JP3227408U - 建築物の遮音構造 - Google Patents
建築物の遮音構造 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3227408U JP3227408U JP2020001103U JP2020001103U JP3227408U JP 3227408 U JP3227408 U JP 3227408U JP 2020001103 U JP2020001103 U JP 2020001103U JP 2020001103 U JP2020001103 U JP 2020001103U JP 3227408 U JP3227408 U JP 3227408U
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- sound insulation
- floor
- sound
- insulation structure
- field edge
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Images
Landscapes
- Building Environments (AREA)
Abstract
【課題】重量床衝撃音および軽量床衝撃音の双方をバランスよく軽減することができる建築物の遮音構造を提供する。【解決手段】遮音構造1は、構造躯体2であるH形鋼3の上に取り付けられたALC材4と、ALC材の上に敷設された遮音マット5と、遮音マットの上に敷設された合板6と、合板の上に敷設された床石膏ボード7とを備え、合板と床石膏ボードとが弾性接着剤8によって接着されている。【選択図】図1
Description
本考案は、遮音構造に関するものである。
従来から、集合住宅等の居住性においては、音環境の良し悪しが大きな要素として着目されている。特に、集合住宅等の下層階では、上層階における人の歩行や物の落下等による床衝撃音が、上層階と下層階との間に位置する界床を通じて伝わりやすく、居住者同士の騒音トラブルに発展することもある。そこで、この床衝撃音を抑制して音環境の改善をするため、遮音に関する様々な材料およびそれらの材料を用いた種々の組み合わせからなる構造等が提案されている(例えば、特許文献1)。
ところで、上層階から下層階に伝わる床衝撃音には、重量床衝撃音(LH)と軽量床衝撃音(LL)とが存在する。重量床衝撃音とは、子供が飛び跳ねた時、重い物が床に落下した時または椅子等の家具が引きずられた時等の「ドスン」「ガタン」等の鈍くて低い音のことをいい、軽量床衝撃音とは、コインや食器等の比較的軽い物が床に落下した時または人がスリッパを履いて歩いた時等の「チャリーン」「コツン」「パタパタ」等の軽めの高い音をいう。そして、床衝撃音に対する遮音性については、これらの床衝撃音がどの程度上層階から下層階に伝わるのか、床衝撃音遮断性能試験(JIS A 1418−2 建築物の床衝撃音遮断性能の測定方法に基づく試験)で測定され、音を遮る能力レベルの指標となる遮音等級(L値)によって表される。
ここで、特許文献1に記載された発明に係る遮音床構造は、上記の試験の結果として、2級程度(L−55)の遮音性能を有していることが示されている。この等級は、「床衝撃音が少し気になるが注意すれば問題ない」程度の遮音性とされており、居住空間における快適な音環境という面では、未だ改善の余地がある。また、集合住宅等の床衝撃音に対する遮音では、重量床衝撃音および軽量床衝撃音の双方をバランスよく軽減する必要があるところ、特許文献1に記載された発明に係る遮音床構造は、厚みの異なる緩衝材を並列に配置し、その上から床板が敷設されることを特徴とするものであって、主に重量床衝撃音に対する遮音を重点としており、床衝撃音に対する遮音としては十分な床構造とはいえない。
そこで、本考案は、重量床衝撃音および軽量床衝撃音の双方をバランスよく軽減することができる遮音構造の提供を目的とする。また、遮音性能を有する各種部材において、それぞれの特徴および性能をうまく組み合わせることで、従来の遮音構造と比較しても遮音性能に優れた遮音構造を提供することにある。
本考案の遮音構造は、構造躯体の上に取り付けられた軽量気泡コンクリート材と、前記軽量気泡コンクリート材の上に敷設された遮音マットと、前記遮音マットの上に敷設された合板と、前記合板の上に敷設された床石膏ボードとを備え、前記合板と前記床石膏ボードとが弾性接着剤によって接着された、ことを特徴とする。
本考案の遮音構造は、前記構造躯体に取り付けられた野縁下地材と、前記野縁下地材に取り付けられた防振吊木と、前記防振吊木に取り付けられた野縁部材と、前記野縁部材の下に取り付けられた天井石膏ボードとを備え、前記野縁部材の上に吸音材が敷設された、ことを特徴とする。
本考案の遮音構造は、前記天井石膏ボードが2枚重ねである、ことを特徴とする。
本考案の遮音構造は、前記野縁下地材と前記防振吊木とが、前記野縁下地材に取り付けられた吊木受けを介して取り付けられている、ことを特徴とする。
本考案の遮音構造は、前記構造躯体がH形鋼であり、前記H形鋼のウェブ部に沿って吸音材が敷き詰められた、ことを特徴とする。
本考案の遮音構造は、構造躯体の上に取り付けられた軽量気泡コンクリート材と、軽量気泡コンクリート材の上に敷設された遮音マットと、遮音マットの上に敷設された合板と、合板の上に敷設された床石膏ボードとを備え、合板と床石膏ボードとが弾性接着剤によって接着されている。すなわち、本考案の遮音構造は、上層階において子供が飛び跳ねたり物が落下したりした際に、まず始めに、音を通しにくい性質である床石膏ボードが、一定の床衝撃音を遮断する。次に、この床石膏ボードの下には、合板との間に弾性接着剤が塗布されており、この弾性接着剤が、硬化した後においても弾力性が残存することで、床衝撃音からの振動を吸収し、特に、軽量床衝撃音を軽減する。続けて、この弾性接着剤で接着された合板の下には、遮音マットが敷設されており、この遮音マットが、重量床衝撃音および軽量床衝撃音からの振動を吸収して、床衝撃音を軽減する。さらに、この遮音マットの下で、かつ、構造躯体の上には、軽量気泡コンクリート材が敷設されており、この軽量気泡コンクリート材のコンクリート内部の気泡において、重量床衝撃音および軽量床衝撃音の双方が吸音される。したがって、本考案の遮音構造全体として、高い遮音性能を発揮することができる。
本考案の遮音構造は、構造躯体に取り付けられた野縁下地材と、野縁下地材に取り付けられた防振吊木と、防振吊木に取り付けられた野縁部材と、野縁部材の下に取り付けられた天井石膏ボードとを備え、野縁部材の上に吸音材が敷設されている。すなわち、本考案の遮音構造では、床衝撃音を下層階においても遮音することができる。上層階と下層階とは、上層階と下層階の間に位置する界床によって区切られているが、この界床自体を通じて床衝撃音からの振動が下層階に伝わりやすいため、完全に床衝撃音を遮断することは容易ではない。そこで、本考案の遮音構造では、通常の吊木に代えて防振吊木を使用することで、この防振吊木に床衝撃音からの振動を吸収させ、上層階と下層階とを音環境としてできる限り独立した状態にし、下層階の天井に伝わる床衝撃音を抑制している。また、本考案の遮音構造では、防振吊木に取り付けられた野縁部材の下に天井石膏ボードが取り付けられ、さらに、この野縁部材の上には吸音材が敷設されていることから、上層階からの床衝撃音をこの吸音材で吸音するとともに、吸音しきれなかった床衝撃音を天井石膏ボードで遮断することができる。したがって、本考案の遮音構造全体として、高い遮音性能を発揮することができる。
本考案の遮音構造は、天井石膏ボードが2枚重ねになっている。すなわち、音を通しにくい性質を持つ石膏ボードを2枚重ねにすることで、下層階に伝わる床衝撃音に対する遮断性をより一層高めることができる。
本考案の遮音構造は、野縁下地材と防振吊木とが、野縁下地材に取り付けられた吊木受けを介して取り付けられている。すなわち、野縁下地材と防振吊木との間に吊木受けを設けることで、防振吊木の取り付けをより安定させることができる。また、防振吊木が、野縁下地材からさらに吊木受けを介して設けられ、床衝撃音からの振動が伝わりにくくなることで、遮音性能を一層高めることができる。
本考案の遮音構造は、構造躯体がH形鋼であり、H形鋼のウェブ部に沿って吸音材が敷き詰められている。したがって、本考案の遮音構造は、この吸音材が構造躯体から伝わる床衝撃音を吸音することで、遮音性能をより高めることができる。
本考案の第一の実施形態として、遮音構造1を、図1および図2を参照して、説明する。
遮音構造1は、図1に示すように、建築物の界床において用いられるものである。なお、建築物には、例えば、木造、軽量鉄骨造、鉄筋コンクリート造等の建築物が含まれるが、遮音構造1については、軽量鉄骨造の建築物における遮音構造として、以下にて説明する。
