JP2023086544A - マグクロれんがの製造方法 - Google Patents

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公一 清水
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Abstract

【課題】構造的スポ―リングが生じ難い組織の緻密なマグクロれんがの製造方法を提供する。【解決手段】マグクロクリンカーを50~96質量%、マグネシアクリンカーを40質量%以下(0を含む。)、酸化クロムを3~10質量%、及びCaO又はMgOを3~50質量%含有するジルコニア原料を1~5質量%含有する耐火原料配合物を混練後、成形し、1700℃以上で焼成する。【選択図】なし

Description

本発明は、製鉄プロセスにおいて、DH、RH、AOD等の溶鋼真空処理容器に好適に用いられるマグクロれんが(マグネシアクロムれんが)の製造方法に関する。
DH、RH、AODのような溶鋼の真空脱ガス処理を行う溶鋼真空処理容器は、耐火物への負荷が大きく、耐火物損傷を著しく増大させるため、耐用性に優れた材料の供給が望まれ、マグクロれんがやマグカーボンれんが(マグネシアカーボンれんが)が一般的に使用されている。近年は、マグクロれんがのクロムに対する環境問題から、マグカーボンれんがが使用されてきているが、マグカーボンれんがは溶鋼中にカーボンが溶け出すカーボンピックアップの問題、あるいはマグカーボン反応による強度低下の問題があり、使用条件が厳しい用途では、現在でもマグクロれんがが使用されている。
このマグクロれんがの損耗の要因は、主としてスラグ浸潤による耐火物稼働面での変質層の形成と構造的スポーリングの誘発である。構造的スポーリングとは、スラグ等の外来成分が耐火物内部に侵入して稼働面に緻密な層、いわゆる変質層を形成し、背面の健全層との組織差から境界付近に応力が集中して亀裂が発生し、やがて貫通して稼働面側の変質層が剥離に至る現象である。このような構造的スポーリングが要求される箇所には、従来からマグクロクリンカーを主原料とした緻密な組織を有するリボンド質マグクロれんがが使用され、更に、耐熱衝撃性が要求される用途では、マグクロクリンカーとマグネシアクリンカーとを主原料としたセミリボンドれんがが使用されている。しかしながら、未だ耐用性が不十分であり耐構造的スポ―リング性の向上が課題となっている。
この耐構造的スポーリング性を高めるために最も有効な手法は、れんがの組織を緻密化しスラグ浸潤を防止することであり、従来から多くの手法が検討されている。
例えば特許文献1には、マグネシア、クロマイトからなる耐火原料に、Cr成分を含有する金属を添加した素材において、前記素材に対してCaO、MgO、Yの1種又は2種以上を固溶する第IVa族金属酸化物を外掛で3~20容量%添加することで低気孔率で緻密な焼成体を得る手法が開示されている。そして実施例では、ZrO-8wt%CaOを10容量%添加することで気孔率が10.5%の緻密なれんがが得られることも開示されている。
また特許文献2には、セミリボンド質マグクロれんがにおいて平均粒径15μm以下のZrO微粉を1~5重量%添加することにより、耐摩耗性、つまり熱間強度を向上させる手法が開示されている。そして、ZrO成分がマトリックスの中のCaO成分とCaO・ZrOを形成するため強度が増加することも開示されている。
更に特許文献3には、ZrOを3質量%以下含有するリボンドマグクロれんがの見掛気孔率が10.0%と組織が緻密化することが開示されている。そして、酸性酸化物であるZrOを塩基性酸化物であるMgOを主成分とするマグクロれんがに原料として適量添加することにより、焼成中の焼結が促進され、これにより見掛気孔率の低減と圧縮強度の向上、つまり緻密高強度化の効果が得られることも開示されている。
しかしながら、本発明者らがこの特許文献3のマグクロれんがを溶鋼真空処理容器に使用したところ、スラグ浸潤による構造的スポーリングの頻度は減ったものの、依然としてれんがの損傷の一番の要因はスラグ浸潤による構造的スポーリングであり、更なる組織の緻密化による構造的スポーリング抑制が必要であることがわかった。
特開平6-271353号公報 特開平11-100254号公報 特開2017-110280号号公報
