JPH10101518A - 型取り剤および型取り方法 - Google Patents

型取り剤および型取り方法

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JPH10101518A
JPH10101518A JP8253498A JP25349896A JPH10101518A JP H10101518 A JPH10101518 A JP H10101518A JP 8253498 A JP8253498 A JP 8253498A JP 25349896 A JP25349896 A JP 25349896A JP H10101518 A JPH10101518 A JP H10101518A
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gel transition
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Hiroshi Yoshioka
浩 吉岡
Yuichi Mori
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M & M Kenkyusho Kk
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 型取りの精密性と、型取り操作の簡便性との
バランスに優れた「型取り」剤ないし型取り方法を提供
する。 【解決手段】 その水溶液がゾル−ゲル転移温度を有
し、且つ、該ゾル−ゲル転移温度より高い温度で実質的
に水不溶性を示すハイドロゲル形成性高分子からなる型
取り剤として用いる。該ゾル−ゲル転移温度より低い温
度で液体状態(ゾル状態)とした型取り剤を、型取り対
象物(口腔内形状等)の表面に密着させ、温度上昇によ
り該型取り剤をゲル化させた後、該ゲル化した型取り剤
を前記型取り対象物表面から剥離して、型取りする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、生物または無生物の形
状の正確な写し取りが可能な型取り(modeling)剤に関
する。
【0002】本発明の型取り剤は、生物体の形状の写し
取り、特に、歯科診断ないし治療用の模型を作製する過
程において、歯あるいは口腔内組織の複雑な形状を正確
に写し取る目的で、あるいは石膏等の他の成形材注入時
には該成形のための鋳型とする目的で使用される歯科用
の印象(impression)材として、好適に使用可能であ
る。
【0003】
【従来の技術】従来より、生物または無生物の形状を正
確に写し取ることを目的として、種々の有機材料(例え
ば、アルギン酸塩alginate)、あるいは無機材料(例え
ば、石膏)からなる型取り剤が使用されて来た。しかし
ながら、従来の型取り剤においては、型取りの精密性
(例えば、微細な凹凸、アンダーカットのある凹凸への
忠実性)と、型取り操作の簡便性(例えば、迅速性、離
型の容易性)とのバランスを取ることが非常に困難であ
った。
【0004】例えば、上記したような「型取り」の一態
様として、歯科における「印象」を例にとれば、該「印
象」に使用される印象材としては、その使用法が簡便で
且つ低コストな点から、アルギン酸塩からなる印象材が
広く使用されている。しかしながら、このアルギン酸塩
印象材は、精密印象、すなわち「型とり」の精密性の点
で劣るため、アンダーカット(下部の断面積が大きい凹
部)のある窩洞の印象には適していない。
【0005】このような窩洞の印象には、歯科において
も寒天印象材がしばしば使用されて来た。しかしなが
ら、このような寒天印象材を実際に使用する際には、加
熱・溶解、保温および温度調整等の煩雑な準備操作が不
可欠となるのみならず、該煩雑な温度調製のための特別
の装置も必要となって、操作の簡便性に難点がある。
【0006】更には、この寒天印象材を使用する際に
は、該寒天印象材を「型とり」専用のトレー(歯科印象
用の器具)上に盛り、寒天印象材を該トレーごと口腔の
粘膜に圧接させて印象を取ることとなるが、寒天ゲルの
ゲル化速度が遅いために印象採取時間が長くなる。ま
た、ゲル化の進行に伴う寒天ゲルの寸法変化(収縮)が
大きく、印象の精密性が充分ではない。
【0007】加えて、上記したアルギン酸塩および寒天
材料に共通して、原料が天然産であるため品質のばらつ
きが出易く、このことが印象操作の困難性を更に増大さ
せている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上述
した従来技術の問題点を解消した「型取り」剤ないし型
取り方法を提供することにある。
【0009】本発明の他の目的は、型取りの精密性と、
型取り操作の簡便性とのバランスに優れた「型取り」剤
ないし型取り方法を提供することにある。
【0010】本発明の他の目的は、アンダーカットのあ
る凹部(口腔内の窩洞等)に対しても正確且つ迅速な
「型取り」が可能な型取り剤ないし型取り方法を提供す
ることにある。
【0011】本発明の他の目的は、品質のばらつきを抑
制しつつ、特別な温度調節装置等を必須としない「型取
り」操作を可能とする型取り剤ないし型取り方法を提供
することにある。
【0012】本発明の更に他の目的は、従来の印象材と