遮音構造1は、まず始めに、構造躯体2における大梁や小梁として組まれたH形鋼3の上に、軽量気泡コンクリート材(以下「ALC材4」とする。)が、取り付けられる。具体的には、H形鋼3を、フランジ部が上下方向になるようにして、角鋼等で構成される柱17等の上に横設し、これらの横設されたH形鋼3の上フランジ部3Aの上に、ALC材4が横架して敷設される。この敷設されたALC材4が、上層階200と下層階100との間に位置する境、すなわち界床となる。
なお、遮音構造1では、H形鋼3において、上下フランジ部までの高さをH寸法(H)、フランジ部の幅をB寸法(B)、フランジ部の厚みをt1寸法(t1)およびウェブ部の厚みをt2寸法(t2)としたときに、「(H)×(B)×(t1)×(t2)」が、「250mm×100mm×4.5mm×4.5mm」であるH形鋼と「200mm×100mm×4.5mm×4.5mm」であるH形鋼とを使用して、構造躯体2が形成されている。しかし、本実施形態に係る遮音構造は、これに限定されるものではなく、フランジ部の厚み(t1)が3.2mmのものや、ウェブ部の厚み(t2)が6mmであるもの等を用いてもよく、これらのH形鋼3の組み合わせについては建築予定の建築物に合わせて選択される。また、H形鋼3で組まれる構造躯体2の梁の長さ等についても、同様である。
ALC材4は、主に、珪石、セメント、生石灰および発泡剤のアルミ粉末等を原料として高温高圧蒸気養生された軽量気泡コンクリートで構成され、床用の部材として種々の補強がなされた床パネルである。ALC材4は、その内部に無数の気泡が形成されており、吸音性に優れた床材である。なお、ALC材4の厚み(D)は、100mmから150mmの間で形成されていることが好ましく、遮音性および居住空間の確保等を考慮すると、125mmの厚みが最も好ましい。さらに、ALC材4は、H形鋼3の上に載置された後に、ALC材4の裏側および上フランジ部3Aの裏側において、ALC材4の裏側の一部と上フランジ部3Aの裏側の一部とにわたって、クリップ金物(図示せず)が固定されることで、取り付けられている。なお、クリップ金物は、平板状の金属片が上フランジ部3Aの厚みぶんにクランク状に折り曲げられて形成されており、固定される際には、ALC材4の裏面と、上フランジ部3Aの厚み側面と、上フランジ部3Aの裏面とのそれぞれに隙間なく沿うようにして配置されて、固定される。また、ALC材4およびH形鋼3とクリップ金物とは、ボルトとナット等の固着具(図示せず)によって固定される。
次に、遮音構造1における上層階200の床下部分の構造について、以下にて説明する。
遮音構造1では、図1に示すように、上層階200の床下部分において、ALC材4の上の一面に、遮音マット5が敷設される。遮音マット5は、主に高比重の酸化鉄と粘弾性物質のアスファルトとが混錬されてマット状に形成され、その表裏の両面にポリエステル不織布が一体化されたものである。なお、遮音に関しては、質量が大きいほど音をはね返す力が強くなることから、比重が高い遮音マットが好ましく、建築予定の建築物に合わせて、コストや重量等を考慮して種々の遮音マットが選択される。敷設方法については、遮音マット5をALC材4の上に敷き詰めるだけで自重により安定するが、仮に安定しない場合には、釘、ネジ、ビスまたはステープル等の固着具(図示せず)または接着剤等で固定してもよい。
さらに、遮音構造1では、遮音マット5の上の一面に、合板6が敷設されている。合板6は、針葉樹の単板を乾燥させ、この単板を複数枚重ね合わせて接着剤で張り合わせることで形成される板のことであり、遮音構造1では、遮音マット5をその上から押さえつけて安定的に固定するとともに、この合板6の上に弾性接着剤8を塗布するための下地材となる。なお、合板6は、遮音マット5に、釘、ネジ、ビスまたはステープル等の固着具によって固定される。
次に、遮音構造1では、合板6の上の一面に、床石膏ボード7が敷設される。床石膏ボード7は、石膏を主原料とした素材を板状に成形し、その両面を石膏ボード用原紙で被覆した内装部材である。また、石膏ボードは様々の種類が存在するが、床石膏ボード7では、遮音性能の観点から、超硬質で、高強度の普通硬質石膏ボードを用いることが好ましい。さらに、床石膏ボード7は、その四隅において、合板6に、釘、ネジ、ビスまたはステープル等の固着具によって固定される。なお、一般に、床下の遮音構造には、2枚の石膏ボードを重ねて敷設するものも存在するが、遮音性能、コストおよび居住空間の確保等を考慮すると、本実施形態に係る遮音構造1では、1枚の床石膏ボード7で構成されることが好ましい。
さらに、遮音構造1では、床石膏ボード7を合板6の上に敷設するにあたり、予め合板6の上の一面に弾性接着剤8が塗布され、この弾性接着剤8の上に床石膏ボード7が敷設される。この弾性接着剤8は、硬化後も弾力性が残る特殊接着剤であり、この弾力性によって制振性を有するといった特徴がある。なお、合板6の上に弾性接着剤8を塗布する際には、合板6の上における一面の塗布量を一定にし、この弾性接着剤8が合板6と床石膏ボード7との間に均等に馴染むようにするため、櫛目のあるヘラで櫛形に櫛目引きをすることが好ましい。
また、遮音構造1では、床石膏ボード7の上の一面において、床仕上げ材9が敷設されている。具体的には、床石膏ボード7の上の一面において、所定のサイズに形成された木板または木質材料による床板が、フローリングとして敷き詰められている。なお、フローリングの床材の種類については、一枚の厚い天然無垢材からなる板材を敷き詰める単層フローリングまたは薄い板を重ねて合わせてその表面に天然木板を接着した板材を敷き詰める複合フローリングのいずれであってもよい。また、床仕上げ材9は、ウレタン樹脂系の接着剤等によって固定される。さらに、遮音構造1では、床仕上げ材9としてフローリングの施工がされた実施形態を示したが、これに限定されるものではなく、床仕上げ材9がカーペット等の他の床仕上げ材で構成されていてもよい。
続いて、遮音構造1における下層階100の天井裏部分について、以下にて説明する。なお、遮音構造1は、上層階200の床下部分の構造と、下層階100の天井裏部分の構造とからなるものとして説明するが、上記した上層階200の床下部分の構造を他の構造と組み合わせて用いる場合等には、上記した上層階200の床下部分の構造のみで施工されてもよく、以下に説明する下層階100の天井裏部分の構造についても同様である。
遮音構造1では、図1および図2に示すように、下層階100の天井裏部分において、H形鋼3の上フランジ部3Aと下フランジ部3Bとの間に、複数の野縁下地材10が取り付けられている。野縁下地材10は、その長さ(L)が、上フランジ部3Aと下フランジ部3Bとの間において、H形鋼3のウェブ部3Cに沿って嵌る長さに形成された角材である。また、野縁下地材10は、その厚み(D)が、野縁下地材10が上フランジ部3Aと下フランジ部3Bとの間に嵌め込まれた際に、野縁下地材10の下部に後述する防振吊木12が取り付けられる程度に、下フランジ部3Bから張り出すようにして形成されている。なお、野縁下地材10において、その下部に防振吊木12が取り付けられる程度に下フランジ部3Bから張り出す厚み(D)の確保が困難な場合等には、野縁下地材10とウェブ部3Cとの間に、さらに下地材として、木材等からなる複数の平板(図示せず)等を挟み込み、野縁下地材10の張り出し具合を調整してもよい。また、野縁下地材10が下フランジ部3Bから張り出す長さは、図1または図2において図示されたものに限定されず、任意である。
また、遮音構造1では、図1に示すように、H形鋼3の上フランジ部3Aと下フランジ部3Bとの間であって、野縁下地材10が取り付けられていない部分において、吸音材14がウェブ部3Cに沿って敷き詰められている。具体的には、吸音材14は、玄武岩等の天然岩石等を主原料とした人造鉱物繊維であるロックウールが袋詰めにされたものまたはガラスを主原料としたガラス繊維からなる綿状素材のグラスウールが袋詰めにされたものが、複数連なってマット状に形成されたものである。ロックウールおよびガラスウールは、それぞれ繊維自体に空気を多く含んでいるため、吸音性および断熱性に優れている。なお、遮音構造1では、構造躯体2としてH形鋼3が用いられ、そのH形鋼3のウェブ部3Cに沿って、吸音材14が敷き詰められているが、建築物が木造である場合には梁や吊り木等の木材に沿って、建築物が鉄筋コンクリート造である場合には、コンクリートで形成された梁等に沿って、吸音材14が敷き詰められていてもよい。また、吸音材14を敷き詰める空間が確保できない場合等には、吸音材14が敷き詰められていない実施形態であってもよい。
