JP3151087B2 - R−Fe−B系永久磁石用原料粉末の製造方法及び原料粉末調整用合金粉末 - Google Patents

R−Fe−B系永久磁石用原料粉末の製造方法及び原料粉末調整用合金粉末

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JP3151087B2 JP20719093A JP20719093A JP3151087B2 JP 3151087 B2 JP3151087 B2 JP 3151087B2 JP 20719093 A JP20719093 A JP 20719093A JP 20719093 A JP20719093 A JP 20719093A JP 3151087 B2 JP3151087 B2 JP 3151087B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、R(RはYを含む希
土類元素のうち少なくとも1種)、Fe、Bを主成分と
するR−Fe−B系永久磁石の製造に用いる原料粉末の
製造方法及び原料粉末調整用合金粉末に係り、ストリッ
プ・キャスティング法により得られたR2Fe14B相を
主相とする主相系合金粉末に同じくストリップ・キャス
ティング法により得られたR2Fe17相を含む調整用合
金粉末を添加配合して、磁石特性を劣化させるB−ri
ch相やNd−rich相の量を調整したR−Fe−B
系永久磁石用原料粉末の製造方法及び原料粉末調整用合
金粉末に関する。
【0002】
【従来の技術】今日、高性能永久磁石として代表的なR
−Fe−B系永久磁石(特開昭59−46008号)
は、三元系正方晶化合物の主相とR−rich相を有す
る組織にて高磁石特性を発現し、iHcが25kOe以
上、(BH)maxが45MGOe以上と、従来の高性
能希土類コバルト磁石と比較しても、格段の高性能を発
揮する。また、用途に応じ、選定された種々の磁石特性
を発揮するよう、種々組成のR−Fe−B系永久磁石が
提案されている。
【0003】上記種々の組成のR−Fe−B系焼結永久
磁石を製造するには、所要組成の磁石用の合金粉末を製
造する必要があり、電解により還元された希土類原料を
用いて、溶解して鋳型に鋳造し所要磁石組成の合金塊を
作成し、これを粉砕して所要粒度の合金粉末とする溶解
粉砕法(特開昭60−63304号、特開昭60−11
9701号)と、希土類酸化物、Fe粉等を用い直接磁
石組成合金粉を作成する直接還元拡散法(特開昭59−
219404号、特開昭60−77943号)がある。
【0004】溶解粉砕法は、鋳造時にFe初晶が発生し
易くR−rich相が大きく偏析するが、鋳塊の粗粉砕
工程で容易に酸化防止が可能な工程で粉砕ができるた
め、比較的低含有酸素量の合金粉末が得られる。
【0005】直接還元拡散法は、上記の溶解粉砕法と比
較して磁石用原料粉末を作成する時に溶解・粗粉砕等の
工程を省略することができることが利点であるが、R2
Fe14B主相の周囲にR−rich相がとり囲んだ状態
で作成され、また、R−rich相の大きさは前者と比
較して小さく良く分散されるため、製造時に酸化され易
く含有酸素量が多く、磁石組成によっては希土類元素が
消耗されて磁石特性のバラツキ等の発生原因となる問題
がある。
【0006】さらに、最近、鋳塊粉砕法によるR-Fe-B系
合金粉末の欠点たる結晶粒の粗大化、α-Feの残留、偏
析を防止するために、R-Fe-B系合金溶湯を双ロール法ま
たは単ロール法により、特定板厚の鋳片となし、前記鋳
片を通常の粉末冶金法に従って、鋳片をスタンプミル・
ジョークラッシャーなどで粗粉砕後、さらにディスクミ
ル、ポールミル、アトライター、ジェットミルなど機械
的粉砕法により平均粒径が3〜5μmの粉末に微粉砕後、
