JP3216179B2 - 透明性樹脂組成物 - Google Patents

透明性樹脂組成物

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、N−アルキル置換マレ
イミド−オレフィン系共重合体およびガラスフィラ−か
らなる透明性、耐熱性、剛性、耐候性および寸法安定性
に優れた樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来技術】ポリスチレン、アクリル樹脂等は透明性プ
ラスチック材料として家電部品をはじめ幅広い用途で用
いられている。特に近年軽量化、デザイン性、生産性な
どの点からガラス代替の動きがさらに加速されている。
これにともない材料に対する要求も多様化し、種々の材
料が検討されている。なかでも、剛性不足、寸法安定性
の向上などの点からガラス繊維などで強化したプラスチ
ックが用いられている。しかしながらこれらガラス繊維
強化プラスチックは、透明性を失ってしまう場合が多
い。これは、添加するガラス繊維とプラスチックの光屈
折率が一致しないことによりプラスチック中に透過した
光が乱屈折することが主な原因である。
【0003】このような問題点を解決するために、スチ
レン−メチルメタクリレ−ト共重合体の組成を調製する
ことにより屈折率をガラス繊維と一致させる方法、ある
いはアクリル樹脂とスチレン−アクリロニトリル共重合
体をブレンドすることにより屈折率を調製する方法など
が、例えば特開昭54−24993号公報、特公平3−
56256号公報等に記載されている。
【0004】しかしながらこれらのガラス繊維強化プラ
スチックは、耐熱性の点においてその使用が大きく制限
されている。
【0005】一方、マレイミド系共重合体は、高い耐熱
性を有するため古くから種々の検討がなされている。例
えば、メタクリル酸メチルにN−芳香族置換マレイミド
を共重合する方法が、特公昭43−9753号公報、特
開昭61−141715号公報、特開昭61−1717
08号公報および特開昭62−109811号公報に、
スチレン系樹脂にN−芳香族置換マレイミドを共重合す
る方法が、特開昭47−6891号公報、特開昭61−
76512号公報および特開昭61−276807号公
報に知られている。しかし、この方法で得られる樹脂は
N−芳香族置換マレイミド含量が増すほど耐熱性は良好
となるが、非常に脆く、また加工性が悪い、着色する等
の問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、透明
性、耐熱性、剛性および寸法安定性等に優れた樹脂組成
物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、この問題
に鑑み鋭意検討した結果、N−アルキル置換マレイミド
−オレフィン系共重合体およびガラスフィラ−からなる
樹脂組成物が上記目的を満たすことを見出し、本発明を
完成するに至った。
【0008】すなわち、本発明は、a)下記に示す構成
成分(I)がポリマ−全体の30〜98モル%、構成成
分(II)がポリマ−全体の70〜2モル%および共重
合可能なその他の重合性単量体からなる単位が0〜40
モル%であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量が1
×10以上5×10以下である樹脂とb)ガラスフ
ィラ−からなり、樹脂が組成物全体の30〜99重量
%、ガラスフィラ−が組成物全体の70〜1重量%であ
って、樹脂とガラスフィラ−との屈折率差が0.01以
内であることを特徴とする樹脂組成物およびそれよりな
る自動車部品に関する。
【0009】
【化3】 (ここで、Rは炭素数1〜18のアルキル基または炭
素数3から12のシクロアルキル基を示す)
【0010】
【化4】 (ここで、R、RおよびRは水素または炭素数1
〜8のアルキル基を示す)上記のマレイミド共重合体
は、例えば、N−アルキル置換マレイミド類とオレフィ
ン類とのラジカル共重合反応により得ることができる。
【0011】構成成分(I)を与える化合物は、N−メ
チルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロ
ピルマレイミド、N−i−プロピルマレイミド、N−n
−ブチルマレイミド、N−i−ブチルマレイミド、N−
s−ブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N
−n−ペンチルマレイミド、N−n−ヘキシルマレイミ
ド、N−n−ヘプチルマレイミド、N−n−オクチルマ
