JP6119025B1 - みりん類の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 従来の液化液で製造された純米本みりんは、醪で生成するペプチドに加え、液化液製造時に生成するペプチドが加算されるので、蒸米を使用した純米本みりんよりも除去すべきペプチドが多いことが滓下げ工程を煩雑にしていた。純米本みりんに液化液を使用しても、アミノ酸やペプチドの生成量が蒸米と同等又は、それ以下のみりん類の製造方法を提供することにある。【解決手段】 液化用酵素剤に含まれるプロテアーゼを失活させることにより、液化液の製造時に生成するペプチド量を押えると共に、液化液を再加熱することで、米麹由来のプロテアーゼでも分解されにくい蛋白質へと変化させることで、醪中で生成した過剰なペプチドを除去するのではなく、液化液を使用しても窒素量の少ない純米本みりんを提供することにより、滓下げ等の精製工程を軽減又は、省略出来る。【選択図】 図1

Description

本発明は、液化液を使用したみりん類の製造方法に関する。
米と米麹としょうちゅう(焼酎)又はアルコールを原料に仕込まれた純米本みりんは、米麹由来のプロテアーゼにより生成されたアミノ酸やペプチドに加え、米麹由来の酵素などの蛋白質が可溶化して含まれている。
純米本みりんに含まれるアミノ酸は低分子のため、結晶化して滓を生じることはないが、高分子の過剰なペプチドは、外部条件の変化によって不溶化し滓を生成して商品価値を著しく低下させる。
米の処理には蒸米法と液化法があるが、従来の液化液を使用した純米本みりんは、醪で生成するペプチドに加え、液化時に生成するペプチドが加算されるので、蒸米法より多くのペプチドを含有していた。
過剰なペプチドは味や形状に悪影響を与える。具体的には、味にざらつき感を与え、外見的にはみりん類に白濁や沈殿を生じるので、滓下げや蛋白質除去用濾材等で除去する必要があった。
酵素剤は菌やカビを培養して製造されるので、単体の酵素力だけでなく夾雑物として他の酵素力価も含んでいる。
具体的には、液化用酵素剤はα-アミラーゼだけでなく夾雑酵素としてプロテアーゼも含んでいるので、米の澱粉をグルコースやデキストリンに分解するだけでなく、米の蛋白質もペプチドやアミノ酸に分解する。
蒸米法とは、米を洗米、浸漬、蒸し、放冷の一連の原料処理を施す処理方法である。
蒸しの工程では、米澱粉はβ澱粉からα澱粉に変化するだけで、デキストリンまでは分解されない。又、米蛋白も熱による変性を受けて凝固するだけで、ペプチドやアミノ酸には分解されない。
液化法とは、米を蒸さずに米と水を酵素剤の存在下で加熱する処理方法である。
液化の工程では、米澱粉がα-アミラーゼで分解されてデキストリンを生成すると共に、米蛋白の一部が液化用酵素剤に含まれるプロテアーゼで分解されてアミノ酸やペプチドを生成する。
原料処理中に、米の澱粉がデキストリンに蛋白質がペプチドに分解されることが、蒸米法とは大きく異なる。
従来の液化液を使用したみりん醪のペプチド量が蒸米法より多い要因は次の2つである。第一の要因は、液化液製造時に液化用酵素剤に含まれるプロテアーゼによって、米の蛋白質が分解されペプチドやアミノ酸を生成する。
第二の要因は、液化液は蒸米に比べて熱変性度が低く、みりん醪中では米麹由来のプロテアーゼで分解されやすいので、蒸米より多くのペプチドを生成する。
開放系タンクで液化液を製造する場合、突沸事故を防止するために液化液の液化温度は95℃前後を上限としていた。
非特許文献1の第3表には使用酵素名と液化液のアミノ酸度が記載されている。アミラーゼRB-IIのアミノ酸度は0.80、丸米液化H-3のアミノ酸度は0.30、丸米液化酵素H-2のアミノ酸度は0.70と記載されている。
