JP3209675B2 - チオール化合物 - Google Patents

チオール化合物

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JP3209675B2
JP3209675B2 JP34507595A JP34507595A JP3209675B2 JP 3209675 B2 JP3209675 B2 JP 3209675B2 JP 34507595 A JP34507595 A JP 34507595A JP 34507595 A JP34507595 A JP 34507595A JP 3209675 B2 JP3209675 B2 JP 3209675B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、チオール化合物に
関し、より詳細には、カルバペネム化合物の合成中間体
であるチオール化合物、その酸付加塩及び結晶、並びに
これらの化合物の製造法及び当該製造法に有用な合成中
間体に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】これま
でに、いわゆるカルバペネム骨格を有する多くの化合物
が見出されており、その中から優れた抗菌活性を有する
化合物もいくつか提案されている。しかしながら、これ
までに提案されたカルバペネム化合物のほとんどは消化
管からの吸収性が乏しいため、いずれも臨床上は、注射
剤として投与することが考えられているに過ぎない。一
方、臨床の場においては、治療目的や患者の事情等か
ら、薬物投与に際していくつかの投与経路を選択し得る
ことが望ましい。特に、経口剤は注射剤に比べて投与が
容易かつ簡便であり、在宅投与が可能であるという点で
好ましく、臨床上の有用性は極めて高い。したがって、
幅広い抗菌スペクトルと強力な抗菌活性を有し、かつ経
口投与が可能なカルバペネム化合物の開発が、臨床上強
く望まれていた。
【0003】以上の状況に鑑みて、本発明者らは先に、
経口投与が可能なカルバペネム化合物について検討を重
ね、カルバペネム骨格の2位置換基として次式:
【0004】
【化9】
【0005】で示される1−(1,3−チアゾリン−2
−イル)アゼチジン−3−イルチオ基を有する式(I
X):
【0006】
【化10】
【0007】で示されるカルバペネム化合物がそれ自体
強力な抗菌活性を示すばかりでなく、当該化合物の3位
のカルボキシル基を特定のエステル残基でエステル化し
たエステル誘導体が消化管からの吸収性に優れ、しか
も、生体内において速やかに加水分解されることによっ
て再び上記式(IX)の化合物に変換されること、すな
わち、上記エステル誘導体が式(IX)の化合物のプロ
ドラッグとして臨床上優れた抗菌剤、特に経口投与用抗
菌剤となり得ることを見出し、既に化合物(IX)及び
そのエステル誘導体に関して特許出願を完了している
(特願平6−170496号)。
【0008】本発明は、上記式(IX)の化合物の特徴
的置換基である1−(1,3−チアゾリン−2−イル)
アゼチジン−3−イルチオ基をカルバペネム骨格に効率
よく導入するための合成中間体を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は式
(I):
【0010】
【化11】
【0011】で示される3−メルカプト−1−(1,3
−チアゾリン−2−イル)アゼチジン及びその酸付加塩
を提供するものであり、また当該化合物又はその酸付加
塩の保存安定性を向上させるための、結晶形態を有する
上記式(I)で示される化合物の酸付加塩を提供するも
のである。更に本発明は、上記式(I)で示される化合
物の合成中間体として以下の化合物および製造法を提供
するものである。上記式(I)で示される化合物又はそ
の酸付加塩の合成中間体である次式(II):
【0012】
【化12】
【0013】(式中、Rはアシル基、置換若しくは非置
換の低級アルキル基又はアリール基を表す、)で示され
る3−メルカプト−1−(1,3−チアゾリン−2−イ
ル)アゼチジン誘導体及びその酸付加塩;式(I)で示
される化合物又はその酸付加塩の製造法であって、上記
式(II)で示される化合物の置換基Rを脱離せしめる
ことを特徴とする方法;式(II)で示される化合物又
はその酸付加塩の合成中間体である次式(III):
【0014】
【化13】
【0015】で示される3−ヒドロキシ−1−(1,3
−チアゾリン−2−イル)アゼチジン及びその酸付加
塩;上記式(I)で示される化合物又はその酸付加塩の
製造法であって、上記式(III)で示される化合物の
ヒドロキシ基を活性化した後、得られる化合物に、RS
Hで示される化合物(ここで、Rは前記定義のとおりで
ある)又はその塩を反応させて上記式(II)で示され
る化合物を得、次いでこの化合物の置換基Rを脱離せし
めることを特徴とする方法;同じく上記式(I)で示さ
れる化合物又はその酸付加塩の製造法であって、上記式
(III)で示される化合物にジ低級アルキルアゾジカ
ルボキシレート、トリフェニルホスフィン及びRSHで
示される化合物(ここで、Rは前記定義のとおりであ
る)を反応させて上記式(II)で示される化合物を
得、次いでこの化合物の置換基Rを脱離せしめることを
特徴とする方法;上記合成中間体である上記式(II
I)で示される化合物又はその酸付加塩の製造法であっ
て、次式(IV):
【0016】
【化14】
【0017】で示される3−ヒドロキシアゼチジンに、
次式(V):
【0018】
【化15】
【0019】(式中、Lは脱離基を表す)、で示される
2−置換−1,3−チアゾリン誘導体を反応させること
を特徴とする方法;同様に上記式(III)で示される
化合物又はその酸付加塩の製造法であって、上記式(I
V)で示される化合物にハロゲン化エチルイソチオシア
ネートを反応させることを特徴とする方法;上記式
(I)で示される化合物又は酸付加塩の合成中間体であ
る次式(VI):
【0020】
【化16】
【0021】で示される2−(アゼチジン−3−イルチ
オ)−1,3−チアゾリン及びその酸付加塩;上記式
(I)で示される化合物又はその酸付加塩の製造法であ
って、上記式(VI)で示される化合物に酸を反応させ
ることを特徴とする方法;上記式(VI)で示される化
合物又はその酸付加塩の製造法であって、次式(VI
I):
【0022】
【化17】
【0023】で示される1−アザビシクロ[1.1.
