JP3068983B2 - 消臭材 - Google Patents

消臭材

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  • Disinfection, Sterilisation Or Deodorisation Of Air (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は担子菌類を原料とする消
臭材に関する。
【0002】
【従来の技術】古来より臭いは人類の生活や文化に重要
な役割を果たしてきた。近年、高い生活水準に達した人
々はこの臭いのもたらす意義を高度に認識し、より快適
な生活を得るために臭いを操作することを試みるように
なった。その中で臭いを除去する試みが消臭技術であ
り、各産業分野においてその需要が高まっている。消臭
物質を使用することは、有効かつ一般的な消臭方法であ
る。銅クロロフィリンナトリウム、界面活性剤、殺菌
剤、芳香剤、活性炭等が消臭物質として広く使用されて
いるが、これらはすべての悪臭に対して有効であるとい
うわけではなく、またあらゆる消臭場面が要求する条件
に適しているというわけではない。例えば安全性や異味
異臭を付加しないことが消臭物質の条件として要求され
る食品分野では、上記消臭物質は使用に際していずれも
何らかの制限が加えられる。茶抽出物、サイクロデキス
トリン、植物抽出物が天然の消臭材として次々と提案さ
れるに至ったのは、この安全性を重視する指向の表れで
あり、また食品分野における新規消臭材の希求の高まり
であると言える。
【0003】一方、担子菌類は食用、薬用と共にその機
能が着目され、多くの生理活性物質が担子菌類の子実
体、栄養菌糸体から発見されている。消臭技術において
も担子菌類の機能を利用した種々の発明がなされてい
る。サルノコシカケ科に属するきのこの抽出物を脱臭用
化粧料組成物として使用するもの(特開昭50−762
41号)、マッシュルームやエノキタケ、ブナシメジ、
ヒラタケ、ナメコの子実体抽出物から得られる消臭剤
(特開平2−277456号、同3−119974
号)、これらは担子菌の子実体を利用する消臭方法であ
る。菌じん類の子実体又は菌糸体を素材とした消臭剤
(特開昭62−181048号)は担子菌類の子実体の
利用及び担子菌類の固体培養に関する発明である。担子
菌を植え付けることによって製造する動物用糞尿防臭健
康飼料(特開平1−174340号)、きのこ培養残さ
を利用した簡易脱臭装置〔埼玉県養鶏試験場研究報告、
No.23、第55〜62頁(1989)〕はいずれも
担子菌の固体培養に由来する技術であり、しかも使用対
象、使用方法が限定されている。ハリタケ科に属する担
子菌類を培養して得られる香気物質を飲食品、化粧品、
消臭剤等に使用するという発明(特開平4−45793
号)がなされているが、これは芳香剤としての感覚的な
消臭を目的とするもので、ここで述べる臭いの質の変化
に由来する消臭効果とは目的を異にする。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】消臭技術はその対象と
なる悪臭が多種類に渡り、適用条件もまた状況に応じて
異なる。種々の消臭材を用いた消臭方法が提案されてい
るにも関わらず、実用面では充分であるとはいえず、各
産業分野は新規な消臭材や消臭技術を希求している。安
全性を要望する背景の下、天然消臭材も数多く提案され
たがこれらは銅クロロフィリンナトリウム等の消臭材と
比較した場合、その効果が劣ることが多い。上記現状に
かんがみ、本発明の目的は新規消臭材を提供することに
あり、特に、その高い消臭効果が確認されている銅クロ
ロフィリンナトリウムと同等以上の効果を有し、かつ安