比べて添加剤量を著しく軽減可能な型取り剤ないし型取
り方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは鋭意研究の
結果、その水溶液がゾル−ゲル転移温度を有し、該ゾル
−ゲル転移温度より高い温度で実質的に水不溶性を示
し、且つ該ゾル−ゲル転移温度より低い温度で水溶性を
示すハイドロゲル形成性高分子を「型取り」剤として使
用することが、「型取り」時の簡便且つ迅速なゲル化お
よび良好なゲル弾性を共に実現して、上記の問題点の解
決に極めて効果的なことを見出した。
【0014】本発明の型取り剤は上記の知見に基づくも
のであり、より詳しくは、その水溶液がゾル−ゲル転移
温度を有し、且つ、該ゾル−ゲル転移温度より高い温度
で実質的に水不溶性を示すハイドロゲル形成性高分子を
少なくとも含む型取り剤であって;水の存在下、前記ゾ
ル−ゲル転移温度より低い温度で可逆的に液体状態(ゾ
ル状態)を示し、且つ、ゾル−ゲル転移温度より高い温
度でゲル状態を示すことを特徴とするものである。
【0015】更に、本発明によれば、その水溶液がゾル
−ゲル転移温度を有し、且つ、該ゾル−ゲル転移温度よ
り高い温度で実質的に水不溶性を示すハイドロゲル形成
性高分子を少なくとも含む型取り剤であって;水の存在
下、前記ゾル−ゲル転移温度より低い温度で可逆的に液
体状態(ゾル状態)を示し、且つ、ゾル−ゲル転移温度
より高い温度でゲル状態を示す型取り剤を用い;前記ゾ
ル−ゲル転移温度より低い温度で液体状態(ゾル状態)
とした該型取り剤を、型取り対象物の表面に密着させ、
温度上昇により該型取り剤をゲル化させた後、該ゲル化
した型取り剤を前記型取り対象物表面から剥離すること
を特徴とする型取り方法が提供される。
【0016】本発明の型取り剤の水溶液(「水分散液」
を包含する趣旨で用いる)は、ゾル−ゲル転移温度より
低い温度ではゾル状態(液体状態)であるため、「型取
り」対象物の表面ないし凹部に、散布、塗布、圧着等の
任意の手段により付着させることが可能である。該型取
り剤の水溶液を対象物に付着させた後に、周辺温度が該
ゾル−ゲル転移温度より高い温度に上昇した場合、また
は周囲温度を強制的に上昇させた場合には、該型取り剤
水溶液は通常、対象物表面で速やかにゲル化する。
【0017】このようにして対象物表面に生じた「型取
り剤」ゲルは、ゾル−ゲル転移温度より高い温度におい
ては実質的な水不溶性のみならず、好適なゲル弾性を安
定して保持するため、該ゲルを対象物表面から剥離する
際にも、「型取り」した形状を実質的に損なうことなく
安定して形状を保持する。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、必要に応じて図面を参照し
つつ本発明を更に具体的に説明する。
【0019】(ゾル−ゲル転移温度)本発明に用いられ
る「ハイドロゲル形成性高分子」の「ゾル−ゲル転移温
度」(ないしゲル化温度)の定義および測定は、文献
(H. Yoshioka ら、Journal ofMacromolecular Scienc
e, A31(1), 113 (1994))に記載された定義
および方法に基づく。即ち、観測周波数1Hzにおける
試料の動的弾性率を低温側から高温側へ徐々に温度を変
化(1℃/1分)させて測定し、該試料の貯蔵弾性率
(G´、弾性項)が損失弾性率(G″、粘性項)を上回
る点の温度をゾル−ゲル転移温度とする。
【0020】一般に、G″>G´の状態がゾルであり、
G″<G´の状態がゲルであると定義される。このゾル
−ゲル転移温度の測定に際しては、下記の測定条件が好
適に使用可能である。
【0021】<動的・損失弾性率の測定条件> 測定機器:商品名=ストレス制御式レオメーターCSL
500、Carri-Med社製 試料溶液(ないし分散液)の濃度(ただし「ハイドロゲ
ル形成性高分子」の濃度として):15(重量)% 試料溶液の量:約0.8 g 測定用セルの形状・寸法:アクリル製平行円盤(直径
4.0cm)、ギャップ600μm。
【0022】適用ストレス:線形領域内。
【0023】本発明の型取り剤を構成する「ハイドロゲ
ル形成性高分子」は、その水溶液または水分散液が上記
ゾル−ゲル転移温度より高い温度では流動性の乏しいゲ
ル状(ハイドロゲル)となり、一方、該温度より低い温
度ではゾル(ないし液状)となる特性を有する。
【0024】型取り時の作業性(例えば、ゲル化の迅速
性)等の点から、上記ゾル−ゲル転移温度は、5℃以
上、更には10℃以上(特に15℃以上)であることが
好ましい。他方、型取り剤の保管安定性(不必要にゲル
化しない)あるいは型取り後の形態安定性(ゲル化状態
を安定して保持する)等の点からは、上記ゾル−ゲル転
移温度は、30℃以下であることが好ましい。更には、
該ゾル−ゲル転移温度は、25℃以下、更には22℃以
下(特に20℃以下)であることが好ましい。
【0025】このように好適なゾル−ゲル転移温度を有
するハイドロゲル形成性高分子は、型取り剤のゲル形成
成分として使用可能な(前述した一般的特性を有する)
種々の高分子の中から、上記したスクリーニング方法
(ゾル−ゲル転移温度測定法)に従って容易に選択する
ことができる。本発明の型取り剤を生物の型取りに使用
する際には、生体に対して有害でない高分子群から選択
すべきことは当然である。
