JP3071869B2 - 液体噴射記録装置及び記録方法 - Google Patents

液体噴射記録装置及び記録方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】本発明は、液体噴射記録装置及び記録方法
に関し、より詳細には、インクジェットプリンタの階調
記録を可能とする液体噴射記録装置及び記録方法に関す
る。
【0002】
【従来技術】ノンインパクト記録法は、記録時における
騒音の発生が無視し得る程度に極めて小さいという点に
おいて、最近関心を集めている。その中で、高速記録が
可能であり、而も所謂普通紙に特別の定着処理を必要と
せずに記録の行える所謂インクジェット記録法は極めて
有力な記録法であって、これまでにも様々な方式が提案
され、改良が加えられて商品化されたものもあれば、現
在もなお実用化への努力が続けられているものもある。
この様なインクジェット記録法は、所謂インクと称され
る記録液体の小滴(droplet)を飛翔させ、記録部材に付
着させて記録を行うものであって、この記録液体の小滴
の発生法及び発生された記録液小滴の飛翔方向を制御す
る為の制御方法によって幾つかの方式に大別される。
【0003】先ず第1の方式は例えば米国特許3060429
号明細書に開示されているもの(Tele type方式)であ
って、記録液体の小滴の発生を静電吸引的に行い、発生
した記録液体小滴を記録信号に応じて電界制御し、記録
部材上に記録液体小滴を選択的に付着させて記録を行う
ものである。これに就いて、更に詳述すれば、ノズルと
加速電極間に電界を掛けて、一様に帯電した記録液体の
小滴をノズルより吐出させ、該吐出した記録液体の小滴
を記録信号に応じて電気制御可能な様に構成されたxy
偏向電極間を飛翔させ、電界の強度変化によって選択的
に小滴を記録部材上に付着させて記録を行うものであ
る。
【0004】第2の方式は、例えば米国特許3596275号
明細書、米国特許3298030号明細書等に開示されている
方式(Sweet方式)であって、連続振動発生法によって帯
電量の制御された記録液体の小滴を発生させ、この発生
された帯電量の制御された小滴を、一様の電界が掛けら
れている偏向電極間を飛翔させることで、記録部材上に
記録を行うものである。具体的には、ピエゾ振動素子の
付設されている記録ヘッドを構成する一部であるノズル
のオリフィス(吐出口)の前に記録信号が印加されてい
る様に構成した帯電電極を所定距離だけ離して配置し、
前記ピエゾ振動素子に一定周波数の電気信号を印加する
ことでピエゾ振動素子を機械的に振動させ、前記吐出口
より記録液体の小滴を吐出させる。この時前記帯電電極
によって吐出する記録液体小滴には電荷が静電誘導さ
れ、小滴は記録信号に応じた電荷量で帯電される。帯電
量の制御された記録液体の小滴は、一定の電界が一様に
掛けられている偏向電極間を飛翔する時、付加された帯
電量に応じて偏向を受け、記録信号を担う小滴のみが記
録部材上に付着し得る様にされている。
【0005】第3の方式は、例えば米国特許3416153号
明細書に開示されている方式(Hertz方式)であって、ノ
ズルとリング状の帯電電極間に電界を掛け、連続振動発
生法によって、記録液体の小滴を発生霧化させて記録す
る方式である。即ちこの方式ではノズルと帯電電極間に
掛ける電界強度を記録信号に応じて変調することによっ
て小滴の霧化状態を制御し、記録画像の階調性を出して
記録する。第4の方式は、例えば米国特許3747120号明
細書に開示されている方式(Stemme方式)で、この方式は
前記3つの方式とは根本的に原理が異なるものである。
すなわち、前記3つの方式は、何れもノズルより吐出さ
れた記録液体の小滴を、飛翔している途中で電気的に制
御し、記録信号を担った小滴を選択的に記録部材上に付
着させて記録を行うのに対して、このStemme方式は、記
録信号に応じて吐出口より記録液体の小滴を吐出飛翔さ
せて記録するものである。
【0006】つまり、Stemme方式は、記録液体を吐出す
る吐出口を有する記録ヘッドに付設されているピエゾ振
動素子に、電気的な記録信号を印加し、この電気的記録
信号をピエゾ振動素子の機械的振動に変え、該機械的振
動に従って前記吐出口より記録液体の小滴を吐出飛翔さ
せて記録部材に付着させることで記録を行うものであ
る。これ等、従来の4つの方式は各々に特長を有するも
のであるが、又、他方において解決され得る可き点が存
在する。
【0007】すなわち、前記第1から第3の方式は記録
液体の小滴の発生の直接的エネルギーが電気的エネルギ
ーであり、又、小滴の偏向制御も電界制御である。その
為、第1の方式は、構成上はシンプルであるが、小滴の
