JP2018068223A - 液化液を用いた醸造物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 従来の液化液で製造された清酒、発酵調味料や米酢は、醪で生成するペプチドに加え、液化液製造時に生成するペプチドが加算されるので、除去すべきペプチドが多いことが滓下げを含む精製工程を煩雑にしていた。液化液を使用しても、ペプチドの生成量が蒸米と同等又は、それ以下であることに加え、並行複発酵に適したα澱粉の含有量が高い液化液を提供することにある。【解決手段】 液化用酵素剤に含まれるプロテアーゼを失活させることで、液化液の製造時のペプチド生成量を押えると共に、液化液を再加熱することで、米麹由来のプロテアーゼでも分解されにくい蛋白質へ熱変性させた液化液の製造方法を提供する。前記の液化液を用いて醪を仕込むことにより、並行複発酵の発酵形態がとれることに加え、ペプチドの含有量の少なく、滓下げの負荷が軽減できる醸造物の製造方法を提供する。【選択図】 図1

Description

本発明は、液化液を用いた清酒、発酵調味料及び米酢(以下、醸造物と称す)の製造方法に関する。
従来の蒸米法では、米を蒸すことによりβ澱粉をα澱粉に変化させて、米麹のα−アミラーゼの分解を受けやすい状態に変化させると共に、蛋白質を熱変性させて米麹のプロテアーゼの分解を受けにくい状態へと変化させたのち、醪に仕込み醸造物を製造していた。
1982年には、米を蒸すのではなく、米と水を液化用酵素剤の存在下で加熱することで、澱粉を液化する液化法が開始された。
液化法では、米澱粉が液化用酵素剤のα-アミラーゼで分解されてデキストリンを生成すると共に、米蛋白が液化用酵素剤に含まれるプロテアーゼで分解されてアミノ酸やペプチドを生成する点が蒸米法とは根本的に異なる。
液化用酵素剤は菌やカビを培養して製造されるので、単体の酵素力だけでなく夾雑物として他の酵素力価も含んでいる。
液化用酵素剤は、α-アミラーゼだけでなく夾雑酵素としてプロテアーゼも含んでいるので、米の澱粉をグルコースやデキストリンに分解するだけでなく、米の蛋白質もペプチドやアミノ酸に分解する。
米の蛋白質は、熱変性を受ける前の状態が米麹由来のプロテアーゼで最も分解されやすく、熱変性を受けるほど分解されにくい蛋白質へと変化する。
具体的には、90℃で熱変性された蛋白質よりも100℃で熱変性された蛋白質が米麹由来のプロテアーゼで分解されにくい
従来の炊き上げ式の液化温度は95℃前後なので蛋白質の熱変性温度は蒸米より低い。
従来の炊き上げ式液化法は、水と米と液化用酵素剤を液化タンク投入し、40℃前後から95℃まで数時間かけて昇温して液化液を製造する。
液化用酵素剤に含まれるプロテアーゼは、失活温度である70℃近辺まで到達する2〜3時間の間に、熱変性を受けていない蛋白質をアミノ酸やペプチドに分解する。
従来の液化液を使用した醸造物のペプチド量が蒸米法より多い要因は次の2つである。
第一の要因は、米の蛋白質は、液化用酵素剤に含まれるプロテアーゼによって液化液製造時に分解されるので、蒸米では生成しないペプチドやアミノ酸を含有している。
第二の要因は、液化液の蛋白質は蒸米よりも熱変性度が低いので、醪中では米麹由来のプロテアーゼによって分解され、蒸米より多くのペプチドを生成する。
醸造物の醪は、米の蛋白質が米麹由来のプロテアーゼによって分解され、旨味であるアミノ酸やコク味であるペプチドなどの可溶化した窒素分を生成する。
従来の液化液を使用した醪は、液化時に生成した窒素分に加え、発酵時に生成する窒素分が加算されるので、蒸米を使用した醪よりも多くの窒素分を含有する。
