JP3135017B2 - 空調装置の運転方法 - Google Patents

空調装置の運転方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、塗装ブース内の雰囲気
温度・湿度を一定に維持して同一条件で塗装することが
できるように、所定の温度及び湿度に調温・調湿された
空調空気を塗装ブース内に送給する空調装置の運転方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】外気を所定の温度に調温・調湿して得ら
れた空調空気を塗装ブース等に送給する空調装置は、装
置内に、外気を所定の湿度まで加湿するワッシャ,所定
の温度まで冷却するクーラ,所定の温度まで加熱するヒ
ータが設置され、これらワッシャ,クーラ,ヒータを稼
動させることにより、設定温度・設定湿度に調温・調湿
するように成されている。
【0003】 この場合において、従来は、外気の温度
・湿度に関係なく、飽和状態まで加湿、飽和状態を
維持して目標状態点の空気の露点温度まで加熱又は冷
却、設定温度まで加熱の三操作で調温,調湿を行って
いた。例えば、図4の空気線図において、温度25℃,
相対湿度85%RH,絶対湿度0.017kg/kgの状態点を空
調空気の目標状態点P 0 として設定した場合に、領域A
は絶対湿度が設定湿度より高い状態を示し、領域Bは絶
対湿度が設定湿度より低く、且つ、エンタルピが目標状
態点P より高い状態を示し、領域Cは絶対湿度が設定
湿度より低く、且つ、エンタルピが目標状態点P
気より低い状態を示す。
【0004】外気の状態点a が領域A内にある場合、
外気の絶対湿度が設定湿度より高いにもかかわらず、ワ
ッシャにより加湿されて飽和状態点a に達する。ま
た、外気の状態点b 1 及びc 1 が領域B及びC内にある場
合、外気の絶対湿度が設定湿度より低いので加湿が必要
となるが、ワッシャにより設定湿度に達しても、さらに
飽和状態b,cまで加湿される。そして、飽和状態
点a,b,cの温度は目標状態点P 空気の露
点温度Tより高いので、冷却器で冷却すると、冷却器
を通過する際に空気中の水分が結露して除湿されて、且
つ、その露点温度Tまで冷却される(a)。そし
て、露点温度Tに達したところで加熱器により加熱す
ると、その空気の状態点は空気線図上を絶対湿度一定で
右方向に推移して設定温度に達し、目標状態点の空
調空気が得られる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、外気の
状態にかかわらず、常にワッシャ,クーラ,ヒータを稼
動させて調温・調湿操作を行っているため、例えば、状
態点aの場合には、絶対湿度がもともと設定湿度より
高いのに敢えて加湿操作を行い、これを除湿するために
冷却操作を行わなければならず、その結果温度が下がる
ので、さらに加熱操作を行うという無駄な操作を行わな
ければならない。
【0006】したがって、制御操作に無駄があるだけで
なく、応答性が鈍く、エネルギ,ランニングコストが嵩
むという問題があった。そこで、本発明は、外気の状態
に応じて、加湿操作,冷却操作,加熱操作のうち不要な
操作を省き、無駄な制御操作を行うことなく、エネル
ギ,ランニングコストを軽減することを技術的課題とし
ている。
【0007】
【課題を解決するための手段】この課題を解決するため
に、本発明は、加湿器による加湿操作,冷却器による冷
却操作,加熱器による加熱操作により、外気を予め設定
した目標状態点の設定温度・設定湿度に調温・調湿し、
得られた空調空気を塗装ブースへ送給するように成され
た空調装置の運転方法において、採り入れる外気の温
度,湿度に基づき外気の絶対湿度を検出し、検出された
外気の絶対湿度が設定湿度より高い場合に、加湿器を停
止した状態で、冷却器の表面温度を目標状態点の空気の
露点温度以下にして冷却操作を行い、絶対湿度が設定湿
まで下がった時点でその空気の温度を検出し、検出さ
れた温度が設定温度より低い場合は、加熱器により加熱
操作を行うことを特徴とする。
【0008】
【作用】本発明によれば、外気の絶対湿度が設定湿度
り高い場合は、まず、冷却器表面温度を目標状態点の
気の露点温度以下にして冷却操作を行うと、その表面に
結露して除湿され、絶対湿度が設定湿度まで低下したと