0]ブタンに1,3−チアゾリジン−2−チオンを反応
させることを特徴とする方法;上記式(I)で示される
化合物又はその酸付加塩の製造法であって、次式(VI
II):
【0024】
【化18】
【0025】で示される3−メルカプトアゼチジンに、
上記式(V)で示される2−置換チアゾリン誘導体を反
応させることを特徴とする方法;同じく上記式(I)で
示される化合物又はその酸付加塩の製造法であって、上
記式(VIII)で示される3−メルカプトアゼチジン
にハロゲン化エチルイソチオシアネートを反応させるこ
とを特徴とする方法;同じく上記式(I)で示される化
合物またはその酸付加塩の製造法であって、上記式(V
II)で示される1−アザビシクロ[1.1.0]ブタ
ンにRSHで示される化合物(ここで、Rは前記定義の
とおりである)を反応させた後、得られる化合物の置換
基Rを脱離せしめて上記式(VIII)で示される3−
メルカプトアゼチジンを得、次いでこの化合物に上記式
(V)で示される2−置換−1,3−チアゾリン誘導体
を反応させることを特徴とする方法;
【0026】同じく上記式(I)で示される化合物また
はその酸付加塩の製造法であって、上記式(VII)で
示される1−アザビシクロ[1.1.0]ブタンにRS
Hで示される化合物(ここで、Rは前記定義のとおりで
ある)を反応させた後、得られる化合物の置換基Rを脱
離せしめて上記式(VIII)で示される3−メルカプ
トアゼチジンを得、次いでこの化合物にハロゲン化エチ
ルイソチオシアネートを反応させることを特徴とする方
法;
【0027】上記式(III)で示される化合物または
その酸付加塩の製造法であって、上記式(VII)で示
される1−アザビシクロ[1.1.0]ブタンにカルボ
ン酸類を反応させて、得られる化合物を加溶媒分解して
上記式(IV)で示される3−ヒドロキシアゼチジンを
得、次いでこの化合物に上記式(V)で示される2−置
換−1,3−チアゾリン誘導体を反応させることを特徴
とする方法;
【0028】同じく上記式(III)で示される化合物
またはその酸付加塩の製造法であって、上記式(VI
I)で示される1−アザビシクロ[1.1.0]ブタン
にカルボン酸類を反応させて、得られる化合物を加溶媒
分解して上記式(IV)で示される3−ヒドロキシアゼ
チジンを得、次いでこの化合物にハロゲン化エチルイソ
チオシアネートを反応させることを特徴とする方法;
【0029】以上の本発明が提供する式(I)で示され
る化合物又は酸付加塩によれば、それ自体として優れた
抗菌活性を有しかつエステル化により経口投与も可能と
なる臨床上極めて有用な上記式(IX)で示されるカル
バペネム化合物を、工業的規模で、しかも効率よく製造
することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する
が、本明細書中において「低級アルキル基」は直鎖状又
は分岐鎖状のいずれでもよく、例えばメチル、エチル、
n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチ
ル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチ
ル、イソペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、n−
ヘプチル、イソヘプチル等を挙げることができるが、メ
チル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチ
ル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルで
あるであることが好ましい。また、これらの低級アルキ
ル基は、場合によりヒドロキシ、メトキシ、アセトキシ
及びニトロからなる群より選ばれる少なくとも1個好ま
しくは1又は2個の置換基で置換されていてもよいフェ
ニル基で置換されていてもよい。
【0031】「アシル基」は、有機カルボン酸のカルボ
キシル基からOH基を除いた残りの基であることがで
き、例えばアセチル、プロピオニル、ブチリル等の低級
アルカノイル基又は置換若しくは非置換のベンゾイル基
等を挙げることができる。
【0032】「アリール基」は単環式又は多環式である
ことができ、さらに環上に1個もしくはそれ以上の低級
アルキル基、ニトロ基、ハロゲン原子等の置換基を有し
ていてもよく、例えば、フェニル、トリル、キシリル、
α−ナフチル、β−ナフチル基等を挙げることができ
る。
【0033】「ハロゲン原子」にはフッ素、塩素、臭素
及びヨウ素原子が包含され、中でも塩素、臭素及びヨウ
素が好ましい。
【0034】本発明が提供する式(I)、(II)、
(III)及び(VI)で示される化合物はいずれも、
任意の酸付加塩として単離することができる。付加しう
る酸のうち有機酸としては、例えば酢酸、プロピオン
酸、酪酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸等の低級
脂肪酸;安息香酸、p−ニトロ安息香酸等の置換又は未
置換の安息香酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタ
ンスルホン酸等の(ハロ)低級アルキルスルホン酸;ベ
ンゼンスルホン酸、p−ニトロベンゼンスルホン酸、p
−ブロモベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、
2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホン酸等の
置換又は未置換のアリールスルホン酸;ジフェニルリン
酸等の有機リン酸を例示することができ、無機酸として
は、例えば塩酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、ホ
ウフッ化水素酸、過塩素酸、亜硝酸等を例示することが
できる。
【0035】本発明の式(I)で示される化合物は、本
発明が提供する3種類の特徴的な製造法により効率よく
製造することができる。これらの製造法を以下に順に説
明する。先ず、第1の製造法を模式的に示せば、以下の
反応式(A)のとおりである。
【0036】
【化19】
【0037】(式中、Xはハロゲン原子を表し、Rは前
記定義のとおりである。) 反応式(A)の製造法を、各工程に従って詳細に説明す
る。工程(a) 本工程は、2−ハロゲン化メチルアジリジンに塩基を反
応させることによって、式(VII)で示される1−ア
ザビシクロ[1.1.0]ブタンに変換する工程であ
る。
【0038】反応は、2−ハロゲン化メチルアジリジン
を、反応に不活性な溶媒、例えばメタノール、エタノー
ル、プロパノール、n−ブタノールなどのアルコール系
溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエ
ーテル系溶媒;n−ヘプタン、n−ヘキサン、シクロヘ
キサン、ペンタン、シクロペンタン等の炭化水素系溶
媒;酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル等のエス
テル系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭
素等のハロゲン系溶媒;アセトニトリル、ジメチルホル
ムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシ
ド等の中から選ばれる溶媒、好ましくはジエチルエーテ
ル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒に溶解又は
懸濁させ、これに適当な塩基、例えばリチウム、ナトリ
ウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、マグネ
シウム等のアルカリ土類金属;水素化リチウム、水素化
ナトリウム等のアルカリ金属水素化物;水素化カルシウ
ム等のアルカリ土類金属水素化物;水酸化ナトリウム、
水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリ
ウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素
ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水
素塩;メチルリチウム、n−ブチルリチウム等のアルカ
リ金属アルキル;アルキルグリニアール試薬;リチウム
アミド、リチウムジイソプロピルアミド、ナトリウムア
ミド、カリウムアミド等のアルカリ金属アミド;ナトリ
ウムメトキシド;ナトリウムエトキシド、カリウム第三
級ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;酢酸ナト
リウム等のアルカン酸アルカリ金属塩;炭酸マグネシウ
ム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;トリ
メチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジイソプロ
ピル−N−エチルアミン等のトリ(低級)アルキルアミ
ン;ピリジン、ピコリン、ルチジン、N,N−ジメチル
アミノピリジンのようなN,N−ジ(低級)アルキルア
ミノピリジン等のピリジン化合物;キノリン;N−メチ
ルモルホリン等のN−低級アルキルモルホリン;N,N
−ジメチルベンジルアミン等のN,N−ジ(低級)アル
キルベンジルアミン等のような有機塩基又は無機塩基、
あるいは分子中に活性メチレンを有し塩基として用いら
れるジムシルナトリウム、ジムシルリチウム等のジメチ
ルスルホキシドと水素化ナトリウム又は水素化リチウム
とからなる塩、好ましくはメチルリチウム、n−ブチル
リチウムなどのアルキルリチウム、リチウムアミド又は
リチウムジイソプロピルアミドなどのアルカリ金属アミ
