JP2927448B2 - 液体噴射記録装置 - Google Patents

液体噴射記録装置

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JP2927448B2 JP1122662A JP12266289A JP2927448B2 JP 2927448 B2 JP2927448 B2 JP 2927448B2 JP 1122662 A JP1122662 A JP 1122662A JP 12266289 A JP12266289 A JP 12266289A JP 2927448 B2 JP2927448 B2 JP 2927448B2
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Description

【発明の詳細な説明】 技術分野 本発明は、液体噴射記録装置に関し、より詳細には、
インクジェットプリンタのヘッド部に関する。
従来技術 ノンインパクト記録法は、記録時における騒音の発生
が無視し得る程度に極めて小さいという点において、最
近関心を集めている。その中で、高速記録が可能であ
り、而も所謂普通紙に特別の定着処理を必要とせずに記
録の行える所謂インクジェット記録法は極めて有力な記
録法であって、これまでにも様々な方式が提案され、改
良が加えられて商品化されたものもあれば、現在もなお
実用化への努力が続けられているものもある。
この様なインクジェット記録法は、所謂インクと称さ
れる記録液体の小滴(droplet)を飛翔させ、記録部材
に付着させて記録を行うものであって、この記録液体の
小滴の発生法及び発生された記録液小滴の飛翔方向を制
御する為の制御方法によって幾つかの方式に大別され
る。
先ず第1の方式は、例えば米国特許第3060429号明細
書に開示されているもの(Tele type方式)であって、
記録液体の小滴の発生を静電吸引的に行い、発生した記
録液体小滴を記録信号に応じて電界制御し、記録部材上
に記録液体小滴を選択的に付着させて記録を行うもので
ある。
これに就いて、更に詳述すれば、ノズルと加速電極間
に電界を掛けて、一様に帯電した記録液体の小滴をノズ
ルより吐出させ、該吐出した記録液体の小滴を記録信号
に応じて電気制御可能な様に構成されたxy偏向電極間を
飛翔させ、電界の強度変化によって選択的に小滴を記録
部材上に付着させて記録を行うものである。
第2の方式は、例えば米国特許第3596275号明細書、
米国特許第3298030号明細書等に開示されている方式(S
weet方式)であって、連続振動発生法によって帯電量の
制御された記録液体の小滴を発生させ、この発生された
帯電量の制御された小滴を、一様の電界が掛けられてい
る偏向電極間を飛翔させることで、記録部材上に記録を
行うものである。
具体的には、ピエゾ振動素子の付設されている記録ヘ
ッドを構成する一部であるノズルのオリフィス(吐出
口)の前に記録信号が印加されている様に構成した帯電
電極を所定距離だけ離して配置し、前記ピエゾ振動素子
に一定周波数の電気信号を印加することでピエゾ振動素
子を機械的に振動させ、前記吐出口より記録液体の小滴
を吐出させる。この時前記帯電電極によって吐出する記
録液体小滴には電荷が静電誘電され、小滴は記録信号に
応じた電荷量で帯電される。帯電量の制御された記録液
体の小滴は、一定の電界が一様に掛けられている偏向電
極間を飛翔する時、付加された帯電量に応じて偏向を受
け、記録信号を担う小滴のみが記録部材上に付着し得る
様にされている。
第3の方式は、例えば米国特許第3416153号明細書に
開示されている方式(Hertz方式)であって、ノズルと
リング状の帯電電極間に電界を掛け、連続振動発生法に
よって、記録液体の小滴を発生霧化させて記録する方式
である。即ちこの方式ではノズルと帯電電極間に掛ける
電界強度を記録信号に応じて変調することによって小滴
の霧化状態を制御し、記録画像の階調性を出して記録す
る。
第4の方式は、例えば米国特許第3747120号明細書に
開示されている方式(stemme方式)で、この方式は前記
3つの方式とは根辺的に原理が異なるものである。
即ち、前記3つの方式は、何れもノズルより吐出され
た記録液体の小滴を、飛翔している途中で電気的に制御
し、記録信号を担った小滴を選択的に記録部材上に付着
させて記録を行うのに対して、このStemme方式は、記録
信号に応じて吐出口より記録液体の小滴を吐出飛翔させ
て記録するものである。
つまり、Stemme方式は、記録液体を吐出する吐出口を