本発明が解決しようとする課題は、構造的スポ―リングが生じ難い組織の緻密なマグクロれんがの製造方法を提供することにある。
マグクロれんがにジルコニア原料を少量添加すると組織が緻密化し低気孔率となることは公知であるが、本発明者らはジルコニアの安定化剤のうちCaOとMgOに着目し、ジルコニア原料中のCaO又はMgOの含有量及び耐火原料配合物中のジルコニア原料の含有量と、組織の緻密化との関係について種々検討した、その結果、CaO又はMgOを3~50質量%含有するジルコニア原料を耐火原料配合物中に1~5質量%含有することで、格段に見掛気孔率が低下し組織が緻密化することを新たに知見した。
すなわち、本発明の一観点によれば次のマグクロれんがの製造方法が提供される。
マグクロクリンカーを50~96質量%、マグネシアクリンカーを40質量%以下(0を含む。)、酸化クロムを3~10質量%、及びCaO又はMgOを3~50質量%含有するジルコニア原料を1~5質量%含有する耐火原料配合物を混練後、成形し、1700℃以上で焼成するマグクロれんがの製造方法。
本発明の製造方法で得られたマグクロれんがは組織が緻密化しているため、使用中の構造的スポーリングを抑制することができ、溶鋼真空処理容器等の寿命を大幅に向上することができる。
本発明のマグクロれんがの製造方法においては、耐食性に優れるマグクロクリンカーを、耐火原料配合物100質量%に占める割合で50~96質量%使用する。50質量%未満では耐食性が不十分となり、96質量%を超えると相対的に酸化クロム及びジルコニア原料の使用量が少なくなるため緻密な組織が得られ難くなり、結果として耐食性が低下する。
本発明で使用するマグクロクリンカーは、マグネシアとクロム鉱等とをアーク炉で溶融して得られる合成原料であり、電融マグネシアクロムクリンカー、電融マグクロクリンカー、溶融マグクロ、電融マグクロなどとも称されており、耐火物の原料として一般的に使用されているものを使用できる。
また本発明では、組織の緻密化のために酸化クロムを、耐火原料配合物100質量%に占める割合で3~10質量%使用する。3質量%未満では組織の緻密化が不十分であり、10質量%を超えると焼成時のスピネル生成に起因する膨張量が過剰になることから、緻密な組織が得られ難くなり耐食性が低下する。
酸化クロムとしては、耐火物の原料として一般的に使用されているものを使用することができる。また、原料コストダウン等の目的でクロム鉱を、耐火原料配合物100質量%に占める割合で5質量%以下の範囲内にて酸化クロムと併用することも可能である。クロム鉱を併用する場合には酸化クロムとクロム鉱との合量が耐火原料配合物100質量%に占める割合で10質量%以下なるようにする。
更に本発明では、同じく緻密な組織とするためにジルコニア原料を、耐火原料配合物100質量%に占める割合で1~5質量%使用する。1質量%未満では組織の緻密化が不十分であり、5質量%を超えると微粉量過多となり、成形性が低下するため見掛気孔率が高くなり組織の緻密化が不十分となる。
本発明においてジルコニア原料としては、CaO又はMgOを3~50質量%含有するジルコニア原料を使用する。詳細は後述するが、CaO又はMgOを3~50質量%含有するジルコニア原料を使用することで組織の緻密化効果が顕著に得られ、耐構造的スポーリング性や熱間強度が十分に高いマグクロれんがとなる。
本発明で使用するCaO又はMgOを3~50質量%含有するジルコニア原料はバッデライトとカルシウム系原料又はマグネシウム系原料を所定の割合に混合したものをアーク式溶融炉で溶融し、得られたインゴットを粉砕して製造することができる。カルシウム系原料として、酸化カルシウム又は水酸化カルシウムを用いることができ、マグネシウム系原料としては酸化マグネシウム又は水酸化マグネシウムを用いることができる。
本発明では、耐熱衝撃性が必要な場合にはマグネシアクリンカーを、耐火原料配合物100質量%に占める割合で40質量%以下の範囲内にて使用することもできる。マグネシアクリンカーが40質量%を超えると周囲の組織との熱膨張差によって生じるマグネシアクリンカー周囲の空隙が増加するため見掛気孔率が高くなり組織の緻密性が低下する。
本発明で使用するマグネシアクリンカーとしては、電融マグネシアや焼結マグネシア等、耐火物の原料として一般的に使用されているものを使用できる。
なお、本発明では、組織の緻密性を更に高めるために耐火原料配合物中のマグクロクリンカーの量、又はマグクロクリンカーとマグネシアクリンカーとの合量は、耐火原料配合物100質量%に占める割合で87質量%以上とすることが好ましい。
