JP3064378B2 - カップ状容器 - Google Patents

カップ状容器

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Description

【発明の詳細な説明】 <産業上の利用分野> 本発明は、金属蓋を巻締め密封するためのフランジ部
を備えた、シートを成形してなるカップ状容器に関し、
より詳しくは、形成したフランジ部を巻締め用にプレス
して潰し、不要部分を除去した際の、層間の剥離が生じ
ないカップ状容器に関する。
<従来の技術> 従来この種のカップ状容器は、強度、耐熱性、衛生性
の点から、ポリプロピレン(PP)を主体とし、さらにガ
スバリヤー性を付与するため、中間層としてエチレン−
ビニルアルコール共重合体(EVOH)を介在させることが
多かった。このPPとEVOHを、接着性樹脂を介して共押し
出してシートを得、シート成形することが一般的であ
る。そして、近年では、上記容器に、ボイル殺菌やレト
ルト殺菌を施し、長期に保存させるため、開口部を金属
巻締め蓋により密封することが検討されている。この巻
締めを行うため、容器開口部には、フランジを形成する
ことが必要であり、さらに、このフランジの厚さは、良
好な巻締め状態を得るためには0.5mm程度の厚さとする
ことが必要であり、シート成形後、あるいはシート成形
と同時にフランジ部をプレスして潰す技術が提案されて
いる(特開昭64−26425号公報)。
ところで、従来シートのPP//EVOHの共押し出しにおけ
る接着層としては、「ADMER(登録商標)」の名で知ら
れる接着性樹脂等を用いるのが一般的である。この接着
性樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−
酢酸ビニル共重合体等を主鎖とし、側鎖にカルボキシル
基等の官能基を導入し、接着力を高めた樹脂であって、
用途に応じて使い分けられている。上記「ADMER(登録
商標)」、三井石油化学工業(株)製のほか、「MODIC
(登録商標)」、三菱油化(株)製等がある。
ところで、上述のようにPPとEVOHの共押し出しの場合
は、従来は上記PP系の接着性樹脂を用いるのが常識であ
った。すなわち、各層はできるだけ強固に接着されてい
ることが好ましく、このPPとEVOHの組み合わせでは、PP
系接着性樹脂が最も強い接着強度(剥離強度)を与える
ことが知られている。従って、従来はPP系接着性樹脂が
用いられていたのである。
<発明が解決しようとする課題> ところが、本発明のようにフランジをプレスして潰
し、不要部分を打ち抜き、除去する場合、PP系接着性樹
脂を用いると、打ち抜き端部で層間が剥離することがあ
り、剥離が起こると、金属蓋の巻締めができなるという
問題が生じる。
これは、PP系接着性樹脂とPP、PP系接着性樹脂とEVOH
との接着強度がそれぞれ異なるためと考えられる。すな
わち、フランジにはプレス時にズリ応力がかかり、この
応力と前記接着強度の差の結果、接着強度が相対的に弱
いPP系接着性樹脂とEVOHとの間で剥離が生じるものと考
えられる。
この点、上記特開昭64−26425号公報の技術は、プレ
スを熱プレスとしており、この熱により上記ズリ応力は
緩和されるので、上述した剥離は防がれている。ところ
が、前記ズリ応力が緩和するまでに熱プレスをおこなう
ことは、経済的に不利であり、また、容器生産のスピー
ドが極端に低下してしまい、好ましくない。
そこで本発明は、フランジのプレスを熱プレスにしな
くても、前記剥離が生じない、カップ状容器を提供する
ものである。
<課題を解決するための手段> すなわち本発明は、金属蓋を巻締め密封するためのフ
ランジ部を備えたカップ状容器において、PP/接着性樹
脂/EVOHの構成を少なくとも有し、かつ、接着性樹脂
が、2層構成とされており、PPに接する側がPP系接着性
樹脂、EVOHに接する側がエチレン−酢酸ビニル共重合体
(EVA)系接着性樹脂である共押し出しシートを含む積
層体をシート成形してなる、カップ状容器である。
<作用> 上記した構成からなる本発明のカップ状容器におい
て、接着性樹脂をPPに接する側がPP系接着性樹脂、EVOH
に接する側がEVA系接着性樹脂であるそれぞれ2層構成
としたので、PPとPP系接着性樹脂、EVOHとEVA系接着性