醸造物の窒素量は、低分子であるアミノ酸より高分子であるペプチドの含有量が圧倒的に多い。
醸造物に含まれる過剰なペプチドは、味にざらつき感を与えると共に、外部条件の変化によって不溶化し白濁や沈殿を生じて商品価値を著しく低下させる。
滓下げとは、柿渋や滓下げ剤などで可溶化している過剰なペプチドを不溶化させて沈殿させたのち、上澄み液を濾過して清澄した醸造物を得る手法であるが、過剰なペプチドは滓下げでしか除去することが出来ない。
1回の滓下げで除去できるペプチド量には限度がある。従来の液化液で製造した醪の上槽液に含まれる過剰なペプチドを除去するには、複数回の滓下げを必要とした。
醪のアルコール発酵は、澱粉がデキストリンからブドウ糖に分解される糖化工程とブドウ糖からアルコールが生成される発酵工程が並行的に行われる並行複発酵が特徴である。
蒸米は醪中で澱粉がデキストリンに分解されるので、並行複発酵の形態をとりやすいが、液化液はデキストリンまで分解されているので、糖化が先行して短期醪の傾向が強い。
特許文献1の特許請求の範囲の請求項1では、液化液を固液分離し、液部に含まれる高分子のペプチドを除去してから、仕込むことを特徴とする清酒の製造方法の記載がある。
ペプチドを除去した液化液を清酒醪に仕込むことでしか醪の窒素量を引き下げることが出来ない。液化液を全量使用すれば精製工程で滓下げ複数回の滓下げを必要とした。
非特許文献1の第3表には使用酵素名と液化液のアミノ酸度が記載されている。アミラーゼRB-2のアミノ酸度は0.80、丸米液化H-3のアミノ酸度は0.30、丸米液化酵素H-2のアミノ酸度は0.70と記載されている。
記載のアミノ酸度から推定すると液化液に多量のペプチドが含有されていることが容易に推測できる。又、非特許文献1の液化液を使用した清酒は、複数回の滓下げを実施して過剰なペプチドを除去していた。
特開2000−166532号公報
姫野国夫、姫飯造りの開発と現状、醸造協会誌、1993年、p756-p762
従来の炊き上げ式では、液化用酵素剤に含まれるプロテアーゼが蛋白質を分解するので、液化液には多くのアミノ酸やペプチドを含有していた。
前記の液化液を使用した醪中では、前記のアミノ酸やペプチドに加え、米麹由来のプロテアーゼが液化液の蛋白質を分解して生成するアミノ酸やペプチドが加算されるので、除去しなければならないペプチド量は、蒸米よりも多くなっていた。
前記の醪を上槽して得られた上槽液の過剰なペプチドを除去するには、複数回の滓下げが必要となるので、滓下げ作業をより煩雑にすると共に製造原価を引き上げていた。
液化液を使用しても、1回の滓下げで除去できるペプチド量を望む声は強いが、いまだ満足できる方策は見出されていない
澱粉の大半がデキストリンに分解された液化液で仕込まれた醪は、並行複発酵のバランスが崩れて短期醪の傾向があり、味は淡麗になりやすかった。
デキストリンの生成量が低く、α澱粉の比率が高い並行複発酵に適した液化液を望む声は強いが、いまだ満足できる方策は見出されていない。
本発明の目的は、蛋白質の分解度が低くα化澱粉の比率が高い並行複発酵に適した液化液の製造方法と、液化液の温度をさらに上昇させることで、醪中でもペプチドの生成量が少ない醸造物の製造方法を提供することにある。
本発明は、以下に関する。
第一の発明は、液化用酵素剤を溶解した酵素溶解液を60℃以上100℃以下に加熱することにより、液化用酵素剤に含まれるプロテアーゼの全部又は、一部を失活させたプロテアーゼ失活酵素溶解液を得るプロテアーゼ失活工程と、
前記プロテアーゼ失活工程で得られたプロテアーゼ失活酵素溶解液に必要量の水と米を加えながら、60℃以上100℃以下で液化し、液化液を得る液化工程と