【0026】(ハイドロゲル形成性高分子)本発明の型
取り剤を構成するハイドロゲル形成性高分子は、ゾル−
ゲル転移温度を有するものである限り特に制限されな
い。速やかなゲル化および水不溶性への変化が容易な点
からは、該高分子は、その水溶液がLCST(下限臨界
共溶温度;Lower Critical Solution Temperature)を
有する温度感応性高分子部分(ブロック)と、親水性高
分子部分とが結合されてなる高分子であることが好まし
く、該「LCSTを有する温度感応性高分子部分」が一
分子中に複数存在する高分子であることが更に好まし
い。本発明者の知見によれば、上記温度感応性高分子の
LCSTは0℃以上40℃以下程度であることが好まし
い。
【0027】本発明に用いられる「その水溶液がLCS
Tを有する温度感応性高分子」部分とは、水に対する溶
解度温度係数が負を示す高分子であり、低温にて生成す
る高分子と水分子との水素結合に依存する水和物(オキ
ソニウムヒドロキシド)が高温で分解し、脱水和により
高分子同士が凝集し沈澱する特徴を有する。
【0028】本発明において、LCSTとは、高分子の
水和と脱水和の転移温度をいう(例えば、ヘスキンズ
(M. Heskins)らの J. Macromol. Sci.-Chem., A2
(8), 1441(1968)参照)。該温度感応性高分
子部分は、LCSTより低い温度では親水性で水に可溶
性であるが、LCSTより高い温度では疎水性となって
水中で不溶性であって沈澱し、この変化は可逆的であ
る。本発明においては、前述した高分子が生体表面の温
度および「これより低い温度」に速やかに対応した可溶
性−不溶性の可逆的変化を与える点からは、上記温度感
応性高分子部分のLCSTは0℃以上40℃以下(更に
は5〜15℃)であることが好ましい。
【0029】上記LCSTを有する高分子である限り、
本発明においては上記温度感応性高分子として特に制限
なく使用することが可能である。本発明に好適に使用可
能なLCSTを有する高分子としては、ポリN−置換ア
クリルアミド誘導体、ポリN−置換メタクリルアミド誘
導体及びこれらの共重合体、ポリビニルメチルエーテ
ル、ポリビニルアルコール部分酢化物、ポリプロピレン
オキシド等が挙げられる。好ましい温度感応性高分子を
以下にLCSTの低い順に例示する。
【0030】ポリ−N−アクリロイルピペリジン、ポリ
−N−n−プロピルメタクリルアミド、ポリ−N−イソ
プロピルアクリルアミド、ポリ−N,N−ジエチルアク
リルアミド、ポリ−N−イソプロピルメタクリルアミ
ド、ポリ−N−シクロプロピルアクリルアミド、ポリ−
N−アクリロイルピロリジン、ポリ−N,N−エチルメ
チルアクリルアミド、ポリ−N−シクロプロピルメタク
リルアミド、ポリ−N−エチルアクリルアミド、等。
【0031】上記の高分子は単独重合体(ホモポリマ
ー)であってもよく、また上記重合体を構成する単量体
と、他の単量体との共重合体であってもよい。このよう
な共重合体を構成する他の単量体としては、親水性単量
体、疎水性単量体のいずれを用いることもできる。
【0032】一般的には、上記高分子に親水性単量体を
共重合することにより、LCSTを上昇させることが可
能となり、一方疎水性単量体を共重合することにより、
LCSTを下降させることが可能となる。従って、これ
らの共重合成分(親水性単量体および/又は疎水性単量
体)を選択することによっても、所望のLCSTを有す
る高分子を得ることができる。
【0033】上記の親水性単量体としては、N−ビニル
ピロリドン、ビニルピリジン、アクリルアミド、メタク
リルアミド、N−メチルアクリルアミド、ヒドロキシエ
チルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、
ヒドロキシメチルメタクリレート、ヒドロキシメチルア
クリレート、酸性基を有するアクリル酸、メタクリル
酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸及びそれ等
の塩、塩基性基を有するN,N−ジメチルアミノエチル
メタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタク
リレート、N,N−ジエチルアミノプロピルアクリルア
ミド及びそれ等の塩、等が挙げられるが、それ等に限定
されない。
【0034】一方、上記の疎水性単量体としては、エチ
ルアクリレート、メチルメタクリレート、グリシジルメ
タクリレート等のアクリレート誘導体及びメタクリレー
ト誘導体、N−n−ブチルメタクリルアミド等のN置換
アルキルメタクリルアミド誘導体、塩化ビニル、アクリ
ロニトリル、スチレン、酢酸ビニル等が挙げられるが、
これ等に限定されない。
【0035】一方、本発明において温度感応性高分子と
結合させることが可能な親水性高分子ないし水溶性高分
子は、水に可溶な高分子である限り、特に制限されな
い。このような高分子の例を以下に列挙する。
【0036】ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコ
ール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリビニルピリジ
ン、ポリアクリルアミド、ポリメタリルアミド、ポリ−
