JP3081222B2 - インク飛翔記録方法及びその装置 - Google Patents

インク飛翔記録方法及びその装置

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JP3081222B2 JP25304490A JP25304490A JP3081222B2 JP 3081222 B2 JP3081222 B2 JP 3081222B2 JP 25304490 A JP25304490 A JP 25304490A JP 25304490 A JP25304490 A JP 25304490A JP 3081222 B2 JP3081222 B2 JP 3081222B2
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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、ノンインパクト記録法の一つであるインク
飛翔記録方法及びその装置に関する。
従来の技術 ノンインパクト記録法は、記録時の騒音発生が無視で
きる程度に小さい点で、オフィス用等として注目されて
いる。その内、高速記録可能で、いわゆる普通紙に特別
の定着処理を要せずに記録できる、いわゆるインクジェ
ット記録法は極めて有力な方法であり、従来から種々の
方式が提案され、又は既に製品化されて実用されてい
る。
このようなインクジェット記録法は、いわゆるインク
と称される記録液体の小滴を飛翔させ、被記録体に付着
させて記録を行うもので、記録液体の小滴の発生法及び
小滴の飛翔方向を制御するための制御方法により、幾つ
かの方式に大別される。
第1の方式は、例えば米国特許第3060429号明細書に
開示されているものである。これは、Tele type方式と
称され、記録液体の小滴の発生を静電吸引的に行い、発
生した小滴を記録信号に応じて電解制御し、被記録体上
にこの小滴を選択的に付着させて記録を行うものであ
る。
より詳細には、ノズルと加速電極間に電界をかけて、
一様に帯電した記録液体の小滴をノズルより吐出させ、
吐出した小滴を記録信号に応じて電気制御可能なように
構成されたxy偏向電極間を飛翔させ、電解の強度変化に
よって選択的に小滴を被記録体上に付着させるものであ
る。
第2の方式は、例えば米国特許第3596275号明細書、
米国特許第3298030号明細書等に開示されているもので
ある。これは、Sweet方式と称され、連続振動発生法に
より帯電量の制御された記録液体の小滴を発生させ、こ
の帯電量の制御された小滴を、一様電界がかけられてい
る偏向電極間を飛翔させて、被記録体上に記録を行わせ
るものである。
具体的には、ピエゾ振動素子の付設されている記録ヘ
ッドを構成する一部であるノズルのオリフィス(吐出
口)の前に記録信号が印加されるようにした帯電電極を
所定距離離間させて配置し、前記ピエゾ振動素子に一定
周波数の電気信号を印加することでピエゾ振動素子を機
械的に振動させ、オリフィスより記録液体の小滴を吐出
させる。この時、吐出する小滴には帯電電極により電荷
が静電誘導され、小滴は記録信号に応じた電荷量で帯電
される。帯電量の制御された小滴は、一定電界が一様に
かけられている偏向電極間を飛翔する時に、付加された
帯電量に応じて偏向を受け、記録信号を担う小滴のみが
被記録体上に付着することになる。
第3の方式は、例えば米国特許第3416153号明細書に
開示されているものである。これは、Hertz方式と称さ
れ、ノズルとリング状の帯電電極間に電界をかけ、連続
振動発生法によって、記録液体の小滴を発生霧化させて
記録させる方式である。即ち、ノズルと帯電電極間にか
ける電界強度を記録信号に応じて変調することにより小
滴の霧化状態を制御し、記録画像の階調性を出して記録
させるものである。
第4の方式は、例えば米国特許第3747120号明細書に
開示されているものである。これは、Stemme方式と称さ
れ、第1〜3の方式とは根本的に原理が異なるものであ
る。即ち、第1〜3の応式が、何れもノズルより吐出さ
れた記録液体の小滴を、飛翔している途中で電気的に制
御し、記録信号を担った小滴を選択的に被記録体上に付
着させて記録を行わせるのに対し、このStemme方式で
は、記録信号に応じて吐出口より記録液体の小滴を吐出
飛翔させて記録するものである。
つまり、Stemme方式は、記録液体を吐出する吐出口に
有する記録ヘッドに付設されているピエゾ振動素子に、
電気的な記録信号に印加してピエゾ振動素子の機械的振
動に変え、この機械的振動に従い吐出口より記録液体の
小滴を吐出飛翔させて被記録体に付着させるものであ
る。
これらの4方式は、各々に特長を有するが、同時に、
解決すべき課題点もある。
まず、第1〜第3の方式は、記録液体の小滴を発生さ
せるための直接的エネルギーが電気的エネルギーであ
り、かつ、小滴の偏向制御も電界制御による。よって、
第1の方式は、構成上はシンプルであるが、小滴の発生
に高電圧を要し、かつ、記録ヘッドのマルチノズル化が
困難で高速記録には不向きである。
第2の方式は、記録ヘッドのマルチノズル化が可能で
高速記録に向くが、構成上複雑であり、かつ、記録液体
の小滴の電気的制御が高度で困難であり、被記録体上に
サテライトドットが生じやすい。
第3の方式は、記録液体の小滴を霧化することにより
階調性に優れた記録が可能であるが、他方、霧化状態の
制御が困難である。また、記録画像にカブリが生ずると
か、記録ヘッドのマルチノズル化が困難で高速記録には
不向きであるといった欠点がある。
一方、第4の方式は、比較的多くの利点を持つ。ま
ず、構成がシンプルである。また、オンデマンドで記録
液体をノズルの吐出口より吐出させて記録を行うため
に、第1〜第3の方式のように吐出飛翔する小滴の内、
画像記録に要しなかった小滴を回収する必要がない。ま
た、第1,2の方式のように、導電性の記録液体を使用す
る必要はなく、記録液体の物質上の自由度が大きいとい
った利点を持つ。しかし、半面、記録ヘッドの加工上に
問題がある、所望の共振周波数を有するピエゾ振動素子
の小型化が極めて困難である等の理由から、記録ヘッド
のマルチノズル化が難しい。また、ピエゾ振動素子の機
械的振動という機械的エネルギーによって記録液体の小
滴の吐出飛翔を行わせるので、上記のマルチノズル化の
困難さと相俟って、高速記録には不向きなものとなって
いる。
このように、従来法には、構成上、高速記録上、記録
ヘッドのマルチノズル化上、サテライトドットの発生及