全性が高く簡便な手段によって得ることのできる消臭材
を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明を概説すると、本
発明は、担子菌類の液体培養物ろ液及び/又はその処理
物を主成分とする消臭材に関する。
【0006】本発明者らは種々の担子菌類の液体培養物
ろ液が高い消臭効果を有していることを見いだした。例
えばある培養条件下では特にナメコ、ノウタケ、ヒラタ
ケ、フウセンタケ、アマタケ、オオギタケ、カラカサタ
ケ、シロキクラゲ、ナラタケ、ナラタケモドキ、ヌメリ
スギタケ、ヒトヨタケ、ブナシメジ、フミズキタケ、ベ
ニヒダタケ、ホンシメジ、マツオオジ、ヤマブシタケの
液体培養物ろ液の消臭効果が高かった。しかし本発明に
おける担子菌類の液体培養条件は特定されるものではな
く、本発明による消臭材を得るために利用する担子菌類
は上記記載の担子菌類に限るわけではない。またナメ
コ、ノウタケ、ヒラタケ等の中の特定の菌株は液体培養
することによって、芳香性物質を同時に産生するため芳
香性物質による感覚的な消臭を併用した方が有効である
消臭対象に対してはこれらの菌株を用いて成る培養物を
消臭材として使用することも望ましい。但し本発明の消
臭材を得るためには、各々の担子菌類についてその菌株
を特定する必要はなく、各々の担子菌類であることが同
定されたものならすべて用いることができる。つまりI
FO又はATCC等の公的機関における保存菌株、市販
種菌、自然界より分離したもの、これらをすべて利用で
きる。
【0007】以下に担子菌類の一般的な液体培養方法を
述べるが培養方法は必ずしもこれらに限るわけではな
い。まず、培養基は使用する菌株が利用し得るものであ
ればよく、例えばグルコース等の炭素源、酵母エキスや
ペプトン等の窒素源、マグネシウムやカリウム等の無機
物が含まれているものを用いる。炭素源の濃度は一般的
には2〜5w/v%、窒素源の濃度は0.03〜3w/
v%、無機物の濃度は0.05〜0.2w/v%とす
る。培養は振とう培養か通気かくはん培養、又は静置培
養で行うのが望ましい。振とう培養の場合通常、培養温
度は15〜30℃、振とうは60〜200rpmで7〜
60日間行う。通気かくはん培養は一般的には、培養温
度15〜30℃、かくはん数60〜300rpm、通気
量0.05〜1vvmで3〜30日間行う。培養終了後
固液分離し、培養物ろ液と培養菌体とを得る。培養菌体
の生成量は担子菌類、及びその培養条件により大きく異
なるが一般的には培養物ろ液100重量部に対して培養
菌体を乾燥重量として例えば0.01〜3重量部の割合
で得ることができる。培養物ろ液を例えば溶媒抽出した
後、イオン交換樹脂処理することにより、無色無臭の消
臭材を得ることができるが、培養物ろ液をそのまま消臭
材として用いることもできる。培養物ろ液をそのまま用
いる場合は、いくつかの菌株が特に芳香性成分に富んで
いるため、芳香剤としての感覚的消臭効果を付加するこ
とになる。
【0008】本発明における培養物ろ液の処理物は、培
養物ろ液を上記の溶媒抽出等の抽出処理、上記イオン交
換樹脂処理等の樹脂処理、減圧濃縮等の濃縮処理、又は
減圧乾燥、噴霧乾燥や凍結乾燥等の乾燥処理といった各
処理を適宜選択し、また組合せて処理することにより得
られる。また、本発明における培養物ろ液と処理物は上
記のように各々単独で消臭材として用いることもできる
し、両者を混合して消臭材とすることも可能である。
【0009】
【実施例】以下、実施例によって本発明を更に具体的に
説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0010】実施例1 固体培養基上の担子菌類(アマタケ、オオギタケ、カラ
