JP3132724B2 - 塗料用植物性顔料の製造方法、塗料用植物性顔料及び自然材塗料 - Google Patents

塗料用植物性顔料の製造方法、塗料用植物性顔料及び自然材塗料

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、塗料用植物性顔料
の製造方法、塗料用植物性顔料、及び自然材塗料に関す
る。
【0002】
【従来の技術】一般に、塗料は次の表1に示す構成要素
からなる。
【0003】
【表1】
【0004】溶剤は、揮発成分であり、塗料に流動性を
与え、塗料を塗り広げやすくするもので、固化後の塗膜
には残らない。多くの場合、溶剤には、種々の有機溶剤
が混合して使用される。塗膜形成要素は、不揮発分で、
固化した後に塗膜に残る。塗膜形成要素には、塗膜形成
主要素と顔料が含まれる。塗膜形成主要素には、塗膜を
形成するために必要な、樹脂、セルロース、油脂等が用
いられる。また、顔料には、塗膜を着色する種々の顔料
が用いられる。塗料用顔料には、無機顔料や有機顔料等
が知られている。
【0005】塗料で用いられる無機顔料の種類は、数十
種類にも及び、代表的なものは、(a)鉛丹、(b)鉛
白、(c)黄鉛、(d)コンジョウ、(e)グンジョ
ウ、(f)亜鉛黄、(g)モリブデン赤、(h)カドミ
ウム黄、等である。以下に、これらの無機顔料の製造方
法を説明する。
【0006】(a)鉛丹:Pb3 4 金属鉛を反射炉で溶かし、かきまぜて、空気に触れさせ
て、600℃以下で酸化すると、粗製の一酸化鉛(黄
色)ができる。この一酸化鉛を未反応の鉛と分けて、反
射炉又はマッフル炉に入れて400〜500℃で酸化さ
せると、赤色の鉛丹が得られる。鉛丹は、錆止め塗料と
して用いられる。
【0007】(b)鉛白:2PbCO3 ・Pb(OH)
2 レンガ室の中に薄い鉛板をつり、室の下から50〜70
℃調節された二酸化炭素、空気、酢酸、水蒸気の混合ガ
スを送り込むと、鉛がおかされ鉛白となる。
【0008】(c)黄鉛10G:PbCrO4 が主成分 金属鉛を硝酸に溶かして重クロム酸ナトリウムを反応さ
せると、クロム酸鉛が沈澱する。黄色の顔料である。
【0009】(d)コンジョウ:Fe3 〔Fe(CN)
6 2 フェロシアン化第二鉄を主成分とする青色顔料で、無機
青色顔料の中でも、最も生産量の多い顔料である。第二
鉄塩とフェロシアン塩を直接反応させて得られる。
【0010】(e)グンジョウ:3NaAl・SiO4
・Na2 2 或いは2(Na2 OS・Al2 3 ・2S
iO2 )Na2 2 鉄分の少ないカオリン、ソーダ灰、硫黄、木炭を混合
し、ルツボの中に積み、空気を遮断して40時間程度、
500〜700℃に加熱し、不完全燃焼させる。亜硫酸
ガスの発生が終わったら、加熱を止め、密閉のまま放冷
する。炉から取り出された粗製のグンジョウは、発色不
良の部分を選別して取り除く。また反応副生成物として
は、ボウ硝ができるので、これを水洗によって取り除
く。さらに湿式粉砕により十分に微粒子とした後、水樋
して、極微粒子を集め、低温度で乾燥して粉砕し、青色
のグンジョウを得る。
【0011】(f)亜鉛黄:ZnCrO4 が主成分 酸化亜鉛を水中に分散懸濁させ、それに小量の無機酸を
加えて50〜60℃に加熱し、重クロム酸カリウムを加
えて反応させる。沈澱した亜鉛華を濾過し、水洗、乾
燥、粉砕して黄色の亜鉛黄を得る。
【0012】(g)モリブデン赤:PbCrO4 ・nP
bMoO4 ・mPbSO4 ・xAl(OH)3 が主成分 硝酸に鉛を反応させて、硝酸鉛の弱酸性溶液をつくり、
モリブデン酸ナトリウム、重クロム酸ナトリウム、ボウ
硝、ソーダ灰の混合液を反応させ、さらにミョウバンを
加えると、pH2.5〜3.0以上で赤色沈殿ができ
る。これを洗浄、濾過、乾燥、粉砕して赤色の製品を得
