ところで、図14に示した構成の赤外線センサでは、断熱部90”における各脚部90b”,90b”の全長を長くして各脚部90b”,90b”の熱コンダクタンスを小さくする(熱抵抗を大きくする)ために各脚部90b”,90b”の厚さ寸法を小さくすることが考えられ、応答速度の高速化を図るために支持部90a”の厚さ寸法を小さくすることが考えられるが、赤外線吸収部を兼ねている支持部90a”に反りが発生してしまい、構造安定性が低くなるとともに感度が低下してしまいう。
また、図14に示した構成の赤外線センサでは、感温部30”がボロメータ形の赤外線検出素子により構成されているので、抵抗値の変化を検出する時に電流を流す必要があり、消費電力が大きくなるとともに、自己発熱が発生し、熱応力に起因して断熱部90”に反りが発生してしまう懸念がある。また、自己発熱による温度変化や周囲温度変化により抵抗温度係数が変化してしまうので、温度補償手段を設けないと高精度化が難しく、温度補償手段を設けるとセンサ全体が大型化し、コストが高くなってしまう。
これに対して、上述の図13に示した構成の赤外線センサでは、感温部30’がサーモパイルにより構成されており、感温部30’に電流を流す必要がなく、自己発熱が発生しないので、自己発熱に起因した反りが発生しないという利点や低消費電力化を図れるという利点や、温度によらず感度が一定であり高精度であるとう利点がある。
しかしながら、図13に示した構成の赤外線センサでは、赤外線吸収部33’の厚さ寸法を大きくすると、赤外線吸収部33’の熱容量が大きくなって応答速度が低下してしまうので、赤外線吸収部33’の厚さ寸法を小さくすることが考えられるが、赤外線吸収部33’の厚さ寸法を小さくすると、感度が低下してしまう。また、p形ポリシリコン層35およびn形ポリシリコン層34をパターニングするときに赤外線吸収部33’がエッチングされて赤外線吸収部33’、感温部30’の一部、パッシベーション膜60’の積層構造を有する薄膜構造部に反りが発生してしまい、構造安定性が低くなるとともに感度が低下してしまう。
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、低消費電力化、高感度化を図れる赤外線センサおよび赤外線センサモジュールを提供することにある。
請求項1の発明は、ベース基板と、前記ベース基板の一表面側において前記ベース基板と空間的に分離して形成され赤外線を吸収する赤外線吸収部を有する薄膜構造部と、前記赤外線吸収部と前記ベース基板とに跨って形成されたp形ポリシリコン層、n形ポリシリコン層、および前記赤外線吸収部の赤外線入射面側で前記p形ポリシリコン層と前記n形ポリシリコン層とを電気的に接合した接続部で構成される熱電対を有し前記赤外線吸収部と前記ベース基板との温度差を検出する熱電対型の感温部とを備え、前記p形ポリシリコン層および前記n形ポリシリコン層それぞれの不純物濃度が1018〜1020cm−3に設定された赤外線センサであって、前記p形ポリシリコン層および前記n形ポリシリコン層の屈折率をn1、検出対象の赤外線の中心波長をλとするとき、前記p形ポリシリコン層および前記n形ポリシリコン層それぞれの厚さがλ/4n1であり、検出対象の波長が8〜12μmであることを特徴とする。
この発明によれば、感温部が、赤外線吸収部とベース基板とに跨って形成されたp形ポリシリコン層、n形ポリシリコン層、および前記赤外線吸収部の赤外線入射面側で前記p形ポリシリコン層と前記n形ポリシリコン層とを電気的に接合した接続部で構成される熱電対を有し前記赤外線吸収部と前記ベース基板との温度差を検出する熱電対型の感温部なので、前記感温部がボロメータ形の赤外線検出素子により構成されている場合に比べて低消費電力化を図れ、また、前記p形ポリシリコン層および前記n形ポリシリコン層それぞれの不純物濃度が1018〜1020cm−3に設定され、前記p形ポリシリコン層および前記n形ポリシリコン層の屈折率をn1、検出対象の赤外線の中心波長をλとするとき、前記p形ポリシリコン層および前記n形ポリシリコン層それぞれの厚さがλ/4n1であるので、検出対象の赤外線の吸収効率を高めることができ、高感度化を図れる。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記p形ポリシリコン層および前記n形ポリシリコン層における前記ベース基板側とは反対側に赤外線吸収膜が形成されており、前記赤外線吸収膜の屈折率をn2とするとき、前記赤外線吸収膜の厚さが、λ/4n2に設定されてなることを特徴とする。
この発明によれば、検出対象の赤外線の吸収効率をより高めることができ、より一層の高感度化を図れる。
請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明において、前記p形ポリシリコン層と前記n形ポリシリコン層とが同一の厚さに設定されてなることを特徴とする。
この発明によれば、製造時に、前記p形ポリシリコン層および前記n形ポリシリコン層の基礎となるノンドープのポリシリコン層を単一の成膜工程で形成でき、低コスト化を図れる。
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3の発明において、前記薄膜構造部を備えた画素が前記ベース基板の前記一表面側でアレイ状に配置されてなることを特徴とする。
この発明によれば、赤外線画像センサを実現可能となる。
請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記各画素ごとに前記感温部の出力を読み出すためのMOSトランジスタを有することを特徴とする。