発生に高電圧を要し、又、記録ヘッドのマルチノズル化
が困難であるので高速記録には不向きである。第2の方
式は、記録ヘッドのマルチノズル化が可能で高速記録に
向くが、構成上複雑であり、又記録液体小滴の電気的制
御が高度で困難であること、記録部材上にサテライトド
ットが生じ易いこと等の問題点がある。第3の方式は、
記録液体小滴を霧化することによって階調性に優れた画
像が記録され得る特長を有するが、他方霧化状態の制御
が困難であること、記録画像にカブリが生ずること及び
記録ヘッドのマルチノズル化が困難で、高速記録には不
向きであること等の諸問題点が存する。
【0008】第4の方式は、第1乃至第3の方式に比べ
利点を比較的多く有する。即ち、構成上シンプルである
こと、オンデマンド(on-demand)で記録液体をノズルの
吐出口より吐出して記録を行う為に、第1乃至第3の方
式の様に吐出飛翔する小滴の中、画像の記録に要さなか
った小滴を回収することが不要であること及び第1乃至
第2の方式の様に、導電性の記録液体を使用する必要性
がなく記録液体の物質上の自由度が大であること等の大
きな利点を有する。而乍ら、一方において、記録ヘッド
の加工上に問題があること、所望の共振数を有するピエ
ゾ振動素子の小型化が極めて困難であること等の理由か
ら記録ヘッドのマルチノズル化が難しく、又、ピエゾ振
動素子の機械的振動という機械的エネルギーによって記
録液体小滴の吐出飛翔を行うので高速記録には向かない
こと、等の欠点を有する。
【0009】このように従来の液体噴射記録方法には、
構成上、高速記録化上、記録ヘッドのマルチノズル化
上、サテライトドットの発生及び記録画像のカブリ発生
等の点において、一長一短があって、その長所を利する
用途にしか適用し得ないという制約が存在していた。し
かし、この不都合も本出願人が先に提案したインクジェ
ット記録方式を採用することによってほぼ解消すること
ができる。かかるインクジェット記録方式は、特公昭5
6−9429号公報にその詳細が説明されているが、こ
こにそれを要約すれば、液室内のインクを加熱して気泡
を発生させてインクに圧力上昇を生じさせ、微細な毛細
管ノズルからインクを飛び出させて、記録するものであ
る。その後、この原理を利用して多くの発明がなされ
た。
【0010】その中の1つとして、たとえば、特開平2
−23349号公報がある。これは、電気信号に応答し
て毛細管領域からインク小滴を射出させる熱インクジェ
ットプリンタ用プリントヘッドにおいて、前記電気信号
を受けて発熱し、前記毛細管領域内に対して熱を与える
べく位置するプリントヘッド抵抗を具備しており、該プ
リントヘッド抵抗は、抵抗領域と、該抵抗領域に周囲を
取り囲まれるように配置され且つ少なくとも一部が前記
抵抗領域に電気的に接続された導電領域とを備えたもの
であることを特徴とする熱インクジェットプリンタ用プ
リントヘッドである。これは、抵抗領域の中央部を導電
領域とすることにより電流パルスが加えられた際、環状
の気泡を形成し、抵抗器の中央に冷点を生じさせ、気泡
を多数のより小さな気泡に破壊し、この気泡の破壊によ
る衝撃を抵抗器の表面にランダムの分散させて、抵抗器
のキャビテーションによる損傷を最小にできるという効
果がある。
【0011】このように、特公昭56−9429号公報
のものは、近年、その耐久性まで改善されて、一部市場
にも出まわり、実用に供されるようになったが、より高
画質を得るために、インク吐出量制御に関する要求に高
まりつつある。その要求を満たすものとして、特開昭5
5−132259号公報が知られている。これは、熱エ
ネルギーの作用によって、液体に急俊な状態変化を起さ
せ、該状態変化に基づく作用力によって液体を液滴とし
て飛翔させ、被記録面に付着させ記録を行う液体噴射記
録法において、液体を所定方向に噴射させるための吐出
オリフィスをその終端に有する流路に、前記吐出オリフ
ィスに連通し、そこで発生される作用力が吐出オリフィ
ス方向に効果的に伝達される様に配置されてある熱作用
部を構成する少なくとも2つの独立に信号を入力し得る
電気・熱変換体の各々に入力される信号の入力タイミン
グを適宜ずらす事によって階調記録を行うことを特徴と
する液体噴射記録法であるが、その明細書に記載されて
いることから明らかなように、制御電極とアース電極
(共通電極)が同一平面上に形成されており、高密度に
配列を行うことは困難であるという問題を有する。
【0012】一方、特公昭62−46358号公報や特
公昭62−46359号公報のものは、それぞれ、1つ
の流路に配列した複数個の発熱体より所定数の発熱体を
選択したり、あるいは、発熱量の異なる複数の発熱体か
ら1つを選択して、発生する気泡の大きさを変えたりし
て、吐出量を制御するものである。しかしながら、サー