前記液化工程で得られた液化液を用いてアルコール発酵を行うアルコール発酵工程と
を実行して、醸造物を製造することを特徴とする醸造物の製造方法
第二の発明は、請求項1の液化工程で得た液化液を再加熱することにより、液化液の蛋白質の熱変性度をさらに進めた再加熱液化液を得る再加熱工程と
前記再加熱工程で得られた再加熱液化液を用いてアルコール発酵を行うアルコール発酵工程と
を実行して、醸造物を製造することを特徴とする醸造物の製造方法
液化液及び醸造物の製造方法を検討した結果、液化用酵素剤に含まれるプロテアーゼを失活させた酵素溶解液を用いて液化液を製造することと、前記の液化液をさらに高温で熱変性させることで、ペプチドの生成量が少なくα澱粉を残存させた液化液の製造方法を見出し、本発明を完成させた。
液化用酵素剤に含まれるプロテアーゼを失活させることで、アミノ酸やペプチドの生成量を押えた液化液を得ることが出来る。
液化液の温度をさらに上昇させて、液化液の蛋白質を熱変性することにより、米麹由来のプロテアーゼで分解されにくい蛋白質へと変化させることが出来る。
この液化液を醪に使用することにより、醪中で生成されるペプチド量を大幅に減らせるので、1回の滓下げで余分なペプチドを除去し清澄性を得ることが出来る。
α澱粉の比率が高い液化液を使用した醪は、米麹由来の酵素群で緩やかにグルコースに分解されるので、糖化と発酵のバランスが取れた発酵形態を並行複発酵に近づけをことが出来る。
醸造物の製造工程図
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明の米とは、粳米、糯米などのすべての種類の米が含まれ、形状は丸米だけでなく砕米や米粉も含まれる。又、玄米と精白米かどうかも問わない。
米粉は、米を乾式粉砕して得られる米粉、米を湿式粉砕したのち乾燥して得られる米粉、酒造用米を精米する際に発生する米糠、前記の米粉にブドウ糖及び粉末水飴を混和した米粉調整品が含まれる。
丸米を液化する場合は浸漬米を使用することが望ましい。未浸漬米を液化すると表面だけが糊化して米の中心部は生米の状態で残るので、資化率が著しく低下する。
又、丸米を粉砕して液化する場合は未浸漬米を使用するのが望ましい。浸漬米を使用すると浸漬時の吸水で水歩合が上昇するので、液化液の全糖分は低下して目標のアルコール分を得ることが出来ない。
米の資化率を向上させる場合は、液化の前処理として米を粉砕することが望ましい。
米の粉砕粒度は、1ミクロン以上800ミクロン以下、好ましくは5ミクロン以上400ミクロン以下、より好ましくは10ミクロン以上200ミクロン以下が望ましい。
本発明の醪とは、米と米麹と水で仕込んだ醪に発酵させる手段を講じたものをいう。
本発明の発酵とはアルコールを生成するアルコール発酵が主体であるが、従属的に有機酸を生成する有機酸発酵やアミノ酸を生成するアミノ酸発酵等の他の発酵も含まれる。
本発明の醸造物とは、アルコール発酵が終了した醪又は、アルコール発酵した醪に必要に応じて定められた物品を添加の後、上槽工程、精製工程を経たものをいう。
アルコール発酵を伴わないみりんの醪は本発明の醪には含まれない。
本発明の清酒とは、特定名称酒、非特定名称酒、料理酒を含む酒税の対照であるすべての清酒をいう。
特定名称酒とは、米、米麹を原料に製造される純米酒と、米、米麹、醸造アルコールを原料に製造されるとする吟醸酒、本醸造酒である。
非特定名称酒とは、米、米麹、醸造アルコール、糖類、酸味料等を原料に製造される普通酒であり、酒税の対象である料理酒も含まれる。
本発明の発酵調味料とは、米、米麹を原料に醪を仕込み、アルコール発酵終了後に酒税法に定める不可飲処置を実施し、酒税の対照から外れたものをいう。本発明の不可飲処置とは、アルコール発酵終了した醪に食塩を添加する行為をいう。