配合されているプロテアーゼの種類が特定出来ないので全窒素量の算出はできないが、記載のアミノ酸度から推定すると液化液に多量のペプチドが含有されていることが容易に推測できる。
又、非特許文献1の液化液を使用した清酒は、過剰なペプチドである滓を1回の滓下げでは除去出来ないので、複数回の滓下げを実施して過剰なペプチドを除去していた。
特許文献1の特許請求の範囲の請求項1では、液化液を固液分離し、液部に含まれる高分子の蛋白質(ペプチド)を除去してから、仕込むことを特徴とする清酒の製造方法の記載がある。
ペプチドを除去した液化液で清酒醪に仕込むことにより、醪に持ち込む窒素量を引き下げて、次工程の濾過の効率化を図っている。
中性に近いみりんは、酸性の清酒よりペプチドの生成量が多いので、除去すべきペプチド量も清酒に比べて多くなる。
特許文献2は、多孔質体である蛋白質除去用濾材を用いて蛋白質を除去する方法で十分な効果が得られると表6に記載されている。
特許文献2の段落[0065]には加熱処理の方法が、[0066]と[0067]には一般的な滓下げ方法が記載されている。
表6の加熱処理や表7、表8の柿渋等を使用した一般的な滓下げの結果から、加熱処理や柿渋や滓下げ剤を使用した滓下げでは、凝集して生成するフロックは、常に一定ではないので再現性がむつかしいことを表している。
再現性や確実性を求めるために蛋白質除去用濾材を推奨している。
特許文献2の第6表及び第7表には、蒸米を使用したみりんの滓処理の具体例が記載されている。未処理みりんの全窒素量(以下TNという)は100ml当り140mgであるが、加熱処理では120.4mg、滓下げでは110.6mg、濾材処理では85.4mgとなり、滓下げにより余剰のペプチドは除去されるが、旨味成分であるフォルモール態窒素(以下FNという)の指標であるアミノ酸度は3.1と変化しない。
滓下げによって、アミノ酸の比率を表す全窒素量/フォルモール態窒素値(以下TN/FN値という)は低下し、余剰なペプチドが除去され安定状態であることを示している。
第6表からのTN/FN値は、未処理みりんが4.51、加熱処理が3.88、滓下げ処理が3.57、濾材処理が2.74である。
特許文献3の特許請求の範囲の請求項1では、みりん類の過剰なペプチドを除去するため、高周波処理する工程を含むことが特徴との記載がある。
これは、圧搾液を高周波処理することにより、簡単に過剰なペプチドを凝固させ除去する手法であるが、これを実施することで滓処理は簡単に実施出来るが、その為には高周波の設備導入が必要となる
特許文献4は、上槽後の酒類を110℃以上130℃以下の温度で加熱処理し、溶解した蛋白質を熱変性させることにより、滓下げの工程を省略するとの記載がある。
110℃以上の高温でペプチドを熱変性させて不溶化して分離除去することで滓下げを省略する手法であるが、高温処理により香ばしい香が付加されるので、個人によって好き嫌いがある。
バッチ式液化法は、45℃前後の水と酵素を液化タンクで混和し、混和液に丸米を投入し吸水させたのち、95℃前後まで数時間かけて昇温し液化するが、70℃近辺でβ澱粉が一斉にα澱粉に変化(以後、糊化という。)するので粘度が急激に上昇する。
非特許文献1では、この糊化の状態を解消して粘度を低下させるには、170%の水歩合を推奨している。バッチ式液化法は水歩合が低くなると一斉に起こる糊化を解消することが出来ない。
特開2000−166532号公報 特許4649568号公報 特開平8−322546号公報 特開2003−135050号公報
姫野国夫、姫飯造りの開発と現状、醸造協会誌、1993年、p756-p762
