JP3136649B2 - 複合型赤外線検出器 - Google Patents

複合型赤外線検出器

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、同一検出器内に熱電堆
型赤外線検出部分と焦電型赤外線検出部分とを有する複
合型赤外線検出器の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】赤外線検出器には焦電型赤外線検出器と
熱電堆型赤外線検出器とがあり、熱電堆型赤外線検出器
は緩やかな温度変化に感応して出力電圧を発生するが温
度変化に対する感度は低く、一方、焦電型赤外線検出器
は急激な温度変化のみを感度良く検出することができ
る。そこで、これら両検出器のそれぞれの機能の相互補
償を行なうために、前記両検出器が組み合わされた複合
型赤外線検出器が作成されている。
【0003】例えば、特公昭63−7611号公報に
は、図4に示されるような構成を有する複合型赤外線検
出器が掲載されている。すなわちこの従来の複合型赤外
線検出器においては、焦電型赤外線検出器部分の焦電性
を有する絶縁基板が、熱電堆型赤外線検出器の心臓部で
ある熱電堆が設置される基板となっている複合型赤外線
検出器が掲載されている。
【0004】具体的には、焦電性を有する絶縁基板11
を挟む形で、上部に上部電極13が、下部に下部電極1
5が設置され、さらに赤外線吸収体17が上部電極13
の上部に設置されて構成されている。この焦電型赤外線
検出部分においては、赤外線吸収体17に赤外線が吸収
されることによって生じる温度変化が、焦電性を有する
絶縁基板11に設置されている上部電極13と下部電極
15間に生じる電位差として検出される。このため、上
部電極13と下部電極15間の電位差の発生の有無を検
出することによって、温度変化を検出することが可能と
なっている。
【0005】一方、熱電堆型赤外線検出部分は、第1の
熱電材料19aと第2の熱電材料19bとが絶縁基板1
1の下部に設置されて構成されており、この第1及び第
2の熱電材料の一端は、支持部材25によってそれぞれ
固定されている。ここで、熱電材料19a及び19bの
支持部材25側の一端は、支持部材25によって冷却さ
れるために、冷接合部21となっており、また、焦電型
赤外線検出部分に隣接する側は、赤外線によって加熱さ
れるために、温接合部23となっている。したがって、
冷接合部21と温接合部23の温度差によって発生する
電位差を測定することによって、温度を検出することが
可能となっている。
【0006】ここで、上述の複合型赤外線検出器の動作
を述べる。まず、赤外線吸収体17に赤外線が吸収さ
れ、赤外線吸収体17の温度が上昇すると焦電型赤外線
検出部分において温度変化の検出が行われる。すると同
時に、赤外線吸収体17の温度上昇は付近の絶縁基板1
1の温度上昇をも引き起こすため、熱電堆型赤外線検出
部分の温接合部23の温度上昇も誘起される。これによ
って、温接合部23と冷接合部21との間に温度差が生
じるので、温度を検出することも可能となっている。
【0007】このようにして、従来の複合型赤外線検出
器においては、焦電型赤外線検出部分においては急激な
温度変化が検出され、熱電堆型赤外線検出部分において
は緩やかな温度変化が検出されることとなり、互いの機
能を相互補償することができるようになっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、以上の
ような従来の複合型赤外線検出器においては、以下に示
されるような問題があった。
【0009】すなわち、熱電堆型赤外線検出部分の熱電
材料19a及び19bにおいては、赤外線吸収体17か
らの熱伝達が、上部電極13と絶縁基板11とを介して
行われるため、熱電堆の応答性や感度が悪くなる。しか
も、絶縁基板11に用いられている焦電性を有する素材
の熱伝導度は比較的小さいため、赤外線吸収体17から
熱電材料19a及び19bへの熱伝達を悪化させる原因
となっている。
【0010】また、熱電堆は温度差によって温度を検出
するものであるから冷接合部21と温接合部23との温
度差が大きいことが望ましいが、絶縁基板11の熱伝導
度が小さいために冷接合部21における熱拡散が十分に
行なえず、熱電堆の精度の低下をも引き起こしていた。
【0011】本発明は以上のような課題を鑑みてなされ
たものであり、その目的は熱電堆型赤外線検出部分と焦
電型赤外線検出部分の両特性が相殺されることなく前記
両特性の相互補償が行える複合型赤外線検出器を提供す
ることにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】以上のような目的を達成
するために本発明に係る複合型赤外線検出器において
は、中央に透孔を有する支持部材と、前記支持部材の上
面に形成された薄膜部と、前記透孔部分に対応する前記
薄膜部上面に形成された焦電型赤外線検出部分と、前記