N−メチルアクリルアミド、ポリヒドロキシエチルメタ
クリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリ
ヒドロキシメチルメタクリレート、ポリヒドロキシメチ
ルアクリレート、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、
ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸及びそ
れ等の塩、ポリ−N,N−ジメチルアミノエチルメタク
リレート、ポリ−N,N−ジエチルアミノエチルメタク
リレート、ポリ−N,N−ジメチルアミノプロピルメタ
クリレート及びそれらの塩等が挙げられる。
【0037】本発明に用いられる「ハイドロゲル形成性
高分子」における、その水溶液がLCSTを有する高分
子部分(A)と親水性高分子部分(B)とを結合してな
る共重合体の「結合様式」は特に制限されないが、例え
ば、AとBのブロック共重合体、ないし主鎖Aに側鎖B
が結合したグラフト共重合体、または主鎖Bに側鎖Aが
結合したグラフト共重合体等の様式が好適に使用可能で
ある。
【0038】LCSTを有する高分子部分と、親水性高
分子部分とのブロック共重合体は、例えば予め両者に反
応活性な官能基(水酸基、カルボキシル基、アミノ基、
イソシアネート基等)を複数導入し、両者を化学反応に
より結合させることによって得ることが可能である。
【0039】例えば、水溶性高分子であるポリエチレン
オキシドの両末端水酸基にアクリル酸クロライドを反応
させて、重合性官能基であるアクリロイル基を導入した
後、LCSTを有する温度感応性高分子 を与える単量
体、例えば、N−イソプロピルアクリルアミドと共重合
させることによって、所望(例えば、約30℃)のLC
STを有する温度感応性高分子と水溶性高分子の結合体
を得ることが可能である。
【0040】また、LCSTを有する温度感応性高分子
と水溶性高分子との結合物は、温度感応性高分子と水溶
性高分子とのブロック共重合によっても得ることが可能
である。
【0041】LCSTを有する温度感応性高分子と水溶
性高分子との結合物は予め、両者に反応活性な官能基
(水酸基、アミノ基、カルボキシル基或いはイソシアネ
ート基等)を導入し、両者を化学反応により、結合させ
る事によっても行える。この際、水溶性高分子中に反応
活性な官能基を複数導入することが好ましい。
【0042】例えば、N−イソプロピルアクリルアミド
とN−アクリロキシスクシンイミドとを共重合させて一
級アミンと容易に反応する基を導入した温度感応性高分
子を合成し、これと両末端に一級アミノ基を有する(水
溶性高分子である)ポリエチレンオキシドとを反応させ
ることによって、所望(例えば、約30℃)のLCST
を有する温度感応性高分子と水溶性高分子との結合体を
得ることが可能である。
【0043】また、一般にグラフト共重合体の合成法と
しては、1)重合体の連鎖移動反応を利用する方法、
2)幹重合体に遊離基に分裂し得る官能基を導入し、該
官能基から重合を開始する方法、3)幹重合体からイオ
ン重合を開始せしめる方法等が知られている。本発明に
使用すべきグラフト共重合体をこれらの方法によって得
ることもできるが、側鎖の重合度を制御するという観点
からは、LCSTを有する高分子部分中に1個の重合性
官能基を導入し、親水性高分子部分を与える単量体と共
重合させる;ないし、親水性高分子部分中に1個の重合
性官能基を導入し、LCSTを有する高分子部分を与え
る単量体と共重合させることで得ることが有利である。
【0044】(分子量)本発明の型取り剤を実際に使用
する際には、ゲル中の疎水的会合がある程度強いこと
が、型取り(例えば、口腔の型取り)後に他の成形材
(例えば、石膏)を型取りしたゲル中に流し込むまでの
間における、ゲルの変形や破壊への耐性を高める点から
好ましい。
【0045】上記の温ハイドロゲル形成性高分子の分子
量は、一般に分子量が大きい程、ゲル化物の強さが増す
傾向があるため、上記したゲル化物の強度を増大させる
点からは、該「ハイドロゲル形成性高分子」の分子量
は、大きい程有利である。この点から、ハイドロゲル形
成性高分子の重量平均分子量は10万以上であることが
好ましい。
【0046】より具体的には、本発明においては、上記
「ハイドロゲル形成性高分子化合物」としては、その分
子量が10万以上の分子を少なくとも含むものが好まし
く用いられる。本発明において「分子量10万以上の高
分子」とは、該高分子のゾル−ゲル転移温度より低い温
度において、その水溶液(濃度:約1%)を分画分子量
10万の限外濾過膜(アミコン社製、商品名:H1P1
00−43)を用いて限外濾過した際に、実質的に濾過
されないものをいう。
【0047】ここに、「実質的に濾過されない」とは、
原液の容量を1/3まで限外濾過濃縮した際に、濾液中
に検出される該高分子の濃度が、原液中の該高分子の濃
度の1/10以下であることをいう。この「実質的に濾
過されない」ことは、例えば、原液と濾液中の高分子の
濃度比をUV測定等により確認することが可能である。
【0048】上記した限外濾過に際しては、下記の実験
条件が好適に使用可能である。
【0049】<限外濾過の確認測定条件> 高分子水溶液の原液量:約3000ml 限外濾過膜:アミコン社製、商品名:H1P100−4
