JP2000043269A - 液体噴射記録ヘッド及び方法 - Google Patents

液体噴射記録ヘッド及び方法

Info

Publication number
JP2000043269A
JP2000043269A JP21699898A JP21699898A JP2000043269A JP 2000043269 A JP2000043269 A JP 2000043269A JP 21699898 A JP21699898 A JP 21699898A JP 21699898 A JP21699898 A JP 21699898A JP 2000043269 A JP2000043269 A JP 2000043269A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
liquid
heat
recording
recording head
heating elements
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP21699898A
Other languages
English (en)
Inventor
Takuro Sekiya
卓朗 関谷
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ricoh Co Ltd
Original Assignee
Ricoh Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Ricoh Co Ltd filed Critical Ricoh Co Ltd
Priority to JP21699898A priority Critical patent/JP2000043269A/ja
Publication of JP2000043269A publication Critical patent/JP2000043269A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来2値記録しかできなかった液体噴射記録
ヘッド(バブルジェット型インクジェット記録ヘッド)
において、階調記録(多値記録)を可能にし、かつ、そ
の階調幅を広くする。 【解決手段】 熱エネルギー作用部を設けた流路、該流
路に記録液体を導入するための液室、及び、該液室に記
録液体を導入する手段を備え、導入される記録液体を前
記熱エネルギー作用部により加熱して気泡を発生させ、
該気泡の体積増加にともなう作用力により、前記記録液
体を吐出口から吐出するようにした液体噴射記録ヘッド
おいて、前記熱エネルギー作用部を、独立に駆動可能で
かつ前記吐出口からほぼ等距離のところに配置した2つ
の発熱体111,112で構成し、かつ、一方の発熱体の
発熱能力を他方のそれの1倍より大きく2倍より小さく
した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液体噴射記録ヘッ
ド、より詳細には、バブルジェット型の液体噴射記録ヘ
ッドならびにその記録ヘッドを用いた階調記録を行う記
録方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ノンインパクト記録法は、記録時におけ
る騒音の発生が無視し得る程度に極めて小さいという点
において、最近関心を集めている。その中で高速記録が
可能であり、しかも、所謂普通紙に特別の定着処理を必
要とせずに記録の行える所謂インクジェット記録法は、
極めて有力な記録法であって、これまでにも様々な方式
が提案され、改良が加えられて商品化されたものもあれ
ば、現在もなお実用化への努力が続けられているものも
ある。このようなインクジェット記録法は、所謂インク
と称される記録液体の小滴(droplet)を飛翔させ記録
部材に付着させて記録を行うものであって、この記録液
体の小滴の発生法及び発生された記録液体小滴の飛翔方
向を制御するための制御方法によって、幾つかの方式に
大別される。
【0003】先ず、第1の方法は、例えば米国特許第3
060429号明細書に開示されているもの(Tele typ
e方式)であって、記録液体の小滴の発生を静電吸引的
に行い、発生した記録液体小滴を記録信号に応じて電界
制御し、記録部材上に記録液体小滴を選択的に付着させ
て記録を行うものである。これに就いて更に詳述すれ
ば、吐出口と加速電極に電解をかけて、一様に帯電した
記録液体の小滴を吐出口より吐出させ、該吐出した記録
液体の小滴を記録信号に応じて電気制御可能なように構
成されたxy偏向電極間を飛翔させ、電界の強度変化に
よって選択的に小滴を記録部材上に付着させて記録を行
うものである。
【0004】第2の方法は、例えば、米国特許第359
6275号明細書,米国特許第3298030号明細書
等に開示されている方式(Sweet方式)であって、
連続振動発生法によって帯電量の制御された記録液体の
小滴を発生させ、この発生された帯電量の制御された小
滴を一様の電界がかけられている偏向電極間を飛翔させ
ることで、記録部材上に記録を行うものである。具体的
には、ピエゾ振動素子の付設されている記録ヘッドを構
成する一部である吐出口の前に、記録信号が印加されて
いるように構成した帯電電極を所定距離だけ離して配置
し、前記ピエゾ振動素子に一定周波数の電気信号を印加
することでピエゾ振動素子を機械的に振動させ、前記吐
出口より記録液体の小滴を吐出させる。この時前記帯電
電極によって吐出する記録液体小滴には電荷が静電誘導
され、小滴は記録信号に応じた電荷量で帯電される。帯
電量の制御された記録液体の小滴は、一定の電界が一様
にかけられている偏向電極間を飛翔するとき付加された
帯電量に応じて偏向を受け、記録信号を担う小滴のみが
記録部材上に付着し得るようにされている。
【0005】第3の方式は、例えば米国特許第3416
153号明細書に開示されている方式(Hertz)で
あって、吐出口とリング状の帯電電極間に電界をかけ、
連続振動発生法によって記録液体の小滴を発生霧化させ
て記録する方式である。即ちこの方式では、吐出口と帯
電電極間にかける電界強度を記録信号に応じて変調する
ことによって小滴の霧化状態を制御し、記録画像の階調
性を出して記録する。
【0006】第4の方式は、例えば米国特許第3747
120号明細書に開示されている方式(Stemme方
式)で、この方式は前記3つの方式とは根本的に原理が
異なるものである。即ち前記3つの方式は、何れも吐出
口より吐出された記録液体の小滴を飛翔している途中で
電気的に制御し、記録信号を担った小滴を選択的に記録
