JP3155703B2 - カレーの製造方法 - Google Patents

カレーの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、辛味と全体の品質
が均質なカレーを製造するためのカレーの製造方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】一般的に、即席カレー(固形ルウ)は、
油脂と小麦粉を100°C以上に加熱混合し、これに食
塩、香辛料、カレーパウダー等の風味原料を加えて、冷
却固化して製造される。カレーの原料を考える上におい
て、各香辛料の選択と配合比率は重要な要素であり、辛
味を目的として用いられる辛味香辛料も重要な原料の一
つである。特に、カレーに刺激的な辛味を付与するため
の原料として唐辛子粉末が用いられている。
【0003】唐辛子の辛味成分はカプサイシン類である
が、唐辛子の品種が同じでも、産地が違う場合等には、
含まれるカプサイシン量が異なるのが常である。したが
って、辛味が均一なカレーを製造する場合には、辛味成
分量に見合う量唐辛子を用いることが必要である。しか
し、上記の趣旨で辛味成分量に見合う量唐辛子粉末を添
加し、唐辛子粉末の添加量が変動することで、原料全体
の配合比率が変わってしまうという問題があった。
【発明が解決しようとする課題】上記の事情に鑑み、本
発明者らは、先行技術における辛味成分量に見合う量唐
辛子粉末を用いることで、原料全体の配合比率が変わる
という問題を解消し、辛味及び全体の品質が均質なカレ
ーを製造するための新しい技術を開発することを目的と
して鋭意研究を積み重ねた。その結果、唐辛子粉末を辛
味成分の濃度に見合う量添加すると共に、唐辛子粉末の
辛味成分濃度により変動する添加量の分だけ加工澱粉等
の緩衝用原料を用いて、唐辛子粉末及び緩衝用原料が絶
えず一定量となるように加えることにより、カレーの風
味、色調、粘度等に影響しにくい加工澱粉等が増量的に
働くことによって、所期の目的を達成し得ることを見出
し、本発明を完成するに至った。更に、予め辛味成分濃
度の異なる乾燥唐辛子の粗砕物乃至ホールを、辛味成分
の濃度が特定のものとなるように、計量、混合して粉砕
したものを所定量用いることによっても、辛味と全体の
品質が均質なカレーを簡便に製造することができる。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
の本発明は、(a)予め求めるカレーの辛味に応じた、
唐辛子粉末の辛味成分の濃度に見合う添加量の範囲を設
定し、(b)上記唐辛子粉末の添加量の最大値と等しい
か、若しくはこれを超える唐辛子粉末及び緩衝用原料の
合計添加量を設定して、(c)唐辛子粉末を辛味成分の
濃度に見合う量添加すると共に、当該添加量が上記合計
量に満たない量だけ緩衝用原料を添加することにより、
(d)唐辛子粉末の辛味成分の濃度に拘わらず、唐辛子
粉末及び緩衝用原料を一定量添加して、辛味と全体の品
質が均質なカレーを製造できるようにしたことを特徴と
するカレーの製造方法、を第1態様とする。更に、本発
明は、辛味成分の濃度の異なる2以上の乾燥唐辛子の粗
砕物乃至ホールを、これらを合わせたものの辛味成分の
濃度が特定のものとなるように、計量、混合して粉砕
し、当該特定の辛味成分濃度の唐辛子粉末を所定量用い
ることで、辛味と全体の品質が均質なカレーを製造でき
るようにしたことを特徴とするカレーの製造方法、を第
2態様とする。
【0005】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。本発明でいうカレーとは、必要により、水、各種
の具材を加えて煮込んで調理される、固形状、粉末状、
ペースト状、液状等のルウ形態のもの、あるいは調理済