3(ホローファイバー型)。
【0050】温度:「ハイドロゲル形成性高分子化合
物」水溶液のゾル−ゲル転移温度より低い(好ましく
は、5℃以上低い)温度。
【0051】限外濾過加圧:1kg/cm2 循環流速:5 L(リットル)/min. 本発明に用いる「ハイドロゲル形成性高分子」の水溶液
は、低温(ゾル−ゲル転移より低い温度)では流動性の
ある水溶液状態を呈し、高温(ゾル−ゲル転移より高い
温度)では、流動性を失ってハイドロゲル状態を呈する
という、熱可逆性ゾル−ゲル転移を示す。本発明者の知
見によれば、このような熱可逆性ゾル−ゲル転移のメカ
ニズムは、以下のように推定される。
【0052】すなわち、分子内に存在する温度感応性高
分子部分のLCSTより低い温度では、該温度感応性高
分子部分、親水性高分子部分ともに水溶性であるため、
該「ハイドロゲル形成性高分子」は完全に水に溶解可能
となる。しかしながら、この水溶液の温度を該LCST
より高い温度に昇温すると、該温度感応性高分子部分が
非水溶性(疎水性)となり、疎水相互作用によって、別
個の分子間で会合する。
【0053】他方、親水性高分子部分は該LCSTより
高い温度においても水溶性を保つため、このような親水
性高分子部分の存在が、上記「LCSTを有する高分子
部分」間の凝集が巨視的な相分離に至ることを防止し
て、安定なハイドロゲル形成に寄与する。
【0054】このようにして生成したハイドロゲルの温
度を、再び、分子内に存在する温度感応性高分子部分の
LCSTより低い温度に冷却すると、該温度感応性高分
子部分が水溶性となって疎水性会合による架橋点が解放
され、ハイドロゲル構造が消失する。このため、本発明
に用いる「ハイドロゲル形成性高分子」は再び、完全に
水に溶解可能となる。このように、このゾル−ゲル転移
は、分子内に存在する温度感応性高分子部分のLCST
における可逆的な親水性−疎水性の変化に基づくもので
あるため、温度変化に対応して完全な可逆性を有する。
【0055】LCSTを有する温度感応性高分子部分と
親水性高分子部分との組成、両高分子部分の疎水性度、
親水性度、及び/又はそれらの分子量を調整することに
よって上記高分子のゾル−ゲル転移温度、即ち、本発明
の型取り剤のゾル−ゲル転移温度を所望の値(例えば、
5〜30℃)となるように制御することができる。上記
においては、LCSTを有する高分子を用いる場合につ
いて説明したが、このLCSTを有しない場合において
も、本発明に用いるハイドロゲル形成性高分子は、物理
的な(可逆的な)二次結合力である疎水相互作用に基づ
いて可逆的にゾル−ゲル転移する。
【0056】また、本発明者の知見によれば、該高分子
水溶液に添加されるべき「他の成分」(例えば、粘性調
節剤等)を含んでいても、該ゾル−ゲル転移温度を所望
の範囲(例えば、5〜30℃)となるように制御するこ
とが可能である。
【0057】(ゲル化物の強度)本発明の型取り剤から
生成する「ゲル化物」の強さは、上記した温度感応性高
分子と水溶性高分子との結合比率(重量比率)によって
も調整することが可能であり、一般に、水溶性高分子の
結合比率が低いほどゲル化物は強さを増す傾向がある。
ただし、水溶性高分子の結合比率が低いほどゲル化物は
離水(すなわちシネレシス)現象によりゲルが収縮する
傾向を示し易くなるため、結果として形態安定性が低下
し易くなる。この点から、温度感応性高分子と水溶性高
分子との結合比率(重量比率)は、温度感応性高分子1
重量部に対して、水溶性高分子0.2〜1.0重量部(更
には0.4〜0.8重量部)の範囲であることが好まし
い。
【0058】(水不溶性)本発明で用いるハイドロゲル
形成性の高分子は、そのゾル−ゲル転移温度より高い温
度(d℃)で実質的に水不溶性を示し、ゾル−ゲル転移
温度より低い温度(e℃)で可逆的に水可溶性を示す。
【0059】上記した温度(d℃)は、ゾル−ゲル転移
温度より1℃以上高い温度であることが好ましく、2℃
以上(特に5℃以上)高い温度であることが更に好まし
い。また、上記「実質的に水不溶性」は、上記温度(d
℃)において、水100mLに溶解する上記高分子の量
で、5.0g以下(更には0.5g以下、特に0.1g
以下)であることが好ましい。
【0060】一方、上記した温度(e℃)は、ゾル−ゲ
ル転移温度より1℃以上低い温度であることが好まし
く、2℃以上(特に5℃以上)低い温度であることが更
に好ましい。また、上記「水可溶性」とは、上記温度
(e℃)において、水100mLに溶解(ないし均一に
分散)する上記高分子の量が、0.5g以上(更には
1.0g以上)であることが好ましい。更に「可逆的に
水可溶性を示す」とは、上記ハイドロゲル形成性高分子
の水溶液が、一旦(ゾル−ゲル転移温度より高い温度に
おいて)ゲル化された後においても、ゾル−ゲル転移温
度より低い温度においては、上記した水可溶性を示すこ
とをいう。
【0061】(分散媒)本発明において、上述した「ハ
イドロゲル形成性高分子」とともにハイドロゲルを構成
する分散媒は、水ないし水性(aqueous)の液状媒体で
あることが好ましい。
【0062】ここに「水性の分散媒」は、溶液、分散液
(ディスパージョン、エマルション等)のいずれの形態
であってもよい。植物体表面に対する為害性の点から
は、水性媒体を水とともに構成する「他の液状媒体」