さらに、遮音構造1では、図1および図2に示すように、野縁下地材10の下部に、防振吊木12が取り付けられている。この防振吊木12は、野縁下地材10に取り付けられる金属製の第一取付プレート12Aと、後述する野縁部材13に取り付けられる金属製の第二取付プレート12Bと、第一取付プレート12Aと第二取付プレート12Bとの間に介在されて両者を一体に連結するゴム製の防振部材12Cとを備えた連結金具である。具体的な取付方法としては、第一取付プレート12Aを上方に、第二取付プレート12Bを下方に向けた状態において、野縁下地材10における下部の側面すなわち野縁下地材10におけるH形鋼3のウェブ部3Cに接する側面に対向する側面の下部に、第一取付プレート12Aを配置し、防振吊木12の第一取付プレート12A以外の部位が野縁下地材10の下部から垂下するようにして、第一取付プレート12Aを野縁下地材10に固定する。そして、この野縁下地材10に垂設された防振吊木12の第二取付プレート12Bに、野縁部材13が取り付けられる。この防振吊木12は、防振部材12Cにおける弾力性によって、床衝撃音からの振動を吸収し、下層階100に伝わる床衝撃音を軽減することができる。また、下層階100の天井が防振部材12Cを設けて形成されることで、音環境として上層階200と下層階100とを独立した空間に近づけることができる。さらに、防振吊木12の第一取付プレート12Aには、上記した野縁下地材10に固定された部位における水平方向の両端のいずれかにおいて、この部位に対して垂直に、金属製のプレートである予備第一取付プレート12Dが連接されている。したがって、この防振吊木12は、上記した固定方法において、防振吊木12本体の向きを変えることなく、第一取付プレート12Aに対向する野縁下地材10だけでなく、水平方向に90度向きを変えてこの予備第一取付プレート12Dに対向する位置においてH形鋼3に嵌め込まれた別の野縁下地材10にも、固定することができる。なお、第一取付プレート12A、第二取付プレート12Bおよび予備第一取付プレート12Dのそれぞれには、複数の固着具孔12Eが形成されており、この固着具孔12Eに、釘、ネジまたはビス等の防振吊木用固着具12Fが通されることによって、防振吊木12が野縁下地材10および野縁部材13に固定される。
また、遮音構造1では、図1および図2に示すように、野縁下地材10の下部から垂設された防振吊木12の下部において、野縁部材13が取り付けられている。この野縁部材13は、複数の角材が格子状に軸組みされた部材であって、天井一面を覆うようにして配置され、複数の防振吊木12によって固定される。
さらに、遮音構造1では、図1に示すように、野縁部材13の上に、吸音効果および断熱効果のある吸音材14が敷き詰められている。具体的には、吸音材14は、上記したH形鋼3の上フランジ部3Aと下フランジ部3Bとの間に敷き詰められたものと同様のものであり、この吸音材14が、格子状の野縁部材13を構成する角材の上において、隙間なく敷き詰められて、載置される。なお、遮音構造1では、ロックウールとグラスウールとで双方の遮音性能を比較すると、吸音材14としてロックウールが用いられることが好ましい。
また、遮音構造1では、野縁部材13の下に、天井石膏ボード15が2枚重ねて取り付けられている。具体的には、この天井石膏ボード15は、天井用の強化石膏ボードであって、石膏の芯にガラス繊維などの無機繊維が加えられたものである。これらの天井石膏ボード15は、野縁部材13の下において、天井一面を覆うようにして配置され、釘、ネジまたはビス等の固着具によって野縁部材13に固定される。なお、図1には図示していないが、2枚の天井石膏ボード15を重ねて取り付ける際には、1層目の複数の天井石膏ボード15によって形成される天井石膏ボード15同士の繋ぎ目を、2層目の天井石膏ボード15で塞ぐようにして配置し、それぞれの層における天井石膏ボード15同士の継ぎ目が極力重ならないようにして施工されることが望ましい。なお、遮音構造1として、天井石膏ボード15が2枚重ねである実施形態を示したが、天井石膏ボード15の取り付けに十分な空間がとれない場合またはなるべく広い居住空間を確保する必要がある場合等には、天井石膏ボード15が1枚だけで施工されていてもよい。
さらに、遮音構造1では、2枚重ねて取り付けられた天井石膏ボード15の下において、天井仕上げ材16が貼着されている。具体的には、天井仕上げ材16は、塩化ビニール樹脂等を主素材としたビニールシートに、紙などの裏打ちがされたビニールクロスであり、2枚重ねて取り付けられた天井石膏ボード15の下に、接着剤によって貼着される。なお、遮音構造1では、天井仕上げ材16にビニールクロスが貼着された実施形態を示したが、これに限定されるものではなく、天井仕上げ材16が紙クロス等の他の天井仕上げ材で構成されているものであってもよく、また、天井仕上げ材16を取り付けず、ペンキ等が塗布されて天井が仕上げられているものであってもよい。
また、遮音構造1では、図1に示すように、柱17の周囲における側面のうち少なくとも室内側になる側面に沿って、耐火材として壁石膏ボード19が設けられている。具体的には、壁石膏ボード19は、耐火材用下地18を介して、構造躯体2であるH形鋼3に固定されて設けられる。この壁石膏ボード19は、床石膏ボード7と同様の超硬質で高強度の普通硬質石膏ボードにより構成され、耐火性能に優れている。また、耐火材用下地18は、略C字状のリップ溝形鋼または角柱状の軽角形鋼等の軽量形鋼材(以下「LGS材」とする。)により構成される。具体的な取付方法としては、H形鋼3の長手方向に沿って、かつ、下フランジ部3Bの下端において、略コ字状に下方が開口した金属製のレール部材であるランナー(図示せず)が、溶接によって固定される。この固定されたランナーの開口部(図示せず)において、直立させたLGS材の上端部が嵌め込まれ、釘、ネジまたはビス等の固着具によって、ランナーとLGS材とが固定される。これにより、H形鋼3と耐火材用下地18とが固定される。さらに、この固定された耐火材用下地18に沿わせて壁石膏ボード19を直立させ、釘、ネジ、ビスまたはステープル等の固着具によって、耐火材用下地18と壁石膏ボード19とが固定される。これにより、壁石膏ボード19が、柱17における室内側の側面に沿って設けられる。なお、壁石膏ボード19は、1枚のみで施工されてもよく、複数枚重ねて施工されていてもよい。
また、図1には図示していないが、耐火材用下地18は、木製の板材等で構成されていてもよい。この場合には、壁石膏ボード19は、耐火材用下地18を介して、柱17に固定されて設けられる。耐火材用下地18には、柱17の幅寸法から張り出す幅に形成された2枚の木製の板材等が用いられる。具体的な取付方法としては、この2枚の板材等を直立させ、柱17の周囲における側面のうち対向する2側面を挟むようにして配置し、釘、ネジ、ビス等の固着具によって、柱17と2枚の板材等とが固定される。また、この固定された2枚の板材等における室内側の縁において、直立させた壁石膏ボード19が配置され、釘、ネジ、ビスまたはステープル等の固着具によって、2枚の板材等と壁石膏ボード19とが固定される。これにより、柱17と耐火材用下地18とが固定され、また、耐火材用下地18と壁石膏ボード19とが固定される。なお、耐火材用下地18に木製の板材等を用いる場合には、柱17と壁石膏ボード19との間に、耐火材用下地18が柱17から張り出すぶんにおいて隙間が設けられる。また、耐火材用下地18に木製の板材等を用いる場合には、壁石膏ボード19に、天井石膏ボード15と同様の石膏の芯にガラス繊維などの無機繊維が加えられた強化石膏ボードを用いることが好ましい。
さらに、上記した柱17、耐火材用下地18および壁石膏ボード19等からなる構造では、耐火材用下地18であるLGS材または木製の板材等と、普通硬質石膏ボードまたは強化石膏ボード等の種々の石膏ボードから選択される1枚または複数枚の壁石膏ボード19とを、所定の条件を満たすように組み合わせて施工することで、耐火構造(建築基準法施行令第107条に定める技術的基準に適合する耐火性能を持つ構造)または準耐火構造(建築基準法施行令第107条の2に定める技術的基準に適合する耐火性能を持つ構造)に準拠した構造とすることができる。なお、遮音構造1において、耐火構造または準耐火構造に準拠した構造を採用するか否かは任意であり、柱17、耐火材用下地18および壁石膏ボード19等のそれぞれの構成についても、上記したものに限定されるものではない。
ここまで、遮音構造1における下層階100の天井裏部分の構造を説明したが、下層階100の天井裏部分の構造を他の構造と組み合わせて用いる場合等には、上記した下層階100の天井裏部分の構造のみで施工されてもよく、この点は上層階200の床下部分の構造と同様である。
以上、図1および図2に基づいて遮音構造1について説明したが、以下においては、第二の実施形態として、図3に基づき、野縁下地材10の下部において吊木受け11が設けられた吊木受け遮音構造20について、説明する。
吊木受け11とは、図3に示すように、野縁下地材10の下部において接合され、互いに対向するH形鋼3にわたって横架して設けられる角材である。吊木受け遮音構造20では、この吊木受け11に防振吊木12が複数固定され、この防振吊木12の下部に野縁部材13が固定される。すなわち、吊木受け遮音構造20では、これらの複数の部材を介して下層階100の天井が設けられる。したがって、下層階100の天井が、梁を構成するH形鋼3または界床のALC材4から直接吊るされておらず、また、下層階100の天井が、上記した複数の部材を介して、梁を構成するH形鋼3や界床のALC材4から一定の距離を空けて設けられることで、上層階200からの床衝撃音がより下層階100に伝わりにくい遮音構造とすることができる。なお、防振吊木12の固定方法は、防振吊木12を野縁下地材10に代えて吊木受け11に取り付ける点以外は、遮音構造1と同様である。
