JP2012037394A - 赤外線センサの製造方法 - Google Patents

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洋右 萩原
Koji Tsuji
幸司 辻
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直樹 牛山
Ryuhei Sakamoto
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Abstract

【課題】サーモパイルの抵抗のばらつきを小さくすることが可能な赤外線センサの製造方法を提供する。
【解決手段】サーモパイル30aにおけるp形ポリシリコン層35およびn形ポリシリコン層34の基礎となるノンドープのポリシリコン層を形成した後、p形不純物およびn形不純物それぞれを上記ポリシリコン層の互いに異なる所定部位にイオン注入してp形ポリシリコン層35およびn形ポリシリコン層34を形成するようにし、p形ポリシリコン層35を形成するためのp形不純物のイオン注入を行う際のイオン注入量を、p形ポリシリコン層35のドーピング濃度が固溶限となるイオン注入量よりも高く設定し、かつ、n形ポリシリコン層34を形成するためのn形不純物のイオン注入を行う際のイオン注入量を、n形ポリシリコン層34のドーピング濃度が固溶限となるイオン注入量よりも高く設定する。
【選択図】図1

Description

本発明は、赤外線センサの製造方法に関するものである。
従来から、図20および図21に示す構成の赤外線センサA’が提案されている(特許文献1)。この赤外線センサA’は、赤外線を吸収する赤外線吸収部33’の温度変化に応じた出力電圧を発生する熱電対型の感温部30’を具備する熱型赤外線検出部3’とMOSトランジスタ4’とを有する画素部2’を備えている。また、この赤外線センサA’は、a×b個(図21の例では、4×4個)の画素部2’が、ベース基板201の一表面側において2次元アレイ状に配置されている。ここで、ベース基板201は、n形のシリコン基板201aを用いて形成されている。なお、図21(b)では、感温部30’の等価回路を、当該熱電対型の感温部30’の熱起電力に対応する電圧源で表してある。
上述の感温部30’は、熱電対の2種類の熱電要素として、p形ポリシリコン層35’とn形ポリシリコン層34’とを備えており、p形ポリシリコン層35’のp形不純物(例えば、ボロン)の濃度およびn形ポリシリコン層34’のn形不純物(例えば、リン)の濃度それぞれを、1018〜1020cm−3とすることが記載されている。なお、特許文献1には、熱電対型の感温部30’をサーモパイルにより構成することも記載されている。
また、MOSトランジスタ4’は、シリコン基板201aの上記一表面側にp形(p)のウェル領域41が形成され、ウェル領域41内に、n形(n)のドレイン領域43とn形(n)のソース領域44とが離間して形成されている。また、ウェル領域41内には、ドレイン領域43とソース領域44とを囲むp形(p++)のチャネルストッパ領域42が形成されている。ウェル領域41においてドレイン領域43とソース領域44との間に位置する部位の上には、シリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜45を介してn形のポリシリコン層からなるゲート電極46が形成されている。また、MOSトランジスタ4’は、チャネルストッパ領域42上にグラウンド用電極49が形成されている。
上述の赤外線センサA’は、各列の複数の熱型赤外線検出部3’の感温部30’の一端がMOSトランジスタ4’を介して各列ごとに共通接続された複数の垂直読み出し線207と、各行の熱型赤外線検出部3’の感温部30’に対応するMOSトランジスタ4’のゲート電極46が各行ごとに共通接続された複数の水平信号線206とを備えている。また、赤外線センサA’は、各列のMOSトランジスタ4’のウェル領域41が各列ごとに共通接続された複数のグラウンド線208と、各グラウンド線208が共通接続された共通グラウンド線209と、各列の複数個の熱型赤外線検出部3’の感温部30’の他端が各列ごとに共通接続された複数の基準バイアス線205とを備えている。
また、赤外線センサA’は、各水平信号線206それぞれが、各別の画素選択用のパッドVselに電気的に接続され、各垂直読み出し線207それぞれが、各別の出力用のパッドVoutに電気的に接続されている。
さらに、赤外線センサA’は、共通グラウンド線209が、グラウンド用のパッドGndに電気的に接続され、共通基準バイアス線205aが、基準バイアス用のパッドVrefと電気的に接続され、シリコン基板201aが基板用のパッドVddに電気的に接続されている。
しかして、MOSトランジスタ4’が順次オン状態になるように各画素選択用のパッドVselの電位を制御することで各画素部2’の出力電圧を順次読み出すことができる。
ここで、特許文献1には、基準バイアス用のパッドVrefの電位を1.65V、グラウンド用のパッドGndの電位を0V、基板用のパッドVddの電位を5Vとしておき、画素選択用のパッドVselの電位を5Vとすれば、MOSトランジスタ4’がオンとなり、出力用のパッドVoutから画素部2’の出力電圧(1.65V+感温部30’の出力電圧)が読み出され、画素選択用のパッドVselの電位を0Vとすれば、MOSトランジスタ4’がオフとなり、出力用のパッドVoutから画素部2’の出力電圧は読み出されないことが記載されている。
また、特許文献1には、図22に示すように、赤外線センサA’と、当該赤外線センサA’の出力信号である出力電圧を信号処理する信号処理ICチップB’と、赤外線センサA’および信号処理ICチップB’が実装されたパッケージC’とを備えた赤外線センサモジュールが記載されている。ここで、特許文献1には、信号処理ICチップB’に、図23に示すように、赤外線センサA’の複数(図示例では、4つ)の出力用のパッドVoutそれぞれがボンディングワイヤからなる配線80を介して各別に電気的に接続される複数(図示例では、4つ)の入力用のパッドVin、入力用のパッドVinの出力電圧を増幅する増幅回路AMP、複数の入力用のパッドVinの出力電圧を択一的に増幅回路AMPに入力するマルチプレクサMUXなどを設ければ、赤外線画像を得ることができることが記載されている。
特開2010−78451号公報
ところで、上述のような赤外線センサモジュールの製造にあたっては、温度分解能のばらつきを小さくすることが望ましい。
ここで、上述の赤外線センサモジュールの全体のノイズをNtotal〔V〕、赤外線センサモジュールの温度分解能をNETD〔℃〕、感温部30’の出力電圧をVAC〔V/℃〕とすると、
NETD=Ntotal/VAC〔℃〕 (式1)
となる。
ここにおいて、赤外線センサモジュールの1/fノイズをN1/f〔V〕、赤外線センサA’の熱ノイズをNTh〔V〕、外来ノイズをNEMS〔V〕、赤外線センサA’以外(信号処理ICチップB’、パッケージC’など)からの熱ノイズや外部からの光ノイズを合わせたノイズをNT&E〔V〕とすると、
total=(N1/f+NTh+NEMS+NT&E1/2〔V〕 (式2)
となる。
また、上述の赤外線センサA’において信号読み出し時に直列接続される感温部30’の抵抗とMOSトランジスタ4’のオン抵抗との直列接続の合成抵抗をR12〔Ω〕とすると、Nth∝R12 1/2〔V〕となる。すなわち、赤外線センサA’の熱ノイズは、感温部30’の抵抗をR1、MOSトランジスタ4’のオン抵抗をR2とすると、抵抗R1とオン抵抗R2との直列接続の合成抵抗R12の平方根に比例する。
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、サーモパイルの抵抗のばらつきを小さくすることが可能な赤外線センサの製造方法を提供することにある。
本発明の赤外線センサの製造方法は、半導体基板と、サーモパイルにより構成される感温部を具備し半導体基板の一表面側に形成されて前記半導体基板に支持された熱型赤外線検出部とを備え、サーモパイルの熱電対の2種類の熱電要素が、p形ポリシリコン層とn形ポリシリコン層とである赤外線センサの製造方法であって、前記サーモパイルの前記p形ポリシリコン層および前記n形ポリシリコン層の形成にあたっては、前記p形ポリシリコン層および前記n形ポリシリコン層の基礎となるノンドープのポリシリコン層を形成した後、前記ポリシリコン層に対してp形不純物およびn形不純物それぞれを前記ポリシリコン層の互いに異なる所定部位にイオン注入して前記p形ポリシリコン層および前記n形ポリシリコン層を形成するようにし、前記p形ポリシリコン層を形成するための前記p形不純物のイオン注入を行う際のイオン注入量を、前記p形ポリシリコン層のドーピング濃度が固溶限となるイオン注入量よりも高く設定し、かつ、前記n形ポリシリコン層を形成するための前記n形不純物のイオン注入を行う際のイオン注入量を、前記n形ポリシリコン層のドーピング濃度が固溶限となるイオン注入量よりも高く設定することを特徴とする。