(下記アルコール等)は、10%以下(更には5%以
下)であることが好ましい。このような態様における
「他の液状媒体」としては、例えば、エタノール等の1
価アルコール、エチレングリコール等の2価アルコー
ル、グリセリン等の3価アルコールを始めとする1価な
いし多価アルコールが好適に使用可能である。
【0063】本発明の型取り剤におけるハイドロゲル形
成性高分子の好適な濃度は、該高分子の分子量にもある
程度依存するが、通常、(分散媒+高分子の合計重量を
基準として)5〜25wt%、更には10〜20wt%
(特に14〜18wt%)の範囲であることが好まし
い。
【0064】上述したように本発明の型取り剤はゲル化
温度より低い温度ではゾル(液体)状であるために、各
種の添加剤、例えば粘着性高分子、消臭剤、抗菌剤、着
色剤等、も該型取り剤中に均一に溶解ないし分散させる
ことが容易である。
【0065】(他の成分)本発明の型取り剤は、上述し
たハイドロゲル形成性高分子を少なくとも含むものであ
るが、必要に応じて、他の成分をも含有していてもよ
い。このような「他の成分」の種類ないし量比は、ハイ
ドロゲル形成性高分子のゾル−ゲル転移を実質的に阻害
しないものである限り特に制限されない。より具体的に
は、該「他の成分」は生物、無生物のいずれであっても
よく、また有機物、無機物のいずれであってもよい。
【0066】このような「他の成分」の典型的な例とし
ては、充填材が挙げられる。このような充填材を配合す
ることにより、ゲル化物の強さを更に改善することが可
能となる。該充填材の例としては、ケイソウ土、粘土、
シリカ、ワックス等が挙げられる。これらの充填材は、
細かい粉末状でミセル(ないしゲル)の網目に捕捉され
易いので、その分、ゲルを硬くする作用がある。この充
填材の量比は、ハイドロゲル形成性高分子100重量部
に対して、5〜1000重量部程度(更には50〜50
0重量部程度)であることが好ましい。
【0067】これらの充填材は、水中ないし流動体中
で、沈降ないし浮遊して分離し易い傾向があるが、充填
材を含有する本発明の型取り剤においては、該型取り剤
をゲル状態(ゾル−ゲル転移温度より高温)で保存する
ことにより、保存中に該充填材が分離する傾向を効果的
に抑制することが可能である。このゲル状の型取り剤
は、使用直前にゾル−ゲル転移温度より低温(例えば冷
蔵庫中)に保管することにより、簡便にゾル状態に変化
させることができる。
【0068】(ゾルの粘度)本発明の型取り剤は、ゾル
−ゲル転移温度より低い温度(ゾル状)で適切な粘性を
有することが、好適な型取りを行う点から好ましい。歯
科用の印象材を例にとれば、型取り前に該ゾルをトレー
上に載せた場合、たとえ該トレーを逆さにして口腔内に
入れた場合にも、該ゾルがトレーから流れ出ない程度に
充分な粘性を持っていることが好ましい。
【0069】型取り剤のゾル粘性を増大させる方法とし
ては、上述したハイドロゲル形成性高分子の分子量を増
大させること、該高分子の濃度を増大させること、更に
は、前記した充填材を配合することが挙げられる。
【0070】型取り後のゲル化物の形態安定性を維持す
るためには、例えば、型取り後のゲル化物を型取り剤の
ゾル−ゲル転移温度より高い温度に保温すればよい。年
間を通じて条件を揃えるためには、該ゲル化物をハイド
ロゲル形成性高分子のゾル−ゲル転移温度より10℃以
上高い温度(例えば、該ゾル−ゲル転移温度が20℃の
場合は、30〜40℃の環境下)で保温することが好ま
しい。
【0071】型取り剤の保管安定性、型取り時の作業性
あるいは型取り後の形態安定性等のバランスの点から
は、上記ゾル−ゲル転移温度は、5〜30℃、更には1
0〜25℃(特に15〜20℃)であることが好まし
い。
【0072】また、本発明の型取り剤は、その使用直前
まで冷蔵庫等の一定の低温下で保管することが、年間を
通じてほぼ同じ粘性で使用することを可能するので好ま
しい。型取り剤のこのような使用法は、特に夏季等の室
内温度が高い状況で、不必要なゲル化(例えば、型取り
用器具たるトレーに盛る前のゲル化、あるいは型取り前
のゲル化)を効果的に防止する点から好ましい。
【0073】
【実施例】以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に
説明する。
【0074】実施例1(型取り剤の調製) N−イソプロピルアクリルアミド 9.61gと、N−
アクリロキシスクシンイミド1.71gと、n−ブチル
メタクリレート0.71gとを、反応容器中でクロロホ
ルム400mlに溶解し、該反応容器中を窒素で置換し
た後、N,N´−アゾビスイソブチロニトリル0.13
5gを加えて、60℃で、6時間重合させた。得られた
反応生成物を減圧下で濃縮した後、ジエチルエーテルに
沈澱させた。得られた沈殿を濾過により分離した後、約
40℃で約24時間真空乾燥して、7.8gのポリ(N
−イソプロピルアクリルアミド−co−N−アクリロキ
シスクシンイミド−co−n−ブチルメタクリレート)
を得た。
【0075】上記により得たポリ(N−イソプロピルア
クリルアミド−co−N−アクリロキシスクシンイミド
−co−n−ブチルメタクリレート)7.0gと、両末
端アミノ化ポリエチレンオキシド(分子量6,000、
川研ファインケミカル(株)製)3.5gとを、クロロ