ド等を加えて攪拌することにより実施することができ
る。
【0039】この反応における上記塩基の使用量は特に
限定されるものでないが、通常、2−ハロゲン化メチル
アジリジン1モルに対して約1〜約20モル、好ましく
は約1.5〜約5モルの割合で使用することができる。
反応温度は厳密に制限されるものでなく、使用される塩
基の種類や量により適宜変更できるが、一般に約−78
℃〜約100℃、好ましくは約−78℃〜約60℃の範
囲内の温度で行うことができ、かかる条件下で反応は約
10分間〜数日間で終了させることができる。反応は、
不活性ガス、例えば窒素ガスまたはアルゴンガス気流中
で行うことが好ましい。
【0040】以上の方法により式(VII)の化合物を
収率よく得ることができ、反応液はそのまま次の工程に
用いることができるが、必要に応じて反応液を通常行わ
れる精製手段、例えば蒸留、抽出、洗浄、溶媒留去、カ
ラム又は薄層クロマトグラフィー等に付すことにより、
式(VII)の化合物を単離精製することができる。上
記反応において用いられる合成原料の2−ハロゲン化メ
チルアジリジンとしては、例えば2−クロロメチルアジ
リジン、2−ブロモメチルアジリジン、2−ヨウ化メチ
ルアジリジン等が挙げられる。これらの化合物は、後記
実施例1又は2に記載の方法に従って、市販のアリルア
ミンから容易に合成することができる。
【0041】工程(b) 本工程は、上記工程(a)で得られる式(VII)の1
−アザビシクロ[1.1.0]ブタンにカルボン酸類を
反応させて得られる化合物を加水分解等の加溶媒分解反
応に付すことにより、式(IV)の3−ヒドロキシアゼ
チジンに変換する工程である。
【0042】反応は、まず、式(VII)の化合物を上
記工程(a)において例示した中から選択される反応に
不活性な溶媒、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロ
フランなどのエーテル系溶媒に溶解させ、これにカルボ
ン酸類を加えて撹拌する。上記カルボン酸類としては、
ギ酸及び上記例示した有機酸の中から適宜選択して用い
ることができ、好ましくはギ酸又は酢酸である。この反
応におけるカルボン酸類の使用量は特に限定されるもの
でなく、通常、式(VII)の化合物1モルに対して約
1〜約20モル、好ましくは約1.5〜約5モルの割合
で使用することができる。反応温度は厳密に制限される
ものでなく、使用されるカルボン酸の種類や量により適
宜変更できるが、一般に約−78℃〜約100℃、好ま
しくは約−78℃〜約60℃の範囲内の温度で行うこと
ができ、かかる条件下で反応は約10分間〜数日間で終
了させることができる。反応は、不活性ガス、例えば窒
素ガスまたはアルゴンガス気流中で行うことが好まし
い。
【0043】次いで、上記反応で得られる化合物を加水
分解等の加溶媒分解反応に付すことにより、式(IV)
の3−ヒドロキシアゼチジンを得ることができる。反応
は、上記反応で得られる化合物を水中、メタノール、エ
タノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒中、
または水とアセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジオ
キサン等との混合溶媒中で、上記工程(a)で例示した
中から選択される適当な塩基、または例えば塩酸、硫
酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸等の無機酸の存在下に、
約−20℃〜約50℃、好ましくは約0℃〜室温程度の
比較的低温で約10分間〜数時間処理することにより行
うことができる。
【0044】以上の方法で得られる反応液を、必要に応
じて通常行われる精製手段、例えば抽出、洗浄、溶媒留
去、カラム又は薄層クロマトグラフィー、再結晶等に付
すことにより、目的とする式(IV)の化合物を単離精
製することができるが、単離せずに、反応液をそのまま
次の工程に用いることもできる。
【0045】工程(c) 本工程は、上記工程(b)で得られる式(IV)の3−
ヒドロキシアゼチジンを式(III)の3−ヒドロキシ
−1−(1,3−チアゾリン−2−イル)アゼチジンに
変換する工程である。本工程は、例えば以下の(i)又
は(ii)のいずれかの方法で実施することができる。
【0046】(i)上記の変換は、式(IV)の3−ヒ
ドロキシアゼチジンと前記式(V)で示される2−置換
チアゾリン誘導体とを、上記例示した中から適宜選択さ
れる反応に不活性な溶媒、好ましくはメタノール、エタ
ノール等のアルコール系溶媒中で、好ましくは上記例示
した中から適宜選択される適当な塩基、例えば炭酸水素
ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸
カリウム等の存在下に攪拌することによって実施するこ
とができる。ここで、前記式(V)の化合物において置
換基Lで示される脱離基としては、例えばアジド基;塩
素、臭素、フッ素等のハロゲン原子;アセトキシ、プロ
ピオニルオキシ等の低級アルカノイルオキシ基;ベンゼ
ンスルホニルオキシ、トシルオキシ、メタンスルホニル
オキシ等のスルホニルオキシ基;メトキシ、エトキシ等
の低級アルコキシ基;メチルチオ、エチルチオ等の低級
アルキルチオ基を挙げることができるが、低級アルキル
チオ基が好ましい。
【0047】この反応における塩基及び式(V)の化合
物の使用量は特に限定されるものでないが、通常、式
(IV)の化合物1モルに対していずれも約1〜約3モ
ル、好ましくは約1〜約1.5モルの割合で使用するこ
とができる。反応温度は厳密に制限されるものでなく、
使用される溶媒、塩基及び式(V)の化合物の種類や量
により適宜変更できるが、一般に室温〜約100℃、好
ましくは室温〜約80℃の範囲内の温度で行うことがで
き、かかる条件下で反応は約1〜約24時間で終了させ
ることができる。反応は、不活性ガス、例えば窒素ガス
またはアルゴンガス気流中で行うことが好ましい。
【0048】(ii)式(IV)の化合物の式(II
I)の化合物への変換はまた、式(IV)の化合物とハ
ロゲン化エチルイソチオシアネートとを上記した不活性
溶媒の中から選択される適当な溶媒、好ましくはアセト
ニトリル中で、好ましくは上記した塩基、例えばトリエ
チルアミン等の有機塩基の存在下に撹拌することにより
実施することもできる。ここで用いられる合成原料のハ
ロゲン化エチルイソチオシアネートとしては、例えばク
ロロエチルイソチオシアネート、ブロモエチルイソチオ
シアネート、ヨウ化エチルイソチオシアネート等が挙げ
られる。
【0049】この反応における塩基及びハロゲン化エチ
ルイソチオシアネートの使用量は特に限定されるもので
ないが、通常、式(IV)の化合物1モルに対していず
れも約1〜約3モル、好ましくは約1〜約1.5モルの
割合で使用することができる。反応温度は厳密に制限さ
れるものでなく、使用される塩基やハロゲン化エチルチ
オイソシアネートの種類や量により適宜変更できるが、
一般に、約−20℃〜約50℃、好ましくは約0℃〜室
温程度の比較的低温で行うことができ、かかる条件下
で、反応は約10分間〜数時間で終了させることができ
る。反応は、不活性ガス、例えば窒素ガスまたはアルゴ
ンガス気流中で行うことが好ましい。
【0050】以上の(i)又は(ii)のいずれの方法
を実施した場合でも、反応液を必要に応じて通常行われ
る精製手段、例えば抽出、洗浄、溶媒留去、カラム又は
薄層クロマトグラフィー、再結晶等に付すことにより、
式(III)の化合物を単離精製することができる。ま
た、式(III)の化合物は、適当な溶媒中で上記例示
した有機酸又は無機酸と共に撹拌することにより酸付加
塩として単離することもできる。かくして得られる式
(III)の化合物は、従来の文献に未載の新規化合物
であり、本発明の一部をなすものである。
【0051】工程(d) 本工程は、上記工程(c)で得られる式(III)の3
−ヒドロキシ−1−(1,3−チアゾリン−2−イル)
アゼチジンを式(II)の3−メルカプト−1−(1,
3−チアゾリン−2−イル)アゼチジン誘導体に変換す
る工程である。本工程は、例えば以下の(i)又は(i
i)のいずれかの方法で実施することができる。
【0052】(i)上記変換は、式(III)の化合物
のヒドロキシ基を活性化した後、得られる活性化誘導体
に式RSHで示されるチオール化合物(式中、Rは前記
定義のとおりである)又はその塩を反応させることによ
り実施することができる。この方法で用いられる式RS
Hで示されるチオール化合物としては、例えばチオ酢
酸、チオプロピオン酸等のRが低級アルカノイル基であ
るチオール化合物;チオ安息香酸等のRが置換若しくは
非置換のベンゾイル基であるチオール化合物;Rがt−
ブチル等の非置換低級アルキル基であるチオール化合
物;Rがモノ、ジ又はトリフェニル置換メチル基である
チオール化合物;Rがベンジル基であって、そのフェニ
ル部分が1又は2個のヒドロキシ、メトキシ、アセトキ
シ又はニトロ等で置換されているチオール化合物;Rが
低級アルキル基、ニトロ基、ハロゲン原子等で置換され
ていてもよいフェニル基若しくはナフチル基であるチオ
ール化合物を例示することができ、中でもRが低級アル
カノイル基又は置換若しくは非置換のベンゾイル基であ
るチオール化合物が好ましい。またこのチオール化合物
は、そのナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩
であってもよい。
【0053】式(III)の化合物のヒドロキシ基を活
性化する反応は、式(III)の化合物を上記した不活
性溶媒の中から選ばれる適当な溶媒、例えばジエチルエ
ーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒中
で、好ましくは上記例示した中から選択される適当な塩