部材上に付着させて記録を行うのに対して、このSte
mme方式は、記録信号に応じて吐出口より記録液体の
小滴を吐出飛翔させて記録するものである。つまり、S
temme方式は、記録液体を吐出する吐出口を有する
記録ヘッドに付設されているピエゾ振動素子に電気的な
記録信号を印加し、この電気的記録信号をピエゾ振動素
子の機械的振動に変え、該機械的振動に従って前記吐出
口より記録液体の小滴を吐出飛翔させて記録部材に付着
させることで行うものである。
【0007】これ等従来の4つの方式は各々に特徴を有
するものであるが、また他方において、解決され得るべ
き点が存在する。即ち前記第1から第3の方式は、記録
液体の小滴の発生の直接的エネルギーが電気エネルギー
であり、また小滴の偏向制御も電界制御である。そのた
め第1の方式は構成上はシンプルであるが、小滴の発生
に高電圧を要し、また記録ヘッドのマルチノズル化が困
難である。従って、高速記録には不向きである。
【0008】第2の方式は記録ヘッドのマルチノズル化
が可能で高速記録に向くが、構成上複雑であり、また記
録液体小滴の電気的制御が高度で困難であること,記録
部材上にサテライトドットが生じやすいこと等の問題点
がある。
【0009】第3の方式は記録液体小滴を霧化すること
によって階調性に優れた画像を記録できる特徴を有する
が、他方霧化状態の制御が困難であること,記録画像に
カブリが生ずることおよび記録ヘッドのマルチノズル化
が困難で高速記録には不向きであること等の諸問題点が
存在する。
【0010】第4の方式は第1乃至第3の方式に比べて
利点を比較的多く有する。即ち構成上シンプルであるこ
と,オンデマンド(on−demand)で記録液体を
吐出口より吐出して記録を行うために、第1乃至第3の
方式のように吐出飛翔する小滴の中、画像の記録に要さ
なかった小滴を回収することが不要であることおよび第
1乃至第2の方式のように導電性の記録液体を使用する
必要性がなく、記録液体の物質上の自由度が大であるこ
と等の大きな利点を有する。しかしながら、一方におい
て記録ヘッドの加工上に問題があること,所望の共振数
を有するピエゾ振動素子の小型化が極めて困難であるこ
と等の理由から、記録ヘッドのマルチノズル化が難し
く、またピエゾ振動素子の機械的振動という機械的エネ
ルギーによって記録液体小滴の吐出飛翔を行うので、高
速記録には向かないこと等の欠点を有する。
【0011】更には特開昭48−9622号公報(前記
米国特許第3747120号明細書に対応)には、変形
例として前記ピエゾ振動素子等の手段による機械的振動
エネルギーを利用する代わりに熱エネルギーを利用する
ことが記載されている。即ち上記公報には、圧力上昇を
生じさせる蒸気を発生するために液体を直接加熱する加
熱コイルをピエゾ振動素子の代わりの圧力上昇手段とし
て使用する、所謂バブルジェットの液体噴射記録装置が
記載されている。
【0012】しかし、上記公報には、圧力上昇手段とし
ての加熱コイルに通電して液体インクが出入りし得る口
が一つしかない袋状のインク室(液室)内の液体インク
を、直接加熱して蒸気化することが記載されているにす
ぎず、連続繰り返し液吐出を行う場合はどのように加熱
すれば良いかについては何等示唆されるところがない。
加えて加熱コイルが設けられている位置は、液体インク
の供給路から遙かに遠い袋状液室の最深部に設けられて
いるので、ヘッド構造上複雑であるのに加えて、高速で
の連続繰り返し使用には不向きとなっている。しかも、
上記公報に記載の技術内容からでは、実用上重要である
発生する熱で液吐出を行った後に、次の液吐出の準備状
態を速やかに形成することはできない。このように、従
来法には、構成上,高速記録化,記録ヘッドのマルチノ
ズル化上,サテライトドットの発生および記録画像のカ
ブリ発生等の点において一長一短があって、その長所を
利用する用途にしか適用し得ないという制約が存在して
いた。
【0013】しかしながら、これも先に本出願人が提案
した方式(特公昭56−9429号公報参照)によって
解消される。この公報記載のものは、液室内のインクを
加熱してインクの中で気泡を発生せしめ、その気泡の作
用力により吐出口よりインク滴を吐出させる、いわゆる
バブルジェット型インクジェット記録装置の基本となる
ものである。
【0014】而して、このようなバブルジェット型イン
クジェット記録装置においては、その気泡の発生メカニ
ズムは、伝熱理倫の分野で知られているいわゆる膜沸騰
現象を利用しているものであり、この膜沸騰現象によっ
て、発生する気泡は、発生〜消滅の再現性が非常に良
く、インクジェットのインク噴射の原動力としては最適
のものである。しかしながら、その気泡の発生〜消滅の
挙動は、1か0か(気泡が発生する/消滅する)という
ように2値的な挙動であって、気泡の大きさを変化させ
ることは困難である。よって、このようなバブルジェッ
ト型インクジェット記録装置は、2値記録に適した記録
方法である。
【0015】しかしながら、近年市場ではより高画質が
要求されるようになり、単なる2値記録画像ではなく、
いわゆる階調記録が必要になってきている。そして、こ
のような階調記録を実現するための1方法として、例え
ば、特開昭55−132259号公報に開示されている
方法がある。それによれば、少なくとも2つの独立に信
号を入力し得る発熱体の各々に入力される信号の入力タ
イミングを適宜ずらすことによって、階調記録を行うと
いうものである。つまり、2つの発熱体で、2つの気泡
を発生させ、その発生タイミングをずらして、吐出口よ
り吐出させるインク滴の量を微妙に変化させようという
ものである。
【0016】この考え方は、アイデアとしてはおもしろ
いものではあるがもともと2値的な挙動をとる気泡に、
アナログ的な作用を持たせようとするにはやはり無理が
あり、吐出インク滴の量を変化させることは、必ずしも
再現良く実現できなかった。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述のごと
き実情に鑑みてなされたもので、その目的は、第1に、
従来、2値記録しかできなかったバブルジェット型イン
クジェット記録ヘッドにおいて、階調記録(多値記録)
を可能とし、さらにその階調幅を広くできるような構造
を提案することにある。また、第2に、従来、2値記録
しかできなかったバブルジェット型インクジェット方式
による記録方法において、階調記録(多値記録)を可能
とし、さらにその階調幅を広くできるような方法を提案
することにある。さらに、第3に、このような方式によ
る記録方法において、階調記録(多値記録)を可能と
し、さらにその階調幅を広くできるような方法のより具
