JP3067660B2 - 誘導電動機の制御方法 - Google Patents

誘導電動機の制御方法

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JP3067660B2 JP8298412A JP29841296A JP3067660B2 JP 3067660 B2 JP3067660 B2 JP 3067660B2 JP 8298412 A JP8298412 A JP 8298412A JP 29841296 A JP29841296 A JP 29841296A JP 3067660 B2 JP3067660 B2 JP 3067660B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、誘導電動機の速度
制御方法に係り、特に、誘導電動機で発生する種々の損
失を低減するのに好適な誘導電動機の速度制御方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】誘導電動機の制御装置に関する従来技術
として、特開昭61−189193号公報に記載された技術が知
られている。この従来技術による制御装置は、必要とす
る誘導電動機のトルクに対し、一次電流が最小の値とな
るようにするため、誘導電動機の駆動制御装置に励磁電
流を制御する手段を備えるものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記従来技術では、一
次電流が最小の値となるように誘導電動機の制御を行っ
ているので、一次抵抗損を最小にすることができるが、
二次抵抗損やヒステリシス損,うず電流損等を含めたト
ータルの損失を必ずしも最小とすることができないとい
う問題点があった。このため、前記従来技術は、これら
の損失に相当する電力を駆動制御装置から供給すること
が必要となり、制御装置の容量が大きくならざるを得な
いという問題点があった。また、誘導電動機側において
は過熱の可能性があり、誘導電動機を高速で回転させる
場合には、ヒステリシス損やうず電流損が大きくなり、
場合によっては、誘導電動機の損傷を生ずる場合もあ
る。
【0004】本発明の目的は、誘導電動機の低速運転領
域から高速運転領域にわたって、誘導電動機内で発生す
る全損失を低減することができる誘導電動機の制御方法
を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発
明の特徴は、誘導電動機を可変周波数電圧源により制御
する誘導電動機の制御方法において、前記誘導電動機の
トルク電流値と、周波数指令値と、を用いて、前記誘導
電動機の励磁電流指令値を演算し、前記誘導電動機の励
磁電流を前記励磁電流指令値に等しくするように制御す
ることにある
【0006】
【発明の実施の形態】
(実施例1)本発明の実施例である誘導電動機の制御装
置を以下に述べる。
【0007】まず、本実施例に適用される、誘導電動機
(以下、適宜電動機と略す)が負荷から要求されるトル
クに対し、誘導電動機で発生する全損失が常に最小の値
となるような励磁電流の設定方法を説明する。
【0008】一般に、誘導電動機は、励磁電流I1dとト
ルク電流I1qが図3に示すようにべクトル的に直交する
ような等価回路で表わすことができるものとし、説明を
簡単化するために、誘導電動機には磁気飽和が無いと仮
定し、磁束Φと励磁電流I1dは比例するものとする。前
記等価回路を示す図2において、Lσは漏れインダクタ
ンス、M′は励磁インダクタンス、r1 は一次抵抗、r
2′ は二次抵抗、sはすべりである。
【0009】この図2に示す等価回路に対し、励磁電流
1d,一次電流I1 ,一次換算トルク電流I1q,トルク
1 の間には、次の数1〜数4で示す関係が成立する。
【0010】
【数1】 I1dr 2+I1qr 2=I1r 2 …(数1)
【0011】
【数2】 I1d 2+I1q 2=I1 2 …(数2)
【0012】
【数3】
【0013】
【数4】
【0014】但し、上式において、添字rは定格運転時
の値を意味し、I1rは一次定格電流、I1qrは一次側換
算の二次定格トルク電流、Tr は定格トルク、I1dr
定格励磁電流である。
【0015】誘導電動機が定格トルクで運転されている
ときのトルク電流I1qr と一次定格電流I1rとの位相角
θr は、次に示す数5より求めることができる。
【0016】
【数5】