有する記録ヘッドに付設されているピエゾ振動素子に、
電気的な記録信号を印加し、この電気的記録信号をピエ
ゾ振動素子の機械的振動に変え、該機械的振動に従って
前記吐出口より記録液体の小滴を吐出飛翔させて記録部
材に付着させることで記録を行うものである。
これ等、従来の4つの方式は各々に特長を有するもの
であるが、又、他方において解決され得る可き点が存在
する。
即ち、前記第1から第3の方式は記録液体の小滴の発
生の直接的エネルギーが電気的エネルギーであり、又、
小滴の偏向制御も電界制御である。その為、第1の方式
は、構成上はシンプルであるが、小滴の発生に高電圧を
要し、又、記録ヘッドのマルチノズル化が困難であるの
で高速記録には不向きである。
第2の方式は、記録ヘッドのマルチノズル化が可能で
高速記録に向きが、構成上複雑であり、又記録液体小滴
の電気的制御が高度で困難であること、記録部材上にサ
テライトドットが生じ易いこと等の問題点がある。
第3の方式は、記録液体小滴を霧化することによって
階調性に優れた画像が記録され得る特長を有するが、他
方霧化状態の制御が困難であること、記録画像にカブリ
が生ずること及び記録ヘッドのマルチノズル化が困難
で、高速記録には不向きであること等の諸問題点が存す
る。
第4の方式は、第1乃至第3の方式に比べ利点を比較
的多く有する。即ち、構成上シンプルであること、オン
デマンド(on−demand)で記録液体をノズルの吐出口よ
り吐出して記録を行う為に、第1乃至第3の方式の様に
吐出飛翔する小滴の中、画像の記録に要さなかった小滴
を回収することが不要であること及び第1乃至第2の方
式の様に、導電性の記録液体を使用する必要性がなく記
録液体の物質上の自由度が大であること等の大きな利点
を有する。而乍ら、一方において、記録ヘッドの加工上
に問題があること、所望の共振数を有するピエゾ振動素
子の小型化が極めて困難であること等の理由から記録ヘ
ッドのマルチノズル化が難しく、又、ピエゾ振動素子の
機械的振動という機械的エネルギーによって記録液体小
滴の吐出飛翔を行うので高速記録には向かないこと、等
の欠点を有する。
更には、特開昭48−9622号公報(前記米国特許第3747
120号明細書に対応)には、変形例として、前記のピエ
ゾ振動素子等の手段による機械的振動エネルギーを利用
する代わりに熱エネルギーを利用することが記載されて
いる。
即ち、上記公報には、圧力上昇を生じさせる蒸気を発
生する為に液体を直接加熱する加熱コイルをピエゾ振動
素子の代りの圧力上昇手段として使用する所謂バブルジ
ェットの液体噴射記録装置が記載されている。
しかし、上記公報には、圧力上昇手段としての加熱コ
イルに通電して液体インクが出入りし得る口が一つしか
ない袋状のインク室(液室)内の液体インクを直接加熱
して蒸気化することが記載されているに過ぎず、連続繰
返し液吐出を行う場合には、どの様に加熱すれば良いか
は、何等示唆されるところがない。加えて、加熱コイル
が設けられている位置は、液体インクの供給路から遥か
に遠い袋状液室の最深部に設けられているので、ヘッド
構造上複雑であるに加えて、高速での連続繰返し使用に
は、不向きとなっている。
しかも、上記公報に記載の技術内容からでは、実用上
重要である発生する熱で液吐出を行った後に次の液吐出
の準備状態を速やかに形成することは出来ない。
このように従来法には、構成上、高速記録化上、記録
ヘッドのマルチノズル化上、サテライトドットの発生お
よび記録画像のカブリ発生等の点において一長一短があ
って、その長所を利する用途にしか適用し得ないという
制約が存在していた。
以上述べたバブルジェット記録法は、大別して米国特
許第4438191号明細書に開示されているように発熱体面
と垂直な方向に吐出する方式と特公昭61−59912号公報
に開示されているように、発熱体面に平行な方向に吐出
する方式に分けられ、それぞれ長所短所がある。特に、
後者はノズル基板を用いず、流路がそのままオリフィス
を形成する為、ヘッド作製が簡単という優れた点を有す
る。さらに、特開昭54−59139号公報の明細書中に述べ
られているように、オリフィスと発熱体の距離を変える
ことにより、吐出液滴の大きさやスピードを制御するこ
とができるという特徴も有している。即ち、発熱体がオ
リフィスに近くなる程、滴ユピードを増し、安定した記
録画像を得ることができる。しかしながら、特公昭59−
43314号公報に述べられているように近接し過ぎる場合
には、従来技術ではインクが一定の大きさの小滴となら
ずに霧状の微細滴となって、乱れ飛ぶ、いわゆるスプラ
ッシュ現象が起きてしまい、記録画像に著しい劣化を生