基、例えばトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルア
ミン、N,N−ジメチルアミノピリジン等の有機塩基又
はこれらの組み合わせの存在下に、水酸基の活性化試
薬、例えばメタンスルホニルクロリド、4−トルエンス
ルホニルクロリドなどの有機スルホニルハライド;アセ
チルクロリドなどのアシルハライド等を反応させること
によって行うことができる。
【0054】このときの塩基及び水酸基の活性化試薬の
使用量は特に限定されるものでないが、通常、式(II
I)の化合物1モルに対していずれも約1〜約3モル、
好ましくは約1〜約1.5モルの割合で使用することが
できる。反応温度は厳密に制限されるものでなく、使用
される塩基及び活性化試薬の種類や量により適宜変更で
きるが、一般に約−20℃〜約50℃、好ましくは約0
℃〜室温程度の比較的低温で行うことができ、かかる条
件下で、反応は約10分間〜数時間で終了させることが
できる。反応は、不活性ガス、例えば窒素ガスまたはア
ルゴンガス気流中で行うことが好ましい。
【0055】次いで、水酸基が活性化された式(II
I)の化合物と上記式RSHで示されるチオール化合物
又はその塩とを、上記例示した中から選択される適当な
溶媒、例えばジメチルホルムアミド中で撹拌すれば、本
工程で目的とする式(II)の化合物を得ることができ
る。
【0056】このときの式RSHで示されるチオール化
合物又はその塩の使用量は特に限定されるものでなく、
通常、水酸基が活性化された化合物1モルに対して約1
〜約8モル、好ましくは約1〜約6モルの割合で使用す
ることができる。反応温度は厳密に制限されるものでな
く、使用される上記チオール化合物若しくはその塩の種
類又は量により適宜変更できるが、一般に約0℃〜約1
50℃、好ましくは室温〜約120℃程度の温度で行う
ことができ、かかる条件下で、反応は約10分間〜数時
間で終了させることができる。反応は、不活性ガス、例
えば窒素ガスまたはアルゴンガス気流中で行うことが好
ましい。
【0057】(ii)また、式(III)の化合物の式
(II)の化合物への変換は、式(III)の化合物に
ジ低級アルキルアゾジカルボキシレート、トリフェニル
ホスフィン、および上記RSHで示される化合物を反応
させて実施することもできる。ここで用いられるジ低級
アルキルアゾジカルボキシレートとしては、例えばジエ
チルアゾジカルボキシレート、ジイソプロピルアゾジカ
ルボキシレート等を挙げることができる。また、RSH
で示される化合物としては、上記(i)で例示した中か
ら選択して用いることができる。
【0058】反応は、上記例示した中から選択される適
当な溶媒、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラ
ンなどのエーテル系溶媒中で、式(III)の化合物、
ジ低級アルキルアゾジカルボキシレート、トリフェニル
ホスフィン及びRSHで示される化合物を共に撹拌する
ことにより実施することができる。このときのジ低級ア
ルキルアゾジカルボキシレート、トリフェニルホスフィ
ン及びRSHで示される化合物の使用量は特に限定され
るものでなく、通常、式(III)の化合物1モルに対
してそれぞれ約1〜約3モル、好ましくは約1〜約2モ
ルの割合で使用することができる。反応温度は厳密に制
限されるものでなく、使用される各試薬の種類や量によ
り適宜変更できるが、一般に、約−20℃〜約50℃、
好ましくは約0℃〜室温程度の比較的低温で行うことが
でき、かかる条件下で、反応は約10分間〜数時間で終
了させることができる。反応は不活性ガス、例えば窒素
ガスまたはアルゴンガス気流中で行うことが好ましい。
【0059】以上の(i)又は(ii)のいずれの方法
を実施する場合でも、必要に応じて反応液を通常行われ
る精製手段、例えば抽出、洗浄、溶媒留去、カラム又は
薄層クロマトグラフィー、再結晶等に付すことにより、
式(II)の化合物を単離精製することもできる。ま
た、式(II)の化合物は、適当な溶媒中で上記有機酸
又は無機酸と共に撹拌することにより適当な酸付加塩と
して単離することができる。かくして得られる式(I
I)の化合物もまた、従来の文献に未載の新規化合物で
あり、本発明の一部をなすものである。
【0060】工程(e) 本工程は、上記工程(d)で得られる式(II)の3−
メルカプト−1−(1,3−チアゾリン−2−イル)ア
ゼチジン誘導体又はその酸付加塩から置換基Rを脱離せ
しめて、本発明の式(I)の3−メルカプト−1−
(1,3−チアゾリン−2−イル)アゼチジン又はその
酸付加塩に変換する工程である。
【0061】置換基Rの脱離は、前述した加水分解等の
加溶媒分解反応、または下記のような水素添加分解反応
によって行うことができる。水素添加分解は、式(I
I)の化合物を、例えばpH5〜7の酢酸緩衝液、モル
ホリノプロパンスルホン酸−水酸化ナトリウム緩衝液、
リン酸塩緩衝液等の緩衝液;これらの緩衝液とアルコー
ル性溶媒との混合溶媒;リン酸二カリウム、重炭酸ナト
リウム等を含むテトラヒドロフラン−水、テトラヒドロ
フラン−エタノール−水、ジオキサン−水、ジオキサン
−エタノール−水、n−ブタノール−水等の混合溶媒中
で、約1〜4気圧の水素を用い、酸化白金、パラジウム
−活性炭、水酸化パラジウム−活性炭などの水添触媒の
存在下に、約0〜約50℃の範囲内の温度で約0.25
〜約5時間処理することにより行うことができる。
【0062】以上の方法により、本発明の式(I)の化
合物を収率よく得ることができ、必要に応じて反応液を
通常行われる精製手段、例えば抽出、洗浄、溶媒留去、
カラム又は薄層クロマトグラフィー、再結晶等に付すこ
とにより、式(I)の化合物を単離精製することができ
る。
【0063】次に、式(I)で示される化合物の第2の
製造法を模式的に示せば、以下の反応式(B)のとおり
である。
【0064】
【化20】
【0065】反応式(B)の製造法を各工程に従って詳
細に説明する。工程(a) 本工程は、式(VII)の1−アザビシクロ[1.1.
0]ブタンに1,3−チアゾリジン−2−チオンを反応
させて式(VI)の2−(アゼチジン−3−イルチオ)
−1,3−チアゾリンを得る工程である。
【0066】反応は、上記式(VII)の1−アザビシ
クロ[1.1.0]ブタンと1,3−チアゾリジン−2
−チオンとを上記例示した中から選択される適当な溶
媒、好ましくはテトラヒドロフラン中で、好ましくは上
記例示した中から選択される適当な塩基、例えば水素化
ナトリウム等のアルカリ金属水素化物、またはナトリウ
ムメトキシド等のアルカリ金属アルコキシドの存在下に
撹拌することにより実施することができる。
【0067】この反応における1,3−チアゾリジン−
2−チオン及び塩基の使用量は特に限定されるものでな
いが、通常、式(VII)で示される1−アザビシクロ
[1.1.0]ブタン1モルに対して夫々約1〜約3モ
ル、好ましくは約1〜約1.5モルの割合で使用するこ
とができる。反応温度は厳密に制限されるものでなく、
使用される1,3−チアゾリジン−2−チオン及び塩基
の量や種類により適宜変更できるが、一般に約−78℃
〜約100℃、好ましくは約−78℃〜室温程度の温度
で行うことができ、かかる条件下で反応は約1時間〜約
24時間で終了させることができる。反応は、不活性ガ
ス、例えば窒素ガスまたはアルゴンガス気流中で行うこ
とが好ましい。
【0068】以上の方法により、式(VI)の化合物を
収率よく得ることができ、必要に応じて反応液を通常行
われる精製手段、例えば抽出、洗浄、溶媒留去、カラム
又は薄層クロマトグラフィー、再結晶等に付すことによ
り、式(VI)の化合物を単離精製することができる。
また、式(VI)で示される化合物は、適当な溶媒中で
上記有機酸又は無機酸と撹拌することにより適当な酸付
加塩として単離することができる。得られる式(VI)
の化合物は、従来の文献に未載の新規化合物であり、本
発明の一部をなすものである。
【0069】工程(b) 本工程は、上記工程(a)で得られる式(VI)の2−
(アゼチジン−3−イルチオ)−1,3−チアゾリンを
酸で処理することにより、本発明が目的とする式(I)
で示される3−メルカプト−1−(1,3−チアゾリン
−2−イル)アゼチジンに変換する工程である。
【0070】反応は、上記式(VI)で示される2−
(アゼチジン−3−イルチオ)−1,3−チアゾリンと
酸とを上記例示した中から選択される適当な溶媒、好ま
しくはテトラヒドロフラン中で撹拌することにより実施
することができる。ここで用いられる酸としては、上記
例示した有機酸又は無機酸を用いることができ、好まし
いものとしては低級アルキルスルホン酸、例えばメチル
スルホン酸を用いることができる。
【0071】この反応における酸の使用量は特に限定さ
れるものでないが、通常、式(VI)で示される2−
(アゼチジン−3−イルチオ)−1,3−チアゾリン1
モルに対して約0.1〜約3モル、好ましくは約0.1
〜約1モルの割合で使用することができる。反応温度は
厳密に制限されるものでなく、使用される酸の種類や量
により適宜変更できるが、一般に室温〜約100℃、好
ましくは室温〜約80℃の範囲内の温度で行うことがで
き、かかる条件下で反応は約10分間〜数時間で終了さ
せることができる。反応は、不活性ガス、例えば窒素ガ
スまたはアルゴンガス気流中で行うことが好ましい。
【0072】以上の方法により、本発明の式(I)の化
合物を収率よく得ることができ、必要に応じて反応液を
通常行われる精製手段、例えば抽出、洗浄、溶媒留去、
カラム又は薄層クロマトグラフィー、再結晶等に付すこ
とにより、式(I)の化合物を単離精製することができ
る。
【0073】さらに、式(I)で示される化合物の第3
の製造法を模式的に示せば、以下の反応式(C)のとお
りである。
【0074】
【化21】
【0075】反応式(C)の製造法を各工程に従って詳
細に説明する。工程(a) 本工程は、式(VII)の1−アザビシクロ[1.1.
