JP3054174B2 - 液体噴射記録装置及び方法 - Google Patents

液体噴射記録装置及び方法

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JP3054174B2 JP17990290A JP17990290A JP3054174B2 JP 3054174 B2 JP3054174 B2 JP 3054174B2 JP 17990290 A JP17990290 A JP 17990290A JP 17990290 A JP17990290 A JP 17990290A JP 3054174 B2 JP3054174 B2 JP 3054174B2
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Description

【発明の詳細な説明】 技術分野 本発明は、液体噴射記録装置及び方法、より群細に
は、インクジェットプリンタの階調記録を可能とする液
体噴射記録装置及び記録方法に関する。
従来技術 ノンインパクト記録法は、記録時における騒音の発生
が無視し得る程度に極めて小さいという点において、最
近関心を集めている。その中で、高速記録が可能であ
り、而も所謂普通紙に特別の定着処理を必要とせずに記
録の行える所謂インクジェット記録法は極めて有力な記
録法であって、これまでにも様々な方式が提案され、改
良が加えられて商品化されたものもあれば、現在もなお
実用化への努力が続けられているものもある。
この様なインクジェット記録法は、所謂インクと称さ
れる記録液体の小滴(droplet)を飛翔させ、記録部材
に付着させて記録を行うものであって、この記録液体の
小滴の発生法及び発生された記録液小滴の飛翔方向を制
御する為の制御方法によって幾つかの方式に大別され
る。
先ず第1の方式は例えばUSP3060429に開示されている
もの(Tele type方式)であって、記録液体の小滴の発
生を静電吸引的に行い、発生した記録液体小滴を記録信
号に応じて電界制御し、記録部材上に記録液体小滴を選
択的に付着させて記録を行うものである。
これに就いて、更に詳述すれば、ノズルと加速電極間
に電界を掛けて、一様に帯電した記録液体の小滴をノズ
ルより吐出させ、該吐出した記録液体の小滴を記録信号
に応じて電気制御可能な様に構成されたxy偏向電極間を
飛翔させ、電界の強度変化によって選択的に小滴を記録
部材上に付着させて記録を行うものである。
第2の方式は、例えばUSP3596275、USP3298030等に開
示されている方式(Sweet方式)であって、連続振動発
生法によって帯電量の制御された記録液体の小滴を発生
させ、この発生された帯電量の制御された小滴を、一様
の電界が掛けられている偏向電極間を飛翔させること
で、記録部材上に記録を行うものである。
具体的には、ピエゾ振動素子の付設されている記録ヘ
ッドを構成する一部であるノズルのオリフィス(吐出
口)の前に記録信号が印加されている様に構成した帯電
電極を所定距離だけ離して配置し、前記ピエゾ振動素子
に一定周波数の電気信号を印加することでピエゾ振動素
子を機械的に振動させ、前記吐出口より記録液体の小滴
を吐出させる。この時前記帯電電極によって吐出する記
録液体小滴には電荷が静電誘導され、小滴は記録信号に
応じた電荷量で帯電される。帯電量の制御された記録液
体の小滴は、一定の電界が一様に掛けられている偏向電
極間を飛翔する時、付加された帯電量に応じて偏向を受
け、記録信号を担う小滴のみが記録部材上に付着し得る
様にされている。
第3の方式は例えばUSP3416153に開示されている方式
(Hertz方式)であって、ノズルとリング状の帯電電極
間に電界を掛け、連続振動発生法によって、記録液体の
小滴を発生霧化させて記録する方式である。即ちこの方
式ではノズルと帯電電極間に掛ける電界強度を記録信号
に応じて変調することによって小滴の霧化状態を制御
し、記録画像の階調性を出して記録する。
第4の方式は、例えばUSP3747120に開示されている方
式(Stemme方式)で、この方式は前記3つの方式とは根
本的に原理が異なるものである。
即ち、前記3つの方式は、何れもノズルより吐出され
た記録液体の小滴を、飛翔している途中で電気的に制御
し、記録信号を担った小滴を選択的に記録部材上に付着
させて記録を行うのに対して、このStemme方式は、記録
信号に応じて吐出口より記録液体の小滴を吐出飛翔させ
て記録するものである。
つまり、Stemme方式は、記録液体を吐出する吐出口を
有する記録ヘッドに付設されているピエゾ振動素子に、
電気的な記録信号を印加し、この電気的記録信号をピエ
