JP2617588B2 - 防音二重床構造 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、防音二重床構造に関し、詳しくはコンクリ
ート床スラブ等からなる床下地上に複数の床パネル材が
適宜高さの支持脚体を介して並置されてなる二重床の防
音構造の改良に関する。

（従来の技術） 上記二重床としては、主として中高層のビルやマンシ
ョン等の床に採用されており、合板等からなる複数の床
パネル材の下面にレベル調節可能な複数の支持脚体を備
えた床パネルがコンクリート床スラブ等からなる床下地
上に並置されてなる置床構造と呼ばれるものが知られて
いる。

このような二重床構造は、床下地上面の不陸をレベル
調節可能な支持脚体により吸収できるため床下地を平滑
化する手間が不要であるという利点、及び床パネル材の
下方に床下空間が水平方向に連続しているため床下地上
面での配管、配線工事が容易であるという利点を有して
いるので、上記の中高層建築物で広く採用されている。

（発明が解決しようとする課題） しかるに、床パネル材の上面に床衝撃力が作用し、床
パネル材の振動によって床下空間の空気が振動した場
合、上記の二重床構造においては、床下空間が水平方向
に連続しているため床下空間の空気振動が水平方向に拡
散して広い範囲に伝達される。このため、上記の二重床
構造においては、階上で発生した床衝撃音が階下へ大き
な衝撃音となって伝達されることになり、防音性能が十
分でないという問題がある。

この場合の階下に伝達される床衝撃音は、音が階下で
騒音として気になる程度の騒音レベルである。

上記に鑑み、本発明は、防音性に優れた防音二重床構
造を簡易な方法により得られるようにすることを目的と
する。

（課題を解決するための手段） 前記の目的を達成するため、請求項１の発明は、床下
地上に、音響を反射しやすい材料よりなり、床下空間を
仕切る自立可能な仕切り部材を分散して配置するもので
ある。

具体的に請求項１の発明が講じた解決手段は、コンク
リート床スラブ等からなる床下地上に複数の床パネル材
がレベル調節可能な複数の支持脚体を介して並置され、
上記床パネル材の下方に床下空間が形成されてなる防音
二重床構造を対象とし、上記床下地上に、音響を反射し
やすい材料により形成されており、上記床下空間高さの
３分の１以上で且つ該床下空間高さより低い高さを有し
該床下空間を仕切る自立可能な仕切り部材が、適宜間隔
をおいて分散して配置されている構成とするものであ
る。

また、請求項２の発明では、床下空間での空気振動を
仕切り部材の内部で減衰させるため、仕切り部材を上方
が開口した筒状体又は箱状体としたものである。

また、請求項３の発明では、仕切り部材を簡易に製作
するため、仕切り部材を少なくとも一辺で折り曲げ成形
されてなる折曲げ成形体としたものである。

（作用） 請求項１の構成により、床下地上に、音響を反射しや
すい材料により形成されており、床下空間高さの３分の
１以上の高さを有し該床下空間を仕切る仕切り部材が分
散して配置されているため、床下空間での空気振動は仕
切り部材によって反射されるので、空気振動は床下空間
を水平方向へ拡散し難く、また該空気振動は仕切り部材
によって反射される毎に振動エネルギーを消耗して減衰
する。この場合、仕切り部材は適宜間隔をおいて分散し
て配置されているため、床下空間が仕切り部材同志の間
や床パネル材下面と仕切り部材上端との間で連続してお
り、閉空間が形成されることがないので、床パネル材の
上面に床衝撃力が加わっても局部的な太鼓現象が発生し
ない。

また、仕切り部材の高さが床下空間高さよりも低く、
仕切り部材の上端が床パネル材の下面に当接していない
ので、床パネル材の曲げ振動が上記仕切り部材に伝わる
ことがない。

また、仕切り部材は自立可能であるから、床下地上に
配管等の床下設備を避けて自由な間隔と密度で配置でき
るため仕切り部材の設置が容易であると共に、施工後で
あっても仕切り部材の位置を容易に変更できるため配管
や配線の位置の変更に容易に対応できる。