本発明のマグクロれんがの製造方法は、上記組成の耐火原料配合物を使用すること以外は、通常のマグクロれんがの製造方法と同じとすることができる。すなわち、耐火原料配合物に適量のバインダーを添加して混練し、加圧成形後に焼成する。焼成温度は1700~1900℃とすることができる。
本発明の製造方法で得られたマグクロれんがのミクロ組織を観察すると、CaOを含有するジルコニア原料がマグクロ粒子やマグネシア粒子の粒界においてCaO・ZrOとして存在し、結合ボンドの一部として存在していることが確認された。また、このCaO・ZrOには僅かにCr3+も固溶していることが化学分析より確認された。CaO・ZrO中のZr4+に置換してCr3+が固溶することで、電荷保持のために結晶中に酸素欠陥が生成されると考えられる。酸素欠陥を有するCaO・ZrOは酸素イオンの拡散経路として作用する。従ってマグネシア粒子やマグクロ粒子の粒界にCaO・ZrOが分布することで酸素イオンの拡散及びそれに伴うCr3+、Mg2+の拡散が活発になり、粒成長が促されると考えられる。このようにしてマグクロれんがの焼結が促進され、れんがの組織が緻密化すると考えられる。しかもCaO量が多いにもかかわらず、CaOはジルコニアから遊離して低融点物を生成していないため、耐構造的スポーリング性や熱間強度の低下はほとんど見られない特徴もある。また、MgOを含有するジルコニア原料でも同様な組織が確認された。
以上の知見から、本発明ではジルコニア原料として、CaO又はMgOを3~50質量%含有するジルコニア原料を使用する。CaO又はMgOの含有量が3質量%未満では上述の組織を緻密化する効果が十分に得られず、50質量%を超えた場合は焼結促進効果の低い単相のCaO(Lime)、MgO(Periclase)が過剰分として増加し、なおかつ焼結促進効果の高いZr化合物の量が相対的に少なくなることで焼結促進効果が薄れる。そのため、組織が十分に緻密化せずに見掛気孔率が高くなり、熱間強度や耐食性が低下する。
また、本発明ではジルコニア原料として、CaOを15~35質量%含有するジルコニア原料を使用することが好ましい。
更に、本発明で使用するジルコニア原料は、粒度が1mm未満であることが好ましく、44μm未満であることがより好ましい。本発明においてジルコニア原料は、上述の通りマグクロ粒子やマグネシア粒子の粒界に存在することで、組織を緻密化する効果を発揮するからである。ここで、本発明でいう粒度とは、耐火原料粒子を篩いで篩って分離したときの篩い目の大きさのことであり、例えば粒度1mm未満のジルコニア原料とは、篩い目が1mmの篩いを通過するジルコニア原料のことである。
なお、CaO又はMgOを含有するジルコニア原料を使用することによる、上述の緻密高強度化の効果は、マグクロクリンカーを主成分としたリボンドタイプあるいはセミリボンドタイプにおいて顕著に現れる。マグネシアクリンカーとクロム鉱を主原料とするダイレクトボンドタイプでは、クロム鉱の周囲にマグネシアクリンカーとの熱膨張係数の差に伴う長尺な空隙が形成されやすく、これがCaO又はMgOを含有するジルコニア原料を使用することによる緻密高強度化の効果を相殺してしまう。そのため、ダイレクトボンドマグクロれんがではCaO又はMgOを含有するジルコニア原料を使用したとしても、リボンドマグクロれんがやセミリボンドマグクロれんがほどの見掛気孔率の低減と熱間強度の向上は達成し難く、十分な耐構造的スポーリング性は得られない。
表1に、本発明の実施例によるマグクロれんがの耐火原料配合物と得られたマグクロれんがの評価結果を比較例と共に示している。
Figure 2023086544000001
表1に示す各例の耐火原料配合物にバインダーを添加して混練後、オイルプレスで並型形状のれんがを成形し、1750℃で焼成することでそれぞれマグクロれんがを得た。なお、表1に示す電融マグクロ(電融マグネシアクロムクリンカー)は、MgOが65質量%、Crが16質量%、Alが5質量%、Feが9質量%のものを、酸化クロムはCrが94質量%のものを、クロム鉱はCrが55質量%でMgOが16質量%のものを、電融マグネシアはMgOが97質量%のものをそれぞれ使用した。ジルコニア原料はバッデライトと水酸化カルシウム又はマグネシアを所定の割合に混合にしたものをアーク式溶融炉で溶融し、得られたインゴットを44μm未満に粉砕して製造されたものを使用した。