以上、吊木受け11について説明したが、吊木受け遮音構造20は、その防振吊木12が吊木受け11を介して取り付けられている点以外の構成は、遮音構造1と同様である。そのため、吊木受け遮音構造20におけるその他の構成についての説明は、省略する。なお、本考案に係る実施形態として、下層階100の天井裏の空間が十分に確保できる場合等には上記した吊木受け遮音構造20が、下層階100の天井裏の空間が十分に確保できない場合等には、吊木受け11を設けずに、野縁下地材10に直接防振吊木12を取り付ける遮音構造1が、それぞれ選択的に施工される。
次に、本実施形態の遮音構造1および吊木受け遮音構造20の効果について説明する。
遮音構造1および吊木受け遮音構造20は、構造躯体2において梁を構成するH形鋼3の上に取り付けられたALC材4と、ALC材4の上に敷設された遮音マット5と、遮音マット5の上に敷設された合板6と、合板6の上に敷設された床石膏ボード7とを備え、合板6と床石膏ボード7とが弾性接着剤8によって接着されている。すなわち、遮音構造1は、上層階200において子供が飛び跳ねたり物が落下したりした際に、まず始めに、音を通しにくい性質である床石膏ボード7が、一定の床衝撃音を遮断する。次に、この床石膏ボード7の下には、合板6との間に弾性接着剤8が塗布されており、この弾性接着剤8が、硬化した後においても弾力性が残存することで、床衝撃音からの振動を吸収し、特に、軽量床衝撃音を軽減する。続けて、この弾性接着剤8で接着された合板6の下には、遮音マット5が敷設されており、この遮音マット5が、重量床衝撃音および軽量床衝撃音からの振動を吸収して、床衝撃音を軽減する。さらに、この遮音マット5の下で、かつ、構造躯体2を構成するH形鋼3の上には、ALC材4が敷設されており、このALC材4のコンクリート内部の気泡において、重量床衝撃音および軽量床衝撃音の双方が吸音される。したがって、遮音構造1および吊木受け遮音構造20全体として、高い遮音性能を発揮することができる。
また、遮音構造1は、構造躯体2において梁を構成するH形鋼3に取り付けられた野縁下地材10と、野縁下地材10の下部に取り付けられた防振吊木12と、防振吊木12の下部に取り付けられた野縁部材13と、野縁部材13の下に取り付けられた天井石膏ボード15とを備え、野縁部材13の上に吸音材14が敷設されている。すなわち、遮音構造1では、床衝撃音を下層階100においても遮音することができる。上層階200と下層階100とは、上層階200と下層階100の間に位置する界床すなわちALC材4によって区切られているため、このALC材4を通じて床衝撃音からの振動が下層階100に伝わりやすい。したがって、完全に床衝撃音を遮断することは容易ではない。そこで、遮音構造1では、通常の吊木に代えて防振吊木12を使用し、この防振吊木12に床衝撃音からの振動を吸収させ、上層階200と下層階100とを音環境としてできる限り独立した状態にすることで、下層階100の天井に伝わる床衝撃音を抑制することができる。また、遮音構造1では、防振吊木12に取り付けられた野縁部材13の下に天井石膏ボード15が取り付けられ、さらに、この野縁部材13の上には吸音材14が敷設されていることから、上層階200からの床衝撃音をこの吸音材14で吸音するとともに、吸収しきれなかった床衝撃音を天井石膏ボード15で遮断することができる。したがって、遮音構造1全体として、高い遮音性能を発揮することができる。
さらに、吊木受け遮音構造20では、上記した遮音構造1における構成に加えて、野縁下地材10と防振吊木12とが、野縁下地材10の下部に取り付けられた吊木受け11を介して取り付けられている。すなわち、野縁下地材10と防振吊木12との間に吊木受け11を設けることで、防振吊木12の取り付けをより安定させることができる。また、防振吊木12が、野縁下地材10からさらに吊木受け11を介して設けられることで、床衝撃音からの振動がより伝わりにくくなり、遮音性能を一層高めることができる。
さらに、遮音構造1および吊木受け遮音構造20は、天井石膏ボード15が2枚重ねになっている。すなわち、音を通しにくい性質を持つ石膏ボードを2枚重ねにすることで、下層階100に伝わる床衝撃音に対する遮断性をより一層高めることができる。
遮音構造1および吊木受け遮音構造20は、構造躯体2を構成するH形鋼3のウェブ部3Cに沿って吸音材14が敷き詰められている。したがって、遮音構造1および吊木受け遮音構造20は、この吸音材14が構造躯体2を構成するH形鋼3から伝わる床衝撃音を吸音することで、遮音性能をより高めることができる。
以上、本考案の実施形態を詳述したが、本考案は上記実施形態に限定されるものではない。そして、本考案は、実用新案登録請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
また、野縁下地材10、吊木受け11および野縁部材13等における角材の長さ、幅および厚さ等の規格、H形鋼3の上下フランジ部3A、3B間の長さ、各フランジ部3A、3Bおよびウェブ部3C等の幅や厚さ、並びにH形鋼3自体の長さ等についても、建築予定の建築物に合わせて適宜選択されるものである。
1 遮音構造
2 構造躯体
3 H形鋼
3A 上フランジ部
3B 下フランジ部
3C ウェブ部
4 ALC材(軽量気泡コンクリート材)
5 遮音マット
6 合板
7 床石膏ボード
8 弾性接着剤
9 床仕上げ材
10 野縁下地材
11 吊木受け
12 防振吊木
12A 第一取付プレート
12B 第二取付プレート
12C 防振部材
12D 予備第一取付プレート
12E 固着具孔
12F 防振吊木用固着具
13 野縁部材
14 吸音材
15 天井石膏ボード
16 天井仕上げ材
17 柱
18 耐火材用下地
19 壁石膏ボード
20 吊木受け遮音構造
100 下層階
200 上層階
2 構造躯体
3 H形鋼
3A 上フランジ部
3B 下フランジ部
3C ウェブ部
4 ALC材(軽量気泡コンクリート材)
5 遮音マット
6 合板
7 床石膏ボード
8 弾性接着剤
9 床仕上げ材
10 野縁下地材
11 吊木受け
12 防振吊木
12A 第一取付プレート
12B 第二取付プレート
12C 防振部材
12D 予備第一取付プレート
12E 固着具孔
12F 防振吊木用固着具
13 野縁部材
14 吸音材
15 天井石膏ボード
16 天井仕上げ材
17 柱
18 耐火材用下地
19 壁石膏ボード
20 吊木受け遮音構造
100 下層階
200 上層階
本考案は、建築物の遮音構造に関するものである。
従来から、集合住宅等の居住性においては、音環境の良し悪しが大きな要素として着目されている。特に、集合住宅等の下層階では、上層階における人の歩行や物の落下等による床衝撃音が、上層階と下層階との間に位置する界床を通じて伝わりやすく、居住者同士の騒音トラブルに発展することもある。そこで、この床衝撃音を抑制して音環境の改善をするため、遮音に関する様々な材料およびそれらの材料を用いた種々の組み合わせからなる構造等が提案されている(例えば、特許文献1)。
ところで、上層階から下層階に伝わる床衝撃音には、重量床衝撃音(LH)と軽量床衝撃音(LL)とが存在する。重量床衝撃音とは、子供が飛び跳ねた時、重い物が床に落下した時または椅子等の家具が引きずられた時等の「ドスン」「ガタン」等の鈍くて低い音のことをいい、軽量床衝撃音とは、コインや食器等の比較的軽い物が床に落下した時または人がスリッパを履いて歩いた時等の「チャリーン」「コツン」「パタパタ」等の軽めの高い音をいう。そして、床衝撃音に対する遮音性については、これらの床衝撃音がどの程度上層階から下層階に伝わるのか、床衝撃音遮断性能試験(JIS A 1418−2 建築物の床衝撃音遮断性能の測定方法に基づく試験)で測定され、音を遮る能力レベルの指標となる遮音等級(L値)によって表される。
ここで、特許文献1に記載された発明に係る遮音床構造は、上記の試験の結果として、2級程度(L−55)の遮音性能を有していることが示されている。この等級は、「床衝撃音が少し気になるが注意すれば問題ない」程度の遮音性とされており、居住空間における快適な音環境という面では、未だ改善の余地がある。また、集合住宅等の床衝撃音に対する遮音では、重量床衝撃音および軽量床衝撃音の双方をバランスよく軽減する必要があるところ、特許文献1に記載された発明に係る遮音床構造は、厚みの異なる緩衝材を並列に配置し、その上から床板が敷設されることを特徴とするものであって、主に重量床衝撃音に対する遮音を重点としており、床衝撃音に対する遮音としては十分な床構造とはいえない。
そこで、本考案は、重量床衝撃音および軽量床衝撃音の双方をバランスよく軽減することができる建築物の遮音構造の提供を目的とする。また、遮音性能を有する各種部材において、それぞれの特徴および性能をうまく組み合わせることで、従来の建築物の遮音構造と比較しても遮音性能に優れた建築物の遮音構造を提供することにある。
