JP3601346B2 - トルクコンバータのスリップ制御装置 - Google Patents

トルクコンバータのスリップ制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動変速機などに用いられるトルクコンバータの入出力要素間における相対回転、つまりスリップ回転をロックアップクラッチの締結圧制御により目標スリップ回転に収束させるためのスリップ制御装置、特にスリップ制御領域からロックアップ領域への移行でロックアップクラッチをスリップ制御状態から完全締結状態にする時のスリップ制御技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
トルクコンバータは、流体を介して入出力要素間で動力伝達を行うため、トルク変動吸収機能や、トルク増大機能を果たす反面、伝動効率が悪い。
これがため、これらトルク変動吸収機能や、トルク増大機能が不要な走行条件のもとでは、トルクコンバータの入出力要素間をロックアップクラッチにより直結するロックアップ式のトルクコンバータが今日では多用されている。
しかして、かようにトルクコンバータの入出力要素間をロックアップクラッチの完全締結により直結したロックアップ状態にするか、該ロックアップクラッチを釈放したコンバータ状態にするかだけのオン・オフ的な制御では、こもり音や振動の問題が生じないようロックアップ領域を定める必要があることから、トルクコンバータのスリップ回転を制限する領域が狭くて十分な伝動効率の向上を望み得ない。
【0003】
そこで、ロックアップクラッチを所謂半クラッチ状態にして、要求される必要最小限のトルク変動吸収機能や、トルク増大機能が確保されるような態様でトルクコンバータのスリップ回転を制限するスリップ制御領域を設定し、これによりスリップ回転の制限を一層低車速まで行い得るようにしたトルクコンバータのスリップ制御技術も多々提案されている。
そしてトルクコンバータのスリップ制御技術は一般的に、エンジンのスロットル開度や、車速や、自動変速機の作動油温などの走行条件に応じて目標スリップ回転を決定し、上記のスリップ制御領域でトルクコンバータの実スリップ回転が目標スリップ回転になるようロックアップクラッチの締結力をフィードバック制御するのが普通であり、かかるスリップ制御によれば、こもり音や振動の問題を生ずることなしにスリップ回転制限領域の一層の低車速化を実現して運転性の悪化を回避しつつ燃費の向上を図ることができる。
【0004】
この際、トルクコンバータをスリップ制限していない状態からスリップ制御し始める過渡期におけるロックアップクラッチの締結力制御に関しては、例えば本願出願人が既に特願平9−301830号により、
ロックアップ機構の特性変化によってもスリップ制御の応答が悪化したり、制御特性が変わってしまうことのないようロックアップクラッチの締結力制御を行う技術を提案済みである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、スリップ制御領域からロックアップ領域への移行に伴ってトルクコンバータをスリップ制御している状態からロックアップクラッチの完全締結によりロックアップ状態にする過渡期におけるロックアップクラッチの締結力制御に関しては従来何の提案技術もないため、設計者の意図するロックアップ応答およびロックアップショックの低減が得られない危惧があった。
なお従来特開平9−53717号公報により、トルクコンバータをコンバータ状態にするか、ロックアップ状態にするかだけのオン・オフ的なロックアップ制御において、コンバータ状態からロックアップ状態へ移行する過渡期にロックアップクラッチの締結力を応答性およびショック低減上好適な態様で上昇制御する技術が提案されており、これを、スリップ制御状態からロックアップ状態への切り換え過渡期におけるロックアップクラッチの締結力制御に応用することも考えられる。
【0006】
しかしこの場合、スリップ制御用の前記フィードバック制御ルーチンとは別に、スリップ制御状態からロックアップ状態への切り換え過渡期のためのフィードバック制御ルーチンが別に必要となり、制御プログラム容量の増大に伴うROMの圧迫とプログラムの信頼性の低下が懸念される。
またこの場合、スリップ制御用のフィードバック制御ルーチンと、スリップ制御状態からロックアップ状態への過渡期のためのフィードバック制御ルーチンとの間で切り換えを行う時に切り換えショックが発生する懸念があり、当該切り換えショックの防止のために面倒な初期値設定が不可欠になるという問題も発生する。
【0007】
請求項1に記載の第1発明は、スリップ制御状態からロックアップ状態への切り換え過渡期に、当初はスリップ制御用のフィードバック制御ルーチンを継続的に実行し、その後はオープンループ制御に切り換えることにより、当該過渡期においても設計者の意図するロックアップ応答およびロックアップショックの低減が得られるようにして、
スリップ制御状態からロックアップ状態への切り換え過渡期のためのフィードバック制御ルーチンを別に設定しなくても、従って、制御プログラム容量の増大に伴うROMの圧迫やプログラムの信頼性の低下を伴うことなしに上記のごとく、設計者の意図するロックアップ応答およびロックアップショックの低減が得られるようにし、
合わせて、上記によりフィードバック制御ルーチン間の切り換えをなくして当該切り換えにともなうショックの発生をなくし、当該切り換えショックの防止のための面倒な初期値設定を不要にしたトルクコンバータのスリップ制御装置を提案することを目的とする。
【0008】
請求項2に記載の第2発明は、上記継続的に実行していたスリップ制御用のフィードバック制御ルーチンから上記オープンループ制御への切り換えを確実に行い得るようにしたトルクコンバータのスリップ制御装置を提案することを目的とする。
【0009】
請求項3に記載の第3発明は、上記継続的に実行していたスリップ制御用のフィードバック制御ルーチンから上記オープンループ制御への切り換えを、低温時やロックアップクラッチの劣化時でもロックアップクラッチの締結ショックが大きくなることのないタイミングで確実に行い得るようにしたトルクコンバータのスリップ制御装置を提案することを目的とする。
【0010】
請求項4に記載の第4発明は、上記オープンループ制御についてもこれを、スリップ制御用のフィードバック制御ルーチンの利用により実行し得るようにしたトルクコンバータのスリップ制御装置を提案することを目的とする。
【0011】
請求項5に記載の第5発明は、第4発明とは別の対策により上記オープンループ制御を、スリップ制御用のフィードバック制御ルーチンの利用により実行し得るようにしたトルクコンバータのスリップ制御装置を提案することを目的とする。
【0012】
請求項6に記載の第6発明は、第4発明または第5発明のオープンループ制御によるロックアップクラッチの締結進行が作動油温変化やロックアップクラッチの経時劣化による影響を受けることのないようにしたトルクコンバータのスリップ制御装置を提案することを目的とする。
【0013】
請求項7に記載の第7発明は、ロックアップクラッチの締結が相当に進行した時にオープンループ制御に切り換える場合において、ロックアップ応答を高める上で大いに有効なオープンループ制御態様としたトルクコンバータのスリップ制御装置を提案することを目的とする。
【0014】
請求項8に記載の第8発明は、スリップ制御状態からロックアップ状態への切り換えと同時に、スリップ制御用のフィードバック制御ルーチンを利用したオープンループ制御に切り換えることにより、当該過渡期においても設計者の意図するロックアップ応答およびロックアップショックの低減が得られようにして、
スリップ制御状態からロックアップ状態への切り換え過渡期のためのフィードバック制御ルーチンを別に設定しなくても、従って、制御プログラム容量の増大に伴うROMの圧迫やプログラムの信頼性の低下を伴うことなしに上記のごとく、設計者の意図するロックアップ応答およびロックアップショックの低減が得られるようにし、
合わせて、上記によりフィードバック制御ルーチン間の切り換えをなくして当該切り換えにともなうショックの発生をなくし、当該切り換えショックの防止のための面倒な初期値設定を不要にしたトルクコンバータのスリップ制御装置を提案することを目的とする。
【0015】