レイミド、N−ラウリルマレイミド、N−ステアリルマ
レイミド、N−シクロプロピルマレイミド、N−シクロ
ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等の
N−アルキル置換マレイミド類であり、耐熱性の点から
N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−イ
ソプロピルマレイミドあるいはN−シクロヘキシルマレ
イミドが好ましく用いられる。これらは1種または2種
以上組み合わせて用いることができる。
【0012】構成成分(II)を与える化合物は、エチ
レン、イソブテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチ
ル−1−ペンテン、2−メチル−1−ヘキセン、1−メ
チル−1−ヘプテン、1−イソオクテン、2−メチル−
1−オクテン、2−エチル−1−ペンテン、2−メチル
−2−ブテン、2−メチル−2−ペンテン、2−メチル
−2−ヘキセン等のオレフィン類であり、このうち耐熱
性および機械強度の点からイソブテンが好ましく用いら
れる。また、これらは1種または2種以上組み合わせて
用いることができる。
【0013】また、これらの単量体と共重合可能なその
他の重合性単量体としては、スチレン,α−メチルスチ
レン,ビニルトルエン, 1,3−ブタジエン,イソプ
レンおよびこれらのハロゲン置換誘導体、メタクリル酸
メチル,メタクリル酸エチル,メタクリル酸シクロヘキ
シル,メタクリル酸フェニル,メタクリル酸ベンジル,
メタクリル酸フルオロメチル,メタクリル酸フルオロエ
チル等のメタクリル酸エステル類、アクリル酸メチル,
アクリル酸エチル,アクリル酸ブチル,アクリル酸シク
ロヘキシル,アクリル酸フェニル,アクリル酸ベンジ
ル,アクリル酸フルオロメチル,アクリル酸フルオロエ
チル,アクリル酸フルオロブチル等のアクリル酸エステ
ル類、酢酸ビニル,安息香酸ビニル等のビニルエステル
類、メチルビニルエ−テル,エチルビニルエ−テル,プ
ロピルビニルエ−テル,ブチルビニルエ−テル等のビニ
ルエ−テル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、無水マレ
イン酸、N−フェニルマレイミド、アクリロニトリルよ
り選ばれる1種類以上の化合物が挙げられる。
【0014】本発明の組成物を構成する樹脂の構成成分
(I)の含有量は、ポリマ−全体の30〜98モル%で
あり、好ましくは40〜85モル%、特に45〜75モ
ル%が好ましい。構成成分(II)の含有量はポリマ−
全体の2〜70モル%、好ましくは15〜60モル%、
特に25〜55モル%が好ましい。また、これらの単量
体と共重合可能なその他の重合性単量体からなる単位は
ポリマ−全体の0〜40モル%、好ましくは0〜30モ
ル%、特に0〜20モル%が好ましい。構成成分(I)
が98モル%を越える場合には生成するポリマ−は脆く
なり、30モル%未満の場合には生成するポリマ−の耐
熱性が低下するため好ましくない。
【0015】これらモノマ−の重合は公知の重合法、例
えば塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法および乳化重
合法のいずれもが採用可能である。
【0016】重合開始剤としては、ベンゾイルパ−オキ
サイド、ラウリルパ−オキサイド、オクタノイルパ−オ
キサイド、アセチルパ−オキサイド、ジ−t−ブチルパ
−オキサイド、t−ブチルクミルパ−オキサイド、ジク
ミルパ−オキサイド、t−ブチルパ−オキシアセテ−
ト、t−ブチルパ−オキシベンゾエ−ト等の有機過酸化
物、または、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバ
レロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−ブチロニト
リル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメ
チル−2,2’−アゾビスイソブチレ−ト、1,1’−
アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等の
アゾ系開始剤が挙げられる。
【0017】溶液重合法において使用可能な溶媒として
は、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、
シクロヘキサン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ア
セトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、
イソプロピルアルコ−ル、ブチルアルコ−ル等が挙げら
れる。
【0018】重合温度は開始剤の分解温度に応じて適宜
設定することができるが、一般的には40〜300℃の
範囲で行うことが好ましい。
【0019】また、上記の樹脂は、無水マレイン酸とオ
レフィン類との共重合により得られる樹脂をアルキルア
ミン等を用いて、後イミド化することにより得ることも
できる。
【0020】このような後イミド化反応は、例えば、無
水マレイン酸−イソブテン共重合体を溶融状態あるいは
メタノ−ル,エタノ−ル,プロパノ−ルなどのアルコ−
ル溶媒、ベンゼン,トルエンなどの芳香族溶媒等に溶解
あるいは分散させ、メチルアミンなどの一級アミンと1
00〜350℃の温度で反応させることにより行なわれ
る。
【0021】生成する樹脂の重量平均分子量(Mw)
は、ゲルパ−ミエ−ションクロマトグラフィ−(GP
C)により求めることができる。マレイミド共重合体の
分子量は1×10以上5×10以下、特に1×10
以上1×10以下のものが好ましい。分子量が5×
10を越える場合には成形性が悪くなり、1×10
未満の場合には得られる樹脂が脆くなる傾向にある。
【0022】本発明の樹脂組成物で用いるガラスフィラ
−としては、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス
などいずれの種類も可能である。ガラスフィラ−の形状
はロ−ビング、サ−フェ−シングマット、チョップドス
トランド、ミルドファイバ−、格子織、平織、ネットな
どいずれの形状でも可能である。
【0023】ガラスフィラ−の含量は1〜70重量%、
好ましくは5〜40重量%、特に好ましくは10〜35
重量%である。ガラスフィラ−の含量が1重量%未満の
場合には添加効果は小さく、70重量%を越える場合に
は機械特性および成形性などが低下する傾向にある。
【0024】マレイミド共重合体とガラスフィラ−の屈
折率差は0.01以下、特に0.005以下であること
が好ましい。屈折率差が0.01を越える場合には得ら
れる樹脂組成物の透明性が劣る。
【0025】屈折率のマッチングは、マレイミド共重合
体の組成を調製する方法および/またはガラスフィラ−
の組成を調製する方法により適宜実施できる。
【0026】マレイミド共重合体の屈折率は、例えばN
−置換基の種類あるいは第三成分を共重合することによ
り調製することができる。
【0027】一方、ガラスフィラ−の屈折率はそれを構
成する無機物の成分組成で決定される。即ち主成分であ
るSiOの他にAl,CaO,MgO,Na
O,K0,ZrOなどで構成されアルカリ金属が極
めて少ないEガラスの屈折率は1.54〜1.56付
近、比較的多いCガラスは1.54付近、またSガラス
と呼ばれているものは1.52付近となり樹脂の屈折率
に応じて選択することができる。ガラスフィラ−の形状
は通常使用されているもの、例えば5〜50μmの直径
のものが使用できる。ガラスフィラ−の直径が小さい
程、本発明の樹脂組成物の透明性は良くなり、5〜15
μmのものが好ましい。また、ガラスフィラ−は樹脂と
密着している程、本発明の樹脂組成物の透明性は良くな
るためガラスフィラ−表面をビニルシラン、アミノシラ
ン、クロム化合物、チタネ−ト系カップリング剤など公
知の表面処理剤で処理することが好ましい。さらに、こ
れらの反応処理剤と反応する官能基を少量共重合体に導
入すると界面の接着強度が向上し、より効果的である。
【0028】なお、本発明において得られる樹脂には、
必要に応じて各種染料、ヒンダ−ドフェノ−ル、有機リ
ン酸エステルのような熱安定剤、ベンゾトリアゾ−ル系
あるいはヒンダ−ドアミン系等の紫外線安定剤、難燃
剤、帯電防止剤、各種潤滑剤等を添加してもよい。
【0029】本発明の樹脂組成物の製造方法には特に制
限がなく、例えば、粉体あるいはペレット状のN−アル
キル置換マレイミド−オレフィン系共重合体とガラスフ
ィラ−およびその他の添加剤を混合し、あるいは混合せ
ずに押出機に供給し、溶融混練する方法等が挙げられ
る。
【0030】本発明の樹脂組成物は剛性、寸法安定性、
耐熱性に優れ、自動車分野、電気電子分野、住宅建材、
医療分野、食品分野など幅広い分野で用いることができ
る。特に、耐熱性、透明性、剛性、寸法安定性の要求さ
れる自動車用ライト、サンル−フ、グレ−ジング等の自
動車部品に好適である。
【0031】
【実施例】以下本発明を実施例により説明するが、本発
