JPH09287658A - 自動変速機のロックアップ制御装置 - Google Patents

自動変速機のロックアップ制御装置

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JPH09287658A
JPH09287658A JP12278796A JP12278796A JPH09287658A JP H09287658 A JPH09287658 A JP H09287658A JP 12278796 A JP12278796 A JP 12278796A JP 12278796 A JP12278796 A JP 12278796A JP H09287658 A JPH09287658 A JP H09287658A
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slip
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vibration
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ジャダー振動の発生を検知した後に目標スリ
ップ回転量を変更することで、スリップ制御の効果の減
少を最小限に抑えつつ、ジャダー振動の発生を確実に防
止することができる自動変速機のロックアップ制御装置
を提供する。 【解決手段】 内燃エンジンが所定の運転領域で運転さ
れ、ロックアップ制御装置により摩擦式クラッチのスリ
ップ量が目標スリップ量近傍に制御されているときに、
振動検出手段によりジャダー振動が検出された場合に
は、目標スリップ量変更手段によって目標スリップ量が
自動的に変更されるので、ジャダー振動の発生原因であ
る摩擦材と作動油の特性が異なる領域であってもスリッ
プ制御を行うように自動変速機のロックアップ制御装置
を構成した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、エンジンと自動
変速機とを直結するためのロックアップクラッチを備え
た車両における自動変速機のロックアップ制御装置に関
する。
【0002】
【従来の技術】従来、ロックアップクラッチ付トルクコ
ンバータやロックアップクラッチ付フルードカップリン
グを搭載した車両のように、エンジンと自動変速機とを
直結するためのロックアップクラッチを備えた車両が公
知である。
【0003】このような車両では、エンジンの低回転領
域におけるトルクの脈動を吸収するため、或は、エンジ
ン回転速度をフューエルカット回転速度よりも可及的に
高くして燃料カット領域を拡大するために、ロックアッ
プクラッチのスリップ量を目標スリップ量に維持するス
リップ制御を実行するスリップ制御手段が設けられてい
る。
【0004】しかしながら、スリップ制御中に所謂ジャ
ダーといわれるスリップ量のハンチングが発生して振動
が発生する場合がある。
【0005】これを解決する手段としては、従来、例え
ば、特開平4−224363号公報に記載されているよ
うに、ジャダー振動の発生を検出したとき、作動油の交
換等の適宜な処置が実行されるまで、スリップ制御を禁
止してスリップ制御以外の、例えば、非直結制御が実行
されるように構成された技術が提案されている。
【0006】そして、この技術では、上記適宜な処置が
実行されたか否かは、例えば、バッテリー端子の脱着に
よりジャダー振動検出フラグがリセットされたことによ
り識別され、その後、再びスリップ制御を再開させるよ
うに構成されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の制御装置にあっては、ジャダー振動を検出した後は
作動油の交換等の適宜な処置が実行されるまでは一切ス
リップ制御を行わないように構成されているため、この
間は、スリップ制御による様々な効果を享受することが
できない、という不具合を有していた。
【0008】この発明は、かかる現状に鑑み創案された
ものであって、その目的とするところは、ジャダー振動
の発生を検知した後に目標スリップ回転量を変更するこ
とで、スリップ制御の効果の減少を最小限に抑えつつ、