従来の液化液を使用して製造された純米本みりんは、醪で生成するペプチドに加え、液化液製造時に生成するペプチドが加算されていたので、蒸米法よりもペプチド量は多くなる。
過剰なペプチドは滓下げでしか除去出来ないが、1回の滓下げで除去するペプチド量には限度があるため、過剰なペプチドを除去するには数回の滓下げが必要となり、それが滓下げ工程をより煩雑にしていた。
液化液を使用した純米本みりんでも蒸米使用と同量のアミノ酸やペプチドの生成量を望む声は強いがいまだ満足できる方策は見出されていない
本発明の目的は、液化液を使用しても全窒素量が少ないみりん類の製造方法を提供することにある。
前記課題を解決するため、液化用酵素剤に含まれるプロテアーゼを失活させることで液化液製造中にペプチドやアミノ酸の生成を押え、さらに、熱伝導性の悪い米を熱伝導性の良い液化液に加工して高温で再加熱することにより、液化液の蛋白質の熱変性度をより高め、米麹由来のプロテアーゼでも分解されにくい蛋白質を持つ液化液を純米みりんに使用することにより、窒素量の少ない純米本みりんを提供する方法を見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以下に関する。
第一の発明は、(1).水に中温の液化用酵素剤のみを溶解した酵素溶解液を60℃以上99℃以下に加熱することにより、液化用酵素剤に含まれるプロテアーゼの一部を失活させたプロテアーゼ失活酵素溶解液を得るプロテアーゼ失活工程と、
(2).前記プロテアーゼ失活工程で得られたプロテアーゼ失活酵素溶解液に必要量の水と米粉を加えながら、60℃以上85℃以下で液化し、液化液を得る液化工程と
(3).前記の液化工程で得た液化液を90℃以上110℃以下で再加熱することにより、液化液の蛋白質の熱変性度をさらに進めた再加熱液化液を得る再加熱工程と、
(4).前記再加熱工程で得られた再加熱液化液に米麹としょうちゅう又はアルコールを加えて純米本みりん醪を仕込む仕込み工程と
(5).前記仕込み工程で得た純米本みりん醪を圧搾して純米本みりん圧搾液を得る圧搾工程と、
を含む純米本みりんの製造方法
第二の発明は、請求項1の圧搾工程で得られた純米本みりん圧搾液を70℃以上105℃以下で残存のプロテアーゼを失活させると共に圧搾液に含有される蛋白質を加熱により凝集・不溶化させて滓を形成する圧搾液加熱工程を含む純米本みりんの製造方法
第三の発明は、本みりんの製造方法であって、第一の発明に記載、又は、第二の発明に記載の純米本みりんの製造方法によって得た純米本みりんと水飴とアルコールとを混和する本みりん製造工程を含む本みりんの製造方法
本発明は米を液化する際に、液化用酵素剤に含まれるプロテアーゼを失活させることにより、液化液製造中にアミノ酸やペプチドの生成量を押えることが出来る。
液化液を製造する場合、酵素失活温度の調整により、液化液の製造中に生成する全窒素量を調整することが出来る。
本発明では米を液体である液化液に加工することにより、丸米に比べて熱伝導性は大幅に改善され、再加熱工程では短時間で確実に液化液の蛋白質を熱変性することが出来る。
再加熱工程で熱変性度を高めた液化液の蛋白質は、米麹由来のプロテアーゼで分解されにくく変化するので、純米本みりんの醪中でも生成する全窒素量を押えることが出来る。
本発明の純米本みりんはペプチドの生成量が低いので、加熱処理しても不溶化する滓量も少なく、後工程である濾過工程も容易になる。
本発明で得られた純米本みりんのTN/FN値は、従来の液化液を使用した純米本みりんより低くすることが出来るので、滓下げ等の精製工程を省略又は、軽減出来る。
純米本みりんの製造工程図