ホルム500mlに溶解し、約25℃で終夜(約10時
間)反応させた後、イソプロピルアミン10gを加え、
約25℃で終夜(約10時間)放置した。
【0076】得られた反応生成物を減圧下で濃縮した
後、ジエチルエーテル中に沈澱させた。得られた沈殿を
濾過により分離した後、該沈殿を約40℃で約24時間
真空乾燥した。次いで、得られた残渣を約10℃で蒸留
水1000mlに溶解し、分画分子量10万のホローフ
ァイバー型限外濾過膜(アミコン社製H1P100−4
3)を用いて10℃で400mlまで濃縮した。該濃縮
液に蒸留水600mlを加えて希釈し、上記希釈操作を
再度行った。上記の希釈、限外濾過濃縮操作をさらに5
回繰り返し、分子量10万以下のものを除去した。この
限外濾過により濾過されなかったもの(限外濾過膜内に
残留したもの)を回収して凍結乾燥し、8.0gの本発
明の高分子(I)を得た。
【0077】上記により得た「高分子(I)」7.5g
を、42.5gの蒸留水に氷冷下で溶解した(高分子濃
度15wt%)。この水溶液のゾル−ゲル転移温度を、
前述した装置を用い、貯蔵弾性率(G´、弾性項)が損
失弾性率(G″、粘性項)を上回る点の温度として測定
したところ、該ゾル−ゲル転移温度は19℃であった。
【0078】この高分子(I)の水溶液50g(高分子
濃度15wt%)にけいそう土(関東化学(株)製)1
0gを、氷冷下で分散させ、本発明の型取り剤を得た。
このゾル状液を徐々に加温すると、約19℃で流動性を
失い、ゲル化した。
【0079】このようにして得たゲルを再度冷却する
と、約19℃で流動性を取り戻し、再びゾル状液に戻っ
た。このようにして得たゾル状液は、使用時まで冷蔵庫
(約4℃)にて保管した。
【0080】実施例2(型取り剤の調製) 両末端アミノ化ポリエチレンオサイド(分子量6,00
0、川研ファインケミカル(株)製)30gをクロロホ
ルム1000mlに溶解した後、ジイソシアン酸トリレ
ン(コロネートT65、日本ポリウレタン工業(株)
製)1gと、末端に1級アミノ基を有するトリアミノポ
リプロピレンオキサイド(平均分子量約3000、米国
ジェファーソンケミカル社製:ジェファーミンT−30
00)10gとを加え、室温で5分反応させた。次い
で、イソプロピルアミン10gを加え、室温で終夜(約
10時間)反応させた。溶媒を減圧下で留去して、「高
分子(II)」41gを得た。
【0081】上記により得た「高分子(II)」15g
を、85gの蒸留水に氷冷下で溶解した(高分子濃度1
5wt%)。この水溶液のゾル−ゲル転移温度を実施例
1と同様の方法で測定したところ、該ゾル−ゲル転移温
度は15℃であった。
【0082】この高分子(II)の水溶液50g(高分子
濃度15wt%)にけいそう土(関東化学(株)製)1
0gを、氷冷下で分散させ、本発明の型取り剤を得た。
このゾル状液を徐々に加温すると、約15℃で流動性を
失い、ゲル化した。
【0083】このようにして得たゲルを再度冷却する
と、約15℃で流動性を取り戻し、再びゾル状液に戻っ
た。このようにして得たゾル状液は、使用時まで冷蔵庫
(約4℃)にて保管した。
【0084】実施例3(歯科用印象材としての使用) 使用直前まで冷蔵庫(約4℃)にて保管した実施例1お
よび2の型取り剤を、それぞれ歯科用印象材として臨床
下で使用したところ、いずれも良好な結果が得られた。
【0085】すなわち、実施例1または2の型取り剤
(ゾル状液)約 50mlを、それぞれ、口腔内形状型
取り用の歯科印象器具(トレー、金属製)に乗せた後、
該器具ごと速やかに被検者の口腔内(上顎)に手で密着
させた後、そのままの状態を保持した。30秒後、被験
者の体温によりゲル状となった型取り剤を、上記器具ご
と口腔から剥離した。
【0086】上記により得られたゲル状の「型」に、歯
科用石膏分散液(GC 社製、商品名:ニューフジロッ
ク)約50mlを注入して、室温で40分間硬化させ
た。該硬化後、上記したゲル状の「型」から硬化した石
膏を分離したところ、被検者の口腔内形状を忠実に反映
した石膏製レプリカが得られた。
【0087】実施例1および2の型取り剤は、いずれも
良好な石膏製レプリカを与えた。該レプリカの肉眼観察
によれば、それらの精密性は従来のアルギン酸歯科用印
象材(トクヤマ社製、商品名:トクソーA−1α)を用
いた場合よりも忠実性ないし精密性、特に、アンダーカ
ットのある窩洞の再現性に優れており、従来の寒天製の
精密印象材(J.Morita USA 社製、商品名:ざ・寒天)
を用いた場合と同等程度に、忠実性ないし精密性に優れ
ていた。
【0088】
【発明の効果】上述たように本発明によれば、その水溶
液がゾル−ゲル転移温度を有し、且つ、該ゾル−ゲル転
移温度より高い温度で実質的に水不溶性を示すハイドロ
ゲル形成性高分子を少なくとも含む型取り剤であって;
水の存在下、前記ゾル−ゲル転移温度より低い温度で可
逆的に液体状態(ゾル状態)を示し、且つ、ゾル−ゲル
転移温度より高い温度でゲル状態を示すことを特徴とす
る型取り剤が提供される。
【0089】更に、本発明によれば、その水溶液がゾル
−ゲル転移温度を有し、且つ、該ゾル−ゲル転移温度よ
り高い温度で実質的に水不溶性を示すハイドロゲル形成
性高分子を少なくとも含む型取り剤であって;水の存在
下、前記ゾル−ゲル転移温度より低い温度で可逆的に液