この発明によれば、出力用パッドの数を少なくでき、小型化および低コスト化を図れる。
請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記MOSトランジスタのゲート電極を構成するポリシリコン層の厚さが、前記p形ポリシリコン層および前記n形ポリシリコン層と同じ厚さに設定されてなることを特徴とする。
この発明によれば、前記MOSトランジスタのゲート電極と前記p形ポリシリコン層または前記n形ポリシリコン層とを同時に形成することが可能となり、製造工程数の削減による低コスト化を図れる。
請求項7の発明は、請求項5または請求項6の発明において、前記MOSトランジスタのゲート電極を構成するポリシリコン層は、前記p形ポリシリコン層と前記n形ポリシリコン層とのいずれか一方と同じ不純物を同じ濃度で含んでいることを特徴とする。
この発明によれば、前記MOSトランジスタのゲート電極と前記p形ポリシリコン層または前記n形ポリシリコン層とを同時に形成することが可能となり、製造工程数の削減による低コスト化を図れる。
請求項8の発明は、請求項4ないし請求項7のいずれか1項に記載の赤外線センサと、前記赤外線センサの出力信号を信号処理する信号処理ICチップと、前記赤外線センサおよび前記信号処理ICチップが実装されたパッケージとを備え、前記赤外線センサの前記ベース基板は、外周形状が矩形状であり、前記感温部から出力される出力信号を取り出す全ての出力用パッドが外周縁の一辺に沿って並設され、前記信号処理ICチップは、外周形状が矩形状であり、前記赤外線センサの前記出力用パッドに電気的に接続される全ての入力用パッドが外周縁の一辺に沿って並設されてなり、前記ベース基板と前記信号処理ICチップとの前記一辺同士が他の辺同士に比べて近くなるように前記赤外線センサおよび前記信号処理ICチップが配置されてなることを特徴とする。
この発明によれば、請求項4ないし請求項7のいずれか1項に記載の赤外線センサを備えていることにより、低消費電力化、高感度化を図れ、しかも、前記赤外線センサの前記ベース基板は、外周形状が矩形状であり、前記感温部から出力される出力信号を取り出す全ての出力用パッドが外周縁の一辺に沿って並設され、信号処理ICチップは、外周形状が矩形状であり、前記赤外線センサの前記出力用パッドに電気的に接続される全ての入力用パッドが外周縁の一辺に沿って並設されてなり、前記ベース基板と前記信号処理ICチップとの前記一辺同士が他の辺同士に比べて近くなるように前記赤外線センサおよび前記信号処理ICチップが配置されているので、前記赤外線センサの前記出力用パッドと前記信号処理ICチップの前記入力用パッドとを接続する配線を短くでき、外来ノイズの影響を低減できるから、耐ノイズ性が向上する。
請求項1の発明は、低消費電力化、高感度化を図れるという効果がある。
請求項8の発明は、赤外線センサにおいて低消費電力化、高感度化を図れ、また、赤外線センサの出力用パッドと信号処理ICチップの入力用パッドとを接続する配線を短くでき、耐ノイズ性が向上するという効果がある。
(実施形態1)
本実施形態の赤外線センサAは、赤外線イメージセンサであり、図1および図2に示すように熱型赤外線検出部3と画素選択用スイッチング素子であるMOSトランジスタ4とを有する画素2がベース基板1の一表面側においてアレイ状(ここでは、2次元アレイ状)に配列されている。ここで、ベース基板1は、シリコン基板1aを用いて形成されている。なお、本実施形態では、1つのベース基板1の上記一表面側にm×n個(図示例では、4×4個)の画素2が形成されているが、画素2の数や配列は特に限定するものではない。また、図2(b)では、熱型赤外線検出部3における熱電対型の感温部30の等価回路を、当該熱電対型の感温部30の熱起電力に対応する電圧源Vsで表してある。
また、本実施形態の赤外線センサAは、各列の複数の熱型赤外線検出部3の感温部30の一端が上述のMOSトランジスタ4を介して各列ごとに共通接続された複数の垂直読み出し線7と、各行の熱型赤外線検出部3の感温部30に対応するMOSトランジスタ4のゲート電極46が各行ごとに共通接続された複数の水平信号線6と、各列のMOSトランジスタ4のp+形ウェル領域41が各列ごとに共通接続された複数のグラウンド線8と、各グラウンド線8が共通接続された共通グラウンド線9と、各列の複数個の熱型赤外線検出部3の感温部30の他端が各列ごとに共通接続された複数の基準バイアス線5とを備えており、全ての熱型赤外線検出部3の感温部30の出力を時系列的に読み出すことができるようになっている。要するに、本実施形態の赤外線センサAは、ベース基板1の上記一表面側に熱型赤外線検出部3と当該熱型赤外線検出部3に並設され当該熱型赤外線検出部3の出力を読み出すためのMOSトランジスタ4とを有する複数の画素2が形成されている。ここで、MOSトランジスタ4は、ゲート電極46が水平信号線6に接続され、ソース電極48が感温部30を介して基準バイアス線5に接続され、各基準バイアス線5が共通基準バイアス線5aに共通接続され、ドレイン電極47が垂直読み出し線7に接続されており、各水平信号線6それぞれが各別の画素選択用パッドVselに電気的に接続され、各垂直読み出し線7それぞれが各別の出力用パッドVoutに電気的に接続され、共通グラウンド線9がグラウンド用パッドGndに電気的に接続され、共通基準バイアス線5aが基準バイアス用パッドVrefと電気的に接続され、シリコン基板1aが基板用パッドVddに電気的に接続されている。