請求項9に記載の第9発明は、第8発明とは別の対策によりスリップ制御用のフィードバック制御ルーチンを利用したオープンループ制御を実現したトルクコンバータのスリップ制御装置を提案することを目的とする。
【0016】
請求項10に記載の第10発明は、第8発明または第9発明のオープンループ制御によるロックアップクラッチの締結進行が作動油温変化やロックアップクラッチの経時劣化による影響を受けることのないようにしたトルクコンバータのスリップ制御装置を提案することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
これらの目的のため、先ず第1発明によるトルクコンバータのスリップ制御装置は、
トルクコンバータの入出力要素間における実スリップ回転をロックアップクラッチの締結により制限可能で、この実スリップ回転と目標スリップ回転との間におけるスリップ回転偏差に応じ前記ロックアップクラッチの締結圧をフィードバック制御して実スリップ回転を目標スリップ回転にするための装置において、
前記ロックアップクラッチを滑り結合させるべきスリップ制御領域から該ロックアップクラッチを完全締結させるべきロックアップ領域への移行時も、当該領域移行用の目標スリップ回転を前記目標スリップ回転として前記ロックアップクラッチ締結圧のフィードバック制御を継続的に実行し、
該フィードバック制御によりロックアップクラッチの締結が設定値まで進行した後は、前記スリップ回転偏差に代え固定のオープンループ制御用スリップ回転偏差を用い、前記ロックアップクラッチをロックアップ状態にするために、前記実スリップ回転を任意の態様で0になるようにし、その後該ロックアップ状態が継続するよう前記ロックアップクラッチ締結圧の制御をオープンループ制御に切り換える構成にしたことを特徴とするものである。
【0018】
第2発明によるトルクコンバータのスリップ制御装置は、上記の第1発明において、
前記実スリップ回転が設定スリップ回転まで低下した時にロックアップクラッチの締結が設定値まで進行したとして、前記ロックアップクラッチ締結圧のオープンループ制御への切り換えを行うよう構成したことを特徴とするものである。。
【0019】
第3発明によるトルクコンバータのスリップ制御装置は、上記の第2発明において、
前記設定スリップ回転を、作動油温が低い時ほど、またロックアップクラッチの経時劣化が激しい時ほど大きくして、低温時やロックアップクラッチの劣化時でもロックアップクラッチの締結ショックが大きくなることのないようにしたことを特徴とするものである。
【0020】
第4発明によるトルクコンバータのスリップ制御装置は、第1発明乃至第3発明のいずれかにおいて、
前記ロックアップクラッチ締結圧のオープンループ制御は、前記フィードバック制御の系における前記スリップ回転偏差を一定値に保持することにより実現するよう構成したことを特徴とすることを特徴とするものである。
【0021】
第5発明によるトルクコンバータのスリップ制御装置は、上記の第4発明において、
固定の仮想スリップ回転を前記実スリップ回転として該仮想スリップ回転と前記目標スリップ回転との間における差を前記フィードバック制御系のスリップ回転偏差とすることにより、該スリップ回転偏差を一定値に保持するよう構成したことを特徴とすることを特徴とするものである。
【0022】
第6発明によるトルクコンバータのスリップ制御装置は、第4発明または第5発明において、
前記フィードバック制御系の保持すべきスリップ回転偏差を、作動油温変化やロックアップクラッチの経時劣化による前記実スリップ回転の時間低下勾配の変化が生じないよう、これら作動油温変化やロックアップクラッチの経時劣化に応じて異なる一定値とする構成にしたことを特徴とすることを特徴とするものである。
【0023】
第7発明によるトルクコンバータのスリップ制御装置は、第1発明乃至第3発明のいずれかにおいて、
前記ロックアップクラッチ締結圧のオープンループ制御を、前記実スリップ回転が直ちに0にされるようなオープンループ制御としたことを特徴とするものである。
【0024】
第8発明によるトルクコンバータのスリップ制御装置は、
トルクコンバータの入出力要素間における実スリップ回転をロックアップクラッチの締結により制限可能で、この実スリップ回転と目標スリップ回転との間におけるスリップ回転偏差に応じ前記ロックアップクラッチの締結圧をフィードバック制御して実スリップ回転を目標スリップ回転にするための装置において、
前記ロックアップクラッチを滑り結合させるべきスリップ制御領域から該ロックアップクラッチを完全締結させるべきロックアップ領域への移行と同時に、前記実スリップ回転が所定の時間低下勾配で0になるよう前記スリップ回転偏差に代え固定のオープンループ制御用スリップ回転偏差を用い、前記ロックアップクラッチ締結圧の制御をオープンループ制御に切り換える構成にしたことを特徴とするものである。
【0025】
第9発明によるトルクコンバータのスリップ制御装置は、上記第8発明において、
固定の仮想スリップ回転を前記実スリップ回転として該仮想スリップ回転と前記目標スリップ回転との間における差を前記フィードバック制御系のスリップ回転偏差とすることにより、該スリップ回転偏差を一定値に保持するよう構成したことを特徴とするものである。
【0026】
第10発明によるトルクコンバータのスリップ制御装置は、第8発明または第9発明において、
前記フィードバック制御系の保持すべきスリップ回転偏差を、作動油温変化やロックアップクラッチの経時劣化によっても前記実スリップ回転の所定の時間低下勾配が補償されるよう、これら作動油温変化やロックアップクラッチの経時劣化に応じて異なる一定値とするよう構成したことを特徴とするものである。
【0027】
【発明の効果】
第1発明においてスリップ制御装置は、トルクコンバータの実スリップ回転と目標スリップ回転との間におけるスリップ回転偏差に応じロックアップクラッチの締結圧をフィードバック制御して実スリップ回転を目標スリップ回転に一致させる。
ところで、ロックアップクラッチを滑り結合させるべきスリップ制御領域からロックアップクラッチを完全締結させるべきロックアップ領域への移行時も、かかる領域移行用の目標スリップ回転を上記の目標スリップ回転としてロックアップクラッチ締結圧のフィードバック制御を継続的に実行し、
かかる継続的に実行するフィードバック制御によりロックアップクラッチの締結が設定値まで進行した後は、スリップ回転偏差に代え固定のオープンループ制御用スリップ回転偏差を用い、ロックアップクラッチをロックアップ状態にするために、実スリップ回転を任意の態様で0になるようにし、その後ロックアップ状態が継続するようロックアップクラッチ締結圧の制御をオープンループ制御に切り換える。
【0028】
よって第1発明においては、スリップ制御状態からロックアップ状態への切り換え過渡期に、当初はスリップ制御用のフィードバック制御ルーチンを継続的に実行し、その後はオープンループ制御に切り換えることとなり、当該過渡期においても設計者の意図するロックアップ応答およびロックアップショックの低減を達成することができる。
また、スリップ制御状態からロックアップ状態への切り換え過渡期のためのフィードバック制御ルーチンを別に設定しないで、上記のごとく、設計者の意図するロックアップ応答およびロックアップショックの低減が得られるようにしたから、制御プログラム容量の増大に伴うROMの圧迫やプログラムの信頼性の低下を伴うことなしに当該作用効果を達成することができる。
合わせて、スリップ制御状態からロックアップ状態への切り換え過渡期のためのフィードバック制御ルーチンを別に設定しないことから、これと、スリップ制御用のフィードバック制御ルーチンとの間の切り換えもなく、当該切り換え時のショック対策用の面倒な初期値設定も不要であるなどの利点がある。
【0029】
第2発明においては、実スリップ回転が設定スリップ回転まで低下した時にロックアップクラッチの締結が設定値まで進行したとして、上記ロックアップクラッチ締結圧の制御のオープンループ制御への切り換えを行うことから、
前記継続的に実行していたスリップ制御用のフィードバック制御ルーチンから上記オープンループ制御への切り換えを確実なものにすることができ、第1発明の作用効果を更に確実に奏し得る。
【0030】
第3発明においては、第2発明における上記の設定スリップ回転を、作動油温が低い時ほど、またロックアップクラッチの経時劣化が激しい時ほど大きくしたから、