焦電型赤外線検出部分が形成された薄膜部の面と同一側
の前記薄膜部上面に形成され、前記透孔部分に対応する
位置に配置された温接合部と、前記支持部材に対応する
位置に配置された冷接合部とを有する熱電堆型赤外線検
出部分と、前記焦電型赤外線検出部分と前記熱電堆型赤
外線検出部分の温接合部を覆う赤外線吸収体と、を有す
ることを特徴とする。
【0013】
【作用】以上のような構成を有する本発明の複合型赤外
線検出器においては、焦電型赤外線検出部と熱電堆型赤
外線検出部分の温接合部とが赤外線吸収体で吸収された
赤外線によって同時に直接的に加熱されるため、焦電型
赤外線検出部分の温度と熱電堆型赤外線検出部分の温接
合部の温度とが同時に上昇する。
【0014】薄膜部は熱容量が小さいため、熱電堆型赤
外線検出部分の温接合部と焦電型赤外線検出部分の赤外
線に対する応答性が良くなり、また、支持部材に薄膜部
より大きい熱伝導率の素材を用いているので、薄膜部を
通しての冷接合部の熱放散が効率良く行なわれ、温接合
部と冷接合部の温度勾配が大きくなって検出器全体の感
度が高くなる。
【0015】
【実施例】図1は、本発明の一実施例に係る複合型赤外
線検出器の構成を示した図である。 本実施例において
は、焦電型赤外線検出部分40と熱電堆型赤外線検出部
分の温接合部37が、SiO2 からなるメンブレム31
(厚さ10μ以下)の単層で構成される薄膜上に設置さ
れている。そして、このメンブレム31の下にはSi単
結晶からなる支持部材33(厚さ200〜300μ)が
あり、この支持部材33の位置に熱電堆型赤外線検出部
分の冷接合部39が設置されている。支持部材33の中
央には透孔34が形成され、この透孔部分34において
は、メンブレム31が露出している。
【0016】ここで、このような透孔34と支持部材3
3は次のようにして作られる。まず、シリコンウエハの
片面にSiO2 の薄膜が形成され、次にシリコンウエハ
の他面にエッチングパターン、すなわち透孔34に相当
する部分が除かれたパターンが設けられ、この後、アル
カリ系のエッチング液を用いて異方性エッチングをし、
シリコンの部分が除去されて透孔34が形成される。
【0017】ところで、焦電型赤外線検出部分40は、
焦電性を有する絶縁基板43の上下に上部電極45と下
部電極47とが設置されることによって構成されてい
る。一方、熱電堆型赤外線検出部分は、第1の熱電材料
35aと第2の熱電材料35bを含み、前述のように、
第1の熱電材料35a及び第2の熱電材料35bの温接
合部37が焦電型赤外線検出部分40に近接してその周
囲に配設され、第1の熱電材料35a及び第2の熱電材
料35bの冷接合部39がメンブレム31を介して支持
部材33上に設置されている。
【0018】そしてさらに、熱電堆型赤外線検出部分の
温接合部37と焦電型赤外線検出部分40は、金黒から
成る赤外線吸収体51によって覆われている。また、第
1の熱電材料35aおよび第2の熱電材料35bと下部
電極47間を絶縁するための絶縁膜44が、赤外線吸収
体51と下部電極47間および赤外線吸収体51と各熱
電材料35a,35b間に形成されている。なお、実施
例において、絶縁膜44はSiO2 膜の形成や合成樹脂
の塗布により作られている。
【0019】ここで、図2は本実施例の上面図を示した
ものであり、図3は図2の要部を拡大した一部破断図で
ある。
【0020】図2において、破線46の内側が透孔34
であり、破線の外側に支持部材33が設置されている。
そして、熱電材料35a及び熱電材料35b間に生じた
電位差は、引出し端子53aと引出し端子53bとから
検出されるようになっており、一方、上部電極45と下
部電極47の間に生じた電位差は、上部電極45に接続
されている引出し線55と下部電極47に接続されてい
る引出し線57から検出されるようになっている。
【0021】なお、図3中破線45で示されている部分
は上部電極45であり、この下には絶縁基板43と下部
電極47が設置されている。このようにして、焦電型赤
外線検出部分が赤外線吸収体51の直下に収納されてい
るため、赤外線吸収体51に吸収された赤外線によって
生じる温度上昇は、直接的に焦電型赤外線検出部分に伝
達されるようになっている。また、熱電堆型赤外線検出
部分の温接合部37も赤外線吸収体51の下に収納され
ているため、焦電型赤外線検出部分と同様にして、直接
的に赤外線吸収体51の熱が温接合部37に伝達される
ようになっている。
【0022】ここで、本実施例の複合赤外線検出器にお
いては、薄膜部はメンブレム31のみから成り、しかも
メンブレム31を構成しているSiO2 は、Siよりも
熱伝導度が小さく熱を通しにくい。しかも、メンブレム
31の厚さは数μと薄く熱容量が小さいために、メンブ
レム31における熱の拡散は小さい。したがって、赤外
線吸収体51で赤外線が吸収されると、メンブレム31
上に設置されている焦電型赤外線検出部分の温度が容易