発酵調味料は、前記の不可飲処置を終了した醪を上槽して得られた上槽液にアルコール、食塩、糖類、果汁、酸味料等を添加し、成分調整したものも発酵調味料に含まれる。
本発明の米酢とは、米、米麹を原料に醪を仕込んでアルコール発酵終了後、生成したアルコールを酢酸発酵させたものをいう。
米酢の醪には米麹の替わりに醸造用酵素剤を使用する場合もある。
前記のアルコール発酵した醪にアルコールを加えた後、酢酸発酵させたものも米酢に含まれる。
本発明の液化液を用いた醸造物の製造方法の一例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
(a)水を昇温し60℃以上100℃以下を維持しながら、液化用酵素剤を溶解して酵素溶解液を得ることにより、液化用酵素剤に含まれるプロテアーゼの全部又は、一部を失活させたプロテアーゼ失活酵素溶解液を得るプロテアーゼ失活工程と、
(b)前記のプロテアーゼ失活工程で得たプロテアーゼ失活酵素溶解液を60℃以上100℃以下で維持しながら、米重量の100%以上250%以下の水に連続的に米を投入し、連続的に液化することで粘度上昇を押えながら、例えば、全糖分が20%w/v以上、50%w/v以下の液化液を得る液化工程と、
(c)前記の液化工程で得た液化液を30℃以下まで冷却し、冷却済液化液を得る冷却工程と、
(d)前記の冷却工程で得られた冷却済液化液に米麹と場合によっては水を加えて醪を仕込み、酵母又は、酵母培養液を添加してアルコール発酵する手段を講じて醪を仕込む仕込み工程と
(e)前記の仕込み工程で仕込まれた醪をアルコール発酵させるアルコール発酵工程と
を実行して、醸造物を製造すること特徴とする醸造物の製造方法
必要に応じて、前記の液化工程で得た液化液を1分間以上30分間以下で熟成させて熟成液化液を得る液化液熟成工程を実施する。これにより、澱粉の利用率をさらに向上することが出来る。
本発明の再加熱液化液を用いた醸造物の製造方法の一例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
(a)前項の液化工程で得た液化液を90℃以上130℃以下で再加熱することにより、液化液の蛋白質の熱変性度をさらに進めた再加熱液化液を得る再加熱工程と、
(b)前記の再加熱工程で得た再加熱液化液を30℃以下まで冷却し、冷却済再加熱液化液を得る冷却工程と、
(c)前記の冷却工程で得られた冷却済再加熱液化液に米麹と場合によっては水を加えて醪を仕込み、酵母又は、酵母培養液を添加してアルコール発酵させる手段を講じて醪を仕込む仕込み工程と
(d)前記の仕込み工程で仕込まれた醪をアルコール発酵させるアルコール発酵工程と
を実行して、醸造物を製造すること特徴とする醸造物の製造方法
必要に応じて、前記の再加熱工程で得た再加熱液化液を1分間以上30分間以下で熟成させて熟成液化液を得る液化液熟成工程を実施する。これにより、澱粉の利用率を向上することが出来る。
液化用酵素剤とは、米を液化する目的で使用されるすべての酵素であり、液化用酵素剤に含まれるプロテアーゼとは、α-アミラーゼに夾雑するものや米の澱粉粒を溶解させる目的で意図的に混和されたものを含む。
液化用酵素剤のα-アミラーゼとは、中温のα-アミラーゼに加え、低温のα-アミラーゼや耐熱性のα-アミラーゼも含まれる。これらのα-アミラーゼは夾雑酵素としてプロテアーゼを含んでいる。
プロテアーゼ失活工程に記載される酵素溶解液とは、液化用酵素剤を溶解したものすべてをいう。
