JP3185397B2 - 畜肉加工用o/w型エマルジョン組成物および畜肉改質材 - Google Patents

畜肉加工用o/w型エマルジョン組成物および畜肉改質材

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、畜肉加工に用いられる
O/W型エマルジョン組成物、およびこのO/W型エマ
ルジョン組成物を用いた畜肉改質材に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】一般に、畜肉を改良する目的およびその
加工方法には各種のものがある。例えば、畜肉の防腐
性、保存性を高めるために、食塩、砂糖、硝酸塩、亜硝
酸塩、その他の調味料を主成分とする、所謂ピックル液
と呼ばれるものを用いたり、また、脂肪分の少ない肉に
対しては、可食性油脂を加熱溶解して注入したり、ある
いは油中水型エマルジョン、更には水中油中水型エマル
ジョン等を注入することで風味、食感を改善したり、ま
た、肉を採取する部分の違いや肉の種類によっては加熱
調理時にドリップ等により歩留りが悪くなることがあ
り、これを防止するために、ゲル化剤や植物性蛋白等の
熱凝固性蛋白を肉中に注入すること等が行われている。
【0003】ところが、上記のような従来のピックル液
では畜肉の保存性や味を高めることは可能であるが、食
感の改善については充分といえない。そこで、食感を改
善する方法として、このピックル液に可食性油脂、油中
水型エマルジョン、水中油中水型エマルジョンを分散使
用または直接使用することにより、特に脂肪分が少なく
固い肉質を軟らかくジューシーにしたり、肉中水分によ
るドリップを防止することによる等の食感改善方法が採
用されている。例えば、本出願人は先に、牛脂や豚脂を
含む油脂組成物をO/W型エマルジョン乳化してなる畜
肉加工用のエマルジョン組成物をピックル液に分散使用
する方法を提案している(特開平3−187343
号)。しかしながら、これらの畜肉改良方法において
は、肉をジューシーに仕上げることは可能であるが、そ
の反面、肉としての食感(繊維感、歯応え等)が失わ
れ、また特にレトルト処理においては肉中の旨味成分、
水分が失われ、肉自体がフレーク状になったり、硬くな
ったりする、といった問題があり、保水効果も必ずしも
充分とはいえなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明では上
記のような従来の畜肉改良方法の現状に鑑み、畜肉の食
感を改良し、また、充分な保水効果を有する畜肉加工用
O/W型エマルジョン組成物およびそれを用いた畜肉改
質材を提供せんとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めの本発明に係る畜肉加工用O/W型エマルジョン組成
物は、食用油脂、好ましくは牛脂および/または豚脂を
含む油脂組成物からなる油相部に対し、アルギン酸ソー
ダ、塩類、および天然多糖類を全O/W型エマルジョン
組成物中にそれぞれ0.1〜5.0重量%、1.0〜1
0.0重量%、0.01〜1.0重量%となるように添
加した水相部を加えてO/W型乳化してなる。このよう
に発明では、O/W型エマルジョン組成物の水相部にア
ルギン酸ソーダ、塩類、および天然多糖類を前記の割合
で添加することで、このO/W型エマルジョン組成物を
畜肉の改良に用いた場合に、固い肉質を軟らかくジュー
シーにするだけでなく畜肉の食感や保水性を改善するこ
とを可能とした。
【0006】前記塩類としては、例えばピロリン酸4ナ
トリウム、ピロリン酸2ナトリウム、クエン酸3ナトリ
ウム、ヘキサンメタリン酸ソーダ、塩化カルシウム6ナ
トリウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、硫
酸カルシウム、硫酸カルシウム2水和物、クエン酸カル
シウム、リン酸1水素カルシウル2水和物、リン酸1水
素カルシウム無水の中から選ばれた1種または2種以上
が用いられる。そして、天然多糖類としては、アラビア
ガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアガ
ム、タマリンドガム、トランドガムの中から選ばれた1
種または2種以上が用いられる。
【0007】本発明においてO/W型エマルジョン作成
に用いられる食用油脂としては、例えばナタネ油、大豆
油、ヒマワリ種子油、綿実油、コーン油、サフラワー
油、カポック油、月見草油、パーム油、シア脂、サル
脂、ヤシ油、パーム核油、ライス油、並びに牛脂、豚
脂、魚油、鯨油等が例示される。上記の油脂類は単独で
または混合油あるいはそれらの硬化、分別、エステル交
換等を施した加工油脂、または合成油脂であってもよく
融点の高い油脂から液体油までの幅広い油脂が適用でき
る。更に、これらの油脂を利用して作成したシーズニン
グオイルを単独で使用、あるいは適量配合することも可
能である。
【0008】そして、これらの中でも、O/W型エマル
ジョン組成物の油相部の油脂組成物としては、牛脂およ
び/または豚脂を10〜80重量%含み、A.O.M.