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明の米とは、粳米、糯米などのすべての種類の米が含まれ、形状は丸米だけでなく砕米や米粉も含まれる。又、玄米と精白米かどうかも問わない。
米粉は、米を乾式粉砕して得られる米粉、米を湿式粉砕したのち乾燥して得られる米粉、酒造用米を精米する際に発生する米糠、前記の米粉にブドウ糖及び粉末水飴を混和した米調整品が含まれる。
丸米のまま液化する場合は米を浸漬して使用することが望ましい。浸漬を行わない米の熱伝導率は悪いので、米をそのまま液化すると表面だけが糊化して米の中心部は生米の状態になる。
又、粉砕を行う場合は、浸漬しない米を使用するのが望ましい。浸漬米を使用すると浸漬時に吸水し水歩合が上昇するので、液化液の全糖分は低下し純米本みりんの規格から外れる。
米を粉砕する場合の粉砕粒度は、1ミクロン以上800ミクロン以下、好ましくは5ミクロン以上400ミクロン以下、より好ましくは10ミクロン以上200ミクロン以下であることが望ましい。
本発明のみりん類とは、純米本みりん及び本みりんをいう。
純米本みりんとは、糖分のすべてが米、米麹に由来するみりん類をいう。
本みりんとは、米、米麹に由来する糖分に加え、酒税法で定めるその他政令で定める物品である水あめ等の糖分が加えられたみりん類をいう。
本発明の一例として実施形態を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
(a)液化用酵素剤を溶解した酵素溶解液を60℃以上99℃以下に加熱することにより、液化用酵素剤に含まれるプロテアーゼの全部又は、一部を失活させたプロテアーゼ失活酵素溶解液を得るプロテアーゼ失活工程と、
(b)プロテアーゼ失活工程で得たプロテアーゼ失活酵素溶解液を60℃以上99℃以下で維持しながら、米重量の50%以上150%以下の水に米を連続的に投入し、連続的に液化することにより粘度上昇を押えながら、澱粉を液化して全糖分が30%(w/w)以上、60%(w/w)以下の液化液を得る液化工程と、
(c)前記の液化工程で得た液化液を90℃以上130℃以下で再加熱することにより、液化液の蛋白質の熱変性度をさらに進めた再加熱液化液を得る再加熱工程と、
(d)前記の再加熱工程で得た再加熱液化液を1分間以上30分間以下で熟成させて熟成液化液を得る液化液熟成工程と、
(e)前記の液化液熟成工程で得た熟成液化液を10℃以上60℃以下に冷却した冷却液化液を得る冷却工程と、
(f)前記の冷却工程で得た冷却液化液と米麹とアルコールで純米みりん醪を仕込む仕込み工程と
(g)前記の仕込み工程で得た純米みりん醪を熟成させ、熟成純米本みりん醪を得る熟成工程と
(h)前記の熟成工程で得た純米本みりん醪を圧搾して純米本みりん圧搾液を得る圧搾工程と、
(i)前記の圧搾工程で得た純米本みりんの圧搾液を70℃以上105℃以下で加熱することにより、溶解している蛋白質を不溶化させた加熱済純米本みりんを得る圧搾液加熱工程と
(j)前記の圧搾液加熱工程で得た加熱済純米本みりんの清澄度を高めるために、滓下げや濾過を実施し、清澄度の高い純米本みりんを得る精製工程と
を含む純米本みりんの製造方法。
本発明では、純米本みりんに加え、純米本みりん圧搾液、加熱済純米本みりん、純米みりん醪、熟成純米本みりん醪も含めて純米本みりんという。
液化用酵素剤とは、米を液化する目的で使用されるすべての酵素をいい、液化用酵素剤に含まれるプロテアーゼとは、α-アミラーゼに夾雑するものや米の澱粉粒を溶解させる目的で意図的に混和されたものを含む。
