JP3044566B2 - マグネシアクリンカー - Google Patents

マグネシアクリンカー

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、優れた耐スラグ浸触性を有し、製鋼炉用耐
火物、特にマグネシアカーボン煉瓦のように転炉用耐火
物の原料として適するマグネシアクリンカー(特に海水
マグネシアクリンカー)に関するものである。
本発明でいうクリンカーとは一般に焼成により成分の
融点の低い部分が解けて全体を固まらせ、塊状になった
ものをいう。
〔従来の技術及び発明が解決しようとする課題〕
最近の製鋼技術の発展は目覚ましいものがある。それ
に使用される耐火物やその原料もこの発展に対応するよ
うにしだいに高級化してきた。そのため、製鋼炉耐火物
特にマグカーボン煉瓦の原料としてのマグネシア源とし
て高価であるので従来使用されなかった電融マグネシア
が苛酷な部位には使用されるようになってきた。そし
て、電融マグネシアに代り得る安価な焼結マグネシア
(特に海水マグネシアクリンカー)が熱望されている。
マグカーボン煉瓦の原料として適するマグネシアクリ
ンカーとしてマグネシアの結晶径の大きいもの、嵩比重
が高いもの、MgO純度が高いものCaO/SiO2比が高いもの
が良いと言われている。そこでマグカーボン煉瓦の原料
としてこれらの組成、物性をもったマグネシアクリンカ
ーが単独あるいは電融マグネシアと併用された形で使用
されてきた。
また、大結晶で高嵩比重なマグネシアとしてマグネシ
アクリンカーなどを電熱で完全に溶融したのち、凝固し
た、いわゆる電融マグネシアが知られている。しかし、
電融マグネシアは生産量が少なく、しかも高価であるた
めに、電融マグネシアに代るべきマグネシアクリンカー
の研究開発が行われてきた。ところが電融マグネシアと
異なり、焼成して作るクリンカーではどうしても極微量
の不純物および気孔がマグネシア結晶粒界に止まり緻密
化や結晶成長を疎外する原因になっていた。
一般にクリンカーの製造は消石灰と海水あるいはかん
水との反応により生成した水酸化マグネシウムを、その
まま成型するかあるいは一度600〜1,000℃の温度で水酸
化マグネシウムを仮焼するかあるいは天然のマグネサイ
トを仮焼して得られる粉粒状軽焼マグネシアを成型した
後1,900℃以上の高温で焼成して得られる。この様にし
て得られたマグネシアクリンカーは結晶径20〜40μm、
嵩比重3.40(g/cc)以下であった。
マグネシアクリンカーの結晶径を高める方法としてFe
2O3やSiO2を多量に添加したり、それらを含有している
マグネサイトを原料にする方法があるがこれらはいずれ
も純度が低かったり、嵩比重が低いものであった。
マグネシアクリンカーの結晶径を高めると同時に嵩比
重を高める方法として、高純度化する方法とZrO2などの
添加物を加える方法がある。
MgOを高める方法は一度800〜1,400℃で焼成したマグ
ネシアを水和し、酸化カルシウムを除き、再焼成する方
法やあらかじめ海水中のB2O3を特殊な樹脂で除去する方
法などが提案されている。しかし、いずれも製造プロセ
スが複雑になり、製造コストが大幅に上昇するという欠
点があった。
添加物を用いる方法として、特公昭60−44262号公報
に開示されているZrO2を添加する方法や特開昭61−8365
4号公報に開示されているZrO2とマグネシア結晶を同時
に添加する方法がある。これらを原料に用いた耐火物に
おいても最近の高品位化の要求を完全に満たすものでは
無かった。
本発明は、製鋼炉用耐火物、特に耐浸触性に優れたマ
グネシアカーボン耐火物用の原料に適するマグネシアク
リンカーを提供することを目的とする。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は、上記目的に鑑み、優れたマグネシアクリン
カーの開発に鋭意研究した結果、本発明に到達したもの
である。
すなわち、本発明は、 a)希土類酸化物の少なくとも一種類を0.05〜2wt%含
み、 b)MgO純度が97wt%以上であり、 c)CaOの含有量が2.0wt%以下であり、 d)SiO2の含有量が0.4wt%以下であり、 e)B2O3の含有量が0.1wt%以下であり、 f)MgO,CaO,SiO2,B2O3以外の不純物の含有量が2.0wt%