マルインクジェットにおいては、その気泡挙動は2値的
であり、インクが吐出するかあるいは吐出しないという
1か0かという性質をもっているため、上記2公報の技
術を実施しても、その吐出量は段階的に変化し、なめら
かな変化は得られず、高画質記録を実現することは困難
であった。
【0013】
【目的】本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされた
もので、サーマルインクジェットにおける、高密度な配
列を実現し、かつ、そのインク吐出量が連続的に変化し
うるような記録ヘッド構造を有する液体噴射記録装置及
び記録方法を提供することを目的としてなされたもので
ある。
【0014】
【構成】本発明は、上記目的を達成するために、(1)
液体を吐出して飛翔的液滴を形成するための吐出口と、
前記液体を吐出するために前記液体に熱による状態変化
を生じせしめるための熱エネルギー作用部と、該熱エネ
ルギー作用部に電気的に接続される電極とを有する液体
噴射記録ヘッドを具備する液体噴射記録装置において、
1つの吐出口に対応して1つの熱エネルギー作用部と、
該熱エネルギー作用部の領域の内側において接続される
1つのアース電極と、前記熱エネルギー作用部の領域の
外側において接続される複数の制御電極とより成るこ
と、更には、(2)前記熱エネルギー作用部とアース電極
とは、それらを電気的に接続するためのコンタクトホー
ルを設けた絶縁層を介して積層されていること、更に
は、(3)前記(2)において、前記熱エネルギー作用部
の領域の外側境界線と前記コンタクトホールの領域の境
界線は互いに平行でないこと、更には、(4)前記
(1),(2),(3)において、前記アース電極と前記制
御電極間の各抵抗値が等しくないこと、更には、(5)
前記(1),(2),(4)において、前記熱エネルギー作
用部と前記複数の制御電極が電気的に接続される領域に
おいて、各制御電極の幅が等しくないこと、或いは、
(6)液体を吐出して飛翔的液滴を形成するための吐出
口と、前記液体を吐出するために前記液体に熱による状
態変化を生じせしめるための熱エネルギー作用部と、該
熱エネルギー作用部に電気的に接続される電極とを有す
る液体噴射記録ヘッドを具備し、1つの吐出口に対応し
て1つの熱エネルギー作用部と、該熱エネルギー作用部
の領域の内側において接続される1つのアース電極と、
前記熱エネルギー作用部の領域の外側において接続され
る複数の制御電極とより成り、前記アース電極と前記複
数の制御電極間の各抵抗値が等しくないように接続され
た液体噴射記録装置を使用する液体噴射記録方法におい
て、記録すベき情報を表わす信号のレベルに応じた1つ
の制御電極を選択し、該制御電極に通電すること、或い
は、(7)液体を吐出して飛翔的液滴を形成するための
吐出口と、前記液体を吐出するために前記液体に熱によ
る状態変化を生じせしめるための熱エネルギー作用部
と、該熱エネルギー作用部に電気的に接続される電極と
を有する液体噴射記録ヘッドを具備し、1つの吐出口に
対応して1つの熱エネルギー作用部と、該熱エネルギー
作用部の領域の内側において接続される1つのアース電
極と、前記熱エネルギー作用部の領域の外側において接
続される複数の制御電極とより成る液体噴射記録装置を
使用する液体噴射記録方法において、記録すベき情報を
表わす信号のレベルに応じて所定数の制御電極を選択
し、該制御電極に通電することにより記録を行うこと、
或いは、(8)液体を吐出して飛翔的液滴を形成するた
めの吐出口と、前記液体を吐出するために前記液体に熱
による状態変化を生じせしめるための熱エネルギー作用
部と、該熱エネルギー作用部に電気的に接続される電極
とを有する液体噴射記録ヘッドを具備し、1つの吐出口
に対応して1つの熱エネルギー作用部と、該熱エネルギ
ー作用部の領域の内側において接続される1つのアース
電極と、前記熱エルギー作用部の領域の外側において接
続される複数の制御電極とより成る液体噴射記録装置を
使用する液体噴射記録方法において、記録すベき情報を
表わす信号のレベルに応じて所定数の制御電極を選択
し、該制御電極に通電するタイミングを変えて記録を行
うこと、或いは、(9)液体を吐出して飛翔的液滴を形
成するための吐出口と、前記液体を吐出するために前記
液体に熱による状態変化を生じせしめるための熱エネル
ギー作用部と、該熱エネルギー作用部に電気的に接続さ
れる電極とを有する液体噴射記録ヘッドを具備し、1つ
の吐出口に対応して1つの熱エネルギー作用部と、該熱
エネルギー作用部の領域の内側において接続される1つ
のアース電極と、前記熱エルギー作用部の領域の外側に
おいて接続される複数の制御電極とより成り、前記アー