前記継続的に実行していたスリップ制御用のフィードバック制御ルーチンから上記オープンループ制御への切り換えを、低温時やロックアップクラッチの劣化時でもロックアップクラッチの締結ショックが大きくなることのないタイミングで確実に行わせることができる。
【0031】
第4発明においては、前記フィードバック制御の系におけるスリップ回転偏差を一定値に保持することにより上記ロックアップクラッチ締結圧のオープンループ制御を実現するから、
当該オープンループ制御についてもこれを、スリップ制御用のフィードバック制御ルーチンの利用により実行することができ、第1発明〜第3発明の作用効果を更に顕著なものにすることができる。
【0032】
第5発明においては、上記第4発明のようにフィードバック制御系のスリップ回転偏差を一定値に保持するに際し、固定の仮想スリップ回転を前記実スリップ回転として該仮想スリップ回転と前記目標スリップ回転との間における差をフィードバック制御系のスリップ回転偏差としたから、
第4発明とは別の対策により、スリップ制御用のフィードバック制御ルーチンの利用により上記オープンループ制御を実行し得るようにするという同様の作用効果を達成することができる。
【0033】
第6発明においては、第4発明または第5発明における前記フィードバック制御系の保持すべきスリップ回転偏差を、作動油温変化やロックアップクラッチの経時劣化によっても実スリップ回転の時間低下勾配の変化が生じないよう、これら作動油温変化やロックアップクラッチの経時劣化に応じて異なる一定値としたから、
第4発明または第5発明のオープンループ制御によるロックアップクラッチの締結進行を作動油温変化やロックアップクラッチの経時劣化による影響を受けることなく同じ進行具合とすることができ、ロックアップの応答性およびロックアップショックの軽減を不変に維持し得る。
【0034】
第7発明においては、第1発明乃至第3発明におけるロックアップクラッチ締結圧のオープンループ制御を、実スリップ回転が直ちに0にされるようなオープンループ制御としたから、
ロックアップクラッチの締結が相当に進行した時にオープンループ制御に切り換える場合において、ロックアップショックの懸念なしにロックアップ応答を大いに高めることができる。
【0035】
第8発明においてスリップ制御装置は、トルクコンバータの実スリップ回転と目標スリップ回転との間におけるスリップ回転偏差に応じロックアップクラッチの締結圧をフィードバック制御して実スリップ回転を目標スリップ回転に一致させる。
ところで、ロックアップクラッチを滑り結合させるべきスリップ制御領域からロックアップクラッチを完全締結させるべきロックアップ領域への移行と同時に、実スリップ回転が所定の時間低下勾配で0になるようスリップ回転偏差に代え固定のオープンループ制御用スリップ回転偏差を用い、前記ロックアップクラッチ締結圧の制御をオープンループ制御に切り換える。
【0036】
これがため第8発明においては、スリップ制御状態からロックアップ領域への移行と同時に、スリップ制御用のフィードバック制御ルーチンを利用したオープンループ制御に切り換えられることとなり、当該過渡期においても設計者の意図するロックアップ応答およびロックアップショックの低減を達成することができる。
また、スリップ制御状態からロックアップ状態への切り換え過渡期のためのフィードバック制御ルーチンを別に設定しないで、上記のごとく、設計者の意図するロックアップ応答およびロックアップショックの低減が得られるようにしたから、制御プログラム容量の増大に伴うROMの圧迫やプログラムの信頼性の低下を伴うことなしに当該作用効果を達成することができる。
合わせて、スリップ制御状態からロックアップ状態への切り換え過渡期のためのフィードバック制御ルーチンを別に設定しないことから、これと、スリップ制御用のフィードバック制御ルーチンとの間の切り換えもなく、当該切り換え時のショック対策用の面倒な初期値設定も不要であるなどの利点がある。
【0037】
第9発明においては、第8発明のようにフィードバック制御系のスリップ回転偏差を一定値に保持するに際し、固定の仮想スリップ回転を実スリップ回転として該仮想スリップ回転と前記目標スリップ回転との間における差をフィードバック制御系のスリップ回転偏差とするから、
第8発明とは別の対策により、スリップ制御用のフィードバック制御ルーチンの利用により上記オープンループ制御を実行し得るようにするという同様の作用効果を達成することができる。
【0038】
第10発明においては、第8発明または第9発明における前記フィードバック制御系の保持すべきスリップ回転偏差を、作動油温変化やロックアップクラッチの経時劣化によっても実スリップ回転の所定の時間低下勾配が補償されるよう、これら作動油温変化やロックアップクラッチの経時劣化に応じて異なる一定値としたから、
第8発明または第9発明のオープンループ制御によるロックアップクラッチの締結進行を作動油温変化やロックアップクラッチの経時劣化による影響を受けることなく、実スリップ回転の上記所定の時間低下勾配が補償されるようなものとすることができ、ロックアップの応答性およびロックアップショックの軽減を常時狙い通りのものに維持し得る。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0040】
図1は、本発明の一実施の形態になるトルクコンバータのスリップ制御装置を示し、トルクコンバータ2は周知であるため詳細な図示を省略したが、エンジンクランクシャフトに結合されてエンジン駆動されるトルクコンバータ入力要素としてのポンプインペラと、自動変速機用歯車変速機構の入力軸に結合されたトルクコンバータ出力要素としてのタービンランナと、これらポンプインペラおよびタービンランナ間を直結するロックアップクラッチ2cとを具備するロックアップ式トルクコンバータとする。
【0041】
ロックアップクラッチ2cの締結力は、その前後におけるアプライ圧PAとレリーズ圧PRの差圧(ロックアップクラッチ締結圧)により決まり、アプライ圧PAがレリーズ圧PRよりも低ければ、ロックアップクラッチ2cは釈放されてポンプインペラおよびタービンランナ間を直結せず、トルクコンバータ2をスリップ制限しないコンバータ状態で機能させる。
【0042】
アプライ圧PAがレリーズ圧PRよりも高い場合、その差圧に応じた力でロックアップクラッチ2cを締結させ、トルクコンバータ2をロックアップクラッチ2cの締結力に応じてスリップ制限するスリップ制御状態で機能させる。
【0043】
そして当該差圧が設定値よりも大きくなると、ロックアップクラッチ2cが完全締結されてポンプインペラおよびタービンランナ間の相対回転をなくし、トルクコンバータ2をロックアップ状態で機能させる。
【0044】
アプライ圧PAおよびレリーズ圧PRはスリップ制御弁11によりこれらを決定するものとし、スリップ制御弁11は、コントローラ12によりデューティ制御されるロックアップソレノイド13からの信号圧PSに応じてアプライ圧PAおよびレリーズ圧PRを制御するが、これらスリップ制御弁11およびロックアップソレノイド13を以下に説明する周知のものとする。
【0045】
即ち、先ずロックアップソレノイド13は一定のパイロット圧Ppを元圧として、コントローラ12からのソレノイド駆動デューティDの増大につれ信号圧PSを高くするものとする。
【0046】
一方でスリップ制御弁11は、上記の信号圧Pおよびフィードバックされたレリーズ圧Pを一方向に受けると共に、他方向にバネ11aのバネ力およびフィードバックされたアプライ圧Pを受け、信号圧Pの上昇につれて、アプライ圧Pとレリーズ圧Pとの間の差圧(P−P)で表されるロックアップクラッチ2cの締結圧を図2に示すように変化させるものとする。
【0047】
ここでロックアップクラッチ締結圧(P−P)の負値はP>Pによりトルクコンバータ2をコンバータ状態にすることを意味し、逆にロックアップクラッチ締結圧(P−P)が正である時は、その値が大きくなるにつれてロックアップクラッチ2cの締結容量が増大され、トルクコンバータ2のスリップ回転を大きく制限し、遂にはトルクコンバータ2をロックアップ状態にすることを意味する。
【0048】
そしてコントローラ12には、エンジン負荷を表すスロットル開度TVOを検出するスロットル開度センサ21からの信号と、
ポンプインペラの回転速度ωIR(エンジン回転数でもある)を検出するインペラ回転センサ22からの信号と、
