JP3082956B2 - カンピロバクタ−属細菌の培養方法 - Google Patents
カンピロバクタ−属細菌の培養方法Info
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Description
菌の培養方法に関し、さらに詳しくは、下痢症患者から
高率で検出される下痢症の原因菌であり、公衆衛生領域
において広く注目されているカンピロバクター属細菌の
培養方法に関する。
ter jejuni, Campylobacter coli等で例示されるグラム
陰性の微小ならせん状菌であり、好気的条件では発育せ
ず、また、逆に通常の嫌気培養でも殆ど発育を示さな
い。この菌は、発育に酸素を3〜15%要求する微好気
性細菌である。我が国では下痢症患者からのカンピロバ
クター属細菌の検出率は乳幼児9〜16%、成人3〜8
%とされ、下痢症の原因菌として注目されている。ま
た、下痢症の原因を確認するためにカンピロバクター属
細菌の培養が広く行われるようになってきている。しか
しながら、カンピロバクター属細菌は前記のように微好
気性細菌であるため、その培養には特定の気相雰囲気が
必要であり、次のような培養方法が、Medical Technolo
gy誌 Vol.10 (No.3),p.223(1982年) に記載されている
ように、従来からよく知られている。
計とガス封入栓を装備した専用容器にカンピロバクター
属細菌を接種した培地平板あるいは試験管を入れ、酸素
5%、二酸化炭素10%、窒素85%の混合ガスを封入
して培養する方法である。
Oxoid 社製のカンピロバクター属細菌培養用のガス発生
剤を嫌気培養ジャーに適用する方法である。細菌を接種
した培地とガス発生剤および触媒を密封容器に同封して
おき、酸素と発生する水素を触媒の作用により反応させ
て嫌気培養雰囲気を作り出して細菌の増殖を図るもので
ある。
度が比較的高い。しかし、15%以上の酸素存在下では
二酸化炭素が存在しても、カンピロバクター属細菌は発
育が極めて悪い。この方法は、ある程度酸素に対する抵
抗性を増強させて発育を促進する方法であり、高価な特
殊培地を必要とするものである。
それぞれ、次の様な欠点がある。 (1) の方法には、特定濃度の酸素、二酸化炭素、窒素の
混合ガスを封入するために特殊で高価な装置が必要であ
り、しかもその操作が極めて複雑である。その上、培養
ジャーには、外から細菌の増殖経過を観察できない不自
由さがある。 (2) の場合には、ガス発生剤が水素ガスを発生するため
着火の危険性がある。また、ガス発生剤や触媒に不良品
があっても、ある程度培養結果が出ないと直ぐには判ら
ないという不便さもある。 (3) の炭酸ガス培養法は、高価な特殊培地を必要とする
ことや菌の発育が完全ではない等の問題がある。
コロニー径やコロニー数にシャーレ毎や培養毎にばらつ
きがあり、菌の発育が必ずしも十分とは言えない等の問
題がある。本発明者らは、上記従来法の問題点に鑑み、
良好な菌の発育を簡易な方法で得るべく鋭意研究を重
ね、本発明を完成するに至った。
含浸させた基材、カンピロバクター属細菌を接種した培
地、および酸素を吸収すると共に二酸化炭素を発生する
脱酸素剤をガスバリヤー性培養容器内に封入し、容器内
の酸素濃度3〜15%、二酸化炭素濃度3〜18%にお
いてカンピロバクター属細菌を培養することを特徴とす
るカンピロバクター属細菌の培養方法を提供するもので
ある。本発明の方法は、密封容器内に培地平板に接種し
たカンピロバクター属細菌を入れ、該細菌が最も発育で
きる酸素濃度および二酸化炭素濃度に短時間に調節でき
る二酸化炭素発生型脱酸素剤と共に水または水を含浸さ
せた基材を配することにより、該細菌の発育し易い状態
においてカンピロバクター属細菌を培養する方法であ
る。
ー属細菌と二酸化炭素発生型脱酸素剤とを容器内に密封