（実施例） 以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。

第１図〜第３図は本発明の一実施例に係る防音二重床
構造を示し、コンクリート床スラブ等からなる床下地１
の上に、複数の床パネル材２が複数の支持脚体３を介し
て並置され、床パネル材２の上面に捨張り材４を介して
床仕上げ材５が敷設されており、床下地１と床パネル材
２との間の床下空間６が形成されている。

床仕上げ材５としては木質フロア材やカーペット材等
を適宜使用でき、また、捨張り材４としては合板等を適
宜使用できる。

床パネル材としては、合板やパーティクルボード等の
木質板、木質セメント板或いは金属製成形パネル等を用
いることができ、その上に敷設される捨張り材４、床仕
上げ材５及び床上荷重を支持できる程度の剛性を有して
おれば適宜選択可能である。

支持脚体３は、床下地１の上面に載置される円錐台状
の弾性体3aと、高さ調節可能な調節ボルト3bとを備えて
おり、調節ボルト3bを回転することによりレベル調節が
可能である。

尚、上記支持脚体３は、床パネル材２と必ずしも一体
でなくてもよく、床パネル材２を鋼製根太や木材ブロッ
ク等を介して上記支持脚体３で支持させた構造であって
もよい。

本実施例の特徴として、床下地１上における配管等の
床下設備が配設されていない部位に、第２図に示すよう
な背が低い角筒状であって壁部7aのみからなる仕切り部
材７、或いは第３図に示すような背が低い円筒状であっ
て壁部7aのみからなる仕切り部材７が適宜間隔をおいて
分散して配置されている。

この場合、仕切り部材７の高さとしては、以下のよう
に設定することが好ましい。

すなわち、仕切り部材７の高さの上限としては、床面
に衝撃力が加わり、床パネル材２が撓んでも該床パネル
材２の下面が仕切り部材７の上面に当接しない程度の間
隙例えば10mm以上の隙間が、床パネル材２下面と仕切り
部材７上端との間に形成されるようにすることが好まし
い。

また、仕切り部材７の長さの下限としては床下空間高
さの３分の１以上であることが好ましい。その理由は以
下の通りである。すなわち、第11図は、床下空間６の高
さが100mmの場合において、床パネル材２下面と仕切り
部材７上端との間隔であるクリアランスと軽量床衝撃音
レベルとの関係を示したものであって、同図から明らか
なように、クリアランスが100mmから67mmまでの間では
クリアランスが小さくなるにつれて床衝撃音レベルのLL
値も急激に小さくなるためであり、また、クリアランス
を67mmより小さくするとLL値が55以下になるためであ
る。

クリアランスを67mmより小さくするとLL値が55以下に
なる理由については次のように解釈される。すなわち、
床下空間６の高さのうちの３分の１以上を仕切り部材７
によって仕切ると、床パネル材２の上面に床衝撃力が加
わっても、床衝撃力による空気振動は仕切り部材７に反
射されて床下空間６を水平方向に拡散し難くなるためで
ある。

仕切り部材７の材質としては、金属板、プラスチック
板、木質板、木質セメント板等を箱状や筒状或いは折り
曲げ板の形状に組み合わせて形成した自立可能なものを
適宜用いることができる。

以上の如く、床下地１上に仕切り部材７が適宜間隔を
おいて分散して配置されているため、床下空間６での空
気振動は、水平方向に拡散しようとして各仕切り部材７
の壁部7aで反射されるが、壁部7aで反射される毎に振動
エネルギーを消耗しながら減衰するので、床下空間６の
騒音は速やかに低減する。従って、仕切り部材７の材質
として、金属板や硬質プラスチック板等のように音響を
反射しやすい材料を用いると、床下空間６の騒音を一層
速やかに低減させることができる。