ゾ振動素子の機械的振動に変え、該機械的振動に従って
前記吐出口より記録液体の小滴を吐出飛翔させて記録部
材に付着させることで記録を行うものである。
これ等、従来の4つの方式は各々に特長を有するもの
であるが、又、他方において解決され得る可き点が存在
する。
即ち、前記第1から第3の方式は記録液体の小滴の発
生の直接的エネルギーが電気的エネルギーであり、又、
小滴の偏向制御も電界制御である。その為、第1の方式
は、構成上はシンプルであるが、小滴の発生に高電圧を
要し、又、記録ヘッドのマルチノズル化が困難であるの
で高速記録には不向きである。
第2の方式は、記録ヘッドのマルチノズル化が可能で
高速記録に向くが、構成上複雑であり、又記録液体小滴
の電気的制御が高度で困難であること、記録部材上にサ
テライトドットが生じ易いこと等の問題点がある。
第3の方式は、記録液体小滴を霧化することによって
階調性に優れた画像が記録され得る特長を有するが、他
方霧化状態の制御が困難であること、記録画像にカブリ
が生ずること及び記録ヘッドのマルチノズル化が困難
で、高速記録には不向きであること等の諸問題点が存す
る。
第4の方式は、第1乃至第3の方式に比べ利点を比較
的多く有する。即ち、構成上シンプルであること、オン
デマンド(on−demand)で記録液体をノズルの吐出口よ
り吐出して記録を行う為に、第1乃至第3の方式の様に
吐出飛翔する小滴の中、画像の記録に要さなかった小滴
を回収することが不要であること及び第1乃至第2の方
式の様に、導電性の記録液体を使用する必要性がなく記
録液体の物質上の自由度が大であること等の大きな利点
を有する。而乍ら、一方において、記録ヘッドの加工上
に問題があること、所望の共振数を有するピエゾ振動素
子の小型化が極めて困難であること等の理由から記録ヘ
ッドのマルチノズル化が難しく、又、ピエゾ振動素子の
機械的振動という機械的エネルギーによって記録液体小
滴の吐出飛翔を行うので高速記録には向かないこと、等
の欠点を有する。
このように従来の液体噴射記録方法には、構成上、高
速記録化上、記録ヘッドのマルチノズル化上、サテライ
トドットの発生及び記録画像のカブリ発生等の点におい
て、一長一短があって、その長所を利する用途にしか適
用し得ないという制約が存在していた。
しかし、この不都合も本出願人が先に提案したインク
ジェット記録方式を採用することによってほぼ解消する
ことができる。かかるインクジェット記録方式は、特公
昭56−9429号公報にその詳細が説明されているが、ここ
にそれを要約すれば、液室内のインクを加熱して気泡を
発生させてインクに圧力上昇を生じさせ、微細な毛細管
ノズルからインクを飛び出させて、記録するものであ
る。その後、この原理を利用して多くの発明がなされ
た。その中の1つとして、たとえば、特公昭59−31943
号公報がある。これは、発熱量調整構造を有する発熱部
を具備する電気熱変換体に階調情報を有する信号を印加
し、発熱部に信号に応じた熱量を発生させることにより
階調記録を行う事を特徴とするものであった。具体的に
は、保護層、蓄熱層、あるいは発熱体層の厚さが徐々に
変化するような構造としたり、あるいは発熱体層のパタ
ーン巾が徐々に変化するような構造としたものである。
第23図乃至第25図は、それぞれ上記特公昭59−31943
号公報の第4図乃至第6図に開示された電気熱変換体の
例を示す断面構造図で、図中、71は基板、72は蓄熱層、
73は発熱体、74,75は電極、76は保護膜で、第23図に示
した例は、保護膜76を電極74側より電極75に向って厚み
勾配をつけて設けることにより、発熱部Δlの表面よ
り、該表面に接触している液体に単位時間当りに作用す
る発熱量に勾配を設けたものである。
また、第24図に示した例は、蓄積層72の厚みを発熱部
Δlに於いて、AからBに向って徐々に減少させて、発
熱体73より発生される熱の基板71への放熱量に分布を与
え、発熱部Δlの表面に接触している液体へ与える単位
時間当りの熱量に勾配を設けたものである。
また、第25図に示した例は、発熱体73の厚みに発熱部
Δlに於いて勾配を設けて発熱体73を蓄積層62上に形成
するもので、AからBに至るまでの各部位に於ける抵抗
の変化によって、単位時間当りの発熱量を制御するもの
である。
また、第26図乃至第30図は、それぞれ上記特公昭59−
31943号公報の第9図乃至第13図に開示された電気熱変
換体の例を示す平面構造図で、図中、81は発熱部、82,8
3は電極で、第26図に示した例は、発熱部81の平面形状
を矩形とし、電極82と発熱部81との接続部を電極83と発
熱部81との接続部より小さくしたものである。第27図及