しかして、MOSトランジスタ4が順次オン状態になるように各画素選択用パッドVselの電位を制御することで各画素2の出力電圧を順次読み出すことができる。例えば、基準バイアス用パッドVrefの電位を1.65、グラウンド用パッドGndの電位を0V、基板用パッドVddの電位を5Vとしておき、画素選択用パッドVselの電位を5Vとすれば、MOSトランジスタ4がオンとなり、出力用パッドVoutから画素2の出力電圧(1.65V+感温部30の出力電圧)が読み出され、画素選択用パッドVselの電位を0Vとすれば、MOSトランジスタ4がオフとなり、出力用パッドVoutから画素2の出力電圧は読み出されない。したがって、図3に示すように、赤外線センサAと、当該赤外線センサAの出力信号である出力電圧を信号処理する信号処理ICチップBと、赤外線センサAおよび信号処理ICチップBが実装されたパッケージCとを備えた赤外線センサモジュールを構成する場合、信号処理ICチップBには、図4に示すように、赤外線センサAの複数(図示例では、4つ)の出力用パッドVoutそれぞれがボンディングワイヤからなる配線80を介して各別に電気的に接続される複数(図示例では、4つ)の入力用パッドVin、入力用パッドVinの出力電圧を増幅する増幅回路AMP、複数の入力用パッドVinの出力電圧を択一的に増幅回路AMPに入力するマルチプレクサMUXなどを設ければ、赤外線画像を得ることができる。なお、上述のパッケージCは、一面開口した矩形箱状に形成されており、内底面に赤外線センサAおよび信号処理ICチップBが搭載され、赤外線センサAにおける熱型赤外線検出部3の後述の赤外線吸収部33へ赤外線を収束するレンズを備えたパッケージ蓋(図示せず)が覆着されている。
ところで、上述の赤外線センサモジュールでは、赤外線センサAのベース基板1は、外周形状が矩形状であり、感温部30から出力される出力信号を取り出す全ての出力用パッドVoutがベース基板1の外周縁の一辺に沿って並設され、信号処理ICチップBは、外周形状が矩形状であり、赤外線センサAの出力用パッドVoutに電気的に接続される全ての入力用パッドVinが信号処理ICチップBの外周縁の一辺に沿って並設されており、ベース基板1と信号処理ICチップBとの上記一辺同士が他の辺同士に比べて近くなるように赤外線センサAおよび信号処理ICチップBが配置されているので、赤外線センサAの出力用パッドVoutと信号処理ICチップBの入力用パッドVinとを接続する配線80を短くでき、外来ノイズの影響を低減できるから、耐ノイズ性が向上する。
以下、熱型赤外線検出部3およびMOSトランジスタ4それぞれの構造について説明する。なお、本実施形態では、上述のシリコン基板1aとして、導電形がn形で上記一表面が(100)面の単結晶シリコン基板を用いている。
熱型赤外線検出部3は、シリコン基板1aの上記一表面側の各画素2それぞれにおける熱型赤外線検出部3の形成用領域A1に形成されており、MOSトランジスタ4は、シリコン基板1aの上記一表面側の各画素2それぞれにおけるMOSトランジスタ4の形成用領域A2に形成されている。
熱型赤外線検出部3は、シリコン基板1aを基礎とするベース基板1の上記一表面側においてベース基板1と空間的に分離して形成され赤外線を吸収する赤外線吸収部33を有する薄膜構造部3aと、赤外線吸収部33とベース基板1とに跨って形成されたp形ポリシリコン層35、n形ポリシリコン層34、および赤外線吸収部33の赤外線入射面側(図1(b)の上面側)でp形ポリシリコン層35とn形ポリシリコン層34とを電気的に接合した接続部36で構成される熱電対を有し赤外線吸収部33とベース基板1との温度差を検出する熱電対型の感温部30とを備え、赤外線吸収部33の赤外線入射面側に、p形ポリシリコン層35およびn形ポリシリコン層34の形成時に赤外線吸収部33を保護し赤外線吸収部33の反りを抑制する補償ポリシリコン層39a,39bが形成されている。
ここで、図1(a)における右側の補償ポリシリコン層39aは、p形ポリシリコン層35と同じp形不純物(例えば、ボロンなど)を同じ濃度(例えば、1018〜1020cm−3)で含んでおり、p形ポリシリコン層35に連続一体に形成されている。また、図1(a)における左側の補償ポリシリコン層39bは、n形ポリシリコン層34と同じn形不純物(例えば、リンなど)を同じ濃度(例えば、1018〜1020cm−3)で含んでおり、n形ポリシリコン層34に連続一体に形成されている。以下では、導電形がp形の補償ポリシリコン層39aをp形補償ポリシリコン層と称し、導電形がn形の補償ポリシリコン層39bをn形補償ポリシリコン層と称することもある。本実施形態では、各補償ポリシリコン層39a,39bの不純物濃度が1018〜1020cm−3であり、p形ポリシリコン層35に連続一体に形成されたp形補償ポリシリコン層39aと、n形ポリシリコン層34に連続一体に形成されたn形補償ポリシリコン層39bとを有しているので、熱電対の抵抗値を低減でき、S/N比の向上を図れる。
ところで、本実施形態では、p形ポリシリコン層35、n形ポリシリコン層34および各補償ポリシリコン層39a,39bの屈折率をn1、検出対象の赤外線の中心波長をλとするとき、p形ポリシリコン層35、n形ポリシリコン層34および各補償ポリシリコン層39a,39bそれぞれの厚さt1をλ/4n1に設定するようにしているので、検出対象の波長(例えば、8〜12μm)の赤外線の吸収効率を高めることができ、高感度化を図れる。例えば、n1=3.6、λ=10μmの場合には、t1≒0.69μmとすればよい。