じさせてしまった。特公昭59−43314号公報は、このス
プラッシュ現象を解決したものであるが、その為に、発
熱体がオリフィスに近くなる程、滴スピードが増すとい
う特徴に限界が生じてしまった。また、特公昭59−4331
4号公報、及び特公昭61−59912号公報に記載の発熱体面
に平行な方向に吐出する方式の場合、単純に言えば、オ
リフィス側のインクに作用するのは、発生気泡のオリフ
ィス側半分であり、即ち、気泡の体積膨張による圧力
は、オリフィス側に作用して液滴を吐出させると共に、
相当量はバック波として供給口側に作用してしまう。つ
まり、これは、吐出効率が悪くその為、特公昭59−4331
4号公報に述べられているように、流路方向の長さを、
流路巾方向の長さの2倍とした発熱体にして、有効面積
を確保しなければならなかった。この場合、発熱体の抵
抗値は高くなり、吐出に必要な電流を得るには高い電圧
が必要となり大きなエネルギーを要する。このことは、
現在のように16本/mmより小さい配列密度で、発熱体数
が256個、吐出周波数が4kHz以下のプリンター等におい
ては、それ程問題にならなくとも、コピア等の、より高
画像品質高速印字を狙う為には、発熱体を超高密度(例
えば16本/mm以上)で256個を越えるような高集積ヘッド
を、高周波数駆動(例えば4kHzより上)する必要があ
り、その場合には、駆動エネルギーが高ければ、電源容
量も大きくしなければならず、コスト・アップとなる。
さらに、レーザー等を使用して気泡を生成する場合には
高出力が高価、大型である現在、低エネルギー駆動でき
ることが望ましい。
目的 本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもの
で、低エネルギーで、高画像品質、高速印字を行うこと
を主たる目的とする。また別の目的は、スプラッシュや
ミストやサテライト状にならずに滴速度が速く、安定し
た吐出を行うヘッドを提供することである。更に別の目
的は、より高速(例えば4kHzより上)で吐出するマルチ
ノズルヘッドのインク滴吐出性能の向上をはかることで
ある。更に別の目的は、製作が容易で極めて実用的な高
密度マルチオリフィス化を可能にする新規な液体噴射記
録装置を提供することにある。
構成 本発明は、上記目的を達成するために、記録液を吐出
する為の吐出オリフィスと、該吐出オリフィスに連通し
た液路と、該液路と連通し、該液路に前記記録液を供給
する為の供給口と、該液路内の前記記録液に圧力を作用
させる為の熱エネルギー発生部とを有する液体噴射記録
装置であって、前記吐出オリフィスおよび液路ならびに
熱エネルギー発生部は、16本/mm以上の密度で配列さ
れ、前記熱エネルギー発生部は4kHzより高い周波数で駆
動される液体噴射記録装置において、該液体噴射記録装
置は、前記熱エネルギー発生部で、瞬時に気泡を発生さ
せ、該気泡の成長による圧力で前記記録液を前記吐出オ
リフィスより吐出、飛翔させ、記録する液体噴射記録装
置であって、前記液路の前記熱エネルギー発生部の後端
部より吐出オリフイス側前方の天井部分を高くしたこと
を特徴としたものである。以下、本発明の実施例に基づ
いて説明する。
最初に、第3図に基づいてバブルジェットによるイン
ク噴射の原理について説明すると、 (a)は定常状態であり、オリフィス面でインク2の表
面張力と外圧とが平衡状態にある。
(b)はヒータ3が加熱されて、ヒータ3の表面温度が
急上昇し隣接インク層に沸騰現象が起きるまで加熱さ
れ、微小気泡4が点在している状態にある。
(c)はヒータ3の全面で急激に加熱された隣接インク
層が瞬時に気化し、沸騰膜を作り、この気泡4が生長し
た状態である。この時、ノズル内圧力は上昇し、オリフ
ィス面での外圧とのバランスがくずれ、オリフィスより
インク柱が生長し始める。
(d)は気泡が最大に生長した状態であり、オリフィス
面より気泡の体積に相当する分のインク2が押し出され
る。この時、ヒータ3には電流が流れていない状態にあ
り、ヒータ3の表面温度は降下しつつある。気泡5の体
積の最大値は電気パルス印加のタイミングからややおく
れる。
(e)は気泡5がインクなどにより冷却されて収縮を開
始し始めた状態を示す。インク柱の先端部では押し出さ
れた速度を保ちつつ前進し、後端部では気泡の収縮に伴
ってノズル内圧の減少によりオリフィス面からノズル内
へインクが逆流してインク柱にくびれが生じている。
(f)はさらに気泡5が収縮し、ヒータ面にインクが接
しヒータ面がさらに急激に冷却される状態にある。オリ
フィス面では、外圧がノズル内圧より高い状態になるた
