JP3107390B2 - みりんの製造方法 - Google Patents

みりんの製造方法

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【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、みりんの製造方法に関する。
[従来の技術] みりんは、蒸したもち米にアルコールまたは焼酎と麹
を加え、高濃度のアルコール存在下で微生物の汚染を防
ぎつつもち米を糖化したもので、その製造には30〜90日
を有していた。また、収率が諸味重量の65%程度と極め
て低いこと、うるち米では、アミロースを含むため糖化
が十分進まないことなど、多くの問題点をかかえてい
る。そこで近年、その合理化が検討され、米麹の補強剤
として酵素の添加や水あめの添加等が実施されている。
しかしながら、こうした方法では収率は向上するもの
の、製造に30〜60日を要する点はまだ改善できていな
い。
また、うるち米の利用も種々提案されているが、(特
開昭56−61973号、特開昭58−187159号)いずれも、う
るち米を蒸してから液化させねばならず、糖化熟成に
は、依然として30〜60日を要する点は変わっていない。
一方、短期間で速醸する方法も提案されているが(特
開昭63−116667号)、これは、もち米を原料とするもの
に限られており、また、煮きり防止のための工程が必要
である点で問題が残っている。
[発明が解決しようとする課題] 本発明は、もち米、粳米、いずれでも原料を蒸すなど
という工程を経なくとも、極めて短期間で、かつ煮きり
の発生しない芳醇な香味を有するみりんを製造しうる方
法を提供することを目的とする。
[課題を解決するための手段] 上記目的を達成すべく、鋭意検討した結果、以下の工
程をとることにより、仕込から熟成完了まで、わずか数
日で製造でき、しかも煮きりが発生せず芳醇な香味を有
するみりんの製造が可能となったのである。
イ 原料を粉砕する第1工程 ロ 粉砕原料を90〜100℃の温度で耐熱性液化酵素によ
り高温液化を行う第2工程 ハ 加圧蒸煮する第3工程 ニ 米麹および/または糖化酵素を添加し55〜60℃で12
〜20時間高温糖化を行う第4工程 ホ 糖化後、アルコールを添加し35〜45℃で24時間以上
熟成させる第5工程 ヘ 圧搾、濾過、殺菌の第6工程 以下、製造工程にそって、本発明について詳細に説明
する。
原料とする米は、うるち米、もち米、いずれでも、ま
た両者混合でもよく、これを粉砕後、アルファーアミラ
ーゼにより高温で液化するのであるが、公知の澱粉より
ブドウ糖を製造する方法に準じて、常温、または糊化温
度以下で原料を溶解し、その後、アミラーゼの至適温度
に上げる方法で処理すると、原料溶解中にタンパク質が
溶出し、液化反応を阻害し、ひいては濾過性、圧搾収率
の低下を引き起こす。また、みりんのような高濃度の穀
物含有諸味を液化する場合には酸素を過剰に添加しない
と液化反応中に粘度の上昇を招き、撹拌に多大の動力を
必要とし、またこげつき等により着色の原因ともなる。
こうした問題点を解決するために、うるち米を粒のま
ま蒸してから液化させる方法が提案されているが、この
方法では蒸すための特別な設備が必要となる欠点があ
る。
そこで、本発明者らは、蒸煮の工程を含まずとも、容
易に液化できる条件を鋭意検討した結果、耐熱性液化酵
素を用い、90℃以上の熱水中に粗粉砕した原料を徐々に
添加することにより、原料のタンパク質は直ちに粗粉砕
した米粒子内で変性・凝集し、液化を阻害することな
く、また液化しつつ原料を投入するため、粘度の上昇を
ほとんど起こさずに高濃度の液化ができることがわかっ
た(第1表参照)。
第1表から、投入温度として90〜95℃が最適(従来法
と同等もしくはそれ以上の圧搾収率を有する区分)であ
ることがわかる。
この場合、原料をあまり細かく粉砕すると、米粒子内
で変性したタンパク質が諸味中に漏出し濾過不良の原因
