JP3234885B2 - 気体分離膜 - Google Patents
気体分離膜Info
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Description
特に改善された分離性能を有して排気ガス処理、天然ガ
ス分離、ガスの除湿、空気からの酸素、窒素の製造等の
分野に好適に用いることができる気体分離膜に関する。
から特定の気体を分離したり、精製することが積極的に
検討されている。例えば、空気から酸素を選択的に透過
させて酸素富化空気を製造し、これを医療や燃料システ
ム等の分野で活用する試みがなされている。そして、こ
れらの用途に用いる気体分離膜に対しては、特定の気体
に対する気体透過性と気体選択性がいずれも大きいこと
が要求され、また、使用環境によっては高耐熱性、耐薬
品性、高強度等の特性が要求される。
る方法として、いわゆる表面処理が広く行われている。
例えば、特開昭53−86684号公報には多孔性気体
分離膜のコーティングに関する記載がある。しかしなが
ら、この公報記載の技術は、中空糸状の分離膜の表面に
ある微細孔を気体透過性能の高い素材で閉塞し、これに
よって分離膜本来の分離性能を発現させたものであり、
分離膜性能の向上を図ったものではない。
は、従来より気体分離用高分子膜の開発に携わって来て
おり、そのなかで、高分子材料における気体分離機能の
設計は、高分子が有する分子鎖空隙である自由体積の平
均値と分布及びその運動性を調整することによる気体の
収着と拡散の制御にその主眼が置かれるべきであるとの
考えに到達した。
要素として、自由体積を大きくすることができ、かつ、
高分子鎖の分子運動性を抑制する手法として、嵩高い構
造単位の開発とその高分子化を鋭意検討し、その結果と
してフルオレン骨格をベースとし、これにフェノール、
アニリン等の構造単位を付加してなる二官能性モノマー
が最適であるとの結論に達し、これを構造単位とした高
分子(以下、「カルド型ポリマー」と称する)を開発
し、実施するに至っている。しかしながら、このような
方法についても、高分子の自由体積を最適に制御するた
めには種々のモノマーを調製し、その高分子化を行い、
更に薄膜を形成するという一連のプロセスを制御する必
要があり、その大部分は経験に依るところが大きい。
気体分離膜の更なる高性能化について鋭意検討した結
果、ある特定の気体とある特定の室温で固体の物質との
間にはその組み合わせにより比較的大きな親和性が発現
し、このような室温で固体の物質を分離膜本体の表面に
コーティングして被覆層を形成せしめると、得られた気
体分離膜の分離性能(気体透過性及び気体選択性)が顕
著に向上することを見出し、本発明を完成した。
して優れた気体分離性能を有し、排気ガス処理、天然ガ
ス分離、ガスの除湿、空気からの酸素、窒素の製造等の
分野で好適に用いることができる気体分離膜を提供する
ことにある。
分離膜、特にカルド型ポリマーからなる気体分離膜の有
する気体分離性能を顕著に改善させることができ、これ
によって気体分離膜に優れた分離性能を付与することが
できる気体分離膜の分離性能改良方法を提供することに
ある。
機高分子で形成された分離膜本体の表面に、二酸化炭素
に対して親和力を有すると共に室温で固体の分子量30
0以上のポリエチレングリコールからなる被覆層がコー
ティングされている、改善された分離性能を有する気体
分離膜である。
性を有すると共に室温で固体の分子量300以上のポリ
エチレングリコールの水溶液であるコーティング液を調
製し、分離膜本体の一方面側を減圧下に維持して他方面
側から上記コーティング液を通液し、分離膜本体の表面
にポリエチレングリコールをコーティングする気体分離
膜の分離性能改良方法である。
分離膜本体としては、それが気体分離性能を有する高分
子系気体分離膜であれば特に制限はなく、例えば芳香族
ポリイミド類、芳香族ポリアミド類、脂肪族ポリアミド
類、芳香族ポリカーボネート類、脂肪族ポリカーボネー
ト類、芳香族ポリエステル類、脂肪族ポリエステル類、
芳香族ポリスルフォン類、脂肪族ポリスルフォン類、ポ
リシロキサン類、セルロース類、及びこれらを含む共重
合物又は混合物等からなるものを用いることができる。
は、下記一般式(1)〜(5)
2価の有機残基を示し、Y5 は4価の有機残基を示し、
Xは2価の有機残基であって少なくともその一部は下記
構造式(A)
H2n+1(n=1〜4の整数)で表されるアルキル基、−