めメニスカスが大きくノズル内に入り込んで来ている。
インク柱の先端部は液滴になり記録紙の方向へ2m/sec以
上の速度で飛翔している。
(g)はオリフィスにインクが毛細管現象により再び供
給(リフィル)されて(a)の状態にもどる過程で、気
泡は完全に消滅している。8は飛翔インク滴である。
第4図は、上記噴射原理によるバブルジェット記録の
全体斜視図である。図中、9は発熱体基板、10は蓋基
板、11はインク供給口、12はオリフィスである。
第5図は、発熱抵抗体を用いる気泡発生手段の構造を
説明するための図で、第5図(a)は記録ヘッドのオリ
フィス側から見た正面部分図、第5図(b)は、第5図
(a)に一点鎖線X−Xで示す部分で切断した場合の切
断部分である。図中、13は基板、14は蓋基板、15はオリ
フィス、16は液吐出部、17は熱作用部、18は熱発生部、
19は熱作用面、20は下部層、21は電気熱変換体(発熱抵
抗体)、22は保護層、23,24は電極、25は絶縁層、26は
接着層である。電気熱変換体が設けられた基板13の表面
に、所定の密度で所定の巾と深さの溝を所定数設け、蓋
基板10で覆う様に接合することによって、オリフィス15
と液吐出部16が形成された構造を有している。液吐出部
16は、その終端に液滴を吐出させるためのオリフィス
と、電気熱変換体21より発生される熱エネルギーが液体
に作用し気泡を発生し、その体積の膨張と収縮による急
激な状態変化を引き起こす所である熱作用部17を有して
いる。
熱作用部17は、電気熱変換体21の熱発生部18の上部に
位置し、熱発生部18の液体と接触する熱作用部19をその
底面としている。熱発生部18は、基板13上に設けられた
下部層20、該下部層20上に設けられた電極23、絶縁層2
5、発熱抵抗体21、該発熱抵抗体21には、熱を発生させ
る為に該発熱抵抗体21に通電するための電極24が設けら
れている。電極23は、各液吐出部の熱発生部に共通の電
極であり、電極24は各液吐出部の熱発生部を選択液に発
熱させる為の選択電極であって、電極23,24は液吐出部
の流路に沿って設けられている。基板13の材料として
は、ガラス、セラミックス、金属或いは、シリコン等で
ある。下部層20,絶縁層25を構成する材料としては、SiO
2が好ましく用いられ、下部層の膜厚としては、通常0.1
〜10μmであり、スパッタリング、CVD、Siの熱酸化等
の周知の薄膜形成法により設けられる。絶縁層の膜厚も
通常0.1〜10μmであり、スパッタリング、CVD等で形成
される。
発熱抵抗体21を構成する材料として、有用なものに
は、たとえば、タンタル−SiO2の混合物、窒化タンタ
ル、ニクロム、銀−パラジウム合金、シリコン半導体、
あるいはハフニウム、ランタン、ジルコニウム、チタ
ン、タンタル、タングステン、モリブデン、ニオブ、ク
ロム、バナジウム等の金属の硼化物があげられる。
これらの発熱抵抗体21を構成する材料の中で、殊に金
属硼化物が優れたものとしてあげることができ、その中
でも最も特性の優れているのが、硼化ハフニウムであ
り、次いで、硼化ジルコニウム、硼化ランタン、硼化タ
ンタル、硼化バナジウム、硼化ニオブの順となってい
る。
発熱抵抗体21は、上記の材料を用いて、電子ビーム蒸
着やスパッタリング等の手法を用いて形成することがで
きる。発熱抵抗体21の膜厚は、単位時間当りの発熱量が
所望通りとなるように、その面積、材質及び熱作用部分
の形状及び大きさ、更には実際面での消費電力等に従っ
て決定されるものであるが、通常の場合、0.001〜5μ
m、好適には0.01〜1μmとされる。
電極23,24を構成する材料としては、通常使用されて
いる電極材料の多くのものが有効に使用され、具体的に
は、たとえばAl,Ag,Au,Pt,Cu等があげられ、これらを使
用して蒸着等の手法で所定位置に、所定の大きさ、形
状、厚さで設けられる。
保護層22に要求される特性は、発熱抵抗体21で発生さ
れた熱を記録液体に効果的に伝達することを妨げずに、
記録液体より発熱抵抗体21を保護するということであ
る。保護層22を構成する材料として有用なものには、た
とえば酸化シリコン、窒化シリコン、酸化マグネシウ
ム、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウ
ム等があげられ、これらは、電子ビーム蒸着やスパッタ
リング等の手法を用いて形成することができる。保護層
22の膜厚は、通常は0.01〜10μm、好適には0.1〜5μ
m、最適には0.1〜3μmとされるのが望ましい。