また、仕切り部材７は床下地１の上面に自立可能であ
るから、床下地１上に配管や配線等の床下設備が配設さ
れていても該床下設備を避けて配置できると共に、仕切
り部材７を簡単に移動することができるため施工後にお
ける配線や配管の移設が容易である。

第４図は上記実施例に係る防音二重床構造の一変形例
を示しており、該一変形例では仕切り部材７は底部7bと
壁部7aからなる背の低い箱形状である。このように有底
の仕切り部材７を用いると、仕切り部材７の内部に進入
した空気振動は、仕切り部材７の底部7bで反射されて床
下地１の上面に空気振動が伝わらないので、床下地１上
面への空気振動の伝達が軽減されて階下への放出音を一
層小さくすることができる。

第５図〜第８図は仕切り部材７の他の変形例を示して
おり、第５図は、仕切り部材７の全体がプラスチック成
形体により形成されており、上方へ向かってテーパ状に
拡開する壁部7aと方形状の底部7bとからなる有底の角錐
台状の場合であり、第６図は帯板状の底部7bの略中央に
帯板状の壁部7aが立設された断面逆Ｔ字状の場合であ
る。また、第７図は壁部7aが垂直方向の一辺7cでＬ字状
に折り曲げ成形された折曲げ成形体の場合であり、第８
図は正方形状の底部7bと該底部7bの両側部から屈曲して
立ち上がっている壁部7aとからなる倒コの字状の折曲げ
成形体の場合である。

尚、本発明における仕切り部材７の形状は、第２図、
第３図、第５図〜第８図に示したものに限られるもので
なく、上記形状を連結したものや、折り曲げ自在にして
現場で箱形や筒形に組み立てて配設するようにしたもの
であってもよい。

第９図は第６図に示す断面逆Ｔ字状の仕切り部材７の
分散状態を示し、１枚の正方形状の床パネル材２の下方
に２個の仕切り部材７が略平行に配置されており、隣り
合う床パネル材２においては仕切り部材７は互いに直交
する方向に配置されている。このように配置すると、床
下空間６での空気振動が仕切り部材７に当接しやすいの
で、空気振動が水平方向に拡散し難く、騒音が効率良く
低減する。

第10図は第７図に示すＬ字状の仕切り部材７の分散状
態を示し、１枚の床パネル材２の下方に４個の仕切り部
材７が内面を互いに対向させて配置されている。このよ
うにＬ字状の仕切り部材７を用いると、床下地１の上に
配管９が配設されている場合でも、仕切り部材７を支持
脚体３及び配管９を避けて配置することが容易である。

以下、本発明を評価するために行なった軽量床衝撃音
の遮音性能テストについて説明する。

まず、具体例として第１図に示す防音二重床構造を準
備した。すなわち、厚さ:20mmのパーティクルボードよ
りなる床パネル材２の上に、厚さ:12mmの合板よりなる
捨張り材４を介して厚さ:12mmの木質フロアよりなる床
仕上げ材５が敷設され、床パネル材２の下方に高さ:150
mmの床下空間６が形成された二重床構造を準備し、床下
地１の上に第６図に示す厚さ:2mmの塩化ビニールの押出
し型材よりなる高さ:120mmの逆Ｔ字状の仕切り部材７を
第９図に示すよう配置した。

次に、比較例として第12図に示すような床構造、つま
り具体例と同様、厚さ:20mmのパーティクルボードより
なる床パネル材ａの上に、厚さ:12mmの合板よりなる捨
張り材ｂを介して厚さ:12mmの木質フロアよりなる床仕
上げ材ｃが敷設され、床パネル材ａの下方に高さ:150mm
の床下空間ｄが形成された二重床構造を準備し、床下地
ｅ上に吸音材ｆとして厚さ:25mm、密度:64kg/m³のグラ
スウールマットを略全面に亘って敷設したものを準備し
た。

