JP3078401B2 - 高分子プルランの製造方法 - Google Patents

高分子プルランの製造方法

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  • Polysaccharides And Polysaccharide Derivatives (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高分子プルランの製造
方法に関する。さらに詳しくは、本発明は高分子量のプ
ルランの製造方法およびプルランの生産培地の黒色化抑
制方法に関する。
【0002】
【従来の技術】プルランは、不完全菌の一種であるオー
レオバシデイウム・プルランス(Aureobasid
ium pullulans)と呼ばれる黒酵母を単糖
類やでんぷん分解物等の炭素源として適当な条件下で培
養したとき培養液中に産生される水溶性多糖類である。
その化学構造は、グルコースのα−1,4結合の三量体
であるマルトトリオースを単位としてこの三量体がα−
1,6結合により反復結合した線状重合体である。プル
ランは工業的に分子量80,000〜300,000程
度のものが製造、販売され水溶性、接着性、造膜性等の
優れた性質が食品工業、化学工業に広く利用されてい
る。また、水溶性高分子の分子量測定用の標準物質とし
て化学の分野において利用されている。
【0003】ここで、オーレオバシデイウム・プルラン
スの培養により培養液中に産生されるプルランは、培養
後期において菌自体が分泌するアミラーゼを中心とする
プルラン分解酵素により分子量が低下することが知られ
ている。このような培養過程における分子量の低下を抑
制する方法として、培地中にアミラーゼ活性阻害物を添
加し培養する方法(特公昭58ー40479号)、培地
のpHおよびリン酸イオン濃度を調節する方法(特公昭
51ー42199号)等の方法が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来の方
法は、実際にはプルランの分子量低下を根本的に抑制す
るものではなく、満足できる結果をもたらしてはいなか
った。また、従来の方法では、プルランの産生に伴っ
て、黒色色素が産生し、培地が黒色化するという不都合
があり、対策が望まれていた。
【0005】したがって、本発明の目的は、高分子量の
プルランを製造可能としたプルランの製造方法および黒
色色素の産生による培地の黒色化を抑制するプルランの
生産培地の黒色化抑制方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、高分子量
のプルランを製造する方法について鋭意検討を行った結
果、培養過程における分子量の低下の他に、培養終了後
培養液を精製してプルランを回収する工程においても顕
著な分子量の低下および黒色色素の産生が起きているこ
とを見い出し、本発明に想到した。
【0007】上記目的達成のため、請求項1の本発明
は、プルラン生産菌であるオーレオバシデイウム・プル
ランスを培養することによりプルランを製造するプルラ
ンの製造方法において、培養後の培養液を温度50〜7
5℃で0.3〜3時間保持することを条件とする加熱処
理を行うことを特徴とする。
【0008】上記目的達成のため、請求項2の発明の要
旨は、プルラン生産菌であるオーレオバシデイウム・プ
ルランスを培養した後に、請求項1の加熱処理を行うこ
とよりなるプルランの生産培地の黒色化抑制方法にあ
る。
【0009】本発明に用いられるプルラン生産菌はオー
レオバシデイウム・プルランスに属するものであればよ
く、類似する変異株でもよい。例えば、財団法人 発酵
研究所に寄託されたIFO 6353、IFO 446
4あるいはATCC(アメリカン・タイプ・カルチャー
・コレクション)に国際寄託されたATCC 934
8、ATCC 74100、ATCC 74101、A
TCC 74102、ATCC 74103、ATCC
74104、ATCC 74105等およびこれらの
変異株を使用できる。特に、ATCC 74100、A
TCC 74101、ATCC 74102、ATCC
74103、ATCC 74104、ATCC 74
105は高分子量のプルランを生産する菌株として好適
である。
【0010】本発明に用いる培地その他の条件は特に制
限はなく、通常用いられる条件を用いることができる。
すなわち、炭素源、窒素源、無機塩を含む水溶性培地を
用いて好気的条件下で培養を行うのが一般的である。
【0011】炭素源としては、例えば、グルコース、シ
ュークロース、マルトース、でんぷん加水分解物等が挙
げられる。
【0012】窒素源としては、無機、有機のいずれも用
いることができる。無機窒素源としては、例えば、硫酸
アンモニウム、硝酸アンモニウムあるいは硝酸カリウム
等のアンモニウム塩もしくは硝酸塩を用いることができ
る。有機窒素源としては、例えば、ペプトン、大豆粉