体的な方法を提案することにある。
【0018】また、第4に、このような記録ヘッドにお
いて、階調記録(多値記録)を可能とし、さらにその階
調幅を広くできるような構造をより具体的に提案するこ
とにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、熱エ
ネルギー作用部を設けた流路、該流路に記録液体を導入
するための液室、及び、該液室に記録液体を導入する手
段を備え、導入される記録液体を前記熱エネルギー作用
部により加熱して気泡を発生させ、該気泡の体積増加に
ともなう作用力により、前記記録液体を前記熱エネルギ
ー作用部面とほぼ平行方向に吐出口から液滴として吐出
させる液体噴射記録ヘッドにおいて、前記熱エネルギー
作用部は、前記吐出口からほぼ等距離に配置され、独立
駆動が可能で、発熱能力が異なる2つの発熱体からな
り、該2つの発熱体のうち一方の発熱体の発熱能力は他
方のそれの1倍より大きく2倍より小さいことを特徴と
する液体噴射記録ヘッドである。
【0020】請求項2の発明は、吐出口から等距離に配
置しかつ一方の発熱体の発熱能力が他方のそれの1倍よ
り大きく2倍より小さい2つの発熱体からなる熱エネル
ギー作用部を備えた流路中において、導入される記録液
体に前記熱エネルギー作用部によって気泡を発生させ、
該気泡の体積増加にともなう作用力により、前記記録液
体を前記吐出口から熱エネルギー作用部面とほぼ平行方
向に液滴として吐出させ、記録体に前記液滴を付着させ
て記録を行う液体噴射記録方法において、前記2つの発
熱体を、画像情報に応じて独立、あるいは共同して駆動
することにより、発生させる気泡の大きさを変え、前記
吐出口から吐出する液滴の質量を変えて階調記録を行う
ことを特徴とする液体噴射記録方法である。
【0021】請求項3の発明は、請求項1に記載の液体
噴射記録ヘッドにおいて、前記2つの発熱体への入力エ
ネルギーは同一ではないことを特徴とする液体噴射記録
ヘッドである。
【0022】請求項4の発明は、請求項1に記載の液体
噴射記録ヘッドにおいて、前記2つの発熱体の発熱面積
が異なることを特徴とする液体噴射記録ヘッドである。
【0023】請求項5の発明は、請求項1又は4に記載
の液体噴射記録ヘッドにおいて、前記2つの発熱体の抵
抗値が異なることを特徴とする液体噴射記録ヘッドであ
る。
【0024】請求項6の発明は、請求項1又は4又は5
のいずれかに記載の液体噴射記録ヘッド前記2つの発熱
体の発熱層厚さが異なることを特徴とする液体噴射記録
ヘッドである。
【0025】請求項7の発明は、請求項1又は4乃至6
のいずれかに記載の液体噴射記録ヘッドにおいて、前記
2つの発熱体の発熱層組成が異なることを特徴とする液
体噴射記録ヘッドである。
【0026】請求項8の発明は、請求項1又は4乃至7
のいずれかに記載の液体噴射記録ヘッドにおいて、前記
2つの発熱体の放熱能力が異なることを特徴とする液体
噴射記録ヘッドである。
【0027】請求項9の発明は、請求項1又は4乃至8
のいずれかに記載の液体噴射記録ヘッドにおいて、前記
2つの発熱体に接続される電極の熱容量が異なることを
特徴とする液体噴射記録ヘッドである。
【0028】請求項10の発明は、請求項1又は4乃至
9のいずれかに記載の液体噴射記録ヘッドにおいて、前
記2つの発熱体が形成される領域の蓄熱層の厚さが異な
ることを特徴とする液体噴射記録ヘッドである。
【0029】請求項11の発明は、請求項1又は4乃至
10のいずれかに記載の液体噴射記録ヘッドにおいて、
前記2つの発熱体のどちらか一方に放熱体を設けること
を特徴とする液体噴射記録ヘッドである。
【0030】請求項12の発明は、請求項1又は4乃至
10のいずれかに記載の液体噴射記録ヘッドにおいて、
前記2つの発熱体にそれぞれ放熱能力の異なる放熱体を
設けることを特徴とする液体噴射記録ヘッドである。
【0031】請求項13の発明は、請求項1又は4乃至
12のいずれかに記載の液体噴射記録ヘッドにおいて、
前記2つの発熱体の保護層の厚さが異なることを特徴と
する液体噴射記録ヘッドである。
【0032】
【発明の実施の形態】(請求項1,2の発明)以下、順
に説明する。最初に本発明が適用されるインクジェット
の構成及び原理について、図を用いて説明する。図1
は、本発明が適用されるバブルジェット型記録ヘッドの
一例を説明するための分解斜視図であって、図1(A)
はヘッド斜視図、図1(B)はヘッドを構成する蓋基板
の斜視図、図1(C)は発熱体基板の斜視図、図1
(D)は蓋基盤を裏側から見た斜視図であり、図中、1
01は蓋基板、102は発熱体基板、103は記録液体
流入口、104は吐出口、105は流路、106は液室
を形成するための領域、107は個別(独立)の制御電
極、108は共通電極、109は発熱体である。
【0033】図2は、本発明が好適に適用される熱を利
用するいわゆるバブルジェット方式のインクジェットの
インク滴吐出の原理を説明するための図である。図2
(A)は定常状態であり、吐出口面でインク110の表
面張力と外圧とが平衡状態にある。図2(B)は発熱体
109が加熱されて、発熱体109の表面温度が急上昇
し隣接インク層に沸騰現象が起きるまで加熱され、微小
気泡111が点在している状態にある。図2(C)は発
熱体109の全面で急激に加熱された隣接インク層が瞬
時に気化し、沸騰膜を作り、この気泡111が成長した
状態である。この時、吐出口内の圧力は、気泡の成長し
た分だけ上昇し、吐出口面での外圧とのバランスがくず
れ、吐出口よりインク柱が成長し始める。図2(D)は
気泡が最大に成長した状態であり、吐出口面より気泡の
体積に相当する分のインク110が押し出される。この
時、発熱体109には電流が流れていない状態にあり、
発熱体109の表面温度は降下しつつある。気泡111
の体積の最大値は電気パルス印加のタイミングからやや
遅れる。
【0034】図2(E)は気泡111がインクなどによ
り冷却されて収縮を開始し始めた状態を示す。インク柱
の先端部では押し出された速度を保ちつつ前進し、後端
部では気泡の収縮に伴って吐出内口圧の減少により吐出
口面から吐口内へインクが逆流してインク柱にくびれが
生じている。図2(F)はさらに気泡111が収縮し、
発熱体面にインクが接し発熱体面がさらに急激に冷却さ
れる状態にある。吐出口面では、外圧が吐出口内圧より
高い状態になるため、メニスカスが大きく吐出口内に入
り込んできている。インク柱の先端部は液滴112にな
り記録紙の方向へ5〜10m/secの速度で飛翔して
いる。
【0035】図2(G)は吐出口にインクが毛細管現象
により再び供給(リフィル)されて図2(A)の状態に