液化用酵素剤のα-アミラーゼとは、中温のα-アミラーゼに加え、低温のα-アミラーゼや耐熱性のα-アミラーゼも含まれる。これらすべてのα-アミラーゼは夾雑酵素としてプロテアーゼを含んでいる。
プロテアーゼ失活工程に記載される酵素溶解液とは、液化用酵素剤を溶解したものすべてをいう。
具体的には、(A)水の一部に液化用酵素剤を添加して溶解したもの、(B)水の一部と米の一部に液化用酵素剤を添加して溶解したもの、(C)全量の水に液化用酵素剤を添加して溶解したもの、(D)全量の水と全量の米と液化用酵素剤を混和したバッチ式液化液、又は、(E)酵素溶解液と米を連続的に投入して得られる連続式液化液等、添加した酵素の力価が残存するものは酵素溶解液に含まれる。
ナガセケムテックス株式会社製の液化用酵素剤スピターゼCP−40FG(以下スピターゼCP−40FGという)の夾雑プロテアーゼの失活試験は、Britton−Robinson広域緩衝液にスピターゼCP−40FGを0.5%w/vを溶解して実施した。
夾雑プロテアーゼは、60℃10分では48%が、65℃10分では96%が、70℃10分では99%が、75℃10分では100%が失活した。
実際の液化液は糖濃度が高いので、失活温度は上記の試験結果よりも高くなる傾向がある。
プロテアーゼ失活工程では、60℃以上99℃以下を維持した水に液化用酵素剤を添加することにより、液化用酵素剤に含まれるα-アミラーゼを失活させることなく、プロテアーゼの全部又は、一部を失活することを特徴とする。
プロテアーゼの失活温度の違いにより、液化液の窒素量の調整が出来る。具体的には、失活温度を低くして時間をかけて失活させることで必要な窒素量を得ることが出来る。又、失活温度を高くして短時間で失活させることで窒素量の生成を押えることも出来る。
米の澱粉の糊化温度は70℃近辺にあり、一般的にはそれ以下の温度では糊化されないが、米粉や米糠は澱粉の一部がα化しているので、70℃以下でもα澱粉はデキストリンに分解される。
60℃以上であれば、液化用酵素剤の夾雑プロテアーゼを失活が始まるので、蛋白質の分解を押えながら、α澱粉をデキストリンに分解することが出来る。
液化工程では、プロテアーゼ失活工程を経て得られた酵素剤溶解液を60℃以上99℃以下の温度を維持しながら、必要量の水と米を連続的に投入し液化液を製造する。
投入された米は糊化されることなく、逐次、液化されてデキストリンに分解されるので、糊化により液化液の粘度が上昇することはない。
これにより、最終的に全糖分が、30%(w/v)以上60%(w/v)以下の液化液を得ることが出来る。
なお、液化工程での液化温度は、60℃以上99℃以下、好ましくは70℃以上95℃以下、より好ましくは75℃以上90℃以下が望ましい。
再加熱工程では、液化工程で得た液化液を90℃以上130℃以下で再加熱することにより、プロテアーゼで分解しづらい蛋白質へと変化する。熱変性の温度が上がればこの傾向は強くなる。
加熱温度は、90℃以上130℃以下、好ましくは95℃以上120℃以下で、より好ましくは98℃以上110℃以下が望ましい。
熱伝達性が悪い丸米を液化液に加工することで、熱伝達性も改善され、設定した温度で確実に蛋白質の熱変性が実施出来ると共に全糖分の収得量も向上することが出来る。
再加熱工程の加熱温度の調整により、蒸米や今までの液化液では出来なかった液化液の全窒素の生成量の調整が可能になった。
全窒素量が減少すればアミノ酸量も減少するので、貯蔵中に発生するアミノ酸とグルコースによるアミノカルボニル反応も抑えられ、瓶詰後も着色も押えることが可能になった。
圧搾液加熱工程では、圧搾工程で得た純米本みりん圧搾液を70℃以上105℃以下で加熱することにより、残存する米麹由来のプロテアーゼを失活させると共に圧搾液に溶解している過剰なペプチドを加熱により不溶化させて滓を形成することが出来る。