本考案に係る建築物の遮音構造は、構造躯体の上に取り付けられた軽量気泡コンクリート材と、前記軽量気泡コンクリート材の上に敷設された遮音マットと、前記遮音マットの上に敷設された合板と、前記合板の上に敷設された床石膏ボードとを備え、前記合板と前記床石膏ボードとが弾性接着剤によって接着された、ことを特徴とする。
本考案に係る建築物の遮音構造は、前記構造躯体に取り付けられた野縁下地材と、前記野縁下地材に取り付けられた防振吊木と、前記防振吊木に取り付けられた野縁部材と、前記野縁部材の下に取り付けられた天井石膏ボードとを備え、前記野縁部材の上に吸音材が敷設された、ことを特徴とする。
本考案に係る建築物の遮音構造は、前記天井石膏ボードが2枚重ねである、ことを特徴とする。
本考案に係る建築物の遮音構造は、前記野縁下地材と前記防振吊木とが、前記野縁下地材に取り付けられた吊木受けを介して取り付けられている、ことを特徴とする。
本考案に係る建築物の遮音構造は、前記構造躯体がH形鋼であり、前記H形鋼のウェブ部に沿って吸音材が敷き詰められた、ことを特徴とする。
本考案に係る建築物の遮音構造は、構造躯体の上に取り付けられた軽量気泡コンクリート材と、軽量気泡コンクリート材の上に敷設された遮音マットと、遮音マットの上に敷設された合板と、合板の上に敷設された床石膏ボードとを備え、合板と床石膏ボードとが弾性接着剤によって接着されている。すなわち、本考案に係る建築物の遮音構造は、上層階において子供が飛び跳ねたり物が落下したりした際に、まず始めに、音を通しにくい性質である床石膏ボードが、一定の床衝撃音を遮断する。次に、この床石膏ボードの下には、合板との間に弾性接着剤が塗布されており、この弾性接着剤が、硬化した後においても弾力性が残存することで、床衝撃音からの振動を吸収し、特に、軽量床衝撃音を軽減する。続けて、この弾性接着剤で接着された合板の下には、遮音マットが敷設されており、この遮音マットが、重量床衝撃音および軽量床衝撃音からの振動を吸収して、床衝撃音を軽減する。さらに、この遮音マットの下で、かつ、構造躯体の上には、軽量気泡コンクリート材が敷設されており、この軽量気泡コンクリート材のコンクリート内部の気泡において、重量床衝撃音および軽量床衝撃音の双方が吸音される。したがって、本考案に係る建築物の遮音構造全体として、高い遮音性能を発揮することができる。
本考案に係る建築物の遮音構造は、構造躯体に取り付けられた野縁下地材と、野縁下地材に取り付けられた防振吊木と、防振吊木に取り付けられた野縁部材と、野縁部材の下に取り付けられた天井石膏ボードとを備え、野縁部材の上に吸音材が敷設されている。すなわち、本考案に係る建築物の遮音構造では、床衝撃音を下層階においても遮音することができる。上層階と下層階とは、上層階と下層階の間に位置する界床によって区切られているが、この界床自体を通じて床衝撃音からの振動が下層階に伝わりやすいため、完全に床衝撃音を遮断することは容易ではない。そこで、本考案に係る建築物の遮音構造では、通常の吊木に代えて防振吊木を使用することで、この防振吊木に床衝撃音からの振動を吸収させ、上層階と下層階とを音環境としてできる限り独立した状態にし、下層階の天井に伝わる床衝撃音を抑制している。また、本考案に係る建築物の遮音構造では、防振吊木に取り付けられた野縁部材の下に天井石膏ボードが取り付けられ、さらに、この野縁部材の上には吸音材が敷設されていることから、上層階からの床衝撃音をこの吸音材で吸音するとともに、吸音しきれなかった床衝撃音を天井石膏ボードで遮断することができる。したがって、本考案に係る建築物の遮音構造全体として、高い遮音性能を発揮することができる。
本考案に係る建築物の遮音構造は、天井石膏ボードが2枚重ねになっている。すなわち、音を通しにくい性質を持つ石膏ボードを2枚重ねにすることで、下層階に伝わる床衝撃音に対する遮断性をより一層高めることができる。
本考案に係る建築物の遮音構造は、野縁下地材と防振吊木とが、野縁下地材に取り付けられた吊木受けを介して取り付けられている。すなわち、野縁下地材と防振吊木との間に吊木受けを設けることで、防振吊木の取り付けをより安定させることができる。また、防振吊木が、野縁下地材からさらに吊木受けを介して設けられ、床衝撃音からの振動が伝わりにくくなることで、遮音性能を一層高めることができる。
本考案に係る建築物の遮音構造は、構造躯体がH形鋼であり、H形鋼のウェブ部に沿って吸音材が敷き詰められている。したがって、本考案に係る建築物の遮音構造は、この吸音材が構造躯体から伝わる床衝撃音を吸音することで、遮音性能をより高めることができる。
本考案の第一の実施形態として、遮音構造1を、図1および図2を参照して、説明する。
遮音構造1は、図1に示すように、建築物の界床において用いられるものである。なお、建築物には、例えば、木造、軽量鉄骨造、鉄筋コンクリート造等の建築物が含まれるが、遮音構造1については、軽量鉄骨造の建築物における遮音構造として、以下にて説明する。
遮音構造1は、まず始めに、構造躯体2における大梁や小梁として組まれたH形鋼3の上に、軽量気泡コンクリート材(以下「ALC材4」とする。)が、取り付けられる。具体的には、H形鋼3を、フランジ部が上下方向になるようにして、角鋼等で構成される柱17等の上に横設し、これらの横設されたH形鋼3の上フランジ部3Aの上に、ALC材4が横架して敷設される。この敷設されたALC材4が、上層階200と下層階100との間に位置する境、すなわち界床となる。
なお、遮音構造1では、H形鋼3において、上下フランジ部までの高さをH寸法(H)、フランジ部の幅をB寸法(B)、フランジ部の厚みをt1寸法(t1)およびウェブ部の厚みをt2寸法(t2)としたときに、「(H)×(B)×(t1)×(t2)」が、「250mm×100mm×4.5mm×4.5mm」であるH形鋼と「200mm×100mm×4.5mm×4.5mm」であるH形鋼とを使用して、構造躯体2が形成されている。しかし、本実施形態に係る遮音構造は、これに限定されるものではなく、フランジ部の厚み(t1)が3.2mmのものや、ウェブ部の厚み(t2)が6mmであるもの等を用いてもよく、これらのH形鋼3の組み合わせについては建築予定の建築物に合わせて選択される。また、H形鋼3で組まれる構造躯体2の梁の長さ等についても、同様である。
ALC材4は、主に、珪石、セメント、生石灰および発泡剤のアルミ粉末等を原料として高温高圧蒸気養生された軽量気泡コンクリートで構成され、床用の部材として種々の補強がなされた床パネルである。ALC材4は、その内部に無数の気泡が形成されており、吸音性に優れた床材である。なお、ALC材4の厚み(D)は、100mmから150mmの間で形成されていることが好ましく、遮音性および居住空間の確保等を考慮すると、125mmの厚みが最も好ましい。さらに、ALC材4は、H形鋼3の上に載置された後に、ALC材4の裏側および上フランジ部3Aの裏側において、ALC材4の裏側の一部と上フランジ部3Aの裏側の一部とにわたって、クリップ金物(図示せず)が固定されることで、取り付けられている。なお、クリップ金物は、平板状の金属片が上フランジ部3Aの厚みぶんにクランク状に折り曲げられて形成されており、固定される際には、ALC材4の裏面と、上フランジ部3Aの厚み側面と、上フランジ部3Aの裏面とのそれぞれに隙間なく沿うようにして配置されて、固定される。また、ALC材4およびH形鋼3とクリップ金物とは、ボルトとナット等の固着具(図示せず)によって固定される。
次に、遮音構造1における上層階200の床下部分の構造について、以下にて説明する。
遮音構造1では、図1に示すように、上層階200の床下部分において、ALC材4の上の一面に、遮音マット5が敷設される。遮音マット5は、主に高比重の酸化鉄と粘弾性物質のアスファルトとが混錬されてマット状に形成され、その表裏の両面にポリエステル不織布が一体化されたものである。なお、遮音に関しては、質量が大きいほど音をはね返す力が強くなることから、比重が高い遮音マットが好ましく、建築予定の建築物に合わせて、コストや重量等を考慮して種々の遮音マットが選択される。敷設方法については、遮音マット5をALC材4の上に敷き詰めるだけで自重により安定するが、仮に安定しない場合には、釘、ネジ、ビスまたはステープル等の固着具(図示せず)または接着剤等で固定してもよい。
さらに、遮音構造1では、遮音マット5の上の一面に、合板6が敷設されている。合板6は、針葉樹の単板を乾燥させ、この単板を複数枚重ね合わせて接着剤で張り合わせることで形成される板のことであり、遮音構造1では、遮音マット5をその上から押さえつけて安定的に固定するとともに、この合板6の上に弾性接着剤8を塗布するための下地材となる。なお、合板6は、遮音マット5に、釘、ネジ、ビスまたはステープル等の固着具によって固定される。
次に、遮音構造1では、合板6の上の一面に、床石膏ボード7が敷設される。床石膏ボード7は、石膏を主原料とした素材を板状に成形し、その両面を石膏ボード用原紙で被覆した内装部材である。また、石膏ボードは様々の種類が存在するが、床石膏ボード7では、遮音性能の観点から、超硬質で、高強度の普通硬質石膏ボードを用いることが好ましい。さらに、床石膏ボード7は、その四隅において、合板6に、釘、ネジ、ビスまたはステープル等の固着具によって固定される。なお、一般に、床下の遮音構造には、2枚の石膏ボードを重ねて敷設するものも存在するが、遮音性能、コストおよび居住空間の確保等を考慮すると、本実施形態に係る遮音構造1では、1枚の床石膏ボード7で構成されることが好ましい。