び記録画像のカブリ発生等の点において、一長一短があ
り、その長所が発揮される用途にしか適用し得ないとい
う制約を受けるものである。
しかし、このような不都合も本出願人により提案され
た特公昭56−9429号公報に開示のインクジェット記録方
式によればほぼ解消し得る。これは、液室内のインクを
加熱して気泡を発生させて、インクに圧力上昇を生じさ
せ、微細な毛細管のノズルからインクを飛び出させて記
録させるものである。
その後、この原理を利用して多くの提案がなされてい
る。その一つとして、例えば特公昭59−31943号公報に
示されるものがある。これは、発熱量調整構造を有する
る発熱部を具備する電気熱変換体に階調情報を有する信
号を印加し、発熱部に信号に応じた熱量を発生させるこ
とにより階調記録を可能としたものである。具体的に
は、保護層、蓄熱層或いは発熱体層の厚さが徐々に変化
するような構造としたり、或いは、発熱体層のパターン
幅が徐々に変化するような構造としたものである。
第26図は同公報中に示される電気熱変換体の断面構造
例を示すものである。図中、1は基板、2は蓄熱層、3
は発熱体、4,5は一対の電極、6は保護層である。同図
(a)は保護膜6を電極4側より電極5側に向けて厚み
勾配を持たせて形成したものである。よって、発熱部Δ
lの表面より、この表面に接触している液体に単位時間
当りに作用する発熱量は勾配を持つものとなる。同図
(b)は蓄熱層2の厚みを発熱部Δlにおいて、Aから
Bに向かって徐々に減少させて発熱体3より発生する熱
の基板1への放熱量に分布を与え、発熱部Δlの表面に
接触している液体へ与える単位時間当りの熱量に勾配を
持たせたものである。同図(c)は発熱体3の厚みに発
熱部Δlにおいて勾配を設けて発熱体3を蓄熱層2上に
形成したもので、AからBに至るまでの各部位における
抵抗の変化によって、単位時間当りの発熱量を制御する
ようにしたものである。
また、第27図も同公報中に示された電気熱変換体の別
例の平面図を示すものである。図中、7は発熱部、8,9
は一対の電極である。同図(a)は発熱部7の平面形状
を矩形状とし、電極8と発熱部7との接続部を、電極9
と発熱部7との接続部より小さくしたものである。同図
(b)(c)は各々発熱部7の中央部を両端よりも細い
平面形状に形成したものである。同図(d)は発熱部7
の平面形状を台形状とし、台形の平行でない対向辺に対
して各々電極8,9を接続したものである。同図(e)は
発熱部7の中央部を両端よりも広い平面形状としたもの
である。何れにしても、この第27図に示す例は、発熱部
7のAからBに向かって電流密度に負の勾配を与えるよ
うに構成したもので、印加する電力レベルを変えること
によって熱作用部に生ずる急峻な液体の状態変化を制御
することで吐出される液滴の大きさを変え、階調記録を
可能としたものである。
ところが、第26図に示した例のような3次元的構造を
薄膜形成技術で形成することは、事実上不可能に近く、
また、仮に可能であるとしても非常に高コストとなる。
一方、第27図に示した例のようにパターン幅を変えたも
のは、そのパターン幅が最も狭い部分で断線を生じやす
く、耐久性の面から必ずしもよい結果が得られないもの
である。
さらに、特開昭63−42872号公報にも類似の階調記録
技術が開示されている。しかし、これも特公昭59−3194
3号公報に示されたものと同様に発熱体層に3次元構造
を持たせたもので、製造が極めて困難であるという欠点
を持つ。その他の階調記録技術としては、特公昭62−46
358号公報、特公昭62−46359号公報、特公昭62−48585
号公報等に示されるものがある。これらは、各々1つの
流路に配列した複数個の発熱体より、所定数の発熱体を
選択したり、或いは発熱量の異なる複数の発熱体から1
つを選択して、発生する気泡の大きさを変えたり、複数
の発熱体への駆動信号の入力タイミングのずれを可変制
御して吐出量を変えるものである。しかし、これらの技
術では、複数個の発熱体が1つの流路或いは吐出口に対
応しているため、それら複数個の発熱体に接続される制
御電極の数が増大し、吐出口を高密度に配列させること
が不可能となる。また、特開昭59−124863号公報、特開
昭59−124864号公報によれば、吐出のための発熱体とは
別の発熱体及び気泡発生部を有して、吐出量制御を行う
ことが示されている。しかし、この場合も気泡発生部の
存在により高密度配列が困難となる。さらに、特開昭63
−42869号公報によれば、抵抗体に通電する時間を変え
ることによって気泡の発生回数を変更して吐出量を制御
することが示されている。しかし、通常のバブルジェッ
トにおいては通電時間は数〜十数μsecが限界であり、
それ以上の時間通電すると発熱体が断線してしまい、耐
久性の面で問題がある。
発明が解決しようとする課題 このように従来の種々のインクジェット方式において
は、インクジェット方式の致命的欠点であるごみ、或い
はインクの乾燥によるオリフィス(ノズル)又はスリッ
ト状ノズルの目詰まりの問題がある。また、ヘッドアセ
ンブリ上における高精度オリフィス(ノズル)が形成で
きない問題がある。さらには、アセンブリ上のコストの
問題がある。また、階調記録の実現が困難であり、印写
品質が低いといった問題もある。
つまり、従来のインクジェット記録方式に関しては、
目詰まり等の信頼性の点、ヘッドのコストの点及び階調
記録を含む画質の点に課題がある。
課題を解決するための手段 請求項1記載の発明では、インク液面内に配設されて
ヒータ部と熱勾配付与構造を持つ2次元平面構造の放熱
構造体とよりなるエネルギー作用部の前記ヒータ部に画
像情報に応じて可変された入力エネルギーの駆動信号を
入力させて、前記放熱構造体を設けた前記エネルギー作
用部で入力エネルギーに応じた熱勾配を前記放熱構造体
によって生じさせ、この熱勾配に応じて発生する大きさ
が変化する気泡をインク中に生じさせ、この気泡の瞬間
的な成長による作用力に応じた量のインクを前記インク
液面から飛翔させ、飛翔したインクを被記録体に付着さ
せるようにした。
請求項2記載の発明では、インク供給手段と、このイ
ンク供給手段により供給されたインクを保持するインク
液面保持手段と、インク液面内に配設されてインク中に
瞬間的に成長する気泡を生じさせる2次元平面構造のヒ
ータ部と、このヒータ部の一部に積層されて熱勾配を生
じさせる2次元平面構造の放熱構造体と、前記ヒータ部
に画像情報に応じて可変された入力エネルギーを持つ駆
動信号を与える信号入力手段と、前記ヒータ部の近傍に