戻る過程で、気泡は完全に消滅している。以上が、従来
より知られている熱を利用したバブルジェット型記録ヘ
ッドの一般的な構成,原理であるが、本発明は、1つの
吐出口に対して、該吐出口からほぼ等距離に配設され、
独立駆動が可能で、発熱能力が異なる2つの発熱体を有
し、階調記録を可能としたインクジェットヘッドを提案
するものである。図3に本発明の発熱体基板の一例を示
す。本発明は、図1(C)の発熱体109をそれぞれ独
立駆動可能な2つの発熱体11(111,112)にした
いものというように理解される。71,72はそれぞれに
対応した制御電極、8は共通電極である。
【0036】図4は、本発明に使用する発熱体基板につ
いて説明するための図である。図4(A)はインクジェ
ットヘッドの吐出口側から見た正面詳細部分図、図4
(B)は図4(A)をB−B線で切断した場合の切断面
部分図である。図4に示された記録ヘッド10は、その
表面に発熱体11(111,112)が設けられている基
板12上に、所定の線密度で、所定の幅と深さの溝が所
定数設けられている流路基板13を、基板12を覆うよ
うに接合することによって、液体を飛翔させるための吐
出口14(141,142,143)を含む液吐出部15
が形成された構造を有している。液吐出部15は、吐出
口14と発熱体11より発生される熱エネルギーが液体
に作用して気泡を発生させ、その体積の膨張と収縮によ
る急激な状態変化を引き起こすところである熱作用部1
6とを有する。
【0037】なお発熱体11(111,112)は、前述
のように1つの吐出口14に対して、該吐出口14から
ほぼ等距離に配設され、独立駆動が可能で、発熱能力が
異なる2つの発熱体であり、画像情報に応じて、発熱体
111,あるいは発熱体112をそれぞれ単独で駆動した
り、あるいは発熱体111及び発熱体112を同時に駆動
する。
【0038】熱作用部16は、発熱体11の熱発生部1
7の上部に位置し、熱発生部17の液体と接触する面と
しての熱作用面18をその底面としている。熱発生部1
7は、基板12上に設けられた下部層19,該下部層1
9上に設けられた発熱抵抗層20(20−11,20−
2,20−21,20−22,20−31,20−
2),該発熱体抵抗層20上に設けられた上部層21
とで構成される。発熱抵抗層20(20−11,20−
2,20−21,20−22,20−31,20−32
には、熱を発生させるために該層20に通電させるため
の電極22,23がその表面に設けられており、これら
の電極間の発熱抵抗層20によって熱発生部17が形成
されている。
【0039】上部層21は、熱発生部17においては、
発熱抵抗層20を使用する液体から化学的,物理的に保
護するために、発熱抵抗層20と液吐出部15の液流路
を満たしている液体とを隔絶するとともに、液体を通じ
て電極22,23間が短絡するのを防止し、さらに、隣
接する電極間における電気的リークを防止する役目を有
している。上部層21は、上記のような機能を有するも
のであるが、発熱抵抗層20が耐液性であり、かつ液体
を通じて電極22,23間が電気的に短絡する必要が全
くない場合には、必ずしも設ける必要はなく、発熱抵抗
層20の表面に直ちに液体が接触する構造の発熱体とし
て設計してもよい。
【0040】下部層19は、熱容量制御機能を有する。
すなわち、この下部層19は液滴吐出の際には、発熱抵
抗層20で発生する熱が基板12側に伝導するよりも、
熱作用部18側に伝導する割合ができる限り多くなり、
液滴吐出後、つまり発熱抵抗層20への通電がOFFさ
れた後には、熱作用部18及び熱発生部17にある熱が
速やかに基板12側に放出されて、熱作用部16にある
液体および発生した気泡が急冷されるために設けられ
る。つまり、気泡発生時には蓄熱機能を持ち、気泡消滅
時には放熱機能を持つ。
【0041】具体的な材料としては、例えば基板として
シリコンを用いる場合には、熱酸化によってシリコン基
板上に成長させられるSiO2、あるいはスパッタリン
グによって形成されるSiO2が挙げられる。そして、
それらの厚さは1μm〜10μmとされる。他に基板と
してガラス等が用いられる場合は、スパッタリングによ
って形成されるSiO2を用いてもよいし、ガラス自体
がその主成分がSiO2であるため、特別にSiO2を形
成することなく、基板そのものを下部層19と兼用して
もよい。他にアルミナを基板として用いる場合には、ガ
ラス質のいわゆるグレース層が用いられる。
【0042】発熱抵抗層20を構成する材料として有用
なものには、タンタル−SiO2の混合物,窒化タンタ
ル,ニクロム,銀−パラジウム合金,シリコン半導体、
あるいはハフニウム,ランタン,ジルコニウム,チタ
ン,タンタル,タングステン,モリブデン,ニオブ,ク
ロム,バナジウム等の金属の硼化物が挙げられる。発熱
抵抗層20を構成するこれらの材料の中、殊に金属硼化
物を優れたものとして挙げることができ、その中でも最
も特性の優れているのが硼化ハフニウムであり、次い
で、硼化ジルコニウム,硼化ランタン,硼化タンタル,
硼化バナジウム,硼化ニオブの順となっている。
【0043】発熱抵抗層20は、上記の材料を用いて、
電子ビーム蒸発やスパッタリング等の手法を用いて形成
することができる。発熱抵抗層20の膜厚は、単位時間
あたりの発熱量が所望通りとなるように、その面積,材
質および熱作用部分の形状及び大きさ、さらには実際面
での消費電力等にしたがって決定されるものであるが、
通常の場合、0.001μm〜5μm、好適には、0.0
1μm〜1μmとされる。本発明では、一例として、H
fB2を2000Å(0.2μm)スパッタリングした。
【0044】電極22,23を構成する材料としては、
通常使用されている電極材料の多くのものが有効に使用
され、具体的には、例えば、Al,Ag,Au,Pt,
Cu等があげられ、これらを使用して、蒸着等の手法で
所定位置に所定の大きさ,形状,厚さで設けられる。本
発明では、Alをスパッタリングにより1.4μm形成
した。
【0045】保護層(上部層)21に要求される特性
は、発熱抵抗層20で発生された熱を記録液体に効果的
に伝達することを妨げずに、記録液体より発熱抵抗層2
0を保護するということである。保護層21を構成する
材料として有用なものには、例えば酸化シリコン,窒化
シリコン,酸化マグネシウム,酸化アルミニウム,酸化
タンタル,酸化ジルコニウム等が挙げられる。これら
は、電子ビーム蒸着やスパッタリング等の手法を用いて
形成することができる。また、炭化ケイ素,酸化アルミ
ニウム(アルミナ)等のセラミック材料も好適に用いら
れる材料である。保護膜層21の膜圧は、通常は、0.