ジャダー振動の発生を確実に防止することができる自動
変速機のロックアップ制御装置を提供しようとするもの
である。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、この発明にあっては、内燃エンジンの出力を伝達す
る動力伝達経路に介装された直結機構を有してなる摩擦
式クラッチを備え、前記直結機構により該摩擦式クラッ
チのスリップ量の制御が可能な自動変速機のロックアッ
プ制御装置に、前記摩擦式クラッチの振動の発生を検出
する振動検出手段と、目標スリップ量変更手段と、を接
続し、該目標スリップ量変更手段は、前記内燃エンジン
が所定の運転領域で運転され前記ロックアップ制御装置
により該摩擦式クラッチのスリップ量が目標スリップ量
近傍に制御されているときに上記振動検出手段により振
動が検出されたときに前記目標スリップ量を変更するよ
うに構成されていることを特徴とするものである。
【0010】また、この発明にあっては、前記目標スリ
ップ量変更手段に代えて、領域別目標スリップ量変更手
段を設け、該領域別目標スリップ量変更手段は、前記振
動検出手段によって振動が検出された車両走行状態の領
域においてのみ前記目標スリップ量を変更するように構
成することもできる。
【0011】
【作用】それ故、この発明に係る自動変速機のロックア
ップ制御装置にあっては、内燃エンジンが所定の運転領
域で運転され、ロックアップ制御装置により摩擦式クラ
ッチのスリップ量が目標スリップ量近傍に制御されてい
るときに、振動検出手段によりジャダー振動が検出され
た場合には、目標スリップ量変更手段によって目標スリ
ップ量が自動的に変更されるので、ジャダー振動の発生
原因である摩擦材と作動油の特性が異なる領域でスリッ
プ制御を行うことができるため、スリップ制御の効果の
減少を最小限に抑えつつも、ジャダー振動の発生を確実
に防止することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、添付図面に示す実施の一形
態例に基づきこの発明を詳細に説明する。
【0013】図1は、この発明の実施の一形態例が適用
された車両用自動変速機のスケルトン図である。同図に
おいて、エンジン50の動力はロックアップクラッチ付
トルクコンバータ30や、2組の遊星歯車組等から構成
された有段式自動変速機15などを経て駆動輪へ伝達さ
れるように構成されている。
【0014】上記トルクコンバータ30は、エンジン1
0のクランク軸1と連結されているポンプ翼車32と、
上記自動変速機15の入力軸2に固定され上記ポンプ翼
車32からのオイルを受けて回転させられるタービン翼
車33と、一方向クラッチ34を介して非回転部材であ
るハウジング35に固定されたステータ翼車36と、ダ
ンパ37を介して上記入力軸2に連結されたロックアッ
プクラッチ31と、を備えて構成されている。
【0015】そして、上記トルクコンバータ30内の係
合側油室38よりも解放側油室39内の油圧が、後記す
る係合制御用油圧制御回路60によって高められると、
ロックアップクラッチ31が非係合状態とされるので、
トルクコンバータ30の入出力回転速度比に応じた増幅
率でトルクが伝達される。
【0016】一方、上記トルクコンバータ30内の解放
側油室39よりも係合側油室38内の油圧が高められる
と、ロックアップクラッチ31が係合状態とされるの
で、トルクコンバータ30の入出力部材であるクランク
軸1及び入力軸2が直結状態とされる。
【0017】上記係合制御用油圧制御回路60は、図2
に示すように、ロックアップコントロールバルブ80に
対しパイロット圧を供給するもので、例えば、エンジン
により駆動されるオイルポンプ(図示せず)からの吐出
油に基づいて変速を行うのに必要な制御圧を作り出すバ
ルブ群で構成されてなる自動変速機コントロールバルブ
ユニットで構成されている。
【0018】ロックアップソレノイド90は、自動変速
機コントロールユニット(以下、ATCUという。)7
0からのデューティ指令によりロックアップ制御圧PL
/Uを作り出すバルブである。尚、デューティ指令と
は、所定の周期でON信号とOFF信号を繰り返す指令
信号をいう。