となり、一方あまり大きな粒子では液化が不均一となる
ことがわかり、16〜18メッシュの粒子が全体重量の90%
以上である場合において濾過性に悪影響を及ぼすことな
く均一に液化できることを発見した(第2表参照)。
また、原料の投入スピードも、早すぎると液化が追い
付かず粘度の上昇を招き、団子状の塊が発生する。原料
投入スピードを諸味中の原料濃度が毎分1.2%(W/V)以
下で上昇するよう調整することで、最大粘度500CP以下
で液化が完了することがわかった(第3表参照)。
第2表から、圧搾収率が第1表の従来法と同等、また
はそれ以上の区分が16〜32メッシュ、32〜42メッシュ、
42〜80メッシュであり、この範囲(16〜80メッシュ)で
あれば、従来法と同等またはそれ以上の収率が得られる
ことから、粒度分布として、16〜18メッシュが好ましい
ことがわかる。
第3表から、原料投入スピードは、諸味中の米濃度の
上昇速度が1.2%/分以下とすることが好ましい(粘度
が低く、第1表の従来法より圧搾収率がよいことがわか
る)。
なお、澱粉工業において、恒高温液化法と称し、澱粉
をいったん水に溶かし澱粉溶液を90〜95℃の温水中に添
加する方法があるが、この方法では、米粉溶液を作成す
る段階でタンパク質が溶出し、また米粉溶液以上の濃度
に基質濃度を上げることができないため、本発明者らが
めざす、みりんの製造には適さない。
また、この液化工程で食塩または塩化カルシウムを20
ppm以上添加することで酵素の耐熱性が増し、液化を完
全に行なわせることができる。
以上のように本発明における液化工程(第2工程)の
条件は、みりんのような澱粉以外のタンパク質等を含む
米を蒸煮させずに、しかも収率、濾過性をそこなわず
に、短時間に液化するための必要条件であり、決して従
来の澱粉工業で行なわれている液化方法では達成できな
いものである。
こうして液化した米諸味を次に加圧蒸着するのである
が、この第3工程は液化酸素を失活させると同時に未分
解タンパク質を確実に変性させ、濾過性を向上させるた
めのもので、通常の澱粉糖化で用いる加圧条件で十分で
ある。
次に、冷却して糖化工程に移るのであるが、従来のよ
うに麹、グルコアミラーゼと同時にアルコールを添加し
て糖化する方法では、腐敗は防止できるものの、アルコ
ールの存在により酵素、特にプロテアーゼのようなタン
パク分解系酵素の相対活性が10〜30%までに低下するこ
とが知られている。そのため、糖化熟成に20〜30℃で30
〜60日を要する欠点がある。また酵素反応を進ませるた
めに温度を40℃以上に上げると、酵素自身が失活してし
まい、糖化ができなくなってしまう。
一方、アルコール無添加で腐造菌が生育せず、かつ酵
素が失活しない温度域として55〜60℃を設定し、アルコ
ール無添加で糖化を実施し、糖化終了後アルコールを添
加した場合には、糖は20時間で十分生成するが、香味に
みりん特有のまろやかさがなく、従来のみりんとは異な
るものであった(第4表参照)。
腐敗防止の意味で55℃以上、酵素の失活防止の意味で
60℃以下とすることが必要であることがわかった。ただ
し、香りはうすく、従来法と異なっていた。
そこで、本発明者らは、糖化時間を短縮し、かつみり
ん特有な芳醇な香味を有するものとすべく検討した結
果、アルコール無添加で温度55〜60℃で12〜20時間糖化
(第4工程)後、アルコールを添加し35〜45℃で24〜48
時間熟成させる(第5工程)ことにより、酵素による糖
の生成の他、麹自身の代謝産物の抽出と麹菌の自己消化
を促進させ、みりん特有の風味を出させることに成功し
た。
この方法では従来法に比べ、前述のようにアルコール
によるプロテアーゼ活性の阻害がないため、液化工程で
タンパク質を変性、凝集させたにもかかわらず、窒素成
分が高く、芳醇な香味とすることができた。
第5表から、対照区より得点が高く、芳醇な香味を有
することから温度35〜40℃、24時間以上の条件が好まし
いことがわかる。