01μm〜10μm、好適には、0.1μm〜5μm、
最適には0.1μm〜3μmとされるのが望ましい。本
発明では、スパッタリングにより、SiO2を1.2μm
形成した。
【0046】このように形成した発熱体基板は、図1に
示したように、流路基板を積層してインクジェットヘッ
ドとして完成する。前述のように、本発明と類似の構成
の液体噴射記録方法が、特開昭55−132259号公
報に開示されているが、その方法は、2つの発熱体(発
熱体)で、2つの気泡を発生させ、その発生タイミング
をずらして、吐出口より吐出させるインク滴の量を微妙
に変化させようというものであるが、もともと2値的な
挙動をとる気泡に、アナログ的な作用を持たせようとす
るにはやはり無理があり、吐出インク滴の量を変化させ
ることは、必ずしも再現良く実現できなかった。
【0047】そこで、本発明では、1の吐出口に対して
2つの発熱体を有し、それら2つの発熱体はそれぞれ異
なる発熱能力を有するようにしている。そして、それら
2つの発熱体をそれぞれ単独で、あるいは同時に駆動し
て、それぞれの場合に流路内で異なる大きさの気泡を発
生させ、それによって吐出口より吐出させるインク滴の
量を変え、階調記録を行うというものである。
【0048】2つの発熱体がそれぞれ異なる発熱能力を
有するようにしているのは、 階調幅を増やすためであ
る。今、2つの発熱体が同じ発熱能力を有するものとし
た場合、とりうる階調段階は3段階である。つまり、1
つの発熱体の発熱能力をJとすると、0,J,2Jの3
段階に発熱状態をとることが可能である(3値)。
【0049】一方、本発明のように、2つの発熱体の発
熱能力が異なるようにした場合は、4段階に発熱状態を
とることができる。つまり、第1の発熱体の発熱能力を
J1、第2の発熱体の発熱能力をJ2とすると、本発明
では、画像情報に応じて、0,J1,J2,J1+J2
の段階に発熱状態をとることができる(4値)。
【0050】本発明では、さらに2つの発熱体の発熱能
力差が、一方の1倍より大きく2倍より小さいようにし
ている。これは、2値から3値の間における階調変化幅
が大きくなりすぎないようにするためである。具体例を
挙げて説明する。今、J1の発熱能力を1、J2の発熱
能力を2.5とする(これは本発明の範囲からはずれる
例である)と、その発熱状態は0,1,2.5,3.5と
いうように4値となる。しかしながら、2値から3値の
間における階調変化幅は、1から急に2.5になり、変
化率が大きすぎ(2.5倍)、滑らかな階調変化が得ら
れなくなり、画像としてみた場合、疑似輪郭が発生する
という不具合がある。
【0051】一方、例えば、J1の発熱能力を1,J2
の発熱能力を1.5とする(これは本発明の範囲に入る
例である)と、その発熱状態は、0,1,1.5,2.5
というように4値となり、2値から3値の間における階
調変化幅は、1から1.5になり、変化率が大きすぎる
ということはなく(1.5倍)、滑らかな階調変化が得
られ、画像としてみた場合、疑似輪郭はほとんどみられ
ない。もちろんこの例では、J2の発熱能力を1.5と
したが、その発熱知能力を2に近い、例えば1.9とす
ると、2値から3値の間における階調変化幅は、1から
1.9になり、変化率も1.9倍であり、次第に階調変化
の滑らかさはなくなっていくが、それでもその変化率が
2倍より小さければ実用的な範囲であることが実験的に
わかっている。
【0052】本発明では、さらに2つの発熱体は、吐出
口からほぼ等距離に配設するようにしている。具体的に
は、図3に示したように、2つの発熱体111,112
パラレルにならべればよいが、一方で1つの吐出口に対
して、2つあるいはそれ以上の発熱体を設ける例とし
て、図5に示すように、シリーズにならべる方法も考え
られる。
【0053】この図5の方法は、本発明に比べて、1つ
の吐出口に対して、2つあるいはそれ以上の発熱体を設
けることが容易(本発明のような発熱体の配列方法は、
実用的には2つが限界であり、それ以上の数の発熱体を
設けることは困難)に見えて、一見良さそうに見える
が、実際には、安定したインク滴吐出を行うには、吐出
口発熱体間の距離が重要であり、安定したインク滴吐出
が得られる距離は、その許容値があまり大きくなく、2
つの発熱体を設けた場合、それらと吐出口での距離はほ
ぼ等距離にするのが望ましい。
【0054】つまり、図5のような発熱体の配列方法
は、一見、2つ以上の多くの発熱体(111,112,1
3)をならべることができて、本発明よりも良い方法
に見えるが、実は発熱体だけは2つ以上並べることがで
きても、安定したインク滴吐出ができるのは吐出口発熱
体間の距離が最適になっている1個の発熱体だけであ
り、良好なインク滴吐出を行うには不向きな構成といえ
る。
【0055】(請求項3の発明)次に、このように2つ
の発熱体能力を異ならせる具体的な構成について説明す
る。最も簡単な方法として、発熱体へのエネルギーを変
える方法がある。この場合も単に入力エネルギーを変え
ればよいというわけではなく、2つの発熱体への入力エ
ネルギー差が、一方の1倍より大きく2倍より小さいよ
うにする。この理由は、前述の2つの発熱体の発熱能力
差が一方の1倍より大きく2倍より小さくしている場合
と同様に、2値から3値の間における階調変化幅が大き
くなりすぎないようにするためである。
【0056】さらにまた、別の理由は、発熱体の耐久性
のためである。前述のように、このような発熱体は、シ
リコン,アルミナ,ガラス等の基板上に、薄膜形成,エ
ッチング等のプロセスによって形成されるが、2つの発
熱体はほぼ同様な組成,膜厚にされる。もちろん後述す
るようにその発熱能力を変えるために、組成,膜厚等を
変えることもあるが、基本的には2つの発熱体を形成す
るプロセスは同じか、同じようなものであり、形成され
た発熱体の耐久性が大きく違うということはない。つま
り、2つの発熱体でそれぞれ入力エネルギーを変える場
合、一方に入力するエネルギーを他方に入力するエネル
ギーの何倍にもすることは実際には不可能である(破損
する)。耐久性の面からせいぜい他方の2倍まで位にす
る必要がある。
【0057】具体的には、例えば駆動電圧を変える場
合、一方を20Vとする場合、他方は最大でも40V未
満にすべきである。あるいは駆動パルス幅を変える場
合、一方を5μsとする場合、他方は最大でも10μs
未満にすべきである。さらにそれらを組み合わせて変え
る場合、一方を30μJとする場合、他方は最大でも6
0μJ未満にするべきである。このように、2つの発熱
体への入力エネルギー差を最大でも2倍未満とすること
により、2値から3値の間における階調変化率が大きす
ぎるということはなく、滑らかな階調変化が得られ、ま
た発熱体も破損するということがない。
【0058】(請求項4の発明)次に、このように2つ
の発熱体の発熱能力を異ならせる他の具体的な構成につ
いて説明する。前述のように、本発明の発熱体は、シリ
コン,アルミナ,ガラス等の基板上に、薄膜形成,エッ
チング等のいわゆる半導体プロセスによって形成される
が、その際、エッチングのためのフォトマスクのパター
ンサイズを変えることにより、簡単に2つの大きさの異