磁場中プレス、焼結、時効処理する製造方法が提案(特
開昭63-317643号報)されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】発明者らは、効率よく
R−Fe−B系焼結磁石を製造でき、しかも、磁気特性
を向上させる方法について種々検討を重ねてきた。R−
Fe−B系焼結磁石の残留磁束密度(Br)を高めるた
めには、強磁性相であり主相のR2Fe14B相の含有率
を多くすることにより達成される。すなわち、磁石の組
成をR2Fe14Bの化学量論的組成に近づけることが重
要となる。しかしながら、上記組成の合金を溶解し、鋳
型に鋳造した合金塊を出発原料としてR2Fe14B系焼
結磁石を作製しようとすると、合金塊に晶出したα−F
eやR−rich相が局部的に遍在していることなどか
ら、特に微粉砕時に粉砕が困難となり、かつまた、組成
ずれを生じるなどの問題があった。また、直接還元拡散
法で、上記組成の合金粉末を作製しようとすると、未反
応のFe粒子が残存したり、また、これを消滅させるた
めに、還元温度を高めると、今度は粒子同志が焼結して
成長し、しかも還元剤として添加したCaやその酸化物
などがかみ込まれて不純物が増加するなどの問題が新た
に発生した。
【0008】そこで、これら合金原料の製造にかかわる
問題点の改善について種々検討した結果、ストリップ・
キャスティング法を用いて、合金溶湯を急冷凝固させる
ことにより、α−Feの晶出を抑制でき、しかも均質な
組成を有する合金鋳片を製造できることを見出した。
【0009】一方、R−Fe−B系焼結磁石は液相焼結
反応を用いて、焼結が行われている。すなわち、磁石内
には主相で強磁性相のR2Fe14B相のほかに、B−r
ich相及び粒界相としてR−rich相が存在し、こ
れらの相が焼結時に反応して液相が生成し、液相出現に
ともなって、緻密化反応が進行する。従って、B−ri
ch相やR−rich相は、R−Fe−B系焼結磁石の
製造上、必須な構成相である。しかし、磁石特性を向上
させるためには、主相で強磁性相のR2Fe14B相の存
在量を極力高めることが必要であり、これを実現するた
めには、これら各相の量を厳密に制御する方法が必要で
ある。
【0010】この発明は、R−Fe−B系永久磁石特性
の高性能化を阻害する磁石構成相のB−rich相及び
R−rich相をできるだけ低減でき、かつ主相のR2
Fe14B相を増加させ、さらに合金粉末中の含有酸素量
を低減でき、種々の磁石特性に応じた組成の合金粉末を
製造性よく容易に提供できるR−Fe−B系永久磁石用
原料粉末の製造方法及び原料粉末調整用合金粉末の提供
を目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】一般に、R−Fe合金、
例えばNd−Fe合金中、Nd2Fe17相はキュリー点
が室温付近で、C面内に容易磁化方向を有する金属間化
合物であり、従来、R−Fe−B系焼結永久磁石におい
て、B量が6原子%より少ない場合は、磁石内に例えば
Nd2Fe17相が生成して保磁力が低下するとされてき
た。しかし、発明者は種々検討の結果、R2Fe14B相
を主相とするR−Fe−B系合金粉末にR217相、例
えばNd2Fe17相を含むR−Fe系合金粉末を特定量
添加配合した原料粉末は、粒界相のNd−rich相中
のNdとR−Fe系合金粉末中のNd2Fe17との共晶
温度690℃付近において、例えば、 Nd+Nd2
17相←→液相 の反応が起こることにより、この低融
点の液相がR−Fe−B系合金粉末の焼結を促進するこ
とを知見した。
【0012】さらに、Nd2Fe17相を含む調整用合金
粉末とR2Fe14B相を主相とするR−Fe−B系合金