ス電極と前記複数の制御電極間の各抵抗値が等しくない
ように接続された液体噴射記録装置を使用する液体噴射
記録方法において、記録すベき情報を表わす信号のレベ
ルに応じて所定数の制御電極を選択し、該制御電極に通
電するタイミングを変えて記録を行うことを特徴とした
ものである。以下、本発明の実施例に基づいて説明す
る。
【0015】図9は、本発明が適用されるインクジェッ
トヘッドの一例としてのバブルジェットヘッドの動作説
明をするための図、図10(a)〜(d)は、バブルジ
ェットヘッドの一例を示す斜視図、図(b),(c)
は、図(a)に示したヘッドを構成する蓋基板(図
(b))と発熱体基板(図(c))に分解した時の斜視
図、図(d)は、図(a)に示した蓋基板を裏側から見
た斜視図で、図中、21は蓋基板、22は発熱体基板、
23は記録液体流入口、24はオリフィス、25は流
路、26は液室を形成するための領域、27は個別(独
立)電極、28は共通電極、29は発熱体(ヒータ)、
30はインク、31は気泡、32は飛翔インク滴で、本
発明は、斯様なバブルジェット式の液体噴射記録ヘッド
に適用するものである。
【0016】最初に、図9を参照しながらバブルジェッ
トによるインク噴射について説明すると、(a)は定常状
態であり、オリフィス面でインク30の表面張力と外圧
とが平衡状態にある。(b)はヒータ29が加熱されて、
ヒータ29の表面温度が急上昇し隣接インク層に沸騰現
像が起きるまで加熱され、微小気泡31が点在している
状態にある。(c)はヒータ29の全面で急激に加熱され
た隣接インク層が瞬時に気化し、沸騰膜を作り、この気
泡31が生長した状態である。この時、ノズル内の圧力
は、気泡の生長した分だけ上昇し、オリフィス面での外
圧とのバランスがくずれ、オリフィスよりインク柱が生
長し始める。
【0017】(d)は気泡が最大に生長した状態であり、
オリフィス面より気泡の体積に相当する分のインク30
が押し出される。この時、ヒータ29には電流が流れて
いない状態にあり、ヒータ29の表面温度は降下しつつ
ある。気泡31の体積の最大値は電気パルス印加のタイ
ミングからややおくれる。(e)は気泡31がインクなど
により冷却されて収縮を開始し始めた状態を示す。イン
ク柱の先端部では押し出された速度を保ちつつ前進し、
後端部では気泡の収縮に伴ってノズル内圧の減少により
オリフィス面からノズル内へインクが逆流してインク柱
にくびれが生じている。
【0018】(f)はさらに気泡31が収縮し、ヒータ面
にインクが接しヒータ面がさらに急激に冷却される状態
にある。オリフィス面では、外圧がノズル内圧より高い
状態になるためメニスカスが大きくノズル内に入り込ん
で来ている。インク柱の先端部は液滴になり記録紙の方
向へ5〜10m/secの速度で飛翔している。(g)はオリ
フィスにインクが毛細管現象により再び供給(リフィル)
されて(a)の状態にもどる過程で、気泡は完全に消滅し
ている。以上のような原理のサーマルインクジェットに
おいて、本発明では、記録すべき情報を表わす信号のレ
ベルに応じて、発生させる気泡の大きさ、あるいは複数
個の気泡を発生させるタイミングを変えて、吐出口より
吐出するインク滴の大きさを変えるようにしている。
【0019】図1は、本発明による液体噴射記録装置の
一実施例を説明するためのヘッドの熱エネルギー作用部
の製造方法を示す図で、図中、1はコンタクトホール、
2〜5は制御電極である。各図(a)〜(d)の各工程
で形成されるパターン部のみハッチングを施した。な
お、この図は、本発明の構造の特徴を説明するための図
であり、実際に製作する場合には、必ずしもこの図のよ
うな形状、あるいは、パターン間の接続(発熱層と電極
パターンなど)方法にはならないことに注意されたい。
【0020】図(a)において、最初に、シリコンウェ
ハを熱酸化により蓄熱層としてSiO2膜を1.5μm形
成する。次にこのSiO2上にアース電極として、Al
を1μmスパッタリングにより形成し、フォトリソ、エ
ッチングを行い、図に示したようなパターン形状にす
る。図(b)において、次に絶縁層としてSiO2膜を
スパッタリングにより1.2μm形成し、フォトリソ、
エッチングを行い、下のAlのアース電極にコンタクト
ホール1を形成する(この例では三角形状の開口)。図
(c)において、次に、発熱層としてHfB2をスパッ
タリングにより3000Å形成し、フォトリソ、エッチ
ングを行い、コンタクトホール1を介して、下のAlの
アース電極と接触するような位置及び形状に形成する。
図(d)において、次に制御電極として、Alを1μm
スパッタリングにより形成し、フォトリソ、エッチング
を行い、図に示したようなパターン形状にする。ここで
は、制御電極2〜5の4本形成した例を示す。これら