0]ブタンを、式(VIII)の3−メルカプトアゼチ
ジンに変換する工程である。
【0076】反応は、式(VII)の化合物と上記式R
SHで示されるチオール化合物又はその塩とを、上記例
示した中から選択される適当な溶媒中で撹拌し、次いで
得られる化合物から置換基Rを脱離せしめることにより
実施することができる。ここで、式RSHで示されるチ
オール化合物又はその塩としては、上記例示した中から
適宜選択して用いることができるが、好ましくはRが低
級アルカノイル基又は置換若しくは非置換のベンゾイル
基である化合物、あるいはこれらのナトリウム又はカリ
ウムとの塩である。
【0077】式(VII)で示される1−アザビシクロ
[1.1.0]ブタンとの反応における化合物RSHの
使用量は特に限定されるものでないが、通常、式(VI
I)の化合物1モルに対して約1〜約5モル、好ましく
は約1〜約3モルの割合で使用することができる。反応
温度は厳密に制限されるものでなく、使用される式RS
Hで示される化合物の種類や量により適宜変更できる
が、一般に約−78℃〜約80℃、好ましくは約−50
℃〜室温程度の範囲内の温度で行うことができ、かかる
条件下で反応は約10分間〜数時間で終了させることが
できる。反応は、不活性ガス、例えば窒素ガスまたはア
ルゴンガス気流中で行うことが好ましい。次いで、上記
反応により得られる化合物から置換基Rを脱離せしめる
反応は、前記第1の製造法の工程(e)に記載の方法に
準じて実施することができる。なお、化合物RSHのR
がアシル基であるチオール化合物を原料として上記反応
を行った場合、式(VII)の化合物に置換基Rが2モ
ル当量付加する場合がある(後記実施例9参照)。しか
しこの場合でも、上述のとおり前記第1の製造法の工程
(e)に記載の方法に準じて置換基Rを脱離せしめるこ
とができる(後記実施例10参照)。
【0078】以上の方法により式(VIII)の化合物
を収率よく得ることができ、必要に応じて反応液を通常
行われる精製手段、例えば抽出、洗浄、溶媒留去、カラ
ム又は薄層クロマトグラフィー、再結晶等に付すことに
より、式(VIII)の化合物を単離精製することがで
きる。また、式(VIII)の化合物は、適当な溶媒中
で上記有機酸又は無機酸と撹拌することにより適当な酸
付加塩として単離することができる。
【0079】工程(b) 本工程は、上記工程(a)で得られる式(VIII)の
化合物を本発明の式(I)で示される化合物に変換する
工程である。本工程は、例えば前記第1の製造法におけ
る工程(c)の(i)又は(ii)に記載した方法と同
様に実施することができる。この(i)又は(ii)の
いずれの方法を実施した場合でも、反応液を必要に応じ
て通常行われる精製手段、例えば抽出、洗浄、溶媒留
去、カラム又は薄層クロマトグラフィー、再結晶等に付
すことにより、式(I)の化合物を単離精製することが
できる。
【0080】以上の第1ないし第3のいずれかの製造法
で得られる式(I)の化合物は、適当な溶媒中で上記例
示した有機酸又は無機酸と共に撹拌することにより適当
な酸付加塩として単離することができる。得られる酸付
加塩の内、無機酸との塩、特に塩酸塩は後記実施例に示
すように、保存安定性の優れた結晶形態として容易に得
ることができ、合成中間体として長期保存する場合に極
めて有用である。
【0081】かくして、本発明の目的化合物である式
(I)の3−メルカプト−1−(1,3−チアゾリン−
2−イル)アゼチジン又はその酸付加塩を得ることがで
きる。本発明により提供される式(I)の化合物を用い
ることにより、優れた抗菌活性を有ししかもエステル化
することにより経口投与も可能な式(IX)で示される
カルバペネム化合物を、高収率で得ることができる(後
記製造例参照)。
【0082】
【実施例】以下に実施例、製造例及び試験例によって本
発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの記載
によって何ら限定されるものではない。なお、下記記載
中の各記号は以下の意味を有する。 Ac :アセチル PNB:p−ニトロベンジル実施例1
【0083】
【化22】
【0084】臭素94mlのジエチルエーテル110m
l溶液に15℃以下でアリルアミン(1)80gを滴下
し、室温で一日攪拌する。反応終了後、析出した結晶を
濾取し、ジエチルエーテル55mlで洗浄後真空乾燥す
ることにより2−ブロモメチルアジリジン・臭化水素酸
塩(2)を302.6g(収率:99.6%)得た。1 H−NMR(CD3 OD)δ:3.35(dd,1
H,J=9.89Hz,14.19Hz)、3.71
(dd,1H,J=3.30Hz,14.19Hz)、
3.86(dd,1H,J=8.58Hz,10.89
Hz)、4.01(dd,1H,J=4.62Hz,1
0.89Hz)、4.4−4.6(m,1H)実施例2
【0085】
【化23】
【0086】塩化スルフリル9.64ml及び触媒量の
ヨウ素の乾燥ジクロルメタン溶液900mlを40℃で
還流下、この溶液にアリルアミン(1)7.6mlの乾
燥ジクロルメタン溶液100mlを滴下し、滴下終了
後、同温度で2時間撹拌する。反応終了後、反応液を室
温に戻し、濾過して得られる残渣をジクロルメタン及び
n−ヘキサンで洗浄した後真空乾燥して、2−クロロメ
チルアジリジン・塩酸塩(3)を8.37g(収率:6
5.8%)得た。1 H−NMR(D2 O)δ:3.26(dd,1H,J
=9.57Hz,13.85Hz)、3.53(dd,
1H,J=3.30Hz,13.85Hz)、3.78
(dd,1H,J=6.60Hz,12.21Hz)、
3.88(dd,1H,J=4.95Hz,12.21
Hz)、4.38−4.47(m,1H)実施例3
【0087】
【化24】
【0088】上記実施例2で得られた2−クロロメチル
アジリジン・塩酸塩(3)1.28gのテトラヒドロフ
ラン25ml懸濁液を窒素雰囲気下−78℃で撹拌し、
この溶液に21mmolのn−ブチルリチウムを5分間
で滴下する。滴下後、同温度にて1時間撹拌した後、室
温に戻しながら更に10分間撹拌する。反応液に50%
水酸化カリウム水溶液2mlを加えて10分間撹拌した
後、この反応液を常圧蒸留して、沸点約51℃の1−ア
ザビシクロ[1.1.0]ブタン(4)を得る。得られ
る留液を水酸化カリウム及び炭酸カリウムで乾燥した
後、−40℃に冷却しギ酸1.13mlのテトラヒドロ
フラン5ml溶液を滴下する。この溶液を室温まで戻し
た後更に18時間撹拌し、溶媒を減圧濃縮し、次いで0
℃にて濃塩酸60mmolのメタノール溶液16μlを
加えて室温で20時間撹拌する。反応終了後溶媒を減圧
下留去して、3−ヒドロキシアゼチジン・塩酸塩(5)
を無色針状晶として570mg(収率:52.0%)得
た。1 H−NMR(D2 O)δ:4.0−4.3(m,2
H)、4.1−4.3(m,2H)、4.6−4.8
(m,1H)実施例4
【0089】
【化25】
【0090】(i)上記実施例3で得られた3−ヒドロ
キシアゼチジン・塩酸塩(5)7.95gの無水メタノ
ール73ml溶液に、室温下で炭酸水素カリウム5.0
9gを加え、2−(メチルチオ)−1,3−チアゾリン
9.67gを滴下して20時間加熱還流する。反応液を
室温まで戻した後、さらに炭酸水素カリウム3.63g
を加えて、同温度にて1時間攪拌する。反応終了後、沈
殿物を濾去し、溶媒を減圧留去後、得られる残渣にテト
ラヒドロフラン100mlを加え室温にて1時間攪拌す
る。不溶物を濾去し、溶媒を減圧留去した後、残渣をシ
リカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:クロロ