【0019】即ち、ON−OFF信号のうちON時間割
合が大きいほどロックアップ制御圧PL/Uが高くな
り、ON時間割合が小さいほどロックアップ制御圧PL
/Uが低くなる。
【0020】具体的には、ロックアップ解除時には、図
7に示すように、ATCU70からロックアップソレノ
イド90へのデューテイ信号のON時間割合を小さくす
ると、ロックアップソレノイド90のドレーンが「閉」
となる。
【0021】このため、油室81にパイロット圧が加わ
り、バルブ85は左側へ移動する。図2の状態はこの状
態である。すると、ライン圧はリリーフバルブで2つに
分かれ、一方はトルクコンバータ31の係合側油室38
に加わり、もう一方は、バルブ85が左側にあるため、
油路82から油路86を通りトルクコンバータ31の解
放側油室39に加わる。従って、係合側油室38と解放
側油室39の圧力が等しくなるため、ロックアップは解
除される。
【0022】逆に、ロックアップ係合時には、ATCU
70からロックアップソレノイド90へのデューテイ信
号のON時間割合を大きくすると、ロックアップソレノ
イド90のドレーンが「開」となり、油室81に加わっ
ていたパイロット圧は加わらなくなる。ロックアップコ
ントロールバルブ80のバルブ85には、右側に押す力
としてパイロット圧が油室83に加わり、バルブ85は
右側に移動して油路82と油路86は「閉」となる。こ
のため、ライン圧は係合側油室38には加わるが、解放
側油室39には加わらず、ロックアップピストン31を
係合側へ移動させる。
【0023】さらに、スリップロックアップ時には、図
7に示すように、ATCU70からロックアップソレノ
イド90へのデューティ信号のON時間割合を所定範囲
内の値とすることで、ロックアップソレノイド90のド
レーンが「開」と「閉」の中間になる。この場合、ロッ
クアップコントロールバルブ80の油室81と油室83
の圧力の釣り合う位置にバルブ85は移動することで、
スリップロックアップ制御圧が調整される。
【0024】図1に戻って、上記自動変速機の変速制御
のため、エンジン回転Neを検出するエンジン回転セン
サ100と、タービン回転(変速機入力回転)Ntを検
出するタービン回転センサ101と、出力軸回転(変速
機出力回転)Noを検出する出力軸回転センサ102
と、スロットル開度TVOを検出するアイドルスイッチ
付きのスロットル開度センサ103及び自動変速機油温
(AT油温)Tatを検出する油温センサ104からの夫
々の信号がATCU70に入力される。
【0025】また、該当するときは、車速センサからの
車速Vsen 情報を、さらに、スイッチ信号よりアイドル
スイッチ(IdleSW)のON/OFF情報を入力するこ
ともできる。
【0026】ATCU70は、内部の演算処理回路CP
U71がRAM72の一時記憶機能を利用しつつ予めR
OM73に記憶されたプログラムに従って上記各入力信
号を処理し、自動変速機15の変速制御およびロックア
ップクラッチ31のスリップ制御等を実行するために係
合制御用油圧制御回路60内の複数の電磁弁に制御信号
を出力する。
【0027】上記ロックアップクラッチ31の係合制御
では、車両の出力軸回転速度(車速)Noおよびスロッ
トル弁開度TVOに基いて、図3に示す関係に基づき、
ロックアップクラッチ31の解放領域か、スリップ領域
か、係合領域のいずれであるかが判断される。
【0028】図3においては、係合領域と解放領域との
境界線より解放領域側であって低スロットル弁開度側に
は、運転性を損なうことなく燃費を可及的によくするた
めに、連結効果を維持しつつエンジン50のトルク変動
を吸収するためのスリップ制御領域が設けられている。
【0029】上記車両の走行状態が図3に示す係合領域
内にあると判断されると、ATCU70から上記デュー
ティ比最大値がロックアップソレノイド90に指令さ
れ、ロックアップクラッチ31が係合させられる。
【0030】また、車両の走行状態が図3に示す解放領
域内にあると判断されると、ATCU70から上記デユ
ーティ比最小値がロックアップソレノイド90に指令さ
れ、ロックアップクラッチ31は解放される。
【0031】そして、車両の走行状態が図3に示すスリ