具体的には、(A)水の一部に液化用酵素剤を添加して溶解したもの、(B)水の一部と米の一部に液化用酵素剤を添加して溶解したもの、(C)全量の水に液化用酵素剤を添加して溶解したもの、(D)全量の水と全量の米と液化用酵素剤を混和して得られるバッチ式液化液、又は、(E)60℃以上の水に酵素溶解液と米を連続的に投入して得られる連続式液化液等、添加した酵素の力価が残存するものすべてが酵素溶解液である。
ナガセケムテックス株式会社製の液化用酵素剤スピターゼCP−40FG(以下スピターゼCP−40FGという)の夾雑プロテアーゼの失活試験は、Britton−Robinson広域緩衝液にスピターゼCP−40FGを0.5%w/vを溶解して実施した。
夾雑プロテアーゼは、60℃10分では48%が、65℃10分では96%が、70℃10分では99%が、75℃10分では100%が失活した。
実際の液化液は糖濃度が高いので、失活温度は上記の試験結果よりも高くなる傾向がある。
プロテアーゼ失活工程は、60℃以上100℃以下を維持した水又は、水に一部の米を添加した米溶解液に液化用酵素剤を添加して液化用酵素剤に含まれるα-アミラーゼを失活させることなく、プロテアーゼの全部又は、一部を失活させて酵素溶解液を得る。
プロテアーゼの失活温度は、60℃以上100℃以下、好ましくは70℃以上95℃以下、より好ましくは80℃以上90℃以下が望ましい。
プロテアーゼの失活温度の調整により、液化液の全窒素生成量の調整が可能になった。
失活温度が低ければ、残存する液化用酵素剤に含まれるプロテアーゼよって澱粉粒の蛋白質が分解されるので液化液の全窒素生成量は多くなり、失活温度が高ければ、液化用酵素剤に含まれるプロテアーゼが失活しているので液化液の全窒素生成量は少なくなる。
液化工程は、前記プロテアーゼ失活工程で得られたプロテアーゼ失活酵素溶解液に必要量の水と米を加えながら、60℃以上100℃以下で液化液を製造する。
液化温度は、60℃以上100℃以下、好ましくは75℃以上95℃以下、より好ましくは80℃以上90℃以下であることが望ましい。
これにより、最終的に全糖分が、20%w/v以上45%w/v以下の液化液を得ることが出来る。
本発明では、プロテアーゼ失活工程で得た酵素溶解液を使用して液化液を製造するので、デキストリンへの分解率の調整が可能になった。
プロテアーゼ失活温度が低い酵素溶解液を使用した液化液は、残存したプロテアーゼが澱粉粒の蛋白質を分解するので、米澱粉の分解度は向上しデキストリンの比率は向上する。
一方、プロテアーゼ失活温度が高い酵素溶解液を使用した液化液は、プロテアーゼが失活しているので、米澱粉の分解度は低下し、α澱粉の比率は向上する。
並行複発酵を求める場合は、丸米でα澱粉の比率が高めた液化液が、資化率を高めるには、前処理として米を粉砕して得たスラリーを液化した液化液が適している。
酵素溶解液又は、酵素溶解液を含んだ液化液に投入された丸米の外側の澱粉は、糊化されることなく、連続的に液化されデキストリンに分解されるので、糊化によって液化液の液分の粘度が上昇することはないが、デキストリンの増加と共に液のブリックスは上昇する。
ブリックスが高い液が丸米内部へ浸透することで、浸透圧の効果により、液部が多いお粥状の液化液を製造することが可能になった。
米の澱粉の糊化温度は70℃近辺にあり、一般的にはそれ以下の温度では糊化されないが、米粉や米糠は澱粉の一部がα化しているので、70℃以下でもα澱粉はデキストリンに分解される。
60℃以上であれば、液化用酵素剤の夾雑プロテアーゼの失活が始まるので、蛋白質の分解を押えながら、α澱粉をデキストリンに分解することが出来る。
本発明は、液化の製造方法の違いに拘わらず、醪のアミノ酸やペプチド等の全窒素量の調整が可能になった。