タービンランナの回転速度ωTRを検出するタービン回転センサ23からの信号と、
自動変速機(トルクコンバータ2)の作動油温TEMPを検出する油温センサ24からの信号と、
変速機出力回転数(車速に相当する)Nを検出する変速機出力回転センサ25からの信号と、
ギヤ比i(=ωTR/N)を算出するようにしたギヤ比計算部26からの計算結果と、
電源電圧Vigを検出する電源電圧センサ27からの信号とをそれぞれ入力することとする。
【0049】
コントローラ12はこれら入力情報をもとに、図3〜図6に示す機能別ブロック線図に沿った演算により、ロックアップソレノイド13の駆動デューティDを決定して以下に詳述する所定のスリップ制御を行う。
図3のスリップ制御領域判定部30およびロックアップ過渡状態判定部50は、ポンプインペラ回転速度ωIRと、タービンランナ回転速度ωTRと、スロットル開度TVOと、変速機出力回転数Nと、作動油温TEMPと、ギヤ比iとを入力され、
これらを基に図7に示すスリップ制御領域判定兼ロックアップ過渡状態判定プログラムを実行して、図9に示すドライブスリップ制御(S/L)領域での運転中か、スリップ回転を全く制限しないコンバータ(C/V)領域での運転中か、スリップ回転を完全になくすべきロックアップ(L/U)領域での運転中かを判定すると共に、
ロックアップ(L/U)領域である場合において、如何なるロックアップ過渡状態であるのかを判定するものとする。
【0050】
先ず、スリップ制御領域判定部30が行うべき前者のスリップ制御領域判定プログラムを説明するに、図7のステップ31において、作動油温TEMPがスリップ制限可能な暖機後の油温範囲にあるのか否かを判定し、次いでステップ32においては、ギヤ比i(選択変速段)がスリップ制限可能なギヤ比範囲であるのか否かを判定する。
これらステップ31,32で作動油温TEMPがスリップ制限可能な油温範囲であり、且つ、ギヤ比i(選択変速段)がスリップ制限可能なギヤ比範囲であると判定する場合、ステップ33において、図9のごとくに予め定めておいた領域マップを基に変速機出力回転数Nおよびスロットル開度TVOからドライブスリップ制御(S/L)領域での運転中か、コンバータ(C/V)領域での運転中か、ロックアップ(L/U)領域での運転中かをチェックする。
【0051】
図9においてコンバータ(C/V)領域は、トルクコンバータ2をロックアップクラッチ2cの釈放により、入出力要素間のスリップ回転が制限されないコンバータ状態で機能させるべきスリップ非制限領域を意味し、
ドライブスリップ制御(S/L)領域は、トルクコンバータ2をロックアップクラッチ2cの滑り結合により、入出力要素間のスリップ回転が後述する目標スリップ回転となるようなスリップ制御状態で機能させるべきスリップ制御領域を意味し、
ロックアップ(L/U)領域は、トルクコンバータ2をロックアップクラッチ2cの完全結合により、入出力要素間のスリップ回転が生じないロックアップ状態で機能させるべきスリップ皆無領域を意味するものとする。
そして、これらドライブスリップ制御(S/L)領域と、コンバータ(C/V)領域と、ロックアップ(L/U)領域との間には不感帯(ヒステリシス)を設定し、領域判定のハンチングを防止するものとする。
【0052】
図7のステップ33においてドライブスリップ制御(S/L)領域での運転中であると判定する場合、ステップ34において、このことを示すようにスリップ制御フラグFLAGを10にセットし、
ステップ33においてロックアップ(L/U)領域での運転中であると判定する場合、ステップ51〜57において、詳しくは後述するように何れの領域からロックアップ(L/U)領域に移行したものか、また如何なるロックアップ過渡状態であるのかを判定した後に、ステップ35において、当該ロックアップ(L/U)領域での運転中であることを示すようにスリップ制御フラグFLAGを11にセットし、
ステップ33においてコンバータ(C/V)領域での運転中であると判定する場合、ステップ36において、このことを示すようにスリップ制御フラグFLAGを01にセットする。
なお、ステップ31で作動油温TEMPがスリップ制限可能な油温範囲でないと判定したり、ステップ32でギヤ比i(選択変速段)がスリップ制限可能なギヤ比範囲でない判定する場合も、当然に制御をステップ36に進めてスリップ制御フラグFLAGを01にする。
かようにして決定されたスリップ制御フラグFLAGは、図3のスリップ回転制御部40に供給する。
【0053】
次に、ロックアップ過渡状態判定部50が行うべき後者のロックアップ過渡状態判定プログラムを説明するに、先ずステップ51において、スリップ制御領域判定部30(図3参照)の判定結果から当該ロックアップ(L/U)領域への移行がドライブスリップ制御(S/L)領域からの移行だったのか、コンバータ(C/V)領域からの移行だったのかを判定する。
コンバータ(C/V)領域からロックアップ(L/U)領域への移行であった場合は、ステップ52を選択し続けて当該領域移行によるロックアップ(L/U)領域であることを示すように制御切り換えフラグCHNGを00に保持した後に制御を上記のステップ35に進める。
【0054】
ステップ51においてドライブスリップ制御(S/L)領域からロックアップ(L/U)領域への移行であると判定する場合、ステップ53において、ポンプインペラ回転速度ωIRとタービンランナ回転速度ωTRとの間の差であるトルクコンバータ2の実スリップ回転ωSLPRが0であるか否かによりロックアップ(L/U)が完了したか否かを判定する。
なお当該ロックアップ(L/U)の完了は、上記の実スリップ回転ωSLPRによる判定に代えて、ロックアップクラッチ締結圧(P−P)や、これを決定するロックアップソレノイド13へのデューティDから判定してもよい。
【0055】
ロックアップ(L/U)が完了していなければステップ54において、実スリップ回転ωSLPRが図15に例示する制御ループ切り換え判定用スリップ回転設定値ωSLPCHG未満になったか否かによりオープンループ制御条件が成立したか否かをチェックする。
ここで制御ループ切り換え判定用スリップ回転設定値ωSLPCHGは、実スリップ回転ωSLPRの検出精度で決まるが、フィードバック制御が可能な下限スリップ回転に定める。
しかして制御ループ切り換え判定用スリップ回転設定値ωSLPCHGは、低温時やロックアップクラッチの経時劣化が激しい時ほど大きくし、これにより、低温時やロックアップクラッチの経時劣化が激しい時は早めにフィードバック制御からオープンループ制御に切り換えるようにし、もって当該低温時やロックアップクラッチの経時劣化が激しい時にフィードバック制御を低スリップ回転中も行うとロックアップクラッチの締結力が不安定故に締結ショックが大きくなるという問題を回避することとする。
【0056】
ステップ54で未だオープンループ制御条件が成立していないと判定する時は、このことを示すようにステップ55において制御切り換えフラグCHNGを01にし、オープンループ制御条件が成立した時にこのことを示すようにステップ56で制御切り換えフラグCHNGを10にする。
ステップ53でトルクコンバータのロックアップ(L/U)が完了したと判定する場合、制御をステップ57に進めてこのことを示すように制御切り換えフラグCHNGを11にする。
なお、ステップ55〜57の実行後はそれぞれ、制御をステップ35に進める。
また、上記のように設定した制御切り換えフラグCHNGは、図3のスリップ回転制御部40に供給する。
【0057】
スリップ回転制御部40は図4に明示するように、スリップ回転指令値算出部410と、スリップ回転ゲイン算出部420と、目標コンバータトルク算出部430と、エンジン出力トルク算出部440と、目標ロックアップクラッチ締結容量算出部450と、ロックアップクラッチ締結圧指令値算出部460と、ロックアップソレノイド駆動信号算出部470と、スリップ回転指令初期値算出部480とで構成し、
これら算出部での演算によりロックアップソレノイド13の駆動デューティDを決定して以下に詳述する所定のスリップ制御を行うものとする。
【0058】
ここでスリップ回転指令値算出部410は図5に示すような構成とし、
同図における目標スリップ回転算出部411は、変速比iおよび作動油温TEMPごとに実験などで予め図10に示すように設定しておいた、車両運転状態に応じた目標スリップ回転ωSLPTに関するマップをもとに、タービンランナ回転速度ωTRおよびスロットル開度TVOから目標スリップ回転ωSLPTを求める。