び第28図に示した例は、それぞれ発熱部81の中央部を両
端よりも細い平面形状となしたものである。また第29図
に示した例は、発熱部81の平面形状を台形となし、台形
の平行でない対向する辺に於いて図の様に電極82,83を
各々接続したものである。
また、第30図に示した例は、発熱部81の中央部を両端
より広い平面形状としたもので、これらの例は、発熱部
のAからBに向って電流密度に負の勾配を与える様に構
成し、印加される電力レベルを変えることによって、熱
作用部に生ずる急峻な液体の状態変化を制御することで
吐出される液滴の大きさを変え、これによって階調記録
を行うものである。
しかしながら、第23図〜第25図に示した例のような3
次元的構造を薄膜形成技術で形成することは、事実上不
可能に近く、又、仮にできたとしても、非常に高コスト
になるという欠点を有している。又、第26図〜第30図に
示したようにパターン巾を変えたものは、そのパターン
が最もせまくなるところで断線が生じやすく耐久性の面
から必ずしも良い結果は得られなかった。
一方、特開昭63−42872号公報にも類似の階調記録技
術の開示がある。これも特公昭59−31943号公報の技術
と同様に発熱体層に3次元構造をもたせることを特徴と
しており、製造が極めて困難であるという欠点を有して
いる。その他の階調記録技術として特公昭62−46358号
公報、特公昭62−46359号公報、特公昭62−48585号公報
が知られている。それらは、それぞれ1つの流路に配列
した複数個の発熱体より、所定数の発熱体を選択した
り、あるいは、発熱量の異なる複数の発熱体から1つを
選択して、発生する気泡の大きさを変えたり、複数の発
熱体への駆動信号の入力タイミングのズレを可変制御し
て吐出量を変えたりするものであった。しかしながら、
これらの技術では、複数個の発熱体が1つの流路あるい
は吐出口に対応しているため、それら複数個の発熱体に
接続される制御電極の数が増大して吐出口を高密度に配
列することが不可能であった。又、特開昭59−124863号
公報、特開昭59−124864号公報では、吐出のための発熱
体とは別の発熱体及び気泡発生部を有し、吐出量制御を
行う技術の開示があるが、これらも気泡発生部の存在故
に高密度配列が困難であるという欠点を有している。さ
らに特開昭63−42869号公報には、抵抗体に通電する時
間を変えることによって気泡の発生回数を変更して吐出
量を制御する技術が開示されている。しかしながら通常
のバブルジェットにおいては通電時間は数〜十数μsが
限界であり、それ以上の時間通電すると発熱体が断線す
るため、特開昭63−42869号公報の技術は、耐久性面で
事実上実現不可能である。
以上により、従来技術においては、階調記録を行うた
めに各種の試みがなされてきているが、製造上から、耐
久性から、あるいは、高密度配列面からみて必ずしも満
足のいく結果は得られていない。
目的 本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもの
で、第1の目的は製造が容易であり、耐久性にも優れ、
高密度配列が可能な階調記録が可能な液体噴射記録装置
を提供することにあり、他の目的は階調記録方法を提案
することにある。
構成 本発明は、上記目的を達成するために、(1)液体を
吐出して飛翔液滴を形成するための吐出口と、前記液体
を吐出するために前記液体に熱による状態変化を生じせ
しめるための電気熱変換体層と、該電気熱変換体層に電
気的に接続される1対の電極とを有する液体噴射記録ヘ
ッドを具備する液体噴射記録装置において、前記電気熱
変換体もしくはその近傍の電極の上に異なる熱伝導特性
を有する複数種類の薄膜を形成し、通電方向に熱勾配を
持つようにし、画像情報に応じて入力エネルギーを可変
としたこと、或いは、(2)液体を吐出して飛翔液滴を
形成するための吐出口と、前記液体を吐出するために前
記液体に熱による状態変化を生じせしめるための電気熱
変換体層と、該電気熱変換体層に電気的に接続される1
対の電極とを有する液体噴射記録ヘッドを使用する液体
噴射記録方法において、画像情報に応じて入力エネルギ
ーを変え、前記電気熱変換体もしくはその近傍の電極の
上に異なる熱伝導特性を有する複数種類の薄膜を形成
し、通電方向に熱勾配を生じせしめ、前記電気熱変換体
層上で発生する気泡の大きさを変えて前記吐出口より吐
出する液体の量を変えるようにしたことを特徴としたも
のである。以下、本発明の実施例に基いて説明する。
第17図は、本発明が適用されるインクジェットヘッド
の一例としてのバブルジェットヘッドの動作説明をする
ための図、第18図は、バブルジェットヘッドの一例を示