また、本実施形態では、各補償ポリシリコン層39a,39bの不純物濃度が1018〜1020cm−3であり、p形ポリシリコン層35、n形ポリシリコン層34それぞれが、p形補償ポリシリコン層39a、n形補償ポリシリコン層39bそれぞれと同じ不純物を同じ濃度で含んでおり、p形ポリシリコン層35およびn形ポリシリコン層34それぞれの不純物濃度が1018〜1020cm−3であるので、上記特許文献2に記載されているように赤外線の吸収率を高くしつつ赤外線の反射を抑制することができて、感温部30の出力のS/N比を高めることができ、また、p形補償ポリシリコン層39aをp形ポリシリコン層35と同一工程で形成でき、n形補償ポリシリコン層39bをn形ポリシリコン層34と同一工程で形成できるから、低コスト化を図れる。
上述の薄膜構造部3aは、ベース基板1と赤外線吸収部33とを連結するブリッジ部3bを有し、当該ブリッジ部3bは、赤外線吸収部33に対して2箇所で連結される一方で、ベース基板1に対して一箇所で連結されている。しかして、本実施形態では、ブリッジ部3bがベース基板1に対して一箇所で連結されていることにより、ベース基板1が外部からの応力や熱応力などで変形した場合であっても薄膜構造部3aが変形するのを抑制することができて感度の変化を抑制できるので、高精度化を図れる。ここで、ブリッジ部3bは、平面視コ字状であって両脚片の先端部が赤外線吸収部33に連結され赤外線吸収部33の外周縁に沿って配置された第1の連結片3b1と、当該第1の連結片3b1の中央片の中央部から赤外線吸収部33側とは反対側へ延長されベース基板1に連結された第2の連結片3b2とを有している。また、ベース基板1のうち平面視において薄膜構造部3aを囲む部位は矩形枠状の形状となっている。なお、ブリッジ部3bは、赤外線吸収部33およびベース基板1それぞれとの連結部位以外の部分が2つのスリット13により赤外線吸収部33およびベース基板1と空間的に分離されている。ここで、各スリット13の幅は、例えば、0.2μm〜5μm程度の範囲で適宜設定すればよい。また、本実施形態の赤外線センサAは、シリコン基板1aにおける各熱型赤外線検出部3それぞれに対応する部位ごとに熱絶縁用の空洞11が形成されている。
上述の薄膜構造部3aは、シリコン基板1aの上記一表面側に形成されたシリコン酸化膜1bと、当該シリコン酸化膜1b上に形成されたシリコン窒化膜32と、当該シリコン窒化膜32上に形成された熱電対型の感温部30と、シリコン窒化膜32の表面側で感温部30を覆うように形成されたBPSG膜からなる層間絶縁膜50と、層間絶縁膜50上に形成されたPSG膜と当該PSG膜上に形成されたNSG膜との積層膜からなるパッシベーション膜60との積層構造部をパターニングすることにより形成されている。
本実施形態では、シリコン窒化膜32のうち薄膜構造部3aのブリッジ部3b以外の部位が上述の赤外線吸収部33を構成し、シリコン基板1aとシリコン酸化膜1bとシリコン窒化膜32と層間絶縁膜50とパッシベーション膜60とでベース基板1を構成している。また、本実施形態では、層間絶縁膜50とパッシベーション膜60との積層膜が、熱型赤外線検出部3の形成用領域A1とMOSトランジスタ4の形成用領域A2とに跨って形成されているが、熱型赤外線検出部3の形成用領域A1に形成された部分が赤外線吸収膜70を兼ねている。ここで、赤外線吸収膜70の屈折率をn2、検出対象の赤外線の中心波長をλとするとき、赤外線吸収膜70の厚さt2をλ/4n2に設定するようにしているので、検出対象の波長(例えば、8〜12μm)の赤外線の吸収効率を高めることができ、高感度化を図れる。例えば、n2=1.4、λ=10μmの場合には、t2≒1.8μmとすればよい。なお、本実施形態では、層間絶縁膜50の膜厚を0.8μm(8000Å)、パッシベーション膜60の膜厚を1μm(PSG膜の膜厚を5000Å、NSG膜の膜厚を5000Å)としてある。また、赤外線吸収膜70は、上述の構成に限らず、例えば、シリコン窒化膜により構成してもよい。
熱電対型の感温部30は、上述のシリコン窒化膜32上に形成されたn形ポリシリコン層34とp形ポリシリコン層35とを有している。ここで、n形ポリシリコン層34およびp形ポリシリコン層35は、赤外線吸収部33とブリッジ部3bとベース基板1とに跨って形成されている。また、感温部30は、赤外線吸収部33の中央部の表面側でn形ポリシリコン層34の一端部とp形ポリシリコン層35の一端部とを電気的に接合した金属材料(例えば、Al−Siなど)からなる接続部36を備えており、n形ポリシリコン層34とp形ポリシリコン層35と接続部36とで熱電対を構成している。また、感温部30は、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35それぞれの他端部上に電極38a,38bが形成されている。
ここで、感温部30の接続部36と2つの電極38a,38bとは、ベース基板1の上記一表面側において上述の層間絶縁膜50により絶縁分離されている。すなわち、接続部36は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50a1,50a2を通して両ポリシリコン層34,35の上記各一端部と電気的に接続され、一方の電極38aは、層間絶縁膜50に形成されたコンタクトホール50bを通してn形ポリシリコン層34の上記他端部と電気的に接続され、他方の電極38bは、層間絶縁膜50に形成されたコンタクトホール50cを通してp形ポリシリコン層35の上記他端部と電気的に接続されている。
