JP2583622B2 - 防音二重床構造 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、防音二重床構造に関し、詳しくはコンクリ
ート床スラブ等からなる床下地上に複数の床パネル材が
適宜高さの支持脚体を介して並置されてなる二重床の防
音構造の改良に関する。

（従来の技術） 上記二重床としては、主として中高層のビルやマンシ
ョン等の床に採用されており、合板等からなる複数の床
パネル材の下面にレベル調節可能な複数の支持脚体を備
えた置床用床パネルがコンクリート床スラブ等からなる
床下地上に並置されてなる置床構造と呼ばれるものが知
られている。

このような二重床構造は、床下地上面の不陸をレベル
調節可能な支持脚体により吸収できるため床下地を平滑
化する手間が不要であるという利点、及び床パネル材の
下方に床下空間が水平方向に連続しているため床下地上
面での配管、配線工事が容易であるという利点を有して
いる。

ところが、床パネル材の上面に衝撃力が作用し、床パ
ネル材の振動によって床下空間の空気が振動した場合、
上記の二重床構造においては、床下空間が水平方向に連
続しているため、床下空間の空気振動が水平方向に拡散
して広い範囲に伝達される。このため、上記の二重床構
造においては、階上で発生した床衝撃音が階下へ大きな
衝撃音となって伝達されることになり、防音性能が十分
でないという問題があった。

そこで、二重床構造における床下空間での衝撃音を軽
減させるものとして、第６図に示すような、床下地ａ
の上面に吸音材ｂが敷設されてなる防音床構造、床パ
ネル材の下面に吸音材が貼着されてなる防音床構造、或
いは特開昭63−272853号公報に開示され第７図に示す
ような、床下地ｃの上面に枠組み状の吸音材ｄが立設さ
れ該吸音材ｄにより床下空間を仕切ってなる防音床構造
等が提案されている。

（発明が解決しようとする課題） しかるに、上記及びの防音床構造では、床下地上
面或いは床パネル材下面に配設された吸音材により床下
空間の衝撃音を或る程度吸収することはできるが、衝撃
音が床下空間を水平方向に拡がってしまうので、防音効
果が十分でないという問題がある。

また、上記の防音床構造では、衝撃音が床下空間を
水平方向に拡がるのを防止できるため防音効果を得るこ
とはできるが、置床用床パネルを施工する前に予め床下
地上面に枠組み状の吸音材を敷設しておかねばならない
ため、敷設された枠組み状吸音材が置床用床パネルの設
置に際して邪魔になり、施工性が良くないという問題が
ある。

さらに、上記及びの防音床構造では、床下地の上
面に吸音材が設置されるため、該吸音材が床下地の湿気
や水分を吸収し易く、このため吸音性が低下するという
問題がある。

本発明は、上記各問題を一挙に解決し、床衝撃音が床
下空間を水平方向に拡散するのを防ぐことができる防音
性に優れた防音二重床構造を簡易な方法により得られる
ようにすることを目的とする。

（課題を解決するための手段） 前記の目的を達成するため、本発明は、吸音材を床パ
ネル材同志の間に設けた隙間に上方から配置し、該吸音
材を床パネル材の下面より下方へ突出させることにより
該吸音材によって床下空間を仕切らせると共に、該吸音
材の下端を床下地に当接させないことにより床下地から
の吸湿を防ぐものである。

具体的に本発明が講じた解決手段は、コンクリート床
スラブ等からなる床下地上に複数の床パネル材がレベル
調節可能な複数の支持脚体を介して並置されてなる防音
二重床構造を対象とし、上記床パネル材同志の間に適宜
巾の隙間が設けられ、該床パネル材同志の上面間を連結
する帯板状の連結板と該連結板の下面から垂下する帯板
状の吸音材とからなる断面略Ｔ字状の連結部材がその吸
音材を上記隙間に位置せしめて設けられており、上記連
結部材の吸音材は、その下端が床下地上面に当接しない
範囲で床下空間を仕切るように突出する突出量に設定さ
れている構成とするものである。

（作用） 前記の構成により、吸音材が床パネル材下面よりも下
方に突出し床下空間を仕切っているため、床衝撃音は吸
音材により吸音されると共に水平方向へ拡散するのが防
止される。

また、吸音材の下端が床下地上面に当接していないた
め、吸音材が床下地から吸湿したり吸水したりすること
がない。

また、連結部材は吸音材を床パネル材同志の隙間に位
置せしめて設けられるため、床パネル材の配置及びレベ
ル出し後に連結部材を取り付けることができると共に、
床パネル材同志の隙間から配管部分を確認し、吸音材を
配管に当たらないよう切断してから上記隙間に挿入する
ことができる。