以下であって、 g)嵩比重、見掛け気孔率がそれぞれ3.45g/cc以上、お
よび2.5vol%以下であって、 h)マグネシアの平均結晶径が80ミクロン以上である ことを特徴とするマグネシアクリンカーである。
本発明において希土類酸化物が耐火物の耐浸触性を良
くする効果を有し、その添加量は0.05〜2wt%である。
すなわち、0.05wt%未満では添加効果が見られず、2wt
%を越えると添加物によって、かえって浸触を促進する
ようになり、いずれも好ましくない。
希土類酸化物としては、Y2O3、Ce2O3、Sm2O3、Nd
2O3、Dy2O3などが挙げられるがこれに限定されるもので
なく、これらが混合した酸化物でも良い。
本発明において耐火物の耐浸触性を良くするために
は、MgOの純度は97wt%以上である必要があり、98wt%
以上が好ましい。CaOは2.0wt%以下、0.1〜1.8wt%が好
ましい。SiO2は0.4wt%以下である必要があり、0.3wt%
以下が好ましい。B2O3は0.1wt%以下である必要があ
り、0.01〜0.06wt%が好ましい。さらにMgO,CaO,SiO2,B
2O3以外の不純物の含有量が2.0wt%以下である必要があ
り、特にAl2O3,Fe2O3,ともに0.1wt%以下である事が好
ましい。以上の範囲におけるマグネシアクリンカーを原
料に使用した耐火物が高耐触性を示す。それ以外の範囲
では耐火物は耐触性が悪化して、実用に供さない。
本発明において、耐火物の耐浸触性の向上には原料ク
リンカーの高密度化が大きく寄与していることは知られ
ている。本発明においても嵩比重3.45g/cc以上、見掛け
気孔率2.5vol%以下のマグネシアクリンカーを使用した
耐火物において、優れた耐浸触性を示す。
本発明において、マグネシアの結晶径は80μm以上が
必要であり、100μm以上が好ましい。結晶径80μm以
下のマグネシアクリンカーを使用した耐火物は耐触性が
悪化して、実用に供さない。
また、ZrO2を含有したマグネシアクリンカーでも希土
類酸化物の添加効果が失われるものではない。
本発明で得られたマグネシアクリンカーの嵩比重、見
掛け気孔率および結晶径はそれぞれ、日本学術振興会第
124委員会で提案された学振法2:「マグネシアクリンカ
ーの見掛け気孔率、見掛け比重および嵩比重の測定方
法」及び学振法2:「マグネシアクリンカー中のペリクレ
ースの大きさの測定とその記録方法」に準じて測定し
た。
また、水酸化マグネシウムおよびマグネシアクリンカ
ーの化学分析は学振法1:「マグネシアクリンカーの化学
分析方法」に準じて測定した。
すなわち、マグネシアクリンカーの嵩比重、見掛け気
孔率は次のように測定する。
マグネシアクリンカーの全粒度を破砕し、3.36〜2.00
mmの粒度を選び、約15gを正確にはかりとる。(W1g) 1mmの金網製のカゴにマグネシアクリンカーの試料を
入れ、このカゴを入れたビーカーをデシーケーターにい
れたのち、約1時間減圧状態にしたのち、分液ロートか
ら白灯油をビーカーの内一杯になるまで入れる。その後
20分排気する。
排気したのち、ビーカーをデシケーターから取りだ
し、更にビーカーから試料の入ったカゴを取りだして、
油中でその重量を正確に計る。(W2g) 試料をカゴから取りだし、表面に付着した油分を過不
足なく取り除いたのち、手早くその重量を計る。(W
3g) 計算 ただし、W4 :カゴのみの油中重量 ρ:白灯油の比重 また、平均結晶径は次のように測定した。
7mm程度の粒を5個取り、ほぼ半分に切断し樹脂に埋
め込む。
表面を研磨したサンプルを反射顕微鏡で観察しなが
ら、平均的な部分を3箇所選び、観察者に対し上下方向
の結晶の長さと左右方向の長さを計る。
この長さを結晶径として、それらの平均値を平均結晶
径とする。
そして、化学組成の分析は次のように行った。CaO,Si
O2,Fe2O3,Al2O3,B2O3,希土類酸化物の分析方法は次のよ
うに行った。
二分器で縮分した試料をデスクミルで約10(μm)以
下に微粉砕する。
約1gを正確に計り、塩酸で加熱溶解したのち500ccに
希釈する。
アルゴンプラズマ発光分光分析装置にて各元素を定量
する。酸化物に換算して表す。
また、ZrO2はアルカリ溶融したのち、アルゴンプラブ
マ発光分光分析装置にて各元素を定量し、酸化物に換算
して表す。
そして、MgOは上記で測定したMgO以外の元素の酸化物
