JP3229701B2 - 銅素材表面における電気絶縁層の形成方法 - Google Patents

銅素材表面における電気絶縁層の形成方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、線材、撚線材、帯材、
管材など、その表面が銅または銅基合金となっている素
材(以下、銅素材という。)の表面に絶縁性被膜を形成
する方法に関する。更に詳しくは、本発明は、銅素材を
第一段のアルカリ浴でのアノード電解処理、次いで第二
段のヘキサシアノ鉄錯塩の酸性浴でのアノード電解処理
により、銅素材の表面に均質で強靭な、かつ耐熱性に優
れる電気絶縁層を形成する方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】各種の物体の表面に電気絶縁被覆層(以
下、単に電気絶縁層という。)を形成する方法として、
種々のものが提案されている。 (i) これらのなかに、有機物の被覆による方法がある。
例えば、3M社のスコッチテープは熱硬化性シリコーン
ゴムやアクリル系の粘着剤を用いたポリエステル、PT
FE、ポリイミド材から成るものである。これらは耐電
圧(絶縁耐力)に優れているものの耐熱性が200℃以
下にとどまるものである。
【0003】(ii) また、無機物の被覆による方法があ
る。例えば、ガラス繊維を単に被覆するのでなく有機物
を併用して焼成することにより柔軟性をもたせたもの、
あるいは焼成するとセラミックス化する硼素、珪素、酸
素を含む無機質ポリマーを被覆したものなどが提案され
ている。しかしながら、これらのものは膜厚が厚く、コ
ストも高く、小型化、精密化した電子部品や電子機器へ
の利用は不適当なものである。なお、確実かつ簡便な電
気絶縁層の形成方法として、厚さ0.1mmの雲母を接着
剤と無機粉末で被覆する方法があるが、例えば密着性が
悪いためコイル巻きの点で難点があり、その実用性は限
られる。
【0004】(iii) 一方、前記した有機物や無機物の被
覆とは別に、導体表面に直接、電気絶縁層を形成する方
法がある。例えば、アルマイト加工や電解折出法などが
あるが、これらは何れも素材がAl系のものに限られる
ものである。従って、線牽き加工度が直径0.5mm以下
になると極めて難しく、かつコスト高になるので実用性
に乏しいものである。
【0005】(iv) 更に、最上の良導体であり、かつ伸
線等の加工性に優れる銅材を用いて、その表面を化成法
や陽極酸化電解法(アノダイズ法)により電気絶縁性と
する方法も提案されている。しかしながら、これらの方
法においても、下記のような問題点があり、その実用化
を阻害している。化成法においては、一般に高濃度のア
ルカリ単塩に酸化剤を含有させて浴を調製し、処理物体
を高温度下に浸漬して銅素材の表面に酸化銅(CuO)層を
生成させるものである。この方法は、化成化に長期間を
要し、また薬剤コストも割高になるため生産性が悪いプ
ロセスである。
【0006】また、陽極酸化電解法(アノダイズ法、ア
ノード電解法)においては、高い生産性を確保するため
に高濃度のアルカリ性浴を用いて高い電流密度という条
件のもとで銅材表面に酸化第二銅(CuO)からなる電気絶
縁層を形成するものである。前記したアノード電解法の
問題点は、少しの条件変動(アルカリ濃度、電流密度)
により生成する酸化銅が瞬時に再溶解するもので、その
プロセス管理が極めて難しいことである。更に、もう一
つの大きな問題点は、電解処理した製品を十分に水洗し
なければならないということである。製品にアルカリ分
が残存する場合、その除去処理のために要する大規模な
装置、大量の水、廃水処理などを考慮すると実用性に乏
しいものである。特に製品が撚線などの洗浄に不便な形
態をしている場合に問題となり、生産性が極めて低いも
のにならざるを得ない。
【0007】前記した銅材のアノード電解法における欠
点を解消するために、複数個のアルカリ性浴槽を直列状