【0017】また、任意の運転状態における励磁電流I
1dと定格励磁電流I1drとの比を数6に示すようにmと
おく。
【0018】
【数6】 m=I1d/I1dr …(数6) 前記数2,数4,数5,数6からI1q,I1qr,I1d
1drを消去して、一次電流I1 に対して成立する式を
算出すると、次に示す数7を得ることができる。
【0019】
【数7】
【0020】いま、評価関数として、誘導電動機で発生
する全損失をとることにする。
【0021】まず、誘導電動機の巻線抵抗に発生する抵
抗損としての一次抵抗損Lr1は、前述の数7を用いて次
式により求めることができる。
【0022】
【数8】
【0023】誘導電動機の回転子銅バーで発生する二次
抵抗損Lr2は、前述の数4,数5を用いて次式により求
めることができる。
【0024】
【数9】
【0025】また、誘導電動機の固定子鉄心中で発生す
るヒステリシス損Lh は、前述の数5,数6を用いてほ
ぼ次式により求めることができる。
【0026】
【数10】 Lh=Kh′・ω1・Bm 2 =Kh・ω1・m2・I1r 2・sin2θr …(数10) この数10において、Bm は誘導電動機の空隙における
磁束密度、Kh′,Khは固定子鉄心の重量や材質,構造
等によって決まる比例係数である。
【0027】この数10から理解できるように、ヒステ
リシス損Lh は、励磁電流の2乗、いいかえるとmの2
乗に比例し、駆動制御装置の出力周波数に比例してい
る。
【0028】さらに、固定子鉄心にはうず電流値Ie
発生するが、このうず電流損Leは、数10と同様に、
前述の数5,数6とを用いて次式により求めることがで
きる。
【0029】
【数11】 Le=Ke′・ω1 2・Bm 2 =Ke・ω1 2・m2・I1r 2・sin2θr …(数11) この数11において、Ke′,Keはヒステリシス損と同
様に、固定子鉄心の重量や材質,構造等によって決まる
比例係数である。
【0030】前述した4種類の損失が、誘導電動機の全
損失のうち、制御可能な主たる損失であり、これらの和
が最小となるように励磁電流を制御すれば、誘導電動機
を理想的に制御できることになる。この全損失LT は、
数8〜数11をまとめて次のように表すことができる。
【0031】
【数12】
【0032】この全損失LT が最小となる条件を求める
ために、数12を次のように変形する。
【0033】
【数13】
【0034】この数13において、全損失LT が最小の
値となるのは、次に示す数14が成り立つ場合であり、
そのときのmの値をmo とすると、mo が数14の値を
満たすとき、誘導電動機が必要とするトルクT1 に対
し、誘導電動機内で発生する全損失LT が最小の値とな
る。
【0035】
【数14】
【0036】そして、全損失の最小値LToは、次式で求
めることができる。
【0037】
【数15】
【0038】本発明は、以上説明した数式に基づいて誘
導電動機の励磁電流の制御を行うものであり、これによ
り誘導電動機を最高効率で運転することが可能となる。
【0039】本実施例の誘導電動機の制御装置を図1を
用いて詳細に説明する。図1において、2は誘導電動
機、93は回転速度検出器、302は電圧型電力変換
器、304は係数器、305a〜cは一次電流検出器、3
06は電流検出器、307はすべり角周波数指令演算
器、308は励磁電流指令値演算器、309は加算器、
310は一次遅れ器、311は積分器、312は関数発生
器、313は2相−3相変換器、314,316,31
7は比較器、315は速度調節器、318,319は演
算器である。
【0040】本実施例の特徴部分である励磁電流指令値
演算器308は、インバータ出力角周波数ω1* と、負
荷トルクに対応したトルク電流値Iq を取込み、これら
のデータを用いて最適な励磁電流の値を決定する。
【0041】図1において、誘導電動機2は、電圧型電
力変換器302の出力可変周波電力によって制御され
る。回転速度検出器(PG)93は、誘導電動機2の回
転速度を検出し、その出力信号は、回転子角周波数を極
対数であるP倍する係数乗算器304に伝えられる。誘
導電動機2のU相,V相,W相の各相の巻線には、各相
の一次電流を検出し、一次電流に対応した電流帰還信号
u,Iv,Iw を出力する一次電流検出器305a,3
05b,305cが設けられている。この一次電流検出
器305a,305b,305cの出力信号は、電流検
出器306に与えられる。この電流検出器306は、一