また、MOSトランジスタ4は、上述のように、シリコン基板1aの上記一表面側における各画素2それぞれにおけるMOSトランジスタ4の形成用領域A2に形成されている。ここで、MOSトランジスタ4は、シリコン基板1aの上記一表面側にp+形ウェル領域41が形成され、p+形ウェル領域41内に、n+形ドレイン領域43とn+形ソース領域44とが離間して形成されている。また、p+形ウェル領域41内には、n+形ドレイン領域43とn+形ソース領域44とを囲むp++形チャネルストッパ領域42が形成されている。また、p+形ウェル領域41においてn+形ドレイン領域43とn+形ソース領域44との間に位置する部位の上には、シリコン酸化膜(熱酸化膜)からなるゲート絶縁膜45を介してn形ポリシリコン層からなるゲート電極46が形成されている。また、n+形ドレイン領域43上には金属材料(例えば、Al−Siなど)からなるドレイン電極47が形成され、n+形ソース領域44上には金属材料(例えば、Al−Siなど)からなるソース電極48が形成されている。ここで、ゲート電極46、ドレイン電極47およびソース電極48は、上述の層間絶縁膜50により絶縁分離されている。すなわち、ドレイン電極47は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50dを通してn+形ドレイン領域43と電気的に接続され、ソース電極48は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50eを通してn+形ソース領域44と電気的に接続されている。
ところで、本実施形態の赤外線センサAの各画素2では、MOSトランジスタ4のソース電極48と感温部30の上記他方の電極38bとが電気的に接続され、感温部30の上記一方の電極38aが基準バイアス線5に連続一体に形成された金属配線(例えば、Al−Si配線)59を介して基準バイアス線5と電気的に接続されている。また、本実施形態の赤外線センサAの各画素2では、MOSトランジスタ4のドレイン電極47が垂直読み出し線7と電気的に接続され、ゲート電極46が当該ゲート電極46と連続一体に形成されたn形ポリシリコン配線からなる水平信号線6と電気的に接続されている。また、各画素2では、MOSトランジスタ4のp++形チャネルストッパ領域42上に金属材料(例えば、Al−Siなど)からなるグラウンド用電極49が形成されており、当該グラウンド用電極49が、当該p++形チャネルストッパ領域42をn+形ドレイン領域43およびn+形ソース領域44よりも低電位にバイアスして素子分離するための共通グラウンド線8と電気的に接続されている。なお、グラウンド用電極49は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50fを通してp++形チャネルストッパ領域42と電気的に接続されている。
以下、本実施形態の赤外線センサAの製造方法について図5および図6を参照しながら簡説明する。
まず、シリコン基板1aの上記一表面側に第1の所定膜厚(例えば、3000Å)の第1のシリコン酸化膜31と第2の所定膜厚(例えば、900Å)のシリコン窒化膜32との積層膜からなる絶縁層を形成する絶縁層形成工程を行い、その後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して当該絶縁層のうち熱型赤外線検出部3の形成用領域A1に対応する部分の一部を残してMOSトランジスタ4の形成用領域A2に対応する部分をエッチング除去する絶縁層パターニング工程を行うことによって、図5(a)に示す構造を得る。ここにおいて、シリコン酸化膜31は、シリコン基板1aを所定温度(例えば、1100℃)で熱酸化することにより形成し、シリコン窒化膜32は、LPCVD法により形成している。
上述の絶縁層パターニング工程の後、シリコン基板1aの上記一表面側にp+形ウェル領域41を形成するウェル領域形成工程を行い、続いて、シリコン基板1の上記一表面側におけるp+形ウェル領域41内にp++形チャネルストッパ領域42を形成するチャネルストッパ領域形成工程を行い、その後、p+形ウェル領域41におけるn+形ドレイン領域43およびn+形ソース領域44それぞれの形成予定領域にn形不純物(例えば、リンなど)のイオン注入を行ってからドライブを行うことによりn+形ドレイン領域43およびn+形ソース領域44を形成するソース・ドレイン形成工程を行うことによって、図5(b)に示す構造を得る。ここで、ウェル領域形成工程では、シリコン基板1の上記一表面側の露出部位を所定温度で熱酸化することにより第2のシリコン酸化膜(熱酸化膜)51を選択的に形成し、その後、p+形ウェル領域41を形成するためのマスクを利用したフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用してシリコン酸化膜51をパターニングし、続いて、p形不純物(例えば、ボロンなど)のイオン注入を行ってから、ドライブインを行うことにより、p+形ウェル領域41を形成する。また、チャネルストッパ領域形成工程では、シリコン基板1aの上記一表面側を所定温度で熱酸化することにより第3のシリコン酸化膜(熱酸化膜)52を選択的に形成し、その後、p++形チャネルストッパ領域42を形成するためのマスクを利用したフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用してシリコン酸化膜52をパターニングし、続いて、p形不純物(例えば、ボロンなど)のイオン注入を行ってから、ドライブインを行うことにより、p++形チャネルストッパ領域42を形成する。なお、第1のシリコン酸化膜31と第2のシリコン酸化膜51と第3のシリコン酸化膜52とでシリコン基板1aの上記一表面側のシリコン酸化膜1bを構成している。