る。
【0013】(h)カドミウム黄:CdSが主成分 カドミウム塩の硫酸、硝酸又は塩酸性溶液に硫化水素又
は硫化ナトリウムを加えて沈殿をつくる。硫化カドミウ
ムを安定化するために、カドミウム塩の酸性溶液にあら
かじめ溶かされている亜鉛は、カドミウムとともに硫化
物となって沈殿し固溶体を生成する。沈殿は濾過、乾燥
後、500〜600℃で焙焼される。その後十分に水
洗、乾燥、粉砕して黄色の製品を得る。
【0014】塗料で用いられる有機顔料には、有機化合
物の顔料で水に不溶性の顔料、又は水に可溶性の顔料を
金属塩類等の沈殿剤で不溶性にしたもの〔レーキ(顔
料)という。〕等が用いられる。普通、沈殿剤として、
酸性染料の場合は、塩化バリウム、塩化カルシウム、塩
基性染料の場合は、タンニン、又はタンニンと吐酒石と
の合剤、リンモリブデンタングステン酸の錯体等が用い
られる。有機顔料も多数あるが、代表的な例として、ブ
リリアントカーミン6Bレーキ及びメチルバイオレット
レーキをそれぞれ、次の〔化1〕及び〔化2〕に挙げ
る。
【0015】
【化1】
【0016】
【化2】
【0017】
【発明が解決しようとする課題】日本住宅産業新聞(1
995年4月12日付け)には、「”住居衛生”という
観点を中心に住宅を捉える厚生省が、一つの会議を発足
させた。」と報道した。厚生省が新たな検討課題として
取り上げているものに、VOC(揮発性有機化合物)が
ある。VOCは、中枢神経に悪影響を及ぼし、記憶困難
や集中力欠如、下痢・便秘等の自律神経系の機能異常の
他、肩凝り、頭痛、めまい、吐き気等の症状を引き起こ
すことが報告されている。VOCの発生源は、欧州での
研究によると、塗料、木材、接着剤、光沢剤等とされて
いる。気密性の高い住宅が増加しているなか、居室内で
の粘膜刺激等が実感されてきている。
【0018】塗料で用いられる有機溶剤は、程度の差こ
そあるが揮発性で、脂溶性である。このため、皮膚、粘
膜、呼吸器等を通じて、次のようなVOCと類似の症状
を引き起こす。 (1)粘膜の刺激・・・損傷、皮膚あれ、ひび割れ (2)麻酔作用・・・・酩酊感、頭痛、耳鳴り、食欲減
退、失神 (3)中毒作用・・・・吐き気、呼吸困難、貧血、内臓
障害
【0019】液状モノマー類には、有機溶剤と同様の揮
発性がある。特に、アクリロニトリル(CH2 =CHC
N)やアクリルアミド(CH2 =CH−CONH2 )は
障害を起こしやすい。塗料製造に直接(モノマーの形
で)用いられることはないが、塩化ビニル、塩化ビニリ
デンも毒性が強い。
【0020】クロム系、及び鉛系の顔料は、人体の健康
に悪影響を及ぼす。クロム酸塩成分の6価クロムは、強
い酸化力とタンパク質結合力があり、吸入したり、傷部
分と接触すると組織を痛め潰瘍や、甚だしいときには癌
の原因ともなる。鉛系顔料が体内に入ると、骨、臓器を
侵す。特に、造血機能が阻害される。カドミウムイエロ
ー、カドミウムレッド等は、塗料用の顔料としては用い
られていない。
【0021】近年、自然の素材を使用する塗料が注目さ
れ、種々の自然材塗料が開発されつつある。かかる自然
材塗料では、原料に、石油系有機溶剤や化学的合成品を
使用せず、天然の素材が使用される。
【0022】しかし、かかる塗料に適切な、自然の素材
から得られる顔料は、種類が限られており、適切な製造
方法もないのが現状である。
【0023】本発明は、種々の天然植物由来の染料か
ら、新規な方法で顔料を製造し、かかる顔料を用いて自
然材塗料を得ることを目的とする。
【0024】
【課題を解決するための手段】本発明は、自然材塗料用
の植物性顔料を製造する方法に関し、この方法では、植
物性染料と水とからなる混合液に、前記植物性染料と当
量の金属イオンを含有する媒染剤を添加し、前記媒染剤
が、第一鉄塩及びアルミニウム塩よりなる群から選択し
