JP3121660B2 - 熱可逆性ハイドロゲル材料 - Google Patents
熱可逆性ハイドロゲル材料Info
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Description
食品、農薬、化粧品などに利用されるハイドロゲル材料
に関する。さらに詳しくは、温度変化によって可逆的に
ゲル化する熱可逆性ハイドロゲル材料に関する。
ラチンゲルや寒天ゲルなどが知られている。これらのゲ
ル材料(ゼラチン、寒天)は、高温で水に溶解して水溶
液となり、冷却すると多量の水を保持したハイドロゲル
となる。このように、温度変化によって可逆的にゲル化
する性質を示すことから、物質の分離や医薬品、食品、
農薬、化粧品などに利用されている。しかし、従来知ら
れている熱可逆性ハイドロゲルはすべて、冷却によりゲ
ル化するものであるため、利用範囲が制限されてきた。
では水に溶解し、高温では多量の水を保持したハイドロ
ゲルとなる熱可逆性ハイドロゲル材料を提供することに
ある。
LCSTを有する温度感応性高分子化合物と水溶性高分
子化合物が結合されてなる高分子化合物であって、該L
CSTを有する温度感応性高分子化合物部分が一分子内
に複数存在することを特徴とする熱可逆性ハイドロゲル
材料により達成される。
感応性高分子化合物とは、水に対する溶解度温度係数が
負を示す高分子化合物であり、低温にて生成する高分子
化合物と水分子との水素結合に依存する水和物(オキソ
ニウムヒドロキシド)が高温で分解し、脱水和により高
分子化合物同士が凝集し沈殿する特徴を有する。LCS
T(Lower Critical Solution Temperature )とは、こ
のような温度感応性高分子化合物の水和と脱水和の転移
温度をいう(例えば、ヘスキンズ(M. Heskins)および
ギュレット(J.E.Guillet )のJ.Macromol, Sci.-Che
m., A2(8),1441(1968) 参照)。すな
わち、本発明の温度感応性高分子化合物はLCST以下
の温度では親水性で水に溶解するが、LCST以上の温
度では疎水性となって沈殿し、この変化は可逆的であ
る。本発明においては、上記温度感応性高分子化合物の
LCSTが0〜90℃、さらには10〜50℃であるこ
とが好ましい。
物としては、ポリN置換アクリルアミド誘導体、ポリN
置換メタアクリルアミド誘導体およびこれらの共重合
体、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアルコール
部分酢化物などが挙げられる。好ましい温度感応性高分
子化合物を以下にLCSTが低い順に列挙する。
ーN−n−プロピルメタアクリルアミド;ポリーN−イ
ソプロピルアクリルアミド;ポリーN,N−ジエチルア
クリルアミド;ポリーN−イソプロピルメタアクリルア
ミド;ポリーN−シクロプロピルアクリルアミド;ポリ
ーN−アクリロイルピロリジン;ポリーN,N−エチル
メチルアクリルアミド;ポリーN−シクロプロピルメタ
アクリルアミド;ポリーN−エチルアクリルアミド 上記の高分子化合物は、単一の単量体を重合したもので
あっても、他の単量体と共重合させたものであってもよ
い。共重合する単量体は、親水性単量体、疎水性単量体
のいずれでも用いることができる。一般的には、親水性
単量体と共重合すると生成物のLCSTは上昇し、疎水
性単量体と共重合すると生成物のLCSTは下降する。
したがって、これらを適宜選択することによっても所望
のLCSTを有する高分子化合物を得ることができる。
ドン、ビニルピリジン、アクリルアミド、メタアクリル
アミド、N−メチルアクリルアミド、ヒドロキシエチル
メタアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒ
ドロキシメチルメタアクリレート、ヒドロキシメチルア
クリレート、酸性基を有するアクリル酸、メタアクリル
酸およびそれらの塩、ビニルスルホン酸、スチレンスル
ホン酸など、並びに塩基性を有するN,N−ジメチルア
ミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエ
チルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル
アクリルアミドおよびそれらの塩などが挙げられるが、
これらに限定されるものではない。
リレート、メチルメタクリレート、グリシジルメタクリ
レートなどのアクリレート誘導体およびメタクリレート
誘導体、N−n−ブチルメタアクリルアミドなどのN置
換アルキルメタアクリルアミド誘導体、塩化ビニル、ア
クリロニトリル、スチレン、酢酸ビニルなどが挙げられ
るが、これらに限定されるものではない。
合物は、水に可溶な高分子化合物であれば特に制限はな
く、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコ
ール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリビニルピリジ
ン、ポリアクリルアミド、ポリメタアクリルアミド、ポ
リ−N−メチルアクリルアミド、ポリヒドロキシエチル
メタアクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレー
ト、ポリヒドロキシメチルメタアクリレート、ポリヒド
ロキシメチルアクリレート、ポリアクリル酸、ポリメタ
クリル酸、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホ
ン酸およびそれらの塩、ポリ−N,N−ジメチルアミノ
エチルメタクリレート、ポリ−N,N−ジエチルアミノ
エチルメタクリレート、ポリ−N,N−ジメチルアミノ
プロピルアクリルアミドおよびそれらの塩などが挙げら
れる。
と水溶性高分子化合物との結合は、例えば、いずれかの
高分子化合物中に重合性官能基を導入し、他方の高分子
化合物を与える単量体を共重合させて行うことができ
る。また、LCSTを有す温度感応性高分子化合物と水
溶性高分子化合物との結合は、温度感応性高分子化合物
を与える単量体と、水溶性高分子化合物を与える単量体
とのブロック共重合によっても行うことができる。さら
に、LCSTを有する温度感応性高分子化合物と水溶性
高分子化合物との結合は、あらかじめ両者に反応活性な
官能基を導入し、両者を化学反応により結合させること
によっても行える。このとき、水溶性高分子化合物中に
反応活性な官能基を複数導入する必要がある。
子内に存在する温度感応性高分子化合物のLCST以下
の温度においては、該温度感応性高分子化合物部分、水
溶性高分子化合物部分ともに水溶性であるので、完全に
水に溶解する。しかし、この水溶液の温度を、分子内に
存在する温度感応性高分子化合物のLCST以上の温度
に加温すると、該温度感応性高分子化合物部分が疎水性
となり、疎水的相互作用によって、別個の分子間で会合
する。一方、水溶性高分子化合物部分は、このときでも
水溶性であるので、本発明の熱可逆性ハイドロゲル材料
は水中において、温度感応性高分子化合物部分間の疎水
性会合部を架橋点とした、三次元網目構造をもつハイド
ロゲルを生成する。このハイドロゲルの温度を再び、分
子内に存在する温度感応性高分子化合物のLCST以下
の温度に冷却すると、該温度感応性高分子化合物部分が
水溶性となり疎水性会合による架橋点が解放され、ハイ
ドロゲル構造が消失する。このため、本発明の熱可逆性
ハイドロゲル材料は、再び完全な水溶液となる。このよ
うに、本発明の熱可逆性ハイドロゲル材料のゲル化は、
分子内に存在する温度感応性高分子化合物のLCSTに
おける可逆的な親水性、疎水性の変化に基づくものであ
るので、温度変化に対応して完全な可逆性を有する。
説明する。
アミン11gをクロロホルム150mlに溶解し、0℃に
冷却してアクリルロイルクロライド10gを滴下した。
0℃で30分間撹拌後、冷蒸留水80mlを加えた。クロ
ロホルム層に無水硫酸マグネシウムを加え脱水、濾過
後、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール1
0mgを加え、溶液を30mlまで濃縮、氷冷し、酢酸エチ
ル3mlとヘキサン20mlの混合溶液を滴下した。析出沈
殿を濾集し、酢酸エチル/ヘキサン=1/4の混合溶液
で洗浄、さらに酢酸エチル/ヘキサン=1/9の混合溶
液で洗浄後、真空乾燥して8.6gのN−アクリロキシ