に配設し、銅材の走行方向に沿って各浴槽中のアルカリ
濃度を順次低減せしめるとともに、各浴槽の平均アノー
ド電流を減少させることを特徴とした銅材のアノード電
解法が提案されている(特開昭58-31099号公報)。しか
しながら、前記した改良法も含めて従来の銅材のアノー
ド電解法においては、銅材表面に形成される酸化第二銅
(CuO)に基づく電気絶縁層は膜厚が厚く、かつ外部歪に
弱くクラックを発生しがちであり、かつ耐熱性も母材へ
の密着強度も不十分なものである。このことは、コイル
等において極めて薄くかつ耐熱性で剥離しない電気絶縁
層の確保という厳しい要求に対応することができないこ
とを示すものである。
【0008】(v) 一方本発明者らは、前記した従来技術
の欠点を解消するために、先に新たな提案を行なった。
即ち、本発明者らは銅素材を従来のアルカリ浴を用いる
アノード電解法とは全く異なる酸性〜中性サイドのヘキ
サシアノ鉄錯塩を用いてアノード電解を行ない、銅素材
表面に酸化銅とフェリ(またはフェロ)シアン化銅の複
合成分からなる新規な電気絶縁層を形成する方法を提案
した(特願平 2-36346号、特開平3-240999号)。しかし
ながら、前記した本発明者らの提案したヘキサシアノ鉄
錯塩を用いたアノード電解法においては、銅素材表面に
強靭な電気絶縁層を形成するという初期目的を達成する
ものではあるが、電解浴の劣化、及びこれに関連して生
成電気絶縁層の絶縁耐力にバラツキがみられるなど、ま
だ改善の余地を残すものである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】前記したように、本発
明者の先に提案した銅素材をヘキサシアノ鉄錯塩の酸性
電解浴を用いて陽極酸化するという新しい方法は、電解
浴の劣化の問題や生成電気絶縁層における絶縁耐力のバ
ラツキなどの問題を解決しなければならないものであ
る。本発明は、前記した問題点を解消すべく案出された
ものであり、銅素材を前記ヘキサシアノ鉄錯塩の酸性電
解浴での陽極酸化に先立って、苛性アルカリの電解浴で
の陽極酸化処理、特に高いアルカリ濃度でかつ高い液温
のアルカリ電解浴での陽極酸化処理を行なうことを特徴
とした銅素材表面に均質で強靭な、かつ耐熱性に優れた
電気絶縁層を形成する方法を提供するものである。
【0010】本発明により、従来のアノード電解法によ
る酸化第二銅(CuO)の単一成分からなる電気絶縁層のも
のと比較して、線牽きなどの各種の加工においてクラッ
クや剥離がなく、耐熱性や母材との密着性に優れた均質
薄膜の電気絶縁層を有する銅素材が極めて効率的に提供
される。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明を概説すれば、本
発明は、少なくとも表面が銅または銅基合金で構成され
る銅素材の表面に強靭な電気絶縁層を形成せしめる方法
において、(i) 前記銅素材を苛性アルカリのアルカリ電
解浴において陽極酸化処理を行ない、前記銅素材の表面
に酸化第二銅の薄膜層を形成し、次いで、(ii) 前記(i)
工程の処理物をヘキサシアノ鉄錯塩の酸性電解浴にお
いて陽極酸化処理を行なうこと、を特徴とする銅素材表
面における電気絶縁層の形成方法に関するものである。
以下本発明の技術的構成を詳しく説明する。
【0012】前記したように、本発明は、本発明者らの
先に提案した銅素材をヘキサシアノ鉄錯塩の酸性電解浴
による陽極酸化処理法の改良に関するものである。本発
明者らの先に提案した銅素材のヘキサシアノ鉄錯塩の酸
性電解浴による陽極酸化処理法は、ヘキサシアノ鉄錯塩
の中性〜弱酸性浴を用いて銅素材を陽極酸化するもので
ある。
【0013】しかしながら、この方法によると、次のよ
うな欠点が観察される。 (i) 通電初期にアノード側に生成するCu+2が、アノー
ド面に吸着しているOH- と反応し、下式により不安定
なCu(OH)2 を生成する。 Cu+2+2OH- →Cu(OH)2 前記アノード面に析出した水酸化銅は、不安定なため時