OCn H2n+1(n=1〜4の整数)で表されるアルコキ
シル基、カルボキシル基、カルボキシメチル基、又はハ
ロゲンを示し、互いに同一であっても異なっていてもよ
い)で表される2価の有機残基である〕でそれぞれ表さ
れるポリエステル構造単位、ポリカーボネート構造単
位、ポリエーテル構造単位、ポリアミド構造単位及びポ
リイミド構造単位から選ばれた少なくとも1種の構造単
位を有するカルド型ポリマーからなるものである。
テル構造単位は、ジオール類とジカルボン酸ジハライ
ド、好ましくはジカルボン酸ジクロライドとを反応させ
て得られる。一般式(1)中のY1 部分の原料となるジ
カルボン酸ジクロライドとしては、テレフタル酸ジクロ
ライド、イソフタル酸ジクロライド、4,4’−ビフェ
ニルジカルボン酸ジクロライド、2,6−ナフタレンジ
カルボン酸ジクロライド等の芳香族ジカルボン酸ジクロ
ライドや、シュウ酸ジクロライド、コハク酸ジクロライ
ド、グルタル酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライ
ド、ピメル酸ジクロライド、スベル酸ジクロライド、フ
マル酸ジクロライド、マレイン酸ジクロライド、1,4
−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライド等の脂肪族
ジカルボン酸ジクロライドや、これらジカルボン酸ジク
ロライドの混合物が挙げられる。なかでも工業的に入手
し易いことから、テレフタル酸ジクロライド、イソフタ
ル酸ジクロライド及びアジピン酸ジクロライドが好適で
ある。
ボネート構造単位は、ジオール類とホスゲンダイマーと
を反応させて得られる。一般式(2)中のY2 部分の原
料となるホスゲンダイマーとしては、トリクロロメチル
クロロホルメートが挙げられる。
テル構造単位は、ジオール類とハロゲン化ジフェニルス
ルフォンとを反応させて得られる。一般式(3)中のY
3 部分の原料となるハロゲン化ジフェニルスルフォンと
しては、下記構造式(B)
引性の基であり、R15はハロゲンである)で表される化
合物である。ここで電子吸引性の基R13及びR14として
はF、Cl、Br等のハロゲンやNO2 が望ましく、置
換基R15としてはF、C1、Brのいずれかでよい。こ
の化合物Bは、その1種を単独で使用しても、また、2
種以上を併用しても差し支えない。このような化合物の
代表的な具体例としては、4,4’−ジクロロジフェニ
ルスルフォン、3,3’,4,4’−テトラクロロジフ
ェニルスルフォン、4,4’−ジクロロ−3,3’−ジ
ニトロージフェニルスルフォン等のジクロロジフェニル
スルフォン類やこれらの混合物が挙げられる。
X部分の原料としては、下記構造式(A1)
場合と同じである〕で表されるフルオレン骨格を有する
ジオール類を単独で、若しくは、このフルオレン骨格を
有するジオール類とその他のジオール類とを併用して使
用する。
しては、ビスフェノールフルオレン類が用いられ、具体
的には9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオ
レン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェ
ニル)フルオレン、9,9−ビス(3,5−ジメチル−
4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス
(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、
9,9−ビス(3,5−ジエチル−4−ヒドロキシフェ
ニル)フルオレン、9,9−ビス(3−ブロモ−4−ヒ
ドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,5
−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、
9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン−
4−カルボン酸等や、これらの混合物が挙げられる。ま
た、その他のジオール類としては、ビスフェノールA、
ビスフェノールF、ビスフェノールS、p−キシリレン
グリコール、ナフタレンジオール等の芳香族ジオール類
や、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタ
ンジオール等の脂肪族ジオール類等が挙げられる。ま
た、これらのナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩
も使用できる。
て、フルオレン骨格を有するジオール類とその他のジオ
ール類との成分モル比は10/90以上であることが望
ましい。この成分モル比が10/90より小さいと、前
駆体のカルド型ポリマーについて優れた溶剤可溶性、熱
的安定性が得られない。
ド構造単位は、ジアミン類とジカルボン酸ジハライド、
好ましくはジカルボン酸ジクロライドとを反応させて得
られる。一般式(4)中のY4 部分の原料となるジカル
ボン酸ジクロライドとしては、テレフタル酸ジクロライ
ド、イソフタル酸ジクロライド、4,4’−ビフェニル
ジカルボン酸ジクロライド、2,6−ナフタレンジカル
ボン酸ジクロライド等の芳香族ジカルボン酸ジクロライ
ドや、シュウ酸ジクロライド、コハク酸ジクロライド、
グルタル酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、ピ
メル酸ジクロライド、スベル酸ジクロライド、フマル酸
ジクロライド、マレイン酸ジクロライド、1,4−シク
ロヘキサンジカルボン酸ジクロライド等の脂肪族ジカル
ボン酸ジクロライドや、これらジカルボン酸ジクロライ
ドの混合物が挙げられる。なかでも工業的に入手し易い
ことから、テレフタル酸ジクロライド、イソフタル酸ジ
クロライド及びアジピン酸ジクロライドが好適である。
ド構造単位は、ジアミン類とテトラカルボン酸二無水物
とを反応させて得られる。一般式(5)中のY5 部分の
原料となるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば
無水ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ベンゾフェ
ノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカル
ボキシフェニル)スルフォン二無水物、2,2−ビス
(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,
3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、3,3’
4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,
3’,4’4−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二
無水物等や、これらの混合物が挙げられる。
のX部分の原料としては、下記構造式(A2)
場合と同じである〕で表されるフルオレン骨格を有する
ジアミン類を単独で、若しくは、このフルオレン骨格を
有するジアミン類とその他のジアミン類を併用して使用
する。
しては、ビスアニリンフルオレン類が用いられ、具体的
には9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、
9,9−ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)フル
オレン、9,9−ビス(3,5−ジメチル−4−アミノ
フェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−エチル−4
−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,5
−ジエチル−4−アミノフェニル)フルオレン、9,9
−ビス(3−ブロモ−4−アミノフェニル)フルオレ
ン、9,9−ビス(3,5−ジブロモ−4−アミノフェ
ニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニ
ル)フルオレン−4−カルボン酸、9,9−ビス(4−
アミノフェニル)フルオレン−4−カルボン酸メチル等
や、これらの混合物が挙げられる。
7−ジアミノフルオレン、ナフタレンジアミン、2,8
−ジアミノジベンゾフラン、4,4’−ジアミノビフェ
ニル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等の芳香
族ジアミン類や、ヘキサメチレンジアミン、イソプロピ
ルジアミン等の脂肪族ジアミン類等が挙げられる。
フルオレン骨格を有するジアミン類とその他のジアミン