この滓は、沈殿分離や滓下げ操作により簡単に除去出来るので、煩雑な滓下げ作業を軽減又は、省略できる。
又、加熱温度が100℃以上になると沸騰泡の原因である蛋白質も凝固するので、瓶詰時に蛋白質が原因の泡立ちを防止することも出来る。
純米本みりんの清澄度を示す数値として、TNをFNで割ったTN/FN値と濁度を示すOD660の数値が目安となる。
TN/FN値が7.0以上の純米本みりん圧搾液に加熱処理を施すことにより、TN/FN値は5.5以下にOD660は0・010以下に減少する。さらに加熱温度を上げれば、TN/FN値は4.1以下にOD660は0・003以下に減少する。
加熱温度を上げるとTN/FN値は低下するので、滓下げ工程を軽減又は、省略出来る。
澱粉のほとんどがデキストリンである液化液で仕込んだみりん醪は、米麹の主目的である澱粉の液化・糖化の負荷が激減するので、従来の麹歩合20%を減らすことが出来る。
麹歩合を減らすことでプロテアーゼの総力価も減らせるので、アミノ酸やペプチドの生成量も押えることが出来る。
みりんに使用する米麹の使用比率を引き下げてもTN/FN値は大きく変化しない。
高温で酵素失活した連続式液化液の製造試験
・ 90%精白粳米200gを浸漬し、250gの浸漬米を得る。
・ 230gの水を75℃に昇温する。
・ 前記の75℃の水にスピターゼCP−40FGを0.1g添加し、スピターゼCP−40FGに含まれるプロテアーゼを失活させた酵素溶解液を得る。(プロテアーゼ失活工程)
・ 前記の酵素溶解液を75℃から85℃を維持しながら、浸漬米250gを連続的に投入し、米の蛋白質を熱変性させると共に米の澱粉を液化し液化液を得る。(液化工程)
・ 前記の液化液を95℃で再加熱して得た再加熱液化液を10分間ホールドする。
・ 30℃に冷却して冷却液化液480gを得る。
低温で酵素失活した連続式液化液の製造試験
・ 90%精白粳米200gを浸漬し、250gの浸漬米を得る
・ 230gの水を65℃に昇温する。
・ 前記の65℃の水にスピターゼCP−40FGを0.1g添加し、スピターゼCP−40FGに含まれるプロテアーゼの一部を失活させた酵素溶解液を得る。(プロテアーゼ失活工程)
・ 前記の酵素溶解液を65℃から75℃を維持しながら、浸漬米250gを連続的に投入し、米の蛋白質を熱変性させると共に米の澱粉を液化し液化液を得る。(液化工程)
・ 前記の液化液を95℃で再加熱して得た再加熱液化液を10分間ホールドする。
・ 30℃に冷却して冷却液化液480gを得る。
バッチ式の液化液の製造試験
・ 40℃の水280gにスピターゼCP−40FGを0.1g溶解して得た酵素溶解液に90%精白粳米200gを混和し、30分間米に吸水させ、米混和酵素溶解液を得る。
・ 前記の米混和酵素溶解液を40℃から95℃まで3時間かけて昇温し液化液を製造するが、60℃近辺まで昇温するとプロテアーゼの失活が始まり、液化が終了した液化液ではプロテアーゼが失活している。(プロテアーゼ失活工程及び、液化工程)
・ 液化液を30℃に冷却して冷却液化液480gを得る。

表1から酵素溶解液のプロテアーゼの失活温度の違いにより、プロテアーゼが失活するまでの時間の違いにより、生成する全窒素量が大きく変わることが示されている。
実施例1は、TNは分析限度以下、FNも低いので、スピターゼCP−40FG投入と同時にスピターゼCP−40FGに含まれるプロテアーゼが失活していることを示している。
実施例2、実施例3はTN、FNともに上昇し、スピターゼCP−40FG投入からスピターゼCP−40FGに含まれるプロテアーゼが失活するまでの時間の違いによって生成する窒素量が異なることを示している。