次電流検出器の出力信号を誘導電動機2の同期角周波数
(二次鎖交磁束ベクトルの角周波数)ω1* で回転し、
互いに直交する回転座標系の2軸成分、すなわち、励磁
電流成分Idと、トルク電流成分Iqに変換する。このト
ルク電流成分Iq は、すべり角周波数演算器307と励
磁電流指令値演算器308等に与えられる。すべり角周
波数演算器307は、励磁電流指令値演算器308から
出力される励磁電流指令値Id*とトルク電流成分Iq
用いて、すべり角周波数の指令値Pωs* を演算する。
そして、このすべり角周波数指令値Pωs* は、加算器
309に送られ、そこで、前述した係数乗算器304の
出力Pωr と加算される。この加算結果が、前述した、
誘導電動機同期角周波数ω1*として出力される。
【0042】励磁電流指令値演算器308は、絶対値信
号変換回路308aと、指令値演算回路308bと、最
大値信号選択回路308cと、最大値保持レジスタ30
8dとの4つの回路により構成されている。前述の電流
検出器306の出力信号であるトルク電流成分Iq は、
この励磁電流指令値演算器308内の絶対値信号変換回
路308aに入力され、絶対値信号変換回路308a
は、常に正の信号であるトルク電流成分Iqの絶対値|
q|を指令値演算回路308bに対して出力する。指
令値演算回路308bは、前述した原理に基づいて、誘
導電動機で発生する全損失が最小となるように励磁電流
演算値Idoを、
【0043】
【数16】
【0044】として演算することにより求める。その
際、指令値演算回路308bは、加算器309が出力し
ている角周波数ω1* を一次遅れ器310を通して取込
み、励磁電流演算値Idoの演算のために用いている。
【0045】ここで、一次遅れ器310の役割について
簡単に説明する。もし、この一次遅れ器310が無いと
すると、次のような現象が起こり得る。すなわち、角周
波数ω1* が、何らかの原因で急に変動し、その値が大
きくなった場合、前述の数16で決まる励磁電流演算値
doの値が小さくなり、この励磁電流演算値Idoをもと
にして演算されるすべり角周波数Pωs* が大きくなる
ので、結果として角周波数ω1* がさらに大きくなると
いうポジティブな制御が行われる現象が生じる。従っ
て、場合によっては、角周波数ω1* が発散してしまう
ことになる。一次遅れ器310は、このような角周波数
ω1* の急激な変化を抑えるために有効に作用する。
【0046】指令値演算回路308bにより前述のよう
にして求められた励磁電流演算値Idoは、最大値信号選
択回路308cに送られる。最大値信号選択回路308
cは、指令値演算回路308bからの入力信号Idoと最
大値保持レジスタ308dからの入力信号Idrとの値を
比較し、IdoがIdrより小さいときにIdoの値を、Ido
がIdrより大きいときにIdrの値を、励磁電流指令値I
d* として、すべり角周波数演算器307等に対して出
力する。
【0047】積分器311は、前述の角周波数ω1* を
積分して、二次鎖交磁束ベクトルの位相角指令θ*を出
力し、その出力信号を関数発生器312に送る。関数発
生器312は、この位相角指令θ*に対応した正弦波信
号sinθ* 及び余弦波信号cosθ* を発生し、これらの
信号を電流検出器306及び2相−3相変換器313に送
る。
【0048】回転速度検出器93により検出された回転
子角周波数ωr は、比較器314にも送られ、比較器3
14により、回転子角周波数指令値ωr* と比較され
る。速度調節器315は、この比較器314からの回転
子角周波数の偏差を増幅し、トルク電流の指令値Iq
を演算して出力する。
【0049】比較器317は、このトルク電流の指令値
q* と、電流検出器306の出力であるトルク電流成
分Iq とを比較してその偏差を出力する。また、比較器
316は、電流検出器306の出力である励磁電流成分I
d と、励磁電流指令値演算器308の出力である励磁電
流指令値Id* とを比較してその偏差を出力する。
【0050】演算器318,319は、夫々、比較器3
16及び317により検出された励磁電流偏差(Id
−Id)とトルク電流偏差(Iq*−Iq)を増幅し、誘
導電動機1の励磁電流成分Id及びトルク電流成分Iq
常に所定の前記励磁電流指令値Id*及び前記トルク電
流指令値Iq*に等しくなるように、一次電圧指令の励
磁電流軸の電圧成分Vd*及び、一次電圧指令のトルク
電流軸の電圧成分Vq*を制御する。
【0051】2相−3相変換器313は、前記演算器3