のレトルトカレー、缶詰カレー等を含むものである。こ
のようなカレーは、一般的に油脂と小麦粉等の澱粉系原
料とを100〜140℃程度に加熱混合して小麦粉ルウ
を作った後に風味原料等を加えるか、あるいはこれらの
原料を一括して上記の温度で加熱混合して製造されるか
(ルウ形態のもの)、あるいは、上記のルウを煮込んで
調理して製造される(調理済のもの)。
【0006】本発明の第1態様では、前記のカレーの製
造方法において、特に、(a)予め求めるカレーの辛味
に応じた、唐辛子粉末の辛味成分の濃度に見合う添加量
の範囲を設定し、(b)上記唐辛子粉末の添加量の最大
値と等しいか、若しくはこれを超える唐辛子粉末及び緩
衝用原料の合計添加量を設定して、(c)唐辛子粉末を
辛味成分の濃度に見合う量添加すると共に、当該添加量
が上記合計量に満たない量だけ緩衝用原料を添加するこ
とが重要である。以下、本発明の第1態様について説明
する。
【0007】先ず、緩衝用原料としては、できるだけ無
味、無色で粘度がなく、カレーの風味、粘度等に影響し
にくい原料であれば何れでもよいが、加工澱粉、可溶性
澱粉及び食物繊維等が好ましく、DE25以下で無味無
臭に近くの粘度の弱い可溶性澱粉が特に好ましい。上記
の緩衝用原料は、カレーの風味、色調、粘度等に影響し
にくく、下記の辛味成分濃度により変動する唐辛子粉末
の添加量の増減分だけ用いることによって、辛味と全体
の品質が均質なカレーを製造し得る。
【0008】唐辛子粉末は、唐辛子の乾燥粉末であり、
任意の方法により得られる。唐辛子粉末の粒度は約10
5μm以下のものであることが好ましく、これによりカ
レーの良好な舌触りが得られる。一般に、カレーの原料
に用いる唐辛子粉末は、カプサイシン含量が0.05〜
1重量%(以下%と略称する)程度であり、一方、本発
明者らの知見では、好適な辛味のカレールウを得るため
には、例えばカレールウ中のカプサイシン含量を1〜3
0ppm程度とするのが適当である。よって、これらを
考慮して、実際に用いる唐辛子粉末のカプサイシン含量
を測定し、求めるカレーの辛味に応じて、当該唐辛子粉
末の添加量を決定し得る。
【0009】本発明では、求めるカレーの辛味に応じ
た、唐辛子粉末の辛味成分の濃度に見合う添加量の範囲
を設定する(前記構成(a))。即ち、例えば、求める
カレールウ中のカプサイシン含量が10ppmである
と、唐辛子粉末のカプサイシン含量が前記の範囲(0.
05〜1%)で変動する場合に見合う唐辛子粉末のカレ
ールウ中への添加量の範囲は2.0〜0.1%となる。
尚、原料のカプサイシン含量を測定する場合は、例えば
吸光度法やガスクロ法等により行うことができる。
【0010】次に、唐辛子粉末の添加量の最大値と等し
いか、若しくはこれを超える唐辛子粉末及び緩衝用原料
の合計添加量を設定する(前記構成(b))。即ち、前
記の例において、カレールウ中における唐辛子粉末の添
加量の最大値は2%であり、したがって、合計量をこれ
と同じ乃至これを超える値として定める。更に、唐辛子
粉末を辛味成分の濃度に見合う量添加すると共に、当該
添加量が上記合計量に満たない量だけ緩衝用原料を添加
する(前記構成(c))。即ち、前記の例において、例
えば、実際に用いる唐辛子粉末のカプサイシン含量が
0.5%であると、カレールウに対して必要な唐辛子粉
末の添加量は0.2%となり、この量だけ用いる。そし
て、前記合計量に満たない量(例えば合計量が2.0%
であれば、2.0%−0.2%=1.8%)だけ緩衝用
原料を添加する。つまり、唐辛子粉末の添加量の最大値
は、唐辛子粉末のカプサイシン含量が予測される最も低
い値(0.05%)に対応した添加量であり、これを合
計量とした場合は、カプサイシン含量0.05%の唐辛
子粉末では上記合計量添加し、これよりもカプサイシン