また、本発明の赤外線センサの製造方法は、半導体基板と、サーモパイルにより構成される感温部を具備し半導体基板の一表面側に形成されて前記半導体基板に支持された熱型赤外線検出部とを備え、サーモパイルの熱電対の2種類の熱電要素が、p形ポリシリコン層とn形ポリシリコン層とである赤外線センサの製造方法であって、前記サーモパイルの前記p形ポリシリコン層および前記n形ポリシリコン層の形成にあたっては、前記p形ポリシリコン層および前記n形ポリシリコン層の基礎となるノンドープのポリシリコン層を成膜した後、前記ポリシリコン層に対してp形不純物およびn形不純物それぞれを前記ポリシリコン層の互いに異なる所定部位にイオン注入する前に、前記ポリシリコン層の結晶粒径を大きくさせて以後の製造工程での前記結晶粒径の変化を抑制可能な熱処理条件で前記ポリシリコン層のアニールを行うことを特徴とする。
本発明の赤外線センサの製造方法においては、サーモパイルの抵抗のばらつきを小さくすることが可能となる。
実施形態1の赤外線センサに関し、(a)は要部概略断面図、(b)は製造方法の説明図である。 同上における赤外線センサの平面レイアウト図である。 同上における赤外線センサの画素部の平面レイアウト図である。 同上における赤外線センサの画素部の平面レイアウト図である。 同上における赤外線センサの画素部の要部を示す平面レイアウト図である。 同上における赤外線センサの画素部の要部の平面レイアウト図である。 同上における赤外線センサの画素部の要部の平面レイアウト図である。 同上における赤外線センサの画素部の要部を示し、(a)は平面レイアウト図、(b)は(a)のD−D’断面に対応する概略断面図である。 同上における赤外線センサの冷接点を含む要部を示し、(a)は平面レイアウト図、(b)は概略断面図である。 同上における赤外線センサの温接点を含む要部を示し、(a)は平面レイアウト図、(b)は概略断面図である。 同上における赤外線センサの画素部の要部の概略断面図である。 同上における赤外線センサの画素部の要部の概略断面図である。 同上における赤外線センサの要部説明図である。 同上における赤外線センサの等価回路図である。 同上における赤外線センサモジュールの概略断面図である。 同上における赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。 同上における赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。 同上における赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。 同上における赤外線センサの製造方法を説明するための主要工程断面図である。 従来例における赤外線センサを示し、(a)は画素部の平面レイアウト図、(b)は(a)のD−D’断面に対応する概略断面図、(c)は(a)のE−E’断面に対応する概略断面図である。 同上を示し、(a)は平面レイアウト図、(b)は等価回路図である。 同上の赤外線センサを備えた赤外線センサモジュールの要部概略平面図である。 同上の赤外線センサを備えた赤外線センサモジュールの要部説明図である。
(実施形態1)
以下、図1〜図15に基づいて本実施形態における赤外線センサ100について説明してから、その製造方法について説明する。なお、図1(a)は、図5のD−D’断面に対応する概略断面図である。
赤外線センサ100は、熱型赤外線検出部3と画素選択用のスイッチング素子であるMOSトランジスタ4とを有する複数の画素部2が、半導体基板1の上記一表面側においてアレイ状(ここでは、2次元アレイ状)に配列されている(図2参照)。本実施形態では、1つの半導体基板1の上記一表面側にm×n個(図2に示した例では、8×8個)の画素部2が形成されているが、画素部2の数や配列は特に限定するものではない。また、本実施形態では、熱型赤外線検出部3の感温部30が、複数個(ここでは、6個)のサーモパイル30a(図3参照)を直列接続することにより構成されている。図14では、熱型赤外線検出部3における感温部30の等価回路を、当該感温部30の熱起電力に対応する電圧源で表してある。
また、赤外線センサ100は、図3、図5および図14に示すように、各列の複数の熱型赤外線検出部3の感温部30の一端が上述のMOSトランジスタ4を介して各列ごとに共通接続された複数の垂直読み出し線(第1の配線)7と、各行の熱型赤外線検出部3の感温部30に対応するMOSトランジスタ4のゲート電極46が各行ごとに共通接続された複数の水平信号線(第2の配線)6とを備えている。また、赤外線センサ100は、各列のMOSトランジスタ4のp形(p)のウェル領域41が各列ごとに共通接続された複数のグラウンド線(第3の配線)8と、各グラウンド線8が共通接続された共通グラウンド線9(第4の配線)とを備えている。さらに、赤外線センサ100は、各列の複数個の熱型赤外線検出部3の感温部30の他端が各列ごとに共通接続された複数の基準バイアス線(第5の配線)5を備えている。しかして、赤外線センサ100は、全ての熱型赤外線検出部3の感温部30の出力を時系列的に読み出すことができるようになっている。要するに、赤外線センサ100は、半導体基板1の上記一表面側に熱型赤外線検出部3と当該熱型赤外線検出部3に並設され当該熱型赤外線検出部3の出力を読み出すためのMOSトランジスタ4とを有する複数の画素部2が形成されている。
ここで、MOSトランジスタ4は、ゲート電極46が水平信号線6に接続され、ソース電極48が感温部30を介して基準バイアス線5に接続され、ドレイン電極47が垂直読み出し線7に接続されている。ここで、各水平信号線6それぞれは、各別の画素選択用のパッドVselに電気的に接続され、各基準バイアス線5は、共通基準バイアス線5aに共通接続され、各垂直読み出し線7それぞれは、各別の出力用のパッドVoutに電気的に接続されている。また、共通グラウンド線9は、グラウンド用のパッドGndに電気的に接続され、共通基準バイアス線5aは、基準バイアス用のパッドVrefと電気的に接続され、半導体基板1は、基板用のパッドVddに電気的に接続されている。
しかして、MOSトランジスタ4が、順次、オン状態になるように各画素選択用のパッドVselの電位を制御することで各画素部2の出力電圧を順次読み出すことができる。例えば、基準バイアス用のパッドVrefの電位を1.65V、グラウンド用のパッドGndの電位を0V、基板用のパッドVddの電位を5Vとしておき、画素選択用のパッドVselの電位を5Vとすれば、MOSトランジスタ4がオンとなり、出力用のパッドVoutから画素部2の出力電圧(1.65V+感温部30の出力電圧)が読み出される。また、画素選択用のパッドVselの電位を0Vとすれば、MOSトランジスタ4がオフとなり、出力用のパッドVoutから画素部2の出力電圧は読み出されない。なお、図2では、図14における画素選択用のパッドVsel、基準バイアス用のパッドVref、グラウンド用のパッドGnd、出力用のパッドVoutなどを区別せずに、全てパッド80として図示してある。
以下、熱型赤外線検出部3およびMOSトランジスタ4それぞれの構造について説明する。なお、本実施形態では、上述の半導体基板1として、導電形がn形で上記一表面が(100)面の単結晶のシリコン基板を用いている。
各画素部2の熱型赤外線検出部3は、半導体基板1の上記一表面側において熱型赤外線検出部3の形成用領域A1(図1(a)、図5参照)に形成されている。また、各画素部2のMOSトランジスタ4は、半導体基板1の上記一表面側においてMOSトランジスタ4の形成用領域A2(図1(a)、図5参照)に形成されている。
赤外線センサ100は、半導体基板1の上記一表面側において熱型赤外線検出部3の一部の直下に空洞部11が形成されている。熱型赤外線検出部3は、半導体基板1の上記一表面側で空洞部11の周部に形成された支持部3dと、半導体基板1の上記一表面側で平面視において空洞部11を覆う第1の薄膜構造部3aとを備えている。第1の薄膜構造部3aは、赤外線を吸収する赤外線吸収部33を備えている。ここで、第1の薄膜構造部3aは、空洞部11の周方向に沿って並設され支持部3dに支持された複数の第2の薄膜構造部3aaと、隣接する第2の薄膜構造部3aa同士を連結する連結片3cとを有している。なお、図3の例の熱型赤外線検出部3では、複数の線状のスリット13を設けることにより、第1の薄膜構造部3aが6つの第2の薄膜構造部3aaに分離されている。以下では、赤外線吸収部33(第1の赤外線吸収部33と称する)のうち第2の薄膜構造部3aaそれぞれに対応して分割された各部位を第2の赤外線吸収部33aと称する。
熱型赤外線検出部3は、第2の薄膜構造部3aaごとにサーモパイル30aが設けられている。ここで、サーモパイル30aは、温接点T1が、第2の薄膜構造部3aaに設けられ、冷接点T2が、支持部3dに設けられている。要するに、温接点T1は、熱型赤外線検出部3において空洞部11に重なる第1の領域に形成され、冷接点T2は、熱型赤外線検出部3において空洞部11に重ならない第2の領域に形成されている。
また、熱型赤外線検出部3の感温部30は、各サーモパイル30aごとに出力を取り出す場合に比べて温度変化に対する出力変化が大きくなる接続関係で、全てのサーモパイル30aが電気的に接続されている。図3の例では、感温部30は、6個のサーモパイル30aを直列接続してある。ただし、上述の接続関係は、複数個のサーモパイル30aの全てを直列接続する接続関係に限らない。例えば、それぞれ3個のサーモパイル30aの直列回路を並列接続すれば、6個のサーモパイル30aが並列接続されている場合や、各サーモパイル30aごとに出力を取り出す場合に比べて、感度を高めることができる。また、6個のサーモパイル30aの全てが直列接続されている場合に比べて、感温部30の電気抵抗を低くできて熱雑音が低減されるから、S/N比が向上する。