90℃で液化液を再加熱した液化液のプロテアーゼ反応試験
・ 90%精白粳米200gを浸漬し浸漬米250gを得る。
・ 150gの水を75℃に昇温する。
・ 前記の75℃の水にスピターゼCP−40FGを0.1g添加し、スピターゼCP−40FGに含まれるプロテアーゼを失活させた酵素溶解液を得る。(プロテアーゼ失活工程)
・ 前記の酵素溶解液を75℃から85℃を維持しながら、浸漬米250gを連続的に投入し、米の蛋白質を熱変性させると共に米の澱粉を液化した液化液を得る。
・ 前記の液化液を90℃で再加熱して得た最終液化液を10分間ホールドののち、50℃に冷却する。
・ 蛋白質分解酵素剤D−150(ナガセケムテックス株式会社製)を0.2g添加し5時間反応させ液化液400gを得る。
100℃で液化液を再加熱した液化液のプロテアーゼ反応試験
・ 90%精白粳米200gを浸漬し浸漬米250gを得る。
・ 150gの水を75℃に昇温する。
・ 前記の75℃の水にスピターゼCP−40FGを0.1g添加し、スピターゼCP−40FGに含まれるプロテアーゼを失活させた酵素溶解液を得る。
・ 前記の酵素溶解液を75℃から85℃を維持しながら、浸漬米250gを連続的に投入し、米の蛋白質を熱変性させると共に米の澱粉を液化した液化液を得る。(液化工程)
・ 前記の液化液を100℃で再加熱して得た最終液化液を10分間ホールドののち、50℃に冷却する。(再加熱、冷却工程)
・ 蛋白質分解酵素剤D−150(ナガセケムテックス株式会社製)を0.2g添加し5時間反応させ液化液400gを得る。


表2から、90℃で熱変性された液化液よりも100℃で熱変性された液化液の方が、プロテアーゼで分解・生成される全窒素量は少ないことが示されている。
液化液の熱変性の温度を上げれば、米の蛋白質はプロテアーゼで分解されにくくなることを示している。
高温で酵素失活した液化液を使用した純米本みりんの醸造試験
・ 90%精白粳米粉450gを浸漬し浸漬米560gを得る。
・ 340gの水を75℃に昇温する。
・ 前記の75℃の水にスピターゼCP−40FGを0.2g添加し、スピターゼCP−40FGに含まれるプロテアーゼを失活させた酵素溶解液を得る。(プロテアーゼ失活工程)
・ 前記の酵素溶解液を75℃から85℃を維持しながら、浸漬米560gを連続的に投入し、米の蛋白質を熱変性させると共に米の澱粉を液化した液化液を得る。(液化工程)
・ 前記の液化液を90℃で再加熱して得た最終液化液を10分間ホールドののち、50℃に冷却する。(再加熱、液化液熟成、冷却工程)
・ 前項の液化液と株式会社ますやみそ製の乾燥米こうじ45gと99%アルコール144mlと水22mlでみりん醪を仕込む。(仕込み工程)
・ 前項のみりん醪を35℃で40日間熟成させ、熟成みりん醪966mlを得る。(熟成工程)
・ 前項の熟成みりん醪を圧搾して、みりん醪圧搾液を得る。(圧搾工程)
高温で酵素失活した純米本みりん圧搾液の80℃での加熱処理
1.[実施例6]で得た本みりん圧搾液を80℃で加温処理する。(圧搾液加熱工程)
2.前記加温純米本みりんを冷却後、濾紙濾過を行い、加熱済純米本みりんを得る。
低温で酵素失活した液化液を使用した純米本みりんの醸造試験
・ 90%精白粳米粉450gを浸漬し浸漬米560gを得る。
・ 340gの水を65℃に昇温する。
・ 前記の65℃の水にスピターゼCP−40FGを0.2gg添加し、スピターゼCP−40FGに含まれるプロテアーゼの一部を失活させた酵素溶解液を得る。