位置してインク液面と略平行な方向への圧力の分散を阻
止するための障壁とにより構成した。
請求項3記載の発明では、ヒータ部が、電気熱変換体
層とこの電気熱変換体層に電気的に接続された一対の電
極とよりなり、放熱構造体がこの一対の電極の一方を兼
用をするようにした。
作用 インク液面内に配設させたエネルギー作用部に画像情
報に応じた駆動信号を入力させ、このエネルギー作用部
を駆動させるとインク中に気泡が生じる。この気泡は瞬
間的に成長するもので、その作用力によりインク液面は
エネルギー作用部対応部分が盛り上がり、インク柱状に
成長する。ついで、エネルギー作用部の駆動をオフさせ
ると、成長した気泡は破裂することなく、収縮を開始し
遂には消滅する。一方、成長したインク柱状部分はさら
に前進し、基部側では気泡収縮に伴いくびれが生じ、最
終的にはインク液面から分離切断される。よって、イン
クはエネルギー作用部対応部分から滴状ないしは柱状と
なって、被記録体に向けて飛翔し、付着することにより
記録される。つまり、オリフィスやスリット状ノズルを
用いることなく、ドット状の鮮明画像が得られる。この
際、泡の破裂によるインクミストの発生を伴なわないた
め、画質の低下もない。ここに、階調記録に際しては、
画像情報に応じて可変された入力エネルギーの駆動信号
を与えて、熱勾配付与構造を持つエネルギー作用部で熱
勾配を生じさせ、発生する気泡の大きさを変え、飛翔す
るインク量を変えることにより容易に実現できる。
よって、構造的にみればオリフィスやスリット状ノズ
ルがないため、目詰まりの問題はない。仮に、インクの
乾燥、紙粉等の異物の付着・混入等があっても、洗浄液
による洗浄等によって、本来の飛翔機能を容易に回復・
維持できる。また、オリフィス等を持たず、かつ、その
形成のための接合工程も不要なため、低コストで済み、
工程的にも接合部材が流路を詰まらせたり、あるいは、
流路を変形させたりつぶしたりすることもない。さら
に、熱勾配付与構造をなす放熱構造体等についてもフォ
トファブリケーション技術によって形成することがで
き、高密度配列が可能となる。
特に、請求項3記載の発明のように、放熱構造体を一
方の電極として兼用させることにより、パターン構成を
単純化でき、低コスト化とともに、熱歪を低減させ耐久
性を向上させることもできる。
実施例 本発明の第一の実施例を第1図ないし第13図に基づい
て説明する。
本実施例は、本出願人により特願平1−225777号とし
て既に提案されている記録方法及び装置を利用し、階調
記録機能を持たせたものであり、まず、既提案内容を第
4図ないし第8図を参照して説明する。
〔基本構造〕
既提案例のインクジェット記録ヘッドの構成要素を第
4図ないし第7図により説明する。この記録ヘッド11
は、インク供給管(インク供給手段)12に接続された中
空のインク供給室13を有して台形状に形成されたマニホ
ールド14をベース材として構成されている。マニホール
ド14頂部にはインク供給室13に連通するスリット15が形
成された発熱体基板16が固定されている。この発熱体基
板16上にはスリット15両側に位置させて互い違いに櫛歯
状の障壁17が形成され、障壁17間に流路(インク液面保
持手段)18が形成されている。これらの流路18は障壁17
とは逆に互い違いに櫛歯状となってスリット15に連通さ
れている。また、前記発熱体基板16上には各流路18毎に
最奥部側に位置させて各々ヒータ部(エネルギー作用
部)19が形成されている。よって、ヒータ部19の平面的
な配列を見ると、第5図のようにスリット両側で千鳥状
配列となる。また、各流路18の途中に位置させて発熱体
基板16上には障壁17と同等の高さの流体抵抗部20が形成
されている。さらに、発熱体基板16の周囲を覆い枠状の
保持部材21により押え固定される薄膜状導電性リード
(信号入力手段)22がマニホールド14上に設けられてい
る。
ここに、前記ヒータ部19付近の構造例を第7図に示
す。このヒータ部19は発熱体基板16上に蓄熱層23を形成
し、その上に発熱体層(電気熱変換体層)24を制御電極
25、アース電極26とともに形成し、さらに、インクとの
直接的な接触を避けるために表面を保護層27、電極保護
層28により覆ったものである。各発熱体層24は前記制御
電極25やアース電極26を介してワイヤボンディング(図
示せず)により薄膜状導電性リード22に電気的に接続さ
れている。この薄膜状導電性リード22は画像情報信号入
力手段(図示せず)に接続されている。
〔インク飛翔原理の概要〕
まず、インク供給管12よりインク供給室13に供給され
たインク29(第8図参照)は、毛管現象により微細なス
リット15を通って障壁17により囲まれた櫛歯状の流路18
全域に満たされることになる。なお、スリット15や流路
18の寸法によっては、毛管現象だけではインク29を十分
に流路18全域に供給・保持させることができないが、こ
のような場合には、インク供給管12の元にあるインクタ
ンク(図示せず)と記録ヘッド11との高さを調整するこ
とにより、水頭差を利用すればよい。このように流路18
全域にインク29が満たされ、各ヒータ部19もインク29に
覆われた状態となるように、インク液面の高さを調整し
た定常状態において、画像情報に応じて各発熱体層24に
対して個別に通電を行うと、発熱した発熱体層24上でイ
ンク液中に気泡が発生する。この気泡の推進力によりイ
ンク29がヒータ部19の面(基板面)に略垂直なる方向に
飛翔することになる。
〔インク飛翔原理の詳細〕
第8図により詳細に説明する。なお、第8図ではヒー
タ部19及びその周辺部を拡大して示すが、簡単のため、
電極等は省略してある。
第8図(a)は定常状態を示し、流路18全域にインク
29が満たされ、ヒータ部19上もインク29により覆われて
いる。ヒータ部19を加熱させると、ヒータ部19の表面温
度が急上昇し、隣接インク層に沸騰現象が起きるまで熱
せられ、同図(b)に示すように微小な気泡30が点在し
た状態となる。ヒータ部19の全面で急激に加熱された隣
接インク層が瞬時に気化して同図(c)に示すように沸
騰膜を作る。このように気泡30が成長した状態におい
て、表面温度は300〜350℃になり、いわゆる膜沸騰状態
にある。また、ヒータ部19の上部にあるインク29層は、
気泡成長の推進力により、図示の如く、インク液面が盛
り上がった状態となる。同図(d)は気泡30が最大に成
長した状態を示し、インク液面からのインク柱31がさら
に成長した状態となる。このような最大気泡となるまで