ここで目標スリップ回転ωSLPTは、トルク変動や車室内こもり音が発生しない範囲内で最も少ないところに実験などで求めておき、当該トルク変動や車室内こもり音対策のためにタービンランナ回転速度ωTRが低い時ほど目標スリップ回転ωSLPTを大きな値とする。
また、エンジン負荷を表すスロットル開度TVOが大きい時ほど車両が大きな駆動力を要求していることから、そして、この要求駆動力に対してトルクコンバータから変速機への入力トルクがスリップ制御中に不足することのないようにすべく目標スリップ回転ωSLPTはスロットル開度TVOが大きい時ほど大きな値に設定する。
【0059】
図5における実スリップ回転算出部412は、ポンプインペラ回転速度ωIRからタービンランナ回転速度をωTRを差し引いてトルクコンバータ2の実スリップ回転ωSLPR(=ωIR−ωTR)を算出する。
【0060】
またスリップ回転偏差算出部413は、トルクコンバータのスリップ回転制御が基本的に実スリップ回転ωSLPRを目標スリップ回転ωSLPTに一致させることであるから、当該目標スリップ回転ωSLPTと実スリップ回転ωSLPRとの間のスリップ回転偏差ωSLPER を、
ωSLPER =ωSLPT−ωSLPR ・・・(1)
により算出する。
【0061】
更に図5のフィードバック補償器414は、基本的にはその伝達関数GCNT (s)を基に、スリップ回転偏差ωSLPER をなくして実スリップ回転ωSLPRを目標スリップ回転ωSLPTに一致させるための時々刻々(t)のスリップ回転指令値ωSLPCを以下の演算により算出する。
ωSLPC(t)=GCNT (s)・ωSLPER (t)・・・(2)
しかしてフィードバック補償器414は、後で図8を参照しつつ図4に示すスリップ回転制御部40の全体作用を説明するところより明らかなごとく、前記スリップ制御フラグFLAGからスリップ制御が開始された直後であると判断する時は特に、図4のスリップ回転指令初期値算出部480で後述のごとく算出した初期値ωSLPC0 をスリップ回転指令値ωSLPCとする。
【0062】
スリップ回転指令値算出部410には更に図5に示すように、固定目標スリップ回転設定部415および固定スリップ回転偏差設定部416を設ける。
前者のスリップ回転指令値算出部410は図15に示すように、ドライブスリップ制御(S/L)領域からロックアップ(L/U)領域への移行過渡期においてロックアップを進行させるに際し、当初はスリップ制御中に用いたフィードバック制御を継続的に使用して当該ロックアップの進行を行わせるための固定のロックアップ過渡期用目標スリップ回転ωSLPTLUをスリップ回転偏差算出部413に入力するものとする。
ここで上記のロックアップ過渡期用目標スリップ回転ωSLPTLUは、図15に示すように前記した制御ループ切り換え判定用スリップ回転設定値ωSLPCHGよりも小さくし、フィードバック制御によるロックアップの進行速度が適切になるような値とする。
【0063】
スリップ回転偏差算出部413は前記制御切り換えフラグCHNGをも入力され、図15に示すようにCHNG=01の間、つまり領域移行瞬時tからオープンループ制御条件が成立してCHNG=10になる瞬時tまでの当初において、ロックアップ過渡期用目標スリップ回転ωSLPTLUを算出部411からの目標スリップ回転ωSLPTの代わりに用い、これに基づくフィードバック制御の継続によりロックアップの進行を行わせるものとする。
【0064】
後者の固定スリップ回転偏差設定部416は、上記に続くべきロックアップの更なる進行に際し、同じくスリップ制御中に用いたフィードバック制御を継続的に使用して当該ロックアップをオープンループ制御により進行させるための固定のオープンループ制御用スリップ回転偏差ωSLPER0をフィードバック補償器414に入力するものとする。
フィードバック補償器414は前記制御切り換えフラグCHNGをも入力され、図15に示すようにCHNG=10の間、つまりオープンループ制御条件が成立してCHNG=10になった瞬時tからロックアップ完了瞬時tまでの後期において、固定のオープンループ制御用スリップ回転偏差ωSLPER0を算出部413からのスリップ回転偏差ωSLPER の代わりに用い、これにより実質上オープンループ制御によりスリップ回転指令値ωSLPCを求めてロックアップの進行を行わせるものとする。
【0065】
ここで固定のオープンループ制御用スリップ回転偏差ωSLPER0は、上記オープンループ制御中における希望のロックアップ進行速度に応じて決定する。しかし、ロックアップ進行速度は作動油温TEMPの変化やロックアップクラッチの経時劣化によっても変化し、当該ロックアップ進行速度の変化が生じないようオープンループ制御用スリップ回転偏差ωSLPER0は、作動油温TEMPやロックアップクラッチの劣化度ごとの固定値とするのが良い。なお、固定のオープンループ制御用スリップ回転偏差ωSLPER0を設定するに際しては、算出部412からの実スリップ回転ωSLPRに代えて、固定の仮想スリップ回転を実スリップ回転として用い、スリップ回転偏差算出部413がこの固定の仮想スリップ回転と目標スリップ回転ωSLPT(ロックアップ領域故に0)との間における差をオープンループ制御用スリップ回転偏差ωSLPER0とするようにしてもよい。
【0066】
図4におけるスリップ回転ゲイン算出部420は、図11に対応したマップを基にタービンランナ回転速度ωTRからスリップ回転ゲインgSLP を検索によって求める。
ここでスリップ回転ゲインgSLP について補足説明するに、トルクコンバータの伝動性能から予め求め得る、コンバータトルクTCNV (トルクコンバータの流体伝動による伝達トルク)と、トルクコンバータのスリップ回転ωSLP と、タービンランナ回転速度ωTRとの関係は、コンバータトルクTCNV に対するスリップ回転ωSLP の比をスリップ回転ゲインgSLP と定義すると、当該スリップ回転ゲインgSLP は次式で表される。
SLP =ωSLP /TCNV ・・・(3)
そして、かようにスリップ回転ゲインgSLP を定義すると、このスリップ回転ゲインgSLP は図11に実線で例示したごとくタービンランナ回転速度ωTRに応じて変化し、これを基に上記のごとくタービンランナ回転速度ωTRからスリップ回転ゲインgSLP を検索することができる。
【0067】
図4の目標コンバータトルク算出部430では、かようにして検索したスリップ回転ゲインgSLP を上式におけるgSLP に入力し、また上式におけるωSLP に前記演算部410からのスリップ回転指令値ωSLPCを当てはめることにより、タービン回転速度ωTRのもとでスリップ回転指令値ωSLPCを達成するための目標とすべきコンバータトルクTCNV
CNV (t)=ωSLPC(t)/gSLP ・・・(4)
の演算により算出する。
【0068】
またエンジン出力トルク推定部440では、先ず図12に例示したエンジン全性能線図を用いてポンプインペラ回転速度ωIR(エンジン回転数)およびスロットル開度TVOから、エンジン出力トルクの定常値TESを検索し、次いでこれを、エンジンの動的な遅れに対応した時定数tEDのフィルターに通してフィルター処理し、当該フィルター処理後の一層実際値に近い次式で表されるエンジン出力トルクtEH
EH(t)=〔1/(tED・S+1)〕TES(t) ・・・(5)
を推定して求める。
さらに目標ロックアップクラッチ締結容量算出部450では、エンジン出力トルクTEHから目標コンバータトルクTCNV を減算して目標ロックアップクラッチ締結容量TLUC を求める。
LUC (t)=TEH(t)−TCNV (t) ・・・(6)
【0069】
図4において次のロックアップクラッチ締結圧指令値算出部460では、上記の目標ロックアップクラッチ締結容量TLUC を達成するためのロックアップクラッチ締結圧指令値PLUC を、図13に対応するマップから検索する。
ここで図13は、トルクコンバータごとにロックアップクラッチの締結圧PLUと、ロックアップクラッチ締結容量TLUとの関係を予め実験により求めておき、目標ロックアップクラッチ締結容量TLUC に対応するロックアップクラッチ締結圧指令値PLUC を検索することにより目的を達することができる。
【0070】