は、1つの発熱層に対して、独立に駆動できるようにな
っている。
【0021】最後に、図示しないが、上記発熱層及び電
極をインクの腐食から保護するために、ボンディングパ
ッドとなる領域を残し、SiO2の保護膜をスパッタリ
ングにより1μm形成する。さらに、発熱層の近傍に
は、耐キャビテーション保護膜として、Taをスパッタ
リングにより4000Å形成する。又、電極部において
も電極保護膜として、フォトニース(東レ製)を1.2
μm形成する。それらのパターン形状は、フォトリソ、
エッチングにより適宜形成される。
【0022】図2は、発熱層と制御電極の形成方法を説
明するための図である。前述のように図1は、本発明の
構造の特徴を説明するための図であり、説明を簡略化す
るために、実際のものとは異なる形状あるいは工程とな
っている箇所がある。図2はその例である。図1の制御
電極3を形成する例として説明する。まず、図2(a)
に示すように、全面にHfB2をスパッタリングし、次
に図(b)に示すように、連続してその上にAlをスパ
ッタリングする。次に図(c)に示すように、フォトリ
ソ、エッチングによって、帯状のHfB2とAlの積層
されたパターンにする。最後に図(d)に示すように、
もう一度フォトリソ、エッチングによって、発熱部とな
るHfB2を露出させる。図(e)にその断面図を示
す。
【0023】図3は、本発明による液体噴射記録装置の
ヘッドの熱エネルギー作用部の他の構成を示す図であ
る。この場合も、構造の特徴を説明するための図であ
り、実際の形状あるいはパターン間の接続方法とは一部
異なることに注意されたい。図(a)において、最初
に、シリコンウェハを熱酸化により蓄熱層としてSiO
2膜を1.5μm形成する。次にこのSiO2上に発熱層
として、HfB2を3000Åスパッタリングし、次い
で電極用のAlを1μmスパッタリングする。図(b)
において、フォトリソ、エッチングにより、HfB2
Alの2層の膜を図のようなパターン形状とする。図
(c)において、さらにフォトリソ、エッチングによ
り、Alを部分的に除去し、発熱層を露出させる。図
(d)において、次に絶縁層としてSiO2をスパッタ
リングにより形成し、フォトリソ、エッチングにより、
下の発熱層のある領域にコンタクトホール1を形成する
(この例では三角状の開口)。図(e)において、次に
Alを1μmスパッタリングし、フォトリソ、エッチン
グにより、図のようなパターンとしてアース電極6とす
る。このアース電極6は、前述のコンタクトホール1を
介して、発熱層と接続する。
【0024】最後に、図示しないが、上記発熱層及び電
極をインクの腐食から保護するために、ボンディングパ
ッドとなる領域を残し、SiO2の保護膜をスパッタリ
ングにより1μm形成する。さらに、発熱層の近傍に
は、耐キャビテーション保護膜として、Taをスパッタ
リングにより4000Å形成する。又、電極部において
も電極保護膜として、フォトニース(東レ製)を1.2
μm形成する。それらのパターン形状は、フォトリソ、
エッチングにより適宜形成される。図1の例と図3の例
では、アース電極と制御電極の上下関係が入れかわって
いるだけで、絶縁層を介して発熱層とアース電極が積層
されるという点では同じである。
【0025】図4は、本発明による液体噴射記録装置の
動作を説明するための図で、ここでは動作の原理のみを
わかりやすく説明するために、発熱層、アース電極、制
御電極のみを示し、絶縁層や保護層などは省略してい
る。又、各パターンの接続部の層の上下関係も省略し
た。アース電極6と発熱層の接続は、三角状のコンタク
トホール1を介して行われる。今、各制御電極2〜5に
駆動パルスを入力すると、電流は、図の矢印に示すよう
に流れる。今、制御電極2に着目する。制御電極2と発
熱層の接続部によって形成される境界線と、アース電極
6と発熱層が接続する部分の最も制御電極2に近い部分
によって形成される境界線は、互いに平行ではない。従
って、制御電極2に駆動パルスを入力した場合、発熱部
上で熱勾配が発生し、発生する気泡は、図5(a)に示
すように、まず下の領域に発生する。次に駆動パルス電
圧を高くすると、気泡は、図5(b)に示すように、そ
の大きさは大きくなり、上の領域にまでくる。つまり、
入力エネルギーを変えることにより、発生する気泡の大
きさが変えられるわけである。
【0026】次に、制御電極4,5に着目する。この場
合、発熱層と接続される制御電極の幅が異なるため、制
御電極4,5に同一の電圧の駆動パルスを入力した場
合、発熱量が異なり、従って、発生する気泡の大きさが
異なる。図4の場合、制御電極5の方が電極幅が広いた
め、大きな気泡が発生する(図6)。同様に、制御電極