18,319から出力される励磁電流軸の電圧成分Vd
* とトルク電流軸の電圧成分Vq* を、3相の電圧指
令値Vu*,Vv*,Vw*に変換して、電圧型電力変換
器302に与える。
【0052】誘導電動機駆動制御回路において、励磁電
流指令値を決定する指令値演算回路308bで用いられ
る演算式では、トルクの代りにトルク電流が用いられて
いる。本発明の実施例のように、励磁電流を変化させる
場合には、誘導電動機が必要とする負荷トルクと、トル
ク電流とは、必ずしも比例関係にはなく、図1内に示す
演算式で求めた励磁電流は、必ずしも最適値とは成らな
い。しかし、例えば、誘導電動機の電流値が小さく、出
力トルクが小さい場合には、誘導電動機の回転数が下が
り、角周波数ωrが小さくなるので、角周波数ω1*も小
さくなる。この角周波数ω1* が小さくなると、電流値
が大きくなり、負荷トルクに対応したトルクを出し得る
値まで、速やかに、トルク電流Iq も増加する。従っ
て、トルクの代りにトルク電流Iqを用いて励磁電流を
算出しても実用上さしつかえない。以上説明したよう
に、本実施例によれば、誘導電動機の必要なトルクに対
し、低周波数領域から高周波数領域の全領域にわたっ
て、誘導電動機で発生する一次抵抗損,二次抵抗損,ヒ
ステリシス損,うず電流損を合わせた全損失を最小にす
ることができるので、電源容量を小さくすることがで
き、設備のイニシャルコストの低減を図ることができる
他、消費エネルギーを節約できるという効果を奏する。
また、誘導電動機内部の損失が少ないので、誘導電動機
内部で発生する熱も少なく、温度上昇も抑えられるた
め、誘導電動機の寿命を延ばすことができ、信頼性の向
上を図ることができるという効果を奏する。
【0053】特開昭60−219983号公報には、誘導電動機
の一次電流検出値から算出した二次電流成分と、磁化電
流成分とに基づいて、誘導電動機の銅損を最小にするよ
うに磁化電流成分を演算することが記載されているが、
鉄損の低減については考慮していない。それに対して本
実施例は、上述したように、ヒステリシス損等の鉄損に
ついても低減することができる。
【0054】(実施例2)本発明の他の実施例である誘
導電動機の制御装置を以下に説明する。
【0055】一般に、電圧制御により一次電圧を操作し
て誘導電動機をベクトル制御する方法として、一次電流
が変動しても磁束が変動しないような関係にある一次電
圧の指令値を、速度指令信号とトルク電流成分検出値及
び誘導電動機の電気定数に基づいて演算し、これに従い
出力電圧を制御するものがある。
【0056】この制御方法においては、電流(トルク)
が急峻に変化しない定常状態では指令値に従って安定に
回転速度は制御されるので何等の問題もない。しかし、
過渡時においては、誘導電動機のインダクタンスと一次
電流との影響を受けて磁束が変化するため、誘導電動機
の発生トルクが変化し、速度制御が不安定になる可能性
がある。
【0057】この対策として、誘導電動機一次電流を検
出し、その励磁電流成分が励磁電流指令値と一致するよ
うに電圧を制御する方法が考えられる。しかし、このよ
うなフィードバックループを設けると、ループゲインの
設定やオフセットを生じない電流調節器が必要で、さら
にその定数設定が必要なため、制御構成及び制御設計が
複雑になるといった問題が生じる。
【0058】本実施例では、上記したような電流調節器
を用いることなく過渡時の磁束変動を抑制し、もって高
精度・高応答に誘導電動機を制御する方法について説明
する。
【0059】本実施例の特徴は、誘導電動機に給電され
る電流の変化量を検出し、この変化量に応じて周波数変
換器の出力電圧の位相を補正することにある。
【0060】ここで、上記給電電流とは、その一次電流
又はトルク成分電流に比例した電流であり、その変化量
は、指令値又は実測値のいずれから求めても良い。
【0061】以下で本実施例の原理につき図面を参照し
て説明する。
【0062】磁束変動は、特にそのq軸成分,トルク電
流成分の変化量に比例することが解った。また、このト
ルク電流成分の変化量は、励磁電流成分が一定であれ
ば、一次電流の変化量に比例する。
【0063】従って、上記トルク電流成分又は一次電流
等の電動機給電電流の変化量に応じて周波数変換器の出
力電圧位相を補正すれば、q軸成分の磁束の発生を抑制
することができる。このため、急峻な電流(トルク)変
化時においても磁束変動を抑制することができ、磁束を