体状態(ゾル状態)を示し、且つ、ゾル−ゲル転移温度
より高い温度でゲル状態を示す型取り剤を用い;前記ゾ
ル−ゲル転移温度より低い温度で液体状態(ゾル状態)
とした該型取り剤を、型取り対象物の表面に密着させ、
温度上昇により該型取り剤をゲル化させた後、該ゲル化
した型取り剤を前記型取り対象物表面から剥離すること
を特徴とする型取り方法が提供される。
【0090】上記した本発明の型取り剤の水溶液は、ゾ
ル−ゲル転移温度より低い温度ではゾル状態(液体状
態)であって、型取り対象物の表面に散布、塗布等の任
意の手段によって付着させることが可能であり、しかも
温度変化によって容易且つ迅速に対象物表面でゲル化す
る。このゲルは温度がゾル−ゲル転移温度より高い温度
であれば実質的に水不溶性の性質を保持するため、対象
物から剥離した後の型取り剤ゲルは該温度で安定してそ
の形状を保持する。
【0091】したがって、本発明の型取り剤は、型取り
対象物(口腔内形状等)に密着した状態でのゲル化がシ
ャープなため型取り時間も短くて済むのみならず、適度
なゲル弾性に基づき、対象物からの剥離性を損なうこと
なく、アンダーカットのある窩洞に対しても正確な型取
りが可能となる。
【0092】加えて、本発明の型取り剤は温度変化によ
り速やかにゲル化可能であるため、特別な温度調節装置
等を必須とすることなく簡便な型取りが可能である。更
には、該型取り剤は、寒天製の型取り剤のような品質の
ばらつき易い天然原料に頼ることなく低コストで供給が
可能である。
【0093】他方、本発明の型取り剤はゾル−ゲル転移
温度より低い温度では速やかに水溶性に変化するため、
例えば、該型取り剤が不要となった際には、冷水で洗浄
するという簡便な操作で、他の物体(例えば、型取り対
象物、器具、成形後のレプリカ等)から容易に除去する
ことができる。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 その水溶液がゾル−ゲル転移温度を有
    し、且つ、該ゾル−ゲル転移温度より高い温度で実質的
    に水不溶性を示すハイドロゲル形成性高分子を少なくと
    も含む型取り剤であって;水の存在下、前記ゾル−ゲル
    転移温度より低い温度で可逆的に液体状態(ゾル状態)
    を示し、且つ、ゾル−ゲル転移温度より高い温度でゲル
    状態を示すことを特徴とする型取り剤。
  2. 【請求項2】 前記ゾル−ゲル転移温度が0℃より高
    く、且つ常温(25℃)より低い請求項1記載の型取り
    剤。
  3. 【請求項3】 前記ゾル−ゲル転移温度が、型取り対象
    たる生物体の体温より低い生物形状型取り用の請求項1
    記載の型取り剤。
  4. 【請求項4】 前記ゾル−ゲル転移温度が、人体の体温
    (37℃)より低い請求項3記載の型取り剤。
  5. 【請求項5】 前記ハイドロゲル形成性高分子が、前記
    ゾル−ゲル転移温度より低い水和−脱水和の転移温度を
    有する温度感応性高分子と、水溶性高分子とが結合され
    てなる高分子である請求項1記載の型取り剤。
  6. 【請求項6】 ゾル状態での粘性を調製する粘性調製剤
    を更に含有する請求項1記載の型取り剤。
  7. 【請求項7】 その水溶液がゾル−ゲル転移温度を有
    し、且つ、該ゾル−ゲル転移温度より高い温度で実質的
    に水不溶性を示すハイドロゲル形成性高分子を少なくと
    も含む型取り剤であって;水の存在下、前記ゾル−ゲル
    転移温度より低い温度で可逆的に液体状態(ゾル状態)
    を示し、且つ、ゾル−ゲル転移温度より高い温度でゲル
    状態を示す型取り剤を用い;前記ゾル−ゲル転移温度よ
    り低い温度で液体状態(ゾル状態)とした該型取り剤
    を、型取り対象物の表面に密着させ、温度上昇により該
    型取り剤をゲル化させた後、 該ゲル化した型取り剤を前記型取り対象物表面から剥離
    することを特徴とする型取り方法。
  8. 【請求項8】 型取り対象物表面から剥離した前記ゲル
    化型取り剤の凹部に、他の成形材料を注入して型取り対
    象物の複製(レプリカ)を得る請求項7記載の型取り方
    法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR101147337B1 (ko) * 2005-04-28 2012-05-22 (주) 베리콤 알지네이트 인상재 조성물
JP2017226207A (ja) * 2016-06-15 2017-12-28 株式会社リコー 鋳型、鋳型形成方法、及び鋳造方法
US20180257270A1 (en) * 2017-03-13 2018-09-13 Yuuya ENDOH Mold, method for forming mold, and casting method
US11097532B2 (en) 2016-02-01 2021-08-24 Ricoh Company, Ltd. Method for making mold, method for molding model material, and mold making apparatus

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