することにより、系内のガス濃度を5時間以内に酸素3
〜15%、二酸化炭素3〜18%、好ましくは2時間以
内に酸素を5〜10%、二酸化炭素を7〜15%とし、
以後、酸素および二酸化炭素の濃度を前記の範囲に維持
することによってカンピロバクター属細菌の発育促進を
図るものである。
素を吸収し二酸化炭素を発生する作用を有する脱酸素剤
組成物を通気性包材に包装したものである。かかる二酸
化炭素発生型脱酸素剤組成物として、次のようなものが
例示される。 (1) 亜二チオン酸塩−炭酸水素塩−炭酸塩−水からなる
組成物 (2) 還元性有機物質−炭酸塩−水からなる組成物 還元性物質として具体的には、カテコール、アスコルビ
ン酸および/またはその塩、あるいはエリソルビン酸お
よび/またはその塩等が使用される。 (3) 鉄を主剤とする脱酸素剤−炭酸水素塩−酸性物質−
水からなる組成物 上記何れの脱酸素剤組成物も、通気性包材に包装して脱
酸素剤として培地に接種したカンピロバクター属細菌と
共に密封容器内に封入した場合に、その容器内の酸素を
吸収し、二酸化炭素を発生することにより、容器内の気
体雰囲気を5時間以内に酸素濃度3〜15%、二酸化炭
素濃度3〜18%に調節することができるものであれ
ば、使用することができる。
酸素吸収速度および二酸化炭素発生速度の調節のし易さ
等の点から、アスコルビン酸および/またはその塩から
なる組成物が好適に用いられる。さらに、アスコルビン
酸および/またはその塩としては、L−アスコルビン
酸、L−アスコルビン酸ナトリウムまたはD−iso −ア
スコルビン酸ナトリウム等単独あるいはこれらの混合物
が用いられる。上記の脱酸素剤組成物の量は、培地と共
に収納される密封系内の空気量100ml当たり構成する
組成物が0.01〜0.5gからなるものである。
性包材として、酸素と二酸化炭素をよく透過するもので
あれば特に制限されるものではないが、好ましくは酸素
と二酸化炭素の透気度が300ml/Hr・m 2 以上、特に
好ましくは1000ml/Hr・m 2 以上である包材が用い
られる。このような通気性包材としては、合成繊維から
なる不織布、合成紙、マイクロポーラスフィルムまたは
紙等、さらに補強材として開孔ポリエチレン、ワリフ等
を貼り合わせた複合包材が挙げられる。
時の発熱によって気化した水蒸気が培地へ供給される
が、その後も継続的に水が補給される必要がある。補給
方法として、脱酸素剤の一部に水を加えておく方法もあ
るが、容器内に直接水を入れる方法、あるいは、脱脂綿
や濾紙等の基材に水を含浸して容器内に入れる方法が好
ましい態様である。この場合、水の量はシャーレまたは
脱酸素剤が水浸しにならない量であれば良いが、水の注
入のし易さ、取扱いの点から2〜20mlが好ましい。さ
らには別個のシャーレに水を入れて容器内に培養用シャ
ーレと共に密封する方法も好ましい態様である。
した培地の表面は必要以上に乾燥していないことが必要
である。例えば、市販の培地の場合、冷蔵保存しておき
開封後そのまま菌を接種するか、または乾燥処理しても
1時間以内に菌を接種して培養することが肝要である。
また、手作りの培地の場合は、冷却後の培地の乾燥処理
時間は1時間以内とし、培地表面が乾燥する前に菌を接
種して培養する必要がある。さらに、培地を保存する場
合は、水の透過性の小さいフィルムで密封し、冷蔵保存
する必要がある。
を3〜15%、二酸化炭素濃度を3〜18%に維持でき
る気密性を有している容器であればよく、一般的には嫌
気ジャーや袋が用いられる。特にアネロパックジャー
(三菱瓦斯化学製)が簡便で好適に用いることができ
る。
なお、本発明はこの実施例に限定されるものではない。 実施例1 市販の羊血液寒天培地平板(日水製薬製)を開封後特に
乾燥処理することなく直ちに、下痢症患者の便より分離
したCampylobactor jejuni3株(表1に No.1、 No.