上述のソース・ドレイン形成工程の後、シリコン基板1aの上記一表面側に熱酸化により所定膜厚(例えば、600Å)のシリコン酸化膜(熱酸化膜)からなるゲート絶縁膜45を形成するゲート絶縁膜形成工程を行い、続いて、シリコン基板1aの上記一表面側の全面にゲート電極46、水平信号線6(図1(a)参照)、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35および補償ポリシリコン層39a,39bの基礎となる所定膜厚(例えば、0.69μm)のノンドープポリシリコン層をLPCVD法により形成するポリシリコン層形成工程を行い、その後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して上記ノンドープポリシリコン層のうちゲート電極46、水平信号線6、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35および各補償ポリシリコン層39a,39bそれぞれに対応する部分が残るようにパターニングするポリシリコン層パターニング工程を行い、続いて、上記ノンドープポリシリコン層のうちp形ポリシリコン層35およびp形補償ポリシリコン層39aに対応する部分にp形不純物(例えば、ボロンなど)のイオン注入を行ってからドライブを行うことによりp形ポリシリコン層35およびp形補償ポリシリコン層39aを形成するp形ポリシリコン層形成工程を行い、その後、上記ノンドープポリシリコン層のうちn形ポリシリコン層34、n形補償ポリシリコン層39b、ゲート電極46および水平信号線6に対応する部分にn形不純物(例えば、リンなど)のイオン注入を行ってからドライブを行うことによりn形ポリシリコン層34、n形補償ポリシリコン層39b、ゲート電極46および水平信号線6を形成するn形ポリシリコン層形成工程を行うことによって、図5(c)に示す構造を得る。なお、p形ポリシリコン層形成工程とn形ポリシリコン層形成工程との順序は逆でもよい。
上述のp形ポリシリコン層形成工程およびn形ポリシリコン層形成工程が終了した後、シリコン基板1aの上記一表面側に層間絶縁膜50を形成する層間絶縁膜形成工程を行い、続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して層間絶縁膜50に上記各コンタクトホール50a1,50a2,50b,50c,50d,50e,50f(図1(a)参照)を形成するコンタクトホール形成工程を行うことによって、図5(d)に示す構造を得る。ここで、層間絶縁膜形成工程では、シリコン基板1aの上記一表面側に所定膜厚(例えば、8000Å)のBPSG膜をCVD法により堆積させてから、所定温度(例えば、800℃)でリフローすることにより平坦化された層間絶縁膜50を形成する。
上述のコンタクトホール形成工程の後、シリコン基板1aの上記一表面側の全面に接続部36、電極38a,38b、ドレイン電極47、ソース電極48、基準バイアス線5、金属配線59、垂直読み出し線7、グラウンド線8、共通グラウンド線9および各パッドVout,Vsel,Vref,Vdd,Gndの基礎となる所定膜厚(例えば、2μm)の金属膜(例えば、Al−Si膜)をスパッタ法などにより形成する金属膜形成工程を行い、続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して金属膜をパターニングすることで接続部36、電極38a,38b、ドレイン電極47、ソース電極48、基準バイアス線5、垂直読み出し線7、グラウンド線8、共通グラウンド線9および各パッドVout,Vsel,Vref,Vdd,Gndを形成する金属膜パターニング工程を行うことによって、図6(a)に示す構造を得る。なお、金属膜パターニング工程におけるエッチングはRIEにより行っている。
上述の金属膜パターニング工程の後、シリコン基板1aの上記一表面側(つまり、層間絶縁膜50の表面側)に所定膜厚(例えば、5000Å)のPSG膜と所定膜厚(例えば、5000Å)のNSG膜との積層膜からなるパッシベーション膜60をCVD法により形成するパッシベーション膜形成工程を行うことによって、図6(b)に示す構造を得る。なお、パッシベーション膜60は、PSG膜とNSG膜との積層膜に限らず、例えば、シリコン窒化膜でもよい。
上述のパッシベーション膜形成工程の後、シリコン酸化膜31とシリコン窒化膜32との積層膜からなる熱絶縁層と、当該熱絶縁層上に形成された感温部30と、熱絶縁層の表面側で感温部30を覆うように形成された層間絶縁膜50と、層間絶縁膜50上に形成されたパッシベーション膜60との積層構造部をパターニングすることにより上述の薄膜構造部3aを形成する積層構造部パターニング工程を行うことによって、図6(c)に示す構造を得る。なお、積層構造部パターニング工程では、積層構造部の厚み方向に貫通し赤外線吸収部33とベース基板1とを離間させる複数(本実施形態では、2つ)のスリット13(図1(a)参照)を形成することで薄膜構造部3aを形成している。