ップ制御領域内にあると判断されると、ATCU70か
ら、例えば、数1によって求められたデューティ比Dsl
ipがロックアップソレノイド90に指令され、ロックア
ップコントロールバルブ80が中立位置に移動すること
によって、スリップロックアップ制御圧PL/Uは係合
側油室に供給され、スリップロックアップ制御圧PL/
Uが調整される。
【0032】
【数1】
【0033】即ち、目標スリップ回転速度NslipTと実
際のスリップ回転速度Nslip(=Ne−Nt)との偏差
(=Nslip−NslipT)が解消されるように、フィード
フォワード制御値Dfwd およびフィードバック制御値D
f/b が決定され、それらが加算されることによりロック
アップソレノイド4に対するデューティ比Dslipが算出
されて出力される。
【0034】図4は、上記ATCU70の作動の要部を
説明する機能ブロック図である。同図において、ロック
アップ制御手段200は、予め記憶されたスリップ領域
内では、ロックアップクラッチ31を所定の目標スリッ
プ回転速度NslipTとなるようにロックアップ制御圧P
L/Uを調整する。
【0035】そして、ロックアップ制御手段200によ
りロックアップクラッチ31のスリップ量が目標スリッ
プ量NslipTに制御されているときに、振動検出手段2
04によりジャダー振動が検出された場合には、目標ス
リップ量変更手段202によって目標スリップ回転速度
NslipTが変更される。
【0036】このように、目標スリップ量変更手段20
2によって目標スリップ回転速度NslipTが変更される
ので、摩擦材と作動油の特性が異なる領域でスリップ制
御を行なうことができ、その結果、スリップ制御の効果
の減少を最小限に抑制しつつも、ジャダー振動の発生を
確実に防止することができる。
【0037】次に、図6にフローチャートを用いてAT
CU70によるロックアップクラッチ31のロックアッ
プ制御作動について説明する。
【0038】図6のステップS1では、図3の関係に基
づき、車両の走行状態がスリップ領域であるか否かが判
断される。
【0039】このステップS1の判断が否定されると、
本制御以外の係合領域または解放領域の制御が行なわれ
て本制御は終了するが、肯定されるとステップS2へ移
動する。
【0040】ステップS2の判断は、当初は肯定される
ので、続くステップS3に移動し、上記したように目標
スリップ回転速度NslipTと実際のスリップ回転速度N
slipとの偏差が解消されるように制御が開始される。
【0041】ステップS4では、振動検出手段204に
よりスリップ制御中のジャダー振動が発生したか否かが
判断される。
【0042】ジャダー振動検出の具体的な方法として
は、車両の前後に加わる荷重を検出するGセンサーや、
出力軸のトルクを検出するトルクセンサーを新たに設定
して、それらの出力波形の振動をもってジャダー振動の
発生を検知しても構わないが、より現実的には、例え
ば、特公昭62−50703号公報にも示されているよ
うに、スリップ回転速度Nslip(=Ne−Nt)の回転
変動具合からジャダー振動の検知を行なうのが望まし
い。
【0043】このステップS4の判断は、通常は否定さ
れ本ルーチンは終了する。しかし、作動油の劣化や不純
物の混入等が原因でジャダー振動が発生し、振動検出手
段204によりジャダー振動の発生が検知された場合、
つまり、ステップS4が肯定された場合にはステップS
5へ移動する。
【0044】ステップS5では、ステップS3以降行な
われていたスリップ制御を一旦中止する。そして、続く
ステップS6にてジャダー振動の発生回数を記憶する変
数Countの値を「1」増やす。
【0045】この変数Countは、後記するステップ
S8にて目標スリップ量NslipTが変更された場合には
「0」にクリアーされる。
【0046】ステップS7において、上記変数Coun
tが例えば「3」以上の値になったか否か、言い換える
と、ジャダー振動の発生回数が3回を越えたか否かが判
断される。この判断が否定されると本ルーチンは終了す
るが、肯定されるとジャダー振動の発生確率が十分高い
と判断され、続くステップS8へ移動する。
【0047】ジャダー振動の発生回数が3回を越えると