プロテアーゼの一部又は、全部が失活した酵素溶解液を使用することにより、炊き上げ式の液化法で液化液を製造しても、従来の炊き上げ式液化法で製造された液化液に比べて窒素生成量を大幅に削減することが可能になった。
本発明は、液化温度の調整により、醪のアミノ酸やペプチド等の全窒素量の調整が可能になった。
醪中では、米麹由来のプロテアーゼによって液化液の蛋白質がアミノ酸やペプチドに分解されるが、液化液の熱変性度が低い場合は蛋白質の熱変性度も低いので、醪での窒素生成量は多く、液化液の熱変性度が高い場合は蛋白質の熱変性度も高いので、醪での窒素生成量は少ない。
熱伝達性の悪い固体の丸米を熱伝導性のよい液体の液化液に加工することで、再加熱工程で蛋白質の熱変性度をさらに進めることが可能になった。
再加熱工程では、液化液をさらに90℃以上130℃以下に上昇させることで、蛋白質の熱変性度をさらに進めると共に、澱粉の利用率も高めることが出来る。
液化液の再加熱温度は、90℃以上130℃以下、好ましくは94℃以上115℃以下で、より好ましくは98℃以上105℃以下が望ましい。
冷却液化液又は、冷却再加熱液化液と米麹と水を原料として醪を仕込んだのち、酵母培養液や乾燥酵母を添加して醪をアルコール発酵させる手段を講じる。場合によっては水を使用しないこともある。
醪の仕込み前に酒母を仕込み、蔵内酵母や酵母培養液の酵母を増殖させたのち、この酒母で醪を仕込んでも構わない。
仕込みに用いる米は液化液に加工して醪に仕込むが、仕込みに用いる米の一部を蒸米に加工して醪に投入しても構わない。これにより、蒸米が醪の固形分を増加させるので発酵形態も並行複発酵に近づけることが出来る。
仕込まれた醪中では、液化液の澱粉やデキストリンは米麹の酵素群によって葡萄糖に分解され、葡萄糖は酵母によってアルコール発酵によってアルコールを生成すると共に、液化液の蛋白質は米麹由来のプロテアーゼで分解されてアミノ酸やペプチドを生成する。
本発明では、液化温度の蛋白質の熱変性温度を調整することにより、醪のアミノ酸やペプチドからなる全窒素生成量の調整が可能になった。
液化温度が低い液化液を使用した場合の醪の窒素生成量は多く、液化温度が高い液化液を使用した場合の醪の窒素生成量は少ない。
清酒の製造方法は、米、米麹及び水を原料として仕込まれた醪をアルコール発酵が終了した後、必要に応じて醸造アルコール、糖類、酸味料等を添加し、上槽工程、精製工程を経たものである。
清酒に使用する原料米の精白歩合が高いことが特徴なので、発酵調味料や米酢に比べてアミノ酸や全窒素の生成量は少ない。
発酵調味料の製造方法は、アルコール発酵が終了した醪に、酒税法に定める食塩を添加する不可飲処置を施した後、必要に応じて、糖類、アルコール、食塩、果汁、酸味料等を添加し、上槽工程、精製工程を経たものである。
アルコール発酵を行った醪に食塩を添加しても窒素量は増加しないので、不可飲処置後の醪のアミノ酸や全窒素の数値は、不可飲処置を実施する前の醪のアミノ酸や全窒素の測定値から容易に推測できる。
米酢の製造方法は、アルコール発酵が終了した醪又は、必要に応じて前記の醪にアルコールや糖化物等を添加した醪を希釈してアルコール度数を低下させ、種酢を添加して酢酸発酵させた後、上槽工程、精製工程を経たものである。
アルコール発酵した醪の希釈や酢酸発酵によって窒素分は増加しないので、米酢醪のアミノ酸や全窒素の数値は、アルコール発酵醪のアミノ酸や全窒素の測定値から容易に推測できる。
上槽工程では、アルコール発酵を終了した清酒醪や発酵調味料醪や米酢醪(以下、アルコール発酵済醪と称す)又は、必要に応じてアルコール発酵済醪に糖類等を添加して成分調整を行ったアルコール発酵済調整醪を圧搾機等で上槽液と粕に分離する。