す斜視図、第19図は、第18図に示したヘッドを構成する
蓋基板(第19図(a))と発熱体基板(第19図(b))
に分解した時の斜視図、第20図は、第19図(a)に示し
た蓋基板を裏側から見た斜視図で、図中、21は蓋基板、
22は発熱体基板、23は記録液体流入口、24はオリフィ
ス、25は流路、26は液室を形成するための領域、27は個
別(独立)電極、28は共通電極、29は発熱体(ヒー
タ)、30はインク、31は気泡、32は飛翔インク滴で、本
発明は、斯様なバブルジェット式の液体噴射記録ヘッド
に適用するものである。
最初に、第17図を参照しながらバブルジェットによる
インク噴射について説明すると、 (a)は定常状態であり、オリフィス面でインク30の
表面張力と外圧とが平衡状態にある。
(b)はヒータ29が加熱されて、ヒータ29の表面温度
が急上昇し隣接インク層に沸騰現像が起きるまで加熱さ
れ、微小気泡31が点在している状態にある。
(c)はヒータ29の全面で急激に加熱された隣接イン
ク層が瞬時に気化し、沸騰膜を作り、この気泡31が生長
した状態である。この時、ノズル内の圧力は、気泡の生
長した分だけ上昇し、オリフィス面での外圧とのバラン
スがくずれ、オリフィスよりインク柱が生長し始める。
(d)は気泡が最大に生長した状態であり、オリフィ
ス面より気泡の体積に相当する分のインク30が押し出さ
れる。この時、ヒータ29には電流が流れていない状態に
あり、ヒータ29の表面温度は降下しつつある。気泡31の
体積の最大値は電気パルス印加のタイミングからややお
くれる。
(e)は気泡31がインクなどにより冷却されて収縮を
開始し始めた状態を示す。インク柱の先端部では押し出
された速度を保ちつつ前進し、後端部では気泡の収縮に
伴ってノズル内圧の減少によりオリフィス面からノズル
内へインクが逆流してインク柱にくびれが生じている。
(f)はさらに気泡31が収縮し、ヒータ面にインクが
接しヒータ面がさらに急激に冷却される状態にある。オ
リフィス面では、外圧がノズル内圧より高い状態になる
ためメニスカスが大きくノズル内に入り込んで来てい
る。インク柱の先端部は液滴になり記録紙の方向へ5〜
10m/secの速度で飛翔している。
(g)はオリフィスにインクが毛細管現象により再び
供給(リフィル)されて(a)の状態にもどる過程で、
気泡は完全に消滅している。
第21図は、上述のごとき液体噴射記録ヘッドの要部構
成を説明するための典型例を示す図で、 第21図(a)は、バブルジェット記録ヘッドのオリフ
ィス側から見た正面詳細部分図、第21(b)は、第21図
(a)に一点鎖線X−Xで示す部分で切断した場合の切
断面部分図である。
これらの図に示された記録ヘッド41は、その裏面に電
気熱変換体42が設けられている基板43上に、所定の線密
度で所定の巾と深さの溝が所定数設けられている溝付板
44を該基板43を覆うように接合することによって、液体
を飛翔させるためのオリフィス45を含む液吐出部46が形
成された構造を有している。液吐出部46は、オリフィス
45と電気熱変換体42より発生される熱エネルギーが液体
に作用して気泡を発生させ、その体積の膨張と収縮によ
る急激な状態変化を引き起こすところである熱作用部47
とを有する。
熱作用部47は、電気熱変換体42の熱発生部48の上部に
位置し、熱発生部48の液体と接触する面としての熱作用
面49をその低面としている。熱発生部48は、基体43上に
設けられた下部層50、該下部層50上に設けられた発熱抵
抗層51、該発熱抵抗層51上に設けられた上部層52とで構
成される。
発熱抵抗層51には、熱を発生させるために該層51に通
電するための電極53,54がその表面に設けられており、
これらの電極間の発熱抵抗層によって熱発生部48が形成
されている。
電極53は、各液吐出部の熱発生部に共通の電極であ
り、電極54は、各液吐出部の熱発生部を選択して発熱さ
せるための選択電極であって、液吐出部の液流路に沿っ
て設けられている。
保護層52は、熱発生部48においては発熱抵抗層51を、
使用する液体から化学的、物理的に保護するために発熱
抵抗層51と液吐出部46の液流路を満たしている液体とを
隔絶すると共に、液体を通じて電極53,54間が短絡する
のを防止し、更に隣接する電極間における電気的リーク
を防止する役目を有している。
各液吐出部に設けられている液流路は、各液吐出部の
上流において、液流路の一部を構成する共通液室(不図
示)を介して連通されている。各液吐出部に設けられた
電気熱変換体42に接続されている電極53,54はその設計
上の都合により、前記上部層に保護されて熱作用部の上
流側において前記共通液室下を通るように設けられてい
る。