間とともに再浴解しゾル状の濃青色となって電解浴を汚
濁する。 (ii) 更に、銅素材の金属銅面の触媒的作用と思われる
可溶性プルシャンブルー(ベルリン酸カリ)K〔Fe+2
(CN)6 Fe+3〕の深青色コロイド状のものが、同時に生
成し、時間とともに増加する。 前記した両者(i) 、(ii)が相互に関連しあって電解浴が
老化し、かつこれに伴って生成電気絶縁層の絶縁耐力の
バラツキをもたらす。
【0014】このため、本発明においては前記したCu
+2の溶出を減少させること、及び金属銅部分の末梢を図
るという技術的手段を講じる。より具体的には本発明は
銅素材のヘキサシアノ鉄錯塩の酸性電解浴による陽極酸
化処理に先立って、第一段として苛性アルカリの濃厚ア
ルカリ電解浴において高温で銅素材を陽極酸化するとい
う手段を採用する。次いで、第二段として、前記第一段
の陽極酸化処理のあとに、ヘキサシアノ鉄錯塩の酸性電
解浴による陽極酸化処理を行なう。
【0015】前記第一電解浴での銅素材の陽極酸化処理
は、銅素材の金属銅面を急速に抹消して、Cu+2の電解
浴への過剰の溶解を抑制し、コロイド状青色のCu(OH)
2 の生成を抑制ないしは阻止するものである。従って、
第一電解浴の銅素材の陽極酸化処理においては、銅素材
の表面が直ちに黒色膜の酸化第二銅(CuO)が形成される
条件が好ましい。即ち、通電初期において、アノード面
においてCu+2が溶出し、飽和すると直ちにCuO膜を
形成する。そして更に電圧が上昇してCu+2が発生する
と、Cu(OH)2 で飽和されるまで反応が進行する。この
とき、第一電解浴のpHが12以上の濃アルカリの場
合、該Cu(OH)2 は溶解せず安定な膜となる。そして、
第一電解浴の浴温が高温、例えば80℃以上のとき、該
Cu(OH)2 は脱水反応を起こして黒色膜のCuOに変化
する。なお、本発明において、前記第一電解浴において
アノード面に一様なかつ緻密な酸化第二銅膜が形成され
た後は、浴中に大量のガスが発生するようになるので、
この時点をもって第一電解浴での陽極酸化処理を終了さ
せれば良い。本発明において、前記アルカリ電解浴を構
成するアルカリ材としては、苛性ソーダ(NaOH)、苛性カ
リ(KOH) などが用いられ、特にその濃厚浴液は、例えば
濃度が20重量%以上の濃厚浴液が好ましい。
【0016】本発明において、前記第一電解浴による銅
素材の陽極酸化処理において、電解浴へ酸化剤を添加し
てもよいことはいうまでもないことである。前記した酸
化剤としては、過硫酸カリ(K2 S 2 O 8 ) 、次亜塩素酸
ソーダ(NaClO) などが使用される。なお、添加量は通常
5〜10g/l である。
【0017】本発明において、前記第一電解浴(アルカ
リ電解浴)による陽極酸化処理に引続いて、銅素材は第
二電解浴(ヘキサシアノ鉄錯塩の酸性電解浴)による陽
極酸化処理に付される。この第二電解浴、即ちヘキサシ
アノ鉄錯塩の酸性電解浴による陽極酸化処理は、本発明
者らが前に提案したものと略同じ処理内容のものであ
る。ただし、第一電解浴での陽極酸化処理により金属銅
表面が酸化銅に変化しているため、高めの電圧条件を採
用すればよい。以下、第二電解浴での陽極酸化処理につ
いて説明する。
【0018】本発明の第二電解浴は、ヘキサシアノ鉄錯
塩の酸性浴が使用される。この種のヘキサシアノ鉄錯塩
としては、ヘキサシアノ鉄(II)酸塩、ヘキサシアノ鉄(I
II)酸塩などがあり、より具体的にはフェロシアン化カ
リウム(ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム,K4 [Fe(C
N)6 ])、フェリシアン化カリウム(ヘキサシアノ鉄(I
II) 酸カリウム,K3 [Fe(CN)6 ])などがある。本
発明において、ヘキサシアノ鉄錯塩をアノード電解浴の
主要な成分とするのは、次の理由による。即ち、ヘキサ
シアノフェリまたはヘキサシアノフェロ酸の鉄錯塩によ