上述の積層構造部パターニング工程の後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して各パッドVout,Vsel,Vref,Vdd,Gndを露出させる開口部(図示せず)を形成する開口部形成工程を行い、続いて、上述の各スリット13をエッチング液導入孔としてエッチング液を導入してシリコン基板1aを異方性エッチングすることによりシリコン基板1aに空洞11を形成する空洞形成工程を行うことによって、図6(d)に示す構造の画素2が2次元アレイ状に配列された赤外線センサを得る。ここで、開口部形成工程におけるエッチングはRIEにより行っている。また、空洞形成工程では、エッチング液として所定温度(例えば、85℃)に加熱したTMAH溶液を用いているが、エッチング液はTMAH溶液に限らず、他のアルカリ系溶液(例えば、KOH溶液など)を用いてもよい。なお、空洞形成工程が終了するまでの全工程はウェハレベルで行うので、空洞形成工程が終了した後、個々の赤外線センサに分離する分離工程を行えばよい。また、上述の説明から分かるように、MOSトランジスタ4の製造方法に関してみれば、周知の一般的なMOSトランジスタの製造方法を採用しており、熱酸化による熱酸化膜の形成、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術による熱酸化膜のパターニング、不純物のイオン注入、ドライブイン(不純物の拡散)の基本工程を繰り返すことにより、p+形ウェル領域41、p++形チャネルストッパ領域42、n+形ドレイン領域43とn+形ソース領域44を形成している。
以上説明した本実施形態の赤外線センサAによれば、感温部30が、赤外線吸収部33とベース基板1とに跨って形成されたp形ポリシリコン層35、n形ポリシリコン層34、および赤外線吸収部33の赤外線入射面側でp形ポリシリコン層35とn形ポリシリコン層34とを電気的に接合した接続部36で構成される熱電対を有し赤外線吸収部33とベース基板1との温度差を検出する熱電対型の感温部なので、図14に示した構成のように感温部30”がボロメータ形の赤外線検出素子により構成されている場合に比べて低消費電力化を図れ、しかも、自己発熱による薄膜構造部3aの反りが生じることがない。また、本実施形態の赤外線センサAでは、上述のように、p形ポリシリコン層およびn形ポリシリコン層それぞれの不純物濃度が1018〜1020cm−3に設定され、p形ポリシリコン層35およびn形ポリシリコン層34の屈折率をn1、検出対象の赤外線の中心波長をλとするとき、p形ポリシリコン層35およびn形ポリシリコン層24それぞれの厚さがλ/4n1であるので、検出対象の赤外線の吸収効率を高めることができ、高感度化を図れる。
また、本実施形態の赤外線センサAは、p形ポリシリコン層35およびn形ポリシリコン層34におけるベース基板1側とは反対側に赤外線吸収膜70が形成されており、赤外線吸収膜70の屈折率をn2とするとき、赤外線吸収膜70の厚さが、λ/4n2に設定されているので、検出対象の赤外線の吸収効率をより高めることができ、より一層の高感度化を図れる。
また、本実施形態の赤外線センサAでは、p形ポリシリコン層35とn形ポリシリコン層34とが同一の厚さに設定されているので、製造時に、p形ポリシリコン層35およびn形ポリシリコン層34の基礎となるノンドープのポリシリコン層を単一の成膜工程(上述のポリシリコン層形成工程)で形成でき、低コスト化を図れる。
また、本実施形態の赤外線センサAでは、赤外線吸収部33の赤外線入射面側に、p形ポリシリコン層35およびn形ポリシリコン層34の形成時に赤外線吸収部33を保護し赤外線吸収部33cの反りを抑制する補償ポリシリコン層39a,39bが形成されているので、p形ポリシリコン層35およびn形ポリシリコン層34の形成時に赤外線吸収部33がエッチングされて薄くなるのを抑制する(ここでは、上述のポリシリコン層パターニング工程でp形ポリシリコン層35およびn形ポリシリコン層34の基礎となるノンドープポリシリコン層をエッチングする際のオーバーエッチング時に赤外線吸収部33がエッチングされて薄くなるのを抑制する)ことができるとともに薄膜構造部3aの応力バランスの均一性を高めることができ、赤外線吸収部33の薄膜化を図りながらも薄膜構造部3aの反りを防止することが可能となり、感度の向上を図れる。ここで、補償ポリシリコン層39a,39bは、当該補償ポリシリコン層39a,39bと感温部30とで赤外線吸収部33の略全面を覆うように形成することが好ましい。ただし、p形補償ポリシリコン層39aとn形補償ポリシリコン層39bとは直接接しないように電気的に絶縁分離する必要があり、また、上述の空洞形成工程において用いるエッチング液(例えば、TMAH溶液など)によりエッチングされるのを防止するため、スリット13の内側面に露出しないように平面視形状を設計する必要がある(平面視において赤外線吸収部33の外周部を覆わないようにする必要がある)。
また、本実施形態の赤外線センサAでは、p形ポリシリコン層35とn形ポリシリコン層34と補償ポリシリコン層39a,39bとが同一の厚さに設定されているので、薄膜構造部3aの応力バランスの均一性が向上し、赤外線吸収部33の反りを抑制することができる。また、本実施形態の赤外線センサAでは、薄膜構造部3aにおいてp形ポリシリコン層35とn形ポリシリコン層34と補償ポリシリコン層39a,39bとが同一平面上に形成されているので、薄膜構造部3aの応力バランスの均一性が向上し、赤外線吸収部33の反りを抑制することができる。
また、本実施形態の赤外線センサAは、各画素2ごとに感温部30の出力を読み出すためのMOSトランジスタ4を有しているので、出力用パッドVoutの数を少なくでき、小型化および低コスト化を図れる。
また、本実施形態の赤外線センサAでは、MOSトランジスタ4のゲート電極46を構成するポリシリコン層の厚さが、p形ポリシリコン層35およびn形ポリシリコン層34と同じ厚さに設定されているので、MOSトランジスタ4のゲート電極46とp形ポリシリコン層35またはn形ポリシリコン層34とを同時に形成することが可能となり、製造工程数の削減による低コスト化を図れる。ここで、MOSトランジスタ4のゲート電極46を構成するポリシリコン層が、p形ポリシリコン層35とn形ポリシリコン層34とのいずれか一方と同じ不純物を同じ濃度で含んでいるようにすれば、MOSトランジスタ4のゲート電極46とp形ポリシリコン層35またはn形ポリシリコン層34とを同時に形成することが可能となり、製造工程数の削減による低コスト化を図れる。なお、本実施形態では、ゲート電極46を構成するポリシリコン層がn形ポリシリコン層34と同じ不純物を同じ濃度で含んでいるが、n形ポリシリコン層34ではなく、p形ポリシリコン層35と同じ不純物を同じ濃度で含んでいるようにしてもよい。