第22図は、発熱抵抗体を用いる気泡発生手段の構造を
説明するための詳細図で、図中、61は発熱抵抗体、62は
電極、63は保護層、64は電源装置を示し、発熱抵抗体61
を構成する材料として、有用なものには、たとえば、タ
ンタルーSiO2の混合物、窒化タンタル、ニクロム、銀−
パラジウム合金、シリコン半導体、あるいはハフニウ
ム、ランタン、ジルコニウム、チタン、タンタル、タン
グステン、モリブデン、ニオブ、クロム、バナジウム等
の金属の硼化物があげられる。
これらの発熱抵抗体61を構成する材料の中、殊に金属
硼化物が優れたものとしてあげることができ、その中で
も最も特性の優れているのが、硼化ハフニウムであり、
次いで、硼化ジルコニウム、硼化ランタン、硼化タンタ
ル、硼化バナジウム、硼化ニオブの順となっている。
発熱抵抗体61は、上記の材料を用いて、電子ビーム蒸
着やスパッタリング等の手法を用いて形成することがで
きる。発熱抵抗体61の膜厚は、単位時間当りの発熱量が
所望通りとなるように、その面積、材質及び熱作用部分
の形状及び大きさ、更には実際面での消費電力等に従っ
て決定されるものであるが、通常の場合、0.001〜5μ
m、好適には0.01〜1μmとされる。
電極62を構成する材料としては、通常使用されている
電極材料の多くのものが有効に使用され、具体的には、
たとえばAl,Ag,Au,Pt,Cu等があげられ、これらを使用し
て蒸着等の手法で所定位置に、所定の大きさ、形状、厚
さで設けられる。
保護層63に要求される特性は、発熱抵抗体61で発生さ
れた熱を記録液体に効果的に伝達することを妨げずに、
記録液体より発熱抵抗体61を保護するということであ
る。保護層63を構成する材料として有用なものには、た
とえば酸化シリコン、窒化シリコン、酸化マグネシウ
ム、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウ
ム等があげられ、これらは、電子ビーム蒸着やスパッタ
リング等の手法を用いて形成することができる。保護層
63の膜厚は、通常は0.01〜10μm、好適には、0.1〜5
μm、最適には0.1〜3μmとされるのが望ましい。
以上のような原理、あるいは発熱体構造をもつバブル
ジェット技術において、本発明は、(1)液体を吐出し
て飛翔液滴を形成するための吐出口と、前記液体を吐出
するために前記液体に熱による状態変化を生じせしめる
ための電気熱変換体層と、該電気熱変換体層に電気的に
接続される1対の電極とを有する液体噴射記録ヘッドを
具備する液体噴射記録装置において、前記電気熱変換体
もしくはその近傍の電極の上に異なる熱伝導特性を有す
る複数種類の薄膜を形成し、通電方向に熱勾配を持つよ
うにし、画像情報に応じて入力エネルギーを可変とした
こと、或いは、(2)液体を吐出して飛翔液滴を形成す
るための吐出口と、前記液体を吐出するために前記液体
に熱による状態変化を生じせしめるための電気熱変換体
層と、該電気熱変換体層に電気的に接続される1対の電
極とを有する液体噴射記録ヘッドを使用する液体噴射記
録方法において、画像情報に応じて入力エネルギーを変
え、前記電気熱変換体もしくはその近傍の電極の上に異
なる熱伝導特性を有する複数種類の薄膜を形成し、通電
方向に熱勾配を生じせしめ、前記電気熱変換体層上で発
生する気泡の大きさを変えて前記吐出口より吐出する液
体の量を変えるようにしたことを特徴としたものであ
る。
第13図は、従来より知られているバブルジェット液体
噴射記録装置の発熱部を示したものである。(a)図は
平面図、(b)図は(a)図のB−B線断面図を示し、
図中、10は基板、11は蓄熱層、12は発熱体層、13は制御
電極、14はアース電極、15は保護層である。図が複雑に
なるのを避けるために、(a)図で保護層15を、また
(a)図および(b)図で電極保護層を省略してあるこ
とに注意されたい。
第14図は、第13図の発熱部に電流を流して加熱したと
きの、第13図中の点Aと点A′を結ぶ線上の温度分布を
示したものである。発熱部は一様に加熱されるので、点
Aと点A′を結ぶ線上の温度変化は小さい。
第15図は、第13図の発熱部に電流を流して加熱したと
きの、第13図中の発熱部と液体との接触面上の点Cと点
C′を結ぶ線上の温度分布を示したものである。点Aと
点A′を結ぶ線上の温度変化が小さいことを受けて、点
Cと点C′を結ぶ線上の温度変化も小さい。そのため、
発熱部と液体との接触面(熱作用面)上に、膜沸騰が生
じるための臨界温度に達した領域が出現してからその領
域が熱作用面の全面に広がるまでの時間は極めて短く、
また、ある印加電圧のもとで所定の時間電流を流したと
きに、膜沸騰が生じるための臨界温度に達した領域が小