明は実施例に限定されるものではない。
【0032】生成ポリマ−の分子量は、GPC(東ソ−
(株)製HLC−802A)を用い、ポリスチレン換算
により求めた。
【0033】生成ポリマ−の組成は、主として元素分
析、H−NMR測定により行った。物性評価用試験片
はマレイミド共重合体とガラスフィラ−をあらかじめ振
り混ぜ、2軸押出機(ラボプラストミル(東洋精機社
製))により混練押出しを行い、ペレットとした。得ら
れたペレットを射出成形機(パナジェクション(松下電
器産業株式会社製))を用いて成形し、物性測定試料と
した。
【0034】熱変形温度はASTM D648、線膨張
係数はASTM D696、曲げ強度および曲げ弾性率
はASTM D790、衝撃強度(ノッチ付き)はAS
TMD256、光線透過率はASTM D1003にそ
れぞれ準拠して測定した。
【0035】実施例1 撹拌機、窒素導入管、温度計および脱気管の付いた30
lオ−トクレ−ブにN−メチルマレイミド1180g、
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)
1.6gおよびトルエン/メタノ−ル混合溶媒(1/1
容積比)15lを仕込み、窒素で数回パ−ジした後、液
化イソブテン8.6lを仕込み、60℃で12時間反応
を行った。
【0036】生成ポリマ−は粒子状であった。得られた
ポリマ−粒子を濾過後、減圧下60℃で24時間乾燥し
た。収量は1750gであった。
【0037】得られたポリマ−の元素分析結果より、生
成ポリマ−中のマレイミド単位は50モル%であった。
得られたポリマ−は分子量(Mw)225000であ
り、屈折率は1.527であった。
【0038】ここで得られたマレイミド共重合体1.4
kgとアミノシランで表面処理されている屈折率1.5
24、直径5μmのガラスフィラ−0.6kgをペレタ
イズ後、射出成形により試験片を作成し、各種物性評価
を行った。得られた結果を表1に示す。
【0039】実施例2 実施例1と同様の反応器を用いて、N−メチルマレイミ
ド981g、スチレン612g、AIBN1.6gおよ
びトルエン/メタノ−ル混合溶媒(1/1容積比)12
lを仕込み、窒素で数回パ−ジした後、イソブテン7.
2lを仕込み、60℃で5時間反応を行った。
【0040】反応内容物を濾過後、減圧下60℃で24
時間乾燥した。収量は1520gであった。
【0041】得られたポリマ−の元素分析結果および
H−NMRより生成ポリマ−中のマレイミド単位は50
モル%、イソブテン単位は35モル%、スチレン単位は
15モル%であった。得られたポリマ−は分子量(M
w)250000であり、屈折率は1.552であっ
た。
【0042】ここで得られたマレイミド共重合体1.5
kgとアミノシランで表面処理されている屈折率1.5
54、直径5μmのガラスフィラ−0.5kgをペレタ
イズ後、射出成形により試験片を作成し、各種物性評価
を行った。得られた結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
【発明の効果】実施例より明かなように、本発明の樹脂
組成物は、透明性、耐熱性、剛性および寸法安定性に優
れているために自動車分野、電気電子分野、航空、船舶
分野、住宅分野、医療分野、食品分野等広い用途で極め
て有用である。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】a)下記に示す構成成分(I)がポリマ−
    全体の30〜98モル%、構成成分(II)がポリマ−
    全体の70〜2モル%および共重合可能なその他の重合
    性単量体からなる単位がポリマ−全体の0〜40モル%
    であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量が1×10
    以上5×10以下である樹脂とb)ガラスフィラ−
    からなり、樹脂が組成物全体の30〜99重量%、ガラ
    スフィラ−が組成物全体の70〜1重量%であって、樹
    脂とガラスフィラ−の屈折率差が0.01以内であるこ
    とを特徴とする透明性樹脂組成物。 【化1】 (ここで、Rは炭素数1〜18のアルキル基または炭
    素数3から12のシクロアルキル基を示す) 【化2】 (ここで、R、RおよびRは水素または炭素数1
    〜8のアルキル基を示す)
  2. 【請求項2】請求項1に記載の樹脂組成物よりなる自動
    車部品。
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