た少なくとも一種の金属塩を含有しており、前記植物性
染料に前記金属イオンが配位した錯塩染料を生成させ、
追加の前記媒染剤を前記混合液に更に添加し、前記混合
液をかき混ぜながら、塩基を前記混合液に添加し、水酸
化物イオンと前記追加の媒染剤中の金属イオンとが反応
したフロック状物を前記混合液中に生成させ、前記錯塩
染料を前記フロック状物とともに凝集沈降させる。
【0025】本発明者は、安全衛生や公害上の問題を起
こさない顔料の開発を手がけた。かかる顔料としては、
自然の素材から製造した自然材顔料がふさわしい。
【0026】本発明者は、自然の素材の中でも、特に、
種類が豊富で、入手が容易な植物性染料に着目した。植
物性染料は、草木染めで用いられ、種々の布製品を染色
することができる。
【0027】本発明者は、かかる植物性染料から塗料用
顔料を調製し、かかる顔料が自然材塗料用の顔料として
極めて優れていることを見出し、本発明に到達した。
【0028】植物性染料と当量の媒染剤とを直接反応さ
せると、主として錯体形成反応により、錯塩染料が得ら
れる。しかし、生成した錯塩染料は、母液中に溶解して
いるか、又は懸濁したままである。本発明では、かかる
錯塩染料を母液から分離する方法として、凝集沈降法を
用いる。かかる凝集沈降法は、排水処理に利用されてい
る。
【0029】この凝集沈降法は、媒染剤が鉄又はアルミ
ニウムイオンのときに有効である。アルカリ性溶液中で
鉄又はアルミニウムイオンを最適量添加することによ
り、フロック状の水酸化物が形成される。このフロック
状物は、母液中に溶解又は懸濁している物質を包含し
て、フロック状物の相互が凝集沈降する。
【0030】本発明では、植物性染料から得られる錯塩
染料の凝集沈降に、かかる方法を使用する。得られる植
物性顔料は、微粒子の水酸化鉄又は水酸化アルミニウム
等のフロック状物に錯塩染料が吸着し又は包接されてお
り、ペースト状を呈する。本発明の植物性顔料では、錯
塩染料がフロック状物に吸着している場合、植物性顔料
は同時に包接されている状態にある。また、錯塩染料が
フロック状物に包接されている場合、植物性顔料は同時
にフロック状物に吸着された状態にある。本発明の植物
性顔料では、凝集沈降反応のために追加する鉄塩又はア
ルミニウム塩等の量により、得られる植物性顔料の色の
濃さを変えることができる。
【0031】本発明の植物性顔料中には、重金属は一切
使用しない。このため、かかる植物性顔料は、人体に悪
影響を及ぼしたり、環境破壊を招くことはない。
【0032】また、本発明のペースト状植物性顔料は、
そのまま塗料として用いることができる。この場合、水
が溶剤として機能する。本発明のペースト状植物性顔料
は、半乾燥後、自然材の溶剤及びバインダーと混練して
塗料とすることができる。本発明のペースト状植物性顔
料は、乾燥すれば、塊状となり、更に、これを微粉末化
した後、自然材の溶剤(レモン油、テレビン油、エタノ
ール等)及び自然材のバインダーと混練すれば、自然材
塗料を製造することができる。
【0033】本発明の自然材塗料は、従来の合成塗料よ
り、伸びが良好で、タレを少なくすることができる。か
かる塗料からなる塗装は、木が本来有している性質を損
なわず、居心地のよい環境を造ることができる。
【0034】
【発明の実施の形態】本発明では、まず、草木に由来す
る植物性染料と媒染剤とから、植物性染料に金属イオン
が配位した錯塩染料を生成させる。このため、植物性染
料を含有する水溶液に、前記植物性染料と当量の金属イ
オンを含有する媒染剤を添加する。
【0035】植物性染料と媒染剤の種類は非常に多い
が、その中の一部のものが全く経験的に草木染めで使用
されている。綿布を草木染めで染色する際の基本的な工
程は、例えば、次のようである。