ころで、加熱器を設定温度より高い温度にして加熱操作
を行うことにより調温すれば、所定の温度・湿度の空調
空気が得られる。また、外気の絶対湿度が設定湿度より
低い場合は、まず、設定湿度と等しくなるまで加湿操作
を行う。そして、外気のエンタルピが目標状態点の空気
より高い場合は同時に冷却操作を行い、外気のエンタル
ピが目標状態点の空気より低い場合は同時に加熱操作を
行うことにより、調温・調湿する。このようにすれば、
加湿操作,冷却操作,加熱操作の一つを外気の状態に応
じて省略しても、所定の温度・湿度の空調空気が得られ
る。
【0009】
【実施例】以下、本発明を図面に示す実施例に基づいて
具体的に説明する。図1は本発明方法を示す空気線図、
図2は空気線図上の状態変化を示す説明図、図3は本発
明方法に使用する空調装置である。
【0010】図中1は、採り入れた外気を調温・調湿す
る空調装置であって、装置1内には、その外気流入口2
側から空調空気流出口3側に向かって、外気を所定の湿
度まで加湿するワッシャ(加湿器)4,所定の温度まで
冷却するクーラ(冷却器)5,所定の温度まで加熱する
ヒータ(加熱器)6が設置され、空調空気流出口3には
送風ファン7が配されている。
【0011】ワッシャ4には、常温の加湿用水を供給す
る加湿用水供給管8が接続され、当該供給管8にはその
流量を調整する加湿水供給バルブ9が介装されている。
また、クーラ5には、冷却水を供給する冷却水供給管1
0が接続され、当該供給管10にはその流量を調整して
クーラ5の表面温度を調整する冷却水供給バルブ11が
介装されている。さらに、ヒータ6には、蒸気を供給す
る蒸気供給管12が接続され、当該供給管12にはその
流量を調整する蒸気供給バルブ13が介装されている。
【0012】なお、TH 〜THは温湿度センサで
あって、THは外気の状態を検出するように外気流入
口2に配され、THはクーラ5を通過した空気の状態
を検出するようにクーラ5の下流側に配され、TH
空調装置1から流出される空調空気の状態をモニタでき
るように空調空気流出口3に配されている。
【0013】14は、前記各バルブ9,11,13の開
閉操作及び開度調整を行う制御装置であって、その入力
側に前記各センサTH 〜THが接続されると共
に、出力側に前記各バルブ9,11,13が接続され、
各センサTH 〜THで検出されたデータを、予め
設定されたプログラムに従って演算処理してバルブ開度
を決定するようになされている。
【0014】次に、本発明方法について説明する。図1
は横軸に温度,縦軸に絶対湿度をとった空気線図であっ
て、温度25℃,相対湿度85%RH,絶対湿度0.017k
g/kgの状態点を空調空気の目標状態点P 0 として設定し
た場合に、領域Aは絶対湿度が設定湿度より高い状態を
示し、領域Bは絶対湿度が設定湿度より低く、且つ、エ
ンタルピが目標状態点P 空気より高い状態を示し、
領域Cは絶対湿度が設定湿度より低く、且つ、エンタル
ピが目標状態点P 空気より低い状態を示す。
【0015】この空気線図において、加湿操作,加熱操
作,冷却操作等によって、空気の状態点は図2に示すよ
うに変化する。例えば、状態 の空気を加熱する
と矢印gで示すように右方向に推移し、冷却した場合は
冷却体の温度によって方向が異なり、状態の空気
の露点温度Tより高い温度の冷却体で冷却すると矢印
hで示す左方向に推移し、その露点温度Tより低い温
度Tcで冷却すると矢印iで示す方向に推移する。ま
た、加湿する場合は、熱量の授受の有無によって方向が
異なり、受けた熱量をQ(kcal),水分をW(kg)とする
と、熱水分比グラフ上で表されるQ/Wの値の方向と等
しい方向(矢印j)に推移し、熱量の授受がない場合は
Q=0なので、矢印fで示すようにエンタルピ一定(熱
水分比=0)の方向に推移する。
【0016】空調装置1の運転を開始すると、温湿度セ
ンサTHのデータに基づいて外気の絶対湿度が検出さ
れ、外気の状態を領域A,B,Cのいずれに属するか
判別される。なお、このとき絶対湿度を検出する場合に
限らず、外気の露点温度を検出して目標状態点Pの空
気の露点温度と比較する場合であってもよい。
【0017】そして、外気の状態点a が領域A内に
ったとすると、絶対湿度が設定湿度より高いので、除湿
する必要はあってもこれ以上加湿する必要はない。した
