう構成したことを
    特徴とするトルクコンバータのスリップ制御装置。
  3. 【請求項3】 請求項1において、前記前置補償器は車
    速および前記原動機の負荷状態の他に前記トルクコンバ
    ータの出力回転速度にも基づいて補償用フィルタの定数
    を設定され、 この補償用フィルタに前記目標スリップ回転を通過させ
    て目標スリップ回転補正値を求めるよう構成したことを
    特徴とするトルクコンバータのスリップ制御装置。
  4. 【請求項4】 請求項3において、前記前置補償器は車
    速と前記原動機の負荷状態とに基づいて補償用フィルタ
    の分母の項の定数を設定されると共に、前記トルクコン
    バータの出力回転速度に基づいて補償用フィルタの分子
    の項の定数を設定され、 該補償用フィルタに前記目標スリップ回転を通過させて
    目標スリップ回転補正値を求めるよう構成したことを特
    徴とするトルクコンバータのスリップ制御装置。
  5. 【請求項5】 請求項1において、前記前置補償器は車
    速と前記原動機の負荷状態と前記トルクコンバータの後
    段における変速機構の変速状態とに基づいて補償用フィ
    ルタの分母の項の定数を設定されると共に、前記トルク
    コンバータの出力回転速度に基づいて補償用フィルタの
    分子の項の定数を設定され、 該補償用フィルタに前記目標スリップ回転を通過させて
    目標スリップ回転補正値を求めるよう構成したことを特
    徴とするトルクコンバータのスリップ制御装置。
  6. 【請求項6】 請求項1乃至5のいずれか1項におい
    て、前記原動機の負荷状態としてスロットル開度を用い
    るよう構成したことを特徴とするトルクコンバータのス
    リップ制御装置。
  7. 【請求項7】 原動機からの回転を伝達するトルクコン
    バータに用いられ、該トルクコンバータの入出力要素間
    における実スリップ回転をロックアップクラッチの締結
    により制御するための装置において、 車両の運転状態からトルクコンバータの目標スリップ回
    転を求める目標スリップ回転算出部と、 車両の運転状態に基づいて補償用フィルタの定数を設定
    され、この補償用フィルタに前記目標スリップ回転を通
    過させて目標スリップ回転補正値を求める前置補償器
    と、 該目標スリップ回転補正値および前記実スリップ回転を
    入力されて、この実スリップ回転を前記目標スリップ回
    転に一致させるためのスリップ回転指令値を算出するス
    リップ回転指令値算出部と、 このスリップ回転指令値に対応したロックアップクラッ
    チ締結圧指令値を算出するロックアップクラッチ締結圧
    指令値算出部とを設け、 前記前置補償器の補償用フィルタを前記スリップ回転指
    令値算出部からなるフィードバック制御系の伝達特性の
    逆系で構成し、 前記ロックアップクラッチの締結圧を前記指令値にする
    よう構成したことを特徴とするトルクコンバータのスリ
    ップ制御装置。
  8. 【請求項8】 請求項7において、前記前置補償器は前
    記スリップ回転指令値算出部からなるフィードバック制
    御系の伝達特性を表す特性多項式中の代表的に遅いモー
    ドの逆系により構成された補償用フィルタを有し、 この補償用フィルタに前記目標スリップ回転を通過させ
    て目標スリップ回転補正値を求めるよう構成したことを
    特徴とするトルクコンバータのスリップ制御装置。
  9. 【請求項9】 原動機からの回転を伝達するトルクコン
    バータに用いられ、該トルクコンバータの入出力要素間
    における実スリップ回転をロックアップクラッチの締結
    により制御するための装置において、 車両の運転状態からトルクコンバータの目標スリップ回
    転を求める目標スリップ回転算出部と、 トルクコンバータの特性および原動機系のイナーシャに
    よって定まるスリップ回転機構部の伝達特性の逆系から
    なる補償用フィルタを有し、この補償用フィルタに前記
    目標スリップ回転を通過させて目標スリップ回転補正値
    を求める前置補償器と、 該目標スリップ回転補正値および前記実スリップ回転を
    入力されて、この実スリップ回転を前記目標スリップ回
    転に一致させるためのスリップ回転指令値を算出するス
    リップ回転指令値算出部と、 このスリップ回転指令値に対応したロックアップクラッ
    チ締結圧指令値を算出するロックアップクラッチ締結圧
    指令値算出部とを設け、 前記ロックアップクラッチの締結圧を該指令値にするよ
    う構成したことを特徴とするトルクコンバータのスリッ
    プ制御装置。
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