カサタケ、シロキクラゲ、ナメコ、ナラタケ、ナラタケ
モドキ、ヌメリスギタケ、ノウタケ、ヒトヨタケ、ヒラ
タケ、フウセンタケ、ブナシメジ、フミズキタケ、ベニ
ヒダタケ、ホンシメジ、マツオオジ、ヤマブシタケ)を
各々2リットル容のバッフル付三角フラスコ中の液体培
地750mlに接種した。液体培地組成はグルコース2
w/v%、酵母エキス0.2w/v%、ペプトン0.2
w/v%、MgSO4 ・7H2 O0.05w/v%、K
2 PO4 0.05w/v%とした。培養は25℃、8
0rpmの振とう培養法で行った。培養期間は20日間
とした。培養終了後固液分離により培養菌体を除き、本
発明による消臭材(アマタケ−a、オオギタケ−a、カ
ラカサタケ−a、シロキクラゲ−a、ナメコ−a、ナラ
タケ−a、ナラタケモドキ−a、ヌメリスギタケ−a、
ノウタケ−a、ヒトヨタケ−a、ヒラタケ−a、フウセ
ンタケ−a、ブナシメジ−a、フミズキタケ−a、ベニ
ヒダタケ−a、ホンシメジ−a、マツオオジ−a、ヤマ
ブシタケ−a)を各々約630ml得た。
【0011】40ml容のバイヤル瓶中にpH7.5リ
ン酸バッファー1mlとメチルメルカプタン10μlを
加え、更に対照:蒸留水1ml 上記消臭材1ml
0.1w/v銅クロロフィリンナトリウム水溶液1
mlを各々加え室温に放置した。放置1時間後に官能に
よりメチルメルカプタンの臭いを5名のパネラーにより
評価した。メチルメルカプタンの臭いの強いものを5と
し、臭いのほとんど感じられないものを1とし、5段階
で評価した。結果は5名のパネラーの評価の平均値を下
記表1に示した。
【0012】
【表1】
【0013】本発明により得た担子菌の液体培養物ろ液
はいずれもメチルメルカプタン溶液の臭いを低減した。
特にナメコ−a、ノウタケ−a、ヒラタケ−a、フウセ
ンタケ−aは、高い消臭効果を有することが周知である
銅クロロフィリンナトリウムと同等以上の効果を示し
た。
【0014】実施例2 固体培養基上のナメコ(IFO−30373)を、2リ
ットル容のバッフル付三角フラスコ中の実施例1に示し
た液体培地750mlに接種した。培養は25℃、80
rpmの振とう培養法で行った。培養期間は10日間と
した。培養終了後固液分離し、培養物ろ液610mlと
培養菌体75gとを得た。培養物ろ液610mlは減圧
濃縮後、殺菌(85℃、20min)し、淡黄色の消臭
材(ナメコ−b)200mlを得た。
【0015】40ml容のバイヤル瓶中にpH7.5リ
ン酸バッファー1mlとメチルメルカプタン10μlを
加え、更に対照:蒸留水1ml ナメコ−b 1m
l0.1w/v銅クロロフィリンナトリウム水溶液1
mlを加え、37℃で10分間インキュベートした。ヘ
ッドスペースガス600μlをガスタイトシリンジで抜
き取り、ガスクロマトグラフィー分析に供し、各ヘッド
スペースガス中のメチルメルカプタン量を測定した。メ
チルメルカプタン量は検量線を作製し、定量した。下記
表2にガスクロマトグラフィー測定条件、表3に各ヘッ
ドスペースガス中のメチルメルカプタン量を示した。
【0016】
【表2】
【0017】
【表3】
【0018】メチルメルカプタン溶液中に、本発明によ
り得た消臭材ナメコ−bを1ml加えることによりヘッ
ドスペースガス中のメチルメルカプタン量は対照の3
2.7%になった。0.1w/v銅クロロフィリンナト
リウムを加えることにより48.1%になった。消臭材
ナメコ−bのメチルメルカプタンに対する消臭効果は高
い消臭効果を有することが周知である銅クロロフィリン
ナトリウムよりも優れていた。
【0019】実施例3 40ml容のバイヤル瓶中にだ液1ml、40mMのメ
チオニンを含有するpH7.0のリン酸バッファー0.