さい場合に、印加電圧をわずかに大きくすると、同じ時
間電流を流したときに膜沸騰が生じるための臨界温度に
達した領域が熱作用面の全面に広がる。従って、通電時
間あるいは印加電圧によって熱作用面上の臨界温度に達
した領域の大きさを制御するのは困難である。すなわ
ち、従来のバブルジェットにおいては、膜沸騰によって
気泡が発生するあるいは発生しないという1か0かの2
値的な現象となりがちであり、連続的に気泡の大きさを
変えることが困難であった。
第16図は、第13図の発熱部に電流を流して加熱したと
きの、第13図中の点Aと点A″を結ぶ線上の温度分布を
示したものである。上述のように点Aと点A′を結ぶ線
は発熱部上にあるのでその線上での温度変化は小さい
が、点Aと点A″を結ぶ線は発熱部から遠ざかる方向に
伸びているのでその線上の温度変化は大きく、この温度
変化を利用して膜沸騰が生じるための臨界温度に達した
領域の大きさを制御すること、いいかえるならば、発生
する気泡の大きさを制御することは十分可能である。
本発明は、この点Aと点A″を結ぶ線上の温度変化と
同様の温度変化を熱作用面上に作り出すことによって、
熱作用面上で膜沸騰が生じるための臨界温度に達する領
域の大きさを制御しようとするものである。すなわち、
伝熱体と断熱体とをうまく組み合わせることによって、
発熱体層で発生した熱を熱作用面上に効果的に漏出させ
ることにより熱作用面上に熱勾配を作り出し、膜沸騰が
生じるための臨界温度に達した領域の大きさを制御でき
るようにしようとするものである。
第1図は、本発明によるバブルジェット液体噴射記録
装置の要部(発熱体部)構成図で、(a)図は平面図、
(b)図は(a)図のB−B線断面図を示し、図中、10
は基板、11は蓄熱層、12は発熱体層、13は制御電極、14
はアース電極、16は断熱体、17は伝熱体、18は絶縁層
で、本発明においては、第1図に示すように、アース電
極14側においては発熱体層12の電極で覆われていない部
分の上および絶縁層18を介してのアース電極14の上に伝
熱体17が、また、制御電極13側においては、発熱体層12
の電極で覆われていない部分の上および制御電極13の上
に断熱体16が設けてある。伝熱体17と断熱体16の厚さ
は、それぞれの材質、発熱領域の形状、印加電圧、通電
時間等にしたがって、熱作用面上の温度分布が最適にな
るように決定される。同様に、伝熱体と断熱体との境界
が置かれる発熱体層上の位置も、それぞれの材質、厚
さ、発熱領域の形状、印加電圧、通電時間等にしたがっ
て、熱作用面上の温度分布が最適になるように決定され
るが、発熱体層の電極13,14および絶縁層18で覆われて
いない部分の長さの、アース電極14側から1/5〜2/3の位
置に来るようにするのが好ましい。
第2図は、第1図に示した発熱体部に電流を流して加
熱したときの縦断面温度分布を等温曲線Tで示したもの
である。熱が熱伝導率の高い伝熱体、電極および発熱体
を通して拡散するため、伝熱体の発熱部に近い部分の温
度が高くなっている。一方、断熱体16が十分に厚けれ
ば、断熱体16に妨げられて断熱体16の上部にまで拡散す
る熱量は少なく、断熱体16の上面の温度上昇が抑制され
る。したがって、第1図中に示した点Dから伝熱体の上
面に添って点D′まで引いた線上の温度分布は第3図に
示したようになる。すなわち、点Dの近傍からオリフィ
ス方向に負の温度勾配ができる。
伝熱体を構成する材料としては、一般に熱伝導率が高
く、蒸着、スパッタリング等の薄膜形成およびフォトエ
ッチング等の微細加工が容易にできる材料であることが
好ましく、このような材料として、金、銀、銅、アルミ
ニウム、タングステン、クロム、ゲルマニウム、白金、
タンタル、チタン等が挙げられるが、本発明は特にこれ
らに限定されるものではない。断熱体を構成する材料と
しては、一般に熱伝導率が低く、蒸着、スパッタリング
等の薄膜形成およびフォトエッチング等の微細加工が容
易にできる材料であることが好ましく、たとえば、酸化
シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化チタ
ン、酸化タンタル、酸化マグネシウムその他が挙げら
れ、電子ビーム蒸着やスパッタリング等の手法で形成で
きる。
このような発熱体層近傍で温度勾配を持つヘッドに対
して、本発明では、更に、画像情報に応じて、発熱体層
への入力エネルギーを変えるようになっている。一般
に、バブルジェット技術においては発熱体層上で膜沸騰
現象により気泡が発生する際には、熱作用面の温度が瞬
時的にある臨界温度以上の温度になることが必要であ
る。この臨界温度以上になる領域の大きさを入力エネル