次のソレノイド駆動信号算出部470では、電源電圧Vigごとの図14に例示するマップをもとに実際のロックアップクラッチ締結圧PLUをロックアップクラッチ締結圧指令値PLUC にするためのロックアップソレノイド駆動デューティDを決定し、これを図1のロックアップソレノイド13に出力して、狙い通りに実スリップ回転ωSLPRを過渡的にはスリップ回転指令値ωSLPCにし、定常的には目標スリップ回転ωSLPTに一致させるトルクコンバータのスリップ制御が可能である。
【0071】
次に、図4のスリップ回転指令初期値算出部480について説明するに、これは図6に示すように構成する。
当該構成の説明に先立ち、図5のフィードバック補償器414がスリップ回転指令値ωSLPCを求める時の前記(2)式を実際の制御システムに適用する場合、例えば以下の状態方程式で表すことが可能である。
(d/dt)x(t)=ACNT x(t)+BCNT ωSLPER (t)・・・(7)
ωSLPC(0)=ωSLPC0 ・・・・・・(8)
ωSLPC(t)=CCNT x(t)+DCNT ωSLPER (t)・・・(9)
但し、x(t): n次元状態ベクトル
A : n×n次の行列
B : n×1次の行列
C : 1×n次の行列
D : 1×1次の行列
ここで(8)式はスリップ回転指令値ωSLPCの初期値ωSLPC0 を設定するための式を示し、ここではコンバータ状態またはロックアップ状態からスリップ制御を開始する場合において当該初期化を以下のごとくに行うものとする。
【0072】
スリップ回転指令初期値算出部480はこの初期化によりスリップ回転指令値ωSLPCの初期値ωSLPC0 を定めて図4のスリップ回転指令値算出部410、詳しくは図5のフィードバック補償器414に出力するもので、
図6に示すように、ソレノイド駆動信号逆演算部481と、ロックアップクラッチ締結圧指令値逆演算部482と、目標ロックアップクラッチ締結容量逆演算部483と、目標コンバータトルク逆演算部484とにより構成し、
これら演算部481〜484は、図4における算出部430,450,460,470の逆系を成すものとする。
【0073】
ソレノイド駆動信号逆演算部481は、ロックアップソレノイド駆動デューティ初期値Dおよび電源電圧Vigを入力され、図4のロックアップソレノイド駆動信号算出部470とは逆の演算により、つまり、図14に示す電源電圧Vigごとのマップをもとにソレノイド駆動デューティ初期値Dからロックアップクラッチ締結圧指令初期値PLUC0を逆引き検索して求める。
ここでロックアップソレノイド駆動デューティ初期値Dは、コンバータ状態からスリップ制御が開始される場合、ロックアップクラッチの締結ショックが問題とならない許容下限スリップ回転よりも実スリップ回転が大きくなるのを補償するような値とし、好ましくは実スリップ回転が当該許容下限スリップ回転に一致するような値に定めるのが良い。
またロックアップ状態からスリップ制御が開始される場合、ロックアップソレノイド駆動デューティ初期値Dは、実スリップ回転が0になるような値に定めることとする。
【0074】
ロックアップクラッチ締結圧指令値逆演算部482は、上記のロックアップクラッチ締結圧指令初期値PLUC0を入力され、図4のロックアップクラッチ締結圧指令値算出部460とは逆の演算により、つまり図13に示すマップをもとにロックアップクラッチ締結圧指令初期値PLUC0から目標ロックアップクラッチ締結容量初期値TLUC0を逆引き検索して求める。
【0075】
目標ロックアップクラッチ締結容量逆演算部483は、上記の目標ロックアップクラッチ締結容量初期値TLUC0およびエンジン出力トルク推定値TEHを入力され、図4の目標ロックアップクラッチ締結容量算出部450とは逆の演算により、つまり、前記(6)式から得られる次式により目標コンバータトルク初期値TCNV0を算出する。
CNV0(t)=TEH(t)−TLUC0 ・・・(10)
【0076】
目標コンバータトルク逆演算部484は、上記の目標コンバータトルク初期値TCNV0およびスリップ回転ゲインgSLP を入力され、図4の目標コンバータトルク算出部430とは逆の演算により、つまり、前記(4)式から得られる次式によりスリップ回転指令初期値ωSLPC0 を算出する。
ωSLPC0 (t)=gSLP (t)/TCNV0(t) ・・・(11)
なお、当該スリップ回転指令初期値ωSLPC0 を求める時の元になっているロックアップソレノイド駆動デューティ初期値Dを前記した通り、コンバータ状態からスリップ制御が開始される場合は実スリップ回転が許容下限スリップ回転となるような値、または実スリップ回転が許容下限スリップ回転よりも大きくなるような値に定め、ロックアップ状態からスリップ制御が開始される場合は実スリップ回転が0になるような値に定めるというように異ならせたから、スリップ回転指令初期値ωSLPC0 は2種類が存在し、
以下では、コンバータ状態からスリップ制御が開始される場合のデューティ初期値Dに対応したスリップ回転指令初期値ωSLPC0 を特にωSLPC0(C/V)により表し、ロックアップ状態からスリップ制御が開始される場合のデューティ初期値Dに対応したスリップ回転指令初期値ωSLPC0 を特にωSLPC0(L/U)で表すこととする。
【0077】
ここで、図4に全体を示すスリップ回転制御部40のスリップ制御作用(ロックアップソレノイド駆動デューティDの決定)を図8につき付言するに、先ずステップ41において、前記のスリップ制御フラグFLAGが10か否かにより、スリップ制御(S/L)領域であるか否かを判定する。
スリップ制御フラグFLAGが10であるなら、つまりスリップ制御(S/L)領域での運転中なら、ステップ42でスリップ制御フラグFLAGが10になって1回目か否かの判定によりスリップ非制御状態(コンバータ状態またはロックアップ状態)からスリップ制御が開始された直後か否かをチェックする。
【0078】
スリップ制御開始直後であればステップ43において、トルクコンバータが現在コンバータ状態かロックアップ状態かを判定し、これにより当該スリップ制御の開始がコンバータ状態からのものであるのか、ロックアップ状態からのものであるのかをチェックする。
コンバータ状態からスリップ制御が開始されたものである場合、ステップ44においてスリップ回転指令値ωSLPCに前記したコンバータ状態用の初期値ωSLPC0(C/V)をセットし、ロックアップ状態からスリップ制御が開始されたものである場合、ステップ45においてスリップ回転指令値ωSLPCに前記したロックアップ状態用の初期値ωSLPC0(L/U)をセットする。
次いでステップ46において、上記のように初期設定したスリップ回転指令値ωSLPCを用いてスリップ制御を開始させる。
つまり当該初期設定したスリップ回転指令値ωSLPCを図4の目標コンバータトルク算出部430に入力し、以後、算出部450,460,470での前述した順次の演算によりロックアップソレノイド駆動デューティDを決定し、これによりスリップ制御を開始させる。
【0079】
以後はステップ42がステップ61,62,47を順次選択し、ここで上記の初期設定したスリップ回転指令値ωSLPCに代え、前記(1)式により求めたスリップ回転偏差ωSLPER (ステップ61)を基に前記(2)式から得られるスリップ回転指令値ωSLPC(ステップ62)を図4の目標コンバータトルク算出部430に入力することで(ステップ47)、実スリップ回転ωSLPRを目標スリップ回転ωSLPTに所定の応答で向かわせるフィードバック型式のスリップ制御状態を継続する。
【0080】
ステップ41においてスリップ制御フラグFLAGが10でない(スリップ制御領域でない)と判定した場合は、ステップ48においてスリップ制御フラグFLAGが11であるか否かによりロックアップ(L/U)領域であるのか、コンバータ(C/V)領域であるのかを判定する。
コンバータ(C/V)領域なら、ステップ50においてロックアップソレノイド駆動デューティDを所定の時間変化勾配で減少させることによりトルクコンバータをコンバータ状態にする。
【0081】
ロックアップ(L/U)領域ならステップ63,64において、図7で設定した前記制御切り換えフラグCHNGが00、01、10、11の何れかであるのかをチェックする。