さらに、遮音構造1では、床石膏ボード7を合板6の上に敷設するにあたり、予め合板6の上の一面に弾性接着剤8が塗布され、この弾性接着剤8の上に床石膏ボード7が敷設される。この弾性接着剤8は、硬化後も弾力性が残る特殊接着剤であり、この弾力性によって制振性を有するといった特徴がある。なお、合板6の上に弾性接着剤8を塗布する際には、合板6の上における一面の塗布量を一定にし、この弾性接着剤8が合板6と床石膏ボード7との間に均等に馴染むようにするため、櫛目のあるヘラで櫛形に櫛目引きをすることが好ましい。
また、遮音構造1では、床石膏ボード7の上の一面において、床仕上げ材9が敷設されている。具体的には、床石膏ボード7の上の一面において、所定のサイズに形成された木板または木質材料による床板が、フローリングとして敷き詰められている。なお、フローリングの床材の種類については、一枚の厚い天然無垢材からなる板材を敷き詰める単層フローリングまたは薄い板を重ねて合わせてその表面に天然木板を接着した板材を敷き詰める複合フローリングのいずれであってもよい。また、床仕上げ材9は、ウレタン樹脂系の接着剤等によって固定される。さらに、遮音構造1では、床仕上げ材9としてフローリングの施工がされた実施形態を示したが、これに限定されるものではなく、床仕上げ材9がカーペット等の他の床仕上げ材で構成されていてもよい。
続いて、遮音構造1における下層階100の天井裏部分について、以下にて説明する。なお、遮音構造1は、上層階200の床下部分の構造と、下層階100の天井裏部分の構造とからなるものとして説明するが、上記した上層階200の床下部分の構造を他の構造と組み合わせて用いる場合等には、上記した上層階200の床下部分の構造のみで施工されてもよく、以下に説明する下層階100の天井裏部分の構造についても同様である。
遮音構造1では、図1および図2に示すように、下層階100の天井裏部分において、H形鋼3の上フランジ部3Aと下フランジ部3Bとの間に、複数の野縁下地材10が取り付けられている。野縁下地材10は、その長さ(L)が、上フランジ部3Aと下フランジ部3Bとの間において、H形鋼3のウェブ部3Cに沿って嵌る長さに形成された角材である。また、野縁下地材10は、その厚み(D)が、野縁下地材10が上フランジ部3Aと下フランジ部3Bとの間に嵌め込まれた際に、野縁下地材10の下部に後述する防振吊木12が取り付けられる程度に、下フランジ部3Bから張り出すようにして形成されている。なお、野縁下地材10において、その下部に防振吊木12が取り付けられる程度に下フランジ部3Bから張り出す厚み(D)の確保が困難な場合等には、野縁下地材10とウェブ部3Cとの間に、さらに下地材として、木材等からなる複数の平板(図示せず)等を挟み込み、野縁下地材10の張り出し具合を調整してもよい。また、野縁下地材10が下フランジ部3Bから張り出す長さは、図1または図2において図示されたものに限定されず、任意である。
また、遮音構造1では、図1に示すように、H形鋼3の上フランジ部3Aと下フランジ部3Bとの間であって、野縁下地材10が取り付けられていない部分において、吸音材14がウェブ部3Cに沿って敷き詰められている。具体的には、吸音材14は、玄武岩等の天然岩石等を主原料とした人造鉱物繊維であるロックウールが袋詰めにされたものまたはガラスを主原料としたガラス繊維からなる綿状素材のグラスウールが袋詰めにされたものが、複数連なってマット状に形成されたものである。ロックウールおよびガラスウールは、それぞれ繊維自体に空気を多く含んでいるため、吸音性および断熱性に優れている。なお、遮音構造1では、構造躯体2としてH形鋼3が用いられ、そのH形鋼3のウェブ部3Cに沿って、吸音材14が敷き詰められているが、建築物が木造である場合には梁や吊り木等の木材に沿って、建築物が鉄筋コンクリート造である場合には、コンクリートで形成された梁等に沿って、吸音材14が敷き詰められていてもよい。また、吸音材14を敷き詰める空間が確保できない場合等には、吸音材14が敷き詰められていない実施形態であってもよい。
さらに、遮音構造1では、図1および図2に示すように、野縁下地材10の下部に、防振吊木12が取り付けられている。この防振吊木12は、野縁下地材10に取り付けられる金属製の第一取付プレート12Aと、後述する野縁部材13に取り付けられる金属製の第二取付プレート12Bと、第一取付プレート12Aと第二取付プレート12Bとの間に介在されて両者を一体に連結するゴム製の防振部材12Cとを備えた連結金具である。具体的な取付方法としては、第一取付プレート12Aを上方に、第二取付プレート12Bを下方に向けた状態において、野縁下地材10における下部の側面すなわち野縁下地材10におけるH形鋼3のウェブ部3Cに接する側面に対向する側面の下部に、第一取付プレート12Aを配置し、防振吊木12の第一取付プレート12A以外の部位が野縁下地材10の下部から垂下するようにして、第一取付プレート12Aを野縁下地材10に固定する。そして、この野縁下地材10に垂設された防振吊木12の第二取付プレート12Bに、野縁部材13が取り付けられる。この防振吊木12は、防振部材12Cにおける弾力性によって、床衝撃音からの振動を吸収し、下層階100に伝わる床衝撃音を軽減することができる。また、下層階100の天井が防振部材12Cを設けて形成されることで、音環境として上層階200と下層階100とを独立した空間に近づけることができる。さらに、防振吊木12の第一取付プレート12Aには、上記した野縁下地材10に固定された部位における水平方向の両端のいずれかにおいて、この部位に対して垂直に、金属製のプレートである予備第一取付プレート12Dが連接されている。したがって、この防振吊木12は、上記した固定方法において、防振吊木12本体の向きを変えることなく、第一取付プレート12Aに対向する野縁下地材10だけでなく、水平方向に90度向きを変えてこの予備第一取付プレート12Dに対向する位置においてH形鋼3に嵌め込まれた別の野縁下地材10にも、固定することができる。なお、第一取付プレート12A、第二取付プレート12Bおよび予備第一取付プレート12Dのそれぞれには、複数の固着具孔12Eが形成されており、この固着具孔12Eに、釘、ネジまたはビス等の防振吊木用固着具12Fが通されることによって、防振吊木12が野縁下地材10および野縁部材13に固定される。
また、遮音構造1では、図1および図2に示すように、野縁下地材10の下部から垂設された防振吊木12の下部において、野縁部材13が取り付けられている。この野縁部材13は、複数の角材が格子状に軸組みされた部材であって、天井一面を覆うようにして配置され、複数の防振吊木12によって固定される。
さらに、遮音構造1では、図1に示すように、野縁部材13の上に、吸音効果および断熱効果のある吸音材14が敷き詰められている。具体的には、吸音材14は、上記したH形鋼3の上フランジ部3Aと下フランジ部3Bとの間に敷き詰められたものと同様のものであり、この吸音材14が、格子状の野縁部材13を構成する角材の上において、隙間なく敷き詰められて、載置される。なお、遮音構造1では、ロックウールとグラスウールとで双方の遮音性能を比較すると、吸音材14としてロックウールが用いられることが好ましい。
また、遮音構造1では、野縁部材13の下に、天井石膏ボード15が2枚重ねて取り付けられている。具体的には、この天井石膏ボード15は、天井用の強化石膏ボードであって、石膏の芯にガラス繊維などの無機繊維が加えられたものである。これらの天井石膏ボード15は、野縁部材13の下において、天井一面を覆うようにして配置され、釘、ネジまたはビス等の固着具によって野縁部材13に固定される。なお、図1には図示していないが、2枚の天井石膏ボード15を重ねて取り付ける際には、1層目の複数の天井石膏ボード15によって形成される天井石膏ボード15同士の繋ぎ目を、2層目の天井石膏ボード15で塞ぐようにして配置し、それぞれの層における天井石膏ボード15同士の継ぎ目が極力重ならないようにして施工されることが望ましい。なお、遮音構造1として、天井石膏ボード15が2枚重ねである実施形態を示したが、天井石膏ボード15の取り付けに十分な空間がとれない場合またはなるべく広い居住空間を確保する必要がある場合等には、天井石膏ボード15が1枚だけで施工されていてもよい。
さらに、遮音構造1では、2枚重ねて取り付けられた天井石膏ボード15の下において、天井仕上げ材16が貼着されている。具体的には、天井仕上げ材16は、塩化ビニール樹脂等を主素材としたビニールシートに、紙などの裏打ちがされたビニールクロスであり、2枚重ねて取り付けられた天井石膏ボード15の下に、接着剤によって貼着される。なお、遮音構造1では、天井仕上げ材16にビニールクロスが貼着された実施形態を示したが、これに限定されるものではなく、天井仕上げ材16が紙クロス等の他の天井仕上げ材で構成されているものであってもよく、また、天井仕上げ材16を取り付けず、ペンキ等が塗布されて天井が仕上げられているものであってもよい。