に要する時間は、ヘッド(発熱体基板16)構造、印加パ
ルス条件等にもよるが、通常、パルス印加後、5〜30μ
sec程度要する。最大気泡となった時点では、ヒータ部1
9は既に通電されていない状態にあり、ヒータ部19の表
面温度は降下しつつある。気泡30が最大となる時のタイ
ミングは、電気パルス印加のタイミングから若干遅れた
ものとなる。同図(e)は気泡30がインク29等により冷
却された収縮を開始した状態を示す。インク柱31の先端
部では押出された速度を保ちつつ前進し、後暗部では気
泡30の収縮に伴ってインク液面にインク29が逆流するこ
とにより、図示の如く、インク柱31にくびれが生ずる。
気泡30がさらに収縮すると、同図(f)に示すように、
ヒータ部19面にインク29が接し、ヒータ部19面がさらに
急激に冷却される状態となる。インク柱31はインク液面
から切断され、被記録体(図示せず)の方向へ2〜20m/
sの速度で飛翔する。なお、この時の飛翔速度はヘッド
(発熱体基板16)構造、インク物性、印加パルス条件等
に依存するが、飛翔速度が比較的遅い場合(2〜3m/s)
にはインク29が滴状となって飛翔し、比較的速い場合
(7〜10m/s)にはインク29は細長い柱状となって飛翔
する。この後、同図(g)に示すように同図(a)と同
様な定常状態に戻り、流路18全域にインク29が満たさ
れ、気泡30も完全に消滅した状態となる。
〔既提案例の飛翔原理と従来の飛翔原理との違い〕
各種従来方式中、例えば特開昭51−132036号公報に示
されるものは、特開昭61−189950号公報と同一原理のも
のであり、泡を破裂させることによりインクの滴状体を
放出させるものである。よって、前述したように泡の破
裂によるインクミストの発生が画質低下をもたらす。ま
た、例えば特開平1−101157号公報に示されるものは、
記録液を瞬時に煮沸させてミスト状にして飛翔させ記録
を行うもので、これもインクミストによりカブリ、画像
乱れが避けられない。
一方、既提案例の飛翔原理によれば、インク29を飛翔
させるための気泡30は破裂せずに収縮・消滅するため、
泡の破裂によるインクミストの発生が防止され、インク
ミストにより画質低下がない。また、インクをミスト状
にして記録するものと異なり、インク29を滴状又は細長
柱状として(何れにしても、あるインク塊まりとして)
飛翔させ記録するので、被記録体上では1つのドットと
して付着して記録され、鮮明な画像が得られる。
〔本実施例の特徴的構成及び作用〕
上述した原理により、インク飛翔が行われて記録がな
されるが、本実施例では、階調記録機能が付加されてい
る。原理構成としては、第9図に示すようにヒータ部19
における発熱体層24上に熱勾配付与構造を持たせるため
に放熱構造体32を積層形成し、ヒータ部19への入力エネ
ルギーの大小によって高温領域が移動するようにしたも
のである。ここに、放熱構造体32は発熱体層24の発熱部
上の全面に均一に設けられるものではなく、第9図及び
第10図に示すように制御電極25側からアース電極26側へ
いくにつれて発熱体層24を覆う面積が増えるような平面
形状に形成されている。ここでは、発熱部上を三角形状
に覆うように形成され、放熱構造体32の放熱効果により
通電方向に熱勾配を持たせることを可能としている。
ここに、放熱構造体32を形成する材料としては、一般
に熱伝導率が高く、蒸着、スパッタリング等の薄膜形成
多びフォトエッチング等の微細加工が容易なAl,Au等が
好ましい。ここでは、放熱構造体32を第9図に示すよう
な2次元的な平面形状に形成するので、製造面におい
て、或いは構造面において、容易かつシンプルにできる
という利点がある。なお、第10図の場合、放熱構造体32
は発熱体層24上に直接接触する状態で積層形成している
が、この放熱構造体32がアース電極の役割をしないよう
に、放熱構造体32のパターンはアース電極26とは接触し
ないように適当な絶縁層33で絶縁処理されている。
このような発熱体層24上で熱勾配を持つヘッドに対し
て、本実施例ではさらに画像情報に応じて発熱体層24に
与える入力エネルギーの大きさを変えるようにしてい
る。一般に、発熱体層24上で膜沸騰現象により気泡30を
発生させる際、発熱体層24上の表面温度が瞬時的にある
一定以上の温度になることが必要である。つまり、膜沸
騰が生じるためには、ある臨界温度以上になることが必
要なわけであるが、その臨界温度になる領域が発熱体層
24上の任意の位置で形成されれば、発生する気泡30の大
きさも任意に変え得ることを意味する。第10図(b)に
その原理を示す。これは、発生する気泡30を点線で示す
ものである。本実施例では、前述したように発熱体層24
上の一部に積層させた放熱構造体32により発熱体層24上
で通電方向に対して熱勾配を持つため、入力エネルギー
を小さい値から大きい値に変えてやることにより、膜沸
騰による気泡発生の臨界点位置が熱勾配に応じて順次移
動し、第10図(b)中に点線で示すように、小さい気泡
30aから徐々に30b,30c,30dという具合に大きくなる。よ
って、発生する気泡30の大きさを変えることにより、イ
ンク液面より飛翔するインク量も可変され、階調記録が
可能となる。
〔本実施例の特徴を示す具体的構成及び作用〕
このような原理に基づき、より具体的には第11図ない
し第13図に示すように構成される。ここでは、説明を簡
単にするため、障壁17は省略してヒータ部19付近のみを
示す。まず、基板16としてのシリコンウエハを熱酸化す
ることにより、表面にSiO2膜を1.5μm成長させて蓄積
層23とした。次に、HfB2による発熱体層24を2500Åの膜
厚でスパッタリングし、さらに、その上にAlによる電極
層を1.2μmの膜厚でスパッタリング形成した。この
後、フォトリソグラフィ法及びエッチング技法による処
理を2回行うことにより、発熱体層24と電極層との2層
構造パターンを形成し、ついで、発熱部となる領域の電
極層を除去して電極25,26を形成するとともに、正方形
状に発熱体層24を露出させて発熱部を形成する。この状
態で、制御電極25とアース電極26との間にパルス状電圧
を印加すると、発熱部はジュール熱により発熱するが、
ここにこの記録ヘッドはインク液面中に位置しており、
発熱部がインク29に接触するので、両電極25,26間の導
通防止と、インク29による発熱体層24の腐食防止のた
め、全面的に保護層27としてSiO2膜を1μmの膜厚でス
パッタリング形成する。さらに、この上に放熱構造体32
を積層形成する。ここでは、Alを用い、全面的に膜厚1.