類との成分モル比は10/90以上が望ましい。この成
分モル比が10/90より小さいと、前駆体のカルド型
ポリマーについて優れた溶剤可溶性、熱的安定性が得ら
れない。
(5)で表されるカルド型の構造単位を有するカルド型
ポリマーとしては、それぞれポリエステル構造単位、ポ
リカーボネート構造単位、ポリエーテル構造単位、ポリ
アミド構造単位又はポリイミド構造単位の何れか1つを
有するポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテ
ル、ポリアミド、又はポリイミドからなる重合物が挙げ
られるほか、これらカルド型の構造単位を2種以上有す
る共重合物であってもよく、更には、これら重合物及び
共重合物から選ばれた2種以上のポリマーの混合物であ
ってもよい。
に気体分離に用いられる形状であれば特に制限はなく、
平膜状、中空糸膜状等が挙げられる。製膜方法について
も公知の方法でよい。例えば、平膜状の分離膜本体を形
成する場合には、原料のポリマーを適当な有機溶剤に溶
解し、この際に必要に応じて、溶液安定性の向上を目的
として塩化リチウム等を添加して、製膜原液を調製す
る。次に、この製膜原液を平滑なガラス板上に流延ある
いは塗布し、次いで加熱して溶媒の一部を蒸発させた後
に、上記製膜原液の溶剤とは混合するがポリマーに対し
ては非溶解性の溶媒に浸漬し、脱溶媒させる。
には、上記製膜原液を二重管構造の中空糸紡糸ノズルの
周縁部環状口から凝固液中に押し出すと同時に中央部円
状口からは製膜原液の溶媒と混合するがカルド型ポリマ
ーに対しては非溶解性の溶媒を凝固液中に押し出し、こ
れを室温で風乾した後、真空乾燥あるいは100℃程度
で加熱乾燥する。
いては、次にその表面に、特定の気体に対して親和性を
有すると共に室温で固体の被覆物質からなる被覆層をコ
ーティングする。そして、この際に分離膜本体は、その
全面が被覆層でコーティングされてもよく、また、その
何れか一方の面のみが被覆層でコーティングされてもよ
いが、可及的に薄く被覆して分離性能を高めるという観
点から、好ましくは分離膜本体のガス供給側表面にのみ
に被覆層を設けるのがよい。
定の気体に対して親和性を有すると共に室温で固体の被
覆物質としては、二酸化炭素、酸素あるいは窒素等の特
定の気体に対して、その他の気体に対するよりもより優
れた親和性を有し、室温で固体状である物質であればよ
く、代表的には、二酸化炭素に対して親和性を有するエ
チレンオキサイド構造を有する化合物等を例示すること
ができる。
好ましいのは、分子量300以上のポリエチレングリコ
ール、又はその異なる分子量のものの混合物である。分
子量が300未満では二酸化炭素に対する親和性が小さ
く、また、ポリエチレングリコール自体が液状になる場
合があることからコーティングによる被覆層の形成が困
難になる。
る構造単位を有するカルド型ポリマーで形成された分離
膜本体に対して、二酸化炭素に対して親和性を有する分
子量300以上のポリエチレングリコールを用いて、そ
の表面に被覆層を設けた気体分離膜は、カルド型ポリマ
ー自体が有する優れた気体分離性能に加えて、ポリエチ
レングリコール被覆層が分離膜本体の表面に担持され易
く、この分離膜本体本来の分離機能に対して担持された
被覆層の二酸化炭素に対する親和性が相乗的に作用し、
より高い分離性能を発現する。
物質をコーティングして被覆層を形成し、分離膜の分離
性能を改良する方法としては、被覆物質を有機溶剤に溶
解して得られたコーティング液中に分離膜本体を浸漬
し、次いで乾燥する浸漬法や、上記コーティング液を刷
毛、噴霧等の手段で塗布する塗布法等、従来公知の方法
を適宜採用することができるが、好ましくは、被覆物質
を分離膜本体に対して非溶解性の溶剤に溶解してコーテ
ィング液を調製し、分離膜本体の一方面側を減圧下に維
持して他方面側から上記コーティング液を通液し、分離
膜本体の表面に被覆物質をコーティングする減圧通液方
法である。
製するための有機溶剤としては、被覆物質を十分に溶解
し、かつ、気体分離膜に対しては非溶解性であるもので
あれば特に制限はない。使用する分離膜本体の材質にも
よるが、被覆物質がポリエチレングリコールである場
合、水、メタノール、エタノール等の極性溶媒等が例示
され、好ましくは水である。
体が均一な溶液になれば特に制限はないが、好ましくは
0.01〜10重量%の範囲がよい。0.01重量%未
満の低濃度ではコーティングに長時間を要し、また、1