得られたマグクロれんがからサンプルを切り出し、見掛気孔率及び熱間曲げ強さを測定すると共に、急冷スポーリング試験及び回転侵食試験を実施し、総合評価を行った。
見掛気孔率はJISR2205に準拠し、熱間曲げ強さは、JISR2656に準拠し大気雰囲気下、1480℃で測定した。
急冷スポーリング試験では、一辺の長さが50mmの立方体のサンプルを1400℃に加熱した電気炉に入れて、15分後に取り出して空冷する操作を15回繰り返した。耐スポーリング性の評価は、15回目までにサンプルの一部が剥落したものを×(不可)とし、15回目後に目視により大きな亀裂が観察されたものを△(可)、小さな亀裂が観察されたものを○(良)とした。
回転侵食試験では、上底45×下底105×高さ60×長さ120mmの台形れんが形状の試料を用い、回転スラグ侵食試験法により、1750℃×1時間侵食を5回繰り返し、試験前後の試料中心線厚さの差異(mm)から侵食量(mm)を求めた。侵食剤としてCaO/SiOの比であるC/S=1.5のスラグを使用した。表1において耐食性は比較例2の溶損量(mm)を100として指数で表示した。この指数が小さいほど耐食性に優れるということである。
総合評価は表2に示す評価基準に基づき、◎(優)、○(良)、×(不良)の3段階で評価した。
Figure 2023086544000002
実施例1から実施例6はジルコニア原料中のCaO含有量が異なる例であるが、本発明の範囲内であり、低見掛気孔率で耐食性にも優れ、総合評価は◎(優)又は○(良)と良好な結果が得られた。なかでもCaOの含有量が15~35質量%であるジルコニア原料を使用した実施例3から実施例5は総合評価が◎(優)となり、特に良好な結果が得られた。
これに対して、比較例1はジルコニア原料を使用していない例であり、見掛気孔率が高く耐食性も劣っていた。また、比較例2はCaOを含有していないジルコニア原料を使用した例であり、これも見掛気孔率が高く耐食性も劣る結果となった。一方、比較例3はCaOを65質量%含有するジルコニア原料を使用した例であるが、見掛気孔率が高く耐食性に劣り、耐スポーリング性も劣る結果となった。
実施例7はMgOを25質量%含有するジルコニア原料を使用した例であるが、本発明の範囲であり優れた結果となった。
実施例8と実施例9はCaOを28質量%含有するジルコニア原料の使用量が異なる例であるが、本発明の範囲内であり良好な結果となった。これに対して比較例4は、CaOを28質量%含有するジルコニア原料の使用量が本発明の上限を超えており、見掛気孔率が高くなり耐食性が低下した。
実施例10と実施例11は酸化クロムの使用量が異なる例であるが、本発明の範囲内であり良好な結果となった。これに対して比較例5は、酸化クロムの使用量が本発明の下限を下回っており、見掛気孔率が高く耐食性も不十分であった。また、比較例6は酸化クロムの使用量が本発明の上限を超えており、これも見掛気孔率が高く耐食性も不十分であった。
実施例12は、酸化クロムとクロム鉱とを併用した例であるが、本発明の範囲内であり良好な結果となった。
実施例13から実施例17は電融マグネシアを使用した例であるが、本発明の範囲内であり良好な結果となった。
比較例7は電融マグクロの使用量が本発明の下限を下回っており、見掛気孔率が高く耐食性も不十分であった。
実施例18は、電融マグクロの使用量が本発明の上限の例であるが、良好な結果となったが、一方、比較例8は電融マグクロが本発明の上限を上回っており、見掛気孔率が高く耐食性に劣り、耐スポーリング性も劣る結果となった。

Claims (3)

  1. マグクロクリンカーを50~96質量%、マグネシアクリンカーを40質量%以下(0を含む。)、酸化クロムを3~10質量%、及びCaO又はMgOを3~50質量%含有するジルコニア原料を1~5質量%含有する耐火原料配合物を混練後、成形し、1700℃以上で焼成するマグクロれんがの製造方法。
  2. ジルコニア原料は、CaOを15~35質量%含有する請求項1に記載のマグクロれんがの製造方法。
  3. ジルコニア原料は、粒度が0.1mm未満である請求項1又は請求項2に記載のマグクロれんがの製造方法。
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