・ 前記の酵素溶解液を65℃から75℃を維持しながら、浸漬米560gを連続的に投入し、米の蛋白質を熱変性させると共に米の澱粉を液化した液化液を得る。
・ 前記の液化液を90℃で再加熱して得た最終液化液を10分間ホールドののち、50℃に冷却する。(再加熱、液化液熟成、冷却工程)
・ 前項の液化液と株式会社ますやみそ製の乾燥米こうじ45gと99%アルコール144mlと水22mlでみりん醪を仕込む。(仕込み工程)
・ 前項のみりん醪を35℃で40日間熟成させ、熟成みりん醪966mlを得る。(熟成工程)
・ 前項の熟成みりん醪を圧搾して、みりん醪圧搾液を得る。(圧搾工程)
低温で酵素失活した純米本みりん圧搾液の80℃での加熱処理
1.[実施例8]で得た本みりん圧搾液を80℃で加温処理する。(圧搾液加熱工程)
2.前記加温純米本みりんを冷却後、濾紙濾過を行い、加熱済純米本みりんを得る。

表3には、酵素溶解液のプロテアーゼ失活温度の違いにより、醪の全窒素量も大きく変化することと、純米本みりん圧搾液を加熱することで過剰なペプチドを不溶化して除去できることが示されている。
純米本みりん圧搾液の加熱温度の試験
低温で酵素失活した純米本みりん圧搾液の90℃での加熱処理
1.[実施例8]で得た本みりん圧搾液を90℃で加温処理する。(圧搾液加熱工程)
2.前記加温純米本みりんを冷却後、濾紙濾過を行い、加熱済純米本みりんを得る。

純米本みりん圧搾液の加熱温度を上げることにより、より多くのペプチドを不溶化させて除去できるので、OD660の数値も低下し、清澄度も上がることを示している。
本発明で製造された液化液で仕込まれた純米本みりんは全窒素量の調整することにより、滓下げ操作を軽減又は省略出来る。
本発明のみりん類は、瓶詰時の沸騰泡の発生を押えることが出来るので、瓶詰効率を向上開出来る。
本発明で製造された液化液で仕込まれた純米本みりんは、アミノ酸量を少なくすることで、瓶詰後もアミノカルボニル反応による褐変も押えるので、商品価値を長く維持することができる。
液化処理により米の資化率が向上するので、大半が飼料にしか転用出来なかったみりん粕の発生量を減少させることが出来る。

Claims (3)

  1. (1).水に中温の液化用酵素剤のみを溶解した酵素溶解液を60℃以上99℃以下に加熱することにより、液化用酵素剤に含まれるプロテアーゼの一部を失活させたプロテアーゼ失活酵素溶解液を得るプロテアーゼ失活工程と、
    (2).前記プロテアーゼ失活工程で得られたプロテアーゼ失活酵素溶解液に必要量の水と米粉を加えながら、60℃以上85℃以下で液化し、液化液を得る液化工程と
    (3).前記液化工程で得た液化液を90℃以上110℃以下で再加熱することにより、液化液の蛋白質の熱変性度をさらに進めた再加熱液化液を得る再加熱工程と、
    (4).前記再加熱工程で得られた再加熱液化液に米麹としょうちゅう又はアルコールを加えて純米本みりん醪を仕込む仕込み工程と
    (5).前記仕込み工程で得た純米本みりん醪を圧搾して純米本みりん圧搾液を得る圧搾工程と、
    を含む純米本みりんの製造方法
  2. 請求項1の圧搾工程で得られた純米本みりん圧搾液を70℃以上105℃以下で残存のプロテアーゼを失活させると共に圧搾液に含有される蛋白質を加熱により凝集・不溶化させて滓を形成する圧搾液加熱工程を含む純米本みりんの製造方法
  3. 本みりんの製造方法であって、請求項1記載、又は、請求項2記載の純米本みりんの製造方法によって得た純米本みりんと水飴とアルコールとを混和する本みりん製造工程を含む本みりんの製造方法
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