3,4に注目すると、ここでは今、電極パターン幅が異
っているが、仮にパターン幅が同じであったとしたら、
制御電極と発熱層の接続部から、アース電極と発熱層が
接続する部分の最も制御電極に近い部分によって形成さ
れる境界線までの距離が異なるため、両者の抵抗値が異
なる。よって同様に発生する気泡の大きさも異なるわけ
である。
【0027】以上の説明は、図1のようなパターン形状
をもとにその原理を示したわけであるが、本発明は、こ
のパターン形状に限定されるものではない。図7に他の
パターン形状の例を示す。図中、11はコンタクトホー
ル、12は制御電極、13は発熱層である。図1、図
3、図7(a),(b)の例は、図9に示したような発
熱面に対して平行方向にインクを飛翔させるいわゆるエ
ッジシュータ型のサーマルインクジェットに好適に使用
される。一方、図7(c)の例は、発熱面に対して垂直
方向にインクを飛翔させるいわゆるサイドシュータ型
(図示せず)のサーマルインクジェットに好適に使用さ
れる。
【0028】以上の説明で明らかなように、本発明によ
れば、各制御電極によって、それに接続される発熱層の
上で気泡の大きさが変えられることがわかる。次に、本
発明の好適な利用方法について説明する。最も単純に
は、記録すべき情報を表わす信号のレベルに応じた1つ
の制御電極を選択する方法である。各制御電極に接続さ
れる発熱層の上で気泡の大きさが変えられるわけである
から、それを適宜選択すれず容易にインク吐出量が変え
られる。
【0029】仮に、各制御電極で発生する気泡の大きさ
が同じであるようなパターン構成であったとしても、記
録すべき情報を表わす信号のレベルに応じて、1つない
しは、複数本の制御電極を同時に駆動することにより、
発熱層の上で発生する気泡の数を変えられる(あるいは
場合によっては、複数個の気泡が合体して1つの気泡に
なることもあるが、その場合は、気泡の体積が変えられ
る)ので、インクの吐出量が変えられる。この場合、各
制御電極で発生する気泡の大きさが変えられるようなパ
ターン構成であったとすると、複数本の制御電極を適宜
選択し、又、その選択のバリエーションも広がるため、
インク吐出量の変化を非常になめらかに連続的に変える
ことが可能となる。
【0030】他の利用方法として、各制御電極に通電す
るタイミングを変えることにより、複数の気泡を同時、
あるいは時間差をおいて発生させ、インク吐出量を変え
ることができる。図8に、制御電極を2本駆動させてイ
ンク吐出量を変える例を示す。図(a)は、2本の制御
電極に同時に駆動パルスを入力する場合で、発生する気
泡の体積は2個の気泡が合体し(発生気泡が互いに離れ
ている時は、合体しないで、2個独立に、しかし、同時
に発生する)、それにより大きな気泡となり、従ってイ
ンクの吐出量も多くなり、大きな画素が得られる。図
(b)は2本の制御電極に時間差をおいて駆動パルスを
入力する場合で、図(a)の場合と違い2個の気泡が最
大になる時間が同じではないため、合体しても図(a)
の場合ほど大きな気泡にはならない。従って、吐出イン
ク量は少なく、画素径も小さくなる。
【0031】実施例 図9に示したような構造のヘッドを用い、発熱体基板の
熱エネルギー作用部は、図1で説明した構成のものを使
用し、各制御電極に駆動パルスを入力して印字実験を行
った。この時の吐出口サイズは、55μm×50μmで
あり、熱エネルギー作用部(発熱層の領域)は、80μ
m×200μmとした。又、発熱層とアース電極を接続
する部分であるコンタクトホールは、図1と同じような
直三角形状であり、そのサイズは、15μm×100μ
m×101μmとし、発熱層のほぼ中央付近に形成した
吐出口から最も近い熱エネルギー作用部までの距離は1
80μmとした。
【0032】使用したインクは、ヒューレットパッカー
ド社製Think Jetのインクであり、印写に使用した紙は
三菱製紙製マットコート紙NMである。各制御電極に入
力した駆動パルスは、すべて同一とし、電圧28V、パ
ルス幅6μsecとした。各制御電極2〜5と、アース電
極間の抵抗値は、それぞれ制御電極2の場合は60.7
Ω、制御電極3の場合は81.2Ω、制御電極4の場合
は100.3Ω、制御電極5の場合は70.7Ωであっ
た。表1に各条件で印写した際の画素径の評価結果を示
す。画素径はそれぞれn=50の平均値である。
【0033】
【表1】
【0034】以上より明らかなように、1つの吐出口に
対応して、1つの熱エネルギー作用部及びそれに接続さ
れる複数の制御電極を有する本発明のヘッドでは、各制
御電極に独立に駆動パルスを入力したり、あるいは、組
合せを変えて同時に入力したり、あるいは、それらへの
入力タイミングを変えたりすることによって容易に、し