また、保護層形成後、発熱部17を除く電極部分に電極
保護層を設けても良い。電極保護層に要求される特性
は、耐インク性、耐熱性に優れ、電気絶縁性が良いこと
等である。よって、成膜性が良く、ピンホールが少な
く、使用インクに対し膨潤、溶解しないことが要求され
る。電極保護層を形成する材料としては、上記条件を満
たす多くのものが使用出来る。例えば、シリコン樹脂、
フッ素樹脂、芳香族ポリアミド、付加重合型ポリイミ
ド、金属キレート重合体、チタン酸エステル、エポキシ
樹脂、フタル酸樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、P−ビ
ニルフェノール樹脂、ザイロック樹脂、トリアジン樹脂
等の樹脂、さらに高密度マルチオリフィスタイプの記録
ヘッドを作製するのであれば、上記した有機材料とは別
に、微細フォトリソグラフィー加工が極めて容易とされ
る有機質材料を使用するのが望ましい。
以上の様な工程を経て得られた発熱体基板上に感光性
樹脂で流路を形成する。まず、基板表面を清浄化すると
共に乾燥させた後、80〜100℃程度に加温されたドライ
フィルムフォトレジスト(膜厚、約15〜100μm)を0.3
〜0.4f/分の速度で、1〜3kg/cm2の加圧条件下でラミネ
ートする。続いて、所定のパターンを有するフォトマス
クを重ね合わせた後、このフォトマスクの上部から露光
を行う。このとき、発熱部の設置位置と上記パターンの
位置合わせを周知の手段で行っておく必要がある。
次に、露光済みのドライフィルムフォトレジストの未
露光部分を所定の有機溶剤から成る現像液にて溶解除去
した後、耐インク性向上のため、熱硬化処理(例えば、
150〜250℃で30分〜6時間加熱)又は、紫外線照射(例
えば、50〜200mW/tm2、又はそれ以上の紫外線強度で)
を行い、充分に重合硬化反応を強める。
熱硬化と紫外線による硬化の両方を兼用するのも効果
的である。
感光性樹脂の層厚としては特に制限されるものではな
いが、インクジェット記録ヘッドとしての実用性を考慮
するならば、少なくとも5〜100μm程度、好適には10
〜50μm、最適には15〜50μmとするのが望ましい。従
って、感光性樹脂としても、このような厚さに積層し得
るものが好ましく、市販の感光性樹脂としては、例え
ば、デュポン社製パーマネントフォトポリマーコーティ
ングRISTON,ソルダーマスク730S,同740S,同750FR,同740
FR,同SMI等の商品名で市販されている感光性樹脂があ
る。
このようにして形成された基板と、流路の天井部分を
形成するための蓋基板10を接着層を介して接合する。蓋
基板の材料としては、発熱体基板と同様なものが使用で
きる。即ち、シリコン、ガラス、セラミックス等であ
る。これら材料で形成した基板に感光性ドライフィルム
を半硬化の状態で設け、溝が形成された基板に接合した
後、熱をかけ本硬化させて発熱体基板と蓋基板を接合す
る。
第1図(a),(b)は、本発明による液体噴射記録
装置の一実施例を説明するための構成図で、(a)は蓋
基板を流路側より見た図、(b)は(a)のY−Y断面
図である。図中、14は蓋基板、26は接着層、27は圧力調
整部、28はノズル面である。蓋基板14はガラス、接着層
26は光硬化性樹脂である。接着層は、液状光硬化樹脂接
着剤を周知の手段、例えばスピナーコート法、ディップ
コート法、ローラーコート法によって基板面に塗工した
後、半硬化させておく。
尚、具体的には、ガラス基板上の油分及び水分除去の
ための表面処理を行いスピナーにて、回転数と時間によ
って、所望のレジスト膜厚(0.1〜100μm)に設定し蓋
基板上にコートした後、第1図(a)のパターンとなる
ようなフォトマスクを介して、露光、現像し、溝が形成
された発熱体基板に接合した後、熱をかけ本硬化させ
る。尚、この時、紫外線照射による硬化反応も利用した
方がいっそう効果的である。以上のようにして、a=40
μm,b=40μm,c=22.5μmの圧力調整部を有する膜厚10
μmの接着層を形成し、第2図(a),(b)のような
ヘッドを作成した。試作したヘッドは、流路壁の巾30μ
m、流路巾32.5μm、即ち16本/mmのヘッドであり、流
路壁高さは35μmである。本実施例の場合、オリフィス
の最大径は、図に示したように対角の位置にある流
路壁の角間の距離とみなす。よって=47.76μmと
なる。発熱体構造は、第5図(b)に示したものであ
り、これは、選択電極及び共通電極が同一方向に形成す
ることができる為、オリフィス面に発熱部を近づけるこ
とができ、本発明には極めて好適な構造である。試作し