【0036】(1)綿布を植物性染料に浸す。 (2)染めむらができないように、ときどき手でもむよ
うにし、布に植物性染料を均一に吸収させる。 (3)一定時間後、布を取出して絞り、直ちに、布を媒
染剤(鉄、アルミニウム、銅、スズ等の金属塩)溶液に
一定時間浸す。この場合も、手で布をもんで媒染剤を均
一に吸収させる。このとき、布は、植物性染料と媒染剤
とから形成される錯塩染料を固着し、染色される。
【0037】草木染めで使用される天然染料と媒染剤の
組合せで、種々の色をもった錯塩染料が得られる。これ
らを表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】このように、種々の媒染剤を用いて種々の
錯塩染料を得ることができる。本発明では、鉄塩又はア
ルミニウム塩を媒染剤として好適に用い、種々の錯塩染
料を調製することができる。
【0040】植物性染料に添加する媒染剤の量は、前も
って、分光光度計により染料と媒染剤の添加量の関係を
調べて決定する。この際、一定量の染料に対して、媒染
剤の添加量と所望の色の吸光度の関係を知ることによ
り、媒染剤の必要添加量を算出する。
【0041】錯塩染料を形成させた後、凝集沈降反応の
ため、錯塩染料を含む水溶液に追加の媒染剤を添加す
る。追加する媒染剤の量は、錯塩染料の生成に必要な量
の10〜20%が好ましい。この範囲内の量の媒染剤を
添加することにより、金属水酸化物からなるフロック状
物が容易に形成され、また、得られる顔料の色の濃さを
調節することができるからである。
【0042】次に、得られた水溶液をかき混ぜながら、
塩基をこの水溶液に添加する。攪拌は、生成してくるフ
ロック状物の破壊防止のため、静かに行うのが好まし
い。また、塩基は、小量ずつ添加するのが好ましい。そ
の理由は、塩基の過剰添加を避けるためである。塩基と
しては、5〜10重量%水酸化ナトリウム水溶液が好ま
しい。その理由は、塩基の濃度が高過ぎるとpHの微調
整が困難となるからである。なお、主成分がタンニン、
クロセチン等の染料を除いて、多くの染料は、水に難溶
か不溶である。しかし、溶液をアルカリ性にすることに
より、これらの染料は水溶性となる。
【0043】媒染剤が第一鉄塩の場合、pH計がpH
7.0〜9.0を示したところで、塩基の滴加を止める
のが好ましい。このpH範囲では、生成する水酸化第一
鉄のフロック状物は、溶液中に溶解又は懸濁している錯
塩染料を効率的に吸着し、包接すると同時に、相互に凝
集して沈降する。このフロック状物の沈殿の一部は、空
気中で酸化されると容易に水酸化第二鉄になる。
【0044】媒染剤がアルミニウム塩の場合、pH計が
pH6.0〜7.5を示したところで、塩基の滴加を止
める。このpH範囲で、生成する水酸化アルミニウムの
フロック状物は、溶液中の錯塩染料を効率的に吸着し、
包接すると同時に、相互に凝集して沈降する。
【0045】凝集沈降したフロック状物を吸引濾過すれ
ば、微粒子の金属水酸化物に包含されたペースト状顔料
が得られる。吸引濾過の程度を調節することにより、得
られるペースト状顔料の含水率を調節することができ
る。ペースト状顔料が、50〜70重量%の含水率を有
していれば、このペースト状顔料を直接塗布することが
できる。
【0046】得られた顔料は、本発明の自然材塗料を製
造するのに極めて適している。自然材塗料の原料には、
石油系溶剤や化学的に合成した染料、毒性のある重金属
は用いられない。塗料の塗膜形成主要素には、バインダ
ーとしての機能を有する亜麻仁油、桐油、オイチシカ
油、ロジン、セラック等の植物由来の乾性油を使用する
のが好ましい。
【0047】顔料には、人体に悪影響を及ぼし環境破壊
につながる鉛、クロム、カドミウム等の重金属イオンを
含む顔料は一切使用しない。本発明では、草木に由来す