また、遮音構造1では、図1に示すように、柱17の周囲における側面のうち少なくとも室内側になる側面に沿って、耐火材として壁石膏ボード19が設けられている。具体的には、壁石膏ボード19は、耐火材用下地18を介して、構造躯体2であるH形鋼3に固定されて設けられる。この壁石膏ボード19は、床石膏ボード7と同様の超硬質で高強度の普通硬質石膏ボードにより構成され、耐火性能に優れている。また、耐火材用下地18は、略C字状のリップ溝形鋼または角柱状の軽角形鋼等の軽量形鋼材(以下「LGS材」とする。)により構成される。具体的な取付方法としては、H形鋼3の長手方向に沿って、かつ、下フランジ部3Bの下端において、略コ字状に下方が開口した金属製のレール部材であるランナー(図示せず)が、溶接によって固定される。この固定されたランナーの開口部(図示せず)において、直立させたLGS材の上端部が嵌め込まれ、釘、ネジまたはビス等の固着具によって、ランナーとLGS材とが固定される。これにより、H形鋼3と耐火材用下地18とが固定される。さらに、この固定された耐火材用下地18に沿わせて壁石膏ボード19を直立させ、釘、ネジ、ビスまたはステープル等の固着具によって、耐火材用下地18と壁石膏ボード19とが固定される。これにより、壁石膏ボード19が、柱17における室内側の側面に沿って設けられる。なお、壁石膏ボード19は、1枚のみで施工されてもよく、複数枚重ねて施工されていてもよい。
また、図1には図示していないが、耐火材用下地18は、木製の板材等で構成されていてもよい。この場合には、壁石膏ボード19は、耐火材用下地18を介して、柱17に固定されて設けられる。耐火材用下地18には、柱17の幅寸法から張り出す幅に形成された2枚の木製の板材等が用いられる。具体的な取付方法としては、この2枚の板材等を直立させ、柱17の周囲における側面のうち対向する2側面を挟むようにして配置し、釘、ネジ、ビス等の固着具によって、柱17と2枚の板材等とが固定される。また、この固定された2枚の板材等における室内側の縁において、直立させた壁石膏ボード19が配置され、釘、ネジ、ビスまたはステープル等の固着具によって、2枚の板材等と壁石膏ボード19とが固定される。これにより、柱17と耐火材用下地18とが固定され、また、耐火材用下地18と壁石膏ボード19とが固定される。なお、耐火材用下地18に木製の板材等を用いる場合には、柱17と壁石膏ボード19との間に、耐火材用下地18が柱17から張り出すぶんにおいて隙間が設けられる。また、耐火材用下地18に木製の板材等を用いる場合には、壁石膏ボード19に、天井石膏ボード15と同様の石膏の芯にガラス繊維などの無機繊維が加えられた強化石膏ボードを用いることが好ましい。
さらに、上記した柱17、耐火材用下地18および壁石膏ボード19等からなる構造では、耐火材用下地18であるLGS材または木製の板材等と、普通硬質石膏ボードまたは強化石膏ボード等の種々の石膏ボードから選択される1枚または複数枚の壁石膏ボード19とを、所定の条件を満たすように組み合わせて施工することで、耐火構造(建築基準法施行令第107条に定める技術的基準に適合する耐火性能を持つ構造)または準耐火構造(建築基準法施行令第107条の2に定める技術的基準に適合する耐火性能を持つ構造)に準拠した構造とすることができる。なお、遮音構造1において、耐火構造または準耐火構造に準拠した構造を採用するか否かは任意であり、柱17、耐火材用下地18および壁石膏ボード19等のそれぞれの構成についても、上記したものに限定されるものではない。
ここまで、遮音構造1における下層階100の天井裏部分の構造を説明したが、下層階100の天井裏部分の構造を他の構造と組み合わせて用いる場合等には、上記した下層階100の天井裏部分の構造のみで施工されてもよく、この点は上層階200の床下部分の構造と同様である。
以上、図1および図2に基づいて遮音構造1について説明したが、以下においては、第二の実施形態として、図3に基づき、野縁下地材10の下部において吊木受け11が設けられた吊木受け遮音構造20について、説明する。
吊木受け11とは、図3に示すように、野縁下地材10の下部において接合され、互いに対向するH形鋼3にわたって横架して設けられる角材である。吊木受け遮音構造20では、この吊木受け11に防振吊木12が複数固定され、この防振吊木12の下部に野縁部材13が固定される。すなわち、吊木受け遮音構造20では、これらの複数の部材を介して下層階100の天井が設けられる。したがって、下層階100の天井が、梁を構成するH形鋼3または界床のALC材4から直接吊るされておらず、また、下層階100の天井が、上記した複数の部材を介して、梁を構成するH形鋼3や界床のALC材4から一定の距離を空けて設けられることで、上層階200からの床衝撃音がより下層階100に伝わりにくい遮音構造とすることができる。なお、防振吊木12の固定方法は、防振吊木12を野縁下地材10に代えて吊木受け11に取り付ける点以外は、遮音構造1と同様である。
以上、吊木受け11について説明したが、吊木受け遮音構造20は、その防振吊木12が吊木受け11を介して取り付けられている点以外の構成は、遮音構造1と同様である。そのため、吊木受け遮音構造20におけるその他の構成についての説明は、省略する。なお、本考案に係る実施形態として、下層階100の天井裏の空間が十分に確保できる場合等には上記した吊木受け遮音構造20が、下層階100の天井裏の空間が十分に確保できない場合等には、吊木受け11を設けずに、野縁下地材10に直接防振吊木12を取り付ける遮音構造1が、それぞれ選択的に施工される。
次に、本実施形態の遮音構造1および吊木受け遮音構造20の効果について説明する。
遮音構造1および吊木受け遮音構造20は、構造躯体2において梁を構成するH形鋼3の上に取り付けられたALC材4と、ALC材4の上に敷設された遮音マット5と、遮音マット5の上に敷設された合板6と、合板6の上に敷設された床石膏ボード7とを備え、合板6と床石膏ボード7とが弾性接着剤8によって接着されている。すなわち、遮音構造1は、上層階200において子供が飛び跳ねたり物が落下したりした際に、まず始めに、音を通しにくい性質である床石膏ボード7が、一定の床衝撃音を遮断する。次に、この床石膏ボード7の下には、合板6との間に弾性接着剤8が塗布されており、この弾性接着剤8が、硬化した後においても弾力性が残存することで、床衝撃音からの振動を吸収し、特に、軽量床衝撃音を軽減する。続けて、この弾性接着剤8で接着された合板6の下には、遮音マット5が敷設されており、この遮音マット5が、重量床衝撃音および軽量床衝撃音からの振動を吸収して、床衝撃音を軽減する。さらに、この遮音マット5の下で、かつ、構造躯体2を構成するH形鋼3の上には、ALC材4が敷設されており、このALC材4のコンクリート内部の気泡において、重量床衝撃音および軽量床衝撃音の双方が吸音される。したがって、遮音構造1および吊木受け遮音構造20全体として、高い遮音性能を発揮することができる。
また、遮音構造1は、構造躯体2において梁を構成するH形鋼3に取り付けられた野縁下地材10と、野縁下地材10の下部に取り付けられた防振吊木12と、防振吊木12の下部に取り付けられた野縁部材13と、野縁部材13の下に取り付けられた天井石膏ボード15とを備え、野縁部材13の上に吸音材14が敷設されている。すなわち、遮音構造1では、床衝撃音を下層階100においても遮音することができる。上層階200と下層階100とは、上層階200と下層階100の間に位置する界床すなわちALC材4によって区切られているため、このALC材4を通じて床衝撃音からの振動が下層階100に伝わりやすい。したがって、完全に床衝撃音を遮断することは容易ではない。そこで、遮音構造1では、通常の吊木に代えて防振吊木12を使用し、この防振吊木12に床衝撃音からの振動を吸収させ、上層階200と下層階100とを音環境としてできる限り独立した状態にすることで、下層階100の天井に伝わる床衝撃音を抑制することができる。また、遮音構造1では、防振吊木12に取り付けられた野縁部材13の下に天井石膏ボード15が取り付けられ、さらに、この野縁部材13の上には吸音材14が敷設されていることから、上層階200からの床衝撃音をこの吸音材14で吸音するとともに、吸収しきれなかった床衝撃音を天井石膏ボード15で遮断することができる。したがって、遮音構造1全体として、高い遮音性能を発揮することができる。
さらに、吊木受け遮音構造20では、上記した遮音構造1における構成に加えて、野縁下地材10と防振吊木12とが、野縁下地材10の下部に取り付けられた吊木受け11を介して取り付けられている。すなわち、野縁下地材10と防振吊木12との間に吊木受け11を設けることで、防振吊木12の取り付けをより安定させることができる。また、防振吊木12が、野縁下地材10からさらに吊木受け11を介して設けられることで、床衝撃音からの振動がより伝わりにくくなり、遮音性能を一層高めることができる。