換算の値からの差として表した。
また、溶損指数は試験前後の煉瓦片の厚みから計算し
た溶損量を比較例2の値を100として表した。煉瓦片の
厚みはノギスで3ケ所測定し、その平均値で表した。溶
損量は下記式で表す。
溶損量=試験前の煉瓦片の厚み−試験後の煉瓦片の
厚み 〔実施例〕 以下、実施例により本発明を詳述する。
実施例1 化学組成が酸化物換算でMgO=67.0wt%、CaO=0.68wt
%、SiO2=0.14wt%、Fe2O3=0.04wt%、Al2O3=0.04wt
%、B2O3=0.04wt%である水酸化マグネシウムを電気炉
で950℃の温度に3時間保持して得た軽焼マグネシア
に、Y2O3をMgOに対して0.2wt%添加し、ミキサーにより
混合した。それを2ton/cm2の圧力で加圧成型してペレッ
ト(10mmφ、5mmH)を得、このペレットを酸素−プロパ
ン炉で最高温度2,000℃に1時間保持した。このように
して得られたマグネシアクリンカーの嵩比重、見掛け気
孔率、平均結晶径および化学組成を第1表に示す。次に
得られたマグネシアクリンカーを原料にして、第2表に
示した実験条件でマグカーボン煉瓦片を作成し、同じく
第2表に示した実験条件で回転浸触炉を用いて、スラグ
浸触試験をした。その結果を第1表に示す。
実施例2〜6 化学組成が酸化物換算でMgO=67.0wt%、CaO=1.12wt
%、SiO2=0.14wt%、Fe2O3=0.04wt%、Al2O3=0.04wt
%、B2O3=0.04wt%である水酸化マグネシウムを電気炉
で950℃の温度に3時間保持して得た軽焼マグネシアにY
2O3、Ce2O3、Sm2O3、Nd2O3、Dy2O3をMgOに対して0.2wt
%添加し、ミキサーにより混合した。それを2ton/cm2
圧力で加圧成型してペレット(10mmφ、5mmH)を得、こ
のペレットを酸素−プロパン炉で最高温度2,000℃に1
時間保持した。このようにして得られたマグネシアクリ
ンカーの嵩比重、見掛け気孔率、平均結晶径および化学
組成を第1表に示す。
次に得られたマグネシアクリンカーを原料にして、第
2表に示した実験条件でマグカーボン煉瓦片を作成し、
同じく第2表に示した実験条件で回転浸触炉を用いて、
スラグ浸触試験をした。その結果を第1表に示す。
実施例7 実施例2〜6で用いた水酸化マグネシウムを電気炉で
950℃の温度に3時間保持して得た軽焼マグネシアにY2O
3かつZrO2をMgOに対して0.2wt%添加し、ミキサーによ
り混合した。それを2ton/cm2の圧力で加圧成型してペレ
ット(10mmφ、5mmH)を得、このペレットを酸素−プロ
パン炉で最高温度2,000℃に1時間保持した。このよう
にして得られたマグネシアクリンカーの嵩比重、見掛け
気孔率、平均結晶径および化学組成を第1表に示す。
次に得られたマグネシアクリンカーを原料にして、第
2表に示した実験条件でマグカーボン煉瓦片を作成し、
同じく第2表に示した実験条件で回転浸触炉を用いて、
スラグ浸触試験をした。その結果を第1表に示す。
実施例8 化学組成が酸化物換算でMgO=67.0wt%、CaO=0.10wt
%、SiO2=0.14wt%、Fe2O3=0.04wt%、Al2O3=0.04wt
%、B2O3=0.04wt%である水酸化マグネシウムを電気炉
で950℃の温度に3時間保持して得た軽焼マグネシアにY
2O3をMgOに対して0.2wt%添加し、ミキサーにより混合
した。それを2ton/cm2の圧力で加圧成型してペレット
(10mmφ、5mmH)を得、このペレットを酸素−プロパン
炉で最高温度2,000℃に1時間保持した。このようにし
て得られたマグネシアクリンカーの嵩比重、見掛け気孔
率、平均結晶径および化学組成を第1表に示す。
次に得られたマグネシアクリンカーを原料にして、第
2表に示した実験条件でマグカーボン煉瓦片を作成し、
同じく第2表に示した実験条件で回転浸触炉を用いて、
スラグ浸触試験をした。その結果を第1表に示す。
実施例9〜10 実施例1および実施例2〜6で用いた水酸化マグネシ
ウムを電気炉で950℃の温度に3時間保持して得た軽焼
マグネシアにY2O3をMgOに対して0.5wt%添加し、ミキサ
ーにより混合した。それを2ton/cm2の圧力で加圧成型し
てペレット(10mmφ、5mmH)を得、そのペレットを酸素