0重量%を超える高濃度では気体分離膜の表面に形成さ
れる被覆層の膜厚が厚くなり易く、気体透過性が低下す
る。
にのみ被覆層を形成せしめる場合、膜のコーティング液
供給側と減圧側との間の圧力差が大きければ大きいほど
効率的にコーティングできるが、通常、減圧側を100
mmHg程度以下の圧力に維持すれば十分である。
均一に保つため、好ましくはこのコーティング液を攪拌
するか、あるいは、循環させる。また、このコーティン
グに要する時間は、使用するコーティング液の被覆物質
濃度や、膜両面の圧力差にもよるが、通常は10分から
3時間まで程度である。更に、必要に応じて、乾燥さ
せ、分離性能が改良された気体分離膜を得る。
最も透過し易い空隙にコーティング液が充填され、次い
で減圧下又は乾燥時に溶剤が除去されると、分離膜表面
の気体が透過する空隙にこの気体と親和性を有する固体
状の被覆物質からなる薄い被覆層が形成され、その結
果、気体透過性を損なうことなく相乗的に分離性能の向
上を図ることができる。また、この減圧通液方法によれ
ば、分離膜本体の片側表面にのみ被覆層を設けることが
でき、これによって被覆層の厚さを可及的に薄くして分
離性能をより高めることができる。
物質を分離膜本体に対して非溶解性の溶剤に溶解してコ
ーティング液を調製し、このコーティング液を分離膜本
体の表面に塗布して被覆層を形成せしめることにより、
特定の気体に対する気体選択性を向上させることができ
る。
持して他方面側からコーティング液を通液して被覆層を
形成することにより、分離膜本体の気体透過性を損なう
ことなく、特定の気体の分離膜への吸収を大きくするこ
とができ、その結果として、気体分離膜の特定の気体に
対する分離性能を向上させることができる。
からなるものを用いた場合、このカルド型ポリマーから
なる分離膜本体の気体分離性能をその表面に担持された
被覆物質の特定の気体に対する親和性でより向上させる
ことができ、特定の気体に対する分離膜本体の分離機能
と被覆層の親和性とが相乗的に作用して顕著に改善され
た分離性能を発現する。
明する。気体分離性能は、気体透過率測定装置を用いて
測定した。すなわち、装置に中空糸モジュールを装着
し、その中空糸モジュールの内面に試験ガスを供給し、
透過してくる気体の量をガスクロマトグラフで分析し、
下記式 Q={ガス透過流量(cm3 ・STP)}÷{膜面積
(cm2 )×時間(秒)×圧力差(cmHg)} に従って気体透過速度Qを求め、また、その比から気体
分離係数αを求めた。
5.0gとテレフタル酸16.6gとを原料として合成
したカルド型ポリエステル16重量部と塩化リチウム5
重量部とを、N,N−ジメチルセトアミド100重量部
に溶解して製膜原液を得た。
ズルの環状口から押し出すと同時に中空糸紡糸ノズルの
円状口からは純水を押し出して凝固水槽中に導入し、次
いでこれを室温で風乾した後、100℃で乾燥して中空
糸膜状の気体分離膜を得た。得られた気体分離膜の分離
性能を調べた。結果を表1に示す。
気体透過率測定装置の中空糸モジュールに組み込み、中
空糸膜の外側を50torrに保つと共に、中空糸膜の
内側には、循環ポンプを用いて、平均分子量約2000
のポリエチレングリコールの0.1重量%水溶液を1時
間循環させ、この中空糸膜の内側に平均分子量約200
0のポリエチレングリコールを付着させ、次いで大気圧
解放後、中空糸膜の内側に窒素を流通させて乾燥させ、
中空糸膜の内側に被覆層を設けた気体分離膜を得た。こ
のコーティング処理後の気体分離性能を測定した。結果
を表1に示す。
5.0gとホスゲンダイマー(トリクロルメチルクロル
ホルメート)12mlとを原料として合成したカルド型
ポリカーボネートを用いた以外は、実施例1と同様にし
て、中空糸膜状の気体分離膜を形成し、その分離性能を
調べた。結果を表1に示す。また、実施例1と同様にし
て中空糸膜の内側に被覆層を設けた気体分離膜を形成
し、このコーティング処理後の気体分離性能を測定し
た。結果を表1に示す。
8.0gと4,4’−ジクロロジフェニルスルフォン2
3.0gとを原料として合成したカルド型ポリエーテル
を用いた以外は、実施例1と同様にして、中空糸膜状の
気体分離膜を形成し、その分離性能を調べた。結果を表
1に示す。また、実施例1と同様にして中空糸膜の内側
に被覆層を設けた気体分離膜を形成し、このコーティン
グ処理後の気体分離性能を測定した。結果を表1に示
す。