指令値通りに保持することができるので、高精度及び高
応答の速度制御が実現できる。
【0064】図5に、図2に示す誘導電動機の等価回路
に基づく電圧と電流及び磁束のベクトル図を示す。図5
において、d−q軸は同期角周波数ω1 で回転する直交
座標である。ここで電圧ベクトルV1は誘導起電力E1
と誘導電動機内部インピーダンス降下(r11+ω1・L
σ1)の和で与えられ、V1 とE1′との間には内部イ
ンピーダンス降下に応じた内部相差角δを有する。ここ
でE1′ のベクトルの方向をq軸に一致させると、一次
電圧V1 の大きさV1a及び内部相差角δは、誘導電動機
一次電流I1 の成分I1d,I1q及び電動機定数に基づき
数17,数18で示される。
【0065】
【数17】
【0066】
【数18】 V1a=(E1′+ω1・Lσ・I1d+r1・I1q)cosδ −(r1・I1d−ω1・Lσ・I1q)sinδ …(数18) ここでE1′,I1d,I1q の実際値及び電動機定数に基
づいてV1a,δを制御すれば結果としてE1′ は電流に
無関係に一定、すなわち磁束φ2dは一定に制御できる。
しかし、電流(トルク)が急峻に変化する過渡時におい
ては漏れインダクタンスLσにより一次電流に遅れが生
じるため、制御上で用いたd−q軸座標に対して、実際
の座標軸m−t軸は漏れ磁束(q軸磁束Δφ2q)に相当
した角度分だけずれる。そこで、このずれ角Δθを下述
の方法で検出し、該Δθでもって電圧の位相を補正しな
ければならない。
【0067】上記したΔφ2qによる軸ずれ角Δθは以下
のようにして検出できる。いま、誘導電動機の電流及び
磁束を変数にとる状態方程式は次式で与えられる。
【0068】
【数19】
【0069】ここで、P:微分演算子,r2′ :一次換
算二次抵抗,M:相互インダクタンス、L2:二次イン
ダクタンス,T2:二次時定数(L2/r2),ωr:回転
子角周波数、ωs:すべり角周波数、また、変数(ベク
トル値)I1,φ2,V1を直交d−q軸座標系で表わす
と次式である。
【0070】
【数20】
【0071】インバータにより、誘導電動機一次電圧の
各d−q軸成分V1d,V1qが、指令値に比例して制御さ
れることを仮定すると、V1d,V1q
【0072】
【数21】
【0073】であるから、数21を数19に代入し、さ
らに磁束φ2dが一定に制御されると仮定すると、q軸成
分に関しての状態方程式は次式となる。
【0074】
【数22】
【0075】これより、Pφ2qをI1qを用いて示せば
【0076】
【数23】
【0077】となり、φ2qはI1qの漏れインダクタンス
降下相当分だけ変動する。そして、φ2qの変動量Δφ2q
をd−q軸差標上における座標軸のずれ角Δθで表わす
と、
【0078】
【数24】
【0079】となる。ここでΔφ2q≪φ2dであるから数
24は
【0080】
【数25】
【0081】となり、ΔθはΔI1qの変化量から検出で
きることがわかる。
【0082】次に、以上の原理に基づく本発明の実施例
である誘導電動機の制御装置を図4を用いて詳細に説明
する。積分器3により一次角周波数指令ω1* を積分し
て得られる位相基準信号θ*を基準として、電流検出器
4により誘導電動機2の一次電流のq軸成分(トルク電
流成分)I1qを検出し、該I1qに基づいてすべり演算器
50ですべり角周波数ωsを演算し、該ωsと速度指令ω
r* との加算により一次角周波数ω1* を制御する。一
方、電圧指令演算器6は磁束を発生させるためのd軸成
分(励磁電流)指令値I1d*と上記トルク電流検出値I
1q及びω1* を入力し、前述の数17,数18に基づい
て電圧ベクトルの大きさV1a*と内部相差角δ*(一次
電圧と誘導起電力との位相差)を演算する。ここで電圧
の位相は、微分器67にトルク電流検出値I1q*を入力
して前述数25に基づいて演算した軸ずれ角Δθ,上記
位相基準信号θ*、及び内部相差角δ*との加算より求
める。得られた電圧位相信号(θ*+δ*−Δθ)及び
電圧の大きさV1a*は座標変換器7により3相電圧指令
値Vu*〜Vw*に変換され、該電圧指令値によりインバ
ータ1を制御する。
【0083】上記制御により電流(トルク)の急変時に
おいて磁束変動φ2qが生じ実際の座標値(m−t軸)が
d−q軸よりずれた場合でも、微分演算器67の出力値
Δθでもって電圧位相が修正されm−t軸にd−q軸が
常に一致するように制御される。
【0084】この実施例の制御特性について、図6を用
いで説明する。同図は、2.2KWの誘導電動機を供試