り浴中にCNイオンを存在させるのは、前記第一電解浴
によるアノード電解により銅素材表面に形成された酸化
銅(CuO)からなる単一層(電気絶縁層)と鉄錯塩との複
合化を促進させるためである。しかしながら、CNイオ
ンの単塩のみでは、浴がアルカリ性となり酸化銅(CuO)
を再溶解させる可能性を大きくするだけであり、このた
め浴を略中性から酸性にする錯塩化合物を使用すること
にしている。
【0019】本発明において、第二電解浴において、下
記のアノード電解反応が進行するものと考えられる。 K4 [Fe(CN)6 ]+Cu+ →Cu4 [Fe(CN)6 ]……(1) K3 [Fe(CN)6 ]+Cu+ →Cu3 [Fe(CN)6 ]……(2) このようにして生成されるフェロシアン化銅(1)また
はフェリシアン化銅(2)は、更にアノード電解が進行
するにつれ酸化され、一部が酸化銅(CuO)に化学変化す
る。これは、アノード(陽極)より発生する[O]やO
2 によって、電解初期に生成されるフェロまたはフェリ
シアン化銅が酸化銅(CuO)に変化したものと考えられ
る。以上説明したように、本発明の第二電解浴によるア
ノード電解においては、銅素材の表面には黒色調の酸化
銅(CuO)という単一層の形成ではなく、酸化銅(CuO)と
フェロまたはフェリシアン化銅が共存した複合層が形成
されるものと考えられる。
【0020】本発明において、前記複合層の形成には、
第二電解浴によるアノード電解の条件を適切に設定しな
ければならないことはいうまでもないことである。前記
したヘキサシアノ鉄錯塩の酸性浴を用いることが必須の
要件であるが、複合層を効率的に形成するためには、通
電条件を低目にすることが重要である。一応の目安とし
てはCD2A/dm2 以下の電流密度で十分である。本発
明において、アノード電解は定電流電解が好ましく、目
的とする電気絶縁層の耐電圧特性に応じて電解時間を調
整すればよい。電解時間が長くなるにつれて電気絶縁層
の緻密さや膜厚が増大していき、これに伴って電解電圧
は自然に上昇していく。
【0021】本発明の第二電解浴によるアノード電解に
おいて、特に注意を要する点は、アノード面から発生す
るO2 を微弱にすることであり、ガス発生が多くなると
所期の目的が達成されない。前記した理由により、電解
条件を定電流電解でかつCD2A/dm2 以下とするもの
であり、CDが大きくなると発生ガスが多くなり膜の生
成を妨害したり剥離さしたりする。本発明において、第
二電浴によるアノード電解の条件としては、前記した電
流密度のもとで、好ましくは該錯塩の濃度が5〜100
g/l,pH値が3〜8で1〜15分間、より好ましくは
該錯塩の濃度が10〜40 g/l,pH値が3〜7.5で1
0〜15分間、最適には該錯塩の濃度が20〜30 g/
l,pH値が6〜7で12〜13分間、電解処理を行な
えばよい。本発明において、第二電解浴での陽極酸化に
おいて、pHを前記のようにpH=3〜8としているの
は、生成被膜を後述するように多孔質のものでなくバリ
ヤー型のものにするためである。一般の電解浴のように
強酸性液で電解処理すると、多孔質膜となり被膜の間隙
に電解液が浸透し化学的溶解や酸化を起こし、被膜の性
能を低下させる。また、電解浴が強酸、強アルカリにな
ると一旦生成したフェリシアン化銅、酸化銅などが再溶
解してしまう。
【0022】本発明の銅素材の表面における電気絶縁層
の形成法の大きな特徴点は、銅素材表面に形成された電
気絶縁層が、酸化銅(CuO)とフェロまたはフェリシアン
化銅が共存した複合層構造であるという点である。この
点、従来のアルマイト加工品にみられる被膜、例えばア
ルマイト電線の被膜は、アルミニウム母材表面の薄い酸
化アルミニウムのバリア層、該バリア層の上の多孔質
(約20%の多孔率を有する)の酸化アルミウムの厚い
ポーラス層という二層構造をなすものである。そして、
絶縁耐力は、該多孔質のポーラス層における空気層の絶
縁破壊の強さに相関するものである。周知のように、こ