2、 No.3と記す)をそれぞれ接種したシャーレと、L
−アスコルビン酸ナトリウムを主剤とする二酸化炭素発
生型の脱酸素剤組成物3.5gを、紙/開孔ポリエチレ
ンで構成され、かつ、酸素および二酸化炭素の透気度が
2000ml/Hr・m 2 である通気性包材で、その大きさ
が50×50mmである包材に充填した脱酸素剤とを、水
10mlを含浸させた150×180×0.7mmのロ紙と
共に嫌気培養ジャー(三菱瓦斯化学製アネロパックジャ
ー)に密封し、37℃において3日間培養した。直ちに
このジャーを開封し、寒天培地の上に出現したコロニー
の数と径の大きさによって菌の増殖の程度を判定した。
結果を表1に示す。なお、表1には、以下の比較例1、
比較例2並びに比較例3の結果を併せ示した。
菌室にてシャーレの蓋を半開して2時間乾燥処理したシ
ャーレに菌を接種した以外は、実施例1と同様にして培
養実験を実施した。結果を表1に示す。
た以外は、実施例1と同様の実験をした。結果を表1に
示す。
乾燥処理することなく直ちに下痢症患者の便より分離し
たCampylobactor jejuni3株(表1に No.1、No.2、
No.3と記すをそれぞれ接種したシャーレを、嫌気性細
菌培養用水素・炭酸ガス発生袋(BBL社製)に水10
mlを添加したものとともにBBL社の嫌気培養ジャーに
密封し、37℃にて3日間培養した。直ちにこのジャー
を開封し、寒天培地の上に出現したコロニーの数と径の
大きさによって菌の増殖の程度を判定した。結果を表1
に示す。
培養方法は、以下のように多くの利点を有し、公衆衛生
医学への寄与の大きいものである。 (1) 特殊で、かつ、高価な装置は必要とせず、安価に、
しかも、簡便に培養試験が行える。 (2) しかも、本発明の培養方法によれば、径が大きく、
数にバラツキのないコロニーを確実に作ることができ
る。 (3) 数多くの検体でも、一度に培養できる。 (4) 試験の開始時に脱酸素剤の発熱と水蒸気の発生があ
るため、培養結果を待つまでもなく、脱酸素剤が正常に
反応していることを確認でき、培養試験が確実に行え
る。 (5) その上、容器が透明であるため、外から菌の発育状
況を観察できる。
Claims (4)
- 【請求項1】 カンピロバクター属細菌を密封系内で培
養する方法において、 水、 カンピロバクター属細菌を接種した培地、および、
アスコルビン酸またはその塩を主剤とする組成物からな
る酸素を吸収すると共に二酸化炭素を発生する脱酸素剤
を密封系内の空気量100ml当たり0.01〜0.5g
を、ガスバリヤー性培養容器内に封入し、容器内の酸素
濃度3〜15%、二酸化炭素濃度3〜18%に維持し、
かつ、培地に継続的に水分が補給されることを特徴とす
るカンピロバクター属細菌の培養方法。 - 【請求項2】 培地は市販培地を開封してそのまま使用
するか、または常温で1時間以内乾燥処理した寒天培地
であることを特徴とする請求項1記載の培養方法。 - 【請求項3】 前記したアスコルビン酸またはその塩を
主剤とする組成物からなる脱酸素剤が、酸素および二酸
化炭素の透気度が300ml/Hr・m2以上の通気性包装材
料で包装された包装体であることを特徴とする請求項1
記載の培養方法。 - 【請求項4】前記した水が、基材に含浸された水である
ことを特徴とする請求項1記載の培養方法。
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JP7435691A JP3082956B2 (ja) | 1991-03-15 | 1991-03-15 | カンピロバクタ−属細菌の培養方法 |
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JPH04287684A JPH04287684A (ja) | 1992-10-13 |
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JP (1) | JP3082956B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH05183651A (ja) * | 1991-06-14 | 1993-07-23 | Murata Mfg Co Ltd | 電話回線用センサ回路およびそのユニット |
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EP2955129A4 (en) * | 2013-02-05 | 2016-10-26 | Mitsubishi Gas Chemical Co | PACKAGING UNIT FOR A MULTILAYER OXYGEN ABSORBENT ITEM AND STORAGE PROCESS |
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1991
- 1991-03-15 JP JP7435691A patent/JP3082956B2/ja not_active Expired - Lifetime
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