ジャダー振動の発生確率が十分高いことが経験的に分か
っている。また、これ以上目標スリップ量NslipTを変
更せずにスリップ制御を続けるとジャダー振動の影響で
摩擦材の寿命低下が促進されて、たとえ目標スリップ量
NslipTを変更した後であっても容易にジャダー振動が
発生するためである。
【0048】ステップS8では、数2に基づき目標スリ
ップ量NslipTを変更する。今回の場合は、目標スリッ
プ量NslipTをΔN回転分だけ増加させる。
【0049】
【数2】
【0050】具体的には、本来の目標スリップ量Nslip
Tが50rpmの場合、ΔN=20rpmとし、目標ス
リップ量NslipTを70rpmとする。
【0051】目標スリップ量NslipTの変更方法として
は、ロックアップクラッチ31に使用されている湿式摩
擦材の特性に依存する。この湿式摩擦材の特性の代表的
な指標として図7に示すようなμ−V特性が挙げられ
る。
【0052】このμ−V特性は、滑り速度V(スリップ
回転Nslip)とその時の摩擦抵抗μの関係を表わしてお
り、この関係が右下り(負勾配)であるほどジャダー振
動が発生し易いことが知られている。
【0053】また、ロックアップクラッチ31に使用さ
れている湿式摩擦材と劣化した作動油の組み合わせにお
いては、図7中に示すような滑り速度Vが小さいほど、
μ−V特性が負勾配であることも分かっている。
【0054】つまり、作動油が劣化した状態では、スリ
ップ回転が小さいほどジャダー振動が発生しやすく、逆
に、スリップ回転が大きいほどジャダー振動が発生し難
いことが分かる。
【0055】このような特性を有する湿式摩擦材を使用
した自動変速機のロックアップ制御装置の場合は、上記
した通り、目標スリップ回転速度NslipTをジャダー振
動発生後に所定量増加させることで、ジャダー振動の発
生を確実に防止することができる。
【0056】そして、続くステップS9では、変数Co
untの値が「0」にクリアーされる。
【0057】ステップS10では、上記ステップS8に
おいて変更された目標スリップ回転速度NslipTがRO
M73に記憶された所定値Nmaxより大きいか否かが
判断される。
【0058】本ルーチンを何回も繰り返すうちに目標ス
リップ回転速度NslipTがある程度大きくなると、スリ
ップ制御中の発熱量が大きくなり摩擦材の劣下が著しく
促進され、劣化した作動油の交換を行っても摩擦材のμ
−V特性の回復が期待できなくなる。
【0059】このような現象は望ましくないので、目標
スリップ回転速度NslipTがある程度大きくなり所定値
Nmaxより大きくなると、ステップS10の判断は肯
定され、続くステップS11にてフラグF1の内容を
「1」に書き替え本ルーチンを終了する。一方、判断が
否定されるとそのまま本ルーチンは終了される。
【0060】ステップS11にてフラグF1の内容を
「1」に書き替えた後に、本ルーチンが開始されると、
ステップS2の判断が否定されて、続くステップS12
で明記されていない本制御以外の係合領域又は解放領域
の制御が行われ、スリップ制御は行われなくなる。
【0061】次に、図8のフローチャートを用いて、A
TCU70によるロックアップクラッチ31の他のロッ
クアップ制御作動例を説明する。
【0062】図9に示すように、スリップ領域を複数の
領域に分割し、各領域に夫々目標スリップ量NslipTi
を設定する。尚、符号中、最後のiは各領域に割り当て
られた番号を示している。
【0063】図8のステップSA1では、図9の関係に
基づき、車両の走行状態がスリップ領域であるか否かが
判断される。
【0064】このステップSA1の判断が否定される
と、明記されていない本制御以外の係合領域又は解放領
域の制御が行われ本ルーチンは終了するが、肯定される
とステップSA2へ移動する。
【0065】ステップSA2では、図9に示したように
スリップ制御領域を複数の領域に分割し、各領域に夫々
スリップ領域番号と目標スリップ量NslipTi が設定さ
れる。尚、符号中、最後のiは各領域に割り当てられた
番号を示している。
【0066】ステップSA3の判断は当初は肯定される
ので、続くステップSA4に移動し、上記の通り目標ス