安定性が60〜200Hr、上昇融点が16〜38℃の
ものが好適に用いられる。このような油脂組成物として
は、牛脂および/または豚脂と酸化安定化油とを混合し
たものがある。これは、牛脂および/または豚脂と酸化
安定化油とを、牛脂や豚脂の融点よりも高い温度におい
てスタティックミキサー攪拌機等の混合手段を用いて均
一に混合することで得られる。この油脂組成物において
は、構成脂肪酸としてのリノール酸が組成物中で10重
量%以下となるように、また、オレイン酸が50重量%
以上となるように調整される。このようにリノール酸の
含有量を10重量%以下とすることの意味は、組成物中
のリノール酸の含有量が10重量%を超えると油脂組成
物の酸化安定性、即ち、A.O.M.試験の値が悪くな
り、ひいては牛脂や豚脂に特有の好ましい香味を阻害す
ることになるからであり、また、オレイン酸の含有量を
50重量%以上とすることの意味は、油脂組成物中のオ
レイン酸の含有量が50重量%未満の場合には、固体脂
指数(S.F.C.)が高くなり、食感に問題が残るた
めである。このような油脂組成物中のリノール酸やオレ
イン酸の含有量は、用いられる酸化安定化油の種類、牛
脂や豚脂と酸化安定化油との混合割合を適宜設定するこ
とで前記のような好ましい範囲内とすることができる。
【0009】また、前記酸化安定化油とは、油脂を脱
酸、脱色、分別、硬化、脱臭等で精製加工することによ
り得られるもので、無味、無臭であって、牛脂や豚脂と
混合した場合に、これらの牛脂や豚脂のもつ独特の風味
を損なうことがなく、かつ極めて高い酸化安定性を有す
るものである。即ち、油脂を脱酸、脱色、硬化、脱臭等
で精製することにより、油脂の酸化安定性を阻害する遊
離脂肪酸、リノール酸の含有量を減少させ、かつ分別処
理によりオレイン酸含有量を増加させることにより得ら
れる。これらの精製加工操作を行うことで、基本的には
全ての油脂を酸化安定化油として使用することができる
が、油脂の種類によっては、その油脂が本来含有するリ
ノール酸やオレイン酸の量、油脂のもつ味、香り等の影
響により、精製工程、コスト等に問題が有る場合があ
り、必ずしも使用できないものもある。このような観点
から、本発明で使用する酸化安定化油の原料油脂として
は、例えば、ナタネ油、パーム油、ライス油、サフラワ
ー油、とうもろこし油、大豆油、オリーブ油等の植物性
の油脂が好ましい。これらの植物性油脂を用い、脱酸、
脱色、脱臭、更に硬化、分別処理等の精製加工を行え
ば、所望の酸化安定化油を比較的容易に得ることができ
る。
【0010】牛脂や豚脂に対する酸化安定化油の混合割
合としては、牛脂および/または豚脂:酸化安定化油
を、重量比で10:90〜90:10の範囲となるよう
に混合する。これは、牛脂および/または豚脂の混合割
合が90以上の場合には得られる油脂組成物の酸化安定
性が悪く、また、食感の点でも問題が残り、一方、牛脂
や豚脂の混合割合が10以下の場合には、牛脂または豚
脂が本来持っている独特の風味が発現し難くなるためで
ある。また、このように油脂組成物中での牛脂および/
または豚脂の含有量を10〜90重量%とすることで、
A.O.M.安定性が60Hr〜200Hr、また上昇
融点が16〜38℃の油脂組成物を得ることができるの
である。
【0011】そして、上記のような畜肉加工用O/W型
エマルジョン組成物は、これを水、または畜肉風味に適
した調味液に対して、5〜80重量%添加して畜肉改質
材とし、これをピックル液として使用することで、畜肉
の食感を著しく改善し、また充分な保水効果を得ること
ができる。
【0012】前記のような畜肉改質材としてのピックル
液は、畜肉100重量%に対して5〜100重量%の割
合で注入する。このように、本発明においては、畜肉の
用途に応じて広い範囲で使用することができ、また、例
え少量の使用でも畜肉の食感改善、保水効果を得ること
ができる。尚、この場合の注入の方法としては、一般的
に実施されているインジェクション→タンブリング法が
用いられる。
【0013】
【実施例】実施例1 (O/W型エマルジョン組成物の作成)油相部の油脂組
成物として、パーム油を精製、硬化、分別、脱臭を行