ここで、熱型赤外線検出部3では、第2の薄膜構造部3aaごとに、支持部3dと第2の赤外線吸収部33aとを連結する2つの平面視短冊状のブリッジ部3bb,3bbが空洞部11の周方向に離間して形成されている。これにより、2つのブリッジ部3bb,3bbと第2の赤外線吸収部33aとを空間的に分離し空洞部11に連通する平面視コ字状のスリット14が形成されている。熱型赤外線検出部3のうち、平面視において第1の薄膜構造部3aを囲む部位である支持部3dは、矩形枠状の形状となっている。なお、ブリッジ部3bbは、上述の各スリット13,14により、第2の赤外線吸収部33aおよび支持部3dそれぞれとの連結部位以外の部分が、第2の赤外線吸収部33aおよび支持部3dと空間的に分離されている。ここで、第2の薄膜構造部3aaは、支持部3dからの延長方向の寸法を93μm、この延長方向に直交する幅方向の寸法を75μmとし、各ブリッジ部3bbの幅寸法を23μm、各スリット13,14の幅を5μmに設定してあるが、これらの値は一例であって特に限定するものではない。
第1の薄膜構造部3aは、半導体基板1の上記一表面側に形成されたシリコン酸化膜1bと、当該シリコン酸化膜1b上に形成されたシリコン窒化膜32と、当該シリコン窒化膜32上に形成された感温部30と、シリコン窒化膜32の表面側で感温部30を覆うように形成された層間絶縁膜50と、層間絶縁膜50上に形成されたパッシベーション膜60との積層構造部をパターニングすることにより形成されている。層間絶縁膜50は、BPSG膜により構成してある。また、パッシベーション膜60は、PSG膜と当該PSG膜上に形成されたNSG膜との積層膜により構成してあるが、これに限らず、例えば、シリコン窒化膜により構成してもよい。
上述の熱型赤外線検出部3では、シリコン窒化膜32のうち第1の薄膜構造部3aのブリッジ部3bb,3bb以外の部位が第1の赤外線吸収部33を構成している。また、支持部3dは、シリコン酸化膜1bとシリコン窒化膜32と層間絶縁膜50とパッシベーション膜60とで構成されている。
また、赤外線センサ100は、層間絶縁膜50とパッシベーション膜60との積層膜が、半導体基板1の上記一表面側において、熱型赤外線検出部3の形成用領域A1とMOSトランジスタ4の形成用領域A2とに跨って形成されており、この積層膜のうち、熱型赤外線検出部3の形成用領域A1に形成された部分が赤外線吸収膜70(図1(a)参照)を兼ねている。ここで、赤外線吸収膜70の屈折率をn、検出対象の赤外線の中心波長をλとするとき、赤外線吸収膜70の厚さt2をλ/4nに設定するようにしているので、検出対象の波長(例えば、8〜12μm)の赤外線の吸収効率を高めることができ、高感度化を図れる。例えば、n=1.4、λ=10μmの場合には、t2≒1.8μmとすればよい。なお、本実施形態では、層間絶縁膜50の膜厚を0.8μm、パッシベーション膜60の膜厚を1μm(PSG膜の膜厚を0.5μm、NSG膜の膜厚を0.5μm)としてある。
また、各画素部2では、空洞部11の内周形状が矩形状であり、連結片3cは、平面視X字状に形成されており、第2の薄膜構造部3aaの延長方向に交差する斜め方向において隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士、第2の薄膜構造部3aaの延長方向において隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士、第2の薄膜構造部3aaの延長方向に直交する方向において隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士を連結している。
サーモパイル30aは、シリコン窒化膜32上で第2の薄膜構造部3aaと支持部3dとに跨って形成されたn形ポリシリコン層34とp形ポリシリコン層35との一端部同士を第2の赤外線吸収部33aの赤外線入射面側で金属材料(例えば、Al−Siなど)からなる接続部36により電気的に接続した複数個(図3に示した例では、9個)の熱電対を有している。また、サーモパイル30aは、半導体基板1の上記一表面側で互いに隣り合う熱電対のn形ポリシリコン層34の他端部とp形ポリシリコン層35の他端部とが金属材料(例えば、Al−Siなど)からなる接続部37により接合され電気的に接続されている。ここで、サーモパイル30aは、n形ポリシリコン層34の上記一端部とp形ポリシリコン層35の上記一端部と接続部36とで温接点T1を構成している。また、n形ポリシリコン層34の上記他端部とp形ポリシリコン層35の上記他端部と接続部37とで冷接点T2を構成している。要するに、サーモパイル30aの各温接点T1は、熱型赤外線検出部3において空洞部11に重なる領域に形成され、各冷接点T2は、熱型赤外線検出部3において空洞部11に重ならない領域に形成されている。上述の説明から分かるように、サーモパイル30aは、熱電対の2種類の熱電要素として、p形ポリシリコン層35とn形ポリシリコン層34とを備えている。なお、本実施形態における赤外線センサ100では、サーモパイル30aの各n形ポリシリコン層34および各p形ポリシリコン層35それぞれにおいて、上述のブリッジ部3bb,3bbに形成されている部位および半導体基板1の上記一表面側のシリコン窒化膜32上に形成されている部位でも赤外線を吸収することができる。
また、赤外線センサ100は、空洞部11の形状が、四角錘状であり、平面視における中央部の方が周部に比べて深さ寸法が大きくなっているので、第1の薄膜構造部3aの中央部に温接点T1が集まるように各画素部2におけるサーモパイル30aの平面レイアウトを設計してある。すなわち、図3の上下方向における真ん中の2つの第2の薄膜構造部3aaでは、図3および図6に示すように、3つの第2の薄膜構造部3aaの並設方向に沿って温接点T1を並べて配置してあるのに対し、当該上下方向における上側の2つの第2の薄膜構造部3aaでは、図3および図7に示すように、3つの第2の薄膜構造部3aaの並設方向において真ん中の第2の薄膜構造部3aaに近い側に温接点T1を集中して配置してあり、当該上下方向における下側の2つの第2の薄膜構造部3aaでは、図3に示すように、3つの第2の薄膜構造部3aaの並設方向において真ん中の第2の薄膜構造部3aaに近い側に温接点T1を集中して配置してある。しかして、本実施形態における赤外線センサ100では、図3の上下方向における上側、下側の第2の薄膜構造部3aaの複数の温接点T1の配置が、真ん中の第2の薄膜構造部3aaの複数の温接点T1の配置と同じである場合に比べて、温接点T1の温度変化を大きくできるので、感度を向上できる。なお、本実施形態では、空洞部11の最深部の深さを所定深さdp(図1(a)参照)とするとき、所定深さdpを200μmに設定してあるが、この値は一例であり、特に限定するものではない。
また、第2の薄膜構造部3aaは、シリコン窒化膜32の赤外線入射面側においてサーモパイル30aを形成していない領域に、第2の薄膜構造部3aaの反りを抑制するとともに赤外線を吸収するn形ポリシリコン層からなる赤外線吸収層39が形成されている。また、隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士を連結する連結片3cには、当該連結片3cを補強するn形ポリシリコン層からなる補強層39b(図8参照)が設けられている。ここで、補強層39bは、赤外線吸収層39と連続一体に形成されている。しかして、赤外線センサ100では、連結片3cが補強層39bにより補強されているので、使用中の外部の温度変化や衝撃に起因して発生する応力による破損を防止でき、また、製造時の破損を低減でき、製造歩留まりの向上を図れる。なお、本実施形態では、図8に示す連結片3cの長さ寸法L1を24μm、幅寸法L2を5μm、補強層39bの幅寸法L3を1μmに設定してあるが、これらの数値は一例であり、特に限定するものではない。ただし、本実施形態のように半導体基板1としてシリコン基板を用いており、補強層39bがn形ポリシリコン層により形成される場合には、空洞部11の形成時に補強層39bがエッチングされるのを防止するために、補強層39bの幅寸法は、連結片3cの幅寸法よりも小さく設定し、平面視において補強層39bの両側縁が連結片3cの両側縁よりも内側に位置する必要がある。
また、赤外線センサ100は、図8および図13(b)に示すように、連結片3cの両側縁と第2の薄膜構造部3aaの側縁との間にそれぞれ面取り部3d,3dが形成され、X字状の連結片3cの略直交する側縁間にも面取り部3eが形成されている。しかして、赤外線センサ100では、図13(a)に示すように面取り部が形成されていない場合に比べて、連結片3cと第2の薄膜構造部3aaとの連結部位での応力集中を緩和でき、製造時に発生する残留応力を低減できるとともに製造時の破損を低減でき、製造歩留まりの向上を図れる。また、使用中の外部の温度変化や衝撃に起因して発生する応力による破損を防止できる。なお、図8に示した例では、各面取り部3d,3eをR(アール)が3μmのR面取り部としてあるが、R面取り部に限らず、例えば、C面取り部としてもよい。