ギーによって変えることができれば、発生気泡の大きさ
を制御することができる。本発明のヘッドでは、第4図
に1,2で示したように、通電時間を長くするあるいは印
加電圧を大きくするにしたがって、膜沸騰が生じるため
の臨界温度に達した領域がオリフィス方向に伸びてい
く。第5図は、第1図の断面部に発生した気泡を点線で
示したもので、入力エネルギーを小さい値から大きい値
に変えてやることにより、膜沸騰による気泡発生の臨界
点位置が温度勾配に応じて順次移動するため、第5図の
点線で示したように、小さい気泡1から徐々に2,3とい
う具合に気泡19が大きくなるのである。
第6図に、入力エネルギーと発生する気泡の大きさの
関係を、第7図には、発生した気泡と吐出されるインク
量の関係を示す。入力エネルギーとしては、パルス電
圧、パルス巾のどちらを変えても良いが、瞬時的に膜沸
騰現象を利用して気泡を発生させるためには、パルス電
圧を変えるのが望ましい。ただし、パルス巾も最大30μ
sec程度までの範囲で変えるのであれば、実用上は問題
はない。
第8図は、本発明の別の実施例を説明するための図で
あり、(a)図は平面図、(b)図は(a)図のB−B
線断面図を示し、図中、10は基板、11は蓄熱層、12は発
熱体層、13は制御電極、14はアース電極、16は断熱体、
17は伝熱体、18は絶縁層である。この場合は、第1図の
場合と層構成は同じであるが、伝熱体と断熱体の位置関
係が第1図の場合と逆になっている。この場合は、熱作
用面上にできる温度勾配は、第1図の場合と逆向き、す
なわちオリフィス方向に正となる。この場合も気泡の大
きさを制御できるという点は、第1図の場合とまったく
同じであるが、第1図の場合の方が、気泡がオリフィス
側に拡大していくため、この場合より液体の吐出効率が
やや良い。
第9図は、本発明のさらに別の実施例を説明するため
の図であり、この場合は、アース電極14が伝熱体の一部
を兼ねている。第9図中には明示していないがアース電
極14と伝熱体17の間には電気の絶縁処理がなされてい
る。第9図の発熱体部に電流を流して加熱したときの縦
断面温度分布を、第10図に等温曲線Tにて示す。
第11図は、本発明のさらに別の実施例を説明するため
の図であり、この場合は、発熱体層12の一部が伝熱体を
兼ねている。
第12図は、本発明のさらに別の実施例を説明するため
の図であり、この場合は、断熱体16で覆われている発熱
体層12の下に放熱体20を設けてある。この放熱体20は、
断熱体で覆われている部分に熱がこもるのを防止する働
きをする。
以上に本発明の実施例について簡単に説明してきた
が、図が複雑になることを考慮して説明を省略した所が
ある。例えば、第1図、第5図、第8図の断面図
((b)図)および第9図、第12図、第13図において電
極がむき出しになっているところがあるが、これは適当
な保護膜(ポリイミド等)によってインクに直接接触し
ないようにすることが好ましい。また、第1図、第5
図、第8図、第9図、第12図の伝熱体および断熱体、第
11図の発熱体および断熱体についても同様に、もしイン
クに腐食されるような材料を使用する場合は、保護膜を
設けるべきである。また、第13図(a)の平面図におい
て、発熱体層上の保護膜が省略されているが、これも図
が複雑になるのを避けるためであり、実際には、保護膜
が存在する。
次に、第1図に示した液体噴射記録ヘッドの具体的な
製造方法について説明する。まず、熱酸化によりシリコ
ンウェハの表面にSiO2膜を2μm成長させて蓄熱層11と
した。次に、発熱体層12として、Ta2Nを2200Åスパッタ
リングした。次に、電極13、14としてAuを8000Å蒸着し
た。次に、電極14の上に、絶縁体としてSiO2を5000Åス
パッタリングした。次に、発熱体層の電極に覆われてい
ない部分の電極14側4分の1部分の上および絶縁体の上
に、伝熱体としてAlを10000Å蒸着した。次に、発熱体
層の電極または絶縁体に覆われていない部分および電極
13を覆うように、断熱体としてSiO2を15000Åスパッタ
リングした。さらに、伝熱体および断熱体の上に耐キャ
ビテーション層として、Taを3000Åスパッタリングし
た。これらの各膜形成途中においては周知のフォトリソ
技術、フォトエッチング技術を利用し、最終的な発熱体
のパターンは、24μm×80μmの長方形としている。な
お、電極幅は、発熱体パターンの短手方向の24μmであ
り、断熱体幅は、48μmである。
効果 以上の説明から明らかなように、請求項第1項に記載
の発明によると、従来より知られているバブルジェット
ヘッドの発熱体部分に薄膜形成技術、フォトリソ技術、
フォトエッチング技術等を用いて、平面的に伝熱体およ
び断熱体を形成できるので、製造が容易で、しかも高精
度にできる。また、請求項第2項に記載された発明によ
ると、上述のようにして形成されたヘッドを用いて入力
エネルギーを変えることにより、容易に吐出インク量を
制御できるため、階調記録が可能となる、等の利点があ
る。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明によるバブルジェット液体噴射記録装
置の発熱部の構成を示す図、第2図は、第1図に示した
発熱体部に電流を流して加熱した時の縦断面温度分布を
示す図、第3図は、伝熱体の上面に沿う温度分布を示す
図、第4図は、臨界温度領域を説明するための図、第5
図は、気泡発生の大きさを変える原理を説明するための
図、第6図は、入力エネルギーと気泡の大きさの関係を
示す図、第7図は、気泡の大きさと出力インク量の関係
を示す図、第8図及び第9図は、それぞれ本発明の他の
実施例を示す図、第10図は、第9図の発熱体部に電流を
流して加熱した時の縦断面温度分布を示す図、第11図及
び第12図は、それぞれ本発明の他の実施例を説明するた
めの図、第13図は、従来のバブルジェット液体噴射記録
装置の発熱部を説明するための図、第14図乃至第16図
は、それぞれ第13図に示した発熱体部上の温度分布を示
す図、第17図は、本発明が適用されるインクジェットヘ
ッドの一例としてのバブルジェットヘッドの動作説明を
するための図、第18図は、バブルジェットヘッドの一例
を示す斜視図、第19図は、分解斜視図、第20図は、蓋基
板を裏面から見た図、第21図は、バブルジェット記録ヘ
ッドの詳細を説明するための図、第22図は、発熱抵抗体
を用いた気泡発生手段の構造を説明するための図、第23
図乃至第30図は、それぞれ従来の発熱体層の構成を示す
図で、第23図乃至第25図は、保護層、蓄熱層、或いは、
発熱体層の厚を徐々に変えるようにした例、第26図乃至
第30図は、発熱体層のパターン巾を徐々に変えるように
した例である。 10……基板、11……蓄熱層、12……発熱体層、13……制
御電極、14……アース電極、15……保護層、16……断熱
体、17……伝熱体、18……絶縁層、19……気泡、20……
放熱体。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 渡辺 好夫 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株 式会社リコー内 (72)発明者 門永 雅史 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株 式会社リコー内 (72)発明者 堀家 正紀 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株 式会社リコー内 (56)参考文献 特開 平3−224742(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B41J 2/05 B41J 2/205

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】液体を吐出して飛翔液滴を形成するための
    吐出口と、前記液体を吐出するために前記液体に熱によ
    る状態変化を生じせしめるための電気熱変換体層と、該
    電気熱変換体層に電気的に接続される1対の電極とを有
    する液体噴射記録ヘッドを具備する液体噴射記録装置に
    おいて、前記電気熱変換体もしくはその近傍の電極の上
    に異なる熱伝導特性を有する複数種類の薄膜を形成し、
    通電方向に熱勾配を持つようにし、画像情報に応じて入
    力エネルギーを可変としたことを特徴とする液体噴射記
    録装置。
  2. 【請求項2】液体を吐出して飛翔液滴を形成するための
    吐出口と、前記液体を吐出するために前記液体に熱によ
    る状態変化を生じせしめるための電気熱変換体層と、該
    電気熱変換体層に電気的に接続される1対の電極とを有
    する液体噴射記録ヘッドを使用する液体噴射記録方法に
    おいて、画像情報に応じて入力エネルギーを変え、前記
    電気熱変換体もしくはその近傍の電極の上に異なる熱伝
    導特性を有する複数種類の薄膜を形成し、通電方向に熱
    勾配を生じせしめ、前記電気熱変換体層上で発生する気
    泡の大きさを変えて前記吐出口より吐出する液体の量を
    変えるようにしたことを特徴とする液体噴射記録方法。
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