樹脂がそれぞれ強固に接着するとともに、PP系接着性樹
脂とEVA系接着性樹脂も強固に接着しており、また、柔
軟であるため、プレス時の応力がPP系接着性樹脂、EVA
系接着性樹脂に均等に分散され、結果として剥離が生じ
ないのである。
<実施例> 次に、図面を参照して本発明を説明する。第1図は本
発明のカップ状容器の一実施例を示す断面図、第2図は
同実施例で用いる積層体の断面図である。
第1図のカップ状容器(2)は、PP(11)/接着性樹
脂(12)/EVOH(13)/接着性樹脂(12)/PP(14)の層
構成で、かつ、接着性樹脂(12)がEVA系接着性樹脂で
ある共押し出しシート(1)を含む積層体(a)をシー
ト成形してなる。
PP(11)、PP(14)は、容器の主体となる層であり、
その厚さは共押し出しシート(1)全体の80%以上であ
ることが好ましい。また、EVOH(13)は、容器にガスバ
リヤー性を付与する層であり、容器状に成形した際の最
も薄い部分の厚さで10μm以上となるよう設けることが
好ましい。接着性樹脂(12)は、PP(11)、PP(14)と
EVOH(13)を接着する層であり、PP(11)、PP(14)と
接する側にはPP系接着性樹脂、EVOH(13)と接する側に
はEVA系接着性樹脂からなる2層構成の共押出しシート
を用いる。この樹脂としては、商品名:ADMER(登録商
標)AT−589、三井石油化学(株)製、商品名:MODIC
(登録商標)、三菱油化(株)製等が好適に用いられ
る。接着性樹脂(12)の厚さは、本発明の目的を達成す
るためには、プレス後のフランジ部における厚さで、10
μm以上となるようにすることが好ましい。これより薄
いと、プレス時の応力を緩和する能力が不足し、フラン
ジ部が剥離してしまうといった問題が生じる。
積層体(a)には、必要に応じて他の層(3)を積層
することができる。例えば、内容物の香気成分の吸着を
防止するための低吸着樹脂層を、容器の最内面となるよ
うに積層したり、積層体(a)の厚さを確保するため、
PPを積層してもよい。前記低吸着樹脂層としては、無延
伸または低結晶性のポリエステル樹脂、または無延伸の
エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物が好ましい。ポ
リエステル樹脂としては香気成分の吸着がない、ヒート
シール可能なものが種々検討され、市販されている。例
えばPETG5116(商品名、イーストマン コダック社
製)、PETG6763(商品名、イーストマン コダック社
製)、SELAR(登録商標)PT X−207(商品名、デュポ
ン社製)、FLL(商品名、帝人(株)社製)が例示でき
る。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物は、
成形時の伸び易さ(柔軟性)の点からエチレン含有率30
%以上のものが好ましく、エバール(登録商標)E、F
(商品名、(株)クラレ製)、ソアノール(登録商標)
DC、ET(商品名、日本合成化学工業(株)製)等が市販
されている。これら他の層(3)は、前記シート(1)
に熱接着、ドライラミネート、押し出しコーティング等
の方法で積層することができる。
カップ状容器(2)の形状は、一般のカップ状容器と
変わらないが、開口部を封止する金属蓋を巻締めるため
のフランジ(21)が形成されている。上記積層体(a)
からカップ状容器(2)を成形するには、真空成形、圧
空成形、真空圧空成形、プラグアシスト成形等の、シー
ト成形により行われる。そして、フランジ(21)部を所
定の厚さ(0.5mm程度)にプレスした後、必要な大きさ
のフランジ(21)を残し、周囲を除去する。この除去
は、打ち抜きによることが一般的である。本発明は、上
記構成とすることにより、このフランジ(21)周囲の除
去工程における端部の剥離を防止するものである。
上述のようにして得られたカップ状容器(1)に、内
容物を充填した後、容器開口部を、金属蓋を巻締めて密
封する。このとき、巻締められるフランジ(21)は、剥
離が生じておらず、巻締めの不良が発生しない。
<試験例> 接着性樹脂としてEVA系接着性樹脂(三井石油化学
(株)製、商品名:ADMER(登録商標)AT−589)を用
い、PP/接着性樹脂/EVOH/接着性樹脂/PPの構成の総厚1.