ホルム−メタノール)に付すことにより、3−ヒドロキ
シ−1−(1,3−チアゾリン−2−イル)アゼチジン
(6)を無色結晶として8.23g(収率:71.5
%)得た。1 H−NMR(CDCl3 )δ:3.356(t,2
H,J=7.26Hz)、3.70〜4.00(m,4
H)、4.211(t,2H,J=8.21Hz)、
4.622〜4.705(m,1H)、4.971
(s,1H)
【0091】(ii)3−ヒドロキシアゼチジン・塩酸
塩(5)219mgの無水アセトニトリル1.5ml溶
液を、窒素気流下0℃まで冷却し、この溶液にトリエチ
ルアミン0.31ml、次いでクロロエチルイソチオシ
アネート250mgの無水アセトニトリル0.3ml溶
液を加えて同温度で30分、次いで室温まで戻して2時
間攪拌する。反応液にジクロロメタンを加え、飽和炭酸
カリウム水溶液で洗浄後、ジクロロメタン層を硫酸マグ
ネシウムで乾燥後減圧下濃縮し、3−ヒドロキシ−1−
(1,3−チアゾリン−2−イル)アゼチジン(6)を
無色針状晶として300mg(収率:95%)得た。本
品のNMRスペクトルは、上記(i)で得られたものと
完全に一致した。実施例5
【0092】
【化26】
【0093】(i)上記実施例4で得られた3−ヒドロ
キシ−1−(1,3−チアゾリン−2−イル)アゼチジ
ン(6)790mgの無水テトラヒドロフラン2ml懸
濁液に氷冷下にてN,N−ジメチルアミノピリジン6m
gを加え、続いてトリエチルアミン557mg及び塩化
メシル575mgを氷冷下で滴下し、同温にて40分攪
拌する。反応終了後、溶媒を減圧下留去し、残渣に酢酸
エチルを加えて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し
た後、この水層を酢酸エチルでさらに抽出する。得られ
た有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧
下留去して得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグ
ラフィー(溶出溶媒:クロロホルム−メタノール)に付
すことにより、3−メシルオキシ−1−(1,3−チア
ゾリン−2−イル)アゼチジンを無色結晶として995
mg(収率:84.3%)得た。1 H−NMR(CDCl3 ,270MHz,ppm)
δ:3.07(s,3H)、3.39(t,2H,J=
7.6Hz)、4.03(t,2H,J=7.6H
z)、4.14−4.19(m,2H)、4.37−
4.31(m,2H)、5.28−5.33(m,1
H)
【0094】次いで、上記反応により得られた3−メシ
ルオキシ−1−(1,3−チアゾリン−2−イル)アゼ
チジン118mgの無水ジメチルホルムアミド1ml溶
液にチオ酢酸カリウム228mgを室温にて加え、80
℃で4時間攪拌する。反応終了後、溶媒を減圧留去し、
酢酸エチルを加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗
浄した後、水層を酢酸エチルで逆抽出する。得られる有
機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去後、
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶
媒:クロロホルム)に付すことにより、3−アセチルチ
オ−1−(1,3−チアゾリン−2−イル)アゼチジン
(7)を淡黄色油状物質として88mg(収率:81.
2%)得た。1 H−NMR(CDCl3 )δ:2.333(s,3
H)、3.352(t,2H,J=7.26Hz)、
3.885(dd,2H,J=8.24,5.28H
z)、4.012(t,2H,J=7.26Hz)、
4.250〜4.374(m,1H)、4.426
(t,2H,J=8.25Hz)
【0095】(ii)3−ヒドロキシ−1−(1,3−
チアゾリン−2−イル)アゼチジン(6)119mg及
びチオ酢酸2モル当量を、氷冷下、トリフェニルホスフ
ィン及びジエチルアゾジカルボキシレートそれぞれ2モ
ル当量のテトラヒドロフラン10ml溶液に加えて、同
温度にて1時間、更に室温にて1時間攪拌する。反応液
の溶媒を減圧下留去して得られる残渣を、シリカゲルカ
ラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:クロロホルム−エ
タノール)に付して、3−アセチルチオ−1−(1,3
−チアゾリン−2−イル)アゼチジン(7)を107m
g(収率:65%)得た。本品のNMRスペクトルは、
上記(i)で得られたものと完全に一致した。実施例6
【0096】
【化27】
【0097】上記実施例5で得られた3−アセチルチオ
−1−(1,3−チアゾリン−2−イル)アゼチジン
(7)12.98gをイソプロピルアルコール58.3
mlに溶解し、この溶液に氷冷下水酸化カリウムのメタ
ノール溶液(1.69規定)37.3mlを加えて10
分間攪拌する。同温度にて、塩酸のメタノール溶液(2
規定)66mlを加えてクエンチし、室温下15分間攪
拌した後不溶物を濾去する。濾液を濃縮して得られる残
渣をイソプロピルアルコール39mlに溶解し、不溶物
を濾去した後濾液を濃縮する。得られる残渣にn−ブタ
ノールを58.5ml加えて濃縮し、本発明の3−メル
カプト−1−(1,3−チアゾリン−2−イル)アゼチ
ジン・塩酸塩(8)を黄白色固体として得る。この固体
にアセトニトリル22.8mlを加え室温で15分間攪
拌して溶解した後、アセトン113.4mlを30分か
けて滴下する。さらにアセトン113.4mlを15分
間かけて滴下し、次いで氷冷下30分間攪拌する。析出
する固体を濾取しアセトン150mlで洗浄し減圧下で
1日乾燥することにより、本発明の3−メルカプト−1
−(1,3−チアゾリン−2−イル)アゼチジン・塩酸
塩(8)を無色針状晶として10.41g(純度97.
5%,収率80.3%)得た。1 H−NMR(CDCl3 )δ:2.57(d,1H,
J=8.2Hz)、3.59(t,2H,J=7.4H
z)、4.02−4.18(m,4H)、4.63
(t,2H,J=7.4Hz)、5.19−5.26
(m,1H)、12.19(s,1H)
【0098】本品は偏光顕微鏡の観察で結晶であること
が確認された。また、粉末X線回折図において、面間隔
(d):7.32、5.96、5.04、5.00、
4.90、4.44、4.23、4.08、3.79、
3.71、3.66、3.29、3.14、3.10、
2.98、2.91、2.82、2.55、2.50オ
ングストロームに特徴的ピークを示した。
【0099】なお、上記結晶濾液及びアセトン洗液を濃
縮して得られる残渣をn−ブタノール10mlに溶かし
て再度濃縮した後、1日減圧乾燥する。得られるオレン
ジ色固体1.7gにアセトニトリル1.7mlを加え室
温下15分攪拌して溶解し、この溶液にアセトン17m
lを15分かけて滴下後、氷冷下30分攪拌することに
より3−メルカプト−1−(1,3−チアゾリン−2−
イル)アゼチジン・塩酸塩(8)の二番晶を無色針状晶
として1.2g(純度:89.3%、収率:8.5%)
得た。実施例7
【0100】
【化28】
【0101】上記実施例1で得られた2−ブロモメチル
アジリジン・臭化水素酸塩(2)1.00gの乾燥テト
ラヒドロフラン12ml懸濁液に−78℃でn−ブチル
リチウム5.94ml(1.63M)を滴下し、1時間
撹拌する。反応液を水浴(90℃)で常圧蒸留し、留去
される画分全てを分取して、1−アザビシクロ[1.