8gとテレフタル酸ジクロライド20.3gとを原料と
して合成したカルド型ポリアミド16重量部をN,N−
ジメチルアセトアミド100重量部に溶解して製膜原液
を得た以外は、実施例1と同様にして、中空糸膜状の気
体分離膜を形成し、その分離性能を調べた。結果を表1
に示す。また、実施例1と同様にして中空糸膜の内側に
被覆層を設けた気体分離膜を形成し、このコーティング
処理後の気体分離性能を測定した。結果を表1に示す。
カルボン酸メチル39.2gと3,3’,4,4’−ベ
ンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物32.2gとを
原料とを原料として合成したカルド型ポリイミドを用い
た以外は、実施例4と同様にして、中空糸膜状の気体分
離膜を形成し、その分離性能を調べた。結果を表1に示
す。また、実施例1と同様にして中空糸膜の内側に被覆
層を設けた気体分離膜を形成し、このコーティング処理
後の気体分離性能を測定した。結果を表1に示す。
8gと3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン
酸二無水物11.8g及び無水ピロメリット酸11.6
gとを原料として合成したカルド型ポリイミド12重量
部と、実施例4のカルド型ポリアミド4重量部とを用い
て、製膜原液を得た以外は、実施例4と同様にして、中
空糸膜状の気体分離膜を形成し、その分離性能を調べ
た。結果を表1に示す。また、実施例1と同様にして中
空糸膜の内側に被覆層を設けた気体分離膜を形成し、こ
のコーティング処理後の気体分離性能を測定した。結果
を表1に示す。
膜本体、特にカルド型ポリマーからなる分離膜本体が有
する気体分離性能に加えて、その表面に設けられた特定
の気体に対して親和性を有する室温固体状の被覆物質か
らなる被覆層の親和性により、特定の気体に対する分離
性能が顕著に改善されており、優れた気体分離性能を有
して、排気ガス処理、天然ガス分離、ガスの除湿、空気
からの酸素、窒素の製造等の分野で好適に用いることが
できる。
方法よれば、高分子系気体分離膜、特にカルド型ポリマ
ーからなる分離膜本体の表面に、特定の気体に対して親
和性を有する室温固体状の被覆物質からなる被覆層を容
易に形成せしめることができ、気体分離膜に特定の気体
に対する優れた分離性能を付与することができる。
Claims (5)
- 【請求項1】 有機高分子で形成された分離膜本体の表
面に、二酸化炭素に対して親和力を有すると共に室温で
固体の分子量300以上のポリエチレングリコールから
なる被覆層がコーティングされていることを特徴とする
改善された分離性能を有する気体分離膜。 - 【請求項2】 被覆層は、分離膜本体のガス供給側表面
にのみ設けられている請求項1に記載の改善された分離
性能を有する気体分離膜。 - 【請求項3】 分離膜本体が、下記一般式(1)〜(5) 【化1】 〔但し、式中Y1、Y2、Y3及びY4は2価の有機残基を示
し、Y5は4価の有機残基を示し、Xは2価の有機残基で
あって少なくともその一部は下記構造式(A) 【化2】 (但し、式中R1〜R12は、-H、-CnH2n+1(n=1〜4の整数)で
表されるアルキル基、-OCnH2n+1(n=1〜4の整数)で表さ
れるアルコキシル基、カルボキシル基、カルボキシメチ
ル基、又はハロゲンを示し、互いに同一であっても異な
っていてもよい)で表される2価の有機残基である〕でそ
れぞれ表されるポリエステル構造単位、ポリカーボネー
ト構造単位、ポリエーテル構造単位、ポリアミド構造単
位及びポリイミド構造単位から選ばれた少なくとも1種
の構造単位を有するカルド型ポリマーである請求項1又
は2に記載の改善された分離性能を有する気体分離膜。 - 【請求項4】 二酸化炭素に対して親和性を有すると共
に室温で固体の分子量300以上のポリエチレングリコ
ールの水溶液であるコーティング液を調製し、分離膜本
体の一方面側を減圧下に維持して他方面側から上記コー
ティング液を通液し、分離膜本体の表面にポリエチレン
グリコールをコーティングすることを特徴とする気体分
離膜の分離性能改良方法。 - 【請求項5】 減圧下に維持される分離膜本体の一方面
側がガス非供給側であり、コーティング液が供給される
分離膜本体の他方面側がガス供給側である請求項4に記
載の気体分離膜の分離性能改良方法。
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