い、曇点+10℃、色調1.1/10(R/Y)、酸価
0.05、A.O.M.安定性55Hrの油脂を得た。
この油脂組成物45重量%にポリグリセリン脂肪酸エス
テルを加え、油温60℃にて溶解を行い油相部を作成す
る。一方、純水49重量%に、ポリグリセリン脂肪酸エ
ステル、天然多糖類、水溶性レシチン、リン酸ソーダ、
ピロリン酸ソーダ、硫酸カルシウム、アルギン酸ソーダ
の混合物6重量%を加え、60℃で溶解して水相部を作
成する。この水相部に、前記油相部を徐々に加え、攪拌
を行い、予備乳化を施し、その後、ホモゲナイザーにて
O/W型エマルジョンを作成した。
【0014】(畜肉改質材の調製)上記のようにして得
られたO/W型エマルジョン組成物30重量%に対し
て、砂糖、塩、香料、グルタミン酸ソーダ等で予め作成
したピックル液70重量%を混合し、本発明に係る畜肉
改質材を得た。
【0015】(比較試験1)上記の本発明に係る畜肉改
質材を、下記表1の要領で鶏ムネ肉にタンブリング法に
より注入し、から揚げを作成するとともに、市販の畜肉
改質材を用いて同様にから揚げを作成した。そして、両
者における保水性(収率=重量変化)を調べるととも
に、食感、風味等について官能試験を行い、その結果を
表2〜表5に示した。尚、試験はn=8(8回繰り返し
試験)とした。
【0016】
【表1】
【0017】
【表2】
【0018】
【表3】
【0019】
【表4】
【0020】
【表5】
【0021】実施例2 (O/W型エマルジョン組成物の作成)油相部の油脂組
成物として、牛脂50重量%に、ナタネ油を精製、硬
化、分別、脱臭を行って得られた高安定化油50重量%
を均一に混合し、牛脂本来の好ましい風味を有する油脂
組成物(A)を得る。このものは、酸価0.23、A.
O.M.安定性160Hr、上昇融点34.2℃、色調
3/28(Y/R)であった。この油脂組成物(A)5
0重量%にポリグリセリンシュガーエステルを加え、油
温60℃にて溶解を行い油相部を作成する。一方、純水
46.5重量%に、乳化剤、天然多糖類、水溶性レシチ
ン、リン酸ソーダ、ピロリン酸ソーダ、硫酸カルシウ
ム、アルギン酸ソーダを加え、60℃で溶解して水相部
を作成する。この水相部に、前記油相部を徐々に加え、
攪拌機付タンクにて均一に混合し、予備乳化を施す。そ
の後、ホモゲナイザーにてO/W型エマルジョン組成物
を得る。
【0022】(畜肉改質材の調製)上記のようにして得
られたO/W型エマルジョン組成物30重量%に対し
て、砂糖、塩、香料、グルタミン酸ソーダ等で予め作成
したピックル液70重量%を混合し、本発明に係る畜肉
改質材を得た。
【0023】(比較試験2)上記の本発明に係る畜肉改
質材を、下記表6の要領で鶏ムネ肉にタンブリング法に
より注入し、から揚げを作成するとともに、市販の畜肉
改質材を用いて同様にから揚げを作成した。そして、両
者における保水性(収率=重量変化)を調べるととも
に、食感、風味等について官能試験を行い、その結果を
表7〜表10に示した。尚、試験はn=8(8回繰り返し
試験)とした。
【0024】
【表6】
【0025】
【表7】
【0026】
【表8】
【0027】
【表9】
【0028】
【表10】
【0029】(比較試験3)牛肉(もも肉)を使用し、
前記比較試験2で使用した本発明の実施例2に係る畜肉
改質材を下記の要領でインジェクション法により肉に注
入し、その後タンブリングにより肉をマッサージして注
入した畜肉改質材を均一に分散させ、これをカレー用に
細断、ソテーし、カレールーを添加混合し、レトルト処
理した。
【0030】 工 程 条 件 原 料 肉 牛 肉 (もも肉) ↓ インジェクション 30重量% ↓ 減圧条件=−500mmHg タンブリング 回転数 =20rpm 回転時間=30分 ↓ 細 断 2.5cm ×2.5cm ↓ ソ テ ー ↓ ルー混合 ルー130g、肉30g ↓ レトルト処理 120℃、20分
【0031】これを30℃恒温室にて1ケ月の間保管し
た後、食感、風味についての官能試験を行った。また、
市販の畜肉改質材についても上記と同様にして、本発明
品と比較した。結果を表11、表12に示した。尚、試験は
n=6とした。
【0032】