1.0]ブタン(4)のテトラヒドロフラン溶液を得
る。一方、1,3−チアゾリジン−2−チオン550m
g(4.61mmol)の乾燥テトラヒドロフラン5m
l溶液に氷冷下水素化ナトリウム181mg(55%)
を加えて1時間撹拌する。得られる溶液に上記1−アザ
ビシクロ[1.1.0]ブタンのテトラヒドロフラン溶
液を−78℃で滴下し、室温で20時間撹拌し、反応液
を高速液体クロマトグラフィーに付して、2−(アゼチ
ジン−3−イル)−1,3−チアゾリジン(9)を得
た。1 H−NMR(CD3 OD)δ:3.32(t,2H,
J=8Hz)、3.46(dd,2H,J=6Hz,1
0Hz)、3.90(dd,2H,J=8Hz,10H
z)、4.06(t,2H,J=8Hz)、4.3−
4.5(m,1H)実施例8
【0102】
【化29】
【0103】上記実施例7で得られた2−(アゼチジン
−3−イルチオ)−1,3−チアゾリジン(9)の無水
テトラヒドロフラン溶液にメチルスルホン酸0.329
mlを加えた後、溶媒を減圧下濃縮して得られる溶液に
メタノールを加えて3時間加熱還流する。反応終了後溶
媒を留去し、残渣を高速液体クロマトグラフィーで分離
精製することにより、本発明の3−メルカプト−1−
(1,3−チアゾリン−2−イル)アゼチジン(10)
を186mg(収率:23.2%)得た。上記化合物
(10)を塩酸で処理して得られる塩酸塩のNMRスペ
クトルは、前記実施例6で得られた化合物(8)と完全
に一致した。実施例9
【0104】
【化30】
【0105】上記実施例1で得られた2−ブロモメチル
アジリジン・臭化水素酸塩(2)2.00gを用いて上
記実施例7と同様の方法により1−アザビシクロ[1.
1.0]ブタン(4)のテトラヒドロフラン溶液を得
る。次いで、チオ酢酸1.32mlの乾燥テトラヒドロ
フラン5mlに−40℃以下で化合物(4)のテトラヒ
ドロフラン溶液を滴下し、室温で18時間撹拌する。反
応終了後溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマ
トグラフィー(溶出溶媒:クロロホルム−アセトン)で
分離精製することにより、1−アセチル−3−アセチル
チオアゼチジン(11)を828mg(収率:51.8
%)得た。1 H−NMR(CDCl3 )δ:1.87(s,3
H)、2.35(s,3H)、3.89(dd,1/2
×2H,J=5Hz,10Hz)、4.01(dd,1
/2×2H,J=5Hz,9Hz)、4.1−4.2
(m,1H)、4.42(t,1/2×2H,J=10
Hz)、4.61(t,1/2×2H,J=10Hz)実施例10
【0106】
【化31】
【0107】上記実施例9で得られた1−アセチル−3
−アセチルチオアゼチジン(11)104mgに、2.
6規定の塩酸1.0mlを加え、1時間加熱還流する。
反応終了後、水を加え酢酸エチルで洗浄し、水層を減圧
留去する。得られた残渣を真空乾燥することにより、3
−メルカプトアゼチジン・塩酸塩(12)を71mg
(収率:94.4%)得た。1 H−NMR(D2 O)δ:4.0−4.3(m,3
H)、4.5−4.7(m,2H)実施例11
【0108】
【化32】
【0109】上記実施例2で得られた2−クロロメチル
アジリジン・塩酸塩(3)1.28gを用いて上記実施
例3と同様の方法により1−アザビシクロ[1.1.
0]ブタン(4)のテトラヒドロフラン溶液を得る。こ
の溶液を水酸化カリウム及び炭酸カリウムで乾燥した
後、チオ酢酸0.85mlを室温で滴下する。同温度で
1時間撹拌した後、反応液を減圧濃縮し、次いで3規定
塩酸3.33mlを加えて1時間加熱還流する。室温ま
で戻した後、反応液に水30mlを加えて酢酸エチルで
洗浄する。分液して得られる水層と、有機層から抽出し
た水層とを合わせて、溶媒を減圧下留去し、3−メルカ
プトアゼチジン・塩酸塩(12)を無色油状物として9
13mg(収率:72.7%)得た。ここで得られた化
合物(12)のNMRスペクトルは、上記実施例10で
得られたものと完全に一致した。実施例12
【0110】
【化33】
【0111】上記実施例11で得られた3−メルカプト
アゼチジン・塩酸塩(12)22.7mgの95%メタ
ノール(水1ml含有)溶液に、2−(メチルチオ)−
1,3−チアゾリン26.6mg及びトリフェニルホス
フィン5.2mgを加えて、6時間加熱還流する。反応
終了後溶媒を減圧下留去して得られる残渣を0.1規定
塩酸に溶解しこの溶液を酢酸エチルで洗浄する。得られ
る水層の溶媒を減圧下留去して得られる残渣を高速液体
クロマトグラフィーで分離精製することにより、3−メ
ルカプト−1−(1,3−チアゾリン−2−イル)アゼ
チジン・塩酸塩(8)を無色針状晶として29.1mg
(収率:73.4%)得た。本品のNMRスペクトル
は、上記実施例6で得られたものと完全に一致した。 実施例12
【0112】
【化34】
【0113】上記実施例10で得られた3−メルカプト
アゼチジン・塩酸塩(12)63.3mgの乾燥テトラ
ヒドロフラン1.0ml溶液に、窒素気流中室温下で、
トリエチルアミン0.07mlを加えて30分間攪拌す
る。この溶液に2−クロロエチルイソチオシアネート7
0.3mgの乾燥テトラヒドロフラン溶液を滴下し、更
に1時間撹拌する。反応液を0℃に冷やした後、メタン
スルホン酸0.04mlを滴下し、30分間撹拌した
後、減圧下溶媒を留去する。得られる残渣に乾燥メタノ
ール1.0mlを加えて1時間加熱還流した後、溶媒を
減圧下留去する。得られた残渣を薄層クロマトグラフィ
ーで分離精製し、3−メルカプト−1−(1,3−チア
ゾリン−2−イル)アゼチジン・メタンスルホン酸塩
(13)を無色油状物として53.4mg(収率:3
9.2%)得た。製造例
【0114】
【化35】
【0115】(i)上記実施例6で得られた3−メルカ
プト−1−(1,3−チアゾリン−2−イル)アゼチジ
ン・塩酸塩(8)700mgを水、アセトニトリル及び
クロロホルムの混合溶媒15mlに溶解し、p−ニトロ
ベンジル (1R,5R,6S)−2−(ジフェニルフ
ォスフォリルオキシ)−6−[(R)−1−ヒドロキシ
エチル]−1−メチル−カルバペン−2−エム−3−カ
ルボキシレート(14)1668mgを加える。この溶
液に、窒素気流中氷冷下にて、ジイソプロピルエチルア
ミン2.8mlを加えて、同温度にて2時間攪拌する。
反応液に酢酸エチルを加えて飽和重曹水及び飽和食塩水
で洗浄した後、溶媒を減圧下留去して、得られた残渣を
シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:
アセトン=1:2)に付して、p−ニトロベンジル
(1R,5S,6S)−2−[1−(1,3−チアゾリ
ン−2−イル)アゼチジン−3−イル]チオ−6−
[(R)−1−ヒドロキシエチル]−1−メチル−カル
バペン−2−エム−3−カルボキシレート(15)を1
339mg(収率:92%)得た。1 H−NMR(CDCl3 )δ:1.235(d,3
H,J=7.26Hz)、1.349(d,3H,J=
6.27Hz)、3.160(quintet,1H,
J=7.26Hz)、3.265(dd,1H,J=
2.3,6.26Hz)、3.367(t,2H,J=
7.26Hz)、3.898〜4.038(m,4
H)、4.071〜4.147(m,1H)、4.21
2〜4.278(m,2H)、4.372(2H,J=
7.92Hz)、5.255及び5.517(d(A
B),2H,J=13.85Hz)、7.665(d,
2H,J=8.58Hz)、8.226(d,2H,J
=8.58Hz)
【0116】(ii)上記反応(i)で得られた化合物
(15)1339mgのテトラヒドロフラン20ml溶
液に、0.38Mリン酸緩衝液(pH6.0)60ml
及び亜鉛末11.2gを加えて2時間激しく攪拌する。
反応液をセライトで濾過して不溶物を除去し、濾液を酢
酸エチルで洗浄した後、pHを5.5に調整する。得ら
れた溶液を減圧下濃縮し、この濃縮液をDiaion
HP−40(三菱化成工業株式会社製)によるカラムク
ロマトグラフィー(5%イソプロピルアルコール水)に
付して、目的とする(1R,5S,6S)−2−[1−
(1,3−チアゾリン−2−イル)アゼチジン−3−イ
ル]チオ−6−[(R)−1−ヒドロキシエチル]−1
−メチル−カルバペン−2−エム−3−カルボン酸(1
6)を861mg(収率:87%)得た。1 H−NMR(D2 O)δ:1.093(d,3H,J
=6.93Hz)、1.207(d,3H,J=6.2
7Hz)、3.05〜3.20(m,1H)、3.35
7(dd,1H,J=2.3,5.94Hz)、3.5
58(t,2H,J=7.26Hz)、3.920
(t,2H,J=7.26Hz)、4.00〜4.20
(m,5H)、4.20〜4.30(m,1H)、4.