たヘッドのオリフィスと発熱部の距離は、=5
μm,10μm,15μm,30μm,45μm,60μmである。発熱部の
長さは流路巾方向30μm,流路方向30μmの正方形とし
た。この時発熱体の抵抗値は、27Ωであった。また、比
較の為に従来型として、発熱部の流路巾方向長さ30μm,
流路方向長さ60μm,発熱体抵抗値54Ωで、圧力調整部を
設けず、=45μm,60μm,のヘッドを試作した。これ
らヘッドをパルス巾6μsで駆動し、吐出滴速度Vj1
5〜6m/secを得る為のエネルギーを比較し、第1表のよ
うな結果を得た。
以上のように圧力を逃がす手段を設けることでオリフ
ィスに近接した所に発熱体を設けることが可能となり、
圧力を適度に逃がすことで、低エネルギーで十分な滴速
で安定した吐出が可能となった。また、この時、最大吐
出周波数(ミスト、又は、スプラッシュ等が発生せず、
安定して吐出する周波数)を測定したところ、従来型が
3.8kHzであったのに対し、本発明の実施例では、4.2kHz
であった。また、本発明の実施例においては、圧力調整
部を隣接流路と連通させて設けたが、第10図のように各
流路に別個に設けてもよい。この場合、隣接流路と連通
していないので、クロストークを起こすことがない。ま
た、本発明の実施例では、オリフィス面に圧力調整部が
露出した形状となっているが、第11図(a),(b)の
ように、オリフィス面に露出させない構造でもよい。こ
の場合、オリフィスは対称形となり、噴射方向の安定性
が増すという効果を有する。オリフィスと発熱体間距離
はオリフィスの最大径より小さいが10μm≦
が好ましい。
第6図(a),(b)は、本発明のさらに他の実施例
で、(a)は正面図、(b)はそのA−A断面図であ
る。この実施例において、発熱部19の上部の接着層を取
り除き、また、(b)に示すように流路上のオリフィス
側端部を斜めに設けたものである。
第7図は、本発明の実施例の接着層のパターン方法を
示したものであり、以下に述べるように非常に簡単で安
価に形成することができる。
第7図において、清浄後に乾燥させた蓋基板14上に光
硬化性樹脂26aを所望の厚さ(0.1〜100μm)にコート
する。次に第7図の接着層が得られるようにパターニン
グされたフォト・マスク29の上から、マスクに対して角
度θの入射角をもつ光線で露光する。フォトマスク29a
部分は光線を通さないので、これで覆われる領域は露光
されない。したがって、フォト・マスク29によって露光
される領域と露光されない領域の境界は、第7図(a)
の破線のようになる。
このとき、露光された部分は、光重合反応を起こし、
硬化し溶剤に対して不溶となる(第7図(b)の斜線部
分)。一方、露光されなかった部分は溶剤に対して可溶
のまま残る。次に露光後の光硬化性樹脂26bを溶剤中に
浸漬させて未硬化の部分を除去すれば所望の接着層(第
7図(c))を形成することができる。
第8図において、他の形成法を述べる。第7図で述べ
たように蓋基板上に光硬化性樹脂をコートし、フォト・
マスク面に対しθの入射角の光線で露光し、光のハレー
ションを利用する。即ち、図中の入射角θの光は、蓋基
板上で反射角θで反射する。この時、ポジ型のレジスト
は、露光された部分が溶剤に対し可溶性となり、同様に
現像すれば所望の接着層を得ることができる。
第9図は、光のイラジェーションを利用する方法であ
る。これは、該基板上にポジ型レジスト26bをコート
し、その上からフォト・マスク29を介して露光Aを行う
と、露光されなかった部分(図中の斜線部)のみ溶剤に
対し不溶性を示し、露光された部分は溶剤に可溶性とな
る。ついで、露光B(露光Aよりも強い散乱光)を行う
と、マスクを通じて入射してきた光線は、ポジ型レジス
ト26bの中に進入していくが散乱により光線の進路が変
られて周囲の光の当っていない部分も感光してしまう。
すなわち、図中で破線で示された入射光によって感光さ
れた部分の境界は破線のように円弧状になる。したがっ
て上記と同様に現像すると、所望の接着層を得ることが
できる。
以上のようにして得られた流路において発生した気泡
はオリフィス側に作用すると共に、その圧力波は発熱部
蓋基板方向に進む。蓋基板において、従来型流路の場
合、反射波は発熱部方向およびオリフィス、供給口方向
へと反射されるが、本発明の実施例の流路においては、
相当量がオリフィス側に反射される。したがって、通常
吐出しないような気泡(即ち、発熱体の面積が小さい)
でも、本発明の実施例においては、反射波を利用して吐
出させることができる。よって、低エネルギーで駆動す