なる発熱体を形成できる。この場合も前述と同様に2つ
の発熱体の発熱能力差が、一方の1倍より大きく2倍よ
り小さくなるように2つの発熱体の大きさは決められ
る。具体的には、面積を他方の2倍未満にすればよい。
【0059】(請求項5の発明)次に、このように2つ
の発熱体の発熱能力を異ならせるさらに他の具体的な構
成について説明する。ここでは発熱体の抵抗値を異なら
せる例を説明する。例えば、発熱体材料として、タンタ
ル−SiO2の混合物を用いた場合、タンタルとSiO2
の割合を変えることによって形成される2つの発熱体の
抵抗値を容易に変えることができる。通常発熱体の抵抗
値は、50〜150Ω程度にするが、例えば一方の発熱
体の抵抗値を100Ωとした場合、他方の発熱体は15
0Ω程度にする。この場合も最大でも、一方の発熱体の
2倍未満の抵抗値とする。
【0060】抵抗値を高くする場合は、この例ではSi
2の比率が高くなるようにすればよい。また2つの発
熱体でそれぞれ抵抗値が異なるので、発熱体部の薄膜形
成〜フォトリソ等の工程は2つの発熱体で別々に行う必
要がある。なお、ここではタンタル−SiO2の混合物
の例をあげたが、他の材料でも同様に比率を変えたり、
あるいは添加する不純物の量を変えることによって、抵
抗値を変えることができる。
【0061】(請求項6の発明)次に、このように2つ
の発熱体の発熱能力を異ならせるさらに他の具体的な構
成について説明する。ここでは発熱体の厚さを異ならせ
る例を説明する。前述のように、本発明の発熱体は、シ
リコン,アルミナ,ガラス等の基板上に、薄膜形成,エ
ッチング等のいわゆる半導体プロセスによって形成され
るが、スパッタリング等による発熱体材料の薄膜形成時
に、その形成時間をコントロールして、膜厚を変えれば
よい。この場合も前述と同様に2つの発熱体の発熱能力
差が、一方の1倍より大きく2倍より小さくなるように
2つの発熱体の厚さは決められる。また2つの発熱体で
それぞれ厚さが異なるので、発熱体部の薄膜形成〜フォ
トリソ等の行程は2つの発熱体で別々に行う必要があ
る。
【0062】(請求項7の発明)次に、このように2つ
の発熱体の発熱能力を異ならせるさらに他の具体的な構
成について説明する。ここでは、発熱体の材質を異なら
せる例を説明する。前述のように、本発明に使用される
発熱体の材料は、タンタル−SiO2の混合物,窒化タ
ンタル,ニクロム,銀−パラジウム合金,シリコン半導
体,あるいはハフニウム,ランタン,ジルコニウム,チ
タン,タンタル,タングステン,モリブデン,ニオブ,
クロム,バナジウム等の金属の硼化物があるが、2つの
発熱体でそれぞれ別々の材料で薄膜形成を行えばよい。
その際、形成された2つの発熱体は、この場合も最大で
も、一方の発熱体の2倍未満の抵抗値となるようにす
る。
【0063】(請求項8の発明)次に、このように2つ
の発熱体の発熱能力を異ならせるさらに他の具体的な構
成について説明する。ここでは、発熱体の放熱特性を異
ならせる例を説明する。本発明では、インク中で発熱体
を瞬時に発熱させ、いわゆる膜沸騰気泡を発生させ、そ
の気泡の成長による作用力でインク滴を吐出口より噴射
させるわけであるが、発生する気泡の大きさは、発熱体
の発熱能力によって変わることはいうまでもないが、発
熱体の放熱特性によっても変わる。別の表現をするなら
ば、発熱体及びその周辺の領域の放熱特性、あるいは発
熱体およびその周辺の領域の熱容量,熱伝導特性の違い
によっても変わる。
【0064】つまり、2つの発熱体に同じ入力エネルギ
ーを加えても、発熱体の放熱特性、あるいは熱容量等が
異なれば、結果として気泡を発生させるための発熱能力
が異なることと同じである。この場合も、前述と同様
に、2つの発熱体の放熱特性、あるいは熱容量等の差
は、一方の1倍より大きく2倍より小さくなるように決
められる。
【0065】(請求項9の発明)次に、このように2つ
の発熱体の放熱特性、あるいは熱容量等を異ならせる具
体的な構成について説明する。図6は、2つの発熱体
(111,112)を、それぞれ独立駆動させるための電
極(71,72)の幅を変えた例である。通常このような
電極は、Al等の金属材料が用いられるが、Alは非常
に熱伝導率の高い材料であるため、発熱体で発生した熱
は、発生と同時にAlの方に移動する。言い換えるなら
ば、このようなAlの電極は放熱性がよいということで
ある。
【0066】よって、図6のように、2つの発熱体で電
極幅を異ならせれば、この2つの発熱体は発熱能力が同
じであったとしても、放熱能力が異なるため、結果とし
て気泡を発生させる能力が異なったものとなる。つま
り、電極幅が細い方の発熱体は、電極幅が太い方の発熱
体よりも熱が逃げにくいので、気泡発生能力が大きいと
いうことができる(大きい気泡が発生する)。なお、こ
こではAlを例に挙げて説明したが、他のAu,Cu等
の金属材料であってもよいことはいうまでもない。
【0067】(請求項10の発明)次に、このように2
つの発熱体の放熱特性、あるいは熱容量等を異ならせる
他の具体的な構成について説明する。前述のように、本
発明の下部層19は、熱容量制御機能を有する。すなわ
ち、2つの発熱体が形成される領域のこの下部層19の
厚さを変えることによって2つの発熱体の放熱特性、あ
るいは熱容量等を異ならせることができる。具体的に
は、例えば、基板としてシリコンを用い、熱酸化によっ
てシリコン基板上にSiO2を成長させた後に、フォト
リソ,エッチングを行って、2つの発熱体が形成される
領域の一方のSiO2を薄くする。この場合も、この熱
作用領域の発熱能力の差が、一方の1倍より大きく2倍
より小さくなるように下部層19の厚さが決められる。
【0068】(請求項11,12の発明)次に、このよ
うに2つの発熱体の放熱特性、あるいは熱容量等を異な
らせるさらに他の具体的な構成について説明する。前述
の(請求項9関連の説明)ように、Al等の金属材料が
熱伝導率が高く、発熱体で発生した熱の放熱量を制御で
きることを説明した。そこで、ここでは、前述の例のよ
うに、Al等の金属材料を電極として用いるだけではな
く、放熱体として用いる例を説明する。
【0069】つまり、前記2つの発熱体のどちらか一方
に放熱体を設けるか、もしくは両方にそれぞれ放熱能力
の異なる放熱体を設けるものである。図7に示すものは
はその一例であり、図3に示した2つの発熱体の一方の
上(又は下)にAl等の金属材料層24を形成し、その
領域の放熱特性を高くした例である。このように一方の
発熱体の放熱特性を高くすることにより、2つの発熱体
の発熱能力が異なり、それぞれで発生させる気泡の大き
さを変えることができる。
【0070】この場合も、この熱作用領域の発熱能力の
差が、一方の1倍より大きく2倍より小さくなるように
上記金属層24による放熱体形成領域の広さが決められ
る。またこのような金属層は、Au等のように耐インク
腐食性に優れた材料である場合には、発熱領域の最表面
(インクに接する面)に形成してもよいが、Al,Cu
等のように耐インク腐食性に劣る材料を使用する場合に
は、直接インクに接しないように、保護層より下の層の
どこかに形成する。また、不必要な導通を避けるため
に、絶縁処理をしておくことはいうまでもない。