のポーラス層は本質的に脆いものである。
【0023】これに対して、本発明の前記した複合層の
構造は、前記したアルマイト加工品の被膜構造との比較
でいえば、本発明の複合層は極めて薄く母材に強固に密
着したバリヤ層にとどまるものである。なお、本発明の
複合層をよりミクロ的にみると、銅素材の母材表面に近
い領域では酸化第二銅(CuO)が、中間領域ではフェロま
たはフェリシアン化銅の濃度が高く、母材表面から遠く
なるにつれ漸次酸化銅(CuO)の濃度が高くなるという層
構造をしているものである。即ち、本発明の電気絶縁層
としての複合層は、第一電解浴としてアルカリ電解浴、
第二電解浴として特定の錯塩浴を用いて銅素材をアノダ
イズするとともに、第二電解浴のアノード電解の初期に
生成するフェロまたはフェリシアン化銅を酸化させるこ
とにより形成されるものであり、従来のアルマイト加工
またはCu材のアノード電解技術により形成される電気
絶縁層とは全く構造を相違にするものである。
【0024】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳しく説明
するが、本発明は実施例のものに限定されないことはい
うまでもないことである。
【0025】(実施例1) (i) 第一電解浴での陽極酸化処理 第一電解浴を、NaOH 450 g/lの水溶液を90℃
に加熱したもので構成した。0.2mmφの銅線0.9g
(365 cm)をコイル状に巻回し(径 6mmφ)、これをア
ノード(陽極)とした。カソード(陰極)はカーボン極
を用いた。この電解系を、2V、2A/dm2 、80秒の
条件で運転し陽極酸化処理した。アノードとしての銅線
は一様に黒色のCuO被膜で覆われ、その後、アノード
面からガスの発生が盛んに出るのが認められた。その時
点で陽極酸化処理を停止した。 (ii) 第二電解浴での陽極酸化処理 次に、前記アノード(銅線コイル)を以下の第二電解浴
に移し、陽極酸化処理した。第二電解浴は、フェリシア
ン化カリウム(赤血塩),K3 [Fe(CN)6 ]20 g/l
の水溶液をつくり、HClを加えてpH=6とし、40
℃に加温したもので構成した。アノード電解は、負荷電
流をCD2A/dm2 以下に止め、アノード面から[O]
やO2 のガス発生が肉眼では認められない範囲内(CD
1〜1.5 A/dm2 )で漸増するようにして行なった。こ
の電解中、電圧は30V〜35Vになった。アノード電
解を12分間行なって濃褐色の平均膜厚2.5μmの電
気絶縁層を形成させた。アノード電解後、コイル状のも
のを直線状に引伸ばしたが、電気絶縁層は剥離せず、ま
たクラックの発生もなかった。また400℃のマッフル
炉内で10分間、加熱処理し、同様に直線状に引伸した
が、剥離もクラックの発生も認められなかった。前記の
ようにして調製した電気絶縁層の特性は、菊水電子工業
社製のTOS8750型耐圧試験器により、JIS C
3003金属シリンダー法に基づく絶縁耐力は150V
であった。なお、コイル状に巻回しなかった部分の絶縁
耐力は600Vを示した。
【0026】(比較例1)実施例1において、第一電解
浴による陽極酸化処理を省略したケースで実験した。こ
の場合、浴負荷が5Axhr/l になったところで浴は緑色
から青黒色へと漸次濃色化し、汚濁度も増大し、不透明
浴となった。しかしながら、前記実施例1の場合は、淡
黄色から僅かに褐黄色に変化するものの浴は透明度を保
ち、その後も引続いて電解することができる。前記実施
例1と比較例1により陽極酸化処理された試料におい
て、サンワ電器社製テスター器(BX-505型)による導通
抵抗値は、両者間に著しい相違はなかった。しかし、金
属シリンダー法による耐圧試験では、実施例1と比較例
1の間に大きな相違が認められた。即ち、前記したよう
にコイル状部において実施例1のものは全ての部位で1
50Vの絶縁耐力を示したが、比較例1のものは多くの
部位で絶縁耐力は50Vにとどまった。