また、赤外線センサ100は、各熱型赤外線検出部3に、支持部3dと一方のブリッジ部3bbと第2の赤外線吸収部33aと他方のブリッジ部3bbと支持部3dとに跨るように引き回されたn形ポリシリコン層からなる故障診断用の配線(以下、故障診断用配線と称する)139を設けて、全ての故障診断用配線139を直列接続してある。しかして、m×n個の故障診断用配線139の直列回路へ通電することで、ブリッジ部3bbの折れなどの破損の有無を検出することができる。
要するに、赤外線センサ100は、製造途中での検査時や使用時において、m×n個の故障診断用配線139の直列回路への通電の有無によって、ブリッジ部3bbの折れや故障診断用配線139の断線などを検出することができる。また、赤外線センサ100では、上述の検査時や使用時において、m×n個の故障診断用配線139の直列回路へ通電して各感温部30の出力を検出することにより、感温部30の断線の有無や感度のばらつき(感温部30の出力のばらつき)などを検知することが可能となる。ここにおいて、感度のばらつきに関しては、画素部2ごとの感度のばらつきを検知することが可能であり、例えば、第1の薄膜構造部3aの反りや第1の薄膜構造部3aの半導体基板1へのスティッキングなどに起因した感度のばらつきを検知することが可能となる。ここで、本実施形態における赤外線センサ100では、平面視において、故障診断用配線139を複数の温接点T1の群の付近において折り返され蛇行した形状としてある。したがって、故障診断用配線139へ通電することにより発生するジュール熱によって、各温接点T1を効率良く温めることができる。上述の故障診断用配線139は、n形ポリシリコン層34およびp形ポリシリコン層35と同一平面上に同一厚さで形成されている。
上述の赤外線吸収層39および故障診断用配線139は、n形ポリシリコン層34と同じn形不純物(例えば、リンなど)を同じ不純物濃度(n形不純物がリンの場合には、リンの固溶限である5×1020cm−3)で含んでおり、n形ポリシリコン層34と同時に形成されている。また、p形ポリシリコン層35のp形不純物として例えばボロンを採用すればよく、p形不純物がボロンの場合には、不純物濃度をボロンの固溶限である1×1020cm−3に設定すればよい。本実施形態では、n形ポリシリコン層34の不純物濃度が5×1020cm−3であり、p形ポリシリコン層35の不純物濃度が1×1020cm−3であり、熱電対の抵抗値を低減でき、S/N比の向上を図れる。なお、赤外線吸収層39および故障診断用配線139は、n形ポリシリコン層34と同じn形不純物を同じ不純物濃度でドーピングしてあるが、これに限らず、例えば、p形ポリシリコン層35と同じ不純物を同じ不純物濃度でドーピングしてもよい。また、赤外線吸収層39および故障診断用配線139は、n形ポリシリコン層34と同時に形成せずに、不純物濃度を例えば1×1018〜1×1020cm−3程度の範囲で適宜設定してもよい。
ところで、本実施形態では、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39、および故障診断用配線139の屈折率をn、検出対象の赤外線の中心波長をλとするとき、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39、および故障診断用配線139それぞれの厚さt1をλ/4nに設定するようにしている。しかして、検出対象の波長(例えば、8〜12μm)の赤外線の吸収効率を高めることができ、高感度化を図れる。例えば、n=3.6、λ=10μmの場合には、t1≒0.69μmとすればよい。なお、本実施形態では、赤外線吸収層39および故障診断用配線139をn形ポリシリコン層34と同一工程で形成できるから、低コスト化を図れる。
ここで、感温部30の接続部36と接続部37とは、半導体基板1の上記一表面側において、層間絶縁膜50によって絶縁分離されている(図9および図10参照)。すなわち、温接点T1側の接続部36は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50a,50aを通して、両ポリシリコン層34,35の上記各一端部と電気的に接続されている。また、冷接点T2側の接続部37は、層間絶縁膜50に形成されたコンタクトホール50a,50aを通して、両ポリシリコン層34,35の上記各他端部と電気的に接続されている。
また、MOSトランジスタ4は、上述のように、半導体基板1の上記一表面側においてMOSトランジスタ4の形成用領域A2に形成されている。
MOSトランジスタ4は、図5および図12に示すように、半導体基板1の上記一表面側にp形(p)のウェル領域41が形成され、ウェル領域41内に、n形(n)のドレイン領域43とn形(n)のソース領域44とが離間して形成されている。さらに、ウェル領域41内には、ドレイン領域43とソース領域44とを囲むp形(p++)のチャネルストッパ領域42が形成されている。
ウェル領域41においてドレイン領域43とソース領域44との間に位置する部位の上には、シリコン酸化膜(熱酸化膜)からなるゲート絶縁膜45を介してn形ポリシリコン層からなるゲート電極46が形成されている。
また、ドレイン領域43上には、金属材料(例えば、Al−Siなど)からなるドレイン電極47が形成され、ソース領域44上には、金属材料(例えば、Al−Siなど)からなるソース電極48が形成されている。
ゲート電極46、ドレイン電極47およびソース電極48は、上述の層間絶縁膜50によって絶縁分離されている。ここで、ドレイン電極47は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50dを通してドレイン領域43と電気的に接続され、ソース電極48は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50eを通してソース領域44と電気的に接続されている。
赤外線センサ100の各画素部2では、MOSトランジスタ4のソース電極48と感温部30の一端とが電気的に接続され、感温部30の他端が基準バイアス線5に電気的に接続されている。また、各画素部2では、MOSトランジスタ4のドレイン電極47が、垂直読み出し線7と電気的に接続され、ゲート電極46が、当該ゲート電極46に連続一体に形成されたn形ポリシリコン配線からなる水平信号線6と電気的に接続されている。また、各画素部2では、MOSトランジスタ4のチャネルストッパ領域42上に、金属材料(例えば、Al−Siなど)からなるグラウンド用の電極(以下、グラウンド用電極と称する)49が形成されている。このグラウンド用電極49は、チャネルストッパ領域42をドレイン領域43およびソース領域44よりも低電位にバイアスして素子分離するための共通グラウンド線8と電気的に接続されている。なお、グラウンド用電極49は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50fを通してチャネルストッパ領域42と電気的に接続されている。
上述の赤外線センサ100によれば、通電されることにより発生するジュール熱によって温接点T1を温める故障診断用配線(自己診断用配線)139を備えているので、故障診断用配線139へ通電してサーモパイル30aの出力を測定することにより、サーモパイル30aの断線などの故障の有無を判断することが可能となって、信頼性の向上を図れ、しかも、故障診断用配線139は、熱型赤外線検出部3において半導体基板1の空洞部11に重なる領域でサーモパイル30aと重ならないように配置されているので、故障診断用配線139によるサーモパイル30aの温接点T1の熱容量の増大を防止でき、感度および応答速度の向上を図れる。
ここで、赤外線センサ100は、使用時において自己診断を行わない通常時において、故障診断用配線139も外部からの赤外線を吸収するので、複数の温接点T1の温度の均一化を図れ、感度の向上を図れる。なお、赤外線センサ100では、赤外線吸収層39および補強層39bも外部からの赤外線を吸収するので、複数の温接点T1の温度の均一化を図れ、感度の向上を図れる。また、赤外線センサ100の使用時の自己診断は、IC素子102に設けられた自己診断回路(図示せず)により定期的に行われるが、必ずしも定期的に行う必要はない。
また、赤外線センサ100は、第1の薄膜構造部3aが、複数の線状のスリット13を設けることによって、空洞部11の内周方向に沿って並設されそれぞれ熱型赤外線検出部3において空洞部11を囲む部位である支持部3dから内方へ延長された複数の第2の薄膜構造部3aaに分離され、各第2の薄膜構造部3aaごとにサーモパイル30aの温接点T1が設けられるとともに、各サーモパイル30aごとに出力を取り出す場合に比べて温度変化に対する出力変化が大きくなる接続関係で全てのサーモパイル30aが電気的に接続されているので、応答速度および感度の向上を図れ、しかも、全ての第2の薄膜構造部3aaに跨って故障診断用配線139が形成されているので、熱型赤外線検出部3の全てのサーモパイル30aを一括して自己診断することが可能となる。また、赤外線センサ100では、隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士を連結する連結片3cが形成されていることにより、各第2の薄膜構造部3aaの反りを低減でき、構造安定性の向上を図れ、感度が安定する。
また、赤外線センサ100は、n形ポリシリコン層34とp形ポリシリコン層35と赤外線吸収層39と補強層39bと故障診断用配線139とが同一の厚さに設定されているので、第2の薄膜構造部3aaの応力バランスの均一性が向上し、第2の薄膜構造部3aaの反りを抑制することができ、製品ごとの感度のばらつきや、画素部2ごとの感度のばらつきを低減できる。
また、赤外線センサ100は、故障診断用配線139が、第1の熱電要素であるn形ポリシリコン層34もしくは第2の熱電要素であるp形ポリシリコン層35と同じ材料により形成されているので、故障診断用配線139を第1の熱電要素もしくは第2の熱電要素と同時に形成することが可能となり、製造プロセスの簡略化による低コスト化を図れる。
また、赤外線センサ100は、赤外線吸収部33および故障診断用配線139を備えた複数の画素部2が、半導体基板1の上記一表面側でアレイ状に設けられているので、製造時や使用時の自己診断に際して各画素部2それぞれの故障診断用配線139に通電することにより、各画素部2それぞれの感温部30の感度のばらつきを把握することが可能となる。
また、赤外線センサ100は、各画素部2ごとに感温部30の出力を読み出すためのMOSトランジスタ4を有しているので、出力用のパッドVout(図14参照)の数を少なくでき、小型化および低コスト化を図れる。
ところで、上述の赤外線センサ100を備えた赤外線センサモジュールの一例を図15に示す。この赤外線センサモジュールは、赤外線センサ100と、この赤外線センサ100の出力信号を信号処理するIC素子102と、赤外線センサ100およびIC素子102が収納されたパッケージ103とを備えている。
パッケージ103は、赤外線センサ100およびIC素子102が実装されたパッケージ本体104と、パッケージ本体104との間に赤外線センサ100およびIC素子102を囲む形でパッケージ本体104に気密的に接合されたパッケージ蓋105とで構成されている。
パッケージ本体104は、IC素子102と赤外線センサ100とが横並びで実装されている。一方、パッケージ蓋105は、赤外線センサ100での検知対象の赤外線を透過する機能および導電性を有している。
パッケージ蓋105は、パッケージ本体104の上記一表面側に覆着されたメタルキャップ152と、メタルキャップ152において赤外線センサ100に対応する部位に形成された開口窓152aを閉塞するレンズ153とで構成されている。ここにおいて、レンズ153が、赤外線を透過する機能を有するとともに、赤外線センサ100へ赤外線を収束する機能を有している。
IC素子102は、ASIC(:Application Specific IC)であり、シリコン基板を用いて形成されている。また、IC素子102としてベアチップを用いている。しかして、本実施形態では、IC素子102がベアチップをパッケージングしたものである場合に比べて、パッケージ103の小型化を図れる。
IC素子102の回路構成は、赤外線センサ100の種類などに応じて適宜設計すればよく、例えば、赤外線センサ100を制御する制御回路、赤外線センサ100の複数の出力用のパッド80に電気的に接続された複数の入力用のパッドの出力電圧を増幅する増幅回路、複数の入力用のパッドの出力電圧を択一的に上記増幅回路に入力するマルチプレクサなどを備えた回路構成とすれば、赤外線画像を得ることが可能となる。また、IC素子102は、上述の自己診断回路も備えている。
上述の赤外線センサモジュールは、パッケージ本体104とパッケージ蓋105とで構成されるパッケージ103の内部空間(気密空間)165を、ドライ窒素雰囲気としてあるが、これに限らず、例えば、真空雰囲気としてもよい。
パッケージ本体104は、絶縁材料からなる基体104aに金属材料からなる配線パターン(図示せず)および電磁シールド層144が形成されており、電磁シールド層144により電磁シールド機能を有している。一方、パッケージ蓋105は、レンズ153が導電性を有するとともに、レンズ153がメタルキャップ152に導電性材料により接合されており、導電性を有している。そして、パッケージ蓋105は、パッケージ本体104の電磁シールド層144と電気的に接続されている。しかして、上述の赤外線センサモジュールでは、パッケージ本体104の電磁シールド層144とパッケージ蓋105とを同電位とすることができる。その結果、パッケージ103は、赤外線センサ100とIC素子102と上記配線パターンと後述のボンディングワイヤ(図示せず)と含んで構成されるセンサ回路(図示せず)への外来の電磁ノイズを防止する電磁シールド機能を有している。
パッケージ本体104は、赤外線センサ100およびIC素子102が一表面側に実装される平板状のセラミック基板により構成してある。要するに、パッケージ本体104は、基体104aが絶縁材料であるセラミックスにより形成されており、配線パターンのうち基体104aの一表面側に形成された部位に、赤外線センサ100およびIC素子102それぞれのパッド(図示せず)が、ボンディングワイヤを介して適宜接続されている。なお、赤外線センサモジュールにおいて、赤外線センサ100とIC素子102とは、ボンディングワイヤなどを介して電気的に接続されている。各ボンディングワイヤとしては、Alワイヤに比べて耐腐食性の高いAuワイヤを用いることが好ましい。
上述の赤外線センサモジュールでは、パッケージ本体104の絶縁材料としてセラミックスを採用しているので、上記絶縁材料としてエポキシ樹脂などの有機材料を採用する場合に比べて、パッケージ本体104の耐湿性および耐熱性を向上させることができる。ここで、絶縁材料のセラミックスとして、アルミナを採用すれば、窒化アルミニウムや炭化珪素などを採用する場合に比べて、上記絶縁材料の熱伝導率が小さく、IC素子102やパッケージ103の外部からの熱に起因した赤外線センサ100の温度上昇を抑制できる。つまり、赤外線センサ100以外(IC素子102、パッケージ103など)からの熱ノイズや外部からの光ノイズを合わせたノイズNT&E〔V〕を低減することが可能となる。
また、パッケージ本体104は、上述の配線パターンの一部により構成される外部接続電極(図示せず)が、基体104aの他表面と側面とに跨って形成されている。しかして、この赤外線センサモジュールでは、回路基板などへの2次実装後において、回路基板などとの接合部の外観検査を容易に行うことができる。
また、赤外線センサ100は、パッケージ本体104に対して、第1のダイボンド剤(例えば、シリコーン樹脂など)からなる複数の接合部115を介して実装されている。また、IC素子102は、パッケージ本体104に対して、第2のダイボンド剤(例えば、シリコーン樹脂など)からなる接合部125を介して実装されている。各ダイボンド剤としては、低融点ガラスやエポキシ系樹脂やシリコーン系樹脂などの絶縁性接着剤、半田(鉛フリー半田、Au−Sn半田など)や銀ペーストなどの導電性接着剤を用いればよい。また、各ダイボンド剤を用いずに、例えば、常温接合法や、Au−Sn共晶もしくはAu−Si共晶を利用した共晶接合法などにより接合してもよい。
上述の赤外線センサモジュールでは、赤外線センサ100が、複数の接合部115を介してパッケージ本体104に実装してあるので、赤外線センサ100それぞれの裏面の全体が接合部115を介してパッケージ本体104に接合される場合に比べて、赤外線センサ100とパッケージ本体104との間の空間116が断熱部として機能することと、接合部115の断面積の低減とにより、パッケージ本体104から赤外線センサ100へ熱が伝達しにくくなる。
この接合部115の数は、特に限定するものではないが、赤外線センサ100の外周形状が矩形状(正方形状ないし長方形状)の場合には、例えば、3つが好ましく、この場合には、赤外線センサ100の外周形状に基づいて規定した仮想三角形の3つの頂点に対応する3箇所に設けることにより、パッケージ本体104への実装時などの温度変化に起因したパッケージ本体104の変形が赤外線センサ100の傾きとして伝わるから、赤外線センサ100が変形するのを抑制することができ、赤外線センサ100に生じる応力を低減することが可能となる。なお、上述の赤外線センサモジュールでは、赤外線センサ100の外周形状が例えば正方形状の場合、赤外線センサ100の外周の1辺の両端の2箇所と、当該1辺に平行な辺の1箇所(ここでは、中央部)との3箇所に頂点を有する仮想三角形を規定しているが、仮想三角形の頂点の位置は、赤外線センサ100の外周形状、赤外線センサ100の各パッド80へのワイヤボンディング時の接合信頼性(言い換えれば、赤外線センサ100のパッド80の位置)を考慮して規定することが好ましい。接合部115には、赤外線センサ100とパッケージ本体104との距離を規定するスペーサを混入させてもよく、このようなスペーサを混入させておけば、赤外線センサモジュールの製品間での赤外線センサ100とパッケージ本体104との間の熱絶縁性能のばらつきを低減可能となる。ただし、赤外線センサ100の裏面全体を、接合部115を介してパッケージ本体104に接合してもよい。
また、IC素子102は、外周形状が矩形状(正方形状ないし長方形状)であり、裏面全体が接合部125を介してパッケージ本体104に接合されている。
パッケージ蓋105は、パッケージ本体104側の一面が開放された箱状に形成され赤外線センサ100に対応する部位に開口窓152aが形成されたメタルキャップ152と、メタルキャップ152の開口窓152aを閉塞する形でメタルキャップ152に接合されたレンズ153とで構成されており、メタルキャップ152の上記一面がパッケージ本体104により閉塞される形でパッケージ本体104に気密的に接合されている。ここで、パッケージ本体104の上記一表面の周部には、パッケージ本体104の外周形状に沿った枠状の金属パターン147(図15参照)が全周に亘って形成されており、パッケージ蓋105とパッケージ本体104の金属パターン147とは、シーム溶接(抵抗溶接法)により金属接合されており、気密性および電磁シールド効果を高めることができる。なお、パッケージ蓋105のメタルキャップ152は、コバールにより形成されており、Niめっきが施されている。また、パッケージ本体104の金属パターン147は、コバールにより形成され、Niのめっきが施され、さらにAuのめっきが施されている。
パッケージ蓋105とパッケージ本体104の金属パターン147との接合方法は、シーム溶接に限らず、他の溶接(例えば、スポット溶接)や、導電性樹脂により接合してもよい。ここで、導電性樹脂として異方導電性接着剤を用いれば、樹脂(バインダー)中に分散された導電粒子の含有量が少なく、接合時に加熱・加圧を行うことでパッケージ蓋105とパッケージ本体104との接合部の厚みを薄くできるので、外部からパッケージ103内へ水分やガス(例えば、水蒸気、酸素など)が侵入するのを抑制できる。また、導電性樹脂として、酸化バリウム、酸化カルシウムなどの乾燥剤を混入させたものを用いてもよい。
なお、パッケージ本体104およびパッケージ蓋105の外周形状は矩形状としてあるが、矩形状に限らず、例えば、円形状でもよい。また、パッケージ蓋105のメタルキャップ152は、パッケージ本体104側の端縁から全周に亘って外方に延設された鍔部152bを備えており、鍔部152bが全周に亘ってパッケージ本体104と接合されている。
レンズ153は、平凸型の非球面レンズである。しかして、上述の赤外線センサモジュールでは、レンズ153の薄型化を図りながらも、赤外線センサ100での赤外線の受光効率の向上による高感度化を図れる。また、この赤外線センサモジュールでは、赤外線センサ100の検知エリアをレンズ153により設定することが可能となる。レンズ153は、所望のレンズ形状に応じて半導体基板(ここでは、シリコン基板)との接触パターンを設計した陽極を半導体基板の一表面側に半導体基板との接触がオーミック接触となるように形成した後に半導体基板の構成元素の酸化物をエッチング除去する溶液からなる電解液中で半導体基板の他表面側を陽極酸化することで除去部位となる多孔質部を形成してから当該多孔質部を除去することにより形成された半導体レンズ(ここでは、シリコンレンズ)により構成されている。しかして、レンズ153は、導電性を有している。なお、この種の陽極酸化技術を応用した半導体レンズの製造方法については、例えば、特許第3897055号公報、特許第3897056号公報などに開示されているので、説明を省略する。
上述の赤外線センサモジュールでは、赤外線センサ100の検知エリアを上述の半導体レンズからなるレンズ153により設定することができ、また、レンズ153として、球面レンズよりも短焦点で且つ開口径が大きく収差が小さな半導体レンズを採用することができるから、短焦点化により、パッケージ103の薄型化を図れる。ここで、赤外線センサモジュールは、赤外線センサ100の検知対象の赤外線として、人体から放射される10μm付近の波長帯(8μm〜13μm)の赤外線を想定しており、レンズ153の材料として、ZnSやGaAsなどに比べて環境負荷が少なく且つ、Geに比べて低コスト化が可能であり、しかも、ZnSに比べて波長分散が小さなSiを採用している。
また、レンズ153は、メタルキャップ152における開口部152aの周部に導電性接着剤(例えば、鉛フリー半田、銀ペーストなど)からなる接合部158により固着されている。上述のように、接合部158の材料として導電性接着剤を採用することにより、レンズ153が、接合部158およびメタルキャップ152を介してパッケージ本体104の電磁シールド層144に電気的に接続されるので、電磁ノイズに対するシールド性を高めることができ、外来の電磁ノイズに起因したS/N比の低下を防止することができる。つまり、赤外線センサモジュールは、外来ノイズNEMS〔V〕を低減することが可能となる。
上述のレンズ153には、赤外線センサ100での検知対象の赤外線の波長を含む所望の波長域の赤外線を透過し当該波長域以外の赤外線を反射する光学多層膜(多層干渉フィルタ膜)からなるフィルタ部(図示せず)を設けることが好ましい。このようなフィルタ部を設けることにより、所望の波長域以外の不要な波長域の赤外線や可視光をフィルタ部によりカットすることが可能となり、太陽光などによるノイズの発生を抑制することができ、高感度化を図れる。
上述の赤外線センサモジュールでは、上述のようにIC素子102としてベアチップを採用しているので、パッケージ蓋105が可視光をカットする機能を有するように、メタルキャップ152およびレンズ153およびフィルタ部の材料を適宜選択することにより、可視光に起因したIC素子102の起電力による誤動作を防止することができる。ただし、ベアチップからなるIC素子102における少なくともパッケージ蓋105側の表面に外部からの光を遮光する樹脂部(図示せず)を設けるようにすれば、IC素子102がベアチップをパッケージングしたものである場合に比べてパッケージ103の小型化を図りつつ、可視光に起因したIC素子102の起電力による誤動作を防止することができる。
また、この赤外線モジュールでは、パッケージ本体104が平板状に形成されているので、パッケージ本体104への赤外線センサ100およびIC素子102の実装が容易になるとともに、パッケージ本体104の低コスト化が可能となる。また、パッケージ本体104が平板状に形成されているので、パッケージ本体104を、一面が開放された箱状の形状として、多層セラミック基板により構成し、パッケージ本体104の内底面に赤外線センサ100を実装する場合に比べて、パッケージ本体104の上記一表面側に配置される赤外線センサ100とレンズ153との間の距離の精度を高めることができ、より一層の高感度化を図れる。なお、以下では、パッケージ本体104において、赤外線センサ100を実装する領域を第1の領域140、IC素子102を実装する領域を第2の領域142と称する。
上述の赤外線センサモジュールでは、パッケージ本体104において、第1の領域140に比べて、第2の領域142の厚みを薄くしてある。ここで、パッケージ本体104の第2の領域142は、基体104aの上記一表面に凹部104bを設けることにより、第1の領域140よりも厚みを薄くしてある。また、パッケージ本体104の第2の領域142では、電磁シールド層144が露出している。
また、パッケージ本体104の第2の領域142では、金属材料(例えば、Cuなど)からなる複数のビア(サーマルビア)145が基体104aの厚み方向に貫設されており、各ビア145が電磁シールド層144と接して熱結合されている。
ここで、IC素子102は、第2の領域142において電磁シールド層144に接合部125を介して実装されている。しかして、IC素子102で発生した熱を電磁シールド層144におけるIC素子102の直下の部位およびビア145を通してパッケージ103の外側へ効率良く放熱させることが可能となる。ここで、電磁シールド層144のうち第2の領域142に形成された部位が、IC素子102が実装され熱結合される金属部を構成し、各ビア145が、第1の領域140を避けて形成されてパッケージ103の外側に一部が露出する放熱部を構成している。要するに、金属部は、第1の領域140を避けて形成されてパッケージ103の外側に一部が露出する放熱部と熱結合されている。
上述の赤外線センサモジュールでは、パッケージ本体104において、赤外線センサ100を実装する第1の領域140に比べて、IC素子102を実装する第2の領域142の厚みよりも薄くしてあるので、IC素子102で発生した熱がパッケージ本体104を通る経路で赤外線センサ100に伝熱されにくくなり、IC素子102の発熱が赤外線センサ100に与える影響を低減でき、IC素子102の発熱に起因した感度の低下を抑制することが可能となる。
上述のパッケージ本体104は、電磁シールド板を内蔵したプリント配線板により構成してもよく、第2の領域142で電磁シールド板の一面を露出させ当該電磁シールド板にIC素子102を実装するようにしてもよい。この場合には、当該プリント配線板により構成されるパッケージ本体104の周部とパッケージ蓋105とを、例えば、酸化バリウム、酸化カルシウムなどの乾燥剤を混入させた導電性樹脂や、導電性を有するBステージのエポキシ樹脂などからなる接合部により気密的に接合すればよい。
以下、赤外線センサ100の基本的な製造方法について図16〜図19を参照して説明する。
まず、シリコン基板からなる半導体基板1の上記一表面側に第1の所定膜厚(例えば、0.3μm)の第1のシリコン酸化膜31と第2の所定膜厚(例えば、0.1μm)のシリコン窒化膜32との積層膜からなる絶縁層を形成する絶縁層形成工程を行う。その後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して当該絶縁層のうち熱型赤外線検出部3の形成用領域A1に対応する部分の一部を残してMOSトランジスタ4の形成用領域A2に対応する部分をエッチング除去する絶縁層パターニング工程を行うことによって、図16(a)に示す構造を得る。ここにおいて、第1のシリコン酸化膜31は、半導体基板1を所定温度(例えば、1100℃)で熱酸化することにより形成し、シリコン窒化膜32は、LPCVD法により形成している。
上述の絶縁層パターニング工程の後、半導体基板1の上記一表面側にp形(p)のウェル領域41を形成するウェル領域形成工程を行い、続いて、半導体基板1の上記一表面側におけるウェル領域41内にp形(p++)のチャネルストッパ領域42を形成するチャネルストッパ領域形成工程を行うことによって、図16(b)に示す構造を得る。ここで、ウェル領域形成工程では、まず、半導体基板1の上記一表面側の露出部位を所定温度で熱酸化することにより第2のシリコン酸化膜(熱酸化膜)51を選択的に形成する。その後、ウェル領域41を形成するためのマスクを利用したフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用してシリコン酸化膜51をパターニングする。続いて、p形不純物(例えば、ボロンなど)のイオン注入を行ってから、ドライブインを行うことにより、ウェル領域41を形成する。要するに、ウェル領域形成工程では、イオン注入法を利用してウェル領域41を形成する。また、チャネルストッパ領域形成工程では、半導体基板1の上記一表面側を所定温度で熱酸化することにより第3のシリコン酸化膜(熱酸化膜)52を選択的に形成する。その後、p形(p++)のチャネルストッパ領域42を形成するためのマスクを利用したフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して第3のシリコン酸化膜52をパターニングする。続いて、p形不純物(例えば、ボロンなど)のイオン注入を行ってから、ドライブインを行うことにより、チャネルストッパ領域42を形成する。要するに、チャネルストッパ領域形成工程では、イオン注入法を利用してチャネルストッパ領域42を形成する。なお、第1のシリコン酸化膜31と第2のシリコン酸化膜51と第3のシリコン酸化膜52とで、半導体基板1の上記一表面側のシリコン酸化膜1bを構成している。
上述のチャネルストッパ領域形成工程の後、MOSトランジスタ4のしきい値電圧(V)を制御するためのイオン注入を行うイオン注入工程(以下、Vイオン注入工程とも称する)を実施する。ここにおいて、Vイオン注入工程では、ウェル領域41と同じ導電形の不純物(例えば、ボロンなどのp形不純物)を、所望のしきい値電圧に対応するチャネル濃度に応じてイオン注入する。
イオン注入工程の後、n形(n)のドレイン領域43およびn形(n)のソース領域44を形成するドレイン領域・ソース領域形成工程を行う。このドレイン領域・ソース領域形成工程では、ウェル領域41におけるドレイン領域43およびソース領域44それぞれの形成予定領域にn形不純物(例えば、リンなど)のイオン注入を行ってから、ドライブを行うことによって、ドレイン領域43およびソース領域44を形成する。要するに、ドレイン領域・ソース領域形成工程では、イオン注入法を利用してドレイン領域43およびソース領域44を形成する。
ドレイン領域・ソース領域形成工程の後、半導体基板1の上記一表面側に熱酸化により所定膜厚(例えば、600Å)のシリコン酸化膜(熱酸化膜)からなるゲート絶縁膜45を形成するゲート絶縁膜形成工程を行う。続いて、半導体基板1の上記一表面側の全面にゲート電極46、水平信号線6(図3参照)、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39および故障診断用配線139の基礎となる所定膜厚(例えば、0.69μm)のノンドープのポリシリコン層をLPCVD法により形成するポリシリコン層形成工程を行う。その後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して上記ノンドープのポリシリコン層のうちゲート電極46、水平信号線6、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39および故障診断用配線139それぞれに対応する部分が残るようにパターニングするポリシリコン層パターニング工程を行う。続いて、上記ノンドープのポリシリコン層のうちp形ポリシリコン層35に対応する部分(第1の所定部位)にp形不純物(例えば、ボロンなど)のイオン注入を行ってからドライブを行うことによりp形ポリシリコン層35を形成するp形ポリシリコン層形成工程を行う。その後、上記ノンドープポリシリコン層のうちn形ポリシリコン層34、赤外線吸収層39、故障診断用配線139、ゲート電極46および水平信号線6に対応する部分(第2の所定部位)にn形不純物(例えば、リンなど)のイオン注入を行ってからドライブを行うことによりn形ポリシリコン層34、赤外線吸収層39、故障診断用配線139、ゲート電極46および水平信号線6を形成するn形ポリシリコン層形成工程を行うことによって、図17(a)に示す構造を得る。なお、ポリシリコン層形成工程でのLPCVD法による上記ノンドープのポリシリコン層の成膜温度は、例えば、700℃程度に設定すればよく、また、p形ポリシリコン層形成工程およびn形ポリシリコン層形成工程それぞれにおけるドライブの温度は800〜900℃程度の範囲で設定すればよい。p形ポリシリコン層形成工程とn形ポリシリコン層形成工程との順序は逆でもよい。いずれにしても、p形ポリシリコン層形成工程およびn形ポリシリコン層形成工程は、イオン注入法を利用するが、この点については後述する。
上述のp形ポリシリコン層形成工程およびn形ポリシリコン層形成工程が終了した後、半導体基板1の上記一表面側に層間絶縁膜50を形成する層間絶縁膜形成工程を行う。続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して層間絶縁膜50に各コンタクトホール50a,50a,50a,50a,50d,50e,50f(図9、図10、図12参照)を形成するコンタクトホール形成工程を行うことによって、図17(b)に示す構造を得る。層間絶縁膜形成工程では、半導体基板1の上記一表面側に所定膜厚(例えば、0.8μm)のBPSG膜をCVD法により堆積させてから、所定温度(例えば、800℃)でリフローすることにより平坦化された層間絶縁膜50を形成する。
上述のコンタクトホール形成工程の後、半導体基板1の上記一表面側の全面に接続部36,37、ドレイン電極47、ソース電極48、基準バイアス線5、垂直読み出し線7、グラウンド線8、共通グラウンド線9および各パッドVout,Vsel,Vref,Vdd,Gndなど(図14参照)の基礎となる所定膜厚(例えば、2μm)の金属膜(例えば、Al−Si膜)をスパッタ法などにより形成する金属膜形成工程を行う。続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して金属膜をパターニングすることで接続部36,37、ドレイン電極47、ソース電極48、基準バイアス線5、垂直読み出し線7、グラウンド線8、共通グラウンド線9および各パッドVout,Vsel,Vref,Vdd,Gndなどを形成する金属膜パターニング工程を行うことによって、図18(a)に示す構造を得る。なお、金属膜パターニング工程におけるエッチングはRIEにより行っている。また、この金属膜パターニング工程を行うことにより、温接点T1および冷接点T2が形成される。
上述の金属膜パターニング工程の後、半導体基板1の上記一表面側(つまり、層間絶縁膜50の表面側)に所定膜厚(例えば、0.5μm)のPSG膜と所定膜厚(例えば、0.5μm)のNSG膜との積層膜からなるパッシベーション膜60をCVD法により形成するパッシベーション膜形成工程を行うことによって、図18(b)に示す構造を得る。
上述のパッシベーション膜形成工程の後、第1のシリコン酸化膜31、シリコン窒化膜32、層間絶縁膜50、パッシベーション膜60などを備え、感温部30などが埋設された積層構造部をパターニングすることにより、第2の薄膜構造部3aaおよび連結片3cを形成する積層構造部パターニング工程を行うことによって、図19(a)に示す構造を得る。なお、積層構造部パターニング工程において、各スリット13,14を形成している。