ることが可能となる。この時、反射波がオリフィスに効
果的に働く為には、がオリフィスに接近しているこ
と(がオリフィス最大口径より小)が必要である。
第12図は、記録液体に気泡を発生させる別の手段を説
明するための図で、図中、81はレーザ発振器、82は光変
調駆動回路、83は光変調器、84は走査器、85は集光レン
ズで、レーザ発振器81より発生されたレーザ光は、光変
調器82において、光変調器駆動回路82に入力されて電気
的に処理されて出力される画情報信号に従ってパルス変
調される。パルス変調されたレーザ光は、走査器84を通
り、集光レンズ85によって熱エネルギー作用部の外壁に
焦点が合うように集光され、記録ヘッドの外壁86を加熱
し、内部の記録液体87内で気泡を発生させる。あるいは
熱エネルギー作用部の壁86は、レーザ光に対して透過性
の材料で作られ、集光レンズ85によって内部の記録液体
87に焦点が合うように集光され、記録液体を直接加熱す
ることによって気泡を発生させてもよい。
第13図は、上述のごときレーザ光を用いたプリンター
の一例を説明するための図で、ノズル部91は、高密度に
(たとえば16ノズル/mm)、又、紙91の紙巾(たとえばA
4横巾)すべてにわたってカバーされるように集積され
ている例を示している。
レーザ発振器81より発振されたレーザ光は、光変調器
83の入口開口に導かれる。光変調器83において、レーザ
光は、光変調器83への画情報入力信号に従って強弱の変
調を受ける。変調を受けたレーザ光は、反射鏡88によっ
てその光路をビームエキスパンダー89の方向に曲げら
れ、ビームエキスパンダー89に入射する。ビームエキス
パンダー89により平行光のままビーム径が拡大される。
次に、ビーム径の拡大されたレーザ光は、高速で定速回
転する回転多面鏡90に入射される。回転多面鏡90によっ
て掃引されたレーザ光は、集光レンズ85により、ドロッ
プジェネレータの熱エネルギー作用部外壁86もしくは内
部の記録液体に結像する。それによって、各熱エネルギ
ー作用部には、気泡が発生し、記録液滴を吐出し、記録
紙92に記録に行なわれる。
第14図は、さらに別の気泡発生手段を示す図で、この
例は、熱エネルギー作用部の内壁側に配置された1対の
放電電極100が、放電装置101から高電圧のパルスを受
け、記録液中で放電をおこし、その放電によって発生す
る熱により瞬時に気泡を形成するようにしたものであ
る。
第15図乃至第22図は、それぞれ第14図に示した放電電
極の具体例を示す図で、 第15図に示した例は、 電極100を針状にして、電界を集中させ、効率よく
(低エネルギーで)放電をおこさせるようにしたもので
ある。
第16図に示した例は、 2枚の平板電極にして、電極間に安定して気泡が発生
するようにしたものである。針状の電極より、発生気泡
の位置が安定している。
第17図に示した例は、 電極にほぼ同軸の穴をあけたものである。2枚の電極
の両穴がガイドになって、発生気泡の位置はさらに安定
する。
第18図に示した例は、 リング状の電極にしたものであり、基本的には第17図
に示した例と同じであり、その変形実施例である。
第19図に示した例は、 一方をリング状電極とし、もう一方を針状電極とした
ものである。リング状電極により、発生気泡の安定性を
狙い、針状電極により電界の集中により効率を狙ったも
のである。
第20図に示した例は、 一方のリング状電極を熱エネルギー作用部の壁面に形
成したものである。これは、第20図に示した例の効果に
加えて、基板上に平面的に電極を形成するという製造上
の容易さを狙ったものである。このような平面的な電極
は、蒸着(あるいはスパッタリング)や、フォトエッチ
ングの技術によって容易に高密度な複数個のものが製作
され得る。マルチアレイに特に威力を発揮する。
第21図に示した例は、 第20図に示した例のリング状電極形成部を電極の外周
にそった形状で周囲から一段高くしたものである。やは
り、発生気泡の安定性を狙ったものであり、第19図に示
したものよりも3次元的なガイドを付け加えた分だけ安
定する。
第22図に示した例は、 第21図に示した例とは反対に、リング状電極形成部
を、周囲から下へ落しこんだ構造としたもので、やは
り、発生気泡は安定して形成される。
なお、本発明は、従来よりある24×24ドットマトリッ
クスで印字するプリンタのように中程度の印字密度(18
0dpi相当)をもつマルチインクジェットに適用できるの
は、いうまでもないが、より高密度、高精細な品質を要
求されるコピア(例えば、16本/mm以上の高密度)に適
用するのがよい。
また、コピアのように高精細の画像を形成するために