末、酵母エキス、麦芽エキス、肉エキス、野菜蛋白、カ
ゼイン、コーンスチープリカー等を用いることができ
る。
【0013】無機塩類としては、例えば、マグネシウ
ム、鉄、カルシウム、ナトリウム、カリウム等の金属イ
オンの塩類を挙げることができる。具体的には、例え
ば、硫酸マグネシウム、硫酸第一鉄、炭酸カルシウム、
塩化ナトリウム、リン酸カリウム、硫酸マンガン、塩化
カリウム、硫酸亜鉛、塩化コバルト、モリブデン酸アン
モニウム等を挙げることができる。
【0014】初期pHは6.0〜8.0程度が適当であ
るが、培養中は必ずしもこの範囲に調節する必要はな
く、培養の進行に伴い、pH低下が進行するのが一般的
である。温度は25〜30℃が適当で培養時間は2〜7
日程度である。さらに、菌体が酵母様の形態で増殖する
条件がより好ましい。
【0015】培養終了後、この培養液を温度50〜75
℃、好ましくは、55〜70℃に保持した加熱処理を行
う。この加熱処理により、培養液中の菌体は死滅し、ア
ミラーゼを中心とするプルラン分解酵素は失活する。こ
の際、処理温度が50℃以下であると菌体の死滅と酵素
の失活が不十分となり、後のプルラン回収工程において
プルランの分子量低下と、黒色色素の産生が起こり、好
ましくない。また、処理温度が75℃以上では、加熱に
よるプルラン分子量の低下や培養液の着色が起こり好ま
しくない。
【0016】また、処理時間は、0.3〜3時間が好ま
しい。処理時間が0.3時間より短いと処理効果が不十
分となり、3時間より長いと加熱によるプルラン分子量
の低下や培養液の着色が起こることがあり好ましくな
い。加熱処理した後の培養液は、濾過または遠心分離に
より除菌し、必要に応じて脱色、脱塩、濃縮を行う。そ
の後、イソプロパノール、エタノール、メタノール等の
親水性アルコール類あるいはアセトン等の親水性ケトン
等の、水と混和しかつプルランを溶解しない特性を備え
た溶剤と混合する。この混合操作によりプルランを析
出、回収し、しかる後に、乾燥するかあるいは直接乾燥
することでプルランを回収する。
【0017】
【作用】請求項1の高分子プルランの製造方法によれ
ば、培養後の培養液を温度50〜75℃で0.3〜3時
間保持することを条件とする加熱処理を行うことによ
り、培養液中の菌体が死滅し、アミラーゼを中心とする
プルラン分解酵素が失活する。これによって、培養終了
後培養液を精製してプルランを回収する工程における分
子量の低下を防止することができ、高分子量のプルラン
を製造することができる。
【0018】請求項2の高分子プルランの生産培地の黒
色化抑制方法によれば、プルラン生産菌であるオーレオ
バシデイウム・プルランスを培養した後に、請求項1の
加熱処理を行うことにより、培養液中の菌体が死滅し、
アミラーゼを中心とするプルラン分解酵素が失活する。
これによって、培養終了後培養液を精製してプルランを
回収する工程における黒色色素の産生を抑制することが
でき、培地の黒色化を抑制することができる。
【0019】
【実施例】以下に本発明の実施例を挙げる。なお、以下
の実施例および比較例において、オーレオバシデイウム
・プルランスは、ATCC 74105を使用した。
【0020】実施例1 (1)前培養培地成分組成 シュークロース 10g/L 酵母エキス 2g/L (NH4 2 SO4 0.5g/L K2 HPO4 3g/L MgSO4 ・7H2 O 0.2g/L FeSO4 ・7H2 O 0.01g/L MnSO4 ・4〜5H2 O 0.01g/L ZnSO4 ・7H2 O 0.01g/L 水 2.5L pH 7.0 (2)本培養培地成分組成 シュークロース 50g/L (NH4 )HPO4 1.0g/L K2 HPO4 2.0g/L FeSO4 ・7H2 O 0.01g/L MnSO4 ・4〜5H2 O 0.01g/L ZnSO4 ・7H2 O 0.01g/L 水 16.2L pH 7.0
【0021】上記(2)の組成から成る培地液を30L
発酵槽に入れ、24時間培養後の上記(1)の組成から
なるオーレオバシデイウム・プルランス前培養液を植菌
し、初期pH7.0、通気9L/分、攪拌速度300〜
600rpmにて2日間通気培養を行ない、プルラン2
0g/Lを含む淡紅色を帯びた白濁粘性液を得た。
【0022】この培養液を攪拌しながら55〜60℃で
30分間加熱処理した。この処理後、液は淡紅色を失
い、乳白色となった。
【0023】この処理液をケイソウ土をひいたろ過材に
よりろ過し、淡黄色透明の粘性液を得た。次に1.5培
容の86重量%イソプロパノールと混合することによ
り、白色プルランを回収した。
【0024】このプルランの固有粘度は6.4dl/g
であり、Buligaらの固有粘度と分子量の関係式
【0025】
【数1】
【0026】により算出した分子量は6.4×106
あった。また、この加熱処理後の培養液を25℃にて6
日間保存した後、同様の処理によりプルランを回収し