機とし、インバータの速度指令ωr* にステップ変化を
与えた際の、過渡時の制御特性を示す。同図(a)は従
来特性、(b)は本実施例の特性である。
【0085】先ず、図6(a)では、速度指令ωr*の
変化に対して、実際の回転速度ωrは追従せず、脈動す
る。これは、図から分るように、電圧指令V1* ,位相
角δ*と電流I1d,I1q、及び磁束φ2d,φ2qの脈動に
よる相乗作用によるものである。最終的には発散まで至
り、制御困難となる。
【0086】これに対して本実施例では、図6(b)に
示すように、過渡時に微少のφ2qが発生しているが、こ
のφ2qの変化量に応じて電圧位相が補正されることか
ら、磁束φ2dは略一定に制御させることになる。この
時、電流I1d,I1q、及び実速度ωr の波形から明らか
なように、制御が安定に行われていることが判る。
【0087】従って、本実施例によれば、いかなる外乱
に対しても高速な制御応答が得られ、また、磁束が常に
一定に保たれることから、トルク及び速度が高精度に制
御できる。
【0088】(実施例3)本発明の他の実施例である誘
導電動機の制御装置を図7を用いて説明する。本実施例
において図4と同一のものには同一の番号を付し、その
ものについての説明は省略する。図4の実施例では速度
検出器を用いない構成で本発明を適用したため、磁束変
動を防止する微分器67の入力に電流検出値を用いた。
それに対して本実施例では、誘導電動機2に取付けた速
度検出器93によって回転速度ωrを検出し、該ωrとそ
の指令値ωr*の偏差に応じて速度調節器(ASR)4
0より出力されるトルク電流指令値I1q*を基に、微分
器67により軸ずれ角Δθを演算し、電圧位相を修正し
ている。
【0089】本実施例によれば、電圧位相補正により磁
束一定制御できることに加えて、速度検出器及び速度調
節器により回転速度を安定に制御することができる。
【0090】図4,図7の実施例によれば、過渡的な電
流(トルク)変化に伴う磁束変動を抑制できるので、磁
束を略一定に保持することができ、高精度及び高応答な
速度制御を実現することができる。
【0091】
【発明の効果】本発明によれば、誘導電動機の低速運転
領域から高速運転領域にわたって、誘導電動機内で発生
する全損失が低減でき、電源容量を小さくすることがで
きるため、消費エネルギーを節約できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適な一実施例である誘導電動機の制
御装置の構成図である。
【図2】誘導電動機の等価回路を示す図である。
【図3】図2の等価回路における電流及び電圧のベクト
ル図である。
【図4】本発明の他の実施例である誘導電動機の制御装
置の構成図である。
【図5】図2の等価回路における電流及び電圧のベクト
ル図である。
【図6】本実施例の制御特性を示す図である。
【図7】本発明の他の実施例である誘導電動機の制御装
置の構成図である。
【符号の説明】
2…誘導電動機、302…電圧型電力変換器、306…
電流検出器、308…励磁電流指令値演算器。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松井 孝行 茨城県日立市久慈町4026番地 株式会社 日立製作所 日立研究所内 (72)発明者 久保田 譲 茨城県日立市久慈町4026番地 株式会社 日立製作所 日立研究所内 (72)発明者 藤井 洋 千葉県習志野市東習志野7丁目1番1号 株式会社 日立製作所 習志野工場内 (56)参考文献 特開 昭60−219983(JP,A) 特開 昭61−189193(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H02P 5/408 - 5/412 H02P 7/628 - 7/632 H02P 21/00

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】誘導電動機を可変周波数電圧源により制御
    する誘導電動機の制御方法において、前記誘導電動機の
    トルク電流値と、周波数指令値と、を用いて、前記誘導
    電動機の励磁電流指令値を演算し、前記誘導電動機の励
    磁電流を前記励磁電流指令値に等しくするように制御す
    ことを特徴とする誘導電動機の制御方法。
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