【0071】(請求項13の発明)次に、このように2
つの発熱体の放熱特性、あるいは熱容量等を異ならせる
さらに他の具体的な構成について説明する。前述のよう
に、本発明の保護層(上部層)21の代表例としてSi
2が挙げられるが、これは下部層19の例でも説明し
たように、熱容量制御機能を有する。従って、下部層1
9の場合と同じように、2つの発熱体が形成される領域
のこの保護層(上部層)21の厚さを変えることによ
り、2つの発熱体の放熱特性、あるいは熱容量等を異な
らせることができる。具体的には、スパッタリング等に
よってSiO2の保護層を形成した後に、フォトリソ,
エッチングを行って、2つの発熱体が形成される領域の
一方のSiO2を薄くすればよい。この場合も、この熱
作用領域の発熱能力の差が、一方の1倍より大きく2倍
より小さくなるように保護層(上層部)21の厚さが決
められる。なお、保護層(上部層)21の材料としてS
iO2の例で説明したが、他の材料であってもよいこと
はいうまでもない。
【0072】
【発明の効果】請求項1,2に対応した効果:1つの吐
出口に対応して、発熱能力が異なる2つの発熱体を設
け、画像情報に応じてそれぞれの発熱体を独立、あるい
は共同して駆動して、発生させる気泡の大きさを変え、
前記吐出口から吐出する液滴の質量を変えて、階調記録
を行うようにさせたので、従来、2値記録しかできなか
ったバブルジェット方式による記録ヘッド/記録方法に
おいて、被記録体上におけるドット径を変える。いわゆ
るドット径変調による階調記録(多値記録)が可能であ
る。さらに2つの発熱体の発熱能力差を、自然数倍とせ
ず、一方の1倍より大きくし、2倍より小さくしたの
で、通常、普通に考えられる2つの同一の発熱能力の発
熱体を有する場合や、あるいは2つの発熱体の発熱能力
差が自然数倍であるような場合に比べて、それぞれの発
熱体を、順次独立に駆動したりあるいは2つを組み合わ
せて駆動したりして、その階調レベルを変える場合に、
その階調幅がとれる範囲が広くなり、非常に高画質な記
録ができる。
【0073】請求項3に対応した効果:このようなバブ
ルジェット方式による記録方法において、2つの発熱体
への入力エネルギーを変えるようにしたので、電気的な
制御によって、容易に2つの発熱体の発熱量を変えるこ
とができるようになった。それにより、それぞれの発熱
体によって形成される気泡の大きさが違うため、それら
を単独、あるいは組み合わせて使用した場合に、吐出口
から吐出する液滴の質量を変えることができ、被記録体
上におけるドット径を変える、いわゆるドット径変調に
よる階調記録(多値記録)が簡単な電気的制御のみによ
って可能となり、さらにその階調幅がとれる範囲が広
く、非常に高画質な記録ができる。
【0074】請求項4乃至13に対応した効果:バブル
ジェット方式による記録ヘッドにおいて、それぞれの請
求項で規定する構成を採用したことにより、通常、普通
に考えられる2つの大きさの発熱体を有する記録ヘッド
に比べて、それぞれの発熱体を、順次独立に駆動した
り、あるいは2つを組み合わせて駆動したりして、その
階調レベルを変える場合に、その階調幅がとれる範囲が
広くなり、非常に高画質な記録ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明が適用される液体噴射記録ヘッドの分
解斜視図である。
【図2】 本発明が適用されるバブルジェット方式のイ
ンクジェットのインク滴吐出の原理を説明するための図
である。
【図3】 本発明の発熱体基板の斜視図である。
【図4】 本発明の発熱体基板を説明するための断面図
であって、図4(A)は表面詳細図、図4(B)は図4
(A)におけるB―B断面図である。
【図5】 電極及び発熱体の配列例を説明するための図
である。
【図6】 電極及び発熱体の他の配列例を説明するため
の図である。
【図7】 放熱特性、あるいは熱容量を異ならせた2つ
の発熱体を備えた本発明の発熱体基板の斜視図である。
【符号の説明】 8,108…共通電極、10…ノズル、11…発熱体、
12…基板、13…流路基板、14…吐出口、15…液
吐出部、16…熱作用部、17…熱発生部、18…熱作
用部、19…下層部、20…発熱抵抗層、21…上部
層、22,23…電極、24…金属材料層、101…蓋
基板、102…発熱体基板、103…記録液体流入口、
104…吐出口、105…流路、106…液室を形成す
る領域、107…個別制御電極、109…発熱体、11
0…インク、111…気泡、112…液滴。

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱エネルギー作用部を設けた流路、該流
    路に記録液体を導入するための液室、及び、該液室に記
    録液体を導入する手段を備え、導入される記録液体を前
    記熱エネルギー作用部により加熱して気泡を発生させ、
    該気泡の体積増加にともなう作用力により、前記記録液
    体を前記熱エネルギー作用部面とほぼ平行方向に吐出口
    から液滴として吐出させる液体噴射記録ヘッドにおい
    て、前記熱エネルギー作用部は、前記吐出口からほぼ等
    距離に配置され、独立駆動が可能で、発熱能力が異なる
    2つの発熱体からなり、該2つの発熱体のうち一方の発
    熱体の発熱能力は他方のそれの1倍より大きく2倍より
    小さいことを特徴とする液体噴射記録ヘッド。
  2. 【請求項2】 吐出口から等距離に配置しかつ一方の発
    熱体の発熱能力が他方のそれの1倍より大きく2倍より
    小さい2つの発熱体からなる熱エネルギー作用部を備え
    た流路中において、導入される記録液体に前記熱エネル
    ギー作用部によって気泡を発生させ、該気泡の体積増加
    にともなう作用力により、前記記録液体を前記吐出口か
    ら熱エネルギー作用部面とほぼ平行方向に液滴として吐
    出させ、記録体に前記液滴を付着させて記録を行う液体
    噴射記録方法において、前記2つの発熱体を、画像情報
    に応じて独立、あるいは共同して駆動することにより、
    発生させる気泡の大きさを変え、前記吐出口から吐出す
    る液滴の質量を変えて階調記録を行うことを特徴とする
    液体噴射記録方法。
  3. 【請求項3】 前記2つの発熱体への入力エネルギーは
    同一ではないことを特徴とする請求項1に記載の液体噴
    射記録ヘッド。
  4. 【請求項4】 前記2つの発熱体の発熱面積が異なるこ
    とを特徴とする請求項1に記載の液体噴射記録ヘッド。
  5. 【請求項5】 前記2つの発熱体の抵抗値が異なること
    を特徴とする請求項1又は4に記載の液体噴射記録ヘッ
    ド。
  6. 【請求項6】 前記2つの発熱体の発熱層厚さが異なる
    ことを特徴とする請求項1又は4又は5に記載の液体噴
    射記録ヘッド。
  7. 【請求項7】 前記2つの発熱体の発熱層組成が異なる
    ことを特徴とする請求項1又は4乃至6のいずれかに記
    載の液体噴射記録ヘッド。
  8. 【請求項8】 前記2つの発熱体の放熱能力が異なるこ