かも非常になめらかで連続的に印写画素径を変えること
ができ、高画質印写が可能となることがわかる。
【0035】他の実施例(請求項3) 制御電極2のみを用い、駆動パルス(入力エネルギー)
を少しずつ変えて、印写を行い、画素径を評価したもの
を表2に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
【効果】以上の説明から明らかなように、本発明による
と、以下のような効果がある。 (1)請求項1に対する効果;1つの吐出口と1つの熱
エネルギー作用部と1つのアース電極と、複数の制御電
極とで構成されるため、従来のもののように、1つの吐
出口と、複数の熱エネルギー作用部を有するものに比べ
シンプルな構造となり、製造上の歩留りが向上する。
又、熱エネルギー作用部が複数個ある従来のものは、吐
出量の変化が段階的に行われるのに対して、本発明のよ
うに、1つの熱エネルギー作用部に対して複数の制御電
極を接続したものは、熱エネルギー作用部が一体的であ
るため、各制御電極へ別々に駆動パルスを入力しても、
熱エネルギー作用部上では、その熱的境界がはっきりし
なくなるという特徴があるため、吐出量の変化が非常に
なめらかに連絡的に変化するという効果がある。 (2)請求項2に対する効果;アース電極を積層するこ
とにより、非常にコンパクトになり、高密度配列が可能
となる。 (3)請求項3に対する効果;熱エネルギー作用部で容
易に熱勾配を作ることができ、入力エネルギーを変える
ことにより気泡の大きさが変えられ、従って吐出量が変
えられる。 (4)請求項4に対する効果,各制御電極に駆動パルス
を入力し、独立に1つ1つ駆動しただけで吐出量が変え
られる。又、それらを組合せて同時駆動する場合、ある
いは、タイミングを変えて駆動する場合の吐出量変化の
バリエーションが大変広くなる。 (5)請求項5に対する効果;構成4を実施する具体的
方法であり、マスク設計時にパターン幅を変えるだけ
で、簡単にしかも低コストで実現できる。 (6)請求項6に対する効果;シンプルな構成の本発明
の使用方法の1例であり、容易に吐出量を変えることが
できる。 (7)請求項7,8,9に対する効果;シンプルな構成
の本発明の使用方法の1例であり、吐出量の変化が段階
的(従来技術)にならず、非常になめらかに連続的に変
えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による液体噴射記録装置の一実施例を
説明するためのへッドの熱エネルギー作用部の製作方法
を示す図である。
【図2】 発熱層と制御電極の形成方法を説明するため
の図である。
【図3】 本発明による液体噴射記録装置のへッドの熱
エネルギー作用部の他の構成図を示す図である。
【図4】 本発明による液体噴射記録装置の動作を説明
するための図である。
【図5】 制御電極に駆動パルスを入力した場合に発生
する気泡を示す図である。
【図6】 他の制御電極を用いた場合に発生する気泡を
示す図である。
【図7】 熱エネルギー作用部の他のパターン形状を示
す図である。
【図8】 制御電極を2本駆動させてインク吐出量を変
えた例を示す図である。
【図9】 本発明が適用されるインクジェットヘッドの
動作を説明するための図である。
【図10】 バブルジェットヘッドの構成図である。
【符号の説明】
1…コンタクトホール、2〜5…制御電極、6…アース
電極(Al)。
フロントページの続き (72)発明者 門永 雅史 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株 式会社リコー内 (56)参考文献 特開 昭61−118259(JP,A) 特開 平1−115640(JP,A) 特開 昭55−73569(JP,A) 実開 昭60−105148(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B41J 2/05 B41J 2/205

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 液体を吐出して飛翔的液滴を形成するた
    めの吐出口と、前記液体を吐出するために前記液体に熱
    による状態変化を生じせしめるための熱エネルギー作用
    部と、該熱エネルギー作用部に電気的に接続される電極
    とを有する液体噴射記録ヘッドを具備する液体噴射記録
    装置において、1つの吐出口に対応して1つの熱エネル
    ギー作用部と、該熱エネルギー作用部の領域の内側にお
    いて接続される1つのアース電極と、前記熱エネルギー
    作用部の領域の外側において接続される複数の制御電極
    とより成ることを特徴とする液体噴射記録装置。