（実施例） 以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。

第１図及び第２図は本発明の一実施例に係る防音二重
床構造を示し、コンクリート床スラブ等からなる床下地
１の上面に、複数の床パネル材２が複数の支持脚体３を
介して並置されており、床パネル材２の上面に捨張り材
４を介して床仕上げ材５が敷設されてなる。

床仕上げ材５としては木質フロア材やカーペット材等
を適宜使用でき、また、捨張り材４としては合板等を適
宜使用できる。

床パネル材２としては、合板やパーティクルボード等
の木質板、木質セメント板或いは金属製成形パネル等を
用いることができ、その上に敷設される捨張り材５、仕
上げ材６及び床上荷重を支持できる程度の剛性を有して
おれば適宜選択可能である。

支持脚体３は、床下地１の上面に載置される円錐台状
の弾性体3aと、高さ調節可能な調節ボルト3bとを備えて
おり、調節ボルト3bを回転することによりレベル調節が
可能である。

本実施例の特徴として、床パネル材２同志の間に適宜
巾例えば50mm巾の格子状の隙間６が設けられていると共
に、各床パネル材２の周縁部に段差状の切欠部2a,2aが
設けられており、これらの隙間６及び対向する切欠部2
a,2aによって断面Ｔ字状の空間が形成されている。そし
て該Ｔ字状の空間には、帯板状の連結板7aと該連結板7a
の下面から垂下する帯板状の吸音材7bとからなる断面略
Ｔ字状の連結部材７が配設されている。

この場合、連結板7aの厚さは切欠部2aの高さと略同寸
法になるよう形成されていると共に、連結板7aの巾は対
向する２つの切欠部2aの巾と隙間６との合計寸法と略同
じになるよう形成されており、該連結板7aはビス止め或
いは釘止めにて床パネル材２の切欠部2a上面に固定され
ている。このようにすることにより、床パネル材２同志
が連結板7aによって強固に連結されており、複数の床パ
ネル材２が全体として１枚の剛性の床になっていると共
に、床パネル材２の上面と連結板7aの上面とによってフ
ラットな平面が形成されている。なお、連結板7aは長手
方向に連続していてもよいし、適当な間隔をおいて断続
的に配置されていてもよい。

吸音材7bは上記隙間６内に配置されていると共に、吸
音材7bの下端は床パネル材２の下面より下方へ適宜寸法
突出している。この場合、吸音材7bの突出量について
は、床面が撓んでも吸音材7bの下端が床下地１の上面に
接触しない程度の隙間例えば10mm程度の隙間が吸音材7b
下端と床下地１上面との間に形成されるようにするのが
好ましく、床下地１の上面に配管８が敷設される場合に
は、吸音材7bの下端が配管８に当たらない程度の隙間を
設けることが好ましい。また、吸音材7b下端と床下地１
上面との隙間の上限としては、床衝撃音が床下空間を水
平方向に拡散するのを効果的に防止するために、床下空
間の高さとも関係するが床下空間高さの３分の１以内に
することが好ましい。

連結板7aの材質としては、床パネル材２と同程度の剛
性を有していると共に床パネル上面に対して釘打ちので
きる板材が好ましく、具体的には合板やパーティクルボ
ード等を用いることができる。また、連結板7aの具体的
な大きさとしては、厚さ:12mm、巾150mm、長さ:1800mm
程度が取扱上好ましい。

吸音材7bの材質としては多孔質吸音材が好ましく、具
体的にはグラスウールマット、ロックウールマット、合
成繊維マット、パルプと合成繊維とよりなる混合マット
等の繊維質マット、又は発泡プラスチック板や発泡無機
質板等の発泡体が好ましい。グラスウールマットやロッ
クウールマットを用いる場合には、40〜150kg/m³の密度
を有するものが適当であり64kg/m³の密度のものが特に
好ましい。また、吸音材7bの具体的な大きさとしては、
床下空間の大きさにもよるが、厚さ:25mm、巾80mm程度
のものが好ましい。

連結板7aと吸音材7bとの連結方法としては、接着剤に
より互いに接着してもよいし、第３図に示すように合成
樹脂よりなる 字状の型材7cを用い、型材7cを連結板7aにビス止めし且
つ吸音材7bを型材7cにステープル止めしてもよく、吸音
材7bが床面に発生する衝撃力により落下しない程度の強
度で取り付けられておればよい。