がって、加湿水供給バルブ9を閉じて加湿操作は行わず
に、冷却水供給バルブ11を開いてクーラ5に冷却水を
供給し冷却操作を行う。このとき、冷却水供給バルブ1
1の弁開度は、クーラ5を通過した空気の温度・湿度を
温湿度センサTHで検出し、検出された絶対湿度が
定湿度と等しくなるようにフィードバックされて調整
れる。
【0018】例えば、クーラ5の表面温度が目標状態点
空気の露点T以下の温度Tcに設定されたとす
ると、その表面に外気中の水分が結露して除湿され、外
気は状態点aからaに向かって推移し、クーラ5を
通過した時点で絶対湿度が設定湿度と等しくなり、温度
が設定温度より低くなる。次いで、蒸気供給バルブ13
を開いてヒータ6に蒸気を供給し、設定温度まで加熱す
ると絶対湿度は変化しないので、状態点aの空気は図
1上で右方向に推移して、空調空気の状態点Pに調温
・調湿されることとなる。このとき、蒸気供給バルブ1
3の弁開度は、流出口3から流出される空調空気の温度
・湿度を温湿度センサTHで検出し、その温度が設定
温度と等しくなるようにフィードバックされて調整され
る。
【0019】また、外気の絶対湿度がもともと設定湿度
と等しい場合も、加湿操作を行う必要はなく、外気の温
度と設定温度を比較して、外気の温度が高い場合にはク
ーラ5により冷却し、外気の温度が低い場合にはヒータ
6により加熱する。なお、この場合において、クーラ5
により冷却するときは、その表面温度を目標状態点P
空気の露点温度T以下にすると、結露を生じ除湿さ
れてしまうので、表面温度は露点温度T以上で且つ設
定温度(25℃)以下になるように冷却水供給バルブ1
1の弁開度を調整する方が好ましい。
【0020】次に、外気の状態点b が領域B内にあっ
たとすると、絶対湿度が設定湿度より低いので加湿操作
が必要となり、また、エンタルピは目標状態点P
気より高いので、熱量を取り除く必要がある。即ち、ワ
ッシャ4による加湿操作と、クーラ5による冷却操作が
必要となる。このときワッシャ4により受ける水分量を
W,クーラ5により除かれる熱量をQとすると、状態点
の空気は、熱水分比グラフ上で−Q/Wと等しい方
向に推移する。したがって、状態点b から目標状態点
に推移させるには、温度の偏差及び絶対湿度の偏差
に応じて定まる方向と、熱水分比グラフの方向を一致さ
せて得られる熱水分比で、ワッシャ4及びクーラ5を運
転すればよい。
【0021】さらに、外気の状態点c 1 が領域C内に
ったとすると、絶対湿度が設定湿度より低いので加湿操
作が必要となり、また、エンタルピは目標状態点P
空気より低いので、熱量を与える必要がある。即ち、ワ
ッシャ4による加湿操作と、ヒータ6による加熱操作が
必要となる。このときワッシャ4により受ける水分量を
W,ヒータ6により受ける熱量をQとすると、状態c
の空気は、図1の熱水分比グラフ上でQ/Wと等しい方
向に推移する。 したがって、外気を状態点から
標状態点 に推移させるには、その方向と、熱水分
比グラフの方向を一致させて得られる熱水分比で、ワッ
シャ4及びヒータ6を運転すればよい。
【0022】 なお、絶対湿度が設定湿度より低く、ま
た、エンタルピが目標状態点P 空気と等しい場合
は、ワッシャ4の加湿水供給バルブ9を開いて、絶対湿
度が等しくなるまで加湿すれば、熱の授受はなく、エン
タルピ一定で熱水分比=0の方向に推移して目標状態点
に達するので、TH又はTHのデータに基づい
て、温度,湿度,絶対湿度,露点温度のいずれか一つを
モニタし、目標状態点P 空気のそれと一致するよう
にワッシャ4の加湿水供給バルブ9の弁開度を調整す
る。
【0023】このように、外気が領域A,B,Cのいず
れに属する場合であっても、必要以上に加湿したり、過
加湿された分を除湿するための冷却操作を行ったり、そ
の結果温度が下がりさらに加熱操作を行うというような
無駄な操作は一切不要となり、必要に応じて、加湿し、
加熱し又は冷却することとしており、外気の状態に応じ
て加湿操作,加熱操作,冷却操作のうち一つの操作を省
き、場合によっては二つの操作を省くことができるの
で、エネルギの無駄を無くし,ランニングコストを軽減
できる。
【0024】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、外
気の絶対湿度と設定湿度を比較して設定湿度より高い