粉末は、焼結中に下記反応を起こし、主相であるR2
14B相を増加させる作用がある。 13/17Nd2Fe17+1/4Nd1.1Fe44+13
3/6800Nd→Nd2Fe14B すなわち、発明者は上記の反応式において、調整用合金
粉末中のNd2Fe17相と主相系R−Fe−B系合金粉
末中のB−rich相及びNd−rich相との反応に
より、新たにNd2Fe14B相が生成されることになる
ので、従来法のR2Fe14B相を主相とする合金粉末の
みで得られた永久磁石では磁石特性を劣化させる要因の
一つであるB−rich相及びNd−rich相の量を
焼結反応時に低減できることを知見した。
【0013】さらに、発明者はR−Fe−B系磁石を粉
末冶金的手法で製造する際、粉砕しやすい原料合金粉末
を得ることは前記磁石の製造上大きな利点になることよ
り、R−Fe−B系永久磁石用原料粉末の製造方法につ
いて種々検討した結果、R2Fe14B相を主相とする主
相系合金粉末ならびにR2Fe17相を含む調整用合金粉
末をいずれもストリップ・キャスティング法により、合
金溶湯を急冷凝固して製造し得られた主相系合金粉末と
調整用合金粉末を所要の配合量にて混合してなるR−F
e−B系永久磁石用原料粉末を知見した。
【0014】すなわち、この発明において、主相系合金
粉末ならびに調整用合金粉末をストリップ・キャスティ
ング法で得た合金から製造するのは、ストリップ・キャ
スティングによると、主相系合金粉末では、R2Fe14
B主相が微細で、かつ、B−rich相やNd−ric
h相がよく分散した合金鋳片から合金粉末を得ることが
でき、また調整用合金粉末ではそのB量によってR2
17相の含有量が異なるが、その相が均一に分散された
合金鋳片から調整用合金粉末を得ることができる。特
に、主相系原料粉末中のR2Fe14B相が微細でかつB
−rich相やNd−rich相が均一に分散されてい
ると、磁石製造時に微粉砕能が極めて向上し、かつ粒度
分布が均一な粉末を製造できる。さらに、磁石を製造し
た際、結晶が微細であるため、高い保磁力が得られる。
【0015】さらに、前記R2Fe17相を含む調整用合
金粉末をストリップ・キャスティング法で製造する利点
は、通常の鋳型を用いた合金溶製法では、得られた合金
塊にα−Feや他のR−Fe(Co)化合物相が晶出す
るため、安定な原料合金粉末とするためには、前記合金
塊を熱処理して均質化する必要があり、合金粉末の製造
コストアップの要因となること、さらに、調整用合金粉
末を直接還元拡散法にて製造した場合、未反応のFe粒
子が残留したり、また、個々の粒子の組成が異なるなど
の問題を生じ、合金粉末全体を均質化することは極めて
困難となること等の問題を解消できる。
【0016】すなわち、この発明は、R(但しRはYを含む
希土類元素のうち少なくとも1種)12原子%〜20原子%、B6
原子%〜15原子%、残部Fe(但しFeの1部をCo、Niの1種ま
たは2種にて置換できる)及び不可避的不純物からなり、
ストリップ・キャスティング法により得られたR2Fe14B
相を主相とする合金粉末に、R(但しRはYを含む希土類元
素のうち少なくとも1種)20原子%以下、B6原子%以下、残
部Fe(但しFeの1部をCo、Niの1種または2種にて置換でき
る)及び不可避的不純物からなり、ストリップ・キャス
ティング法により得られたR2Fe17相を含む調整用合金粉
末を60%以下添加配合したことを特徴とするR-Fe-B系永
久磁石用原料粉末の製造方法である。また、この発明
は、R(但しRはYを含む希土類元素のうち少なくとも1種)
20原子%以下、B6原子%以下、残部Fe(但しFeの1部をCo、
Niの1種または2種にて置換できる)及び不可避的不純物
からなり、ストリップ・キャスティング法により得られ