5μmにスパッタリングした後、フォトリソグラフィ法
及びエッチング技法による処理を施し、第11図に示すよ
うな平面パターン形状とした。即ち、放熱構造体32とし
て主要な部分は発熱部上に位置して、図示の如く、上下
外側に向けて放熱作用が大きくなり、中心部では殆ど放
熱作用を生じないようなパターン形状とされている。放
熱構造体32の材料をなすAlがインク29により腐食される
のを防止するため、放熱構造体保護層34が1μmのSiO2
膜として全面的にスパッタリング形成されている。
このような構造により、インク飛翔量が可変される様
子を第1図ないし第3図に示す。第3図は駆動パルス、
即ち発熱体層24に与える入力エネルギーの大きさを示
し、同図(a)から同図(c)に向けて順に駆動パルス
が大きくされている。第2図はこのような駆動パルスの
大きさの違いに対応させて発生する気泡30の領域ないし
は大きさを平面的に示すものであり、第1図はインク柱
31とともに断面構造的に示すものである。即ち、第3図
(a)に示すように駆動パルスが小さい状態では、第2
図(a)及び第1図(a)に示すように、放熱構造体32
により覆われていない部分にのみ対応して分離状態の小
さめの気泡30が発生し、小さなインク柱31、従って小さ
いインク滴にて飛翔することになる。第3図(b)に示
すように駆動パルスが大きくなると、発生する気泡30の
大きさ及び領域も広がり、大きめのインク滴となって飛
翔する。さらに、第3図(c)に示すように駆動パルス
が大きくなると、発生する気泡30も第2図(c)及び第
1図(c)に示すように合体し発熱部上全体で生ずるも
のとなり、大きめのインク滴にて飛翔する。
なお、第2図では図が複雑になるのを避けるために第
1図中の障壁17は省略した。厳密には、後述する第18図
に示すような障壁17が発熱部周りに形成されている。
〔構成材料及びその変形例〕
基板16を構成する材料としては、シリコンウエハの他
に、アルミナ等のセラミックス或いはガラスなどを用い
得る。即ち、熱伝導率の高いシリコンは、現時点では入
手の容易さなどの点を考慮すると最も好ましい材料とい
えるが、コスト面などを考慮するとセラミックス、ガラ
ス等を用いてもよいものである。蓄熱層23は、基板16と
してアルミナを用いた場合にはグレーズ層として知られ
るガラス質のものが使用され、基板16としてガラスを用
いた場合にはSiO2層をスパッタリング形成する。もっと
も、ガラス自体が蓄熱層の役割を果たすので、ガラスの
場合には、必ずしも別個に蓄熱層を設けなくてもよい。
発熱体層24を構成する材料としては、例えばタンタル
−SiO2の混合物、窒化タンタル、ニクロム、銀−パラジ
ウム合金、シリコン半導体、或いは、ハフニウム、ラン
タン、ジルコニウム、チタン、タンタル、タングステ
ン、モリブデン、ニオブ、クロム、バナジウム等の金属
の硼化物が使用可能である。これらの内、金属の硼化物
が特に好ましく、その中でも、硼化ハフニウムが最も特
性的に好ましく、次いで、硼化ジルコニウム、硼化ラン
タン、硼化タンタル、硼化バナジウム、硼化ニオブの順
に好ましいものとなる。発熱体層24はこのような材料を
用い、電子ビーム法、蒸着法、スパッタリング法等によ
り形成される。膜厚は単位時間当たりの発熱量が所望値
となるように、その面積、材質、熱作用部分の形状及び
大きさ、実際面での消費電力等に応じて適宜設定される
が、通常は0.001〜5μm程度、好ましくは0.01〜1μ
m程度の膜厚とされる。
制御電極25やアース電極26の材料としては、通常の電
極材料と同じでよく、例えば、Al,Ag,Au,Pt,Cu等が用い
られる。これらは蒸着法等により、所定位置に所定の大
きさ、形状、膜厚で形成される。
保護層27は発熱体層24で発生した熱を効果的にインク
29側に伝達させることを防げずにインク29による腐食か
ら発熱体層24を保護するためのものであり、材料として
は、酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン、酸化マグネ
シウム、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ジルコ
ニウム等が用いられる。製法は、電子ビーム法、蒸着
法、スパッタリング法等による。膜厚は、通常0.01〜10
μm、好ましくは0.1〜5μm(中でも、0.1〜3μmが
最適)とされる。保護層27はこれらの材料を用いて1層
又は複数層構造で形成されるが、これらの層の他に、気
泡30が収縮・消滅する際に発生するキャビテーション作
用からヒータ部19を保護するためにTa等の金属層を表面
に形成するのが望ましい。具体的には、Taなどの金属層
を膜厚1000〜5000Å程度で形成すればよい。なお、この
ような耐キャビテーション層としてTa層を第11図ないし
第13図に示す構造に適用する場合には、Ta層が既に形成
されている放熱構造体32の熱勾配形成作用を防げないよ
うに形成する必要がある。具体的には、第11図ないし第
13図の例では、放熱構造体保護層34上にTa層を設けれ
ば、放熱構造体32と熱的に絶縁されので特に問題ない。
放熱構造体32の材料としては、熱伝導率の高い材料、
一般には、パターン形成の容易さも考慮して、電極材料
と同じものが使用される。つまり、Al,Ag,Au,Pe,Cu等で
ある。このように電極材料と同一のものを使用できるの
で、後述するように放熱構造体32をアース電極26と一体
に形成することもできる。これによれば、発熱体層24に
直接接することによる放熱効率の良さ、パターン構成の
単純化を図ることができる。
電極保護層28の材料としては、ポリイミド等、具体的
にはポリイミドイソインドロキナゾリンジオン(商品
名:PIQ,日立化成社製)、ポリイミド樹脂(商品名:PYRA
LIN,デュポン社製)、環化ポリブタジエン(商品名:JSR
−CBR,日本合成ゴム社製)、フォトニース(商品名:東
レ社製)、その他の感光性ポリイミド樹脂等が用いられ
る。ここでは、フォトニースをスピンコーティングによ
り1.2μmの膜厚で形成し、通常のフォトリソグラフィ
技術によって発熱部近傍及びリード線と接続するボンデ
ィングパッド部のパターンとを除いて形成した。