場合に加湿操作を行うことなく冷却操作と加熱操作だけ
で、所定の温度・湿度の空調空気が得られるので、無駄
な制御操作を行うことなく、エネルギ,ランニングコス
トを軽減することができるという非常に優れた効果を有
する。また、設定湿度より低い場合に、外気と目標状態
点の空気のエンタルピを比較して目標状態点の空気
り高い場合には加熱操作を行うことなく加湿操作及び冷
却操作だけで、また、目標状態点の空気より低い場合に
は冷却操作を行うことなく加湿操作及び加熱操作だけ
で、所定の温度・湿度の空調空気が得られるので、加湿
操作,冷却操作,加熱操作のいずれか一つを外気の状態
に応じて省略することができ、エネルギ,ランニングコ
ストを軽減できるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法を説明する空気線図。
【図2】各制御操作に対応する空気線図上の状態変化を
示す説明図。
【図3】本発明方法に使用する空調装置を示すフローシ
ート。
【図4】従来方法を説明する空気線図。
【符号の説明】
1・・・空調装置 2・・・外気流入口 3・・・空調空気流出口 4・・・ワッシャ(加湿器) 5・・・クーラ(冷却器) 6・・・ヒータ(加熱器) TH〜TH・・・温湿度センサ
フロントページの続き (72)発明者 上 原 優 大阪府豊中市寺内二丁目4番1号 トリ ニティ工業株式会社内 (56)参考文献 特開 昭61−289246(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F24F 11/02 102

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 加湿器による加湿操作,冷却器による冷
    却操作,加熱器による加熱操作により、外気を目標状態
    点の設定温度・設定湿度に調温・調湿し、得られた空調
    空気を塗装ブースへ送給するように成された空調装置の
    運転方法において、 採り入れる外気の温度,湿度に基づき外気の絶対湿度を
    検出し、 検出された外気の絶対湿度が設定湿度より高い場合に、
    加湿器を停止した状態で、冷却器の表面温度を目標状態
    点の空気の露点温度以下にして冷却操作を行い、絶対湿
    度が設定湿度まで下がった時点でその空気の温度を検出
    し、 検出された温度が設定温度より低い場合は、加熱器によ
    り加熱操作を行うことを特徴とする空調装置の運転方
    法。
  2. 【請求項2】 加湿器による加湿操作,冷却器による冷
    却操作,加熱器による加熱操作により、外気を目標状態
    点の設定温度・設定湿度に調温・調湿し、得られた空調
    空気を塗装ブースへ送給するように成された空調装置の
    運転方法において、 a)採り入れる外気の温度,湿度に基づき外気の絶対湿
    度を検出し、 b)検出された外気の絶対湿度が設定湿度より高い場合
    は、 加湿器を停止した状態で、冷却器の表面温度を目標状態
    点の空気の露点温度以下にして冷却操作を行い、 絶対湿度が設定湿度まで下がった時点でその空気の温度
    を検出し、 検出された温度が設定温度より低い場合は、加熱器によ
    り加熱操作を行い、 c)検出された外気の絶対湿度が設定湿度より低く、且
    つ、外気のエンタルピが目標状態点のエンタルピより高
    い場合は、加湿器及び冷却器で加湿操作及び冷却操作を
    行い、加湿操作による加わる水分量と、冷却操作により
    奪われる熱量の比を、外気温度と設定温度の偏差及び外
    気湿度と設定湿度の偏差に応じて定まる熱水分比に等し
    く設定し、 d)検出された外気の絶対湿度が設定湿度より低く、且
    つ、外気のエンタルピが目標状態点のエンタルピより低
    い場合は、加湿器及び加熱器で加湿操作及び加熱操作を
    行い、加湿操作による加わる水分量と、加熱操作により
    与えられる熱量の比を、外気温度と設定温度の偏差及び
    外気湿度と設定湿度の偏差に応じて定まる熱水分比と等
    しく設定したことを特徴とする空調装置の運転方法。
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