5mmのシートを、各層の厚さが表1の厚さとなるよう、
共押し出しにて作成した。
このシートをプラグアシスト成形法により成形し、フ
ランジ部を、200〜500kg/cm2の条件でプレスして厚さ0.
5mmに潰し、次いでフランジ部を2.5mm残して周囲を打ち
抜き除去し、高さ60mm、フランジ外径90mmの、中段に段
部を有する、第1図に示す形状のカップ状容器を作成し
た。この容器のフランジ端部を観察したところ、剥離は
全く見られなかった。
また、接着性樹脂としてPP系接着性樹脂(三菱油化
(株)製、商品名:MODIC(登録商標)P−300F)を用
い、同様の容器を作成、フランジ端部を観察したとこ
ろ、剥離が生じた。
さらに、接着性樹脂を、EVA系接着性樹脂(三井石油
化学(株)製、商品名:ADMER(登録商標)AT−589)とP
P系接着性樹脂(三菱油化(株)製、商品名:MODIC(登
録商標)P−300F)を2層に用い、PPに接する側がPP系
接着性樹脂、EVOHに接する側がEVA系接着性樹脂とした
シートを作成し、同様の容器を作成、フランジ端部を観
察したところ、剥離は見られなかった。
なお、これらのシート状態での層間の接着強度を測定
したところ、表1の結果が得られた。
上述のように、接着性樹脂をEVA系接着性樹脂、ある
いはEVA系接着性樹脂とPP系接着性樹脂の多層とするこ
とにより、各層間の接着強度は劣るものの、フランジ端
部の剥離が生じない。
また、上記試験において、フランジ部の接着性樹脂
は、約1/3にプレスされ潰されており、EVA系接着性樹脂
を30μmに形成したものは、プレス後の接着性樹脂の厚
さが約10μmとなっている。そして、この場合の接着強
度は実用限界に近い値であった。従って、接着性樹脂の
厚さは、成形、プレス後、10μm以上になるよう、計算
して設けることが必要である。また、多層の場合は、そ
れぞれが10μm以上となるように形成することが好まし
い。
次に、上記シートに、香気成分吸着防止の目的で、ポ
リエステル系樹脂(東レ(株)製、商品名:ルミラーF
−86A、厚さ20μm)とPPフィルム(厚さ30μm)とを
ドライラミネートにより積層したシートを、PP同士を熱
圧着により積層したものを作成し、上述同様に評価した
ところ、フランジ端部の剥離に関して、同様の傾向が見
られた。
<発明の効果> 以上述べた構成からなる本発明の容器は、接着性樹脂
を、PP、EVOHの双方にほぼ均等に接着するEVA系化物樹
脂からなるので、フランジをプレスした際のズリ応力に
よる、フランジ端部の剥離が起こらず、金属蓋との良好
な巻締めが得られる。また、本発明の他の態様において
も、プレス時にかかる応力が2層の接着性樹脂により緩
和され、フランジ端部の剥離が起こらず、金属蓋との良
好な巻締めが得られる。そして、このプレス工程は加熱
の必要がないので、容器の製造を高速で行うことがで
き、経済的であり、能率がよいものである。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明のカップ状容器の一実施例を示す断面
図、第2図は同実施例で用いる積層体の断面図である。 (1)……共押し出しシート (11)……ポリプロピレン (12)……熱接着性樹脂 (13)……エチレン−酢酸ビニル共重合体 (14)……ポリプロピレン (2)……カップ状容器 (21)……フランジ (a)……積層体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B32B 1/00 - 35/00 B65D 1/00 - 1/48 B65D 67/00 - 79/02 B65D 81/18 - 81/30 B65D 81/38

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】金属蓋を巻締め密封するためのフランジ部
    を備えたカップ状容器において、 ポリプロピレン/接着性樹脂/エチレン−ビニルアルコ
    ール共重合体の構成を少なくとも有し、かつ、接着性樹
    脂が、2層構成とされており、ポリプロピレンに接する
    側がポリプロピレン系接着性樹脂、エチレン−ビニルア
    ルコール共重合体に接する側がエチレン−酢酸ビニル共
    重合系接着性樹脂である共押し出しシートを含む積層体
    をシート成形してなる、カップ状容器。
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