−プロパン炉で最高温度2,000℃に1時間保持した。こ
のようにして得られたマグネシアクリンカーの嵩比重、
見掛け気孔率、平均結晶径および化学組成を第1表に示
す。
次に得られたマグネシアクリンカーを原料にして、第
2表に示した実験条件でマグカーボン煉瓦片を作成し、
同じく第2表に示した実験条件で回転浸触炉を用いて、
スラグ浸触試験をした。その結果を第1表に示す。
実施例11 実施例8で用いた水酸化マグネシウムを電気炉で950
℃の温度に3時間保持して得た軽焼マグネシアにY2O3
MgOに対して1.8wt%添加し、ミキサーにより混合した。
それを2ton/cm2の圧力で加圧成型してペレット(10mm
φ、5mmH)を得、このペレットを酸素−プロパン炉で最
高温度2,000℃に1時間保持した。このようにして得ら
れたマグネシアクリンカーの嵩比重、見掛け気孔率、平
均結晶径および化学組成を第1表に示す。
次に得られたマグネシアクリンカーを原料にして、第
2表に示した実験条件でマグカーボン煉瓦片を作成し、
同じく第2表に示した実験条件で回転浸触炉を用いて、
スラグ浸触試験をした。その結果を第1表に示す。
比較例1 実施例1で用いた水酸化マグネシウムを電気炉で950
℃の温度に3時間保持して得た軽焼マグネシアを、2ton
/cm2の圧力で加圧成型してペレット(10mmφ、5mmH)を
得、このペレットを酸素−プロパン炉で最高温度2,000
℃に1時間保持した。このようにして得られたマグネシ
アクリンカーの嵩比重、見掛け気孔率、平均結晶径およ
び化学組成を第1表に示す。
次に得られたマグネシアクリンカーを原料にして、第
2表に示した実験条件でマグカーボン煉瓦片を作成し、
同じく第2表に示した実験条件で回転浸触炉を用いて、
スラグ浸触試験をした。その結果を第1表に示す。
比較例2 実施例2で用いた水酸化マグネシウムを電気炉で950
℃の温度に3時間保持して得た軽焼マグネシアにZrO2
MgOに対して、0.5wt%添加し、ミキサーにより混合し
た。それを2ton/cm2の圧力で加圧成型してペレット(10
mmφ、5mmH)を得、このペレットを酸素−プロパン炉で
最高温度2,000℃に1時間保持した。このようにして得
られたマグネシアクリンカーの嵩比重、見掛け気孔率、
平均結晶径および化学組成を第1表に示す。
次に得られたマグネシアクリンカーを原料にして、第
2表に示した実験条件でマグカーボン煉瓦片を作成し、
同じく第2表に示した実験条件で回転浸触炉を用いて、
スラグ浸触試験をした。その結果を第1表に示す。
比較例3 実施例2で用いた水酸化マグネシウムを電気炉で950
℃の温度に3時間保持して得た軽焼マグネシアにY2O3
MgOに対して2.1wt%添加し、ミキサーにより混合した。
それを2ton/cm2の圧力で加圧成型してペレット(10mm
φ、5mmH)を得、このペレットを酸素−プロパン炉で最
高温度2,000℃に1時間保持した。このようにして得ら
れたマグネシアクリンカーの嵩比重、見掛け気孔率、平
均結晶径および化学組成を第1表に示す。
次に得られたマグネシアクリンカーを原料にして、第
2表に示した実験条件でマグカーボン煉瓦片を作成し、
同じく第2表に示した実験条件で回転浸触炉を用いて、
スラグ浸触試験をした。その結果を第1表に示す。
〔発明の効果〕 本発明のマグネシアクリンカーを用いると優れた耐ス
ラグ浸触性を示した。このように本発明のマグネシアク
リンカーはマグカーボン煉瓦のみならずマグクロ煉瓦な
ど製鋼炉用耐火物の原料として適する。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】希土類酸化物の少なくとも一種類を0.05〜
    2wt%含み、 a)MgO純度が97.0wt%以上であり、 b)CaOの含有量が2.0wt%以下であり、 c)SiO2の含有量が0.4wt%以下であり、 d)B2O3の含有量が0.1wt%以下であり、 e)MgO,CaO,SiO2,B2O3以外の不純物の含有量が2.0wt%
    以下であって、 f)嵩比重、見掛け気孔率がそれぞれ3.45g/cc以上、お
    よび2.5vol%以下であって、 g)マグネシアの平均結晶径が80ミクロン以上である ことを特徴とするマグネシアクリンカー。
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