    とを特徴とする請求項1又は4乃至7のいずれかに記載
    の液体噴射記録ヘッド。
  9. 【請求項9】 前記2つの発熱体に接続される電極の熱
    容量が異なることを特徴とする請求項1又は4乃至8の
    いずれかに記載の液体噴射記録ヘッド。
  10. 【請求項10】 前記2つの発熱体が形成される領域の
    蓄熱層の厚さが異なることを特徴とする請求項1又は4
    乃至9のいずれかに記載の液体噴射記録ヘッド。
  11. 【請求項11】 前記2つの発熱体のどちらか一方に放
    熱体を設けることを特徴とする請求項1又は4乃至10
    のいずれかに記載の液体噴射記録ヘッド。
  12. 【請求項12】 前記2つの発熱体にそれぞれ放熱能力
    の異なる放熱体を設けることを特徴とする請求項1又は
    4乃至10のいずれかに記載の液体噴射記録ヘッド。
  13. 【請求項13】 前記2つの発熱体の保護層の厚さが異
    なることを特徴とする請求項1又は4乃至12のいずれ
    かに記載の液体噴射記録ヘッド。
JP21699898A 1998-07-31 1998-07-31 液体噴射記録ヘッド及び方法 Pending JP2000043269A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP21699898A JP2000043269A (ja) 1998-07-31 1998-07-31 液体噴射記録ヘッド及び方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP21699898A JP2000043269A (ja) 1998-07-31 1998-07-31 液体噴射記録ヘッド及び方法

Related Child Applications (3)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002326442A Division JP2003136730A (ja) 2002-11-11 2002-11-11 液体噴射記録ヘッド及び方法
JP2002326352A Division JP2003136729A (ja) 2002-11-11 2002-11-11 液体噴射記録ヘッド及び方法
JP2002326249A Division JP2003136725A (ja) 2002-11-11 2002-11-11 液体噴射記録ヘッド

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2000043269A true JP2000043269A (ja) 2000-02-15

Family

ID=16697223

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP21699898A Pending JP2000043269A (ja) 1998-07-31 1998-07-31 液体噴射記録ヘッド及び方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2000043269A (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7188919B2 (en) 2002-07-08 2007-03-13 Canon Kabushiki Kaisha Liquid discharge method and apparatus using individually controllable nozzles
CN1325228C (zh) * 2003-04-04 2007-07-11 佳能株式会社 机械手
KR100826912B1 (ko) * 2006-12-11 2008-05-06 이흥복 전원 플러그 전극봉 및 그 제조방법
JP2012071536A (ja) * 2010-09-29 2012-04-12 Canon Inc 液体吐出ヘッドおよび液体吐出ヘッドの製造方法

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7188919B2 (en) 2002-07-08 2007-03-13 Canon Kabushiki Kaisha Liquid discharge method and apparatus using individually controllable nozzles
CN1325228C (zh) * 2003-04-04 2007-07-11 佳能株式会社 机械手
US7338102B2 (en) 2003-04-04 2008-03-04 Canon Kabushiki Kaisha Manipulator
KR100826912B1 (ko) * 2006-12-11 2008-05-06 이흥복 전원 플러그 전극봉 및 그 제조방법
JP2012071536A (ja) * 2010-09-29 2012-04-12 Canon Inc 液体吐出ヘッドおよび液体吐出ヘッドの製造方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2836749B2 (ja) 液体噴射記録ヘッド
JP3071869B2 (ja) 液体噴射記録装置及び記録方法
JP2000043269A (ja) 液体噴射記録ヘッド及び方法
JP2902136B2 (ja) インク飛翔記録装置
JP2003136729A (ja) 液体噴射記録ヘッド及び方法
JP2698418B2 (ja) 液体噴射記録ヘッド
JP2989243B2 (ja) 液体噴射記録方法及び装置
JP2003136730A (ja) 液体噴射記録ヘッド及び方法
JP2914576B2 (ja) 液体噴射記録装置及び記録方法
JP3217837B2 (ja) 液体噴射記録ヘッド
JP2866133B2 (ja) 液体噴射記録装置及び方法
JP3061188B2 (ja) 液体噴射記録装置
JP2849399B2 (ja) 液体噴射記録装置
JP2003136725A (ja) 液体噴射記録ヘッド
JP2790844B2 (ja) 液体噴射記録ヘッド
JP2989242B2 (ja) 液体噴射記録方法及び装置
JP2957676B2 (ja) 液体噴射記録装置及び方法
JP2956843B2 (ja) 液体噴射記録ヘッド
JP3336312B2 (ja) カラー印写ヘッド
JP3046329B2 (ja) 液体噴射記録装置
JP3290676B2 (ja) 液体噴射記録装置
JP3054174B2 (ja) 液体噴射記録装置及び方法
JP3215134B2 (ja) インクジェット記録方法
JPH02137932A (ja) 液体噴射記録装置
JPH0550612A (ja) 液体噴射記録方法

Legal Events

Date Code Title Description
A02 Decision of refusal

Effective date: 20040420

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02