リップ回転速度NslipTi と実際のスリップ回転速度N
slipとの偏差が解消されるように制御が開始される。
【0067】ステップSA5では、振動検出手段204
によりスリップ制御中のジャダー振動が発生したか否か
が判断される。
【0068】ジャダー振動検出の具体的な方法として
は、前記した手段を用いることができるので、その詳細
な説明をここでは省略する。
【0069】このステップSA5の判断は、通常は否定
され本ルーチンは終了する。しかし、作動油の劣下や不
純物の混入等の原因でジャダー振動が発生し、振動検出
手段204によりジャダー振動の発生が検知された場
合、つまりステップSA5が肯定された場合にはステッ
プSA6へ移動する。
【0070】ステップSA6では、ステップSA4以降
行われていたスリップ制御を一旦中止する。そして続く
ステップSA6にてジャダー振動の発生回数を記憶する
変数COUNTiの値を「1」増やす。この変数COU
NTiは、後記するステップSA9で目標スリップ量N
slipTi が変更された場合には「0」にクリアーされ
る。
【0071】ステップSA8において、変数COUNT
iが例えば「3」以上の値になったか否か、言い換える
と、ジャダー振動の発生回数が3回を越えたか否かが判
断される。この判断が否定されると本ルーチンは終了す
るが、肯定されるとジャダー振動の発生確率が十分高い
と判断され、続くステップSA9へ移動する。
【0072】ジャダー振動の発生回数が3回以上となる
とジャダー振動の発生確率が十分高いことが経験的に分
かっている。また、これ以上目標スリップ量NslipTi
を変更せずにスリップ制御を続けると、ジャダー振動の
影響で摩擦材の寿命低下が促進され、たとえ目標スリッ
プ量NslipTi を変更した後であっても容易にジャダー
振動が発生するためである。
【0073】ステップSA9では、数3に基づき目標ス
リップ量NslipTi が変更される。今回の場合は目標ス
リップ量NslipTi をΔN回転分増加する。
【0074】
【数3】
【0075】具体的には、本来の目標スリップ量Nslip
Tiが50rpmの場合、ΔN=20rpmとし目標ス
リップ量NslipTi を70rpmとする。
【0076】目標スリップ量NslipTi の変更方法とし
ては、ロックアップクラッチ31に使用されている湿式
摩擦材の特性に依存する。湿式摩擦材の特性の代表的な
指標としては、前記した場合と同様、図7に示すような
μ−V特性が挙げられるので、ここではその詳細な説明
を省略する。
【0077】このような特性の該湿式摩擦材を使用した
自動変速機のロックアップ制御装置の場合は、上記した
通り目標スリップ回転速度NslipTi をジャダー振動発
生後に所定量増加することでジャダー振動の発生を確実
に防止することができる。
【0078】続くステップSA10において変数COU
NTiの値が「0」にクリアーされる。
【0079】ステップSA11では、ステップSA9に
おいて変更された領域別目標スリップ回転速度NslipT
i がROM73に記憶された所定値Nmaxより大きい
か否か、が判断される。
【0080】本ルーチンを何回も繰り返す内に目標スリ
ップ回転速度NslipTi がある程度大きくなると、スリ
ップ制御中の発熱量が大きくなり摩擦材の劣下が著しく
促進され、劣下した作動油の交換を行っても摩擦材のμ
−V特性の回復が期待できなくなる。
【0081】このような現象は望ましくないので、目標
スリップ回転速度NslipTi がある程度大きくなり所定
値Nmaxより大きくなると、ステップSA11の判断
は肯定され、続くステップSA12にてフラグFiの内
容を「1」に書き替え本制御を終了する。一方、判断が
否定されるとそのまま本ルーチンは終了される。
【0082】ステップSA12にて、フラグFiの内容
を「1」に書き替えた後に本ルーチンが開始され、フラ
グFiの内容が「1」に書き替えられた領域でスリップ
制御が開始されようとしても、ステップSA3の判断が
否定されて、続くステップSA13で本制御以外の係合
領域又は解放領域の制御が行われ、スリップ制御は行わ
れなくなる。