は、画素径が小さくなる為、必然的に紙面に打ち込むド
ット数は多くなり単純に考えれば一枚の画像を形成する
のには、時間が多くかかる。従って、高い駆動周波数ヘ
ッドを駆動するのがよく、その意味からも、本発明は高
い周波数で駆動(例えば、4kHzより上)するヘッドにお
いて適用するのがよい。
効果 以上の説明から明らかなように、本発明によると、熱
エネルギー発生部で、瞬時に気泡を発生させ、該気泡の
成長による圧力で記録液を吐出オリフィスより吐出、飛
翔させ、記録する型式の液体噴射記録装置において、液
路の前記熱エネルギー発生部の吐出オリフィス側の天井
部分を高くし、この天井を高くした部分で、気泡発生に
よる圧力を適度に緩和できるようにしたので、従来には
ない高速(高応答周波数)、高密度配列で、インク滴噴
射が困難となるような液体噴射記録装置であっても、イ
ンク滴が飛散するスプラッシュ現象が起こらず、繰り返
し再現性がよく、噴射方向も安定したインク滴噴射を得
ることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図(a),(b)は、本発明による液体噴射記録装
置の一実施例を説明するための構成図で、(a)は蓋基
板を流路側より見た図、(b)はそのY−Y断面図、第
2図(a),(b)は、気泡発生手段の構造を説明する
ための図で、(a)はヘッドのオリフィス側から見た正
面部分図、(b)はそのZ−Z断面図、第3図は、ヘッ
ドのバルブジェットインク吐出と気泡発生・消滅の原理
図、第4図は、記録ヘッドの全体斜視図、第5図は、気
泡発生手段の構造を説明するための図で、(a)はヘッ
ドのオリフィス側から見た正面部分図、(b)はそのX
−X断面図、第6図(a),(b)は、本発明のさらに
他の実施例を示す図で、(a)はヘッドのオリフィス側
から見た正面部分図、(b)はそのA−A断面図、第7
図(a)〜(c)は、接着層のパターン形成方法を示す
図、第8図は、他の形成方法を示す図、第9図は、光の
イラジェーションを利用する方法を示す図、第10図は、
圧力調整部を各流路に別個に設けた図、第11図(a),
(b)は、本発明のさらに他の実施例を示す図で、
(a)はヘッドのオリフィス側から見た正面部分図、
(b)はそのB−B断面図、第12図は、レーザ光を用い
た気泡発生手段の一例を説明するための図、第13図は、
プリンターの一例を説明するための図、第14図は、放電
を利用した気泡発生手段の一例を説明するための図、第
15図乃至第22図は、それぞれ第14図に示した放電電極の
具体例を示す図である。 13……基板、14……蓋基板、15……オリフィス、16……
液吐出部、17……熱作用部、18……熱発生部、19……熱
作用面、20……下部層、21……電気熱変換体(発熱抵抗
体)、22……保護層、23,24……電極、25……絶縁層、2
6……接着層、27……圧力調整部、28……ノズル面。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−251150(JP,A) 特開 昭62−259863(JP,A) 特開 昭56−46769(JP,A) 特開 昭55−132275(JP,A) 特開 昭55−132270(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B41J 2/05

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】記録液を吐出する為の吐出オリフィスと、
    該吐出オリフィスに連通した液路と、該液路と連通し、
    該液路に前記記録液を供給する為の供給口と、該液路内
    の前記記録液に圧力を作用させる為の熱エネルギー発生
    部とを有する液体噴射記録装置であって、前記吐出オリ
    フィスおよび液路ならびに熱エネルギー発生部は、16本
    /mm以上の密度で配列され、前記熱エネルギー発生部は4
    kHzより高い周波数で駆動される液体噴射記録装置にお
    いて、該液体噴射記録装置は、前記熱エネルギー発生部
    で、瞬時に気泡を発生させ、該気泡の成長による圧力で
    前記記録液を前記吐出オリフィスより吐出、飛翔させ、
    記録する液体噴射記録装置であって、前記液路の前記熱
    エネルギー発生部の後端部より吐出オリフイス側前方の
    天井部分を高くしたことを特徴とする液体噴射記録装
    置。
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