ついで、発熱体基板16上にインク液面と略平行な方向
への圧力分散を防止する状態で流路18を形成するための
障壁17について説明する。形成方法としては、ドライフ
ィルムレジストとして知られている感光性樹脂を発熱体
基板16にラミネートし、通常のフォトリソグラフィ法に
よって、露光〜現像することによりパターン形成され
る。通常のドライフィルムレジストの使用方法はパター
ン形成後、メッキエッチング工程を行うためのマスカウ
ントとして用いられ、その後、除去されるが、ここで
は、パターン形成後、障壁部材としてそのまま発熱体基
板16上に残したままとする。本実施例では、ドライフィ
ルムレジストの厚さが25μmであり、従って、障壁17の
高さも25μmとなる。
このようなドライフィルム型のフォトレジストとして
は、例えばパーマネントフォトポリマーコーティングRI
STON(ソルダーマスク)730S(デュポン社製)、同740
S、同730FR、同740FR、同SM、さらには、PhotecSR−100
0(日立化成工業社製),同SR−2000,同SR−3000,同オ
ーディルSE−250(東京応化工業社製),同SE238,同SE
−225,同SP−750,同SP−740,同SP−725,同SX−350,同SY
−325等の商品名で市販されている感光性樹脂がある。
この他、感光性樹脂、フォトレジスト等の通常のフォト
リソグラフィーの分野において使用されている感光性組
成物の多くのものを用い得る。例えば、ジアゾレジン、
P−ジアゾキノン、さらには、例えばビニルモノマーと
重合開始剤を使用する光重合型フォトポリマー、ポリビ
ニルシンナメート等と増感剤を使用する二重化型フォト
ポリマー、オルソナフトキノンジアジドとポラックタイ
プのフェノール樹脂との混合物、ポリビニルアルコール
とジアゾ樹脂の混合物、4−グリシジルエチレンオキシ
ドとペンゾフェノンやグリシジルカルコンとを共重合さ
せたポリエーテル型フォトポリマー、N,N−ジメチルメ
タクリルアミドと例えばアクリルアミドベンゾフェノン
との共重合体、不飽和ポリエステル系感光性樹脂(例え
ば、旭化成社製のAPR、帝人社製のテビスタ、関西ペイ
ント社製のゾンネ等)、不飽和ウレタンオリゴマー系感
光性樹脂、二官能アクリルモノマーに光重合開始剤とポ
リマーとを混合させた感光性組成物、重クロム酸系フォ
トレジスト、非クロム系水溶性フォトレジスト、ポリケ
イ皮酸ビニル系フォトレジスト、環化ゴム−アジド系フ
ォトレジスト等が挙げられる。
ちなみに、本実施例では、東京応化工業社製のオーデ
ィルSY−325を用い、0.6ft/分の速度、1.8kg/cm2の圧
力、105℃なる基板温度の条件で、ラミネートを行っ
た。露光後の現像は、トリクロロエタンのスプレー現像
を90秒行うことにより、良好なる障壁17のパターンが形
成されたものである。
第14図及び第15図に変形例を示す。これは、積層順序
を変えたもので、発熱体層24の下側に放熱構造体32を形
成するようにしたものである。この場合、放熱体保護層
34は熱保護層として放熱構造体32上に形成される。
つづいて、本発明の第二の実施例を第16図により説明
する。前記実施例で示した部分と同一部分は同一符号を
用いて示す(以下の実施例でも同様とする)。
本実施例は、請求項3記載の発明に相当するもので、
放熱構造体32を電極25,26の内の一方の電極、例えばア
ース電極26として兼用させたものである。これは、前述
したように放熱構造体と電極とはAl,Auなどの同一材
料、スパッタリング法、エッチング法などの同一製造法
を利用して形成し得るので、一部については、放熱構造
体としての機能と電極としての機能とを同時に持たせる
ことができるからである。これによれば、パターン構成
の簡略化、低コスト化を図ることができるとともに、パ
ターン層の熱歪に起因するライフタイムの低下を防止す
ることができる。第16図はこのような構造の製造法の一
例を示すものである。まず、同図(a)に示すように熱
酸化膜を形成したシリコンウエハ(基板16)上に発熱体
層24をパターン形成する。ついで、同図(b)に示すよ
うに制御電極25を形成し、一部積層により発熱体層24と
を接続する。さらに、同図(c)に示すように、アース
電極26と接続される部分とリード線取出し部(ボンディ
ングパッド部)とを残して全面に絶縁層33としSiO2膜を
形成する。この後、発熱体層24(発熱部)上で熱勾配を
生じるようなパターン形状とした放熱構造体兼アース電
極35を形成する。最後に、前述したように保護層、耐キ
ャビテーション層、電極保護層を適宜形成する。なお、
各部に使用する材料、膜厚等は前記実施例の場合に準ず
る。
本実施例構造は、前述した変形例、即ち、発熱体層24
の下部側に放熱構造体32を形成する構造の場合でも同様
に適用できる。
さらに、本発明の第三の実施例を第17図により説明す
る。本実施例は、発熱体層24(発熱部)に対する放熱構
造体32のパターン形状を例示するものである。両者の上
下関係は何れでもよいが、図示例は放熱構造体32側を上
とする。同図(a)は正方形状の発熱体層24の隅部を露
出させる状態に4分割状にパターン形成し、同図(b)
は正方形状の発熱体層24の隅部を覆う状態に4分割状に
パターン形成し、同図(c)は正方形状の発熱体層24の
中心部のみを覆う正方形状にパターン形成し、同図
(d)は正方形状の発熱体層24の領域内で隅部を覆う状
態に星型形状にパターン形成し、同図(e)は円形状の
発熱体層24の中心部のみを覆う円形状にパターン形成し
たものである。図中の各矢印は、入力エネルギーの大き
さを小さいほうから大きいほうへ変化させた場合に発熱
体層24における臨界膜沸騰領域が広がっていく方向、換
言すれば、入力エネルギーを大きくするにつれて気泡30
の発生する領域が広がる方向を示す。これらの内、同図
(c)(d)(e)に示すように、発熱体層24の中心部
に向けて放熱領域が広がるようにしたものは、特に図示
しないが、発熱体層24を貫通して接続される放熱材料が
下層に形成されて放熱効率がよくされている。
ついで、各種変形例ないし具体例について説明する。
まず、障壁17としては第18図及び第19図に示すよう
に、発熱部の周りをブロック状に囲む4片としてもよ