さらに、遮音構造1および吊木受け遮音構造20は、天井石膏ボード15が2枚重ねになっている。すなわち、音を通しにくい性質を持つ石膏ボードを2枚重ねにすることで、下層階100に伝わる床衝撃音に対する遮断性をより一層高めることができる。
遮音構造1および吊木受け遮音構造20は、構造躯体2を構成するH形鋼3のウェブ部3Cに沿って吸音材14が敷き詰められている。したがって、遮音構造1および吊木受け遮音構造20は、この吸音材14が構造躯体2を構成するH形鋼3から伝わる床衝撃音を吸音することで、遮音性能をより高めることができる。
以上、本考案の実施形態を詳述したが、本考案は上記実施形態に限定されるものではない。そして、本考案は、実用新案登録請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
また、野縁下地材10、吊木受け11および野縁部材13等における角材の長さ、幅および厚さ等の規格、H形鋼3の上下フランジ部3A、3B間の長さ、各フランジ部3A、3Bおよびウェブ部3C等の幅や厚さ、並びにH形鋼3自体の長さ等についても、建築予定の建築物に合わせて適宜選択されるものである。
1 遮音構造
2 構造躯体
3 H形鋼
3A 上フランジ部
3B 下フランジ部
3C ウェブ部
4 ALC材(軽量気泡コンクリート材)
5 遮音マット
6 合板
7 床石膏ボード
8 弾性接着剤
9 床仕上げ材
10 野縁下地材
11 吊木受け
12 防振吊木
12A 第一取付プレート
12B 第二取付プレート
12C 防振部材
12D 予備第一取付プレート
12E 固着具孔
12F 防振吊木用固着具
13 野縁部材
14 吸音材
15 天井石膏ボード
16 天井仕上げ材
17 柱
18 耐火材用下地
19 壁石膏ボード
20 吊木受け遮音構造
100 下層階
200 上層階
2 構造躯体
3 H形鋼
3A 上フランジ部
3B 下フランジ部
3C ウェブ部
4 ALC材(軽量気泡コンクリート材)
5 遮音マット
6 合板
7 床石膏ボード
8 弾性接着剤
9 床仕上げ材
10 野縁下地材
11 吊木受け
12 防振吊木
12A 第一取付プレート
12B 第二取付プレート
12C 防振部材
12D 予備第一取付プレート
12E 固着具孔
12F 防振吊木用固着具
13 野縁部材
14 吸音材
15 天井石膏ボード
16 天井仕上げ材
17 柱
18 耐火材用下地
19 壁石膏ボード
20 吊木受け遮音構造
100 下層階
200 上層階
Claims (5)
- 構造躯体の上に取り付けられた軽量気泡コンクリート材と、
前記軽量気泡コンクリート材の上に敷設された遮音マットと、
前記遮音マットの上に敷設された合板と、
前記合板の上に敷設された床石膏ボードと、を備え、
前記合板と前記床石膏ボードとが弾性接着剤によって接着された、
ことを特徴とする遮音構造。 - 前記構造躯体に取り付けられた野縁下地材と、
前記野縁下地材に取り付けられた防振吊木と、
前記防振吊木に取り付けられた野縁部材と、
前記野縁部材の下に取り付けられた天井石膏ボードと、を備え、
前記野縁部材の上に吸音材が敷設された、
ことを特徴とする請求項1に記載された遮音構造。 - 前記天井石膏ボードが2枚重ねである、
ことを特徴とする請求項2に記載された遮音構造。 - 前記野縁下地材と前記防振吊木とが、前記野縁下地材に取り付けられた吊木受けを介して取り付けられている、
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の遮音構造。 - 前記構造躯体がH形鋼であり、
前記H形鋼のウェブ部に沿って吸音材が敷き詰められた、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載された遮音構造。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020001103U JP3227408U (ja) | 2020-03-27 | 2020-03-27 | 建築物の遮音構造 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020001103U JP3227408U (ja) | 2020-03-27 | 2020-03-27 | 建築物の遮音構造 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP3227408U true JP3227408U (ja) | 2020-08-27 |
Family
ID=72145553
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2020001103U Active JP3227408U (ja) | 2020-03-27 | 2020-03-27 | 建築物の遮音構造 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3227408U (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN112622363A (zh) * | 2020-12-14 | 2021-04-09 | 临澧县建兴特种石膏有限责任公司 | 一种建筑施工用隔音效果好的纸面石膏板 |
-
2020
- 2020-03-27 JP JP2020001103U patent/JP3227408U/ja active Active
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN112622363A (zh) * | 2020-12-14 | 2021-04-09 | 临澧县建兴特种石膏有限责任公司 | 一种建筑施工用隔音效果好的纸面石膏板 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US20070289238A1 (en) | Acoustical isolation floor underlayment system | |
KR100624357B1 (ko) | 띄움바닥 구조를 이루는 공동주택의 층간 바닥충격음완충재 | |
KR200420631Y1 (ko) | 띄움바닥 구조를 이루는 공동주택의 층간 바닥충격음완충재 | |
JP3227408U (ja) | 建築物の遮音構造 | |
JP4413344B2 (ja) | 防音床構造 | |
JP5901204B2 (ja) | 遮音床構造 | |
JPH078675Y2 (ja) | プレハブ建物における床部の防振兼遮音装置 | |
JPH0333884Y2 (ja) | ||
JP2579050Y2 (ja) | 床下地パネル及び防音床構造 | |
JP2020133283A (ja) | 床天井構造 | |
JPS63308154A (ja) | 防音床材 | |
JP2807130B2 (ja) | 床構造 | |
JPH0355705Y2 (ja) | ||
JP4090835B2 (ja) | 防音床構造 | |
JPH08232361A (ja) | 遮音シートを備えた建材、遮音制振シートを備えた建材及びこれらの建材を利用する床下地、及び遮音シート並びに遮音制振シートを備えた床下地補助材 | |
JPS62253867A (ja) | 防音床材 | |
JPH02136466A (ja) | 防音複合床材 | |
JPH11131625A (ja) | 防音・制振特性を備えた建材 | |
JP2583622B2 (ja) | 防音二重床構造 | |
JPS63308150A (ja) | 防音複合床材 | |
GB2395495A (en) | Building system with acoustic damping | |
JP2003096962A (ja) | 建築物の床構造 | |
JPH054512Y2 (ja) | ||
JPH0443542Y2 (ja) | ||
JPH068566B2 (ja) | 乾式浮床構造 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A80 | Written request to apply exceptions to lack of novelty of invention |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A80 Effective date: 20200424 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20200529 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 3227408 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |