JP2011252724A - 赤外線センサおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】赤外線センサチップの水分を低減することが可能な赤外線センサおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体基板1の上記一表面側に、サーモパイル30aが埋設された薄膜構造部たる熱型赤外線検出部3が形成されるとともに、半導体基板1の上記一表面側において熱型赤外線検出部3の一部の直下に空洞部11が形成された赤外線センサチップ100と、赤外線センサチップ100が収納されたパッケージ103とを備え、熱型赤外線検出部3においてSiO2系材料により形成された部位の露出表面がCH3基を含む有機材料により疎水化処理されている。
【選択図】図1
【解決手段】半導体基板1の上記一表面側に、サーモパイル30aが埋設された薄膜構造部たる熱型赤外線検出部3が形成されるとともに、半導体基板1の上記一表面側において熱型赤外線検出部3の一部の直下に空洞部11が形成された赤外線センサチップ100と、赤外線センサチップ100が収納されたパッケージ103とを備え、熱型赤外線検出部3においてSiO2系材料により形成された部位の露出表面がCH3基を含む有機材料により疎水化処理されている。
【選択図】図1
Description
本発明は、赤外線センサおよびその製造方法に関するものである。
従来から、半導体基板であるシリコン基板の一表面側に、サーモパイルが埋設された薄膜構造部が形成されるとともに、シリコン基板の上記一表面側において薄膜構造部の一部の直下に空洞部が形成された赤外線センサチップが提案されている(例えば、特許文献1)。
ここにおいて、薄膜構造部は、積層構造部をパターニングすることにより形成されており、最表層側のパッシベーション膜が、それぞれSiO2系材料により形成されたPSG膜とNSG膜との積層膜により構成されている。
ところで、上述の赤外線センサチップをパッケージに収納して当該パッケージの内部空間をN2ガス雰囲気や真空雰囲気とした赤外線センサが考えられるが、薄膜構造部においてSiO2系材料により形成された部位の表面が露出しているので、パッケージング前に薄膜構造部が水分を吸着しやすく、薄膜構造部に吸着している水分が拡散してサーモパイルに接続されている金属配線が変質(例えば、酸化)したり、薄膜構造部の熱コンダクタンスの増加によりセンサ性能が劣化してしまう懸念がある。また、薄膜構造部に吸着している水分の脱ガスによりパッケージ内の圧力が変化し、センサ性能が変化してしまう懸念がある。
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、赤外線センサチップの水分を低減することが可能な赤外線センサおよびその製造方法を提供することにある。
本発明の赤外線センサは、半導体基板の一表面側に、サーモパイルが埋設された薄膜構造部が形成されるとともに、前記半導体基板の前記一表面側において前記薄膜構造部の一部の直下に空洞部が形成された赤外線センサチップと、少なくとも前記赤外線センサチップが収納されたパッケージとを備え、前記薄膜構造部においてSiO2系材料により形成された部位の露出表面が有機材料により疎水化処理されてなることを特徴とする。
この赤外線センサにおいて、前記パッケージの内部空間が真空雰囲気であることが好ましい。
本発明の赤外線センサの製造方法は、前記赤外線センサの製造方法であって、前記赤外線センサチップを製造する前工程が終了した後に、前記薄膜構造部において前記SiO2系材料により形成された部位の露出表面を有機材料により疎水化処理する疎水化処理工程を備えることを特徴とする。
この赤外線センサの製造方法において、前記パッケージの前記内部空間を真空雰囲気とするパッケージング工程の前処理工程として、前記疎水化処理工程を行うことが好ましい。
この赤外線センサの製造方法において、前記疎水化処理工程よりも前に、前記薄膜構造部の水分を低減させる水分低減工程を備えることが好ましい。
この赤外線センサの製造方法において、前記水分低減工程は、紫外線もしくは電子ビームを照射することにより前記薄膜構造部のOH基を脱離させることが好ましい。
この赤外線センサの製造方法において、前記水分低減工程は、熱処理により前記薄膜構造部のOH基を脱離させることが好ましい。
本発明の赤外線センサにおいては、赤外線センサチップの水分を低減することが可能となる。
本発明の赤外線センサの製造方法においては、赤外線センサチップの水分を低減することが可能な赤外線センサを提供することができる。
本実施形態の赤外線センサについて図1〜図14を参照しながら説明する。
本実施形態の赤外線センサは、赤外線センサチップ100と、赤外線センサチップ100の出力信号を信号処理するIC素子102と、赤外線センサチップ100およびIC素子102が収納されたパッケージ103とを備えている。
赤外線センサチップ100は、図1(b)に示すように、サーモパイル30aを有する熱型赤外線検出部3がシリコン基板からなる半導体基板1の一表面側に形成されている。
パッケージ103は、赤外線センサチップ100およびIC素子102が実装されたパッケージ本体104と、パッケージ本体104との間に赤外線センサチップ100およびIC素子102を囲む形でパッケージ本体104に気密的に接合されたパッケージ蓋105とで構成されている。
パッケージ本体104は、IC素子102と赤外線センサチップ100とが横並びで実装されている。一方、パッケージ蓋105は、赤外線センサチップ100での検知対象の赤外線を透過する機能および導電性を有している。
パッケージ蓋105は、パッケージ本体104の上記一表面側に覆着されたメタルキャップ152と、メタルキャップ152において赤外線センサチップ100に対応する部位に形成された開口窓152aを閉塞するレンズ153とで構成されている。ここにおいて、レンズ153が、赤外線を透過する機能を有するとともに、赤外線センサチップ100へ赤外線を収束する機能を有している。
以下、各構成要素についてさらに説明する。
赤外線センサチップ100は、熱型赤外線検出部3と画素選択用のスイッチング素子であるMOSトランジスタ4とを有する複数の画素部2が半導体基板1の上記一表面側においてアレイ状(ここでは、2次元アレイ状)に配列されている(図2参照)。本実施形態では、1つの半導体基板1の上記一表面側にm×n個(図2に示した例では、8×8個)の画素部2が形成されているが、画素部2の数や配列は特に限定するものではない。また、本実施形態では、熱型赤外線検出部3の感温部30が、複数個(ここでは、6個)のサーモパイル30a(図3参照)を直列接続することにより構成されている。図14では、熱型赤外線検出部3における感温部30の等価回路を、当該感温部30の熱起電力に対応する電圧源Vsで表してある。
また、赤外線センサチップ100は、図3、図5および図14に示すように、各列の複数の熱型赤外線検出部3の感温部30の一端が上述のMOSトランジスタ4を介して各列ごとに共通接続された複数の垂直読み出し線7と、各行の熱型赤外線検出部3の感温部30に対応するMOSトランジスタ4のゲート電極46が各行ごとに共通接続された複数の水平信号線6とを備えている。また、赤外線センサチップ100は、各列のMOSトランジスタ4のp+形ウェル領域41が各列ごとに共通接続された複数のグラウンド線8と、各グラウンド線8が共通接続された共通グラウンド線9とを備えている。さらに、赤外線センサチップ100は、各列の複数個の熱型赤外線検出部3の感温部30の他端が各列ごとに共通接続された複数の基準バイアス線5を備えている。しかして、赤外線センサチップ100は、全ての熱型赤外線検出部3の感温部30の出力を時系列的に読み出すことができるようになっている。要するに、赤外線センサチップ100は、半導体基板1の上記一表面側に熱型赤外線検出部3と当該熱型赤外線検出部3に並設され当該熱型赤外線検出部3の出力を読み出すためのMOSトランジスタ4とを有する複数の画素部2が形成されている。
ここで、MOSトランジスタ4は、ゲート電極46が水平信号線6に接続され、ソース電極48が感温部30を介して基準バイアス線5に接続され、ドレイン電極47が垂直読み出し線7に接続されている。ここで、各水平信号線6それぞれは、各別の画素選択用のパッドVselに電気的に接続され、各基準バイアス線5は、共通基準バイアス線5aに共通接続され、各垂直読み出し線7それぞれは、各別の出力用のパッドVoutに電気的に接続されている。また、共通グラウンド線9は、グラウンド用のパッドGndに電気的に接続され、共通基準バイアス線5aは、基準バイアス用のパッドVrefと電気的に接続され、半導体基板1は、基板用のパッドVddに電気的に接続されている。
しかして、MOSトランジスタ4が、順次、オン状態になるように各画素選択用のパッドVselの電位を制御することで各画素部2の出力電圧を順次読み出すことができる。例えば、基準バイアス用のパッドVrefの電位を1.65V、グラウンド用のパッドGndの電位を0V、基板用のパッドVddの電位を5Vとしておき、画素選択用のパッドVselの電位を5Vとすれば、MOSトランジスタ4がオンとなり、出力用のパッドVoutから画素部2の出力電圧(1.65V+感温部30の出力電圧)が読み出される。また、画素選択用のパッドVselの電位を0Vとすれば、MOSトランジスタ4がオフとなり、出力用のパッドVoutから画素部2の出力電圧は読み出されない。なお、図2では、図14における画素選択用のパッドVsel、基準バイアス用のパッドVref、グラウンド用のパッドGnd、出力用のパッドVoutなどを区別せずに、全てパッド80として図示してある。
以下、熱型赤外線検出部3およびMOSトランジスタ4それぞれの構造について説明する。なお、本実施形態では、上述の半導体基板1として、導電形がn形で上記一表面が(100)面の単結晶シリコン基板を用いている。
各画素部2の熱型赤外線検出部3は、半導体基板1の上記一表面側において熱型赤外線検出部3の形成用領域A1(図5参照)に形成されている。また、各画素部2のMOSトランジスタ4は、半導体基板1の上記一表面側においてMOSトランジスタ4の形成用領域A2(図5参照)に形成されている。
赤外線センサチップ100は、半導体基板1の上記一表面側において熱型赤外線検出部3の一部の直下に空洞部11が形成されている。熱型赤外線検出部3は、半導体基板1の上記一表面側で空洞部11の周部に形成された支持部3dと、半導体基板1の上記一表面側で平面視において空洞部11を覆う第1の薄膜構造部3aとを備えている。第1の薄膜構造部3aは、赤外線を吸収する赤外線吸収部33を備えている。ここで、第1の薄膜構造部3aは、空洞部11の周方向に沿って並設され支持部3dに支持された複数の第2の薄膜構造部3aaと、隣接する第2の薄膜構造部3aa同士を連結する連結片3cとを有している。なお、図3の例の熱型赤外線検出部3では、複数の線状のスリット13を設けることにより、第1の薄膜構造部3aが6つの第2の薄膜構造部3aaに分離されている。以下では、赤外線吸収部33(第1の赤外線吸収部33と称する)のうち第2の薄膜構造部3aaそれぞれに対応して分割された各部位を第2の赤外線吸収部33aと称する。
熱型赤外線検出部3は、第2の薄膜構造部3aaごとにサーモパイル30aが設けられている。ここで、サーモパイル30aは、温接点T1が、第2の薄膜構造部3aaに設けられ、冷接点T2が、支持部3dに設けられている。要するに、温接点T1は、熱型赤外線検出部3において空洞部11に重なる第1の領域に形成され、冷接点T2は、熱型赤外線検出部3において空洞部11に重ならない第2の領域に形成されている。
また、熱型赤外線検出部3の感温部30は、各サーモパイル30aごとに出力を取り出す場合に比べて温度変化に対する出力変化が大きくなる接続関係で、全てのサーモパイル30aが電気的に接続されている。図3の例では、感温部30は、6個のサーモパイル30aを直列接続してある。ただし、上述の接続関係は、複数個のサーモパイル30aの全てを直列接続する接続関係に限らない。例えば、それぞれ3個のサーモパイル30aの直列回路を並列接続すれば、6個のサーモパイル30aが並列接続されている場合や、各サーモパイル30aごとに出力を取り出す場合に比べて、感度を高めることができる。また、6個のサーモパイル30aの全てが直列接続されている場合に比べて、感温部30の電気抵抗を低くできて熱雑音が低減されるから、S/N比が向上する。
ここで、熱型赤外線検出部3では、第2の薄膜構造部3aaごとに、支持部3dと第2の赤外線吸収部33aとを連結する2つの平面視短冊状のブリッジ部3bb,3bbが空洞部11の周方向に離間して形成されている。これにより、2つのブリッジ部3bb,3bbと第2の赤外線吸収部33aとを空間的に分離し空洞部11に連通する平面視コ字状のスリット14が形成されている。熱型赤外線検出部3のうち、平面視において第1の薄膜構造部3aを囲む部位である支持部3dは、矩形枠状の形状となっている。なお、ブリッジ部3bbは、上述の各スリット13,14により、第2の赤外線吸収部33aおよび支持部3dそれぞれとの連結部位以外の部分が、第2の赤外線吸収部33aおよび支持部3dと空間的に分離されている。ここで、第2の薄膜構造部3aaは、支持部3dからの延長方向の寸法を93μm、この延長方向に直交する幅方向の寸法を75μmとし、各ブリッジ部3bbの幅寸法を23μm、各スリット13,14の幅を5μmに設定してあるが、これらの値は一例であって特に限定するものではない。
第1の薄膜構造部3aは、半導体基板1の上記一表面側に形成されたシリコン酸化膜1bと、当該シリコン酸化膜1b上に形成されたシリコン窒化膜32と、当該シリコン窒化膜32上に形成された感温部30と、シリコン窒化膜32の表面側で感温部30を覆うように形成された層間絶縁膜50と、層間絶縁膜50上に形成されたパッシベーション膜60との積層構造部をパターニングすることにより形成されている。層間絶縁膜50は、BPSG膜により構成し、パッシベーション膜60は、PSG膜と当該PSG膜上に形成されたNSG膜との積層膜により構成してある。本実施形態では、熱型赤外線検出部3が、半導体基板1の上記一表面側においてサーモパイル30aが埋設された薄膜構造部を構成しており、熱型赤外線検出部3においてSiO2系材料により形成された部位の露出表面が有機材料により疎水化処理されている。ここで、有機材料としては、例えば、CH3基を含む有機材料であるHMDS((CH3)3SiNHSi(CH3)3:hexamethyle disilazane)を用いることが好ましい。第1の薄膜構造部3aにおいてSiO2系材料により形成された部位のSi原子がH2OやOH基と結合している場合でも、HMDSにより疎水化処理を行うことにより、図1(c)に示すように、CH3基により終端させることができ、疎水性を高めることができる。
上述の熱型赤外線検出部3では、シリコン窒化膜32のうち第1の薄膜構造部3aのブリッジ部3bb,3bb以外の部位が第1の赤外線吸収部33を構成している。また、支持部3dは、シリコン酸化膜1bとシリコン窒化膜32と層間絶縁膜50とパッシベーション膜60とで構成されている。
また、赤外線センサチップ100は、層間絶縁膜50とパッシベーション膜60との積層膜が、半導体基板1の上記一表面側において、熱型赤外線検出部3の形成用領域A1とMOSトランジスタ4の形成用領域A2とに跨って形成されており、この積層膜のうち、熱型赤外線検出部3の形成用領域A1に形成された部分が赤外線吸収膜70(図5(b)参照)を兼ねている。ここで、赤外線吸収膜70の屈折率をn2、検出対象の赤外線の中心波長をλとするとき、赤外線吸収膜70の厚さt2をλ/4n2に設定するようにしているので、検出対象の波長(例えば、8〜12μm)の赤外線の吸収効率を高めることができ、高感度化を図れる。例えば、n2=1.4、λ=10μmの場合には、t2≒1.8μmとすればよい。なお、本実施形態では、層間絶縁膜50の膜厚を0.8μm、パッシベーション膜60の膜厚を1μm(PSG膜の膜厚を0.5μm、NSG膜の膜厚を0.5μm)としてある。
また、各画素部2では、空洞部11の内周形状が矩形状であり、連結片3cは、平面視X字状に形成されており、第2の薄膜構造部3aaの延長方向に交差する斜め方向において隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士、第2の薄膜構造部3aaの延長方向において隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士、第2の薄膜構造部3aaの延長方向に直交する方向において隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士を連結している。
サーモパイル30aは、シリコン窒化膜32上で第2の薄膜構造部3aaと支持部3dとに跨って形成されたn形ポリシリコン層34とp形ポリシリコン層35との一端部同士を第2の赤外線吸収部33aの赤外線入射面側で金属材料(例えば、Al−Siなど)からなる接続部36により電気的に接続した複数個(図3に示した例では、9個)の熱電対を有している。また、サーモパイル30aは、半導体基板1の上記一表面側で互いに隣り合う熱電対のn形ポリシリコン層34の他端部とp形ポリシリコン層35の他端部とが金属材料(例えば、Al−Siなど)からなる接続部37により接合され電気的に接続されている。ここで、サーモパイル30aは、n形ポリシリコン層34の上記一端部とp形ポリシリコン層35の上記一端部と接続部36とで温接点T1を構成している。また、n形ポリシリコン層34の上記他端部とp形ポリシリコン層35の上記他端部と接続部37とで冷接点T2を構成している。要するに、サーモパイル30aの各温接点T1は、熱型赤外線検出部3において空洞部11に重なる領域に形成され、各冷接点T2は、熱型赤外線検出部3において空洞部11に重ならない領域に形成されている。なお、本実施形態における赤外線センサチップ100では、サーモパイル30aの各n形ポリシリコン層34および各p形ポリシリコン層35それぞれにおいて、上述のブリッジ部3bb,3bbに形成されている部位および半導体基板1の上記一表面側のシリコン窒化膜32上に形成されている部位でも赤外線を吸収することができる。
また、赤外線センサチップ100は、空洞部11の形状が、四角錘状であり、平面視における中央部の方が周部に比べて深さ寸法が大きくなっているので、第1の薄膜構造部3aの中央部に温接点T1が集まるように各画素部2におけるサーモパイル30aの平面レイアウトを設計してある。すなわち、図3の上下方向における真ん中の2つの第2の薄膜構造部3aaでは、図3および図6に示すように、3つの第2の薄膜構造部3aaの並設方向に沿って温接点T1を並べて配置してあるのに対し、当該上下方向における上側の2つの小薄膜構造部3aaでは、図3および図7に示すように、3つの第2の薄膜構造部3aaの並設方向において真ん中の第2の薄膜構造部3aaに近い側に温接点T1を集中して配置してあり、当該上下方向における下側の2つの第2の薄膜構造部3aaでは、図3に示すように、3つの第2の薄膜構造部3aaの並設方向において真ん中の第2の薄膜構造部3aaに近い側に温接点T1を集中して配置してある。しかして、本実施形態における赤外線センサチップ100では、図3の上下方向における上側、下側の第2の薄膜構造部3aaの複数の温接点T1の配置が、真ん中の第2の薄膜構造部3aaの複数の温接点T1の配置と同じである場合に比べて、温接点T1の温度変化を大きくできるので、感度を向上できる。なお、本実施形態では、空洞部11の最深部の深さを所定深さdp(図5(b)参照)とするとき、所定深さdpを200μmに設定してあるが、この値は一例であり、特に限定するものではない。
また、第2の薄膜構造部3aaは、シリコン窒化膜32の赤外線入射面側においてサーモパイル30aを形成していない領域に、第2の薄膜構造部3aaの反りを抑制するとともに赤外線を吸収するn形ポリシリコン層からなる赤外線吸収層39が形成されている。また、隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士を連結する連結片3cには、当該連結片3cを補強するn形ポリシリコン層からなる補強層39b(図8参照)が設けられている。ここで、補強層39bは、赤外線吸収層39と連続一体に形成されている。しかして、赤外線センサチップ100では、連結片3cが補強層39bにより補強されているので、使用中の外部の温度変化や衝撃に起因して発生する応力による破損を防止でき、また、製造時の破損を低減でき、製造歩留まりの向上を図れる。なお、本実施形態では、図8に示す連結片3cの長さ寸法L1を24μm、幅寸法L2を5μm、補強層39bの幅寸法L3を1μmに設定してあるが、これらの数値は一例であり、特に限定するものではない。ただし、本実施形態のように半導体基板1としてシリコン基板を用いており、補強層39bがn形ポリシリコン層により形成される場合には、空洞部11の形成時に補強層39bがエッチングされるのを防止するために、補強層39bの幅寸法は、連結片3cの幅寸法よりも小さく設定し、平面視において補強層39bの両側縁が連結片3cの両側縁よりも内側に位置する必要がある。
また、赤外線センサチップ100は、図8および図13(b)に示すように、連結片3cの両側縁と第2の薄膜構造部3aaの側縁との間にそれぞれ面取り部3d,3dが形成され、X字状の連結片3cの略直交する側縁間にも面取り部3eが形成されている。しかして、赤外線センサチップ100では、図13(a)に示すように面取り部が形成されていない場合に比べて、連結片3cと第2の薄膜構造部3aaとの連結部位での応力集中を緩和でき、製造時に発生する残留応力を低減できるとともに製造時の破損を低減でき、製造歩留まりの向上を図れる。また、使用中の外部の温度変化や衝撃に起因して発生する応力による破損を防止できる。なお、図8に示した例では、各面取り部3d,3eをR(アール)が3μmのR面取り部としてあるが、R面取り部に限らず、例えば、C面取り部としてもよい。
また、赤外線センサチップ100は、各熱型赤外線検出部3に、支持部3dと一方のブリッジ部3bbと第2の赤外線吸収部33aと他方のブリッジ部3bbと支持部3dとに跨るように引き回されたn形ポリシリコン層からなる故障診断用の配線(以下、故障診断用配線と称する)139を設けて、全ての故障診断用配線139を直列接続してある。しかして、m×n個の故障診断用配線139の直列回路へ通電することで、ブリッジ部3bbの折れなどの破損の有無を検出することができる。
要するに、赤外線センサチップ100は、製造途中での検査時や使用時において、m×n個の故障診断用配線139の直列回路への通電の有無によって、ブリッジ部3bbの折れや故障診断用配線139の断線などを検出することができる。また、赤外線センサチップ100では、上述の検査時や使用時において、m×n個の故障診断用配線139の直列回路へ通電して各感温部30の出力を検出することにより、感温部30の断線の有無や感度のばらつき(感温部30の出力のばらつき)などを検知することが可能となる。ここにおいて、感度のばらつきに関しては、画素部2ごとの感度のばらつきを検知することが可能であり、例えば、第1の薄膜構造部3aの反りや第1の薄膜構造部3aの半導体基板1へのスティッキングなどに起因した感度のばらつきを検知することが可能となる。ここで、本実施形態における赤外線センサチップ100では、平面視において、故障診断用配線139を複数の温接点T1の群の付近において折り返され蛇行した形状としてある。したがって、故障診断用配線139へ通電することにより発生するジュール熱によって、各温接点T1を効率良く温めることができる。上述の故障診断用配線139は、n形ポリシリコン層34およびp形ポリシリコン層35と同一平面上に同一厚さで形成されている。
上述の赤外線吸収層39および故障診断用配線139は、n形ポリシリコン層34と同じn形不純物(例えば、リンなど)を同じ不純物濃度(例えば、1018〜1020cm−3)で含んでおり、n形ポリシリコン層34と同時に形成されている。また、p形ポリシリコン層35のp形不純物として例えばボロンを採用すればよく、不純物濃度を例えば1018〜1020cm−3程度の範囲で適宜設定すればよい。本実施形態では、n形ポリシリコン層34およびp形ポリシリコン層35それぞれの不純物濃度が1018〜1020cm−3であり、熱電対の抵抗値を低減でき、S/N比の向上を図れる。なお、赤外線吸収層39および故障診断用配線139は、n形ポリシリコン層34と同じn形不純物を同じ不純物濃度でドーピングしてあるが、これに限らず、例えば、p形ポリシリコン層35と同じ不純物を同じ不純物濃度でドーピングしてもよい。
ところで、本実施形態では、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39、および故障診断用配線139の屈折率をn1、検出対象の赤外線の中心波長をλとするとき、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39、および故障診断用配線139それぞれの厚さt1をλ/4n1に設定するようにしている。しかして、検出対象の波長(例えば、8〜12μm)の赤外線の吸収効率を高めることができ、高感度化を図れる。例えば、n1=3.6、λ=10μmの場合には、t1≒0.69μmとすればよい。
また、本実施形態では、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39、および故障診断用配線139それぞれの不純物濃度が1018〜1020cm−3であるので、赤外線の吸収率を高くしつつ赤外線の反射を抑制することができて、感温部30の出力のS/N比を高めることができる。また、赤外線吸収層39および故障診断用配線139をn形ポリシリコン層34と同一工程で形成できるから、低コスト化を図れる。
ここで、感温部30の接続部36と接続部37とは、半導体基板1の上記一表面側において、層間絶縁膜50によって絶縁分離されている(図9および図10参照)。すなわち、温接点T1側の接続部36は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50a1,50a2を通して、両ポリシリコン層34,35の上記各一端部と電気的に接続されている。また、冷接点T2側の接続部37は、層間絶縁膜50に形成されたコンタクトホール50a3,50a4を通して、両ポリシリコン層34,35の上記各他端部と電気的に接続されている。
また、MOSトランジスタ4は、上述のように、半導体基板1の上記一表面側においてMOSトランジスタ4の形成用領域A2に形成されている。
MOSトランジスタ4は、図5および図12に示すように、半導体基板1の上記一表面側にp+形ウェル領域41が形成され、p+形ウェル領域41内に、n+形ドレイン領域43とn+形ソース領域44とが離間して形成されている。さらに、p+形ウェル領域41内には、n+形ドレイン領域43とn+形ソース領域44とを囲むp++形チャネルストッパ領域42が形成されている。
p+形ウェル領域41においてn+形ドレイン領域43とn+形ソース領域44との間に位置する部位の上には、シリコン酸化膜(熱酸化膜)からなるゲート絶縁膜45を介してn形ポリシリコン層からなるゲート電極46が形成されている。
また、n+形ドレイン領域43上には、金属材料(例えば、Al−Siなど)からなるドレイン電極47が形成され、n+形ソース領域44上には、金属材料(例えば、Al−Siなど)からなるソース電極48が形成されている。
ゲート電極46、ドレイン電極47およびソース電極48は、上述の層間絶縁膜50によって絶縁分離されている。ここで、ドレイン電極47は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50dを通してn+形ドレイン領域43と電気的に接続され、ソース電極48は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50eを通してn+形ソース領域44と電気的に接続されている。
赤外線センサチップ100の各画素部2では、MOSトランジスタ4のソース電極48と感温部30の一端とが電気的に接続され、感温部30の他端が基準バイアス線5に電気的に接続されている。また、各画素部2では、MOSトランジスタ4のドレイン電極47が、垂直読み出し線7と電気的に接続され、ゲート電極46が、当該ゲート電極46に連続一体に形成されたn形ポリシリコン配線からなる水平信号線6と電気的に接続されている。また、各画素部2では、MOSトランジスタ4のp++形チャネルストッパ領域42上に、金属材料(例えば、Al−Siなど)からなるグラウンド用の電極(以下、グラウンド用電極と称する)49が形成されている。このグラウンド用電極49は、当該p++形チャネルストッパ領域42をn+形ドレイン領域43およびn+形ソース領域44よりも低電位にバイアスして素子分離するための共通グラウンド線8と電気的に接続されている。なお、グラウンド用電極49は、層間絶縁膜50に形成したコンタクトホール50fを通してp++形チャネルストッパ領域42と電気的に接続されている。
上述の赤外線センサチップ100によれば、通電されることにより発生するジュール熱によって温接点T1を温める自己診断用配線139を備えているので、自己診断用配線139へ通電してサーモパイル30aの出力を測定することにより、サーモパイル30aの断線などの故障の有無を判断することが可能となって、信頼性の向上を図れ、しかも、自己診断用配線139は、熱型赤外線検出部3において半導体基板1の空洞部11に重なる領域でサーモパイル30aと重ならないように配置されているので、自己診断用配線139によるサーモパイル30aの温接点T1の熱容量の増大を防止でき、感度および応答速度の向上を図れる。
ここで、赤外線センサチップ100は、使用時において自己診断を行わない通常時において、自己診断用配線139も外部からの赤外線を吸収するので、複数の温接点T1の温度の均一化を図れ、感度の向上を図れる。なお、赤外線センサチップ100では、赤外線吸収層39および補強層39bも外部からの赤外線を吸収するので、複数の温接点T1の温度の均一化を図れ、感度の向上を図れる。また、赤外線センサチップ100の使用時の自己診断は、IC素子102に設けられた自己診断回路(図示せず)により定期的に行われるが、必ずしも定期的に行う必要はない。
また、赤外線センサチップ100は、第1の薄膜構造部3aが、複数の線状のスリット13を設けることによって、空洞部11の内周方向に沿って並設されそれぞれ熱型赤外線検出部3において空洞部11を囲む部位である支持部3dから内方へ延長された複数の第2の薄膜構造部3aaに分離され、各第2の薄膜構造部3aaごとにサーモパイル30aの温接点T1が設けられるとともに、各サーモパイル30aごとに出力を取り出す場合に比べて温度変化に対する出力変化が大きくなる接続関係で全てのサーモパイル30aが電気的に接続されているので、応答速度および感度の向上を図れ、しかも、全ての第2の薄膜構造部3aaに跨って自己診断用配線139が形成されているので、熱型赤外線検出部3の全てのサーモパイル30aを一括して自己診断することが可能となる。また、赤外線センサチップ100では、隣接する第2の薄膜構造部3aa,3aa同士を連結する連結片3cが形成されていることにより、各第2の薄膜構造部3aaの反りを低減でき、構造安定性の向上を図れ、感度が安定する。
また、赤外線センサチップ100は、n形ポリシリコン層34とp形ポリシリコン層35と赤外線吸収層39と補強層39bと自己診断用配線139とが同一の厚さに設定されているので、第2の薄膜構造部3aaの応力バランスの均一性が向上し、第2の薄膜構造部3aaの反りを抑制することができ、製品ごとの感度のばらつきや、画素部2ごとの感度のばらつきを低減できる。
また、赤外線センサチップ100は、自己診断用配線139が、第1の熱電要素であるn形ポリシリコン層34もしくは第2の熱電要素であるp形ポリシリコン層35と同じ材料により形成されているので、自己診断用配線139を第1の熱電要素もしくは第2の熱電要素と同時に形成することが可能となり、製造プロセスの簡略化による低コスト化を図れる。
また、赤外線センサチップ100は、赤外線吸収部33および自己診断用配線139を備えた複数の画素部2が、半導体基板1の上記一表面側でアレイ状に設けられているので、製造時や使用時の自己診断に際して各画素部2それぞれの自己診断用配線139に通電することにより、各画素部2それぞれの感温部30の感度のばらつきを把握することが可能となる。
また、赤外線センサチップ100は、各画素部2ごとに感温部30の出力を読み出すためのMOSトランジスタ4を有しているので、出力用のパッドVout(図14参照)の数を少なくでき、小型化および低コスト化を図れる。
以下、赤外線センサチップ100の製造方法について図15〜図18を参照して説明する。
まず、シリコン基板からなる半導体基板1の上記一表面側に第1の所定膜厚(例えば、0.3μm)の第1のシリコン酸化膜31と第2の所定膜厚(例えば、0.1μm)のシリコン窒化膜32との積層膜からなる絶縁層を形成する絶縁層形成工程を行う。その後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して当該絶縁層のうち熱型赤外線検出部3の形成用領域A1に対応する部分の一部を残してMOSトランジスタ4の形成用領域A2に対応する部分をエッチング除去する絶縁層パターニング工程を行うことによって、図15(a)に示す構造を得る。ここにおいて、シリコン酸化膜31は、半導体基板1を所定温度(例えば、1100℃)で熱酸化することにより形成し、シリコン窒化膜32は、LPCVD法により形成している。
上述の絶縁層パターニング工程の後、半導体基板1の上記一表面側にp+形ウェル領域41を形成するウェル領域形成工程を行い、続いて、半導体基板1の上記一表面側におけるp+形ウェル領域41内にp++形チャネルストッパ領域42を形成するチャネルストッパ領域形成工程を行うことによって、図15(b)に示す構造を得る。ここで、ウェル領域形成工程では、まず、半導体基板1の上記一表面側の露出部位を所定温度で熱酸化することにより第2のシリコン酸化膜(熱酸化膜)51を選択的に形成する。その後、p+形ウェル領域41を形成するためのマスクを利用したフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用してシリコン酸化膜51をパターニングする。続いて、p形不純物(例えば、ボロンなど)のイオン注入を行ってから、ドライブインを行うことにより、p+形ウェル領域41を形成する。また、チャネルストッパ領域形成工程では、半導体基板1の上記一表面側を所定温度で熱酸化することにより第3のシリコン酸化膜(熱酸化膜)52を選択的に形成する。その後、p++形チャネルストッパ領域42を形成するためのマスクを利用したフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して第3のシリコン酸化膜52をパターニングする。続いて、p形不純物(例えば、ボロンなど)のイオン注入を行ってから、ドライブインを行うことにより、p++形チャネルストッパ領域42を形成する。なお、第1のシリコン酸化膜31と第2のシリコン酸化膜51と第3のシリコン酸化膜52とで、半導体基板1の上記一表面側のシリコン酸化膜1bを構成している。
上述のチャネルストッパ領域形成工程の後、n+形ドレイン領域43およびn+形ソース領域44を形成するソース・ドレイン形成工程を行う。このソース・ドレイン形成工程では、p+形ウェル領域41におけるn+形ドレイン領域43およびn+形ソース領域44それぞれの形成予定領域にn形不純物(例えば、リンなど)のイオン注入を行ってから、ドライブを行うことによって、n+形ドレイン領域43およびn+形ソース領域44を形成する。
ソース・ドレイン形成工程の後、半導体基板1の上記一表面側に熱酸化により所定膜厚(例えば、600Å)のシリコン酸化膜(熱酸化膜)からなるゲート絶縁膜45を形成するゲート絶縁膜形成工程を行う。続いて、半導体基板1の上記一表面側の全面にゲート電極46、水平信号線6(図3参照)、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39および故障診断用配線139の基礎となる所定膜厚(例えば、0.69μm)のノンドープポリシリコン層をLPCVD法により形成するポリシリコン層形成工程を行う。その後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して上記ノンドープポリシリコン層のうちゲート電極46、水平信号線6、n形ポリシリコン層34、p形ポリシリコン層35、赤外線吸収層39および故障診断用配線139それぞれに対応する部分が残るようにパターニングするポリシリコン層パターニング工程を行う。続いて、上記ノンドープポリシリコン層のうちp形ポリシリコン層35に対応する部分にp形不純物(例えば、ボロンなど)のイオン注入を行ってからドライブを行うことによりp形ポリシリコン層35を形成するp形ポリシリコン層形成工程を行う。その後、上記ノンドープポリシリコン層のうちn形ポリシリコン層34、赤外線吸収層39、故障診断用配線139、ゲート電極46および水平信号線6に対応する部分にn形不純物(例えば、リンなど)のイオン注入を行ってからドライブを行うことによりn形ポリシリコン層34、赤外線吸収層39、故障診断用配線139、ゲート電極46および水平信号線6を形成するn形ポリシリコン層形成工程を行うことによって、図16(a)に示す構造を得る。なお、p形ポリシリコン層形成工程とn形ポリシリコン層形成工程との順序は逆でもよい。
上述のp形ポリシリコン層形成工程およびn形ポリシリコン層形成工程が終了した後、半導体基板1の上記一表面側に層間絶縁膜50を形成する層間絶縁膜形成工程を行う。続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して層間絶縁膜50に各コンタクトホール50a1,50a2,50a3,50a4,50d,50e,50f(図9、図10、図12参照)を形成するコンタクトホール形成工程を行うことによって、図16(b)に示す構造を得る。層間絶縁膜形成工程では、半導体基板1の上記一表面側に所定膜厚(例えば、0.8μm)のBPSG膜をCVD法により堆積させてから、所定温度(例えば、800℃)でリフローすることにより平坦化された層間絶縁膜50を形成する。
上述のコンタクトホール形成工程の後、半導体基板1の上記一表面側の全面に接続部36,37、ドレイン電極47、ソース電極48、基準バイアス線5、垂直読み出し線7、グラウンド線8、共通グラウンド線9および各パッドVout,Vsel,Vref,Vdd,Gndなど(図14参照)の基礎となる所定膜厚(例えば、2μm)の金属膜(例えば、Al−Si膜)をスパッタ法などにより形成する金属膜形成工程を行う。続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して金属膜をパターニングすることで接続部36,37、ドレイン電極47、ソース電極48、基準バイアス線5、垂直読み出し線7、グラウンド線8、共通グラウンド線9および各パッドVout,Vsel,Vref,Vdd,Gndなどを形成する金属膜パターニング工程を行うことによって、図17(a)に示す構造を得る。なお、金属膜パターニング工程におけるエッチングはRIEにより行っている。また、この金属膜パターニング工程を行うことにより、温接点T1および冷接点T2が形成される。
上述の金属膜パターニング工程の後、半導体基板1の上記一表面側(つまり、層間絶縁膜50の表面側)に所定膜厚(例えば、0.5μm)のPSG膜と所定膜厚(例えば、0.5μm)のNSG膜との積層膜からなるパッシベーション膜60をCVD法により形成するパッシベーション膜形成工程を行うことによって、図17(b)に示す構造を得る。
上述のパッシベーション膜形成工程の後、シリコン酸化膜31、シリコン窒化膜32、層間絶縁膜50、パッシベーション膜60などを備え、感温部30などが埋設された積層構造部をパターニングすることにより、第2の薄膜構造部3aaおよび連結片3cを形成する積層構造部パターニング工程を行うことによって、図18(a)に示す構造を得る。なお、積層構造部パターニング工程において、各スリット13,14を形成している。
上述の積層構造部パターニング工程の後、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を利用して各パッドVout,Vsel,Vref,Vdd,Gndを露出させる開口部(図示せず)を形成する開口部形成工程を行う。次に、各スリット13,14をエッチング液導入孔としてエッチング液を導入し半導体基板1を異方性エッチング(結晶異方性エッチング)することにより半導体基板1に空洞部11を形成する空洞部形成工程を行うことで、図18(b)に示す構造の赤外線センサチップ100を得る。ここで、開口部形成工程におけるエッチングはRIEにより行っている。また、空洞部形成工程では、エッチング液として所定温度(例えば、85℃)に加熱したTMAH溶液を用いているが、エッチング液はTMAH溶液に限らず、他のアルカリ系溶液(例えば、KOH溶液など)を用いてもよい。なお、空洞部形成工程が終了するまでの全工程はウェハレベルで行うので、空洞部形成工程が終了した後、個々の赤外線センサチップ100に分離する分離工程を行えばよい。また、上述の説明から分かるように、MOSトランジスタ4の製造方法に関してみれば、周知の一般的なMOSトランジスタの製造方法を採用しており、熱酸化による熱酸化膜の形成、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術による熱酸化膜のパターニング、不純物のイオン注入、ドライブイン(不純物の拡散)の基本工程を繰り返すことにより、p+形ウェル領域41、p++形チャネルストッパ領域42、n+形ドレイン領域43とn+形ソース領域44を形成している。
上述の赤外線センサチップ100では、半導体基板1として上記一表面が(100)面の単結晶シリコン基板を用いて、エッチング速度の結晶面方位依存性を利用した異方性エッチングにより形成する空洞部11を四角錘状の形状としてあるが、四角錘状の形状に限らず、四角錘台状の形状でもよい。また、半導体基板1の上記一表面の面方位は特に限定するものではなく、例えば、半導体基板1として上記一表面が(110)面の単結晶シリコン基板を用いてもよい。
IC素子102は、ASIC(:Application Specific IC)であり、シリコン基板を用いて形成されている。また、IC素子102としてベアチップを用いている。しかして、本実施形態では、IC素子102がベアチップをパッケージングしたものである場合に比べて、パッケージ103の小型化を図れる。
IC素子102の回路構成は、赤外線センサチップ100の種類などに応じて適宜設計すればよく、例えば、赤外線センサチップ100を制御する制御回路、赤外線センサチップ100の複数の出力用のパッド80に電気的に接続された複数の入力用のパッドの出力電圧を増幅する増幅回路、複数の入力用のパッドの出力電圧を択一的に上記増幅回路に入力するマルチプレクサなどを備えた回路構成とすれば、赤外線画像を得ることができる。また、IC素子102は、上述の自己診断回路も備えている。
本実施形態の赤外線センサは、パッケージ本体104とパッケージ蓋105とで構成されるパッケージ103の内部空間(気密空間)165を、ドライ窒素雰囲気としてあるが、これに限らず、例えば、真空雰囲気としてもよい。
パッケージ本体104は、絶縁材料からなる基体104aに金属材料からなる配線パターン(図示せず)および電磁シールド層144が形成されており、電磁シールド層144により電磁シールド機能を有している。一方、パッケージ蓋105は、レンズ153が導電性を有するとともに、レンズ153がメタルキャップ152に導電性材料により接合されており、導電性を有している。そして、パッケージ蓋105は、パッケージ本体104の電磁シールド層144と電気的に接続されている。しかして、本実施形態では、パッケージ本体104の電磁シールド層144とパッケージ蓋105とを同電位とすることができる。その結果、パッケージ103は、赤外線センサチップ100とIC素子102と上記配線パターンと後述のボンディングワイヤ(図示せず)と含んで構成されるセンサ回路(図示せず)への外来の電磁ノイズを防止する電磁シールド機能を有している。
パッケージ本体104は、赤外線センサチップ100およびIC素子102が一表面側に実装される平板状のセラミック基板により構成してある。要するに、パッケージ本体104は、基体104aが絶縁材料であるセラミックスにより形成されており、配線パターンのうち基体104aの一表面側に形成された部位に、赤外線センサチップ100およびIC素子102それぞれのパッド(図示せず)が、ボンディングワイヤを介して適宜接続されている。なお、赤外線センサにおいて、赤外線センサチップ100とIC素子102とは、ボンディングワイヤなどを介して電気的に接続されている。各ボンディングワイヤとしては、Alワイヤに比べて耐腐食性の高いAuワイヤを用いることが好ましい。
本実施形態では、パッケージ本体104の絶縁材料としてセラミックスを採用しているので、上記絶縁材料としてエポキシ樹脂などの有機材料を採用する場合に比べて、パッケージ本体104の耐湿性および耐熱性を向上させることができる。ここで、絶縁材料のセラミックスとして、アルミナを採用すれば、窒化アルミニウムや炭化珪素などを採用する場合に比べて、上記絶縁材料の熱伝導率が小さく、IC素子102やパッケージ103の外部からの熱に起因した赤外線センサチップ100の温度上昇を抑制できる。
また、パッケージ本体104は、上述の配線パターンの一部により構成される外部接続電極(図示せず)が、基体104aの他表面と側面とに跨って形成されている。しかして、本実施形態の赤外線センサでは、回路基板などへの2次実装後において、回路基板などとの接合部の外観検査を容易に行うことができる。
また、赤外線センサチップ100は、パッケージ本体104に対して、第1のダイボンド剤(例えば、シリコーン樹脂など)からなる複数の接合部115を介して実装されている。また、IC素子102は、パッケージ本体104に対して、第2のダイボンド剤(例えば、シリコーン樹脂など)からなる接合部125を介して実装されている。各ダイボンド剤としては、低融点ガラスやエポキシ系樹脂やシリコーン系樹脂などの絶縁性接着剤、半田(鉛フリー半田、Au−Sn半田など)や銀ペーストなどの導電性接着剤を用いればよい。また、各ダイボンド剤を用いずに、例えば、常温接合法や、Au−Sn共晶もしくはAu−Si共晶を利用した共晶接合法などにより接合してもよい。
上述の赤外線センサチップ100は、複数の接合部115を介してパッケージ本体104に実装してあるので、赤外線センサチップ100それぞれの裏面の全体が接合部115を介してパッケージ本体104に接合される場合に比べて、赤外線センサチップ100とパッケージ本体104との間の空間116が断熱部として機能することと、接合部115の断面積の低減とにより、パッケージ本体104から赤外線センサチップ100へ熱が伝達しにくくなる。
この接合部115の数は、特に限定するものではないが、赤外線センサチップ100の外周形状が矩形状(正方形状ないし長方形状)の場合には、例えば、3つが好ましく、この場合には、赤外線センサチップ100の外周形状に基づいて規定した仮想三角形の3つの頂点に対応する3箇所に設けることにより、パッケージ本体104への実装時などの温度変化に起因したパッケージ本体104の変形が赤外線センサチップ100の傾きとして伝わるから、赤外線センサチップ100が変形するのを抑制することができ、赤外線センサチップ100に生じる応力を低減することが可能となる。なお、本実施形態では、赤外線センサチップ100の外周形状が例えば正方形状の場合、赤外線センサチップ100の外周の1辺の両端の2箇所と、当該1辺に平行な辺の1箇所(ここでは、中央部)との3箇所に頂点を有する仮想三角形を規定しているが、仮想三角形の頂点の位置は、赤外線センサチップ100の外周形状、赤外線センサチップ100の各パッド80へのワイヤボンディング時の接合信頼性(言い換えれば、赤外線センサチップ100のパッド80の位置)を考慮して規定することが好ましい。接合部115には、赤外線センサチップ100とパッケージ本体104との距離を規定するスペーサを混入させてもよく、このようなスペーサを混入させておけば、赤外線センサの製品間での赤外線センサチップ100とパッケージ本体104との間の熱絶縁性能のばらつきを低減可能となる。ただし、赤外線センサチップ100の裏面全体を、接合部115を介してパッケージ本体104に接合してもよい。
また、IC素子102は、外周形状が矩形状(正方形状ないし長方形状)であり、裏面全体が接合部125を介してパッケージ本体104に接合されている。
パッケージ蓋105は、パッケージ本体104側の一面が開放された箱状に形成され赤外線センサチップ100に対応する部位に開口窓152aが形成されたメタルキャップ152と、メタルキャップ152の開口窓152aを閉塞する形でメタルキャップ152に接合されたレンズ153とで構成されており、メタルキャップ152の上記一面がパッケージ本体104により閉塞される形でパッケージ本体104に気密的に接合されている。ここで、パッケージ本体104の上記一表面の周部には、パッケージ本体104の外周形状に沿った枠状の金属パターン147(図1(a)参照)が全周に亘って形成されており、パッケージ蓋105とパッケージ本体104の金属パターン147とは、シーム溶接(抵抗溶接法)により金属接合されており、気密性および電磁シールド効果を高めることができる。なお、パッケージ蓋105のメタルキャップ152は、コバールにより形成されており、Niめっきが施されている。また、パッケージ本体104の金属パターン147は、コバールにより形成され、Niのめっきが施され、さらにAuのめっきが施されている。
パッケージ蓋105とパッケージ本体104の金属パターン147との接合方法は、シーム溶接に限らず、他の溶接(例えば、スポット溶接)や、導電性樹脂により接合してもよい。ここで、導電性樹脂として異方導電性接着剤を用いれば、樹脂(バインダー)中に分散された導電粒子の含有量が少なく、接合時に加熱・加圧を行うことでパッケージ蓋105とパッケージ本体104との接合部の厚みを薄くできるので、外部からパッケージ103内へ水分やガス(例えば、水蒸気、酸素など)が侵入するのを抑制できる。また、導電性樹脂として、酸化バリウム、酸化カルシウムなどの乾燥剤を混入させたものを用いてもよい。
なお、パッケージ本体104およびパッケージ蓋105の外周形状は矩形状としてあるが、矩形状に限らず、例えば、円形状でもよい。また、パッケージ蓋105のメタルキャップ152は、パッケージ本体104側の端縁から全周に亘って外方に延設された鍔部152bを備えており、鍔部152bが全周に亘ってパッケージ本体104と接合されている。
レンズ153は、平凸型の非球面レンズである。しかして、本実施形態の赤外線センサでは、レンズ153の薄型化を図りながらも、赤外線センサチップ100での赤外線の受光効率の向上による高感度化を図れる。また、本実施形態の赤外線センサでは、赤外線センサチップ100の検知エリアをレンズ153により設定することが可能となる。レンズ153は、所望のレンズ形状に応じて半導体基板(ここでは、シリコン基板)との接触パターンを設計した陽極を半導体基板の一表面側に半導体基板との接触がオーミック接触となるように形成した後に半導体基板の構成元素の酸化物をエッチング除去する溶液からなる電解液中で半導体基板の他表面側を陽極酸化することで除去部位となる多孔質部を形成してから当該多孔質部を除去することにより形成された半導体レンズ(ここでは、シリコンレンズ)により構成されている。しかして、レンズ153は、導電性を有している。なお、この種の陽極酸化技術を応用した半導体レンズの製造方法については、例えば、特許第3897055号公報、特許第3897056号公報などに開示されているので、説明を省略する。
本実施形態では、赤外線センサチップ100の検知エリアを上述の半導体レンズからなるレンズ153により設定することができ、また、レンズ153として、球面レンズよりも短焦点で且つ開口径が大きく収差が小さな半導体レンズを採用することができるから、短焦点化により、パッケージ103の薄型化を図れる。本実施形態の赤外線センサは、赤外線センサチップ100の検知対象の赤外線として、人体から放射される10μm付近の波長帯(8μm〜13μm)の赤外線を想定しており、レンズ153の材料として、ZnSやGaAsなどに比べて環境負荷が少なく且つ、Geに比べて低コスト化が可能であり、しかも、ZnSに比べて波長分散が小さなSiを採用している。
また、レンズ153は、メタルキャップ152における開口部152aの周部に導電性接着剤(例えば、鉛フリー半田、銀ペーストなど)からなる接合部158により固着されている。上述のように、接合部158の材料として導電性接着剤を採用することにより、レンズ153が、接合部158およびメタルキャップ152を介してパッケージ本体104の電磁シールド層144に電気的に接続されるので、電磁ノイズに対するシールド性を高めることができ、外来の電磁ノイズに起因したS/N比の低下を防止することができる。
上述のレンズ153には、赤外線センサチップ100での検知対象の赤外線の波長を含む所望の波長域の赤外線を透過し当該波長域以外の赤外線を反射する光学多層膜(多層干渉フィルタ膜)からなるフィルタ部(図示せず)を設けることが好ましい。このようなフィルタ部を設けることにより、所望の波長域以外の不要な波長域の赤外線や可視光をフィルタ部によりカットすることが可能となり、太陽光などによるノイズの発生を抑制することができ、高感度化を図れる。
ここにおいて、本実施形態では、上述のようにIC素子102としてベアチップを採用しているので、パッケージ蓋105が可視光をカットする機能を有するように、メタルキャップ152およびレンズ153およびフィルタ部の材料を適宜選択することにより、可視光に起因したIC素子102の起電力による誤動作を防止することができる。ただし、ベアチップからなるIC素子102における少なくともパッケージ蓋105側の表面に外部からの光を遮光する樹脂部(図示せず)を設けるようにすれば、IC素子102がベアチップをパッケージングしたものである場合に比べてパッケージ103の小型化を図りつつ、可視光に起因したIC素子102の起電力による誤動作を防止することができる。
また、本実施形態では、パッケージ本体104が平板状に形成されているので、パッケージ本体104への赤外線センサチップ100およびIC素子102の実装が容易になるとともに、パッケージ本体104の低コスト化が可能となる。また、パッケージ本体104が平板状に形成されているので、パッケージ本体104を、一面が開放された箱状の形状として、多層セラミック基板により構成し、パッケージ本体104の内底面に赤外線センサチップ100を実装する場合に比べて、パッケージ本体104の上記一表面側に配置される赤外線センサチップ100とレンズ153との間の距離の精度を高めることができ、より一層の高感度化を図れる。なお、以下では、パッケージ本体104において、赤外線センサチップ100を実装する領域を第1の領域140、IC素子102を実装する領域を第2の領域142と称する。
本実施形態の赤外線センサでは、パッケージ本体104において、第1の領域140に比べて、第2の領域142の厚みを薄くしてある。ここで、パッケージ本体104の第2の領域142は、基体104aの上記一表面に凹部104bを設けることにより、第1の領域140よりも厚みを薄くしてある。また、パッケージ本体104の第2の領域142では、電磁シールド層144が露出している。
また、パッケージ本体104の第2の領域142では、金属材料(例えば、Cuなど)からなる複数のビア(サーマルビア)145が基体104aの厚み方向に貫設されており、各ビア145が電磁シールド層144と接して熱結合されている。
ここで、IC素子102は、第2の領域142において電磁シールド層144に接合部125を介して実装されている。しかして、IC素子102で発生した熱を電磁シールド層144におけるIC素子102の直下の部位およびビア145を通してパッケージ103の外側へ効率良く放熱させることが可能となる。本実施形態では、電磁シールド層144のうち第2の領域142に形成された部位が、IC素子102が実装され熱結合される金属部を構成し、各ビア145が、第1の領域140を避けて形成されてパッケージ103の外側に一部が露出する放熱部を構成している。要するに、金属部は、第1の領域140を避けて形成されてパッケージ103の外側に一部が露出する放熱部と熱結合されている。
以下、本実施形態の赤外線センサの製造方法について説明する。
本実施形態の赤外線センサの製造にあたっては、上述の赤外線センサチップ100を製造する前工程が終了した後に、薄膜構造部たる熱型赤外線検出部3においてSiO2系材料により形成された部位の露出表面(パッシベーション膜70の表面)を有機材料により疎水化処理する疎水化処理工程を行ってから、パッケージ103の内部空間165を真空雰囲気とするパッケージング工程を行う。ここにおいて、疎水化処理工程では、例えば、CH3基を含む有機材料であるHMDSにより熱型赤外線検出部3の露出表面の疎水化処理(終端処理)を行う。この疎水化処理工程では、常圧、減圧または加圧下でHMDSの蒸気雰囲気に曝す方法やスピンコートで塗布してベーキングする方法などがある。この疎水化処理工程を行うようにすれば、疎水化処理工程を行う前に図19(a)に示すように熱型赤外線検出部3のSi原子がOH基と結合するとともに、H2Oを吸着しやすい親水性の状態となっている場合(例えば、パッシベーション膜70の露出表面でSi原子がOH基と結合している場合)でも、疎水化処理工程を行うことにより、図19(b)に示すようにCH3基により終端させることができるので、熱型赤外線検出部3の水分を低減できるとともに疎水性を高めることができる。その結果、熱型赤外線検出部3の熱伝導率、熱容量などの熱物性をより安定化できる。
上述の疎水化処理工程は、パッケージ103の内部空間165を所望の雰囲気(例えば、ドライ窒素雰囲気、真空雰囲気など)とするパッケージング工程の前処理工程として行うことが好ましく、これにより、気密空間165内に配置される熱型赤外線検出部3の水分を低減でき、センサ特性の経時劣化を抑制できる。
この場合、パッケージ本体104に赤外線センサチップ100およびIC素子102を実装する実装工程を行ってから、疎水化処理工程を行い、続いて、所望の雰囲気中でパッケージ蓋105とパッケージ本体104とを接合する接合工程を行うようにすればよい。
ところで、本実施形態の赤外線センサの製造方法においては、疎水化処理工程よりも前に、薄膜構造部たる熱型赤外線検出部3の水分を低減させる水分低減工程を行うことが好ましく、これにより、熱型赤外線検出部3の水分を低減でき、センサ特性の経時劣化を抑制できる。
水分低減工程としては、例えば、紫外線もしくは電子ビームを照射することにより薄膜構造部たる熱型赤外線検出部3のSi原子に結合しているOH基を脱離させるようにすればよい。ここで、水分低減工程において、上述の紫外線もしくは電子ビームを照射することにより熱型赤外線検出部3のSiO2系材料により形成されている部位のSi原子に結合しているOH基を脱離させるようにすれば、水分低減工程を行う前に図20(a)に示すようにSi原子がOH基と結合している場合(例えば、熱型赤外線検出部3の露出表面でSi原子がOH基と結合している場合)でも、紫外線もしくは電子ビームを照射することにより、図20(b)に示すようにOH基を脱離させることができる。ここにおいて、水分低減工程における紫外線もしくは電子ビームとしてSi−OH結合の結合エネルギよりもエネルギの高いものを選択すれば、OH基を脱離させることができる。
また、水分低減工程では、熱処理により薄膜構造部たる熱型赤外線検出部3のOH基を脱離させるようにしてもよい。この熱処理として、N2ガス、H2ガス、N2ガスとH2ガスとの混合ガスなどの雰囲気中でのアニールや、真空中でのアニールなどがある。ここで、N2ガス雰囲気中でのアニールによれば、Si−OH結合のOH基を熱エネルギにより脱離させてSi−N結合を形成することができ、また、OH基が脱離したSi原子の近傍にO原子やSi原子が存在すれば、新たなSi−O結合やSi−Si結合が形成され緻密化される。
また、H2ガス雰囲気中でのアニールによれば、Si−OH結合のOH基を熱エネルギにより脱離させてSi−H結合を形成することができるから、疎水性を高めることができ、また、OH基が脱離したSi原子の近傍にO原子やSi原子が存在すれば、新たなSi−O結合やSi−Si結合が形成され緻密化される。
また、真空中でのアニールによれば、Si−OH結合のOH基を熱エネルギにより脱離させることができ、OH基が脱離したSi原子の近傍にO原子やSi原子が存在すれば、新たなSi−O結合やSi−Si結合が形成され緻密化されるから、疎水性を高めることができる。
なお、熱処理でのアニール温度は、例えば、200〜600℃程度の範囲で適宜設定すればよい。
しかして、水分低減工程として熱処理を行うことにより、水分低減工程において断熱部4の水分を低減させる一方でOH基が脱離した近傍領域の分子構造を緻密化することができ、水分が吸着・脱離しにくくなり、センサ特性の経時劣化を抑制できる。
しかして、本実施形態の赤外線センサの製造方法においては、赤外線センサチップ100が多数形成されたウェハに対して個々の赤外線センサチップ100に分離するダイシング工程を行ってから、赤外線センサチップ100およびIC素子102をパッケージ本体104に実装する実装工程を行ってから、パッケージング工程の前処理工程として、上述の疎水化処理工程を行うので、赤外線センサチップ100の水分を低減することが可能な赤外線センサを提供することができる。
なお、水分低減工程は、上述のダイシング工程前のウェハの状態で行うようにしてもよいし、ダイシング工程と実装工程との間で赤外線センサチップ100に対して行うようにしてもよい。
以上説明した本実施形態の赤外線センサでは、半導体基板1の上記一表面側に、サーモパイル30aが埋設された薄膜構造部たる熱型赤外線検出部3が形成されるとともに、半導体基板1の上記一表面側において熱型赤外線検出部3の一部の直下に空洞部11が形成された赤外線センサチップ100と、赤外線センサチップ100が収納されたパッケージ103とを備え、熱型赤外線検出部3においてSiO2系材料により形成された部位の露出表面が有機材料により疎水化処理されているので、赤外線センサチップ100の水分を低減することが可能となる。要するに、本実施形態の赤外線センサでは、赤外線センサチップ100の熱型赤外線検出部3およびMOSトランジスタ4の水分を低減できるとともに当該熱型赤外線検出部3およびMOSトランジスタ4に水分が吸着するのを抑制できるので、熱型赤外線検出部3への水分の吸着に起因した熱型赤外線検出部3の熱伝導率の増加および熱型赤外線検出部3の熱容量の増加を抑制でき、高感度化および応答速度の高速化を図れる。また、熱型赤外線検出部3およびMOSトランジスタ4に吸着している水分が金属材料(例えば、Al−Siなど)により形成されている接続部36,37や、配線層(基準バイアス線5、共通基準バイアス線5a、垂直読み出し線7、水平信号線6、共通グラウンド線9など)の配線層に拡散して配線層が変質(酸化)するのを抑制でき、配線層の抵抗増加を抑制できるという利点もある。
また、本実施形態の赤外線センサにおいて、パッケージ103の内部空間165を真空雰囲気とすれば、高感度化を図ることができ、しかも、赤外線センサチップ100からの水分の脱ガスを低減できて、感度の経時変化を抑制することができる。
ところで、本実施形態の赤外線センサでは、赤外線センサチップ100において薄膜構造部を構成する熱型赤外線検出部3の層間絶縁膜50が、BPSG膜により構成されているが、Bの濃度を低減することにより、層間絶縁膜50内の水分を低減することができるので、BPSG膜におけるBの濃度は、層間絶縁膜50表面の平坦性を確保できる範囲で低減することが好ましい。
また、本実施形態の赤外線センサでは、パッケージ本体104において、赤外線センサチップ100を実装する第1の領域140に比べて、IC素子102を実装する第2の領域142の厚みよりも薄くしてある。しかして、IC素子102で発生した熱がパッケージ本体104を通る経路で赤外線センサチップ100に伝熱されにくくなり、IC素子102の発熱が赤外線センサチップ100に与える影響を低減でき、IC素子102の発熱に起因した感度の低下を抑制することが可能となる。
また、本実施形態の赤外線センサでは、パッケージ本体104の第2の領域142に、IC素子102が実装され熱結合される金属部(電磁シールド層144の一部により構成される)を備え、金属部が、第1の領域140を避けて形成されてパッケージ103の外側に一部が露出する放熱部であるビア145と熱結合されているので、IC素子102で発生した熱が金属部および放熱部を通して効率的に放熱されることとなり、第1の領域140側への伝熱が抑制されるから、IC素子102の発熱が赤外線センサチップ100に与える影響を更に低減できる。
また、本実施形態の赤外線センサでは、赤外線センサチップ100が、複数の接合部115を介してパッケージ本体104に実装されているので、赤外線センサチップ100とパッケージ本体104との間の空間116が断熱部として機能することと、接合部115の断面積の低減とにより、パッケージ本体104から赤外線センサチップ100へ熱が伝達しにくくなり、パッケージ103の外部からの熱やIC素子102からの熱が、パッケージ本体104を通して赤外線センサチップ100へ伝達されにくくなる。
上述のパッケージ本体104は、電磁シールド板を内蔵したプリント配線板により構成してもよく、第2の領域142で電磁シールド板の一面を露出させ当該電磁シールド板にIC素子102を実装するようにしてもよい。この場合には、当該プリント配線板により構成されるパッケージ本体104の周部とパッケージ蓋105とを、例えば、酸化バリウム、酸化カルシウムなどの乾燥剤を混入させた導電性樹脂や、導電性を有するBステージのエポキシ樹脂などからなる接合部により気密的に接合すればよい。
ところで、上述の赤外線センサは、IC素子102を備えているが、IC素子102については必ずしも備えている必要はない。また、IC素子102は、赤外線センサチップ100とは別のパッケージに収納してもよい。また、上記実施形態の赤外線センサチップ100は、各画素部2にMOSトランジスタ4を設けてあるので、感温部30とMOSトランジスタ4との間の配線に起因したノイズを低減することが可能となる。
また、赤外線センサチップ100は、必ずしも画素部2をアレイ状に備えた赤外線アレイセンサチップである必要はなく、少なくとも1つの熱型赤外線検出部3を備えたものであればよい。また、半導体基板1における空洞部11は、半導体基板1の厚み方向に貫通する形で形成してもよく、この場合は、空洞部11を形成する空洞部形成工程において、半導体基板1の上記一表面とは反対の他表面側から、半導体基板1における空洞部11の形成予定領域を、例えば誘導結合プラズマ(ICP)型のドライエッチング装置を用いた異方性エッチング技術を利用して形成すればよい。
1 半導体基板
3 熱型赤外線検出部(薄膜構造部)
11 空洞部
30a サーモパイル
70 パッシベーション膜
100 赤外線センサチップ
102 IC素子
103 パッケージ
165 内部空間
3 熱型赤外線検出部(薄膜構造部)
11 空洞部
30a サーモパイル
70 パッシベーション膜
100 赤外線センサチップ
102 IC素子
103 パッケージ
165 内部空間
Claims (7)
- 半導体基板の一表面側に、サーモパイルが埋設された薄膜構造部が形成されるとともに、前記半導体基板の前記一表面側において前記薄膜構造部の一部の直下に空洞部が形成された赤外線センサチップと、少なくとも前記赤外線センサチップが収納されたパッケージとを備え、前記薄膜構造部においてSiO2系材料により形成された部位の露出表面が有機材料により疎水化処理されてなることを特徴とする赤外線センサ。
- 前記パッケージの内部空間が真空雰囲気であることを特徴とする請求項1記載の赤外線センサ。
- 請求項1または請求項2記載の赤外線センサの製造方法であって、前記赤外線センサチップを製造する前工程が終了した後に、前記薄膜構造部において前記SiO2系材料により形成された部位の露出表面を有機材料により疎水化処理する疎水化処理工程を備えることを特徴とする赤外線センサの製造方法。
- 前記パッケージの前記内部空間を真空雰囲気とするパッケージング工程の前処理工程として、前記疎水化処理工程を行うことを特徴とする赤外線センサの製造方法。
- 前記疎水化処理工程よりも前に、前記薄膜構造部の水分を低減させる水分低減工程を備えることを特徴とする請求項3または請求項4記載の赤外線センサの製造方法。
- 前記水分低減工程は、紫外線もしくは電子ビームを照射することにより前記薄膜構造部のOH基を脱離させることを特徴とする請求項5記載の赤外線センサの製造方法。
- 前記水分低減工程は、熱処理により前記薄膜構造部のOH基を脱離させることを特徴とする請求項5記載の赤外線センサの製造方法。
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