第４図は連結部材７の変形例を示し、上記実施例と同
様の連結板7aの下面に断面Ｌ字状の遮音板7dがビス止め
により取り付けられており、該遮音板7dの両面に上記実
施例と同様の吸音材7bが接着剤により積層されている。

第５図は上記実施例に係る防音二重床構造の変形例を
示している。

この変形例においては、床パネル材２の周縁部には切
欠部2aが設けられておらず、連結板7aは床パネル材２の
上面周縁部に載置された状態でビス止め或いは接着剤に
より固定されている。

また、床パネル材２の上面中央部には、連結部材７の
連結板7aと略同厚の根太９が適当な間隔で並置されてお
り、これら連結部材７及び根太９の上面に木質の床仕上
げ材５が直接敷設されており、捨張り材４を用いずに根
太で床板を支持させたものである。このようにすると、
床仕上げ材５の下面に空間が形成されて通気性が良くな
って床下の結露を少なくすることができる。

以下、本発明を評価するために行なった軽量床衝撃音
の遮音性能テストについて説明する。

まず、具体例としては第１図に示す防音二重床構造を
準備した。この場合、連結部材として、厚さ:12mm、巾:
150mmの合板よりなる連結板7aの下面に、厚さ:25mm、高
さ:80mm、密度:64kg/m³のグラスウールマットよりなる
吸音材7bを接着したものを準備し、床パネル材２同志の
隙間に縦横方向に連続的に配置した。

次に、比較例としては第６図に示すような防音床構造
を準備した。この場合、吸音材ｂとしては、厚さ:25m
m、密度:64kg/m³のグラスウールマットを用い、該吸音
材ｂを床下地ａの上面に略全面的に亘って敷設した。

具体例と比較例に対する遮音性能テストの結果は第８
図に示す通りであって、比較例の構造によるとJIS−Ａ
−1418による軽量床衝撃音の遮音性能はＬ−60であり、
少し気になる程度のレベルであったのに対し、本発明の
具体例の遮音性はＬ−53という気にならないレベルであ
って、軽量床衝撃音に対して具体例のものは比較例のも
のに比べて約7dB防音性能が優れていることが確認され
た。

（発明の効果） 以上説明したように、本発明に係る防音二重床構造に
よると、連結部材の吸音材はその下端が床下地上面に当
接しない範囲で床下空間を仕切るように突出する突出量
に設定されているため、床衝撃音が吸音材により吸音さ
れると共に水平方向へ拡散せず、また、吸音材が床下地
から吸湿、吸水しないので防音性に優れている。

さらに、連結部材は吸音材を床パネル材同志の隙間に
位置せしめて設けられているため、床パネル材の施工後
に連結部材を取り付けることができると共に吸音材を配
管に当たらないよう切断してから床パネル材同志の隙間
に挿入することができるので、床パネル材及び吸音材の
施工が極めて容易である。

このため、本発明によると、防音性に優れた防音二重
床構造を簡易な施工方法により得ることができる。

【図面の簡単な説明】 第１図及び第２図は本発明の一実施例である防音二重床
構造を示し、第１図は断面図、第２図は連結部材の斜視
図、第３図及び第４図は各々連結部材の変形例を示す断
面図、第５図は上記防音二重床構造の変形例を示す断面
図、第６図及び第７図は各々従来の防音二重床構造の断
面図、第８図は具体例と比較例の軽量床衝撃音に対する
遮音性能テスト結果を示す図である。 １…床下地 ２…床パネル材 ３…支持脚体 ４…捨張り材 ５…床仕上げ材 ６…隙間 ７…連結部材 7a…連結板 7b…吸音材

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 吉田 弥寿郎 大阪府大阪市北区中之島２丁目３番18号 大建工業株式会社内 (72)発明者 山口 稔 大阪府大阪市北区中之島２丁目３番18号 大建工業株式会社内

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】コンクリート床スラブ等からなる床下地上
   に複数の床パネル材がレベル調節可能な複数の支持脚体
   を介して並置されてなる防音二重床構造であって、上記
   床パネル材同志の間に適宜巾の隙間が設けられ、該床パ
   ネル材同志の上面間を連結する帯板状の連結板と該連結
   板の下面から垂下する帯板状の吸音材とからなる断面略
   Ｔ字状の連結部材がその吸音材を上記隙間に位置せしめ
   て設けられており、上記連結部材の吸音材は、その下端
   が床下地上面に当接しない範囲で床下空間を仕切るよう
   に突出する突出量に設定されていることを特徴とする防
   音二重床構造。