い。図示例は、第一の実施例(第11図)の構造に準ずる
もので、具体的には、発熱体ドットサイズを40×40μm2
(抵抗値30Ω)、駆動電圧を18〜36V、駆動パルス幅を
3.2μsec、連続応答周波数を4.5kHz、使用インクをキャ
ノン社製のBJ130用インク、障壁17形状及びサイズを発
熱体から距離d=5μmずつ離して4個所にw×l×h
=30μm×42μm×25μmなる大きさでドライフィルム
製として形成し、三菱製紙社製のNMマットコート紙上に
印写実験を行い、この紙上での印写画素径を測定したと
ころ、60μm(18V駆動時)〜150μm(36V駆動時)な
る印写結果が得られたものである。
流路18形状については、第20図に示すようなものが考
えられる。第20図に(a)は流体抵抗部20を省略した変
形例を示す。インク29の物性、駆動条件を適切に選定す
れば、流体抵抗部20がなくてもインク飛翔を確実に行わ
せることができる。同図(b)は平面的に見て円形状の
流体抵抗部20に代えて、平面的に見てハート型形状の流
体抵抗部40としたものである。この場合、図示の如く、
ヒータ部19側に向けてインク29が流れ込みやすく、ヒー
タ部19側から出にくい向きとされ、より効率的にインク
飛翔されるようにしたものである。同図(c)は、流体
抵抗部20を省略するとともに、障壁17の入口部形状を図
示のように絞り形状として、幅狭の流体抵抗部41を形成
することにより、各ヒータ部19毎に個別化された流路18
が形成されるようにしたものである。同図(d)も同様
であり、障壁17の入口部形状を入り組んだ形状として流
体抵抗部42を形成したものである。これらに例示したよ
うに、流路18形状としては種々の形状とし得る。何れに
しても、前述したフォトリソグラフィ法により形成でき
る。
また、障壁17形状についても、第5図に示したように
基板16上で連続的につながっている必要はなく、第18図
の他に、第21図(a)〜(e)に例示するように、各々
独立した障壁17のブロックとしヒータ部19に対する流路
18を形成するようにしてもよい。
第22図は第21図(b)の障壁17形状に準じて構成した
ヘッド構造を示す。
第23図は、インク液面中に気泡30を発生させるための
エネルギーとして、ヒータ部19構造に代えて、レーザ光
45を加熱源に用いた例を示す。これは、レーザ発振源46
より発生させたレーザ光45を光変調器47において、光変
調器駆動回路48に入力されて電気的に処理されて出力さ
れる画情報信号に従ってパルス変調される。パルス変調
されたレーザ光45は走査器49を通り、集光レンズ50によ
って熱エネルギー作用部となる壁51に焦点が合うように
集光される。これにより、記録ヘッド11の壁51を加熱
し、内部のインク液面中に気泡30を発生させる。もっと
も、熱エネルギー作用部の壁51は、レーザ光45に対して
透過性を持つ材料で形成し、集光レンズ50によって内部
のインク29に直接焦点が合うように集光させ、インク29
を直接加熱させて気泡30を発生させるようにしてもよ
い。
ところで、このようなレーザ光45照射を利用した加熱
方式の場合、放熱構造体32のパターン例としては例えば
第24図に示すように形成すればよい。即ち、エネルギー
作用部となる壁51のインク29と接する面(気泡30の発生
する部分)にスパッタリング法によりTaを8000Åの膜厚
で薄膜形成し、これをフォトリソグラフィ&エッチング
処理により、第24図に示すように中心点Oから放射状と
なるパターンに放熱構造体32を形成したものである。こ
れによれば、パルス状のレーザ光45照射により発生した
熱は、中心点Oから放射状に移動していくので、中心点
Oに対するパルスレーザ光の照射エネルギー(入力エネ
ルギー)を画像情報(階調情報)に応じて可変させるこ
とにより、発生する気泡30の大きさを可変できる。よっ
て、インク液面から飛翔するインク滴の大きさを変え、
階調記録が可能となる。
なお、第23図図示例では下部側よりレーザ光45を照射
させるようにしているが、インク液面より斜め上方か
ら、中心点Oを狙って照射するような構成であってもよ
い。
このようなレーザ光照射方式は、第25図に示すように
具体化される。ここでは、第22図に図示したような記録
ヘッド11が用いられるとともに、通常のレーザプリンタ
の光学系がそのまま用いられる。即ち、レーザ発振器46
より発振されたレーザ光45は、光変調器47において画情
報入力信号に従い強弱の変調を受けて、走査器49に出射
される。この走査器49は例えば偏向ミラー52とビームエ
キスパンダ53と高速にて定速回転されるポリゴンミラー
54とよりなり、ポリゴンミラー54の1面により回転走査
される。走査されたレーザ光45は集光レンズ50をなすf
θレンズを通り、記録ヘッド11の熱エネルギー作用部な
る壁51(又は、内部のインク29)に結像されて順に走査
する。よって、障壁17により仕切られた各熱エネルギー
作用部が順に加熱され、気泡30が発生する。この時の熱
はレーザ光45の照射エネルギーが画情報入力信号に応じ
て可変されているので、放熱構造体32との相互作用の下
に、発生する気泡30の大きさが変わることになり、飛翔
インク滴の大きさが変えられる。よって、階調性豊かな
高精細な印写画像が被記録体55上に得られる。
発明の効果 本発明は、上述したように構成したので、請求項1記
載の発明によれば、インク液面内に配設されてヒータ部
と熱勾配付与構造を持つ2次元平面構造の放熱構造体と
よりなるエネルギー作用部の前記ヒータ部に画像情報に
応じて可変された入力エネルギーの駆動信号を入力させ
て、前記放熱構造体を設けた前記エネルギー作用部で入
力エネルギーに応じた熱勾配を前記放熱構造体によって
生じさせ、この熱勾配に応じて発生する大きさが変化す
る気泡をインク中に生じさせ、この気泡の瞬間的な成長
による作用力に応じた量のインクを前記インク液面から
飛翔させ、飛翔したインクを被記録体に付着させるよう
にしたため、瞬間的に成長し、その後、収縮・消滅する
気泡による作用力でインクをエネルギー作用部対応位置
から飛翔させることができ、よって、オリフィスやスリ
ット状ノズルを用いることなく、かつ、泡の破裂による