前述のようにして得た糖化終了諸味を、必要に応じて
液糖等を添加した後、常法に従い圧搾・濾過・殺菌して
(第6工程)製品とするのである。
ところで、従来法のみりんは、製品を長期間保存した
り、調理のため加水または加熱したりした場合、原料由
来のタンパク質が変性し、いわゆる煮きり混濁を引き起
こすことが知られている。これを防止するため、一般に
は原料米をあらかじめ加圧蒸煮するか、それでも不十分
な場合には糖化、濾過後90℃で5分間加熱し再濾過する
方法がとられているが、いずれも工程が煩雑になり、専
用の設備が必要になってくる。
ところで、本発明法によれば、原料米由来のタンパク
質は液化時に高温で処理されるため、変性・凝集し、一
方、麹由来のタンパク質は従来法よりプロテアーゼ活性
の強い条件下で糖化されるため分解されて、いわゆる煮
きり混濁が発生しないという特徴があり、煮きり防止の
ための処理が何ら必要がないという長所がある(第6表
参照)。
なお、比較として、成分分析値が合うように、澱粉を
糖化して作成した液糖とタンパク質を分解して得たアミ
ノ酸液にアルコールを加えて合成みりんを試作してみた
が、本発明法とは明らかに香味が異なり、このことから
も本発明法が液化・糖化という見掛け上、澱粉工業で行
なわれる工程に似た工程を取るものの、単に澱粉を分解
して作成するのとは、効果において明らかに異なるもの
であるということができる。
〔実施例〕 以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、
これらの実施例は本発明の範囲を何ら制限するものでは
ない。
実施例1 精白うるち米500kgを粉砕機(ATOMIZER型式EW7.5
(株)不二パウダル製)で粉砕し、第7表に示す粒度分
布をもつ粉砕米を得た。一方、塩化カルシウム50g添加
した水707を2.2t容量の撹拌機付き蒸煮タンクに入
れ、90℃まで加温し、この中に、上記粉砕うるち米450k
gを75rpmで撹拌しつつ、毎分7.5kgの速度で投入を開始
した。40kg投入した時点で水1kgに溶かした市販液化酵
素ターマミル300L(ノボインダストリー製)250gを投入
し、さらに毎分7.5kgの速度でうるち米を投入し続け、
1時間かけて原料の投入を終了した。この間液温が90℃
に維持できるよう、適宜ジャケットに蒸気を入れた。原
料を投入後、95℃に諸味の温度を上げ、60分ホールドさ
せて液化を行ない、その後15分かけて120℃まで諸味の
温度を上げ15分蒸煮した。
つぎにジャケットに水を入れて冷却し、諸味の温度を
58℃とし、米麹50kg、市販糖化酵素パンチターゼ(近畿
ヤクルト製)L100g、液糖792kgを加えて、30分撹拌後、
撹拌を止めて16時間放置して糖化を行なった。16時間後
の諸味の温度は56℃であった。
糖化終了後、諸味の温度を50℃まで冷却し、撹拌しな
がら58%アルコール576を加えた。アルコール投入後
の温度は40℃であった。投入後30分撹拌しその後24時間
放置して熟成させた。
この熟成終了後の諸味2140を圧搾機で圧搾し、濾液
をケイソウ土濾過した後、75℃達温殺菌し、みりん製品
1930を得た。
こうして製造したみりんと、もち米を原料に従来法で
製造したみりんの成分分析値と官能評価の結果および煮
きり混濁の有無を第8表に示した。
実施例2 2.2tの蒸煮タンクに塩化カルシウム40gを加えた90℃
の温水640を作成し、70ppmで撹拌しつつ、実施例1と
同一粉砕機で粉砕したもち米550kgを毎分5kgの速度で投
入を開始した。20kg投入した時点で水10に溶解したタ
ーマミル300L330gを投入し、さらにもち米の投入を続
け、約2時間で原料の投入を終えた。
その後、95℃に諸味の温度を上げ90分ホールドさせて
液化した後、120℃で15分蒸煮させた。
次に58℃まで諸味の温度を下げ、パンチダーゼL220
g、米麹100kgを加えて30分撹拌後、16時間放置した。
16時間後の温度は57℃であったが、これを45℃まで下