また、本実施形態の赤外線センサAでは、MOSトランジスタ4のゲート電極36を構成するポリシリコン層であるn形ポリシリコン層の厚さがn形補償ポリシリコン層39bと同じ厚さに設定されているので、MOSトランジスタ4のゲート電極36とn形補償ポリシリコン層39bとを同時に形成することが可能となり、製造工程数の削減による低コスト化を図れる。
(実施形態2)
本実施形態の赤外線センサAの基本構成は実施形態1と略同じであって、図7に示すように、熱電対型の感温部30が、n形ポリシリコン層34とp形ポリシリコン層35と接続部36とで構成される4つの熱電対を直列接続したサーモパイルにより構成されている点、各画素2に、実施形態1にて説明したMOSトランジスタ4を設けていない点などが相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
感温部30は、ベース基板1の上記一表面側で互いに隣り合う熱電対のp形ポリシリコン層34の他端部とn形ポリシリコン層35の他端部とが金属材料(例えば、Al−Siなど)からなる接続部37により接合され電気的に接続されている。
ここで、感温部30を構成するサーモパイルは、n形ポリシリコン層34の上記一端部とp形ポリシリコン層35の上記一端部と接続部36とで赤外線吸収部33側の温接点を構成し、p形ポリシリコン層34の上記他端部とn形ポリシリコン層35の上記他端部と接続部37とでベース基板1側の冷接点を構成している。
また、本実施形態の赤外線センサの製造方法は実施形態1と略同じであり、シリコン酸化膜31とシリコン窒化膜32との積層膜からなる熱絶縁層と、当該熱絶縁層上に形成された感温部30と、熱絶縁層の表面側で感温部30を覆うように形成された層間絶縁膜50と、層間絶縁膜50上に形成されたパッシベーション膜60との積層構造部をパターニングすることにより上述の薄膜構造部3aを形成する積層構造部パターニング工程において、シリコン基板1aにおける空洞11の形成予定領域の投影領域の四隅に、積層構造部の厚み方向に貫通する4つの矩形状のスリット14を形成することで薄膜構造部3aを形成し、空洞形成工程において、4つのスリット14をエッチング液の導入孔として利用する。なお、本実施形態の赤外線センサAは、上述のようにMOSトランジスタ4を備えておらず、実施形態1にて説明した第1のシリコン酸化膜31のみでシリコン酸化膜1bが構成されている。
また、本実施形態の赤外線センサAは、図7および図8に示すように、各感温部30それぞれの一端が各別に接続された複数(図示例では、4つ)の出力用パッドVoutと、各列の複数(図示例では、2つ)の熱型赤外線検出部3の感温部30の他端が共通接続された1個の基準バイアス用パッドVrefとを備えており、全ての熱型赤外線検出部3の出力を時系列的に読み出すことができるようになっている。なお、サーモパイルからなる感温部30は、一端が垂直読み出し線7を介して出力用パッドVoutと電気的に接続され、他端が基準バイアス用パッドVrefに接続された共通基準バイアス線5aに基準バイアス線5を介して電気的と接続されている。
ここで、例えば、基準バイアス用パッドVrefの電位を1.65Vとしておけば、出力用パッドVoutからは画素2の出力電圧(1.65V+感温部30の出力電圧)が読み出される。したがって、図9に示すように、赤外線センサAと、当該赤外線センサAの出力信号である出力電圧を信号処理する信号処理ICチップBと、赤外線センサAおよび信号処理ICチップBが実装されたパッケージCとを備えた赤外線センサモジュールを構成する場合、信号処理ICチップBには、図10に示すように、赤外線センサAの複数(図示例では、4つ)の出力用パッドVoutそれぞれがボンディングワイヤからなる配線80を介して各別に電気的に接続される複数(図示例では、4つ)の入力用パッドVin、赤外線センサAの基準バイアス用パッドVrefへ基準電圧を与えるためのパッドVref’、入力用パッドVinの出力電圧を増幅する増幅回路AMP、複数の入力用パッドVinの出力電圧を択一的に増幅回路AMPに入力するマルチプレクサMUXなどを設ければ、赤外線画像を得ることができる。
(実施形態3)
本実施形態の赤外線センサの基本構成は実施形態2と略同じであって、図11に示すように、熱電対型の感温部30が、n形ポリシリコン層34とp形ポリシリコン層35と接続部36とで構成される2つの熱電対を直列接続したサーモパイルにより構成されている点、薄膜構造部3aが2つのブリッジ部3bによりベース基板1と連結されている点が相違する。他の構成は実施形態2と同様なので説明を省略する。
(実施形態4)
本実施形態の赤外線センサの基本構成は実施形態2と略同じであって、図12に示すように、空洞11をシリコン基板1aの厚み方向に貫通するように形成することで薄膜構造部3aがダイヤフラム状に形成されている点が相違する。他の構成は実施形態2と同様なので説明を省略する。
ところで、上記各実施形態1〜4では赤外線センサAとして、画素2が2次元アレイ状に配列されている赤外線イメージセンサを例示したが、赤外線センサAは熱型赤外線検出部3を1つだけ備えたものでもよい。