たR2Fe17相を含むことを特徴とするR-Fe-B系永久磁石用
原料粉末調整用合金粉末である。
【0017】この発明において、ストリップ・キャステ
ィング法により得られた主相系合金粉末及び調整用合金
粉末の結晶粒は、従来の鋳型に鋳造して得られた鋳塊粉
砕粉に比べて約1/10以上も微細であり、例えば、そ
の短軸方向の寸法は0.1μm〜50μm、長軸方向は
5μm〜200μmの微細結晶であり、かつ主相結晶粒
を取り囲むようにR−rich相が5μm以下に微細に
分散されており、局部的に遍在している領域において
も、その大きさは20μm以下である。
【0018】この発明において、特定量のR、Fe、B
を有するR2Fe14B相を主相とする合金粉末に添加配
合するRが20原子%以下のR2Fe17相を含むR−F
e系調整用合金粉末の添加量を60%以下としたのは、
60%を超えると異方性磁石を作製するために磁界中で
成形した際に、一軸異方性であるR2Fe14B相の量が
少なくなり、配向度が低下するため好ましくなく、Br
の低下を招来するためである。より好ましい添加配合量
は0.1〜40%である。
【0019】この発明に用いる希土類元素Rは、Yを包
含し軽希土類及び重希土類を包含する希土類元素であ
り、これらのうち少なくとも1種、好ましくはNd、P
r等の軽希土類を主体として、あるいはNd、Pr等と
の混合物を用いる。すなわち、Rとしては、Nd,P
r,La,Ce,Tb,Dy,Ho,Er,Eu,S
m,Gd,Pm,Tm,Yb,Lu,Yを用いることが
できる。このRは純希土類元素でなくてもよく、工業上
入手可能な範囲で製造上不可避な不純物を含有するもの
でも差支えない。
【0020】このR2Fe14B相を主相とする合金粉末
を得るには、Rが12原子%未満では、R、Bの拡散し
ない残留鉄部の増加となり、20原子%を超えるとR−
rich相が増加して粉砕時に含有酸素量が増えるた
め、Rは12原子%〜20原子%とする。より好ましい
R量は13原子%〜16原子%である。また、Bは、6
原子%未満では高い保磁力(iHc)が得られず、15
原子%を超えると残留磁束密度(Br)が低下するた
め、すぐれた永久磁石が得られないため、Bは6原子%
〜15原子%とする。より好ましいB量は6原子%〜1
0原子%である。さらに、残部はFe及び不可避的不純
物からなり、Feは65原子%〜82原子%の範囲が好
ましい。Feは65原子%未満では相対的に希土類元素
及びBが−richとなりR−rich相、B−ric
h相が増加し、82原子%を超えると相対的に希土類元
素及びBが少なくなり、残留Fe部が増加し不均一な合
金粉末となるため好ましくない。より好ましいFe量は
74原子%〜81原子%である。主相系合金粉末中のC
oとNiの1種または2種は、R2Fe14B主相中のF
eと置換されて保磁力を低下させるため、Coは10原
子%以下、Niは3原子%以下とする。ただし、上述の
CoまたはNiでFeの一部を置換した場合、Feは5
5原子%〜72原子%の範囲である。
【0021】R2Fe17相を含む調整用合金粉末を得る
には、Rが20原子%を超えると合金粉末の作製時にR
−richな相が増加して酸化等の問題があり好ましく
なく、Rの好ましい量は5〜15原子%である。また、
Bは6原子%以下であればR2Fe14B相が存在するの
で、Bは6原子%以下とする。さらに、残部はFe及び
不可避的不純物からなり、Feは85原子%〜95原子
%の範囲が好ましい。
【0022】この発明において、R2Fe14B相を主相とす
る合金粉末は公知のストリップ・キャスティング法にて
製造し、またR2Fe17相を含む調整用合金粉末は公知のス
トリップ・キャスティング法により製造する。
【0023】得られる粉末をそのまま用いる際に、合金