インクミストの発生を伴なわないため、カブリ等のない
ドット状の高画質な鮮明画像を得ることができ、特に、
階調記録に際しては、画像情報に応じて可変された入力
エネルギーの駆動信号を与えて、熱勾配付与構造を持つ
エネルギー作用部で熱勾配を生じさせ、発生する気泡の
大きさを変え、飛翔するインク量を変えるだけで容易に
実現できるものである。
そのための構造としても、請求項2記載の発明のよう
に構成すればよく、微細なオリフィスやスリット状ノズ
ルがないため、目詰まりの問題はない。仮に、インクの
乾燥、紙粉等の異物の付着・混入等があっても、洗浄液
による洗浄等によって、本来の飛翔機能を容易に回復・
維持でき、また、オリフィス等を持たず、かつ、その形
成のため接合工程も不要なため、低コストで済み、工程
的にも接合部材が流路を詰まらせたり、あるいは、流路
を変形させたりつぶしたりすることもなく、さらには、
2次元平面構造のエネルギー作用部、熱勾配付与構造を
なす2次元平面構造の放熱構造体等についてもフォトフ
ァブリケーション技術によって形成することができ、高
密度・高集積化配列も可能なのである。
また、請求項3記載の発明によれば、放熱構造体を一
方の電極として兼用させたので、パターン構成を単純化
でき、低コスト化とともに、熱歪を低減させ耐久性を向
上させることもできる。
【図面の簡単な説明】
第1図ないし第13図は本発明の第一の実施例を示すもの
で、第1図は異なる大きさの気泡によるインク飛翔状態
を示す断面図、第2図はその気泡の大きさの様子を模式
的に示す概略平面図、第3図はのそのための駆動パルス
を示す波形図、第4図は既提案内容を示すヘッドの概略
分解斜視図、第5図はその一部の拡大平面図、第6図は
第5図のA−A線断面図、第7図はヒータ部付近を拡大
して示す断面図、第8図は飛翔原理を順に示す概略断面
図、第9図は本実施例の放熱構造体の原理的構成を示す
平面図、第10図はそのB−B線断面図、第11図はより具
体的な放熱構造体の構成を示す平面図、第12図はそのC
−C線断面図、第13図はD−D線断面図、第14図は変形
例を示す平面図、第15図はそのE−E線断面図、第16図
は本発明の第二の実施例を工程順に示す模式的平面図、
第17図は本発明の第三の実施例を示す放熱構造体のパタ
ーン例の平面図、第18図は障壁の具体的構成例を示す平
面図、第19図はその正面図、第20図は障壁形状の各種変
形例を示す概略平面図、第21図は障壁形状等の各種変形
例を示す概略平面図、第22図はその具体的構成例の一例
を示す斜視図、第23図はレーザ光を加熱源として利用し
た変形例を模式的に示す断面構造図、第24図はその放熱
構造体のパターン例を示す平面図、第25図はより具体的
な構成例を示す模式的構成図、第26図は従来の電気熱変
換体の構成例を示す断面図、第27図は異なる従来の電気
熱変換体の構成例を示す平面図である。 12……インク供給手段、17……障壁、18……インク液面
保持手段、19……エネルギー作用部、22……信号入力手
段、24……電気熱変換体、25,26……電極、29……イン
ク、30……気泡、32……放熱構造体、35……電極兼用放
熱構造体、51……エネルギー作用部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 渡辺 好夫 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株 式会社リコー内 (72)発明者 本村 修二 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株 式会社リコー内 (72)発明者 門永 雅史 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株 式会社リコー内 (56)参考文献 特開 昭55−132258(JP,A) 特開 平2−194961(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B41J 2/05

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】インク液面内に配設されてヒータ部と熱勾
    配付与構造を持つ2次元平面構造の放熱構造体とよりな
    るエネルギー作用部の前記ヒータ部に画像情報に応じて
    可変された入力エネルギーの駆動信号を入力させて、前
    記放熱構造体を設けた前記エネルギー作用部で入力エネ
    ルギーに応じた熱勾配を前記放熱構造体によって生じさ
    せ、この熱勾配に応じて発生する大きさが変化する気泡
    をインク中に生じさせ、この気泡の瞬間的な成長による
    作用力に応じた量のインクを前記インク液面から飛翔さ
    せ、飛翔したインクを被記録体に付着させるようにした
    ことを特徴とするインク飛翔記録方法。
  2. 【請求項2】インク供給手段と、このインク供給手段に
    より供給されたインクを保持するインク液面保持手段
    と、インク液面内に配設されてインク中に瞬間的に成長
    する気泡を生じさせる2次元平面構造のヒータ部と、こ
    のヒータ部の一部に積層されて熱勾配を生じさせる2次
    元平面構造の放熱構造体と、前記ヒータ部に画像情報に
    応じて可変された入力エネルギーを持つ駆動信号を与え
    る信号入力手段と、前記ヒータ部の近傍に位置してイン
    ク液面と略平行な方向への圧力の分散を阻止するための
    障壁とよりなることを特徴とするインク飛翔記録装置。
  3. 【請求項3】ヒーター部が、電気熱変換体層とこの電気
    熱変換体層に電気的に接続された一対の電極とよりな
    り、放熱構造体がこの一対の電極の一方を兼用するよう
    にしたことを特徴とする請求項2記載のインク飛翔記録
    装置。
JP25304490A 1990-09-21 1990-09-21 インク飛翔記録方法及びその装置 Expired - Fee Related JP3081222B2 (ja)

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