分離された上槽液には、醸造物に必要なペプチドと滓の要因となる除去しなければならない過剰なペプチドの2種類のペプチドを含有している。
本特許で製造された上槽液は、ペプチド含有量が少ないのが特徴であり、特に除去すべき過剰なペプチドが少ないことが従来の液化法で製造した醪の上槽液と大きく異なる。
この上槽液の段階が工程中の全窒素含有量が最大値となるので、この段階で全窒素の測定を行うと全窒素の生成量が把握出来る。
精製工程では、上槽液に含まれる過剰なペプチドを結晶化させて分離除去する滓下げを実施し、過剰なペプチドを除去する。
滓下げの一例としては、上槽液に柿渋や滓下げ剤を添加して過剰なペプチドを滓として凝集させたのち、沈殿させて分離除去する。
本発明で得られた醪の上槽液は、除去すべき過剰なペプチド量が少ないので、1回の滓下げで余分なペプチドを除去することが出来るのが特徴である。
精製工程には、滓下げで滓を分離沈殿させた後、上澄み液の清澄化を図る為の濾過も含まれる。
1.80%精白粳米200gを浸漬し、250gの浸漬米を得る。
2.290gの水を昇温ののち85℃を維持しながら、スピターゼCP−40FGを0.1g添加し、スピターゼCP−40FGに含まれるプロテアーゼを失活させた酵素溶解液を得る。(プロテアーゼ失活工程)
3.前記の酵素溶解液を85℃から95℃で維持しながら、浸漬米250gを連続的に投入し、米の蛋白質を熱変性させると共に米の澱粉を液化し液化液540gを得る。(液化工程)
4.前記の液化液の温度を99℃まで上昇させた再加熱液化液を得る。
5.再加熱液化液を10分間ホールドする。
6.前記の再加熱液化液を30℃に冷却して冷却液化液540gを得る。
7.前記の冷却液化液540gを遠心分離し、406gの液化液上澄み液を得る。
8.前記の上澄み液をデカンテーションし、分析用のサンプルとした
1.80%精白粳米200gを浸漬し、250gの浸漬米を得る。
2.浸漬米250gと水200gを粉砕してスラリー450gを得る。
3.90gの水を80℃に昇温ののち80℃を維持しながら、スピターゼCP−40FGを0.1g添加し、スピターゼCP−40FGに含まれるプロテアーゼを失活させた酵素溶解液を得る。(プロテアーゼ失活工程)
4.90gの酵素溶解液を80℃に昇温ののち80℃から90℃を維持しながら、スラリー450gを連続的に投入し、液化液540gを得る。(液化工程)
5.前記の液化液540gを99℃まで昇温し、蛋白質の熱変性度を進めた再加熱液化液540gを得る。
6.前記の再加熱液化液を10分間ホールドする。
7.30℃に冷却して得られた冷却液化液540gを得る。
8.冷却液化液540gを遠心分離し、465gの液化液上澄み液を得る。
9.前記の上澄み液をデカンテーションし、分析用のサンプルとした
(比較例1)
1.40℃の水340gにスピターゼCP−40FGを0.1g溶解して酵素溶解液を得る。
2.前記の酵素溶解液に80%精白粳米200gを投入し、米混和酵素溶解液を40℃で30分間維持して米に水分を吸水させる。
3.前記の米混和酵素溶解液を2時間かけて40℃から85℃まで昇温させ、液化液を得る。
4.前記の液化液を85℃で10分間ホールドする。
5.前記の液化液を30℃に冷却して冷却液化液540gを得る。
6.前記の冷却液化液540gを遠心分離し、364gの液化液上澄み液を得る。
7.前記の上澄み液をデカンテーションし、分析用のサンプルとした
Figure 2018068223
液化液の100ml当りの全窒素量は、比較例1の40mgに対し、実施例1では同10mg未満、実施例2では同10mgなので比較例1の1/4以下となり、有意差が確認出来た。