【0027】(比較例2)NaOH 150g/l の水溶
液に過硫酸アンモン5g/l を添加して調製した化成化処
理液を用いて実施例1及び2の試料を処理した。この薬
剤酸化は、各試料を該化成化処理液中に90℃で20分
間浸漬して行なった。その結果、電気絶縁層の密着性は
極めて不十分なものであり、剥離した部分が多く、かつ
多くのクラックが認められた。
【0028】(実施例2)0.1mmφの銅線100cmを
8本撚合して撚線材としたものについて、実施例1と同
様にして第一電解浴及び第二電解浴によりアノード電解
を行なった。なお電解中、電流密度はCD1から1.5
A/dm2 へ漸増し、電圧は30〜35Vになった。第二
電解浴でのアノード電解処理を12分間行なって、表面
に黒色味をおびた暗褐色の膜厚2.5μmの絶縁層を形
成させた。電解処理品を径4mmφのコイル状に巻回した
が、絶縁層の剥離はなく、またクラックの発生もなかっ
た。耐熱度は実施例1のものと全く同じであった。次
に、サンワ電器社製テスター器(BX-505型)による導通
抵抗値は10KΩ×10の値を示した。
【0029】(比較例3)前記実施例2において、第一
電解浴を省略したケースで実験した。その結果、実施例
2と比較例3の両者において、導通抵抗試験では差が認
められなかったが、金属シリンダー法による耐圧試験で
は大きな相違が認められた。即ち、実施例2のものは全
ての部位で150Vの絶縁耐力を示したが、比較例3の
ものは多くの部位で絶縁耐力は50Vにとどまった。
【0030】
【発明の効果】本発明により銅素材表面に極めて効率的
に均質で強靭な電気絶縁層を形成させることができる。
そして、本発明の電気絶縁層は、従来の酸化銅からなる
単味層と相違して、酸化銅とフェリまたはフェロシアン
化銅とが複合した薄い複合層であり、これが銅母材に強
固に密着し、かつ耐熱性にも優れている。従って、本発
明により提供される銅素材表面に優れた特性の電気絶縁
層を有する材料は、各種の応用分野に適用することがで
きる。
【0031】特に、ハイテク産業機器の高度化、高精密
化、超小形化などに伴い厳しい使用条件が要求されて来
ているが、これらに対応することができる。より具体的
には、例えば磁気ヘッド、VTR用モーター、ステータ
ー、ファンモーターなどに使用される各種のコイルにお
いて、複雑な配線や小口径のコイル捲きなどが要求され
ているため、空隙率(ベーカンシー)、有孔率(ポーロ
シティ)、温度による影響などの極めて少ない材料が要
求されているが、本発明はこれらに適切に対応すること
ができる。また、本発明の銅素材の表面に形状される電
気絶縁層は、ミクロン単位の薄膜層であるため、本発明
はワイヤーハーネスやソレノイドなどのコイル部材の肥
大化抑止に有効であり、またカテーテル用の極細線にも
有効なものである。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも表面が銅または銅基合金で構
    成される銅素材の表面に強靭な電気絶縁層を形成せしめ
    る方法において、 (i).前記銅素材を苛性アルカリのアルカリ電解浴におい
    て陽極酸化処理を行ない、前記銅素材の表面に酸化第二
    銅の薄膜層を形成し、次いで、 (ii).前記(i)工程の処理物をヘキサシアノ鉄錯塩の酸性
    電解浴において陽極酸化処理を行なうこと、 を特徴とする銅素材表面における電気絶縁層の形成方
    法。
  2. 【請求項2】 苛性アルカリのアルカリ電解浴が、苛性
    ソーダ(NaOH)の高温浴で構成されるものである請
    求項1に記載の電気絶縁層の形成方法。
  3. 【請求項3】 ヘキサシアノ鉄錯塩の酸性電解浴が、該
    錯塩の濃度が5〜100g/l、pH値が3〜8で構成
    されるものである請求項1に記載の電気絶縁層の形成方
    法。
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