粉末の粒度が大きすぎると永久磁石の磁気特性、とりわ
け高い保磁力が得られず、また、平均粒度が1μm未満
では、永久磁石の作製工程、すなわち、プレス成形、焼
結、時効処理工程における酸化が著しく、すぐれた磁気
特性が得られず、また80μmを超えると保磁力の低下
の原因となるので、1〜80μmの平均粒度が好まし
く、さらに、すぐれた磁気特性を得るには、平均粒度2
〜10μmの合金粉末が望ましい。また、得られる合金
粉末を用いて、高い残留磁束密度と高い保磁力を共に有
するすぐれたR−Fe−B系永久磁石を得るためには、
配合した原料粉末は、R12原子%〜25原子%、B4
原子%〜10原子%、Co0.1原子%〜10原子%、
Fe68原子%〜80原子%の組成が好ましい。
【0024】さらに、配合したR2Fe14B相を主相と
する合金粉末および/またはR2Fe17相を含む調整用
合金粉末に、Cu3.5原子%以下、S2.5原子%以
下、Ti4.5原子%以下、Si15原子%以下、V
9.5原子%以下、Nb12.5原子%以下、Ta1
0.5原子%以下、Cr8.5原子%以下、Mo9.5
原子%以下、W9.5原子%以下、Mn3.5原子%以
下、Al9.5原子%以下、Sb2.5原子%以下、G
e7原子%以下、Sn3.5原子%以下、Zr5.5原
子%以下、Hf5.5原子%以下、Ca8.5原子%以
下、Mg8.5原子%以下、Sr7.0原子%以下、B
a7.0原子%以下、のうち少なくとも1種を添加含有
させることにより、得られる永久磁石の高保磁力化、高
耐食性化、温度特性の改善が可能になる。
【0025】この発明による合金粉末を用いて製造した
永久磁石の組成が、R11原子%〜25原子%、B4原
子%〜10原子%、Co30原子%以下、Fe66原子
%〜82原子%の場合、得られる磁気異方性永久磁石
は、保磁力iC≧5kOe、(BH)max≧20MG
Oeの磁気特性を示し、さらに、残留磁束密度の温度係
数が、0.1%/℃以下となり、すぐれた特性が得られ
る。また、永久磁石組成のRの主成分がその50%以上
を軽希土類金属が占める場合で、R12原子%〜20原
子%、B4原子%〜10原子%、Fe66原子%〜82
原子%、Co20原子%以下を含有するとき最もすぐれ
た磁気特性を示し、特に軽希土類金属がNd、Pr、D
yの場合には、(BH)maxはその最大値が40MG
Oe以上に達する。
【0026】
【作用】この発明は、ストリップ・キャスティング法に
より得られたR2Fe14B相を主相とするR-Fe-B系合金粉末
に全量の60%以下のストリップ・キャスティング法によ
り得られたNd2Fe17相を含む調整用合金粉末を添加配合
することにより、調整用合金粉末中のNd2Fe17相と主相
系R-Fe-B系合金粉末中のB-rich相及びNd-rich相との反
応により、新たにNd2Fe14B相が生成されるため、永久磁
石の磁石特性を劣化させるB-rich相及びNd-rich相の量
を調整低減でき、得られる磁石の高性能化を図ることが
でき、さらに合金粉末中の含有酸素量を低減でき、種々
の磁石特性に応じた組成の合金粉末を容易に提供でき
る。
【0027】
【実施例】
実施例1 主相系合金粉末のストリップ・キャスティング法による
原料は、 Ndメタル 340g、 Dyメタル 8g、 B含有量20.0%のFe−B合金 65.5g、 純度99%の電解鉄 600g を用い、所定の組成の合金が得られるようにAr雰囲気
中で溶解し、次いでCu製のロールによるストリップ・
キャスティング法で、板厚約2mmの鋳片を得た。さら
にこの鋳片を水素吸蔵処理や、ジョークラッシャー、デ
ィスクミルなどにより、平均粒径約10μmの粉末80
0gを得た。得られた粉末はNd14.9原子%、Pr
0.1原子%、Dy0.3原子%、B8.0原子%、残