5mlを加え、更に蒸留水1ml ナメコ−b
0.5mlと蒸留水0.3ml ナメコ−b 0.2
ml 0.2w/v銅クロロフィリンナトリウム水溶
液1mlを加え、37℃で24時間インキュベートし
た。ヘッドスペースガス600μlをガスタイトシリン
ジで抜き取り、ガスクロマトグラフィー分析に供し、各
ヘッドスペースガス中のメチルメルカプタン量を測定し
た。メチルメルカプタン量は検量線を作製し、定量し
た。ガスクロマトグラフィー測定条件は表2に準じた。
表4に各ヘッドスペースガス中のメチルメルカプタン量
を示した。
【0020】
【表4】
【0021】本発明により得た消臭材ナメコ−b 0.
5mlはだ液中でのメチルメルカプタンの生成を100
%抑制した。一方銅クロロフィリンナトリウムは1mg
約20%抑制した。消臭材ナメコ−bのメチルメルカプ
タンの生成抑制効果は高い消臭効果を有することが周知
である銅クロロフィリンナトリウムよりも優れていた。
【0022】実施例4 固体培養基上のナメコ(IFO−30373)を、2リ
ットル容のバッフル付三角フラスコ中の実施例1に示し
た液体培地750mlに接種した。培養は25℃、80
rpmの振とう培養法で7日間行った。この様にして得
た培養物を種菌とし、30リットル容のジャーファーメ
ンター中に加えられた実施例1に示した液体培地10リ
ットルに接種した。培養は通気かくはん培養法で行い、
この時の通気量は0.3vvm、かくはん速度は100
rpmとした。培養は5日間で終了し、培養物は固液分
離し、培養物ろ液8.3リットルと培養菌体1250g
とを得た。培養物ろ液8.3リットルは減圧濃縮後、殺
菌(85℃、20min)し、淡黄色の消臭材ナメコ−
c 2.5リットルを得た。
【0023】次にサバの切身100gに水300gを加
え、ミキサーで1分間粉砕し、ペースト物400gを得
た。50ml容の三角フラスコにこのペースト物を各1
g加え更に対照:蒸留水1ml ナメコ−c 1m
l 0.1w/v銅クロロフィリンナトリウム水溶液
1mlを各々加え、ふたをして2分間加熱した(実施例
4−1)。冷却後各々の魚臭を官能により5名のパネラ
ーにより評価した。魚臭の強いものを5とし、魚臭のほ
とんど感じられないものを1とし、5段階で評価した。
結果は5名のパネラーによる評価の平均を表5に示し
た。大根の漬物150gに水300gを加えミキサーで
粉砕したもの、市販おろしにんにく1gに水40gを加
え懸濁したものについても実施例4−1と同様に蒸留水
を対照にし、消臭材ナメコ−c、銅クロロフィリンナト
リウムの消臭効果を官能により評価した(実施例4−
2、実施例4−3)。結果を、同じく表5に示した。
【0024】
【表5】
【0025】本発明による消臭材ナメコ−bは魚臭、大
根の漬物臭、にんにく臭に対して高い消臭効果を有する
ことが周知である銅クロロフィリンナトリウムと同等以
上の効果を示した。
【0026】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明の消
臭材は担子菌を液体培養することによって得られる培養
物ろ液及び/又はその処理物を主成分とすることを特徴
とするものであり、高い消臭力を有し、安全性が高く、
しかもその製造方法が効率的で簡便であるため、広範な
消臭場面において利用できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 森田 日出男 滋賀県大津市瀬田3丁目4番1号 寳酒 造株式会社中央研究所内 (56)参考文献 特開 昭63−3864(JP,A) 特開 昭57−99528(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61L 9/01 A23L 1/015 A23L 1/28

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 担子菌類の液体培養物ろ液及び/又はそ
    の処理物を主成分とする消臭材。
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