スクシンイミドを得た。
ミド−コーN−アクリロキシスクシンイミド)の合成 N−イソプロピルアクリルアミド10,2g、N−アク
リロキシスクシンイミド1.71gをクロロホルム40
0mlに溶解、窒素置換後、N,N'−アゾビスイソブチロ
ニトリル0.135gを加え、60℃にて6時間重合さ
せた。濃縮後、ジエチルエーテルに再沈した。凝集、真
空乾燥して8.8gのポリ(N−イソプロピルアクリル
アミド−コーN−アクリロキシスクシンイミド)を得
た。
リロキシスクシンイミド)1.0g、両末端アミノ化ポ
リエチレンオキシド(分子量6,000;川研ファイン
ケミカル(株)製)0.5gをクロロホルム100mlに
溶解し、50℃で3時間反応させた。室温まで冷却後、
イソプロピルアミン0.1gを加え、1時間放置した。
濃縮後、ジエチルエーテル中に沈殿させた。凝集、真空
乾燥して、1.5gの本発明の熱可逆性ハイドロゲル材
料Iを得た。
に氷冷下で溶解した。この水溶液を徐々に加温すると、
約30℃以上で流動性を失い、ゲル化した。このゲルを
冷却すると、約30℃以下で流動性を取り戻し、再び水
溶液に戻った。この変化は可逆的に繰り返し観測され
た。
−アクリロキシスクシンイミドーコーn−ブチルメタク
リレート)の合成 N−イソプロピルアクリルアミド9.61g、N−アク
リロキシスクシンイミド1.71g、n−ブチルメタク
リレート0.71gをクロロホルム400mlに溶解し、
窒素置換後、N,N'−アゾビスイソブチロニトリル0.
135gを加え、60℃にて6時間重合させた。濃縮後
ジエチルエーテルに再沈した。濾集、真空乾燥して、
7.8gのポリ(N−イソプロピルアクリルアミド−コ
ーN−アクリロキシスクシンイミドーコーn−ブチルメ
タクリレート)を得た。
リロキシスクシンイミドーコーn−ブチルメタクリレー
ト)1.0g、両末端アミノ化ポリエチレンオキシド
(分子量6,000;川研ファインケミカル(株)製)
0.5gをクロロホルム100mlに溶解し、50℃にて
3時間反応させた。室温まで冷却後、イソプロピルアミ
ン0.1gを加え、1時間放置した。濃縮後、ジエチル
エーテル中に沈殿させた。濾過、真空乾燥して、1.5
gの本発明の熱可逆性ハイドロゲル材料IIを得た。
に氷冷下で溶解した。この水溶液を徐々に加温すると、
約20℃以上で流動性を失い、ゲル化した。このゲルを
冷却すると、約20℃以下で流動性を取り戻し、再び水
溶液に戻った。この変化は可逆的に繰り返し観測され
た。
可逆性ハイドロゲル材料は、特定の温度以下では水溶
性、その温度以上ではハイドロゲルとなる。本発明の熱
可逆性ハイドロゲル材料のゲル化は、分子内に存在する
温度感応性高分子化合物のLCSTにおける可逆的な親
水性、疎水性の変化に基づくものであるので、温度変化
に対応して完全な可逆性を有する。また、上記LCST
は任意に制御可能であるのでゲル化温度も任意に制御で
きる。このように、本発明の熱可逆性ハイドロゲル材料
は従来にない特徴を有するので、物質の分離や医薬品、
食品、農薬、化粧品などに広く利用される。
Claims (4)
- 【請求項1】 LCSTを有する温度感応性高分子部分
と、水溶性高分子部分とから構成される高分子化合物で
あって;該LCSTを有する温度感応性高分子部分が一
分子内に複数存在するブロックまたはグラフト高分子化
合物からなる熱可逆性ハイドロゲル材料。 - 【請求項2】 前記LCSTを有する温度感応性高分子
部分と、水溶性高分子部分とのいずれか一方の高分子部
分に、いずれか他方の高分子部分を与える単量体を2以
上の繰り返し単位で共重合させてなる請求項1記載の熱
可逆性ハイドロゲル材料。 - 【請求項3】 前記LCSTを有する温度感応性高分子
部分を与える単量体の2以上の繰り返し単位と、水溶性
高分子部分を与える単量体の2以上の繰り返し単位とを
含む請求項1記載の熱可逆性ハイドロゲル材料。 - 【請求項4】 前記LCSTを有する2以上の繰り返し
単位の温度感応性高分子部分と、2以上の繰り返し単位
の水溶性高分子部分とを化学反応により結合させてなる
請求項1記載の熱可逆性ハイドロゲル材料 。
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