る天然染料と鉄イオン及びアルミニウムイオンから調製
した植物性顔料を用いる。
【0048】溶剤には、現在問題となっている発癌性や
アレルギー症状を起こす揮発性有機化合物(VOC)を
放出する溶剤は使用しない。また、発癌性があるといわ
れるベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物等
の溶剤も一切使わない。レモン油、テレビン油等の純植
物性の揮発性油を用いる。また、顔料の種類と用途に応
じて、水を溶剤として用いることができる。
【0049】本発明の自然材塗料は、植物性顔料の濃度
を調整することにより、木がもつ独特のよさを生かし、
塗装しても木目等を残すことができる。かかる塗料は安
全衛生及び公害問題をクリアし、かつ適切な溶剤、塗膜
形成主要素の選択により、従来の合成塗料より、伸びが
良好でタレを少なくすることができる。例えば、本発明
のペースト状の顔料を半乾燥後、溶剤及びバインダーと
混練して、堅練り塗料とし、これを布等に付着させて塗
れば、液タレが起こりにくい。本発明の自然材塗料は、
耐候性の点から、屋内用塗料に適する。
【0050】
【実施例】実施例を参照して、本発明をより詳細に説明
する。実施例1 五倍子タンニンと第一鉄イオンによる顔料の調製例 五倍子タンニン〔chinse tannin 、中国及び日本に産
し、ウルシ科植物のヌルデ(Rhus japonica )又はその
同属植物の葉にアブラムシの一種が寄生して生ずるゴー
ル(gall)のタイニン〕は、各種のフェノール性物質の
混合物であるが、主成分はガロタンニンであり、白色の
無晶形粉末として分離される。ガロタンニンの構造式を
〔化3〕に示す。
【0051】
【化3】
【0052】式中、R1 、R2 、R3 、R4 及びR
5 は、galloyl 基又はpolygalloyl 基を示し、galloyl
基を次の〔化4〕、polygalloyl 基を次の〔化5〕に示
す。
【0053】
【化4】
【0054】
【化5】
【0055】(1)乾燥五倍子10gと水500mlを
容器に入れ、約20分間ゆるやかに煮沸して、五倍子タ
ンニン(染料)を抽出した。 (2)吸引濾過により、残渣と抽出液を分離した。 (3)抽出液をかき混ぜながら、1%硫酸第一鉄溶液
(媒染剤)を少しずつ滴加した。このとき、五倍子タン
ニンと第一鉄イオンとは金属錯体を生成し、暗黒紫色の
錯塩染料を形成した。 (4)この錯塩染料は水溶性なため、次のようにして母
液から分離した。
【0056】a)更に、この溶液に20mlの1%硫酸
第一鉄溶液を滴加した。 b)その後、この溶液を静かにかき混ぜながら、溶液の
pHが9.0になるまで、10%水酸化ナトリウム溶液
をこの溶液に少しずつ滴加した。 c)フロック状に懸濁する水酸化第一鉄が十分に生成し
たことを確認して、水酸化ナトリウム溶液の滴加を止め
た。この水酸化第一鉄は、空気中で酸化されて、水酸化
第二鉄に変化しやすい。 d)母液中でフロック状に懸濁する水酸化第二鉄は、生
成した顔料を吸着して包接すると同時に、相互の凝集に
より沈降した。
【0057】(5)錯塩染料を吸着及び包接した水酸化
第二鉄を吸引濾過することにより、五焙子タンニンと第
一鉄イオンとの錯塩染料からなる顔料を得た。吸引濾過
による脱水の状態によって異なるが、得られた顔料は、
含水率約50%の微粒子からなるペースト状のものであ
った。
【0058】実施例2 クェルセチンとミョウバンによる顔料の調製例 玉葱の表皮には、〔化6〕に示すクェルセチンが含まれ
ている。このクェルセチンは、媒染剤のアルミニウムイ
オンが配位すると、鮮やかな黄色の金属錯体を形成す
る。その部分構造を〔化7〕に示す。
【0059】
【化6】
【0060】
【化7】
【0061】(1)玉葱の茶色の表皮10gと水500