た。プルランに着色は認められず、分子量は6.4×1
6 であり、6日間の保存後も分子量は変化しなかっ
た。
【0027】比較例1 実施例1で得た培養液を加熱処理を行なわない他は、実
施例1と同様に処理した。得られたプルランの固有粘度
は4.6dl/g、分子量は3.8×106 であり、実
施例1と比較して、60%に低下した。また、この加熱
処理を行なわない培養液を実施例1と同様に、6日間保
存して、その後の分子量を測定した。分子量は1.9×
106 であり顕著に低下した。
【0028】比較例2 実施例1で得た培養液を80℃で1時間加熱処理する他
は、実施例1と同様に処理した。得られたプルランの固
有粘度は6.1dl/gであり、分子量は5.8×10
6 であった。
【0029】また、この加熱処理液を実施例1と同様6
日間保存して、その後の分子量を測定した。保存後の培
養液は黒色化し、得られたプルランは黒色化していた。
分子量は5.4×106 であり、わずかであるが低下し
た。
【0030】実施例1、比較例1,2の結果を表1にま
とめた。なお、培養液を20℃、B型粘度計30rpm
にて測定した粘度も表中に示した。
【0031】
【表1】
【0032】実施例2 本培養培地組成のシュークロースを100g/Lとする
他は、実施例1と同様の培地組成で、初期pH7.0、
通気9L/分、攪拌速度300〜600rpmにて5日
間通気培養を行なった。その結果、プルラン58g/L
を含む、淡紅色を帯びた白濁粘性液が得られた。この培
養液を攪拌しながら60〜65℃で30分間加熱処理し
た。この処理後、液は淡紅色を失い、乳白色となった。
【0033】この処理液を遠心分離により除菌し、次に
1.5倍容の86重量%イソプロパノールと混合するこ
とにより、白色プルランを得た。このプルランの固有粘
度は3.6dl/gであり、分子量は2.6×106
あった。
【0034】比較例3 実施例2の培養液を加熱処理を行なわない他は、実施例
2と同様に処理した。得られたプルランは黒色を帯びて
おりその固有粘度は2.5dl/gであり、分子量は
1.5×106 であった。
【0035】
【発明の効果】上記したところから明らかなように、本
発明によれば、高分子量のプルランを製造可能としたプ
ルランの製造方法および黒色色素の産生による培地の黒
色化を抑制するプルランの生産培地の黒色化抑制方法を
提供することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭52−130993(JP,A) 特開 昭49−42894(JP,A) 特開 平5−331202(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12P 19/00 - 19/64

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 プルラン生産菌であるオーレオバシデイ
    ウム・プルランスを培養することによりプルランを製造
    するプルランの製造方法において、培養後の培養液を温
    度50〜75℃で0.3〜3時間保持することを条件と
    する加熱処理を行うことを特徴とする高分子プルランの
    製造方法。
  2. 【請求項2】 プルラン生産菌であるオーレオバシデイ
    ウム・プルランスを培養した後に、請求項1の加熱処理
    を行うことよりなる高分子プルランの生産培地の黒色化
    抑制方法。
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CN100366727C (zh) * 2004-11-16 2008-02-06 江南大学 一种生产普鲁兰的菌株与利用该菌株生产普鲁兰的方法
ES2371781T3 (es) * 2006-05-10 2012-01-10 Mitsubishi Gas Chemical Company, Inc. Método para producir una levadura seca que contiene s-adenosil-l-metionina y composición para ingestión oral.
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JP5860480B2 (ja) 2011-01-11 2016-02-16 キャプシュゲル・ベルジウム・エヌ・ヴィ プルランを含む新しい硬カプセル
CA3059529A1 (en) 2017-04-14 2018-10-18 Capsugel Belgium Nv Process for making pullulan
CN110678170A (zh) 2017-04-14 2020-01-10 比利时胶囊公司 普鲁兰多糖胶囊

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