CHNG=00なら、つまり当該ロックアップ(L/U)領域がコンバータ(C/V)領域から移行したものである場合、ステップ65においてロックアップソレノイド駆動デューティDを所定の時間変化勾配で上昇させることによりトルクコンバータをコンバータ状態からロックアップ状態にする通常のロックアップ制御を実行する。
【0082】
CHNG=00以外である場合において、つまり当該ロックアップ(L/U)領域がスリップ制御(S/L)領域からのものである場合において、ステップ64がCHNG=01であると判定する時は、つまり未だオープンループ制御によるロックアップ進行を開始させるべきでないロックアップ過渡中の初期であると判定する時は、ステップ66において、図5の固定目標スリップ回転設定部415から出力されるロックアップ過渡期用目標スリップ回転ωSLPTLUを目標スリップ回転ωSLPTとし、これを基にステップ61,62,47によるフィードバック制御を実行する。
当該ステップ61,62,47によるフィードバック制御は、前記したスリップ制御(S/L)領域でのスリップ制御のためのもので、これを引き続き用いたフィードバック制御により実スリップ回転ωSLPRを図15に実線で示すごとく瞬時t以後ロックアップ過渡期用目標スリップ回転ωSLPTLUに向かわせるロックアップ制御が可能である。
【0083】
ステップ64がCHNG=10であると判定する時は、つまりオープンループ制御によるロックアップ進行を開始させるべき図15の瞬時tに至ったと判定する時は、ステップ67において、図5の固定スリップ回転偏差設定部416から出力される固定のオープンループ制御用スリップ回転偏差ωSLPER0をスリップ回転偏差ωSLPER とし、これを基にステップ62,47による制御を引き続き実行する。
ところで上記のオープンループ制御用スリップ回転偏差ωSLPER0が固定値であることから、上記の制御は実質上、スリップ制御のためのフィードバック制御ループ(ステップ62,47)を用いると雖も、オープンループ制御によりロックアップを進行させることとなり、実スリップ回転ωSLPRを図15に実線で示すごとく瞬時t以後、オープンループ制御用スリップ回転偏差ωSLPER0で決まる一定勾配で0に向かわせるロックアップ制御が可能である。
【0084】
ステップ64でCHNG=11と判定する時、つまり図15の瞬時tにおけるようにロックアップ(L/U)が完了したと判定する場合、ステップ49においてロックアップソレノイド駆動デューティDを上限値に保持してトルクコンバータのロックアップ状態を継続する。
【0085】
ところで本実施の形態においては、スリップ制御(S/L)領域からロックアップ(L/U)領域への移行時も、かかる領域移行用の目標スリップ回転ωSLPTLUを目標スリップ回転ωSLPTとして(図8のステップ66)、スリップ制御(S/L)領域でのスリップ制御と同様にロックアップクラッチ締結圧のフィードバック制御を継続的に実行し、
かかる継続的に実行するフィードバック制御によりロックアップクラッチの締結が設定値まで進行した(実スリップ回転ωSLPRが設定値ωSLPCHG未満に低下した)後は、上記フィードバック制御におけるスリップ回転偏差ωSLPER を固定のオープンループ制御用スリップ回転偏差ωSLPER0として(図8のステップ67)実質上、実スリップ回転ωSLPRが固定のオープンループ制御用スリップ回転偏差ωSLPER0に応じた時間変化勾配で0になるようロックアップクラッチ締結圧の制御をオープンループ制御に切り換えるようにしたから、
スリップ制御状態からロックアップ状態への切り換え過渡期に、当初はスリップ制御用のフィードバック制御ルーチンを継続的に実行し、その後はオープンループ制御に切り換えることとなり、スリップ制御状態からロックアップ状態への切り換え過渡期のためのフィードバック制御ルーチンを別に設定することなしに、当該過渡期においても設計者の意図するロックアップ応答およびロックアップショックの低減を達成することができる。
従ってこの目的を、制御プログラム容量の増大に伴うROMの圧迫やプログラムの信頼性の低下を伴うことなしに達成することができる。
合わせて、上記の通りスリップ制御状態からロックアップ状態への切り換え過渡期のためのフィードバック制御ルーチンを別に設定しないことから、これと、スリップ制御用のフィードバック制御ルーチンとの間の切り換えも存在せず、従って当該切り換え時のショック対策用の面倒な初期値設定も不要であるなどの利点がある。
【0086】
また本実施の形態では、上記ロックアップクラッチ締結圧のオープンループ制御の実現に際し、前記フィードバック制御の系におけるスリップ回転偏差ωSLPER を固定のオープンループ制御用スリップ回転偏差ωSLPER0に保持することによりこれを実現するようにしたから、
当該オープンループ制御についてもこれを、スリップ制御用のフィードバック制御ルーチンの利用により実行することとなり、上記の作用効果を更に顕著なものにすることができる。
【0087】
なお上記の実施の形態においては、図15に実線で示すように実スリップ回転ωSLPRが一定の時間変化勾配で0に向け低下するようにロックアップクラッチ締結圧のオープンループ制御を行うこととしたが、
制御ループ切り換え判定用スリップ回転設定値ωSLPCHGを十分に小さくし得る場合には、図16に実線で示すごとくフィードバック制御からオープンループ制御への切り換え瞬時tに実スリップ回転ωSLPRが直ちに0にされるようなオープンループ制御にすることができる。
この場合、ロックアップクラッチの締結が相当に進行していることから、実スリップ回転ωSLPRが直ちに0にされるようなオープンループ制御でもロックアップショックを生ずる懸念がないし、何分にもロックアップ応答を大いに高めることができる。
【0088】
また本発明においては、図15や図16に示す実施の形態に代えて図17のような実施形態にすることでも前記したと同様の目的を達成することができる。
つまり、スリップ制御(S/L)領域からロックアップ(L/U)領域への移行瞬時tに、スリップ制御(S/L)領域でのスリップ制御におけるスリップ回転偏差ωSLPER を固定のオープンループ制御用スリップ回転偏差ωSLPER0として実質上、実スリップ回転ωSLPRが領域移行瞬時tに直ちに固定のオープンループ制御用スリップ回転偏差ωSLPER0に応じた一定の時間変化勾配で0に向け低下するようロックアップクラッチ締結圧の制御をオープンループ制御に切り換えることができる。
この場合も図15や図16に示す実施の形態におけると同様、スリップ制御状態からロックアップ状態への切り換え過渡期のためのフィードバック制御ルーチンを別に設定することなしに、当該過渡期においても設計者の意図するロックアップ応答およびロックアップショックの低減を達成することができ、この目的を、制御プログラム容量の増大に伴うROMの圧迫やプログラムの信頼性の低下を伴うことなしに達成することができる。
【0089】
また本実施の形態においても、上記ロックアップクラッチ締結圧のオープンループ制御の実現に際し、前記フィードバック制御の系におけるスリップ回転偏差ωSLPER を固定のオープンループ制御用スリップ回転偏差ωSLPER0に保持することによりこれを実現するようにしたから、
オープンループ制御と雖もこれを、スリップ制御用のフィードバック制御ルーチンの利用により実行することができ、上記の作用効果を更に顕著なものにすることができる。
【0090】
なお本実施の形態においても、上記のようにフィードバック制御系のスリップ回転偏差ωSLPER を一定値ωSLPER0に保持するに際し、前記したと同じく固定の仮想スリップ回転を実スリップ回転として該仮想スリップ回転と前記目標スリップ回転との間における差をフィードバック制御系のスリップ回転偏差にしてもよいこと勿論である。
【0091】
また固定のオープンループ制御用スリップ回転偏差ωSLPER0を、作動油温変化やロックアップクラッチの経時劣化によっても実スリップ回転ωSLPRの図17に例示する所定の時間低下勾配が補償されるよう、これら作動油温変化やロックアップクラッチの経時劣化に応じて異なる一定値とすれば、
ロックアップクラッチの締結進行を作動油温変化やロックアップクラッチの経時劣化による影響を受けることなく、実スリップ回転の上記所定の時間低下勾配が補償されて、ロックアップの応答性およびロックアップショックの軽減を常時狙い通りのものに維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態になるスリップ制御装置を具えたトルクコンバータの制御システムを示す概略系統図である。