60〜4.70(m,1H) IR(KBr):1740,1640,1590cm-1
【0117】試験例1 上記実施例6で得られた結晶形態の3−メルカプト−1
−(1,3−チアゾリン−2−イル)アゼチジン・塩酸
塩(8)を、除湿下室温に1ヶ月放置したがその純度は
全く変化せず、保存安定性に優れていることが確認され
た。
【0118】試験例2 本願発明の化合物(I)の有用性を、当該化合物を合成
中間体として用い製造した上記製造例化合物(16)の
抗菌活性を測定することにより確認した。 (1)試験方法 日本化学療法学会標準法[Chemothrapy, vol29,76
〜79(1981)]に準じた寒天平板希釈法による。
すなわち、被検菌のMueller-Hinton(MH)寒天液体培
地上での37℃、一夜培養液を約106cells/ml になる
ようにBufferedsaline gelatin (BSG)溶液で希釈
し、ミクロプランターを用い試験化合物含有MH寒天培
地に約5μl接種し、37℃で18時間培養後、被検菌
の発育が認められない最小濃度をもってMinimum inhibi
tory concentration(MIC)とした。ここで、使用菌
株は標準菌株を用いた。
【0119】(2)結果 上記試験の結果を下記表1に示す。
【0120】
【表1】
【0121】上記の結果から、本願発明が提供する式
(I)で示される化合物は、抗菌活性の優れたカルバペ
ネム化合物の合成中間体として有用であることが確認さ
れた。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07D 417/04 C07D 417/12 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (18)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 式(I): 【化1】 で示される3−メルカプト−1−(1,3−チアゾリン
    −2−イル)アゼチジン及びその酸付加塩。
  2. 【請求項2】 結晶形態を有する請求項1記載の式
    (I)で示される化合物の酸付加塩。
  3. 【請求項3】 次式(II): 【化2】 (式中、Rはアシル基、置換若しくは非置換の低級アル
    キル基又はアリール基を表す)で示される3−メルカプ
    ト−1−(1,3−チアゾリン−2−イル)アゼチジン
    誘導体及びその酸付加塩。
  4. 【請求項4】 上記式(II)で示される化合物の置換
    基Rを脱離せしめることを特徴とする、請求項1記載の
    式(I)で示される化合物又はその酸付加塩の製造法。
  5. 【請求項5】 次式(III): 【化3】 で示される3−ヒドロキシ−1−(1,3−チアゾリン
    −2−イル)アゼチジン及びその酸付加塩。
  6. 【請求項6】 上記式(III)で示される化合物のヒ
    ドロキシ基を活性化した後、得られる化合物に、RSH
    で示される化合物(ここで、Rは前記定義のとおりであ
    る)又はその塩を反応させて上記式(II)で示される
    化合物を得、次いでこの化合物の置換基Rを脱離せしめ
    ることを特徴とする、請求項1記載の式(I)で示され
    る化合物又はその酸付加塩の製造法。
  7. 【請求項7】 上記式(III)で示される化合物にジ
    低級アルキルアゾジカルボキシレート、トリフェニルホ
    スフィン及びRSHで示される化合物(ここで、Rは前
    記定義のとおりである)又はその塩を反応させて上記式
    (II)で示される化合物を得、次いでこの化合物の置
    換基Rを脱離せしめることを特徴とする、請求項1記載
    の式(I)で示される化合物又はその酸付加塩の製造
    法。
  8. 【請求項8】 次式(IV): 【化4】 で示される3−ヒドロキシアゼチジンに、次式(V): 【化5】 (式中、Lは脱離基を表す)で示される2−置換−1,
    3−チアゾリン誘導体を反応させることを特徴とする請
    求項5記載の式(III)で示される化合物又はその酸
    付加塩の製造法。
  9. 【請求項9】 上記式(IV)で示される化合物にハロ
    ゲン化エチルイソチオシアネートを反応させることを特
    徴とする、請求項5記載の式(III)で示される化合
    物又はその酸付加塩の製造法。
  10. 【請求項10】 次式(VI): 【化6】 で示される2−(アゼチジン−3−イルチオ)チアゾリ
    ン及びその酸付加塩。
  11. 【請求項11】 上記式(VI)で示される化合物に酸
    を反応させることを特徴とする、請求項1記載の式
    (I)で示される化合物又はその酸付加塩の製造法。
  12. 【請求項12】 次式(VII): 【化7】 で示される1−アザビシクロ[1.1.0]ブタンに
    1,3−チアゾリジン−2−チオンを反応させることを
    特徴とする、請求項10記載の式(VI)で示される化
    合物又はその酸付加塩の製造法。
  13. 【請求項13】 次式(VIII): 【化8】 で示される3−メルカプトアゼチジンに上記式(V)で
    示される2−置換−1,3−チアゾリン誘導体を反応さ
    せることを特徴とする、請求項1記載の式(I)で示さ
    れる化合物又はその酸付加塩の製造法。
  14. 【請求項14】 上記式(VIII)で示される3−メ
    ルカプトアゼチジンにハロゲン化エチルイソチオシアネ
    ートを反応させることを特徴とする、請求項1記載の式
    (I)で示される化合物又はその酸付加塩の製造法。
  15. 【請求項15】 上記式(VII)で示される1−アザ
    ビシクロ[1.1.0]ブタンにRSHで示される化合
    物(ここで、Rは前記定義のとおりである)又はその塩
    を反応させた後、得られる化合物の置換基Rを脱離せし
    めて上記式(VIII)で示される3−メルカプトアゼ
    チジンを得、次いでこの化合物に上記式(V)で示され
    る2−置換−1,3−チアゾリン誘導体を反応させるこ
    とを特徴とする請求項1記載の式(I)で示される化合
    物又はその酸付加塩の製造法。
  16. 【請求項16】 上記式(VII)で示される1−アザ
    ビシクロ[1.1.0]ブタンにRSHで示される化合
    物(ここで、Rは前記定義のとおりである)又はその塩
    を反応させた後、得られる化合物の置換基Rを脱離せし
    めて上記式(VIII)で示される3−メルカプトアゼ
    チジンを得、次いでこの化合物にハロゲン化エチルイソ
    チオシアネートを反応させることを特徴とする請求項1
    記載の式(I)で示される化合物又はその酸付加塩の製
    造法。
  17. 【請求項17】 上記式(VII)で示される1−アザ
    ビシクロ[1.1.0]ブタンにカルボン酸類を反応さ
    せて、得られる化合物を加溶媒分解して上記式(IV)
    で示される3−ヒドロキシアゼチジンを得、次いでこの
    化合物に上記式(V)で示される2−置換−1,3−チ
    アゾリン誘導体を反応させることを特徴とする請求項5
    記載の式(III)で示される化合物又はその酸付加塩
    の製造法。
  18. 【請求項18】 上記式(VII)で示される1−アザ
    ビシクロ[1.1.0]ブタンにカルボン酸類を反応さ
    せて、得られる化合物を加溶媒分解して上記式(IV)
    で示される3−ヒドロキシアゼチジンを得、次いでこの
    化合物にハロゲン化エチルイソチオシアネートを反応さ
    せることを特徴とする請求項5記載の式(III)で示
    される化合物又はその酸付加塩の製造法。
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