具体例と比較例に対する遮音性能テストの結果は第13
図に示す通りであって、比較例の構造によるとJIS−Ａ
−1418による軽量床衝撃音の遮音性能はＬ−60であり、
少し気になる程度のレベルであったのに対し、本発明の
具体例の遮音性はＬ−55という気にならないレベルであ
って、軽量床衝撃音に対して具体例のものは比較例のも
のに比べて約5dB防音性能が優れていることが確認され
た。

（発明の効果） 以上説明したように、請求項１の発明に係る防音二重
床構造によると、床下地上に、音響を反射しやすい材料
により形成されており、床下空間高さの３分の１以上で
且つ該床下空間より低い高さを有し該床下空間を仕切る
自立可能な仕切り部材が適宜間隔をおいて分散して配置
されているため、空気振動は太鼓現象を生じることなく
仕切り部材によって反射されつつ減衰するので、床下空
間での騒音は速やかに低減される。また、仕切り部材の
上端が床パネル材の下面に当接していないため、床パネ
ル材に加わる床衝撃力が直接床下地に伝わることもな
い。さらに、仕切り部材は自立可能であるから、床下設
備を避けて設置できるため仕切り部材の施工が容易であ
ると共に、施工後であっても配管や配線を容易に変更で
きる。

このため、請求項１の発明によると、防音性に優れた
防音二重床構造を簡易な施工方法により得ることができ
る。

請求項２の発明によると、仕切り部材を上方が開口し
た筒状体又は箱状体としたため、床下空間での空気振動
は仕切り部材の内部で減衰するので、床下空間での騒音
を仕切り部材の内部で反射、吸音させて一層効果的に低
減できる。

請求項３の発明によると、仕切り部材を少なくとも一
辺で折り曲げ成形されている折曲げ成形体としたため、
仕切り部材を簡易に製作することができると共に、仕切
り部材の間隔や配置を自由に定めて設置することができ
るので、配管等の床下設備への対応が一層容易となる。

【図面の簡単な説明】

第１図〜第３図は本発明の一実施例である防音二重床構
造を示し、第１図は断面図、第２図及び第３図は各々仕
切り部材の斜視図、第４図は上記防音二重床構造の一変
形例を示す一部切截斜視図、第５図〜第８図は各々仕切
り部材の他の変形例を示す斜視図、第９図及び第10図は
各々仕切り部材の配置を示す平面図、第11図はクリアラ
ンスと軽量床衝撃音レベルとの関係を示す図、第12図は
従来構造としての比較例の断面図、第13図は具体例及び
比較例の軽量床衝撃音に対する遮音性能テスト結果を示
す図である。 １……床下地 ２……床パネル材 ３……支持脚体 ４……捨張り材 ５……床仕上げ材 ６……床下空間 ７……仕切り部材 7a……壁部 7b……底部 ８……吸音材

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 宮本 英樹 大阪府大阪市北区中之島２丁目３番18号 大建工業株式会社内 (72)発明者 山口 稔 大阪府大阪市北区中之島２丁目３番18号 大建工業株式会社内 (56)参考文献 特開 平２−272138（ＪＰ，Ａ) 特開 平３−5563（ＪＰ，Ａ)

Claims (3)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】コンクリート床スラブ等からなる床下地上
   に複数の床パネル材がレベル調節可能な複数の支持脚体
   を介して並置され、上記床パネル材の下方に床下空間が
   形成されてなる防音二重床構造であって、 上記床下地上に、音響を反射しやすい材料により形成さ
   れており、上記床下空間高さの３分の１以上で且つ該床
   下空間高さより低い高さを有し該床下空間を仕切る自立
   可能な仕切り部材が、適宜間隔をおいて分散して配置さ
   れていることを特徴とする防音二重床構造。
2. 【請求項２】上記仕切り部材は、上方が開口した筒状体
   又は箱状体であることを特徴とする請求項１に記載の防
   音二重床構造。
3. 【請求項３】上記仕切り部材は、少なくとも一辺で折り
   曲げ成形されてなる折曲げ成形体であることを特徴とす
   る請求項１に記載の防音二重床構造。