【図2】ロックアップソレノイドからの信号圧と、ロックアップクラッチ締結圧との関係を示す線図である。
【図3】同実施の形態においてコントローラが実行するスリップ制御の機能別ブロック線図である。
【図4】同機能別ブロック図におけるスリップ回転制御部に関した詳細な機能別ブロック線図である。
【図5】図4の機能別ブロック図におけるスリップ回転指令値算出部の更に詳細な機能別ブロック線図である。
【図6】図4の機能別ブロック図におけるスリップ回転指令初期値算出部に関した更に詳細な機能別ブロック線図である。
【図7】図3におけるスリップ制御領域判定部およびロックアップ過渡状態判定部が実行して、トルクコンバータをコンバータ状態にすべき運転状態であるのか、スリップ制御すべき運転状態であるのか、ロックアップすべき運転状態であるのかを判定したり、スリップ制御状態からロックアップ状態への移行過渡期であるのを判定するプログラムを示すフローチャートである。
【図8】図3におけるスリップ回転制御部が実行するスリップ制御プログラムを示すフローチャートである。
【図9】トルクコンバータをコンバータ状態にすべき領域、スリップ制御すべき領域、およびロックアップ状態にすべき領域を示す領域線図である。
【図10】トルクコンバータの目標スリップ回転を例示する特性線図である。
【図11】トルクコンバータのタービン回転速度に対するスリップ回転ゲインの関係を示す特性線図である。
【図12】エンジンのスロットル開度と、回転数と、出力トルクとの関係を示す全性性能線図である。
【図13】ロックアップクラッチの締結圧と、締結容量との関係を例示するロックアップクラッチの伝動特性図である。
【図14】ロックアップクラッチの締結圧と、ロックアップソレノイド駆動デューティとの関係を例示する特性図である。
【図15】図1〜図8に示す実施の形態がスリップ制御状態からロックアップ状態への移行過渡期において実行するロックアップ制御の動作を実スリップ回転の時系列変化として示すタイムチャートである。
【図16】本発明の他の実施の形態を示す、図15と同様なロックアップ制御の動作タイムチャートである。
【図17】本発明の更に他の実施の形態を示す、図15と同様なロックアップ制御の動作タイムチャートである。
【符号の説明】
2 トルクコンバータ
2c ロックアップクラッチ
11 スリップ制御弁
12 コントローラ
13 ロックアップソレノイド
21 スロットル開度センサ
22 インペラ回転センサ
23 タービン回転センサ
24 油温センサ
25 変速機出力回転センサ
26 ギヤ比計算部
27 電源電圧センサ
30 スリップ制御領域判定部
40 スリップ回転制御部
50 ロックアップ過渡状態判定部
410 スリップ回転指令値算出部
411 目標スリップ回転算出部
412 実スリップ回転算出部
413 スリップ回転偏差算出部
414 フィードバック補償器
415 固定目標スリップ回転設定部
416 固定スリップ回転偏差設定部
420 スリップ回転ゲイン算出部
430 目標コンバータトルク算出部
440 エンジン出力トルク推定部
450 目標ロックアップクラッチ締結容量算出部
460 ロックアップクラッチ締結圧指令値算出部
470 ロックアップソレノイド駆動信号算出部
480 スリップ回転指令初期値算出部
481 ソレノイド駆動信号逆演算部
482 ロックアップクラッチ締結圧指令値逆演算部
483 目標ロックアップクラッチ締結容量逆演算部
484 目標コンバータトルク逆演算部

Claims (10)

  1. トルクコンバータの入出力要素間における実スリップ回転をロックアップクラッチの締結により制限可能で、この実スリップ回転と目標スリップ回転との間におけるスリップ回転偏差に応じ前記ロックアップクラッチの締結圧をフィードバック制御して実スリップ回転を目標スリップ回転にするための装置において、
    前記ロックアップクラッチを滑り結合させるべきスリップ制御領域から該ロックアップクラッチを完全締結させるべきロックアップ領域への移行時も、当該領域移行用の目標スリップ回転を前記目標スリップ回転として前記ロックアップクラッチ締結圧のフィードバック制御を継続的に実行し、
    該フィードバック制御によりロックアップクラッチの締結が設定値まで進行した後は、前記スリップ回転偏差に代え固定のオープンループ制御用スリップ回転偏差を用い、前記ロックアップクラッチをロックアップ状態にするために、前記実スリップ回転を任意の態様で0になるようにし、その後該ロックアップ状態が継続するよう前記ロックアップクラッチ締結圧の制御をオープンループ制御に切り換える構成にしたことを特徴とするトルクコンバータのスリップ制御装置。
  2. 請求項1において、前記実スリップ回転が設定スリップ回転まで低下した時にロックアップクラッチの締結が設定値まで進行したとして、前記ロックアップクラッチ締結圧のオープンループ制御への切り換えを行うよう構成したことを特徴とするトルクコンバータのスリップ制御装置。
  3. 請求項2において、前記設定スリップ回転を、作動油温が低い時ほど、またロックアップクラッチの経時劣化が激しい時ほど大きくして、低温時やロックアップクラッチの劣化時でもロックアップクラッチの締結ショックが大きくなることのないようにしたことを特徴とするトルクコンバータのスリップ制御装置。
  4. 請求項1乃至3のいずれか1項において、前記ロックアップクラッチ締結圧のオープンループ制御は、前記フィードバック制御の系における前記スリップ回転偏差を一定値に保持することにより実現するよう構成したことを特徴とすることを特徴とするトルクコンバータのスリップ制御装置。
  5. 請求項4において、固定の仮想スリップ回転を前記実スリップ回転として該仮想スリップ回転と前記目標スリップ回転との間における差を前記フィードバック制御系のスリップ回転偏差とすることにより、該スリップ回転偏差を一定値に保持するよう構成したことを特徴とすることを特徴とするトルクコンバータのスリップ制御装置。
  6. 請求項4または5において、前記フィードバック制御系の保持すべきスリップ回転偏差を、作動油温変化やロックアップクラッチの経時劣化による前記実スリップ回転の時間低下勾配の変化が生じないよう、これら作動油温変化やロックアップクラッチの経時劣化に応じて異なる一定値とする構成にしたことを特徴とすることを特徴とするトルクコンバータのスリップ制御装置。
  7. 請求項1乃至3のいずれか1項において、前記ロックアップクラッチ締結圧のオープンループ制御を、前記実スリップ回転が直ちに0にされるようなオープンループ制御としたことを特徴とするトルクコンバータのスリップ制御装置。
  8. トルクコンバータの入出力要素間における実スリップ回転をロックアップクラッチの締結により制限可能で、この実スリップ回転と目標スリップ回転との間におけるスリップ回転偏差に応じ前記ロックアップクラッチの締結圧をフィードバック制御して実スリップ回転を目標スリップ回転にするための装置において、
    前記ロックアップクラッチを滑り結合させるべきスリップ制御領域から該ロックアップクラッチを完全締結させるべきロックアップ領域への移行と同時に、前記実スリップ回転が所定の時間低下勾配で0になるよう前記スリップ回転偏差に代え固定のオープンループ制御用スリップ回転偏差を用い、前記ロックアップクラッチ締結圧の制御をオープンループ制御に切り換える構成にしたことを特徴とするトルクコンバータのスリップ制御装置。
  9. 請求項8において、固定の仮想スリップ回転を前記実スリップ回転として該仮想スリップ回転と前記目標スリップ回転との間における差を前記フィードバック制御系のスリップ回転偏差とすることにより、該スリップ回転偏差を一定値に保持するよう構成したことを特徴とするトルクコンバータのスリップ制御装置。
  10. 請求項8または9において、前記フィードバック制御系の保持すべきスリップ回転偏差を、作動油温変化やロックアップクラッチの経時劣化によっても前記実スリップ回転の所定の時間低下勾配が補償されるよう、これら作動油温変化やロックアップクラッチの経時劣化に応じて異なる一定値とするよう構成したことを特徴とするトルクコンバータのスリップ制御装置。
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