含量が多い唐辛子粉末では、その濃度に見合う量(合計
量より少量となる量)添加して、上記添加量が合計量に
満たない量だけ緩衝用原料を添加するのである。これに
より、唐辛子粉末の辛味成分の濃度に拘わらず、唐辛子
粉末及び緩衝用原料を絶えず一定量添加して、辛味と全
体の品質が均質なカレーを製造できるようになる。尚、
合計添加量を唐辛子粉末の添加量の最大値を超える値に
設定した場合には、カプサイシン含量0.05%未満の
唐辛子粉末の場合でも、同様の考え方により適宜対応す
ることが可能となる。
【0011】以上の第1態様により、唐辛子粉末と緩衝
用原料をカレーに用いる場合には、前記構成(a)〜
(c)により決まった各々の添加量を計量し、カレーの
製造工程において適宜の時期、態様で用いればよい。例
えば、唐辛子粉末及び緩衝用原料の上記添加量を他の粉
体原料と一緒に配合したものを、加熱混合して作った小
麦粉ルウに加えてカレーを製造することができる。ま
た、予め特定のカプサイシン含量の唐辛子粉末と緩衝用
原料とを前記の量(比率)で混合したものを作り置き、
これをカレー製造時に所定量用いることで、本発明の作
用を容易に達成することができる。
【0012】次に、本発明の第2態様について説明す
る。第2態様では、辛味成分の濃度の異なる2以上の乾
燥唐辛子の粗砕物乃至ホールを、これらを合わせたもの
の辛味成分の濃度が特定のものとなるように、計量、混
合して粉砕し、当該特定の辛味成分濃度の唐辛子粉末を
所定量カレーの製造工程で用いることにより、辛味と全
体の品質が均質なカレーを製造する。つまり、原料とし
て入手され、ロットごとに辛味成分濃度の異なる乾燥唐
辛子の粗砕物乃至ホールを、各ロットごとに辛味成分濃
度を測定し、各ロットから適当量ずつ配合したものを合
わせて粉砕し、特定の辛味成分濃度の粉砕物を得るので
ある。
【0013】上記の第2態様によれば、乾燥唐辛子の粗
砕物乃至ホールを辛味成分濃度に応じて適宜配合、粉砕
するという簡便な方法で、辛味の等しい唐辛子粉末を
得、これを用いて辛味と全体の品質が均質なカレーを製
造することができる。この態様では、増量的に他の原料
を加えず、カレーの原料配合をより均質にできる利点が
ある。一方、前述の第1態様は、予め辛味成分濃度の異
なる唐辛子を計量・配合する操作を不要とし、唐辛子粉
末をそのまま用いて、緩衝用原料で補正する簡便な操作
で均質な品質のカレーを製造できる利点がある。
【0014】以上のように、本発明の各態様はそれぞれ
特有の作用効果を有しているが、カレーの製造工程にお
いて、これらを任意に併用してもよい。即ち、例えば、
混合香辛料のカレーパウダーに、第2態様で得られた特
定の辛味成分濃度の唐辛子粉末を配合し、カレーの製造
工程において、上記カレーパウダーを用いると共に、こ
れとは別に、第1態様により唐辛子粉末を直接添加し、
辛味成分濃度に応じた変動量の分だけ緩衝用原料を加え
ればよい。
【0015】次に、実施例に基づいて本発明を具体的に
説明するが、本発明は当該実施例によって何ら限定され
るものではない。
【実施例1】 (第1態様)原料として用いた唐辛子粉末(品種名:レ
ッドペパー、中国産)のカプサイシン含量は、産地の差
により約0.05〜1%の範囲で変動した。一方、好適
な辛味のカレールウを得るために、カレールウのカプサ
イシン含量を10ppmにすることを目標とした。した
がって、上記唐辛子粉末の辛味成分濃度の変動範囲に応
じたカレールウに対する唐辛子粉末の添加量の範囲を
0.1〜2%と設定し、唐辛子粉末及び緩衝用原料の合
計添加量を2.0%(下記の原料配合においては2部)
と設定した。入手された唐辛子粉末のカプサイシン含量
は約0.4%で、カレールウに対する必要な唐辛子粉末
の添加量は0.25%(下記の原料配合においては0.