【表11】
【0033】
【表12】
【0034】(比較試験4)次に、従来の畜肉改質材
(特開平3−187343号に記載のもの)を比較例と
し、比較試験3と全く同様にして前記本発明に係る畜肉
改質材と比較試験して、結果を表13〜表15に示した。
尚、試験はn=6とした。
【0035】(比較例の調製)油脂組成物として、前記
本発明で使用した油脂組成物(A)50重量%にポリグ
リセリンシュガーエステルを加え、油温60℃にて溶解
を行い油相部を作成する。一方、純水63重量%に、乳
化剤、天然多糖類、水溶性レシチンを加え、60℃で溶
解して水相部を作成する。この水相部に、前記油相部を
徐々に加え、攪拌機付タンクにて均一に混合し、予備乳
化を施す。その後、ホモゲナイザーにてO/W型エマル
ジョン組成物を得る。このO/W型エマルジョン組成物
30重量%に対して、砂糖、塩、香料、グルタミン酸ソ
ーダ等で予め作成したピックル液70重量%を混合して
比較例とした。
【0036】
【表13】
【0037】
【表14】
【0038】
【表15】
【0039】以上の結果から明らかなように、本発明に
係る畜肉改質材は、比較例に較べて食感が大きく改良さ
れることが明らかである。また、保水性についても改善
されており、しかも、比較例においては、調理段階で保
水剤を後から添加する必要があったが、本発明品を使用
した場合には、後から保水剤を添加する必要は全くなか
った。
【0040】
【発明の効果】このように、本発明にかかる畜肉加工用
O/W型エマルジョン組成物、およびそれを用いた畜肉
改質材は、畜肉の用途に応じて広い範囲で使用すること
ができ、また、例え少量の使用でも従来の畜肉改質材等
に較べて格段に優れた食感改善効果、保水効果を得るこ
とができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A23D 7/00 A23L 1/31

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 食用油脂を含む油脂組成物からなる油相
    部に対し、アルギン酸ソーダ、塩類、および天然多糖類
    を全O/W型エマルジョン組成物中にそれぞれ0.1〜
    5.0重量%、1.0〜10.0重量%、0.01〜
    1.0重量%となるように添加した水相部を加えてO/
    W型乳化してなる畜肉加工用O/W型エマルジョン組成
    物。
  2. 【請求項2】 食用油脂が牛脂および/または豚脂であ
    る請求項1記載の畜肉加工用O/W型エマルジョン組成
    物。
  3. 【請求項3】 油相部の油脂組成物として牛脂および/
    または豚脂を10〜80重量%含み、A.O.M.安定
    性が60〜200Hr、上昇融点が16〜38℃のもの
    を用いてなる請求項2記載の畜肉加工用O/W型エマル
    ジョン組成物。
  4. 【請求項4】 油相部の油脂組成物として、牛脂および
    /または豚脂と酸化安定化油とを混合したものであっ
    て、リノール酸10重量%以下、オレイン酸50重量%
    以上を含有してなるものを用いてなる請求項2または請
    求項3記載の畜肉加工用O/W型エマルジョン組成物。
  5. 【請求項5】 酸化安定化油として、植物性油脂を脱
    酸、脱色、分別、硬化、脱臭等で精製加工することによ
    り酸化安定性を付与してなる液状油脂を用いてなる請求
    項4記載の畜肉加工用O/W型エマルジョン組成物。
  6. 【請求項6】 牛脂および/または豚脂に対して酸化安
    定化油を重量比で10:90〜90:10の割合で混合
    してなる請求項4または請求項5記載の畜肉加工用O/
    W型エマルジョン組成物。
  7. 【請求項7】 請求項1または請求項2または請求項3
    または請求項4または請求項5または請求項6記載の畜
    肉加工用O/W型エマルジョン組成物を水または畜肉風
    味に適した調味液に5〜80重量%添加してなる畜肉改
    質材。
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