【0083】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1に記載さ
れた発明によれば、内燃エンジンが所定の運転領域で運
転され、ロックアップ制御装置により摩擦式クラッチの
スリップ量が目標スリップ量近傍に制御されているとき
に、振動検出手段により振動が検出された場合には、目
標スリップ量変更手段によって目標スリップ量が変更さ
れるので、ジャダー振動の発生原因である摩擦材と作動
油のμ−V特性が異なる領域でスリップ制御を行うこと
ができ、その結果、スリップ制御の効果の減少を最小限
に抑えつつも、ジャダー振動の発生を確実に防止するこ
とができる。
【0084】また、請求項2に記載された発明によれ
ば、ジャダー振動の発生した特定の車両走行領域のみ、
領域別目標スリップ量変更手段によって目標スリップ量
が変更されるので、請求項1に記載された発明よりもよ
り一層のスリップ制御効果の減少を抑えつつも、ジャダ
ー振動の発生を確実に防止することができる、という効
果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の第1形態例に係るロックアッ
プ制御装置が適用された車両用動力伝達装置の構成を示
すスケルトン図である。
【図2】同ロックアップ制御装置の油圧制御回路の要部
構成図である。
【図3】同ロックアップ制御装置におけるロックアップ
クラッチの係合制御に用いられる車両の走行状態とロッ
クアップクラッチの係合状態との関係を示すグラフ図で
ある。
【図4】同ロックアップ制御装置の制御機能の要部を示
すブロック図である。
【図5】同ロックアップ制御装置におけるロックアップ
ソレノイドバルブの出力特性を示すグラフ図である。
【図6】同ロックアップ制御装置における新たに開始す
るロックアップ制御の制御作動を説明するフローチャー
トである。
【図7】同ロックアップクラッチに用いられる摩擦材の
μ−V特性を示すグラフ図である。
【図8】この発明の実施の第2形態例に係るロックアッ
プ制御装置によるロックアップ制御の制御作動を説明す
るフローチャートである。
【図9】図8の制御に用いられる車両の走行状態とロッ
クアップクラッチの係合状態との関係を示す説明図であ
る。
【符号の説明】
1 クランク軸 2 入力軸 3 出力軸 4 第1遊星歯車組 5 第2遊星歯車組 15 自動変速機 30 トルクコンバータ 31 ロックアップクラッチ 60 係合制御用油圧制御回路 70 自動変速機コントロールユニット(ATCU) 80 ロックアップコントロールバルブ 90 ロックアップソレノイド 100 エンジン回転センサ 101 タービン回転センサ 102 出力軸回転センサ 103 スロットル開度センサ 200 ロックアップ制御装置 202 目標スリップ量変更手段 204 振動検出手段

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 内燃エンジンの出力を伝達する動力伝達
    経路に介装された直結機構を有してなる摩擦式クラッチ
    を備え、前記直結機構により該摩擦式クラッチのスリッ
    プ量の制御が可能な自動変速機のロックアップ制御装置
    には、前記摩擦式クラッチの振動の発生を検出する振動
    検出手段と、目標スリップ量変更手段と、を接続し、該
    目標スリップ量変更手段は、前記内燃エンジンが所定の
    運転領域で運転され前記ロックアップ制御装置により該
    摩擦式クラッチのスリップ量が目標スリップ量近傍に制
    御されているときに上記振動検出手段により振動が検出
    されたときに前記目標スリップ量を変更するように構成
    されていることを特徴とする自動変速機のロックアップ
    制御装置。
  2. 【請求項2】 前記目標スリップ量変更手段は、前記振
    動検出手段によって振動が検出された車両走行状態の領
    域においてのみ前記目標スリップ量を変更する領域別目
    標スリップ量変更手段であることを特徴とする請求項1
    に記載の自動変速機のロックアップ制御装置。
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