mlを容器に入れ、約20分間ゆるやかに煮沸し、クェ
ルセチン(染料)を抽出した。 (2)吸引濾過により、残渣と抽出液を分離した。 (3)抽出液をかき混ぜながら、1%ミョウバン溶液
(媒染剤)を少しずつ滴加した。このとき、クェルセチ
ンとミョウバン中のアルミニウムイオンとの間で金属錯
体を生成し、鮮やかな黄色の錯塩染料の懸濁液を得た。 (4)この錯塩染料の懸濁液は、コロイド化学的に安定
であるので、自ら凝集沈殿することは困難である。した
がって、次のようにして錯塩染料を母液から分離した。
【0062】a)更に、この懸濁液に20mlの1%ミ
ョウバン溶液を滴加した。 b)その後、この懸濁液を静かにかき混ぜながら、懸濁
液のpHが7.5になるまで、10%水酸化ナトリウム
溶液を少しずつ滴加した。 c)フロック状に懸濁する水酸化アルミニウムが十分に
生成したことを確認して、水酸化ナトリウム溶液の滴加
を止めた。 d)このフロック状に懸濁する水酸化アルミニウムは、
生成した錯塩染料を吸着し、包接すると同時に、相互の
凝集により沈降した。
【0063】(5)錯塩染料を吸着し、包接した水酸化
アルミニウムを吸引濾過することにより、クェルセチン
とアルミニウムイオンとの錯塩染料からなる鮮やかな黄
色の顔料を得た。吸引濾過による脱水状態にもよるが、
得られた顔料は、含水率約50%の微粒子からなるペー
スト状のものであった。
【0064】実施例3及び4 得られた顔料をそのまま塗料とした例 実施例1で得られた顔料は、含水率約50%、微粒子か
らなるペースト状のものである。このものは、塗料の構
成要素からみれば、顔料及び水(溶剤)は含むがバイン
ダー(塗膜形成主要素)を含まない状態のものといえ
る。実施例2で得られた顔料も同様である。これらの顔
料を塗料として用いた。
【0065】実施例1で得られた顔料を、布片に付着さ
せ、杉板表面に擦りつ付けるように塗布した。実施例2
で得られた顔料についても同様に試験した。その結果、
いずれの顔料も、杉板を容易に着色することができ、着
色による杉板の木目のパターンをそのままの形状で残す
ことができた。いずれの顔料もバインダーを含んでいな
いため、時間の経過につれて溶剤(水)の蒸発が起こ
り、杉板の表面が乾燥したとき、顔料の付着性が減少し
た。
【0066】実施例5及び6 得られた顔料から塗料を製造し、塗布した例 実施例1で得られたペースト状の顔料100gに、バイ
ンダーとして亜麻仁油5mlを滴加後、よく混練して自
然材塗料を調製した。実施例2で得られた顔料について
も同様に塗料を製造した。これらの塗料は、塗料の構成
要素、すなわち塗膜形成主要素(亜麻仁油)、顔料、溶
剤(水)からなるので、完全な塗料といえる。
【0067】これらの自然材塗料を布片に付着させ、杉
板表面に擦り付けるように塗布した結果、杉板が容易に
着色されることを認めた。また、着色による杉板の木目
のパターンは、そのままの形状で残すことができた。こ
れらの塗料にはバインダーが含まれているため、時間の
経過に伴って水の蒸発が起こり、杉板の表面が乾燥して
も、顔料の付着性はよかった。なお、着色後、杉板の表
面を布片で磨くと、塗膜に「つや」がでることを認め
た。
【0068】
【発明の効果】本願発明の塗料用植物性顔料の製造方法
によれば、種々の天然植物由来の染料と水とからなる混
合液に、第一鉄塩及びアルミニウム塩よりなる群から選
択した少なくとも一種の金属塩を含有している媒染剤を
添加することによって生成させた錯塩染料を、追加の前
記媒染剤を更に添加することによって水酸化物イオンと
第一鉄イオン又はアルミニウムイオンとから生成させる
フロック状物とともに凝集沈降させるので、錯塩染料を
吸着又は包接しているフロック状物からなる塗料用植物
性顔料を比較的簡単に製造することができる。また、か