部Feからなり、X線回折EPMAで観察したところ、
大部分がR2Fe14B相であることを確認した。また、
含有酸素量は約800ppmであった。なお、鋳片の組
織についてもEPMAで観察したところ、R2Fe14
主相が、その短軸方向で約5μm、長軸方向20〜80
μmであり、さらにR−rich相は主相を取り囲むよ
うに微細に分散していた。
【0028】また、調整用合金粉末のR2Fe17相を含むス
トリップ・キャスティング法による原料は、 Ndメタル 250g Dyメタル 11g 純度99%の電解鉄 730g B含有量20.0%のFe-B合金 20g、 を用い、主相系合金と同様にストリップ・キャスティン
グ法で板厚約2mmの鋳片を得た。さらに、主相系合金と
同様の処理により粉末を作製した。得られた粉末の組成
はNd10.8原子%、Pr0.1原子%、Dy0.4原子%、B2.4原子%、
残部Feであった。EPMAで鋳片の組織を確認したところ、
R2Fe17相および一部R2Fe14B、さらにNd-rich相からな
り、α-Feの存在は認められなかった。なお、含有酸素
量は850ppmであった。
【0029】上記2種類の原料粉末を用いて、主相系合
金粉末に30%の調整用合金粉末を配合・混合した。こ
の原料粉末をジェット・ミルなどの粉砕機に装入して、
約3μmまで微粉砕し、得られた微粉末を約10kOe
の磁界中で配向し、磁界に直角方向に約1.5ton/
cm2の圧力で成型し、8mm×15mm×10mmの
成型体を作製した。この成型体を1100℃×3時間の
Ar雰囲気中条件で焼結し、550℃×1時間の時効処
理を行った。得られた磁石の磁石特性を表1に示す。
【0030】比較例1 主相系の合金粉末は、実施例1と同様に、 Ndメタル 340g Dyメタル 8g 純度99%の電解鉄 600g B含有量20.0%のFe−B合金 65.5g を用い、Ar雰囲気中で溶解し、次いで鉄製鋳型に鋳込
んだ。得られた合金インゴットを実施例1と同様の方法
で平均粒径約10μmの粉末にし、成分分析を行ったと
ころ、Nd14.9原子%、Pr0.1原子%、Dy
0.3原子%、B8.0原子%、残部Feからなり、含
有酸素量は約900ppmであった。なお、合金インゴ
ットの組織をEPMAで観察したところ、R2Fe14
主相は短軸方向約50μm、長軸方向約500μmであ
り、R−rich相が局部的に50μmにもわたって、
遍在していた。さらに主相には5〜10μmのα−Fe
が存在していた。
【0031】また、R2Fe17相を含む調整用原料は直
接還元拡散法で Nd23(純度98%) 290g Dy23(純度99%) 12g B含有量20.0%のFe−B合金 65g 純度99%の鉄粉 600g を用いて、これに純度99%の金属Caを150g無水
CaCl2を25g混合して、ステンレス容器内に装入
し、Ar気流中に950℃×8時間の条件にて、直接還
元拡散法で、作製した。得られた合金粉末の成分分析を
行ったところ、Nd10.8原子%、Py0.1原子
%、Dy0.4原子%、B2.4原子%、残部Feから
なり、含有酸素量は1500ppmであった。上記2種
類の原料粉末を用いて、主相系合金粉末に30%の調整
用合金粉末を配合・混合し、実施例1と同様に磁石を作
製した。得られた磁石の磁石特性を表1に合わせて示し
た。
【0032】比較例2 主相系の合金粉末は比較例1のものを使用し、調整用合
金粉末は、 Ndメタル 250g Dyメタル 11g 純度99%の電解鉄 730g B含有量20.0gのFe−B 20g をAr雰囲気中で溶解し、鉄製鉄型に鋳造した。得られ
た合金塊の組織を観察したところ、α−Feが多量に晶
出していたため、1000℃×12時間の均質化処理を
行った。その後、実施例1と同様の手法で成分分析を行