上述の積層構造部パターニング工程の後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して各パッドVout,Vsel,Vref,Vdd,Gndを露出させる開口部(図示せず)を形成する開口部形成工程を行う。次に、各スリット13,14をエッチング液導入孔としてエッチング液を導入し半導体基板1を異方性エッチング(結晶異方性エッチング)することにより半導体基板1に空洞部11を形成する空洞部形成工程を行うことで、図19(b)に示す構造の赤外線センサ100を得る。ここで、開口部形成工程におけるエッチングはRIEにより行っている。また、空洞部形成工程では、エッチング液として所定温度(例えば、85℃)に加熱したTMAH溶液を用いているが、エッチング液はTMAH溶液に限らず、他のアルカリ系溶液(例えば、KOH溶液など)を用いてもよい。なお、空洞部形成工程が終了するまでの全工程はウェハレベルで行うので、空洞部形成工程が終了した後、個々の赤外線センサ100に分離する分離工程を行えばよい。また、上述の説明から分かるように、MOSトランジスタ4の製造方法に関してみれば、熱酸化による熱酸化膜の形成、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術による熱酸化膜のパターニング、不純物のイオン注入、ドライブイン(不純物の拡散)の基本工程を繰り返すことにより、ウェル領域41、チャネルストッパ領域42、ドレイン領域43とソース領域44を形成している。
ところで、本実施形態の赤外線センサの製造方法では、上述のように、サーモパイル30aのp形ポリシリコン層35およびn形ポリシリコン層34の形成にあたっては、p形ポリシリコン層35およびn形ポリシリコン層34の基礎となるノンドープのポリシリコン層を形成した後、上記ポリシリコン層に対してp形不純物およびn形不純物それぞれを上記ポリシリコン層の互いに異なる所定部位にイオン注入してp形ポリシリコン層35およびn形ポリシリコン層34を形成するようにしている。
ここにおいて、不純物(p形不純物あるいはn形不純物)のドーピング濃度と熱電要素(第1の熱電要素であるp形ポリシリコン層35あるいは第2の熱電要素であるn形ポリシリコン層34)の抵抗とは、図1(b)の模式図に示すような関係にあり、ドーピング濃度が高くなるにつれて熱電要素の抵抗が高くなるが、ドーピング濃度が固溶限を超えると熱電要素の抵抗は略一定値となる。ここで、p形不純物としてボロンを採用する場合の固溶限は1×1020cm−3、n形不純物としてリンを採用する場合の固溶限は5×1020cm−3である。
しかしながら、上記特許文献1のように、p形ポリシリコン層35’(図20参照)のp形不純物(例えば、ボロン)の濃度およびn形ポリシリコン層34’(図20参照)のn形不純物(例えば、リン)の濃度それぞれを、1018〜1020cm−3とした場合、ロット間やウェハ間でn形ポリシリコン層34およびp形ポリシリコン層35の抵抗がばらつきやすい。
これに対して、本実施形態では、p形ポリシリコン層35を形成するためのp形不純物のイオン注入を行う際のイオン注入量を、p形ポリシリコン層35のドーピング濃度が固溶限となるイオン注入量よりも高く設定し、かつ、n形ポリシリコン層34を形成するためのn形不純物のイオン注入を行う際のイオン注入量を、n形ポリシリコン層34のドーピング濃度が当該ドーピング濃度の固溶限となるイオン注入量よりも高く設定するようにしている。例えば、p形不純物としてボロンを採用する場合の固溶限は1×1020cm−3、n形不純物としてリンを採用する場合の固溶限は5×1020cm−3なので、前者の場合のイオン注入量は、ドーピング濃度が1×1020cm−3となるイオン注入量(ドーズ量)よりも高く設定し、後者の場合のイオン注入量は、ドーピング濃度が5×1020cm−3となるイオン注入量(ドーズ量)よりも高く設定すればよい。
しかして、本実施形態の赤外線センサ100の製造方法では、サーモパイル30aの抵抗のばらつきを小さくすることが可能となり、画素部2間、ロット間およびウェハ間で赤外線センサ100の感温部30の抵抗のばらつきを低減することが可能となるから、赤外線センサモジュールの温度分解能のばらつきを小さくすることが可能となる。
(実施形態2)
本実施形態における赤外線センサ100の基本構成および基本的な製造方法は実施形態1と同じなので、図示を省略する。
ところで、上述のポリシリコン層形成工程では、LPCVD法によりノンドープのポリシリコン層を形成する際の成膜温度が700℃程度であり、ポリシリコン層を構成している多数の結晶粒の粒径である結晶粒径が比較的小さいので、ポリシリコン層形成工程よりも後の製造工程においてプロセス温度が700℃よりも高く熱処理時間の比較的短い工程(例えば、上述のp形ポリシリコン層形成工程における900℃、1時間のドライブやn形ポリシリコン層形成工程における900℃、1時間のドライブなど)があると、その工程において結晶粒径が変化し、ロット間やウェハ間でn形ポリシリコン層34およびp形ポリシリコン層35の抵抗がばらつきやすい。
これに対して、本実施形態の赤外線センサ100の製造方法において、p形ポリシリコン層35およびn形ポリシリコン層34の基礎となるノンドープのポリシリコン層をLPCVD法により成膜した後、ポリシリコン層に対してp形不純物およびn形不純物それぞれをポリシリコン層の互いに異なる所定部位にイオン注入する前に、ポリシリコン層の結晶粒径を大きくさせて以後の製造工程での結晶粒径の変化を抑制可能な熱処理条件でポリシリコン層のアニールを行う。この熱処理条件としては、例えば、熱処理温度を1100℃、熱処理時間を6時間とすればよい。
しかして、本実施形態の赤外線センサ100の製造方法では、ノンドープのポリシリコン層にイオン注入した後の製造工程での熱処理により結晶粒径が変化するのを抑制することが可能となるから、サーモパイル30aの抵抗のばらつきを小さくすることが可能となり、画素部2間、ロット間およびウェハ間で赤外線センサ100の感温部30の抵抗のばらつきを低減することが可能となるから、赤外線センサモジュールの温度分解能のばらつきを小さくすることが可能となる。
また、実施形態1の赤外線センサ100の製造方法において、本実施形態で説明した熱処理条件でのポリシリコン層のアニールを行うようにしてもよく、サーモパイル30aの抵抗のばらつきをより小さくすることが可能となる。
上述の各実施形態における赤外線センサ100では、半導体基板1として上記一表面が(100)面の単結晶のシリコン基板を用いて、エッチング速度の結晶面方位依存性を利用した異方性エッチングにより形成する空洞部11を四角錘状の形状としてあるが、四角錘状の形状に限らず、四角錘台状の形状でもよい。また、半導体基板1の上記一表面の面方位は特に限定するものではなく、例えば、半導体基板1として上記一表面が(110)面の単結晶シリコン基板を用いてもよい。
また、赤外線センサ100は、必ずしも画素部2をアレイ状に備えた赤外線アレイセンサチップである必要はなく、少なくとも1つの熱型赤外線検出部3を備えたものであればよい。また、半導体基板1における空洞部11は、半導体基板1の厚み方向に貫通する形で形成してもよく、この場合は、空洞部11を形成する空洞部形成工程において、半導体基板1の上記一表面とは反対の他表面側から、半導体基板1における空洞部11の形成予定領域を、例えば誘導結合プラズマ(ICP)型のドライエッチング装置を用いた異方性エッチング技術を利用して形成すればよい。
1 半導体基板
3 熱型赤外線検出部
30 感温部
30a サーモパイル
34 n形ポリシリコン層
35 p形ポリシリコン層
100 赤外線センサ

Claims (2)

  1. 半導体基板と、サーモパイルにより構成される感温部を具備し半導体基板の一表面側に形成されて前記半導体基板に支持された熱型赤外線検出部とを備え、サーモパイルの熱電対の2種類の熱電要素が、p形ポリシリコン層とn形ポリシリコン層とである赤外線センサの製造方法であって、前記サーモパイルの前記p形ポリシリコン層および前記n形ポリシリコン層の形成にあたっては、前記p形ポリシリコン層および前記n形ポリシリコン層の基礎となるノンドープのポリシリコン層を形成した後、前記ポリシリコン層に対してp形不純物およびn形不純物それぞれを前記ポリシリコン層の互いに異なる所定部位にイオン注入して前記p形ポリシリコン層および前記n形ポリシリコン層を形成するようにし、前記p形ポリシリコン層を形成するための前記p形不純物のイオン注入を行う際のイオン注入量を、前記p形ポリシリコン層のドーピング濃度が固溶限となるイオン注入量よりも高く設定し、かつ、前記n形ポリシリコン層を形成するための前記n形不純物のイオン注入を行う際のイオン注入量を、前記n形ポリシリコン層のドーピング濃度が固溶限となるイオン注入量よりも高く設定することを特徴とする赤外線センサの製造方法。
  2. 半導体基板と、サーモパイルにより構成される感温部を具備し半導体基板の一表面側に形成されて前記半導体基板に支持された熱型赤外線検出部とを備え、サーモパイルの熱電対の2種類の熱電要素が、p形ポリシリコン層とn形ポリシリコン層とである赤外線センサの製造方法であって、前記サーモパイルの前記p形ポリシリコン層および前記n形ポリシリコン層の形成にあたっては、前記p形ポリシリコン層および前記n形ポリシリコン層の基礎となるノンドープのポリシリコン層を成膜した後、前記ポリシリコン層に対してp形不純物およびn形不純物それぞれを前記ポリシリコン層の互いに異なる所定部位にイオン注入する前に、前記ポリシリコン層の結晶粒径を大きくさせて以後の製造工程での前記結晶粒径の変化を抑制可能な熱処理条件で前記ポリシリコン層のアニールを行うことを特徴とする赤外線センサの製造方法。
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