げて58%アルコール330を添加し30分撹拌後、24時間
放置し熟成させた。このときの諸味の温度は40℃であっ
た。
こうして得たみりん諸味1330を圧搾機で圧搾し濾液
を精製濾過、殺菌することにより清澄なみりん製品1200
を得た。このみりんは、同一原料を従来法で製造した
みりんより、芳醇な香味があり、官能評価でも従来品よ
り有意な差で好まれた。また、煮きりテストでもうるみ
は全く認められなかった(第9表参照)。
実施例3 2.2tの蒸煮タンクに塩化ナトリウム30gを加えた95℃
の温水720を作成し、70rpmで撹拌しつつ、実施例1と
同じ粉砕機で粉砕したもち米200kgと同じく粉砕したう
るち米200kgを混合した後、毎分7.5kgの速度で投入を開
始した。30kg投入した時点で水1に溶解した市販液化
酵素ターマミル300L250gを投入し、さらにもち米、うる
ち米混合品の投入を続け、約1時間で原料の投入を終え
た。この間、諸味の温度が95℃に維持できるように、適
宜タンクのジャケットに蒸気を通した。
原料投入後95℃に諸味の温度を維持しつつ60分撹拌を
続け液化を行なった。
その後、120℃まで温度を上げ、10分間蒸煮した後、
冷却に移り、諸味の温度を58℃にした。
この液化終了諸味に米麹100kg、液糖792kgを加えて30
分撹拌後、撹拌を止めて16時間放置して糖化を行なっ
た。
16時間糖化後、諸味の温度を45℃まで下げ、撹拌しな
がら58%アルコール576を加えた。アルコール投入後
の諸味の温度は35℃であった。その後、24時間撹拌を止
めて熟成させた。
この熟成終了諸味2140を圧搾機で圧搾し、濾液をケ
イソウ土濾過後、75℃殺菌し、みりん製品1930を得
た。
こうして得たみりんともち米単独で従来法で製造した
みりんの成分分析値と官能評価の結果および煮きり混濁
の有無を第10表に示した。
〔発明の効果〕 本発明によれば、もち米、うるち米、いずれでも原料
を蒸すなどという工程を経なくとも、極めて短時間で、
かつ煮きりの発生しない芳醇な香味を有するみりんを製
造することができる。
フロントページの続き (72)発明者 塚本 義則 愛知県半田市岩滑高山町2―102―4 (72)発明者 川村 吉也 愛知県江南市古知野町古渡132 (56)参考文献 特開 昭56−61973(JP,A) 特開 昭62−259563(JP,A) 特公 昭57−39624(JP,B1) 日本醸造協会誌,84(4),p.259 −263,1989 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12G 3/08 102 JICSTファイル(JOIS)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】うるち米および/またはもち米を原料に、
    みりんを製造する方法において、以下の工程 イ 原料を粉砕する第1工程 ロ 粉砕原料を90〜100℃の温度で耐熱性液化酵素によ
    り高温液化を行う第2工程 ハ 加圧蒸煮する第3工程 ニ 米麹および/または糖化酵素を添加し55〜60℃で12
    〜20時間高温糖化を行う第4工程 ホ 糖化後、アルコールを添加し35〜45℃で24時間以上
    熟成させる第5工程 ヘ 圧搾、濾過、殺菌の第6工程 を含むことを特徴とするみりんの製造方法。
  2. 【請求項2】原料を高温液化する第2工程において、原
    料を90℃以上の熱水中へ、諸味中の原料濃度の上昇が毎
    分1.2%(W/V)以下となるような速度で投入することを
    特徴とする請求項1記載の製造方法。
  3. 【請求項3】原料を粉砕する第1工程において、16〜80
    メッシュの粒度の原料が原料全体重量の90%以上である
    ことを特徴とする請求項1記載の製造方法。
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