ったところ、Nd10.8原子%、Py0.1原子%、
Dy0.4原子%、B2.4原子%、残部Feであっ
た。上記2種類の原料粉末を用いて、主相系合金粉末に
30%の調整用合金粉末を配合・混合し、実施例1と同
様に磁石を作製した。得られた磁石の磁石特性を表1に
合わせて示した。
【0033】比較例3 原料として、 Ndメタル 315g、 Dyメタル 8.5g、 B含有量20.0%のFe−B合金 52g、 純度99%の電解鉄 636g を用い、所定の組成の合金が得られるようにAr雰囲気
中で溶解し、次いでCu製のロールによるストリップ・
キャスティング法で、板厚約2mmの鋳片を得た。さら
にこの鋳片を水素吸蔵処理や、ジョークラッシャー、デ
ィスクミルなどにより、平均粒径約10μmの粉末80
0gを得た。得られた粉末はNd13.8原子%、Py
0.1原子%、Dy0.3原子%、B6.3原子%、残
部Feからなり、EPMAで観察したところ、また、含
有酸素量は約800pmであった。なお、鋳片の組織に
ついてもEPMAで観察したところ、R2Fe14B主相
が、その短軸方向で約6μm、長軸方向約20〜80μ
mであり、さらにR−rich相は主相をより囲むよう
に微細に存在していた。このストリップ・キャスティン
グ法による合金粉末を用いて、実施例1と同様に磁石を
作製した。得られた磁石の磁石特性を表1に合わせて示
した。
【0034】
【表1】
【0035】
【発明の効果】この発明は、R−Fe−B系永久磁石用
原料粉末を得るのに、R2Fe14B相を主相とする主相
系合金粉末をストリップ・キャスティング法にて製造
し、また、R2Fe17相を含む調整用合金粉末をストリ
ップ・キャスティング法にて製造し、R2Fe14B相を
主相とするR−Fe−B系合金粉末に全量の60%以下
のNd2Fe17相を含む調整用合金粉末を添加配合する
ことにより、極めて粉砕しやすい合金粉末を得ることが
可能であり、永久磁石の磁石特性を劣化させるB−ri
ch相及びNd−rich相の量を調整でき、実施例に
明らかなように得られる磁石の高性能化を図ることがで
き、さらに合金粉末中の含有酸素量を低減でき、種々の
磁石特性に応じた組成の合金粉末を容易に提供できる。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 R(但しRはYを含む希土類元素のうち
    少なくとも1種)12原子%〜20原子%、B6原子%
    〜15原子%、残部Fe(但しFeの1部をCo、Ni
    の1種または2種にて置換できる)及び不可避的不純物
    からなり、ストリップ・キャスティング法により得られ
    たR2Fe14B相を主相とする合金粉末に、R(但しR
    はYを含む希土類元素のうち少なくとも1種)20原子
    %以下、B6原子%以下、残部Fe(但しFeの1部を
    Co、Niの1種または2種にて置換できる)及び不可
    避的不純物からなり、ストリップ・キャスティング法に
    より得られたR2Fe17相を含む調整用合金粉末を60
    %以下添加配合したことを特徴とするR−Fe−B系永
    久磁石用原料粉末の製造方法。
  2. 【請求項2】 R(但しRはYを含む希土類元素のうち
    少なくとも1種)20原子%以下、B6原子%以下、残
    部Fe(但しFeの1部をCo、Niの1種または2種
    にて置換できる)及び不可避的不純物からなり、ストリ
    ップ・キャスティング法により得られたR2Fe17相を
    含むことを特徴とするR−Fe−B系永久磁石用原料粉
    末調整用合金粉末。
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