かる顔料は、そのまま塗料として用いることができ、更
に、適切な溶剤等と混練することにより、自然材塗料と
して用いることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C09D 7/12 C09D 7/12 Z (56)参考文献 特開 平3−220267(JP,A) 特開 平6−173176(JP,A) 特開 平4−208214(JP,A) 特開 平10−158537(JP,A) 特表 平9−500918(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C09B 67/20 C09B 61/00 - 65/00

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 植物性染料から塗料用植物性顔料を製造
    するにあたり、 前記植物性染料と水とからなる混合液に、前記植物性染
    料と当量の金属イオンを含有する媒染剤を添加し、前記
    媒染剤が、第一鉄塩及びアルミニウム塩よりなる群から
    選択した少なくとも一種の金属塩を含有しており、前記
    植物性染料に前記金属イオンが配位した錯塩染料を生成
    させ、追加の前記媒染剤を前記混合液に更に添加し、前
    記混合液をかき混ぜながら、塩基を前記混合液に添加
    し、水酸化物イオンと前記追加の媒染剤中の金属イオン
    とが反応したフロック状物を前記混合液中に生成させ、
    前記錯塩染料を前記フロック状物とともに凝集沈降させ
    ることを特徴とする、塗料用植物性顔料の製造方法。
  2. 【請求項2】 植物性染料から得られた塗料用植物性顔
    料であって、 前記植物性染料と水とからなる混合液に、前記植物性染
    料と当量の金属イオンを含有する媒染剤を添加し、前記
    媒染剤が、第一鉄塩及びアルミニウム塩よりなる群から
    選択した少なくとも一種の金属塩を含有しており、前記
    植物性染料に前記金属イオンが配位した錯塩染料を生成
    させ、追加の前記媒染剤を前記混合液に更に添加し、前
    記混合液をかき混ぜながら、塩基を前記混合液に添加
    し、水酸化物イオンと前記追加の媒染剤中の金属イオン
    とが反応したフロック状物を前記混合液中に生成させ、
    前記錯塩染料を前記フロック状物とともに凝集沈降させ
    て得られたことを特徴とする、塗料用植物性顔料。
  3. 【請求項3】 前記塗料用植物性顔料が、50〜70重
    量%の含水率を有しており、微粒子からなるペースト状
    であることを特徴とする、請求項2記載の塗料用植物性
    顔料。
  4. 【請求項4】 植物性顔料を含有する自然材塗料であっ
    て、 前記植物性顔料が、請求項2又は3記載の塗料用植物性
    顔料であることを特徴とする、自然材塗料。
  5. 【請求項5】 植物性染料から得られた塗料用植物性顔
    料であって、 前記塗料用植物性顔料が、前記植物性染料に金属イオン
    が配位している錯塩染料と、前記金属イオンと水酸化物
    イオンとが反応して形成されたフロック状物とを含有し
    ており、前記金属イオンが、Fe2+、Fe3+及びAl3+
    よりなる群から選択した少なくとも一種の金属イオンで
    あり、前記フロック状物が、前記錯塩染料を吸着又は包
    接していることを特徴とする、塗料用植物性顔料。
  6. 【請求項6】 植物性顔料を含有する自然材塗料であっ
    て、 前記植物性顔料が、請求項5記載の塗料用植物性顔料で
    あることを特徴とする、自然材塗料。
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