  2. 【請求項2】 前記熱エネルギー作用部とアース電極と
    は、それらを電気的に接続するためのコンタクトホール
    を設けた絶縁層を介して積層されていることを特徴とす
    る請求項1記載の液体噴射記録装置。
  3. 【請求項3】 前記熱エネルギー作用部の領域の外側境
    界線と前記コンタクトホールの領域の境界線は互いに平
    行でないことを特徴とする請求項2記載の液体噴射記録
    装置。
  4. 【請求項4】 前記アース電極と前記制御電極間の各抵
    抗値が等しくないことを特徴とする請求項1,2,3記
    載の液体噴射記録装置。
  5. 【請求項5】 前記熱エネルギー作用部と前記複数の制
    御電極が電気的に接続される領域において、各制御電極
    の幅が等しくないことを特徴とする請求項1,2,4記
    載の液体噴射記録装置。
  6. 【請求項6】 液体を吐出して飛翔的液滴を形成するた
    めの吐出口と、前記液体を吐出するために前記液体に熱
    による状態変化を生じせしめるための熱エネルギー作用
    部と、該熱エネルギー作用部に電気的に接続される電極
    とを有する液体噴射記録ヘッドを具備し、1つの吐出口
    に対応して1つの熱エネルギー作用部と、該熱エネルギ
    ー作用部の領域の内側において接続される1つのアース
    電極と、前記熱エネルギー作用部の領域の外側において
    接続される複数の制御電極とより成り、前記アース電極
    と前記複数の制御電極間の各抵抗値が等しくないように
    接続された液体噴射記録装置を使用する液体噴射記録方
    法において、記録すべき情報を表わす信号のレベルに応
    じた1つの制御電極を選択し、該制御電極に通電するこ
    とによって記録を行うことを特徴とする液体噴射記録方
    法。
  7. 【請求項7】 液体を吐出して飛翔的液滴を形成するた
    めの吐出口と、前記液体を吐出するために前記液体に熱
    による状態変化を生じせしめるための熱エネルギー作用
    部と、該熱エネルギー作用部に電気的に接続される電極
    とを有する液体噴射記録ヘッドを具備し、1つの吐出口
    に対応して1つの熱エネルギー作用部と、該熱エネルギ
    ー作用部の領域の内側において接続される1つのアース
    電極と、前記熱エネルギー作用部の領域の外側において
    接続される複数の制御電極とより成る液体噴射記録装置
    を使用する液体噴射記録方法において、記録すべき情報
    を表わす信号のレベルに応じて所定数の制御電極を選択
    し、該制御電極に通電することにより記録を行うことを
    特徴とする液体噴射記録方法。
  8. 【請求項8】 液体を吐出して飛翔的液滴を形成するた
    めの吐出口と、前記液体を吐出するために前記液体に熱
    による状態変化を生じせしめるための熱エネルギー作用
    部と、該熱エネルギー作用部に電気的に接続される電極
    とを有する液体噴射記録ヘッドを具備し、1つの吐出口
    に対応して1つの熱エネルギー作用部と、該熱エネルギ
    ー作用部の領域の内側において接続される1つのアース
    電極と、前記熱エルギー作用部の領域の外側において接
    続される複数の制御電極とより成る液体噴射記録装置を
    使用する液体噴射記録方法において、記録すべき情報を
    表わす信号のレベルに応じて所定数の制御電極を選択
    し、該制御電極に通電するタイミングを変えて記録を行
    うことを特徴とする特徴とする液体噴射記録方法。
  9. 【請求項9】 液体を吐出して飛翔的液滴を形成するた
    めの吐出口と、前記液体を吐出するために前記液体に熱
    による状態変化を生じせしめるための熱エネルギー作用
    部と、該熱エネルギー作用部に電気的に接続される電極
    とを有する液体噴射記録ヘッドを具備し、1つの吐出口
    に対応して1つの熱エネルギー作用部と、該熱エネルギ
    ー作用部の領域の内側において接続される1つのアース
    電極と、前記熱エネルギー作用部の領域の外側において
    接続される複数の制御電極とより成り、前記アース電極
    と前記複数の制御電極間の各抵抗値が等しくないように
    接続された液体噴射記録装置を使用する液体噴射記録方
    法において、記録すべき情報を表わす信号のレベルに応
    じて所定数の制御電極を選択し、該制御電極に通電する
    タイミングを変えて記録を行うことを特徴とする特徴と
    する液体噴射記録方法。
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