表1の分析結果から、液化用酵素剤に含まれるプロテアーゼを失活させるまでの時間と失活温度が液化液の窒素生成量に影響を与えることが確認出来た。
1.実施例1の冷却液化液378gに飯田商事株式会社製乾燥麹40gを添加し、一次醪に仕込み発酵させる手段を講じる。
2.前記の一次醪に実施例1の冷却液化液702gを添加し、二次醪を仕込む。
3.前記の二次醪を14日間アルコール発酵させて1,047gのアルコール発酵させた醪を得る。
4.前記の醪を濾紙濾過して醸造物を得る。
5.前記の濾液を分析用のサンプルとした。
1.実施例2の冷却液化液378gに飯田商事株式会社製乾燥麹40gを添加し、一次醪を仕込み発酵させる手段を講じる。
2.前記の一次醪に実施例2の冷却液化液702gを添加し、二次醪を仕込む。
3.前記の二次醪を14日間アルコール発酵させて1,046gのアルコール発酵させた醪を得る。
4.前記の醪を濾紙濾過して濾液を得る。
5.前記の濾液を分析用のサンプルとした。
(比較例2)
1.比較例1の冷却液化液378gに飯田商事株式会社製乾燥麹40gを添加し、一次醪を仕込み発酵させる手段を講じる。
2.前記の一次醪に比較例1の冷却液化液702gを添加し、二次醪を仕込む。
3.前記の二次醪を14日間アルコール発酵させて1,045gのアルコール発酵させた醪を得る。
4.前記の醪を濾紙濾過して濾液を得る。
5.前記の濾液を分析用のサンプルとした。
Figure 2018068223

醸造物の100ml当りのフォルモール態窒素量は、比較例2の35mgに対し、実施例3では同18mg、実施例4でも同18mgなので比較例2の約1/2以下となり、有意差を確認出来た。
醸造物の100ml当りの全窒素量は、比較例2の210mgに対し、実施例3では同100mg、実施例4でも同100mgなので比較例2の1/2以下となり、有意差を確認出来た。
表2の分析結果から、液化液の熱変性温度の違いがアルコール発酵醪中で窒素生成量に影響を与えることが確認出来た。
本発明の液化液を使用した醸造物は、除去すべきペプチドの含有量が少ないので煩雑な滓下げの作業を軽減又は省略出来るので、滓下げに要する人件費や資材が不要となり原価を引き下げる。
液化液の温度をさらに上昇させることで、沸騰泡の原因である蛋白質も熱変性させて除去できるので、瓶詰時の沸騰泡の発生を押えることが出来るので瓶詰効率も向上する。
並行複発酵を実施することで味に幅を持たせられるので、淡麗になりがちな醸造物の味を改善出来る。






Claims (2)

  1. 液化用酵素剤を溶解した酵素溶解液を60℃以上100℃以下に加熱することにより、液化用酵素剤に含まれるプロテアーゼの全部又は、一部を失活させたプロテアーゼ失活酵素溶解液を得るプロテアーゼ失活工程と、
    前記プロテアーゼ失活工程で得られたプロテアーゼ失活酵素溶解液に必要量の水と米を加えながら、60℃以上100℃以下で液化し、液化液を得る液化工程と
    前記液化工程で得られた液化液を用いてアルコール発酵を行うアルコール発酵工程と
    を実行して、醸造物を製造することを特徴とする醸造物の製造方法
  2. 請求項1の液化工程で得た液化液を再加熱することにより、液化液の蛋白質の熱変性度をさらに進めた再加熱液化液を得る再加熱工程と
    前記再加熱工程で得られた再加熱液化液を用いてアルコール発酵を行うアルコール発酵工程と
    を実行して、醸造物を製造することを特徴とする醸造物の製造方法












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