25部となる)であった。唐辛子粉末の粒度は約105
μm以下であった。
【0016】油脂(ラード)7部、小麦粉13部を加熱
釜で約40分間かけて約120℃まで加熱撹拌した後、
約70℃まで冷却して小麦粉ルウを製造した。上記の小
麦粉ルウに、食塩9部、砂糖10部、油脂(ラード)3
3部、コーンスターチ10部、カレーパウダー(唐辛子
を含まないもの)8部、アミノ酸2部、水系原料6部、
唐辛子粉末0.25部及び加工澱粉1.75部を加えて
再び加熱撹拌し、約40分間かけて約95℃まで加熱
し、カレールウを製造した。上記の原料配合において、
加工澱粉1.75部は、唐辛子粉末の添加量が前記の合
計量(2部)に満たない量加えたものであった。上記の
カレールウ(固形ルウ)を用いて、常法により、水、具
材と煮込んで調理したカレーは、求める辛味を有する高
品質のものであった。
【0017】
【実施例2】 (第1態様及び第2態様)乾燥唐辛子のホール(カプサ
イシン含量約0.3%のもの)1部と乾燥唐辛子のホー
ル(カプサイシン含量約0.5%のもの)1部とを混
合、粉砕して、カプサイシン含量約0.4%、粒度約1
05μm以下の唐辛子粉末を得た。また、該粉末を1%
含むカレーパウダーを製造した。好適な風味のカレール
ウを得るために、上記カレーパウダーをカレールウに5
%添加する必要があり、その場合、カレーパウダーに由
来するカレールウ中のカプサイシン含量は2.0ppm
となる。実施例1と同様のカプサイシン含量10ppm
のカレールウを得ることを目標とした場合、カプサイシ
ン含量8ppmに相当する量唐辛子粉末を別途カレーに
添加する必要があった。ここで、唐辛子粉末の辛味成分
濃度の変動範囲(約0.05〜1%)に応じたカレール
ウに対する添加量の範囲を1.6〜0.08%と設定
し、唐辛子粉末及び緩衝用原料の合計添加量を1.6%
(実施例1の原料配合においては1.6部)と設定し
た。入手された唐辛子粉末のカプサイシン含量は約0.
4%で、カレールウに対して必要な唐辛子粉末の添加量
は0.2%(実施例1の原料配合においては0.2部)
であった。
【0018】実施例1のカレーパウダーに代えて前記の
カレーパウダーを5部用い、小麦粉ルウに加える油脂
(ラード)を36.4部用い、唐辛子粉末を0.2部用
い、加工澱粉を1.4部用いる以外は、実施例1と同様
にしてカレールウを製造した。加工澱粉1.4部は、唐
辛子粉末の添加量が前記の合計量(1.6部)に満たな
い量加えたものであった。上記のカレールウ(固形ル
ウ)を用いて、常法により、水、具材と煮込んで調理し
たカレーは、求める辛味を有する高品質のものであっ
た。尚、以上の実施例において、カプサイシン含量は全
てガスクロ法により測定した。
【0019】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の第1態様
によれば、唐辛子粉末を必要量加え、変動量をカレーの
風味、色調、粘度等に影響しにくい緩衝用原料で補い、
唐辛子粉末の辛味成分の濃度に拘わらず、絶えず両者が
一定量となるように加えて、辛味と全体の品質が均質な
カレーを製造することが可能となる。また、第2態様に
よれば、乾燥唐辛子の粗砕物乃至ホールを辛味成分濃度
に応じて適宜配合、粉砕するという簡便な方法で、辛味
の等しい唐辛子粉末を得、これを用いて辛味と全体の品
質が均質なカレーを製造することが可能となる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 福場博保他編「調味料・香辛料の事 典」株式会社朝倉書店(1991年7月15 日)p.539−540 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A23L 1/39 - 1/48

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (a)予め求めるカレーの辛味に応じ
    た、唐辛子粉末の辛味成分の濃度に見合う添加量の範囲
    を設定し、(b)上記唐辛子粉末の添加量の最大値と等
    しいか、若しくはこれを超える唐辛子粉末及び緩衝用原
    料の合計添加量を設定して、(c)唐辛子粉末を辛味成
    分の濃度に見合う量添加すると共に、当該添加量が上記
    合計量に満たない量だけ緩衝用原料を添加することによ
    り、(d)唐辛子粉末の辛味成分の濃度に拘わらず、唐
    辛子粉末及び緩衝用原料を一定量添加して、辛味と全体
    の品質が均質なカレーを製造できるようにしたことを特
    徴とするカレーの製造方法。
  2. 【請求項2】 緩衝用原料が加工澱粉、可溶性澱粉及び
    食物繊維から選ばれた1乃至それ以上である請求項1記
    載の製造方法。
  3. 【請求項3】 辛味成分の濃度の異なる2以上の乾燥唐
    辛子の粗砕物乃至ホールを、これらを合わせたものの辛
    味成分の濃度が特定のものとなるように、計量、混合し
    て粉砕し、当該特定の辛味成分濃度の唐辛子粉末を、所
    定のカレーの原料配合において所定量用いることで、辛
    味と全体の品質が均質なカレーを製造できるようにした
    ことを特徴とするカレーの製造方法。
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福場博保他編「調味料・香辛料の事典」株式会社朝倉書店(1991年7月15日)p.539−540

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