に上昇するので、温度変化の検出が精度良く行えるよう
になっている。
【0023】一方、支持部材33はSiで構成されてお
り、しかもこの支持部材33は200〜300μの厚さ
を有しているため、熱伝導度が大きいばかりでなく熱容
量までも大きくなっている。したがって、支持部材33
に設置されている冷接合部39から容易に熱が拡散され
るようになっており、熱電堆型赤外線検出部分のメンブ
レム31に設置されている温接合部37との温度差を大
きく取ることができるために、熱電堆による温度の検出
が精度良く行えるようになっている。
【0024】また、焦電型赤外線検出部分と熱電堆型赤
外線検出部分がメンブレム31上に形成されているため
に、上部電極45と下部電極47の間に生じた電位差を
検出するための引出し線55及び57や、引出し端子5
3a及び53bを引出す手段を、容易に構築することが
可能となっている。
【0025】なお、熱電堆型赤外線検出部分の熱電堆を
形成する熱電材料35a及び35bの幅は、実施例にお
いては約30μに設定されており、各熱電材料部間は5
00〜600μに設定されている。そして、透孔34は
直径2mmの円で形成されており、赤外線吸収体51は直
径1mmの円で形成されている。
【0026】ここで、本実施例においてはメンブレム3
1としてSiO2 を用いたが、メンブレム31はこれに
限られるものでなく、例えばSi3 4 などのように適
度な強度と適度な熱伝導度を有するものであれば、あら
ゆる材料を用いることが可能であり、また、これらを積
層させて用いることも可能である。
【0027】そして、本実施例においては、支持部材3
3の厚さを200〜300μとしたが、これにおいても
数十μで十分であることが判っている。いずれにしても
冷接合部の熱拡散を容易に行える大きさであれば、この
大きさに限られるものではない。
【0028】さらに、赤外線吸収体51は、本実施例に
おいては金黒によって構成されているが、これも金黒に
限られるものではなく、赤外線を有効に吸収するもので
あれば、ニッケルクロム等の、あらゆるものを用いるこ
とが可能である。
【0029】また、熱電材料としては、ビスマスやアン
チモンなどを用いることが好適であるが、熱電材料35
a及び35bはこれに限られるものではなく、熱電
形成する全ての材料を用いることが可能である。
【0030】更にまた、上部電極45を設けることなく
赤外線吸収体に電極を兼ねさせることができ、これによ
り、絶縁膜44は絶縁基板43と同じ材料を用いること
ができる。
【0031】
【発明の効果】以上のような構成を有する本発明の複合
型赤外線検出器においては、熱電堆型赤外線検出部分と
焦電型赤外線検出部分の熱容量が小さくなり、両検出部
分の応答特性が向上する。
【0032】また、熱電堆型赤外線検出部の温接合部と
冷接合部の温度勾配を従来に比べ大きくでき、熱電堆型
赤外線検出部の感度を向上させることができる。更にま
た、両検出部の電極を薄膜部の同一面側に設けることが
できるので、電極からの引き出し線の形成が容易とな
り、信号の取り出しが容易に行えるようになっている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る複合型赤外線検出器の
構成を示した図である。
【図2】図1の複合型赤外線検出器の上面図である。
【図3】図2の要部を拡大して一部を破断した一部破断
図である。
【図4】従来の複合型赤外線検出器の構成を示した図で
ある。
【符号の説明】
31 メンブレム(薄膜部) 33 支持部材 34 透孔 35a 第1の熱電材料 35b 第2の熱電材料 37 温接合部 39 冷接合部 40 焦電型赤外線検出部 43 絶縁基板 45 上部電極 47 下部電極 51 赤外線吸収体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01L 37/02 G01J 1/02 G01J 5/02

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 焦電型赤外線検出部分と熱電堆型赤外線
    検出部分とを有する複合型赤外線検出器において、 中央に透孔を有する支持部材と、 前記支持部材の上面に形成された薄膜部と、 前記透孔部分に対応する前記薄膜部上面に形成された焦
    電型赤外線検出部分と、 前記焦電型赤外線検出部分が形成された薄膜部の面と同
    一側の前記薄膜部上面に形成され、前記透孔部分に対応
    する位置に配置された温接合部と、前記支持部材に対応
    する位置に配置された冷接合部とを有する熱電堆型赤外
    線検出部分と、 前記焦電型赤外線検出部分と前記熱電堆型赤外線検出部
    分の温接合部を覆う赤外線吸収体と、 を有することを特徴とする 複合型赤外線検出器。
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